第1回がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

平成30年8月1日(水)16:00~18 :00

場所

厚生労働省 省議室(9階)

議題

(1)議長の選任等について
(2)がんゲノム医療推進に向けた取組について
(3)その他

議事

 

○健康局がん・疾病対策課長 定刻となりましたので、ただいまから第1回「がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、お暑い中、またお忙しい中をお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
私は事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課長の佐々木と申します。議長が選任されますまでの間、進行を務めさせていただきます。
初めに加藤厚生労働大臣より御挨拶を申し上げます。
○加藤厚生労働大臣 第1回「がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議」の開催に当たりまして、それぞれ大変お忙しい中、委員の先生方にはこうして御出席をいただきまして、ありがとうございます。
本日は、がん医療やがん研究を牽引する専門家の皆さん、そして患者の代表の方を初めとして、この問題を議論するには多面的・多角的に議論をする必要がございますけれども、それぞれの立場を代表する方々にこうしてお集まりをいただきました。
昭和56年以降、我が国の死因の第1位はがんであります。がん対策はまさに国民的な課題でもあり、先般、策定をいたしました第3期のがん対策推進基本計画においても、がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す、このことを全体の目標として掲げたところでございます。中でも、さらなるがん医療の充実を図るため、近年、がんのゲノム情報に基づき治療を行う、がんゲノム医療に対して大変大きな期待が寄せられているところであります。
本年2月には、がんゲノム医療を牽引する高度な機能を有する医療機関として、がんゲノム医療中核拠点病院を全国に11カ所指定いたしました。さらに中核拠点病院と連携する、がんゲノム医療連携病院を全国に100カ所公表し、全国どこにいてもがんゲノム医療を受けられる体制を段階的に構築しているところであります。また、あわせて中核拠点病院などで得られたゲノム情報及び臨床情報などを集約し、適切な診療の提供や革新的な治療の開発につなげることができる技術基盤を有した、がんゲノム情報管理センターを本年6月に国立がん研究センター内に設置いたしました。
現在、我が国では先進医療による遺伝子パネル検査の提供が開始されているところであります。今後、国民皆保険のもとで遺伝子パネル検査が提供できるようになれば、がんゲノム医療を広く国民に提供することが可能になることはもちろん、多くの臨床情報やゲノム情報が集約され、創薬や新たな診断等の研究も、世界に先駆けて推進されていくことが予想されるところでもあります。また、がんゲノム解析などの研究開発も推進し、さらなるがんゲノム医療の発展を目指していきたいと考えております。
この運営会議においては、我が国のがんゲノム医療に関するゲノム情報の集約、管理、利活用、また、質の確保された検査の実施、革新的診断法・治療法の創出などについて、精力的に御議論をいただき、合意をいただく場としていきたいと考えております。患者の立場、そして国民の視点から、また、診療現場や開発研究現場を含めた、がんゲノム医療の推進にかかわる、それぞれの皆様の視点から、個々のがん患者にとって最適な医療が提供されるよう、議論を深めていただきたいと考えているところであります。
どうか忌憚のない、精力的な御議論、御提言を心よりお願い申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○健康局がん・疾病対策課長 ありがとうございました。
撮影につきましては以上までとさせていただきたいと思います。御協力をお願いいたします。
続いて、委員の皆様方の御紹介をさせていただきます。恐縮ですが、お名前を呼ばれた際に御起立いただき、一言自己紹介をお願いしたいと思います。
天野慎介全国がん患者団体連合会理事長でございます。
○天野構成員 天野でございます。よろしくお願いします。
この会議の前身となる、がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会より議論にかかわってまいりました。本日は、ぜひ、がん患者・家族の皆様に適切な医療が届くための議論の場としていただきますように、よろしくお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 北川昌伸日本病理学会理事長でございます。
○北川(昌)構成員 日本病理学会の理事長を拝命しております、東京医科歯科大学の北川でございます。病理学会はがんゲノムに関して画像という観点から協力できればと思ってございますので、ぜひ、よろしくお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 御紹介の途中で恐縮ですけれども、加藤厚生労働大臣につきましては、この後、公務がございまして、ここで退席となることをお許しいただきたいと思います。
○加藤厚生労働大臣 皆様の御紹介を聞かずに失礼いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
(加藤厚生労働大臣退室)
○健康局がん・疾病対策課長 続きまして、北川雄光日本癌治療学会理事長です。
○北川(雄)構成員 北川でございます。日本癌治療学会は多職種の横断的学会でございますので、このがんゲノム医療にもそういった面から何らかの貢献をさせていただきたいと思っております。よろしくお願いします。
○健康局がん・疾病対策課長 木下賢吾日本バイオインフォマティクス学会理事長です。
○木下構成員 木下でございます。この、がんゲノムの取り組みでは、ゲノム情報を一手に集めて解析をするという非常に先進的な試みもあると伺っていますので、ぜひ、そういうところで御協力できればと思います。よろしくお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 齊藤延人がんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議議長です。
○齊藤構成員 連絡会議の議長を務めさせていただいております齊藤でございます。後ほど発表もございますが、連絡会議だけでなく、その下のワーキングも活発に動き始めております。どうぞよろしくお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 末松誠日本医療研究開発機構理事長です。
○末松構成員 AMEDの末松でございます。私どものところは厚労と文科からいただいた貴重なお金を使いまして研究開発をやるとともに、ゲノム医療の、特に難病とがんという2つの柱のところで支援をさせていただいております。よろしくお願いします。
○健康局がん・疾病対策課長 杉山将理化学研究所革新知能統合研究センターセンター長です。
○杉山構成員 こんにちは。御紹介にあずかりました杉山でございます。我々は理研のAIPセンターということで、情報処理の立場から、いろいろ研究しておりますが、医療の分野、特にがん医療の分野は非常に重要だと考えておりまして、このコンソーシアム運営会議にも何らかの貢献ができればと思っております。よろしくお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 中釜斉日本癌学会理事長/国立研究開発法人国立がん研究センター理事長です。
○中釜構成員 日本癌学会理事長の中釜です。がんのゲノム医療については、基盤を支えるがんゲノムの基礎研究という視点からも、今後の展開を見据えて発言していければと思います。よろしくお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 中山讓治日本製薬工業協会会長です。
○中山構成員 日本製薬工業協会会長の中山でございます。私どもの会は日本の71社の新薬開発の会社が集まった業界でございます。この業界にとっても、がんの開発をどうしていくかは極めて重要でございます。特にゲノム情報は今後副作用を抑え、効果を高める上で極めて大切な情報だと思っておりますので、積極的に参画させていただきたいと思っております。よろしくお願いします。
○健康局がん・疾病対策課長 間野博行国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター長です。
○間野構成員 間野でございます。来年と予想されている遺伝子パネル検査の保険収載にあわせてがんゲノム情報管理センターという中央のデータセンターを今、急ピッチで準備を進めているところであります。ぜひ、セキュアでかつ有効な利活用ができるものにしたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 宮野悟東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長です。
○宮野構成員 宮野でございます。私はこの前の懇談会のときから少し意見を出させていただきました。引き続きこの運営会議において頑張らせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 門田守人日本医学会会長/日本医学会連合会長です。
○門田構成員 ただいま御紹介いただきました門田でございます。今の所属はそういうことになっておりますけれども、実は昨年の6月まで、がん対策推進協議会の会長を務めており、この第3期の基本計画を策定の段階までやってまいりました。そういった意味で今回のゲノム医療の重要性はその当時から認識していた者として、今回、ぜひ、前向きな意見と抱える課題の両面から、しっかりとしたディスカッションをお願いしたいと思っています。よろしくお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 横倉義武日本医師会会長です。
○横倉構成員 日本医師会の横倉でございます。このがんゲノム医療は今後推進すべきであると考えておりますが、一方で、将来的なリスクのある方に対し、過度な危機感や不安感をあおることがあってはならないと思います。また、ゲノム情報の収集・利活用に関しては、その保護に関して万全を期すべきであります。そして、この会議では、がんゲノム医療の全国への均てん化についても中長期的な視点で検討をお願いしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 葛西重雄独立行政法人情報処理推進機構CIO補佐官/厚生労働省データヘルス改革推進本部プロジェクトチーム技術参与です。
○葛西オブザーバー 葛西でございます。昨年より厚生労働省内に保険医療情報を有効活用しようということで設立しましたデータヘルス改革本部の技術参与をしております。がんゲノム治療は情報システムとかなり表裏一体で、がんのゲノム解析にシステムを有効活用することは重要なポイントだと思っておりますので、厚生労働省データヘルス改革推進本部としても、確実にこちらの患者の皆様に治療がお届けできるように、システムインフラを整備することに尽力していきたいと思っております。よろしくお願いします。
○健康局がん・疾病対策課長 なお、山口俊晴構成員、渡部眞也構成員からは、おくれていらっしゃるとの御連絡をいただいております。
また、江川洋構成員、近藤達也構成員、松原洋一構成員、南博信構成員、武藤香織構成員からは、本日御欠席との連絡をいただいております。
なお、事務局からの出席者につきましては、お手元の座席表をごらんいただければと思います。
続きまして、資料の確認をさせていただきます。
卓上、上からでございますが、まず座席表。その下が議事次第。
次が資料1「がんゲノム医療推進に向けた取組」。厚生労働省の資料でございます。
資料2「がんゲノム情報管理センターの進捗状況」。間野博行構成員からの資料でございます。
資料3「がんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議からの報告」。齊藤構成員からの資料でございます。
参考資料1「がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議開催要綱」。
参考資料2「がん対策推進基本計画(平成30年3月)」。
参考資料3「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会報告書(平成29年6月27日)」。
参考資料4「がんゲノム医療中核拠点病院等の整備について(平成29年12月25日健発1225第3号)」。局長通知でございます。
資料に不足、落丁等がございましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し出ください。よろしいでしょうか。
それでは、早速、議題1「議長の選任等について」に移りたいと思います。参考資料1をごらんください。参考資料1は先ほど申し上げました本運営会議の運用規定などを定めた要綱になります。この中の第3条2項において、本会議には構成員の互選により議長を置き、会議を統括すると規定されております。よって、本規定に基づきまして、構成員の互選により議長を選任いただきたいと思います。どなたか御推薦をお願いいたします。
○北川(雄)構成員 御推薦させていただきます。
国立がん研究センター理事長であり、かつ日本癌学会理事長でもある中釜構成員を議長として御推薦申し上げます。
○健康局がん・疾病対策課長 ただいま、中釜構成員の御推薦がございました。ほかに、よろしいでしょうか。
それでは、中釜構成員に本運営会議の議長をお願いしたいと思いますが、構成員の皆様、いかがでしょうか。
(拍手)
○健康局がん・疾病対策課長 ありがとうございます。
それでは、中釜構成員は議長席への移動をお願いいたします。
それでは中釜議長、改めて一言御挨拶をお願いいたします。
○中釜議長 議長に選任されました中釜です。一言御挨拶させていただきます。
先ほど、大臣からの御挨拶にありましたが、がんのゲノム医療に関しては、今年に入っていろいろな仕組みがつくられてきております。2月にはがんゲノム医療中核拠点病院の指定、3月にはそれと連携する連携病院が100でトータル111期間を選定、6月にはがんゲノム情報管理センターというゲノム情報を集約するセンターを開設しております。あわせて4月からは、現在解析を進めている遺伝子パネルの薬事承認に向けての先進医療がスタートしたところであります。日本においてがんのゲノム情報に基づいて、個々人に最適な医療を届けるというゲノム医療の体制がまさにスタートし始めた状況であります。
まず、がんのゲノム医療を推進する上で重要なポイントが幾つかあろうかと思います。この仕組みが個々人に最適な医療を届けるということで、国民からの期待が非常に大きい一方で、このプロセスを品質保証下で、しかもデータの整合性・統一性を担保しながら実施するという仕組みづくりが非常に重要になってくるかと思います。
加えて、診療情報すなわちゲノム情報のデータをいかに集積・管理し、いかに利活用につなげていくかという問題があろうかと思います。さらには、人材育成、教育など、さまざまな問題が伴ってきます。がんゲノム医療体制の構築は、日本の医療体系の中において、まさに新しい革新的な取り組みであることは間違いないと認識しています。同時に全てのがん患者さんがこのがんゲノム医療のメリットを享受できるような仕組みをつくっていく必要があると個人的にも考えております。
このがんゲノム医療がゲノム検査に終わらず、さらには新しい薬の開発、新しい医療の提供という形へと、どんどん加速度的に推進されていくことが望まれているのだろうと思います。同時に、やはり高いセキュリティーのもとで、さまざまな課題を克服しながら、着実に進んでいく必要があると認識しております。倫理的・法的な問題、加えて社会的な問題も考慮しながら、冒頭に申しました人材育成の問題にも取り組んでいく必要があります。さらには医療費の問題も忘れてはならない問題で、こういう問題も加味しながら、このゲノム医療が日本において持続可能なシステムとして構築されることを、私自身も非常に強く望んでいます。本運営会議の議長としましても、がんゲノム医療が国民にとって有益なものとなるように、さまざまな課題について構成員の方々と議論しながら、よいシステムとして日本に根づくような、そのための議論をこの会議の中で続けていければと考えています。
今後ともよろしくお願いいたします。
それでは、私のほうからまず、規定にはないのですが、私に事故等があったときのために、慣例によって議長代理の指名をさせていただきたいと思います。
議長に事故等があったとき、議長代理に代行していただく必要があるわけです。昨年開催されました懇談会の副座長を務めていただきました宮野悟構成員にお引き受けいただければと思いますが、よろしいでしょうか。
(拍手)
○中釜議長 ありがとうございました。
宮野構成員に本運営会議の議長代理をお願いしたいと思います。
それでは、早速議事に従って本日の会議を進めさせていただきます。
まず、議事次第をご覧いただきまして、議題2「がんゲノム医療推進に向けた取組」について、資料1から3を使い、その内容をそれぞれ説明いただき、その後まとめて構成員から御意見や御指摘をお受けしたいと思います。
それでは、まず資料1の説明を事務局よりお願いしたいと思います。
○健康局がん・疾病対策課長 事務局の佐々木です。
資料1をお手元に御用意ください。本日は初回の会合ですので、まずは我が国の現状や方向性について、認識の共有を図ることを目的に御説明いたします。
資料1の下のほう、スライド2をごらんください。がんは細胞の正常な遺伝子に異常を来したことをきっかけに、正常細胞ががん化していくことが知られております。また、同じがんであっても原因となる遺伝子はさまざまであり、対応する薬剤は異なることも知られております。がんゲノム医療は原因となる遺伝子変異を特定することにより、患者さん一人一人に合った個別化医療につながるという言い方ができるかと思います。
スライド3をごらんください。その例として、イレッサについて遺伝子異常を特定して用いた場合とそうでない場合の奏効率の比較を載せております。イレッサでは、EGFRという遺伝子に異常のある肺がん、詳しくは非小細胞がんですが、これを対象にすることで奏効率が大きく改善したことが示されております。
下のスライド4です。現在、がんゲノム医療におけるゲノム検査については遺伝子パネル検査の実装が進んでおります。1つの遺伝子のみを対象とした従来のコンパニオン診断では、特定の遺伝子異常を診断することにより、対応する特定の薬剤を選択することができましたが、複数の遺伝子を検査するには時間と費用がかかるという指摘もございました。
そこで、次世代シークエンサーにより一度に多数の遺伝子を調べることが可能な遺伝子パネル検査が注目され、今、開発を含めて進められてきているところでございます。
スライド5をごらんください。こうした現状から、厚生労働省では昨年、我が国のがんゲノム医療の方向性を整理するために、有識者から成るがんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会を開催いたしました。お手元の参考資料3に、先ほど申し上げましたとおり、その報告書がございます。本日御出席の構成員の中からも、懇談会の座長であった間野構成員、また副座長であった宮野構成員も含めて6名の方に御参画いただいておりました。
この懇談会では、がんゲノム医療を日本で実現するために、がんゲノム医療やそれに関連する検査や開発といった体制を早急に整備すること。同時にがん研究のオールジャパン体制を築き、日本がこの分野で世界をリードすること。これらを国民皆保険制度のもとで行うことが掲げられました。
その下のスライド6です。ゲノム関連検査の種類とその活用の方策について体系的に示した資料になります。中段にありますように、パネル検査は一定の要件を満たす医療機関を指定し、その中で保険診療として提供していくこと。また、ゲノム変異情報に着目した医薬品の適応拡大を図ることなどが示されています。
スライド7です。懇談会の報告書では、昨年6月に取りまとめたところですけれども、スライド7はその際に示されたコンソーシアム、全体推進体制のその体系図と役割を示した模式図になっております。これに基づきまして、この間の取り組みを簡単に御説明いたします。先ほどの中釜議長のお話、また加藤厚生労働大臣の挨拶にもございましたが、ことしの2月に11病院をがんゲノム医療中核拠点病院として指定しました。3月には中核拠点病院と連携してがんゲノム医療を提供するがんゲノム医療連携病院として、43都道府県100病院を公表したところです。また6月には、中核拠点病院等から得られたゲノム情報や臨床情報を集約し、診療や研究開発に利活用する機関として、がんゲノム情報管理センターを国立がん研究センターに設置したところでございます。
こうした医療機関からがんゲノム情報管理センターまでの体系は、ある程度、整備が進んできたところでございます。ここから先は、例えばゲノム検査としてのパネル検査、さらには集めた情報をそれに照らし合わせるような体制整備、そして情報をもとにして研究開発や創薬等が進むような体制づくり。このことを、この運営会議でお諮りすることになります。
その下のスライド8でございます。これは政策面からの資料でございます。先ほど門田構成員からも御紹介いただきました。昨年10月、そしてことしの3月と、2回に分けて閣議決定された第3期がん対策推進基本計画の資料になります。これは今回から6カ年計画になりますが、丸で囲ってありますとおり、がんゲノム医療は政策的に明確に位置づけられたところです。
スライド9をごらんください。第3期がん対策推進基本計画で具体的にどう記載されているかでございます。1と2にはがんゲノム医療の提供体制と情報の集約体制について記載されております。この部分を体系的に整理したのがスライド17でございます。
スライド17にございますとおり、このような小児がん拠点病院やがん診療連携病院等の中に、がんゲノム医療連携病院やがんゲノム医療中核拠点病院があり、その情報をがんゲノム情報管理センターに集約する。その方向づけについて、本コンソーシアム運営会議で御審議いただく。具体的な論点がその左や右に吹き出しで示されているような図になっております。
スライド10から16に戻って御紹介いたします。
スライド10をごらんください。選定された11の中核拠点病院の要件を8つにまとめております。
スライド11には、中核拠点病院と連携病院の役割分担を、患者さんの受診からその先までの時間の流れに沿って整理しております。
スライド12には、患者さんの視点から見た場合の流れ図を整理しております。
スライド13には、11の中核拠点病院の一覧がございます。
スライド14には、100の連携病院の一覧があります。
スライド15には、がんゲノム医療の提供体制の将来像。具体的には右側というか真ん中になりますが、現在の中核拠点病院と連携拠点病院の間に、がんゲノム医療拠点病院という形で、基本的には診療が都道府県内で完結するような体制の将来像を書いております。
スライド16には、この後、資料2で間野構成員より詳しく御説明いただきますが、情報管理センターの概要を1枚にまとめた資料を用意しております。
スライド18は、遺伝子パネル検査に関する状況を示しております。既に先進医療として3件が実施中もしくは審査中の段階に移っています。また1件、薬事承認申請がされたことが公表されておりますので、このスライドにまとめております。
スライド19です。これは遺伝子変異に基づく抗がん剤の薬事承認についての資料になります。ほかの医療と同様の構図にはなりますが、がんゲノム医療にとって患者さんの同意をいただいた後は、遺伝子パネル検査がいわば入り口となり、検査結果の解釈を経て、治療方針が決まると投薬といった治療、つまり出口、遺伝子変異に基づく抗がん剤の薬事承認が出口という言い方ができるかと思います。中核拠点病院等で治験を通じてエビデンスの構築等の取り組みを加速し、それをもとに、例えば条件付き早期承認制度を活用することによって、ゲノム情報に基づく、例えば臓器横断的な承認を進めるといったスキームを用いることより、また活用することにより、医薬品への患者さんのアクセスがより早期に実現していくことを想定しております。
スライド20には、がんゲノム医療については、これはゲノム医療全般についても同じことが言えますが、人材の教育や育成、養成が重要になります。このため、スライド20にありますような各種人材の教育・育成をまとめた資料となっております。
スライド21には、具体的にパネル検査に関するカウンセリングに係る職種や役割を整理したものをまとめております。なお、遺伝子パネル検査の説明や遺伝カウンセラーへの紹介を調整する、がんゲノム医療コーディネーター。スライド21の左下になりますが、この研修につきましては本年3月より関係する学会の御協力をいただいて開始しているところでございます。
スライド22から24までは、研究に関連した資料になります。
スライド22にありますとおり、革新的がん医療実用化研究事業では、特定の遺伝子異常を有する患者群を対象とした研究などが行われています。
スライド23をごらんください。先ほどごらんいただいたがんゲノム医療の体系図でございますが、この中に研究関係経費を記載しております。今年度、ここには29.1億円を計上しているということを御紹介するスライドです。
スライド24に示すように、パネル検査の実装化とともに、革新的な診断や治療法の開発のためには、先ほど大臣の挨拶でも触れておりますが、全ゲノム検査の研究等も重要であると考えておりますので、この資料を用意したところでございます。
スライド25、スライド26は、これまで御説明した内容の改めての説明になります。本運営会議の目的、検討事項、構成員について、参考資料1の開催要綱から抜粋したものになります。
スライド27をごらんください。あわせて参考資料1もお手元に御用意ください。参考資料1の第5条に、部会についての規定がございます。本運営会議のもと、がんゲノム医療の推進を図るため、必要と認める課題について関係者で検討する部会を開催することができるという規定になっております。
そこで、先ほど御紹介いたしました中核拠点病院と情報管理センターから組織されております、がんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議。座長は齊藤構成員ですが、この連絡会議を本運営会議の部会として本会議のもとに位置づけ、中核拠点病院、さらには連携病院、情報管理センターにかかわる課題などを検討することにしたいと思っております。
また、この連絡会議は実務者から成るワーキング・グループを課題ごとに設置しているところでございます。この後、資料3で齊藤構成員や国立がん研究センターの吉田参考人からも御紹介があるかと思いますが、このスライド27にあるような形で本運営会議開催要綱5条に基づく部会として位置づけたいと考えております。
スライド28は、コンソーシアム全体の工程表。
スライド29は、本会議を含む、がんゲノム関連のさまざまな会議体がございますので、その進め方の整理をした案になっております。
戻っていただきましてスライド28をごらんください。スライド28の最上段のコンソーシアム運営会議。本運営会議ですが、本日が第1回の開催になります。今年度中に2回目を開催し、それ以降も継続して、御指摘いただいた課題や、また先ほどの部会から御審議いただきたいとされている、要請がある事項について、継続して御審議いただきたいと考えております。
中段のゲノム検査や医薬品の承認・保険適用についてですが、現在幾つかの遺伝子パネル検査を先進医療として中核拠点病院等で実施またはその準備をしているところであります。質の担保されたエビデンスを蓄積し、なるべく早期に薬事承認や保険収載となるよう努めてまいりたいと考えております。また同時に治療薬などの医薬品につきましても、医師主導治験や先進医療等の推進を図ってまいりたいと考えております。
最下段の研究開発推進につきましても、全ゲノム解析、先ほど申し上げました全ゲノムの技術開発や、また、体制強化等も含めて、今後のさらなる発展・継続を目指して進めてまいりたいと考えております。
そしてスライド29、本会議の進め方です。今年度は、まずは遺伝子パネル検査の保険収載前でございますので、保険収載に向けてさまざまな、取り急ぎ整理しなければならない課題がありますので、その課題を中心に検討していただきたいと考えております。また、それ以外にも中長期的に推進していくための課題があるかと思います。この中長期的な課題についても本日後ほどの議論の際にはあわせて御指摘いただければと考えております。いただいた課題は整理の上、次回以降の本運営会議でワーキング・グループや中核拠点病院等連絡会議の検討内容とあわせて検討いただきたいと考えております。
最後にスライド30でございます。今まで、さまざま御説明いただきましたが、最後に本会議で御議論いただきたい事項の要点を4つにまとめております。
1つ目は、パネル検査の実用化です。遺伝子パネル検査等は結果の解釈に専門的な知見が必要となることから、一定の要件を満たす医療機関において提供することになります。この一定の要件を満たす医療機関とは、がんゲノム医療中核拠点病院や連携病院を想定しております。また人材育成等もあわせて推進し、これらの医療機関を段階的に拡大していくということを考えております。この要点、論点について、具体的にどうするのか。これが本運営会議で御議論いただくポイントの1つ目になります。
2つ目のポイントはゲノム情報等の集約です。日本人に最適化されたゲノム医療を提供するとともに、創薬・個別化医療開発等を推進するためには、保険診療下で行う遺伝子パネル検査等のゲノム情報、さらには臨床情報、これらはがんゲノム情報管理センターへの登録を義務づける形で進めてはどうかということに整理をしております。
3つ目が、ゲノム検査に基づく治療の推進として、ゲノム検査に基づく治療を推進するため、がんゲノム医療中核拠点病院等における医薬品の医師主導治験や先進医療等の推進、また申請に応じた条件付き早期承認の活用。こういったことによって、医薬品の適応拡大を図り、また、さまざまな研究開発を進めるということを論点の3つ目に整理しております。
4つ目ですが、これはもう少しさらなる発展形として、さらなるがんゲノム医療の発展という見出しをつけております。4つ目の論点としては、全ゲノム解析等の研究開発を推進することによって、またはほかの方策等もあるかもしれませんが、さらなるがんゲノム医療の発展を目指す。これも中長期的に御指摘をいただきたいと思っております。
以上、ここに記載された4つの要点を柱として、個々の課題について構成員の先生方皆様の御意見をいただき、がんゲノム医療推進の礎としたいと考えております。
本日は幅広い観点から御意見や御指摘をいただきたいと思っております。まずは、この4つに絞った論点、さらには中長期的なさまざまな課題、このことを御指摘、御議論いただきたいと思っております。
資料1の説明は以上です。ありがとうございました。
○中釜議長 ありがとうございました。
続きまして、資料2「がんゲノム情報管理センターの進捗状況」の説明を、がんゲノム情報管理センター長の間野構成員よりお願いしたいと思います。
○間野構成員 間野でございます。資料2をごらんください。
現在、ことしの6月にがんゲノム情報管理センターを設立し、現在、急ピッチでその体制を整備しているところです。
スライド2で、がんゲノム情報管理センターの設置の根拠となっている事情を説明してあります。昨年度に行われました、がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会の報告書に基づきまして、ゲノム情報あるいは臨床情報を集める国のマスターデータベースであるがんゲノム情報レポジトリーを構築し、それを管理・運営する機関として、がんゲノム情報管理センターを新たに設置することが定められ、ことしの6月にそれが設置されたところであります。
スライド3をごらんください。これががんゲノム情報管理センター、Center for Cancer Genomics and Advanced Therapeutics(C-CAT)が何をするところなのかをあらわした図ですので、少し細かく御説明したいと思います。
患者さんが実際に中核拠点病院あるいは連携病院を受診されて、がんゲノム医療を受けることになりますと、その病院から衛生検査所等の検査施設・検査会社に検体が送られることになります。検査会社では次世代シークエンサーによってがん関連遺伝子を解析する「がん遺伝子パネル」の検査を行い、その配列情報を測定し、そこから遺伝子変異情報を導き出して、さらにその遺伝子変異のうち患者さんの薬剤選択に有効な情報を検査報告書として送ることになると思います。
一方、その検査会社から、あるいは中核拠点を介してかもしれませんが、配列情報等の元データ、例えばがん遺伝子パネルがどのような遺伝子を測定したのか、どのようなシークエンサーで測定したのか、それから、もとの配列データである、専門的な用語でいうところの、いわゆるFASTQファイルや、あるいは変異ファイルVCFファイルをC-CATに送ってもらうことを考えています。C-CATにはゲノム情報だけでなく、患者さんの臨床情報も送ってもらう予定です。ゲノム医療が日本で恐らく10万人単位で行われることを想定して設計をする必要があると思うのですけれども、その場合に細かい臨床情報を送るのは、かなり臨床側に負担を強いることになりますので、少なくとも性別、年齢、がん種はもとより、最も知りたい情報としては、あるお薬を使ったときに、それが有効だったのか効かなかったのか、あるいは、重度な副作用が生じたかというような、薬の有効性および副作用情報を集めたいと思っています。
ゲノム医療中核拠点病院は現在、日本で11カ所設定されていますが、そこに入っている電子カルテの開発ベンダーは数社ですので、その会社に、昨年度の予算でC-CATにデータを送るための追加の電子カルテのページを発注して作成をお願いしています。そのプロトタイプができていますので、これはやがて中核拠点の電子カルテに実装されて、比較的簡単な作業で中核拠点病院から臨床情報がC-CATに送られてくることになります。C-CATには、臨床情報と配列情報が、がんゲノム情報レポジトリーというマスターデータベースにたまることになります。日本で皆保険で行われていきますから、やがて10万人を超えて何十万人というデータが集まると思いますので、極めて貴重な日本のリソースでもありますし、いわばがんゲノム台帳のような、極めて貴重な、がんの医療の基盤的なデータベースになると思われます。
C-CATでは、一人一人の患者さんの配列情報と臨床情報をもとに、C-CATの中で知識データベースに照合して、どの変異はどの薬に対応している、あるいはどの変異はどの臨床試験に対応しているという情報をまとめたCKDBレポートを中核拠点に返す予定になっています。
衛生検査所等の検査施設からもコマーシャルな形で検査報告書が出されるのに、C-CATでわざわざ別にCKDBレポートというものをつくる理由ですけれども、現在ではどのような会社がどのようなレベルの検査報告書を中核拠点に返すか、まだわからない状態ですので、どのような病院でゲノム検査を受けても、その方々に一定の質が担保されたレポートを返すことを目的として、C-CATの側でもCKDBレポートを送ることにしています。ただ、将来にわたってこのままの形で行われるかどうかは、まだ現段階では定まっていなくて、日本で普通にコマーシャルなレポートが、どれもハイクオリティーなものが出るようになれば、やがてC-CATとしてはこれを行わなくなる可能性ももちろんあります。
C-CATのもう一つの役割としては、右下の緑の点線に囲まれたところです。これがすごく大事だと思うのですが、患者さんが実際にゲノム検査を受けて遺伝子変異がわかったときに、そこの遺伝子変異情報をもとに薬に到達できる可能性を最大化する。というのがC-CATのデータベースの重要な役割ではないかと思います。ここに書いてあるとおり、中核拠点病院、連携病院、製薬会社あるいは関係省庁とともに、日本において利用可能な薬剤の最大化に貢献したいと思います。
先ほど来何回も説明されていますけれども、例えば条件付き早期承認、あるいは保険外併用療養などを拠点に限って比較的ハードルを下げて行うなどの方法で、患者さんがアクセスできる薬の数を最大化するために、このデータベースを使ってもらいたいと考えています。
もう一つの役割は、右側の紫の点線で囲まれたところです。C-CATのデータベースには何十万人もの情報がたまってきますので、それを用いた新たな治療法の発見、治療標的の同定、あるいは診断法の開発を行っていきたいと思います。これはC-CAT自体が行うのではなく、日本中のアカデミアあるいは企業もそれに含めて、適正なルールのもとに利活用を促進して、C-CATのデータベースを使って新しい薬、新しいバイオマーカーを開発してもらいたいと考えています。ここには臨床情報がありましたので、例えばある変異があって、あるお薬を使うときに、もう一個の遺伝子に変異があると、その薬が効きにくいというような解析も実際に可能になるわけです。したがって、このデータベースを使ってそのような開発研究もやってもらいたいと考えています。
スライド4です。がんゲノム情報管理センターの役割としては、1番は、がんゲノム診断の質の精度管理、それから質の向上のために役立ててもらいたいと思っています。日本のセントラルな知識データベースをつくることによって、全ての患者さんが一定の品質のレポートを受け取ることができるということも大事だと思います。また、その集計データに基づくがんゲノム医療の国民への説明や行政等への報告・政策等の提言も行いたいと考えています。
2番目として、情報の共有。ゲノム中核拠点病院等の間で、がんゲノム情報レポジトリーデータベースの情報を適切な取り決めのもとに共有して、よりよい保険医療に活用していただきたいと思います。
3番目として、開発研究・臨床試験の促進であります。これは先ほど申しましたように、保険外併用療養や条件付き早期承認というような形で、日本において利用可能な薬剤の最大化に貢献したいと考えています。せっかく中核拠点と連携病院とC-CATというネットワークができるわけですから、それを使っていただいて、少しでも多くの患者さんが薬にたどり着けるような形にしたいと考えています。それから、企業を含む創薬や個別化医療開発への利活用も積極的に行っていきたいと思います。
それから4番目として、がんの全ゲノム解析についても、何万人というスケールで行えるのか、その検証研究も含めて実用化に向けた検討や、さらには人材育成も行ってまいりたいと思います。
スライド5です。がんゲノム医療推進コンソーシアムが支える、日本人に最適な医療と日本発のゲノム創薬。これは先ほどの図を別の見方で見たものですけれども、遺伝子変異の意味づけを海外の検査事業者や海外のデータベース、文献だけに頼ると、本当に日本人にとって有用な情報が不足してまいります。そこで、それを皆保険でデータを集めるということを行うことによって、C-CATに10万人を超えるような膨大ながんの日本人のゲノム情報が集約されます。そこでC-CATにはゲノム情報と実地臨床のデータ、さらに臨床試験のデータを集約して、国民へのゲノム医療の提供に役立ててもらいたいと考えます。
こうして集まったデータは、そこに赤字で書いてありますが、日本におけるがんの保険医療に必須の基盤情報になると思われます。日本人のどのがんはどのような変異が多いのか、あるいは、どれとどれの遺伝子変異の組み合わせが多いのかということも簡単にわかりますし、例えば新規分子標的薬を認可する際の医療経済予測などもC-CATのデータを使えば可能になります。あるいは日本人における遺伝性腫瘍がどれぐらいの頻度であるのかということも、ジャームラインの遺伝子パネルを使うことによって、頻度予測などもできるようになります。こうして、さまざまな形で利用可能な、世界に類を見ないがん患者さんのゲノム情報と臨床情報のデータベースが国のものとしてできることになります。
さらに言うと、このようなデータベースがある国は、海外の製薬会社が抗がん剤の分子標的薬をつくった際に、治験を日本に誘導することになるのではないかと我々は期待しています。日本人がん患者さんに最適化されたゲノム医療の提供及び日本人のデータに基づく、このデータベースを使った創薬をぜひ行っていただきたいと考えています。
C-CATは衛生検査所や検査会社からデータを送っていただこうと思っているのですけれども、そのデータとしては、FASTQというファイルとVCFというファイルを送っていただこうと考えています。以下、ちょっと専門的になるのですが、その説明をさせていただきます。
スライド6をごらんください。FASTQファイルというのは次世代シークエンサーから出た、もともとの元配列データそのものです。それをヒトのゲノムリファレンス配列に当てて、どこに変異があるかを計測したのがBAMファイルになります。BAMファイルからその変異は実際にはどのような遺伝子のどこの場所に相当して、それはアミノ酸を何から何に置換するかというような情報に変換したのが最終的なVCFファイル、Variant Call Formatというものになります。もともとのFASTQファイルはバージョンも特に変わらず同じデータですが、BAMファイルやVCFファイルはいろいろなバージョンがあります。
例えば同じ患者さんの配列をシークエンスしてFASTQは同じであっても、最新のヒトゲノム配列hg38に当ててつくったBAMファイルと、1つ前のバージョンのゲノム配列に当ててつくったBAMファイルは異なってきますので、我々としては、もとのFASTQファイルを集めたいと考えています。それは今言った理由だけではなくて、各衛生検査所あるいは検査会社で出したVCFファイルに基づいて薬のひもづけを行ってレポートをつくるのですが、皆様が考えているよりもゲノム解析の技術自体がまだまだ発展途上の技術です。右下に丸が重なっているような図がありますが、遺伝子変異をゲノムの情報からコールするもの、Callerと呼ばれているのですけれども、コンピューターのアルゴリズムですね。代表的なものが4つそこに書かれているのですが、同じ患者さんから4つのVariant Callerでコールするときに、どれくらい共通にコールできるかということをあらわしています。驚くべきことに、代表的な4つのプログラムでコールしたうち、全てに共通している変異はわずか2割だったのです。現在のゲノム技術でも、これぐらい不一致なのです。
技術は進歩していきますから、今から1年後になると、変異をコールするテクノロジーもさらに進歩します。もとのFASTQデータを持っていれば、それで再解析することができて、日本人のがんゲノム変異の台帳のバージョンアップを常にすることができるのです。ところがVCFファイルだけをもらっていると、その段階でのテクノロジーでコールした変異情報だけにとどまっていて、後になればなるほど、実は違っていたということがわかってきますので、後から再解析を可能にするためには、もともとの元配列データ、FASTQをもらう必要があります。
したがって、C-CATとしては、VCFファイルとFASTQをもらう予定です。VCFファイルのほうから検査会社が返すレポートと同じ遺伝子変異情報に基づいてCKDBレポートをつくりますから、遺伝子変異の情報はC-CATからのレポートも衛生検査所からのレポートも同じものになります。もしも違うとしたら、それにひもづく臨床試験の情報などが、もしかしたらC-CATはアップデートした情報がつくかもしれないと我々は考えています。患者さんにすぐにレポートを返すことが治療介入には必要ですから、VCFをもらって、それに基づいてレポートをつくって、速やかに患者さんに返します。
一方で、FASTQはC-CATの中に蓄えておいて、定期的に新しいコンピューターのアルゴリズムができましたら、それで再解析をして、日本人のがんのゲノム情報、レポジトリーをより完成したものに更新していくというように役立てたいと考えます。
スライド7は、現在の世界のゲノム医療の状況をあらわしています。先ほど申しましたように、BAMファイルも違うし、バージョンが幾つもあるし、VCFもたくさんバージョンがあります。日本人がいろいろな検査会社に送ると、その検査会社がそのときの彼らが使っているVCFのバージョンでその結果をレポートして、それが個々のデータベースにたまっていくという形で、日本人自体のゲノム情報を、この形だと日本が有効に利活用できないのです。
スライド8ですが、C-CATの構想としては、当面は検査会社によるVCFをもとにCKDBレポートをつくりたいと思います。これは速やかに中核拠点に返すことを考えています。なお、逐次、進化したプログラムによりFASTQから全データ再解析を定期的に行って、そのデータを保険医療に役立てる。いわばがんゲノム白書のような形でレポートをつくりたいと考えています。将来的にはプログラムが本当に進化して、例えば特定の検査会社は特定の遺伝子の配列のコールがうまくできないということが明らかになった場合には、例えばその検査会社に情報を提供して、例えばCallerの改善などにも役立ててもらいたい。そういう形で保険診療としてのゲノム医療の質の担保を行いたいと考えています。
スライド9をごらんください。がんゲノム情報管理センター、C-CATの現在の組織図があります。後ほど齊藤構成員からお話があるかもしれませんが、C-CATと各ゲノム医療中核拠点病院との間で来年の保険収載に向けた課題を設定して、それを解決するためのワーキンググループをつくっていて、それに対応する各室をC-CATの中に持っています。
スライド10をごらんください。がんゲノム情報管理センターの準備状況です。現在、このような形で準備を進めていて、ことしの終わりにC-CATの試運転を開始して、できれば年明けに国立がん研究センターの中で実際のデータのやりとりに問題がないかどうかを行って、春以降に実際のゲノム医療中核等にデータを提供したいと考えています。
最後にスライド11をごらんください。ゲノム医療に用いる遺伝子解析の手法の検討です。現在、日本で先進医療が走っているのは、がん遺伝子パネル検査解析というものです。これは、がんに関連した遺伝子、100~500種類ぐらいの遺伝子を一度に解析するようなキットでありまして、通称がん遺伝子パネルと呼ばれます。保険医療としてゲノム解析を行う患者さんはパネル検査を受けた結果をもって薬の治療をする患者さんですから、その多くは外科手術の適応にならない人になります。実際には根治的外科手術ができればパネル検査をやらなくていいわけで、パネル検査をやるというのは外科手術だけで根治できないので、腫瘍のゲノムプロファイルを調べて化学療法、薬を選ぶという患者さん検査対象になるわけです。そのような患者さんの場合には、多くは手術を受けられないために、解析に用いる検体が病理診断のために得た針生検など、バイオプシーの検体が解析の試料になります。外科手術ではなく病理診断のための生検からつくった、専門的な用語で言うとホルマリン固定パラフィン包埋検体(FFPE)というものですけれども、その検体を解析に使うことになります。FFPEの検体は、これはちょっと専門的になるのですが、ホルマリンで処理しますので、DNAやRNAが断片化して、150塩基対ぐらいの長さに断片化されてしまいます。しかも、ホルマリンによってCからTに置換するエラーがすごく起きますので、患者さんに信頼性よく、こういう遺伝子のこの変異がありますよということを責任を持って報告するためには、非常に高い重複度、つまり同じ箇所を何百回も読んだようなデータである必要があります。最低でも×300、普通は×500ぐらいの重複度で調べないと、患者さんへ返す責任がなかなか持てないのが現状です。そのような高い重複度で読むためには、やはり全ゲノムを行うというのはちょっと現実的ではなくて、費用の面からも、それからさらにコンピューターのリソースの面からいっても、今すぐには現実的ではなくて、とりあえず薬を選択するという目的においては、がん遺伝子パネルの解析がゲノム医療の普及には当座は適していると思います。
長所としては比較的安価ですし、大型のコンピューター環境が不要です。短所としては、新しいがん関連遺伝子の発見はこれでは難しいかもしれません。ただ、遺伝子変異の組み合わせ等が薬の選択に影響する場合は、この遺伝子パネルでも数多くのデータがたまってくれば明らかになると思いますけれども、がん遺伝子パネル解析に載っていない遺伝子の変異が新しいがんの治療標的になるようなことは、これだけでは見つかりません。したがって、ゲノム医療としてはがん遺伝子パネル解析を行うのが当座はベストチョイスだと思うのですけれども、かといって、それだけではやはり片手落ちで、全ゲノム検査を用いた新しいがんの治療標的の発見やバイオマーカー探索もやっていく必要があると思います。
せっかくこういうゲノム医療中核拠点病院、連携病院、それからC-CATというネットワークをつくったのですし、そこで臨床データを簡単に集めるようなフレームワークをつくったのですから、そこでぜひ、全ゲノム解析をやっていきたいと思います。全ゲノム解析にはホルマリン検体は不適切で、やはり新鮮凍結検体、つまり外科手術でとったような検体が全ゲノム解析には向いています。新鮮凍結検体は全ゲノム解析に適した良質なゲノムDNAが得られますし、もともと昨年のコンソーシアム懇談会のレポートに、がんゲノム医療中核拠点病院の要件に新鮮凍結検体の保存体制があること、ということが明記されていますので、そのシステムを使って全ゲノム検査を行い、もちろんC-CATはできませんので、アカデミアに広くそのデータを活用してもらい、治療薬への開発やバイオマーカーの探索をしてもらいたいと思っています。
長所としては、新しいがん関連ゲノム異常の同定が可能なことがあります。ぜひ、この同定を日本から行って、我が国の知財にすることも大事だと思います。C-CATの臨床情報収集システムを使って解析することで、海外に比べて圧倒的なアドバンテージが得られます。短所としては、もちろんコストがかかりますし、それから全ゲノム解析を可能にする大型のコンピューター環境が必要でしょうし、日本人のがん患者さんの医療情報がそのまま入りますので、クラウドへの移行、それもセキュアなクラウドへの移行の検討が必要だと思います。これは今のC-CATでも、それに向けた準備を行っているところです。
私からは以上です。
○中釜議長 ありがとうございました。
続きまして、資料3の御説明を、がんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議の議長である齊藤構成員よりお願いいたします。
○齊藤構成員 齊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
ここまでに佐々木課長あるいは間野先生から、既に御紹介がございましたが、資料3の下のほうをごらんいただくとわかりますけれども、がんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議では、実務者から成るワーキング・グループをつくりまして、そこで議論を深めてきております。
インフォームドコンセント・情報利活用WGあるいは患者情報登録WG等、5つのワーキングでございます。
本日はこれらのワーキングの検討課題や進捗状況について、連絡会議の事務局を務めまして、今回は参考人として御出席いただいております吉田先生から御報告をさせていただきます。
お願いいたします。
○吉田参考人 それでは、事務局から資料3の御説明をいたします。資料の説明が続いてお疲れかと思いますが、これが最後の資料です。
3ページをごらんください。これが1のインフォームドコンセント・情報利活用WGの構成員です。座長はコンソーシアム運営会議のメンバーでもある武藤香織先生であります。
スライド4に、インフォームドコンセントWGの検討課題を載せています。左側、論点と書いてあるところをごらんください。インフォームドコンセントWGでは、どのような共通性のあるインフォームドコンセントを行うか。
それから、患者さんへの説明を全国11カ所の中核拠点、100カ所の連携病院である程度整合性のとれた説明をしなくてはいけませんので、その標準作業手順書。
それから二次的所見。これは個別化治療のためのがんゲノム医療にとっては一次的な目的が患者さんにとって今抱えているがんの治療薬、治療法を見つけることですけれども、二次的に、例えば遺伝性のある遺伝情報のほうがわかることもあります。そういった二次的所見をどのように取り扱うか、どのように事前に説明し、それから見つかった場合にはそれを遺伝カウンセリングなどを通して患者さんにどう伝えていくか。こういった取り扱いのフローを決めるということがあります。
それから4つ目がデータ利活用。これが先ほどの間野先生の、このコンソーシアム構想の大きな2つの目的で、医療・診療と研究。その2つ目の研究のほうで、これについては別途、同意が得られた患者さんについては適切な方法で個別化医療や創薬のためにデータを利活用する。そのあたりの説明同意などのプロセスを検討しております。
右側に進捗状況がありますが、このワーキング・グループも順調に立ち上がって、既にウエブ会議などを通して検討を進め、さらにアンケートなどもとりながら、右下2つ目の○にありますように、インフォームドコンセント基本方針(案)というものを取りまとめております。これが本日、ワーキング・グループから上げて御検討いただきたい2つのポイントのうちの1つですので、ちょっと詳しく御説明します。
スライド5をごらんください。そのためには、そもそもコンソーシアムの主な目標、役目、かつコンソーシアムの中心にあって、今回、我が国の医療が初めて先例のない仕組みとして設けた、がんゲノム情報管理センター、C-CATがどのようなことをするのかということを、もう一度見直してから、インフォームドコンセントの基本方針を議論しました。
スライド5にあるのが主な業務です。先ほど間野先生が言われたことと同じですが、1)の医療支援業務と2)の研究支援業務に分かれております。
1)のほうは、例えば3つ目にありますようにゲノム検査の品質管理と向上、これはCKDB、がんゲノム知識データベースの更新も含むわけですが、こういったものは研究ではなく保険医療のためのものであると位置づけております。したがって、保険診療としての検査を受けていただくためには、これらは込みで必要な同意をしていただく内容となります。
2)のほうの、研究支援業務。これは別途同意が得られた方のデータを、例えば企業も含めた創薬個別化医療開発の研究に使っていただくためですけれども、そのために適切な使い方の審査を行う必要があるわけですが、その審査の事務局機能。ここに審査とだけ書いてありますが、C-CATとしては、審査の事務局機能を行うなどの機能があります。
1)と2)に大きく分けて考えますと、その下、スライド6をごらんください。これは本日、御検討いただきたい点なので、ちょっと読み上げさせていただきます。まず、1)は、保険診療としてのゲノム検査実施の説明・同意に含める事項ということです。例えば内視鏡検査をして生検を行うとか、あるいは造影剤を用いてCTを行うとか、そういう、検査であってもある程度侵襲性を伴うものについては、日常診療でも説明・同意を文書でとっているわけですけれども、それと同じような形で、保険診療の一部としてゲノム検査を受ける場合には、ゲノム情報、診療情報をC-CATに、がんゲノム情報管理センターに登録することになります。
もう一つは、がん登録。院内がん登録を行っている診療連携拠点病院から構成されていますので、がん登録の情報も非常に貴重な情報がキュレーションされた形で集まっていますので、これと突合していく。ただ、これはまた別途、法律で決められて行われているものですので、そのがん登録に関しては、法令を遵守して実施していくことになります。
中核病院・連携病院間で診療にかかわる患者さんの情報を共有すること。これが保険診療の一部として組み込まれています。例えば先ほどありましたように、エキスパートパネルというところでがんゲノム検査の結果、もとの結果は塩基配列の情報なのですが、これを医療に使える意味のある情報に当てはめていく。これはなかなか機械的にはいかない部分があって、多職種から成るさまざまな分野のエキスパートの合議で決まるわけですけれども、それはいわば症例検討会に相当するようなものです。症例検討会では当然ながら、患者さんのさまざまな臨床情報を、医師などが共有して議論する必要がありますので、そのために共有が必要です。
それからもう一つは、このような新しい変異が見つかった、外国のデータベースには載っていない、日本の中核連携病院のネットワークの中で同じような変異を経験した人はいないかと。そこでは、どのような治療が行われて、どのような効果や副作用があったのか。そういったことをお互いに検索し合えるような形でも情報共有が必要です。これらは全て目の前の患者さんのためですので、保険診療としての共有になり、そのためのC-CATへの登録となります。
それから、質問。これは意思の確認ですが、先ほど言いましたように、二次的な目的として、例えば遺伝性腫瘍の原因遺伝子が見つかる。そういったことも、ゲノム検査ではあり得ますので、そういう場合には、今のがんの治療という一次的な目的には直接必要はないけれども、二次的な目的として、そういう健康にとって重要な情報がわかったら、それを知りたいか知りたくないか。これは知ることによって、予防に役立たせるという大きな意味もありますけれども、一方では、知ることによる、さまざまなこと、差別の可能性や、知ってもやれることとしてそれほど強力な方法がないがんもありますので、そういったことを勘案して決めていくということで、検査前の時点での希望、お考えを聞いております。
2)研究への利活用に対する同意。これは、海外も含めてアカデミアや企業に二次的に利活用していただく。最終的には日本の保険診療の向上に役立たせるわけですが、こういう研究利活用に関する同意は、これは保険診療の同意とはまた別に、いわゆるオプトインでとっていくことを想定しております。
また、企業の製造販売承認申請は、いわゆる研究とは違った文脈として使われる可能性があるということも明記しておく必要があるだろうと。
これが本日、ワーキング・グループの中から御議論いただきたい、インフォームドコンセントの基本方針、基本骨格はこれでよろしいかということです。
スライド7は工程表です。先ほど佐々木課長から説明のあった工程表の一部を抜粋しておりますけれども、ICWG、インフォームドコンセントのワーキング・グループでは、まず、共通のインフォームドコンセントフォームに取り組み、その後、二次的所見などに進んでいくというロードマップです。
スライド8は、患者情報登録WG、レポジトリーのワーキング・グループで、構成員はこのようになっております。
スライド9は患者登録WGの検討事項です。左側の論点にありますように、まず、どのようなデータを集めるのか。臨床情報の収集項目を確定し、それからゲノムデータの標準化など、さまざまなデータの転送のロジスティクスを検討しています。
スライド10は、そのロジスティクスで、これは先ほどの間野先生の資料2の8枚目のもとになった、もう少し技術的なスライドですので割愛いたします。
スライド11は、先ほどのインフォームドコンセントWGと同じフォーマットですが、患者情報登録WGのロードマップとしては、まず、臨床情報項目の合意に取り組みます。それからIDの発行システム。これが非常に難しい問題を抱えています。多くの病院で、かつ長期にフォローアップをしなくてはいけない。その際の名寄せの問題や、検体についている番号と臨床情報の突合など、さまざまな問題がありますので、これは国全体で進んでいる医療とIDの議論などもにらみながら進めていきたいと考えております。
3つ目のワーキング・グループはエキスパートパネル標準化WGで、構成員はスライド12にあるとおりです。
スライド13はエキスパートパネルWGの検討事項で、論点が3つ挙がっております。
まず、エビデンスレベル分類の標準化です。エビデンスレベル分類とは何かということですが、簡単に言いますと、見つかった変異とそれから推奨される治療薬との結びつきの証拠、エビデンスの確からしさということです。この変異であれば確実にこの薬がいいだろうという場合もあれば、この変異に関しては論文でマウスの基礎研究レベルのデータはあるけれどもというような変異など、さまざまな変異がありますので、そのエビデンスを体系的に分類する方法が複数考案されており、日本でもがん関連の3学会からガイダンスが出ております。そういったものを参照しながら、このコンソーシアムで共通のエビデンスレベルの分類を決めていく。
それに基づいてエキスパートパネルというものが行われます。エキスパートパネルについては、エビデンスレベル分類の標準化と書いてあるところの右側の一番大きなセルの2つ目のところに書いてあるのですが、いわゆるゲノム解析結果に対する分析的妥当性・臨床的妥当性・臨床的有用性といったことを多職種、医師から遺伝カウンセラー、病理、それから生命倫理の専門家、インフォマティシャンなど、さまざまな職種が合議するエキスパートパネルを持つことが中核拠点病院の承認要件になっていますので、そこで行うエキスパートパネルについて、ある程度整合性のある標準化をしていく。そういた作業になります。
一番下にあるCKDBの構築とキュレーションというのは、これはCKDB、がん知識データベースは単に海外の論文の文献などではなく、日本で行われている臨床試験の情報をタイムリーに入れていく必要があるわけですが、これについては、なかなか臨床の専門家でないとわからないところもありますので、そういったところを専門家のチームによってチェックする、構成する、そういったことを考えています。
スライド14は、その工程表です。
スライド15をごらんください。これは4つ目のワーキング・グループ、中核・連携病院整備運営WGです。ホスピタル・ワーキング・グループ、すなわちHPWGとなっておりまして、その構成員をここにお示ししております。
スライド16は、その主な論点となります。HPWGについては、まず、具体的検討事項の青字で書いてあるところをごらんください。今回、中核拠点病院が11カ所指定されて、それぞれの病院が指名する連携病院が合計100カ所公開されているわけですが、この100カ所の連携病院も含めた情報交換が、なかなか全体としてはまだできていなくて、各中核病院ごとに行われ始めているところだと思います。その中で、さまざまな問題が出てきますので、中核病院と連携病院の間の取り決めや運営に関する事項についての一定の共通化、調整、合意といったものが必要だと思いますので、そこを一般的につかさどるワーキング・グループです。ほかのワーキング・グループが取り組む課題を除くとあるように、残っている課題を全て引き受けてくれるようなところもあります。
そこで、その下の拠点内・連携間ロジスティクスの検討とありますように、中核病院と連携病院とがんゲノム情報管理センター、C−CATが、どこをどのように分担して、どのように連絡をしていくか、こういったことを行います。
その下に書いてある院内ゲノム検査の品質保証に関しては、特にゲノム検査の品質で一番最初に重要なのが、先ほど間野先生の最後の御説明にもありましたように、実は検体の品質です。病理検体の取り扱い、例えばホルマリンの固定の仕方など、そういったことから標準化をする必要があるということで、そこに取り組む。それから人材育成に関しても、このHPWGが中心になって関係学会等の調整を行うこととなっております。
スライド17は、そのロードマップです。
最後、5つ目のワーキング・グループがスライド18の治験薬アクセス確保WGです。構成員はごらんのとおりです。
スライド19をごらんください。DDWGのミッションとして、青字の部分をごらんいただきたいのですが、個別化治療のためのがんゲノム医療では、先ほど佐々木課長も言われましたように、出口である治療薬にいかに患者さんが到達できるかが非常に重要なのですけれども、これが同時に最大の隘路ともなっております。どうしても未承認薬や適応外使用といったものが必要になりますので、いかにそれを促進・加速化するかということを調整し、あるいは行政、規制当局とも交渉をし提言をしていく。こういったチームになります。
スライド20は、先ほどの佐々木課長の資料にもあったものですが、これがもう一つ、今回の運営会議の中で議論して御検討いただきたい点でしたので、このスライドについても少し具体的に説明をさせていただきます。
まず、上の企業による抗がん剤開発という青地の矢印が左上のほうにあります。その開発、臨床試験が行われるわけですが、がんゲノム医療に関するものについては、臨床研究中核病院でもある11施設などで、施設限定で早期承認を行っていく。そのためにデータを集めてC−CATに安全性や有効性などの情報を蓄積していく。そこで大丈夫ということになったら限定を解除して、右のほうですけれども、広くゲノム医療として全国に展開していく。そのような流れです。
一方、企業による抗がん剤開発、左上の青の矢印の左のほうに、黄色い矢印として、データの活用というものがあります。このC−CATに集められたリアルワールドデータ、日常診療の保険診療のデータは、この創薬の初めの部分にも非常に役に立つわけです。これが間野先生が言われたように、例えば日本人ではどのようながんに、どのような変異が多いのか。あるいは、どのような変異があると薬が効かないのか。そのようなリアルワールドデータが集まると、それが新たな創薬テーマになるだろうと。そういったものに、さらにこの左の真ん中ぐらいに文献とか基礎研究とかとありますけれども、そういったプレクリニカルな非臨床試験などを重ねて、また新たな臨床試験が始まる。臨床試験が施設限定早期承認を通していち早く均てん化が進み、またそのデータがリアルワールドデータとしてC−CATに集まる。こういった循環を繰り返すような仕組みを考えています。そこではファーマコビジランス、いわゆる医薬品の安全情報、安全監視などが非常に重要ですので、そういうことができる施設として中核病院、連携病院が期待されているということです。
スライド21は、そのワーキング・グループの工程表です。
スライド22は、工程表部分だけを5つのワーキング・グループについて再掲したものです。
最後、スライド23をごらんください。これもワーキング・グループの進捗状況を一覧したものですが、どのワーキング・グループも順調に立ち上がって、当初取り組むべき論点を確定し、個別ワーキング・グループの中では、先ほどのインフォームドコンセントの基本方針案ができてきたということ。それから、一番下の、今御説明いたしました、がんゲノム中核拠点病院等における保険外併用療養のあり方についての提案がまとまったところであります。
以上です。
○中釜議長 ありがとうございました。
○健康局がん・疾病対策課長 説明の途中で来られた2名の構成員を御紹介したいと思います。
山口俊晴構成員でございます。
○山口構成員 山口です。よろしくお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 渡部眞也構成員でございます。
○渡部構成員 よろしくお願いいたします。
○中釜議長 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
資料1から資料3、かなり膨大な資料でありましたが、ただいまご説明をいただきました。全体の仕組み、実施体制、あるいはこれからの方向性について御理解いただけたかと思います。今の説明及び説明資料をもとに、私のほうで論点を整理、確認させていただきたいと思います。
最初に厚労省から説明があった資料1のスライド30、ここに論点が整理されているかと思います。「がんゲノム医療推進に向けた取組(要点)」と書かれています。繰り返しになりますが、この資料のスライド30の1と書いてあるところ、パネル検査の実用化のところですが、遺伝子パネル検査等に関しては、厚労省が指定するがんゲノム医療中核拠点病院等の一定の要件を満たす医療機関において提供すること、この点を確認いただくことが要点の一つかと考えます。
それから、次の横に書いてある2番、ゲノム情報等の集約ですが、これも日本人に最適化されたゲノム医療を提供し、創薬等の開発につなげる。今まで資料2、資料3で説明がありましたように、そのために、さらにそれを保険診療下で行う遺伝子パネル検査等のゲノム情報あるいは臨床情報の、ゲノム情報管理センターへの登録を義務づけること。これまでの話の中で、情報をきちんとセキュアな状態で収集・管理することが、その後のゲノム情報の利活用に非常に重要であることが御理解いただけると思います。また、登録するゲノム情報に関しては、資料2に挙げられているFASTQファイルあるいはVCFファイル、あるいはメタデータといったものが想定されていることかと思います。これが第2点目の論点です。
3点目は、3番に書いてあるゲノム検査に基づく治療の推進です。これも繰り返しますが、ゲノム情報に関しては遺伝子パネル検査はあくまで検査であるということ。そこで収集されるデータの蓄積が非常に重要であり、そこに臨床的な意義づけをすることが非常に重要であるので、ゲノム検査に基づく治験を推進することが一つの大きな目標になっているかと思います。がんゲノム医療中核拠点病院等における医薬品の医師主導治験あるいは先進医療等の推進や申請に応じた条件付き早期承認という話がありましたが、その活用による医薬品の適応拡大を図ることが非常に重要かと思います。今、説明があった資料3の20ページ目の、治験薬アクセス確保WGが検討されている、遺伝子変異に基づく創薬開発のイメージが非常に重要かと思いますので、御参考にしてください。
それから4つ目のポイントは、さらなるゲノム医療の発展と書かれています。これは間野構成員から説明がありましたが、まずはコンピューター解析のキャパシティーやデータの膨大さからいって、ある特定の遺伝子についてパネル検査から進めるわけですが、将来的にさらに新しい知見を得るためには、全ゲノムへの移行の検討が非常に重要ということです。全ゲノム解析等の研究開発を推進することも、この医療の推進とともに、将来のゲノム医療を見据えたこういう点は非常に重要かと思います。
さらに、この4つのポイントにつけ加えまして、ここには示されていませんが、先ほど吉田構成員が御説明されました、資料3のスライド6でしょうか。その中でICの問題が説明されていました。パネル検査等のインフォームドコンセントに関しては、がんゲノム医療を推進する上で、患者の個人情報にかかわる非常に重要な部分であると考えております。資料3にありますように、現在、IC・情報利活用WGで検討されている点、6ページ目の共通ICの問題、その基本方針等が示されておりますが、このポイントも非常に重要な論点かと思います。
以上、5つのポイントについて、まず、これらの確認事項について構成員の方々に議論をいただき、合意を得たいと思います。これらの点について、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。
○天野構成員 御説明いただきまして、ありがとうございました。
いわゆる希少がん、難治がんの患者にとっては非常に期待の大きいがんゲノム医療ですが、一方で課題もまだある中での推進と理解しておりますので、患者の立場から3点、意見を申し上げたいと思います。
先ほど御説明いただいた資料1のスライド30の3、ゲノム検査に基づく治療の推進の部分についてでございます。既にNCCオンコパネルなどによる先進医療が一部開始されている状況があるわけですが、その先進医療において、例えば患者説明文書においては、治療選択に役立つ等の可能性がある遺伝子変異は、がん種にもよりますが約半数の患者さんであるということが説明されていて、加えてその患者さんのうち約20%の方で結果に基づいた治療薬の投与を行うことが出来る可能性があるという趣旨の説明が記載されていると思います。これの意味するところは、現状のがんゲノム医療においては、臨床研究において遺伝子変異に合う薬剤投与ができる患者さんの割合はおおむね1割程度であるということです。
このように、まだまだ限界がある中でがんゲノム医療を推進しているということについては、先進医療の実施、また今後のがんゲノム医療の研究の推進に伴い、より多くの患者さんに今後は適応拡大などが進むことが期待されるとはいえ、患者さんが過剰な期待をもつことなく、そういった限界のある状況にあるということを患者さんに十分理解していただいた上で、このがんゲノム医療を推進していただくことが肝要と考えますので、先ほど資料3で御説明いただいた、インフォームドコンセント・情報利活用WGにおいても、患者の立場の方からの意見なども十分に尊重し聴きつつ、こういったインフォームドコンセントを適切に行いながら先進医療を進めていただきたいというのが1点目でございます。
2点目は、同じく治療の推進の部分でございますが、先ほど来、御説明いただいているように、いわゆる臓器横断的な承認ということについて、ぜひ、改めて強力に推進していただきたいと考えております。このスキームの中で、バイオマーカー等で陽性となった遺伝子変異を対象とした薬剤が、例えば適応外である、既にほかのがんで使われている場合、その患者さんが使えないということが当然可能性としてあるわけで、それに対して臨床試験等が提案されるものと理解してはおりますが、現状では十分説明していただいたとしても、がんゲノム難民が生まれかねないような状況も一部あると理解しておりますので、こういった臓器横断的な承認を強力に推進していただくことについては、改めて患者の立場からも強くお願いしたいと考えております。
3点目でございますが、がんゲノム医療の進展に伴い、いわゆる二次的所見であるとか、それに伴い遺伝性腫瘍等であるということがわかる患者さんも一定数出てくると理解しております。若干このがんゲノム医療推進コンソーシアムの議論から外れるかもしれませんが、あえて申し上げますと、やはりこういった遺伝性腫瘍の患者さん等に対する医療機関等での適切な説明や配慮がなされるための体制整備のみならず、法的な、保護というものについても今後、中長期的にはがんゲノム医療の発展にはぜひ進めていただきたいと考えております。国会のほうでも超党派議連等において、がんゲノム医療に関する議論が行われているとは聞き及んでおりますが、例えば米国での、いわゆるGINA法にもありますように、本人の遺伝子検査結果や家族の検査結果も含めた病歴等に関して法的な保護の対象としていただく。そして雇用分野や医療保険等の保険分野において患者さんや、あとは遺伝子変異陽性未発症者も含めてとなりますが、そういった方々が差別を受けないための法制度の整備についても、このがんゲノム医療推進の両輪として、ぜひ、検討いただきたいと考えております。
私からは以上でございます。
○中釜議長 ありがとうございました。
いずれも重要な御指摘かと思います。各ワーキング・グループの中で、項目として挙げられている点ですので、それぞれのワーキング・グループの中で十分に検討していただきたいと思います。
それから、患者の意見を取り入れた共通ICの構想についても、ぜひ、ワーキング・グループの中で検討していただきたいと思います。
ありがとうございました。
そのほか、いかがでしょうか。
○末松構成員 先ほどの資料1のスライド30の4つの論点のうち、2つ目と4つ目について、1つずつ質問をしたいと思います。
順不同ですが、4番のさらなるがんゲノム医療の発展というところについて。先ほどの質問とも重なると思うのですが、吉田参考人から先ほど御説明のあった資料3の6ページについてです。インフォームドコンセントのところですけれども、研究への利活用に対する同意のところは、今、連絡会議等で考えておられるのは、患者さんに対する説明文書を全部統一的に、全部の医療機関で1つの同じ文書で説明するようなことを考えているのか、あるいは基本方針だけ決めて、各医療機関のIRBのゴー/ノーゴーにあわせて文書がばらばらになっていくのか。今、イメージとしてはどちらをお考えになっているのでしょうか。
○中釜議長 吉田参考人、お願いします。
○吉田参考人 両方の可能性を並行して検討しております。いずれの場合でも、共通部分、コア部分があるはずですので、それをまずつくっておりますけれども、もちろん連絡先等、どうしても病院ごとに変えなければいけないところはありますので、共通部分はどこで、かつ、疾患によっても、また、小児だったらまた別なアセントが必要であるとか、そういうバリエーションもありますけれども、共通部分をまずつくろうとはしています。ただ、御質問に対する答えは、まだ両方の可能性が残っているということです。
○末松構成員 よくわかりました。いわゆるセントラルIRBというのは言うは簡単で、実際にはすごく難しいと思います。それは私も理解できます。患者さんのがんの種類や年齢の特性などによってある程度説明文書がヘテロになっていくのは当然だと思うのですが、大学のIRBの判断には施設による不均一性もあるわけです。ぜひ、説明文書は今おっしゃったように、コアの部分をしっかり統一的に進めるよう工夫していただいて、それ以外のところに関しては、がんの種類の特性や年齢など、患者さんのほうのファクターで説明文書がヘテロになるところは、むしろそうあるべきなので、ぜひ、そのような配慮をしていただきたいということで質問しました。
もう一点は、資料1の2の要点のところです。ゲノム情報等の集約というものがありました。資料3の2ページ、がんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議WGというところの表を見ますと、全国から、がんのゲノムに関する情報が中核拠点病院さらには国立がん研究センターに集約される。そして、がんゲノム情報管理センターへの登録が義務づけられるということですけれども、私の質問は、研究開発の関連から、集約した情報が全国の、特にがんゲノム医療中核拠点病院での個々の研究開発にどのように生かせるのかは担保されるのか?つまり、集約したデータを研究開発のために、どの程度広域に複数の機関間で共有できるのかというところについて、御意見をいただきたいと思います。
○中釜議長 重要な御指摘です。間野構成員、お願いいたします。
○間野構成員 中核拠点から自分の施設の患者さんの情報を送っているものに関しては、当然それは直接中核拠点が見られる権利はあると思うのです。そのためのクラウドのサーバーを我々は各拠点用に用意しようと思っています。
ただ、ほかの拠点のデータを見られるかどうかということは、現在、議論しているのですが、まだどちらとも言えません。普通のアカデミアが利用するような条件でMTAを結んで、それを利用できるようにするのか、あるいは拠点同士で契約のようなものを結べば、そこの拠点間では見られるようにするのか。そこは少し難しくて、現在まだ議論中であります。
○末松構成員 ありがとうございます。
○中釜議長 北川雄光構成員、どうぞ。
○北川(雄)構成員 2点御質問させていただきます。
まず、C-CATの機能の点についてお伺いいたします。ゲノム情報をFASTQファイルで集めることでクオリティーの高いデータが集積し、将来、創薬に活用されるということで期待されるのですが、一方で臨床データの集め方とその精度についてお伺いいたします。抗腫瘍薬の奏効度あるいは予後を正確に把握するために臨床データのアップデートをどのようなスケジュールで行うのか、データ監査など臨床データの精度管理の方針についてはどのように考えられていますでしょうか、まず御質問させていただきたいと思います。
○中釜議長 間野構成員、お願いします。
○間野構成員 それも少し難しいのですけれども、臨床試験のような数ですと、ある程度、質の担保ということも技術的に可能で、それもGCPグレードということも可能だと思うのですが、これが10万人を超えるようなレベルになると、質の担保はかなり難しいのではないかと思います。今の段階では、だからこそ、それ専用のページを使って、できるだけプルダウンで選ぶような形で、ミニマムな負荷でもって情報を正確に集めるような形をとっています。それが今の時点では最もいいシステムではないかと思うのですが、将来的に、例えば臨床情報のほうももう少し一緒に入れてきて、例えば全ゲノムになると、その患者さんのがんの情報だけでなく、高血圧があるか、糖尿病があるかといった情報も入ってくる。そこで集めたデータをがんの解析だけに使うのは余りにももったいないことで、それもまた日本の宝ですので、そのときに電子カルテの情報をまたバージョンアップするといったことは可能だと思います。ただ、今の段階で、スタートアップのときには、できるだけ臨床側に負担をかけないで情報を集めていきたいと思っています。
○北川(雄)構成員 もう一点は、将来的な先進医療、保険診療の対象について伺います。先ほど間野先生からご説明がありましたように、当初は当然切除不能進行がんの患者さんで標準治療に反応しなかった方が対象になって先進医療が開始され、その後の保険診療に移行して行くものと理解しています。一方、がんの集学的治療という観点からは、いわゆる術前化学療法や放射線療法の感受性が重要になります。これらを予測していくために切除可能症例を最初からがんのゲノム医療の対象としていくという方向性はあると考えてよろしいでしょうか。
○間野構成員 私が答えるのが適当かどうかわかりませんが、遺伝子パネルの意味はその人の最適な治療法を選ぶということですから、本来は最初から全ての患者さんが受けられることが理想だと思います。ただし、国としてここに割り当てられる予算にもよると思うので、そこは現実的な打開策に落ちついていくと思います。しかし、やがて遺伝子パネル検査も安価になると思いますので、最初からそういう形はちょっと難しいのではないかと思いますが、将来的にはその道は残っているのではないかと思います。これは厚労省のほうから答えていただくのがよろしいかと思いますけれども。
○中釜議長 恐らく登録していたレジストリーデータを使って、そういうことを将来的に検討する可能性も出てくると理解しますが、何か追加で厚労省からございますか。
○健康局がん・疾病対策課長 特にございません。
○中釜議長 ありがとうございました。
そのほか、御質問、御意見はございますか。
○門田構成員 具体的なお話はとてもフォローできていないので、そこはちょっと置いておいて、このコンソーシアムのこれからの進め方に関連してお尋ねします。参考資料3として、懇談会の報告書が出ているのですが、この懇談会の報告書の意義、意味、あるいは効力といいますか、そこはどのようになっているのでしょうか。コンソーシアムがこれを見直すというような立場にあるのかどうかというあたりは、どのように考えたらいいのでしょうか。
○中釜議長 お願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 端的に申し上げますと、昨年6月の参考資料3の報告書をもとにして、これをどう具体的に進めていくかということですので、見直しというよりは参考資料3の報告書をもとにして具体化を進めていくのが、本運営会議での役割としてお願いしたいところです。
○門田構成員 そうすると、この組織は懇談会の下部組織という立場ですね。
○健康局がん・疾病対策課長 形式論で言うと別組織です。
○門田構成員 なぜそういう話をするかというと、例えば今の30ページの話もそうですが、きょうのお話、関係者の皆さんのお話は、必ず保険診療のもとで行うということを非常に強調されるのです。実際にそれができることは非常にいいことだと思うのです。我が国の今の医療財政で、それがどのような状況に動いていって、見込みとして、これから5年先、10年先に、どうなっていくというような見通しでこういう文章になっているのかということを聞かせていただきたい。
○健康局がん・疾病対策課長 もとより参考資料3の報告書をもとにして、例えば資料1で申し上げますと、スライド28をごらんください。このスライド28自体が昨年6月の報告書をもとにして、その後のさらなる進歩を踏まえて工程表を書き直したというか、その工程表をさらにバージョンアップしたものになります。したがって、今の門田構成員の御指摘については、少なくとも我が国の医療の特性を考えると、国民参加型であるということは保険適用を目指して進めていくということになりますので、そのスケジュールを考えると、まずは2020年。スライド28には2021年まで書いていますが、基本的には2020年までのこのスピード感を持った中での工程を進めていく。繰り返しになりますが、参考資料3をより具現化していくための、この運営会議ですし、スケジュール的に言うとスライド28のようなものを考えていますし、保険診療がベースにあるのかということについては、もとより参考資料3の見出しにありますとおり、国民参加型でいくためには、国民に広く行き渡らせるためには、保険診療下で行うことを目指していくという論理構成になります。
○門田構成員 ですから、私も基本的に、保険診療ができるのであれば、それにこしたことはない、それは間違いないです。果たしてそれができるのかどうかということを十分検討しておかなければ、この大きな会としてやっていけないだろうと思うのです。試算されているのだったら、それを示していただいたら、それでいいのですけれども、そのあたりを曖昧にしておいていいのか。先ほども言いましたけれども、がん対策推進協議会で基本計画をやるときに、金の話をしたときに基本計画には金は入らないのだと。基本的な方針だけなのだと言われて、それ以上のことには行かなかったのです。しかし、ここでは、それでは済まないはずだということで質問をします。
○中釜議長 追加でよろしいですか。
○健康局がん・疾病対策課長 1つだけ手短に。御指摘の部分は資料1のスライド28のちょうど真ん中のゲノム検査や医薬品の承認・保険適用に書いていますとおり、もちろん個々のものの承認や、また、それがどれぐらいの点数になるのか、償還価格になるのかということはあるかと思いますが、基本的にはやはり我が国の保険診療の制度下に乗せていくということを前提にしています。逆に言えば、そこから逆算していく。例えばスケジュール的にも2020年から逆算していく。そのためには何が必要かということを御指摘いただきたいと考えております。
○門田構成員 もうこれ以上、水かけ論のようなディスカッションはしませんが、ただ、見直しがあるのかと質問したのは、そこなのです。そういうことがもし必要だと皆さんが思われるのであれば、コンソーシアムのほうから、そういうことも踏まえてディスカッションしていけるのか、していくべきなのかという質問です
○医務技監 門田先生のおっしゃるように、確かに全てのことが技術の精度、質と、それからコストにもかかわると思うのです。このコンソーシアムの背景にある方向性は3つあると私は思っていまして、一つは一日でも早く幅広く、がんゲノムの進歩を患者さんに享受してもらうことだと思います。もう一つは、日本発の、日本に即した技術に立脚した技術をきちんと定着させること。3つ目は、これは恐らく門田先生の論点に当てはまると思いますけれども、全てが何でも公的保険でできるかというと、それはやはり額によって、もしくは被保険者がどのくらい裨益するかによって、それは変わってくると思います。そういう意味では、我々としては最低限ここだけを保険でやるべきだ、もしくは、ここであればいろいろな形を工夫して、民間資金も入れてやるべきだ、というようなことも含めて御議論いただくのがよろしいかと思います。
○中釜議長 恐らくC-CATという仕組みそのものが、今、門田構成員から御指摘のような、どのようながん種、どのような治療が適切かということも踏まえて、きちんとしたエビデンスを構築していきながら、実際にコストの問題もはかっていく。そのような理解かと思います。
葛西オブザーバー、どうぞ。
○葛西オブザーバー 今の話にも関連するのですが、いずれにしても私自身がちょっと気になるのは、がんゲノム治療自体、情報システムのコストがかなりはね上がるというのは、これは世界的に明らかです。
一方、私自身の立場で言いますと、さまざまな保険医療情報のインフラを構築することを調整する立場でございまして、その中で必ず出てくる懸念の一つとしては、患者のレポジトリー情報を保険医療情報や他の、例えば医療・介護など、いろいろな分野でレポジトリーが今、乱立しております。この重複をどこかでできるだけ集約していかないと、結局、保険適用するにしてもコストが非常に上がってくるということを御協力いただければというのが一つです。
それから、次に解析基盤です。きょういただいた資料のC-CATの主な業務。資料3の中にも5ページにあるのですが、疫学的な、例えば医療経済的な有用性分析。これはいろいろな分野で必ず出てまいりまして、私も非常に重要だと思っているのですが、そのときに、医療等IDの御説明が一瞬ありましたけれども、かつ台帳の整備です。マスターですけれども、個人を特定する台帳の整備を間違えると、ここも非常にコストが高くなります。こちらも他の分野でも同じようなことをやっているので、この重複も消していって、できるだけ統一化していきたい。これは私ももちろん協力しなければいけないことだと思っています。
この2点について、できれば協力をいただければということと、それから一方、情報システムが違うので、今後どこかで集中的に御審議いただければと思っているのが、データの質の問題です。これは何かというと、がん登録の場合、御存じのとおり実務者資格がございます。データの質がきちんと確保されないとまずいなと思っていて、例えばアノテーションをつけるのも含めてですけれども、どうやって質を確保していけばいいのかということについて、どこかで御議論いただければというところでございます。
また、きょうは時間がありませんが、どこかで集中的にセキュリティーに関する議論をお願いできればと思っている次第でございます。
○中釜議長 ありがとうございます。重要な御指摘だと思います。
木下構成員、どうぞ。
○木下構成員 今の議論の延長線になるかと思いますけれども、ゲノム情報等の集約に関して、ゲノム解析自体はウエットのコストが下がってきた結果、実装されていると思うのですが、今の御指摘のとおり、また皆さん御存じのとおり、情報解析のコストは実は無視できません。そうしたときに、そのコストの一つの重要な決め手として、何をどこまで解析するかということが非常に重要な観点だと思うのです。今はFASTQとVCFを集めて再解析するというデザインになっているようですが、そうしたときに、例えばコピーナンバーバリエーションを見るときにはFASTQからもう一回マッピングをして、もう一回見る予定なのでしょうか。そういったことを考えると、BAMを集めてしまえばいいのではないかとも思います。この例のように技術的に検討すべき点は多いので、ゲノム情報解析の議論をするワーキングがあって、どこかで集中的に議論できると思います。また、先ほど御指摘のあったセキュリティーに関してもやればいいかと思います。現在のワーキングの構成を見ていると、対応するワーキングがないなという感じがしています。例えば、患者情報登録WGのところで若干ゲノムの標準化のような議論はありましたが、解析の中身に踏み込んだところは違うような感じですし、もう一つはエキスパートパネルの標準化というのも、病院サイドの方が入っていらっしゃるのは当然のこととして、そこに情報解析の人間も入ったほうがいいのではないか。そうすると、どういう解析をしたからこそ、こういうものが見えて、その信頼性はどうなのかという議論ができる。そこの調整をやるような。2つのワーキングにまたがるのか、別のワーキングが必要なのか、そういうことを議論する別のワーキンググループのような場があってもいいのかと思います。
それからもう一つ、データ集約といったときに、どうやってデータを転送するかという事がすごく重要ですが、セキュリティーというのはどこまで行っても切りがないものです。そうしたときに、多分これはほかの構成員の方にというよりは、厚生労働省にお願いできればと思うのですが、医療情報の取り扱いガイドラインにゲノム情報のようなことも含めて、ここまでやれば国としては大丈夫だというガイドラインのようなものを検討いただけると、現場はすごく助かるという気がします。ここまで守ればいいのだということで、コストの見積もりもやりやすくなりますので、ぜひ、そういうことを議論いただければと思いました。
それからもう一つ、先ほどの要点の4つ目についても一言だけ申し上げたいと思います。全ゲノム解析はやはりコスト面でまだどうかなというのが正直なところです。その一方で、見るといいかなと思うのは、抗がん剤の個人差を見るときに、血中濃度の情報があると個人差の情報は、多分、もう少し定量的に議論ができると思うのです。今、抗がん剤の投与といったときに、体重が何キロだから何ミリグラムということが基準で決まっていますけれども、同じ体重の人でも非常にふくよかな人もいれば、身長が高くて同じ体重の人もいたりします。もちろん体重は一番重要なパラメーターではある一方で、もうちょっとそこに、せっかくゲノム解析をするのだから、あわせて血中の薬剤濃度の情報をうまく解析してとっておけば、ゲノム情報とあわせることで、将来の創薬の種になるかなということを感じました。
以上です。
○中釜議長 ありがとうございました。
重要な御指摘をいただきました。最初のファイルの収集のところ、BAM等に関して間野構成員から何かございますか。
○間野構成員 BAMのバージョンが幾つもありますし、マッピングアルゴリズムによって同じバージョンのBAMでもクオリティーが違ってきますので、やはりもとのデータとしてはFASTQを持っていたほうがいいような気がします。
○中釜議長 2点目のデータ収集の際のセキュリティーのガイドライン等について、何か現時点でコメントをいただけますか。
○健康局がん・疾病対策課長 既存のガイドラインもありますし、そもそもどれぐらいのセキュリティーレベルかというのは、先ほど葛西オブザーバーからも御指摘があり、その見合いの部分がありますので、一度論点を整理して、現状はどこまでやれているのか。今後、どう展開していくのか。あとは一昨日、ここの会議室で行われましたが、データヘルス全体として進めているものの中での整合性はどうか。このあたりを整理して、まとめて一つの論点として次回以降、お示ししたいと思います。
○中釜議長 3点目の、薬剤の血中濃度に関しては、少し項目が増えることになるのですが、恐らくサンプルのストレージというところも拠点等に求められているので、それについてレトロスペクティブな解析も可能なような体制を整えるというのは一つあるかなと思いました。
山口構成員、どうぞ。
○山口構成員 先ほどの天野構成員の話と絡んでくるのですが、国民の期待が物すごく大きくて、国民は恐らく有効例は10%ではなくて3割、5割と思っている節があります。しかも自分がある程度はお金を払うということなので、ICワーキングのほうでは、個人情報がどう保護されるとか、そういう難しい話も確かに重要なのですけれども、患者さんにとってこれがどれぐらいいいものかという正確な数字をきちんと最初に明確に、決してポジティブにではなくニュートラルに知らしめるということを、まずやっていただかないと、スタートした途端に「何だ、話が違う」ということになるので、そこのところを臨床家としてはぜひ希望します。
それから、先ほどの門田先生の話ですが、「以上のことを国民皆保険制度のもとで行う」と書いてあります。これはなかなか難しい言葉で、保健医療制度にどんどん取り入れるという意味では正しいと思うのですが、皆保険制度の中の1%のお金を研究に回すとか、そういう議論になると、ちょっと話がおかしくなってくるのではないでしょうか。今、病院なども3%とか4%という利益率でやっていて、中には赤字のところもたくさんある中で、そういう議論はちょっとやめていただきたいと思います。
以上です。
○中釜議長 重要な御指摘だと思います。恐らく期待されるところは、きちんとした有効率を患者さんに伝えるということと、それから、ゲノム情報で層別化することによって、より有効な患者さんを選別できる。そうでない患者さんに投与していたケースを回避できるとか、そのあたりのトータルのコストの計算、コストの考え方は非常に重要かと理解しました。
この点について何か追加でありますか。よろしいですか。
ほかに御質問はございますか。
北川昌伸構成員、どうぞ。
○北川(昌)構成員 病理の北川でございます。まず、初めはパネル検査をFFPEで始めるということだと思うのですが、将来的には全ゲノムに向けて凍結切片、凍結標本を用いた緻密な解析を行うということだと思います。例えば薬剤の感受性や副作用、あるいは予後などを見るには、かなり時間がかかると思いますので、最初の時点でFFPEをとるときに、並行して凍結したものを将来に備えてとっておくということが望まれるのではないかと思っています。特に薬剤の副作用等に関しては、ジャームラインの情報のほうがむしろ重要かもしれないので、そういうところをあらかじめ準備しておいていただければと思います。
○中釜議長 ありがとうございます。
今の御指摘に関して、現時点でよろしいですか。重要な御指摘なので、考慮しながら議論を進めていきたいと思います。
間野構成員、どうぞ。
○間野構成員 ぜひ、そういう形で進めたいと思います。そういう予算をぜひ厚労省に確保してもらいたいと思っています。
○中釜議長 ほかに御質問、御意見はございますか。よろしいでしょうか。
今、多くの構成員から重要な御指摘、改善点、あるいは懸念点、あるいは強化点等について御意見をいただいたと思います。基本的にはおおむね私が論点整理をさせていただいた5つの確認事項について、基本的な方向性としては御了承いただけたと理解します。したがいまして、議長預かりとして全体の取りまとめを一任していただければ、後日、文書の形で取りまとめたものを構成員の皆様に確認いただいて、事務局より公表していただきたいと思いますが、そのような方向でよろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○中釜議長 ありがとうございます。
それでは、本来ならばここで残りの時間を使ってお一人お一人に、一言ずつコメントをいただくつもりだったのですが、活発な御議論をいただいて時間がなくなってしまいました。ぜひとも一言仰りたいという方がありましたら、御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
中山構成員、どうぞ。
○中山構成員 一言だけ申し上げたいと思います。
薬を創る立場から申しますと、やはりゲノム情報は最も重要な基盤になっていくだろうと思います。そして、それは各国間で競争状態にあって、今、アメリカなどではものすごく進んでいます。薬を創る立場としては、日本で薬を創る限り、この日本のインフラを早く作っていただかないと、日本で開発がしにくくなる。あるいは、日本で開発すると新薬開発が遅れてしまうという状況に陥ると思うのです。そういう意味では、やはり国を挙げて、ぜひ、このプラットフォームを作っていただきたいと思います。
長期的に見れば、それが整備されることで、副作用が減って薬効が上がるという、非常に大きなベネフィットが、特に患者さんのためにあると思っています。皆様と協働して、ぜひ、いい新薬を、まだ薬のない患者さんに届けたいということを強く思っていますし、将来、世界で起きることを考えると、現在はスペシフィックな病態に対する適応拡大といったレベルにありますが、いずれ遺伝子によってそれが規定されて、その範囲であればいろいろな病気に使えるとか、いろいろな臓器にも遺伝子判断で使えるというような時代が間もなく来ると強く思っています。ぜひともお力を注いでいただきたい。
それからもう一つは、既にいろいろないいデータベースがあるのですが、IDがないので、それらをつなげることができないという、ものすごく無駄な状況が起きかけています。何とか早く統一されたIDをつくって、国民の大事な情報が無駄に散逸したり重複したりしないように、お力添え、御努力をいただければと強く思っています。
以上です。
○中釜議長 ありがとうございます。
それについては今、厚労省も取り組んでいただいていると理解していますが、ぜひお願いいたします。
○医務技監 最後の点に関しましてはオンライン資格確認のときと同様ですけれども、被保険者番号は今は世帯番号ですけれども、それに枝番号をつけて、個人が同定できるようにして、万が一転職の場合には支払基金と国保中央会が一緒につくるデータベースで必ず照合できるということを、2020年度からは開始できるようにしていますので、それを利用していただければ必ず個人は同定できるということになります。
○中釜議長 ありがとうございます。
他によろしいでしょうか。
時間の関係で御発言いただけなかった構成員の方もいらっしゃいますが、よろしいでしょうか。
それでは、以上をもちまして終了させていただきます。最後に取りまとめて、また皆さんにご覧いただきたいと思います。本日いただいた御意見に関しては事務局で論点ごとに整理していただいて、次回以降、引き続き検討していくこととしたいと思います。
本日の運営会議は以上とさせていただきますが、最後に事務局から連絡事項等がありましたらお願いいたします。
○健康局がん・疾病対策課長 本日は活発に御指摘、御議論をいただき、ありがとうございました。
先ほど中釜議長のお話にありましたとおり、いただいた御意見、御指摘につきましては、まず論点を整理すること。その上で、私どものみならず、ワーキング・グループ等で検討をすること。その上で、次回以降の運営会議では論点を整理し、関連資料を整えた上で、引き続き御審議いただき、合意をいただきたいということを、次回以降、進めてまいりたいと思います。
その次回の日程でございますが、追って調整の上、御連絡さしあげたいと思いますので、お忙しい中、恐縮ですが、また御協力、御指導のほどよろしくお願いいたします。
事務局からは以上です。
○中釜議長 ありがとうございました。
以上をもちまして、本日の運営会議を終了したいと思います。構成員の先生方のスムーズな議事進行に感謝いたします。どうもありがとうございました。

照会先

健康局がん・疾病対策課

03-5253-1111(内線3826)