第4回 国立高度専門医療研究センターの今後の在り方検討会 議事録

日時

平成30年6月29日(金)14時30分~16時30分

場所

都道府県センター 402会議室(東京都千代田平河町2-6-3)

議題

1.国立高度専門医療研究センター(NC)を取り巻く医療政策課題を踏まえたNCの役割
2.これまでのご意見を踏まえたNCの今後の役割について(たたき台)

議事

 

○江口医療経営支援課長補佐
 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第4回「国立高度専門医療研究センターの今後の在り方検討会」を開催いたします。
 構成員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 本日の構成員の皆様の出欠状況を御報告させていただきます。
 本日は、近藤達也構成員、祖父江元座長代理、田島優子構成員、中山讓治構成員、門田守人構成員、山口育子構成員から、御欠席の連絡をいただいております。なお、中山譲治構成員の代理としまして、川原章参考人に本日は御出席をいただいております。また、相澤英孝構成員より、おくれて参加との御連絡をいただいております。また、本田麻由美構成員より、途中、おおむね1時間程度で中座させていただきたいとの御連絡をいただいております。
 あわせて、事務局のほうでございますが、武田医政局長が、公務が押しておりまして遅れておりますが、議事の都合上、進めさせていただきますので、御了承いただければと思います。
 それでは、カメラの方はこちらで退室をお願いいたします。

(報道関係者退室)

○江口医療経営支援課長補佐
 まず、会議に先立ちまして、事務局からの御報告でございますが、今月18日に大阪地方で発生しました地震に関しまして、国立循環器病研究センターの状況について御報告をしたいと思います。
18日の地震発災当初は、電気、水道、ガスのライフラインが停止しまして、高架水槽の破損等により、病棟内への水漏れが発生し、重篤な患者さんの転院等を余儀なくされましたが、その後、ライフラインも復旧しまして、現在では外来も通常どおり再開しており、救急の受け入れや入院につきましても、受け入れを順次開始しております。なお、現在、転院された62名のうち39名が帰院をしております。
 厚生労働省といたしましては、引き続き現場の状況・ニーズをしっかり把握しまして、万全の支援を行ってまいる所存でございます。
 以上、国立循環器病研究センターの状況についての御報告でございます。
 次に、議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。
 構成員の皆様のお手元に、議事次第、座席表、資料1~3、参考資料1・2、加えてファイルにつづっております前回までの会議資料及び議事録をお配りしております。なお、前回の議事録につきましては未定稿となっておりますので、御留意ください。
 不足等がございましたら、事務局までお申しつけください。
 また、本日、会場の都合上、マイクの数に非常に限りがございます。大変御面倒をおかけして恐縮でございますが、御発言の際はお近くのマイクを御利用いただければと思います。
 以降の進行は、永井座長にお願いいたします。
 
○永井座長
 ありがとうございます。
 それでは、本日は、資料1「第1回~第3回でご指摘いただいた点について」を御紹介いただきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
 
○松永政策医療推進官
 事務局でございます。
 資料1について、御説明させていただきます。
 こちらは、第1回~第3回検討会で御指摘いただきました事項につきまして、事務局でおまとめさせていただいたものでございます。
 1ページ、大きく4つ、受診患者の地域性について、医業未収金等の状況について、外部資金獲得状況について、知財管理者、リサーチ・アドミニストレーターの配置状況について、御指摘いただいておりましたので、こちらの状況につきまして各センターの状況をおまとめしております。
 3ページ、受診患者の地域性につきまして、NCごとに平成28年度のデータをおまとめしております。まず、国立がん研究センターのデータになりまして、上段が中央病院、下段が東病院、左側が入院、右側が外来患者となります。それぞれ延べ患者数と新規患者数でおまとめしております。円グラフのうち青い部分になりますけれども、それぞれの所在地である東京・神奈川からの患者がおおむね5~6割、その他関東近郊からの患者が多くなっております。
 4ページ、国立循環器病研究センターのデータございます。こちらは、入院・外来ともに大阪府から7~8割程度、そのほか近畿圏からの患者が多くなっております。疾患の特性上、緊急性の高い患者が多く含まれている影響等も加味する必要があるかと考えられます。
 5ページ、国立精神・神経医療研究センターのデータでございます。こちらは、一般病床、精神病床、そのほかの病床でおまとめしております。所在地である東京からが約5~7割、続いて関東近郊からとなっております。
 6ページは入院のデータとなっております。
 7ページ、国立国際医療研究センターのデータでございます。上が東京の戸山病院、下が千葉県の国府台病院、いずれも所在地である東京・千葉からの患者が8~9割で、そのほか関東圏からが多くなっております。救急患者の受け入れを多く実施している影響等を加味する必要も考えられます。
 8ページ、国立成育医療研究センターのデータでございます。東京からの患者が7~9割程度、そのほか関東圏からが多くなっております。
 9ページ、国立長寿医療研究センターにつきまして、こちらはおおむね所在地の愛知県からの患者となっております。他のセンターと異なり、大府地区での地域モデルを全国へ波及させるような取り組みをしているなどの特性上の影響があるかとも考えられます。
 10ページ、上段にNHOのうちDPC病院の33病院の平均値、下段にJCHOのうち東京都・中部圏・近畿圏の3病院のデータを参考としておまとめさせていただきました。いずれも所在都府県からの患者が9割以上でございまして、こちらとNCとを比較すると、長寿医療研究センター以外の5センターにつきましては所在都府県外からの患者の割合が多いと言えます。
 11ページ、こちらは参考としまして救急患者の受け入れ件数を再掲させていただいております。
 続きまして、「医業未収金等の状況について」。
 13ページ、棒グラフが医業収益、折れ線グラフが医業未収金割合ということで、センターごとにまとめさせていただいております。平成28年度のデータでは、おおむね0.1%前後で、中でも循環器が0.02%と低い割合となってございます。なお、医業収益につきましては、がんと国際の値が大きかったため破線を引いておりますが、グラフの左のスケールが異なることに御留意ください。
 14ページ、診療報酬額に対する査定減の状況になります。棒グラフが診療報酬請求額、折れ線グラフが査定減の割合となります。おおむね1%未満で、国循のみ1%以上となっております。こちらにつきましては、カテーテル検査で複数使用するなどのケースで査定される等、扱う疾患の特性等の影響が考えられると言えます。
 次に、「外部資金獲得状況」についておまとめしております。
 16ページ、データのうち色の濃い部分、科研費等について、内訳について御指摘をいただいておりました。
 17ページ、その内訳についておまとめしております。一番下の色の濃い部分が文部科学の研究費、その上の色の若干薄い部分がAMED科学研究費、一番上が厚生労働科学研究費となってございます。折れ線グラフにつきましては、文部科学研究費の取得件数となります。
 18ページ、企業からの研究費につきまして、おまとめしております。一番根っこになります色の濃い部分が受託研究、中間色が共同研究、白抜きが治験となります。がんにつきましては、額が多いため、左のスケールが異なることに御留意ください。外部資金の獲得状況につきましては、疾患の特性上もあり、がんがいずれも獲得額が多い状況でございます。
 最後に、「知財管理者、リサーチ・アドミニストレーターの配置状況について」をおまとめさせていただいております。
 20ページ、知財管理者につきましては、多くて5名、専従につきましては多くて3名、不在のところもございます。一方、リサーチ・アドミニストレーターにつきましては、現在精査中ですので、次回以降、検討会でお示しさせていただければと存じます。
 資料1につきましては、説明は以上となります。
 
○永井座長
 ありがとうございました。
 それでは、ただいま御説明いただいた内容について、御質問をお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 私から、先ほど未収金の額とパーセントが出ていましたが、未収金という定義は、未請求、返戻、回収不能額とか、いろいろなカテゴリーがあると思うのですが、この未収金は未請求とはまた違うのでしょうか。
 
○樋口医療経営支援課長
 医療経営支援課長でございます。
 一般的には、いわゆる不良債権相当でございまして、回収が困難な債権という意味で使わせていただいております。
 
○永井座長
 いわゆる未請求、返戻は、合わせてどのぐらいあるかわかりませんか。
 
○樋口医療経営支援課長
 済みません。今回はご用意しておりません。
 
○永井座長
 またいずれ教えていただければと思います。
 いかがでしょうか。
 どうぞ。
 
○河村構成員
 質問なのですけれども、国立国際医療研究センターのところで、外国籍患者が多いということで書いてくださっているのですけれども、ほかのNCは大体どれぐらいなのかということをお尋ねしたい。
 あと、国際医療研究センターで多くなっている背景というか、感染症をやっているとかそういうことなのか、場所柄なのか、その辺をお教えいただければと思います。
 
○松永政策医療推進官
 まず、外国人患者の割合ですけれども、がんセンター中央病院につきましては新規の外来でおおむね0.5%で、ほかのセンターではほぼないという状況でございます。
 
○河村構成員
 国際医療研究センターで多い理由はどういうことでしょうか。
 
○江口医療経営支援課長補佐
 その名のとおりではあるのですが、例えば13カ国語に対応しているということが特徴の一つとして考えられると思います。
 
○河村構成員
 これは、対応ということもあるでしょうし、あとは場所柄もありますかね。ですから、近隣だとJCHOさんの病院とか。NHOで近くは目黒ぐらいしかないかな。そういうところと比べても多い。受け入れ体制が整っているという特徴があるという理解でよろしいでしょうか。
 
○松永政策医療推進官
 外国人の方がいらっしゃる場合には通訳が配置されていたりしますので、そのような面で充実しているところが強みであると思われます。
 
○永井座長
 岡構成員。
 
○岡構成員
 岡です。
 外部資金の獲得状況で、企業からの研究費でがんセンターが非常に突出しているという感じがあるのですけれども、私は前回のがんセンターのヒアリングのときに出席できなかったのですが、何か特別なシステムみたいなものをがん研究センターがお持ちということなのでしょうか。それとも、疾患の性質から来ているという感じか。そのあたりは何かおわかりでしょうか。抗がん剤は非常に開発が進んで、そういったところという理解でよろしいですか。センター内に何か特別なそういう産学連携の本部を持っているとか、そういうわけではないのですか。
 
○松永政策医療推進官
 国立がん研究センターについては外部資金の獲得に長けている強みはあるかもしれないですけれども、詳細につきましては、また追って御説明させていただきます。
 
○岡構成員
 ありがとうございます。
 何かそういう工夫があればすばらしいなと思ってお聞きしました。
 
○永井座長
 中野構成員。
 
○中野構成員
 救急患者受け入れ件数についてお教えください。国立国際医療研究センターが突出して多いわけでございますけれども、これは、病院の特性上、その医療機関が特定的に扱う専門領域以外の患者数が非常に多くてこうなっていると考えていいかということ。
 あと、疾患だけではなくて、先ほど外国人の方のお話も出ましたけれども、多い特性というものがあるのか教えていただきたいのが1点。
 もう1点は、逆に少ない長寿医療研究センターとか精神・神経医療研究センターは、疾患特異的な救急のみを扱っているから少ないのかとか、そういったことで何かわかることはございますでしょうか。
 
○樋口医療経営支援課長
 まず、国立国際医療研究センターについては救命救急センターという機能もございますので、圧倒的に救急患者が多いという特性があると思います。
 国立長寿医療研究センターは、疾患的な性質から、救急で来られる患者さんがあまりいらっしゃらないということかと思われます。
 
○中野構成員
 そうなりますと、中間というか、その間に位置する成育は小児患者であり、循環器は循環器の患者さんが多くて、大体こういう数になっているという理解でよろしいですか。
 
○樋口医療経営支援課長
 そのように承知しております。
 
○中野構成員
 ありがとうございます。
 
○永井座長
 ほかにいかがでしょうか。
 山口構成員。
 
○山口(俊)構成員
 同じ11ページのところで私も質問なのですけれども、この救急の患者は外来の患者の数の割合から見ないとわからないのではないかと思うのですけれども、そのあたりは同じような傾向になりますか。
 
○松永政策医療推進官
 割合で御説明させていただきますと、国立循環器病研究センターと国立成育医療研究センターが件数的には同じぐらいの数になっておりますけれども、国立循環器病研究センターにつきましては外来患者の2.2%程度がこちらに示している件数でして、一方、国立成育医療研究センターにつきましては1.3%程度というところです。国立国際医療研究センターは2.5%程度だったと承知しております。
 
○山口(俊)構成員
 ありがとうございました。
 
○永井座長
 ほかにいかがでしょうか。
 花井構成員。
 
○花井構成員
 他府県からどれだけ患者が来ているかという比較なのですけれども、NHOと比較すると、一定程度、例えば、関東圏であっても他府県から来ているとも読めるのですが、NHOの33病院DPCが気になる。県外が7%というのはNHOでも結構少ない気がするのですけれども、病床数とかはどうなのですか。DPCがかかっていて、例えば、都市部の総合病院であれば、具体的に言えば大阪医療センターとか名古屋医療センターとかであれば、県外からも結構患者さんが来ていそうなのですけれども、平均33にならしてしまうと7%となっているのですけれども、これはどう見たらいいのですか。結構規模が33病院で広がりがあるのですか。
 
○江口医療経営支援課長補佐
 この33病院は142病院の33病院という抽出ではなくて、いわゆる中央にあるような急性期のところの33病院と聞いておりますので、33病院のリストはいただいていないのですが、例えば、名古屋医療センターや大阪医療センターなどの急性期病院が含まれている33病院と聞いております。
 
○花井構成員
 ということは、一定程度、NCのほうが広いエリアからの患者さん。がんはネームバリューで一番ですけれども、長寿などを除くとそういう傾向と読み取っていいのかなとは思います。
 長寿の場合は、これは多分いたし方がないですよね。そもそも長寿医療が地域と密着してどうするかという話なので、遠くから患者さんが来たからといって今の高齢者の医療をどうするかという話にはならないので、長寿医療研究センターは仕方がないと思うのですけれども、ほかのNCに関しては、NHOのデータの詳細がわかればもうちょっと比較できるのかもしれませんが、この資料を見る限りではその傾向だけは読み取れるかと思いました。
 あと、成育とかの場合は引っ越してきてしまっている患者さんが結構多いですよね。だから、実際には東京都から来ているのですけれども、地方から住民票を移しているという患者さんは結構いますので、そこはデータとしてはわかりにくいかもしれませんが、そういうこともあろうかと思いました。
 以上です。
 
○永井座長
 本田構成員。
 
○本田構成員
 私も、意見というか、感想というか、一応述べておきたいと思ったのですけれども、この患者さんが全国からどのように来ていらっしゃるのかという割合を見ると、確かに長寿以外のところはかなりNCとして全国から来ていることが理解できるので、それはそういう役割の果たし方はすばらしいと思うのですけれども、一方で、長寿は、疾患の特性とか、位置的な問題とか、いろいろな理由があるとは思いますけれども、こういう中で、ヒアリングのときの回答にもありますけれども、そういう高度な医療、もしくは、平均的な、標準的な、さらにはよりよい新しい医療をどのように全国に広げていくのかということにどれだけ尽力しているのかというのもNCの役割だと思いますので、そういうところの評価をどのように見ていくか。今回の表ではよくわかりませんけれども、そういうものをどのように見ていくのかというものも、今後、資料等を出していただければと思いました。
 
○永井座長
 ほかにいかがでしょうか。
 外部資金獲得状況、17ページ、この棒グラフを見ますと、がんセンターが突出して約60億円、あとが、10億円、20億円、18億円、28億円と大分差がありますけれども、これはどのように考えたらよろしいのでしょうか。末松先生、これほど研究費配分に差があるわけではないと思いますが。
 
○末松構成員
 はい。
 
○永井座長
 ここはどう考えたらいいのでしょうか。
 
○森光研究開発振興課長
 正確な答えになるか分かりませんが、厚生労働省の研究費のうち、例えば、AMEDで研究費を配っていただいて運用をしていただいているものについて、厚生労働省の475億円のうち100億円はがんに関する研究費となっており、文科省もがんに対しての基礎研究費を出ております。そういう意味では、一つの疾患にそれだけの規模のファンドがあるということは言えると思います。
 
○永井座長
 職員数、研究者数はどのくらいの比率で違うのですか。
 
○松永政策医療推進官
 研究者の比率ですけれども、次回以降でまた資料を出させていただきたいと思っております。
 
○永井座長
 文部科研費の取得件数ですが、例えば、精神・神経医療研究センターの外部資金はがんセンターの3分の1ですけれども、文部科研費の取得はがんセンターより多いのですね。外部資金が多いと、額の小さな科研Cを取得しにくくなるのではないかという懸念もあるのですけれども、どうなのでしょうか。
 つまり、ナショナルセンターは人材育成が大事で、大型研究費はありがたいけれども、それだけに依存していては若い人は育たないわけです。小さくても地道に文部科研費を取得することは研究者のキャリアで非常に重要と思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、先へ参りますが、資料2「NCを取り巻く医療政策課題を踏まえたNCの役割」及び資料3「これまでのご意見を踏まえたNCの今後の役割について(たたき台)」の御説明をお願いいたします。
 
○松永政策医療推進官
 事務局でございます。
 資料2「NCを取り巻く医療政策課題を踏まえたNCの役割」につきまして、御説明させていただきます。
 1ページ、NCと医療政策の関係ということでイメージをまとめさせていただきました。我が国を取り巻く健康課題は、衛生環境の変化とか医学・医療技術の進歩等に伴い変化してきたところで、それに対応する医療政策の変遷とNCの関係性を整理したものがこちらになります。今後のNCの在り方を考えるに当たりまして、まずはこれまでの経緯を振り返っていただければということで御用意させていただきました。
 まず、総論としまして、日本の衛生行政制度ですけれども、明治5年、文部省に医務課が設置されたことに始まります。この時期における衛生行政の最大の課題は伝染病対策でした。急性伝染病に対する施策で一定の成果を上げた後、結核・性感染症などの慢性伝染病や精神障害に対して種々の法規の制定と施策を実施してきました。その後、衛生環境の改善も相まって感染症対策が効果を上げ、死因の第1位が結核から循環器疾患やがんに変わるなど、生活習慣病を中心とする疾病構造の変化が見られました。さらに、人口の少子高齢化、新型インフルエンザやエボラ出血熱などのグローバル社会における感染症対策など国家的危機管理対策等への対応など、環境の変化や医療技術の進歩に伴う健康課題の変遷に対し、その時々に必要な医療施策を講じてきたところでございます。
 6NCごとに変遷をおまとめしておりますが、見方としましては、白矢印が関連の深い主な医療施策、黄色矢印がNCの主な変遷をおまとめしたものになります。少し長くなりますが、それぞれ簡単に御説明させていただきます。
 「がん」の行をごらんください。現在、我が国の死因の第1位はがんになりますが、さかのぼると、昭和25年に死因の第2位、昭和56年から第1位となっており、国民の生命及び健康にとって重大な課題でありました。政府は、昭和59年に対がん10カ年総合戦略を策定、平成18年に個別疾患法であるがん対策基本法を制定、それに基づいて平成19年にがん対策推進基本計画を策定するなどし、がん対策を推進してまいりました。医療技術の進歩に伴い、直近ではがんゲノム医療中核拠点病院の整備を行っております。そうした状況を背景としまして、昭和37年、旧海軍軍医学校を改装し、がんその他の悪性新生物に係る医療に関し、調査研究、技術開発、医療提供、人材育成を行い、国の医療政策として高度かつ専門的な医療の向上と政策提言に取り組む施設として国立がんセンターを設置し、平成22年に独法化して現在に至ります。
 「国循」の行をごらんください。昭和26年に脳血管疾患が結核にかわって死亡原因の第1位となり、その後、昭和56年にがんに逆転されるまで、脳血管疾患につきましては、昭和26年以降、第1位でありました。平成29年度には死因の第2位・第3位が心疾患・脳血管疾患という状況でございます。また、脳卒中につきましては、死亡を免れても後遺症として障害が生じ、介護が必要となった主要な要因として国民生活基礎調査等で挙げられるなど、国民にとって重大な健康課題でございます。健康増進という観点で考えますと、我が国におきましては、第2次世界大戦後から栄養改善のための施策が行われてきましたが、疾病の予防や治療対策にとどまらず積極的な健康増進を図るための施策が講じられたのは、昭和39年、東京オリンピック終了後の健康・体力づくりのムードが高まり、国民の健康・体力増強策につきまして閣議決定がされたころに始まります。昭和53年からは、第1次国民健康づくり対策が開始され、生涯を通じた予防、健診体制の整備等を図り、平成12年に循環器疾患に関する視点も含んだ21世紀における国民健康づくり運動、健康日本21を策定しております。その推進を図るとともに、疾病予防に重点を置いた施策を講じる法的基盤整備も必要であることから、こちらはがんと異なり循環器の個別疾患法ではございませんが、健康増進法を平成14年に制定するなどの対策を講じてきております。そのような状況を背景としまして、昭和52年に国立循環器病センターを設置、平成22年に独法化して現在に至っております。
 「精神・神経」の行をごらんください。我が国の精神障害者への社会的支援は主に寺社などの慈善事業として行われてきた中、明治7年に医制が発布され、翌8年に京都の南禅寺境内にて京都癲狂院が公立精神病院として初めて整備されました。戦後、欧米の精神衛生に関する治験が導入され、適切な医療・保護の確保とその発生予防のため、昭和25年に精神衛生法が制定され、その後、人権擁護や適正な医療の確保の推進を図るため、昭和62年に精神保健法、平成7年に精神保健及び精神障害者福祉に関する法律と名称を変えております。神経につきましては、昭和30年ごろから原因不明の神経病として散発が認められていたスモンが、昭和42年から43年にかけて全国的規模で多発し、キノホルムとの関係性もあり、大きな社会問題となったことを契機として、難病に対する社会的ニーズが増し、昭和47年に難病対策要綱が定められました。そうした中、昭和27年に国立精神衛生研究所を設置、昭和53年に国立武蔵療養所・神経センターを設置、昭和61年に国立精神・神経センターにこれらを統合しております。なお、昭和62年に統合した国府台病院につきましては、平成20年に国立国際へ移転しております。平成22年に独法化し、現在に至っております。また、その後、平成26年には、難病の患者に対する医療等に関する法律が成立しております。
 「国際」の行をごらんください。国際協力につきましては、戦後から1950年代にかけて、戦災からの復興と東西冷戦の始まりに対する安全保障支援的性格の強いもので、昭和29年にコロンボ・プラン加盟という形で我が国の国際協力がスタートをしました。発展途上国の安定と発展が世界全体の平和と繁栄にとって不可欠という意味での国際社会の相互依存関係があることを前提として、国際協調主義に基づき、保健分野も含めた支援が必要ということで保健分野での協力も強化していくこととなりました。現在では、世界の全ての人が基礎的保健医療サービスを受けられるユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に向けた取り組みの推進等を行っております。次に、感染症対策につきましては、冒頭でも述べさせていただきましたが、昭和27年まで結核が死因の上位を占め、終戦直後の衛生状況の悪化により結核・腸チフス・赤痢・寄生虫病等が蔓延し、感染症対策が国家としての喫緊の課題でございました。そうした中、明治30年の伝染病予防法施行に始まり、その後、昭和23年に性病予防法、昭和26年に検疫法が施行されております。その後、衛生水準の向上、医学・医療技術の進歩、エボラ出血熱・エイズ・新型肝炎等の新興・再興感染症の出現、人権尊重の要請、国際交流の活発化などの近年の状況の変化を踏まえ、感染症対策の抜本的な見直しを図るため、平成11年に感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律が施行されております。このような背景のもと、国立病院医療センター、国立療養所中野病院を統合し、平成5年に国立国際医療センターを設置、平成9年にエイズ治療・研究開発センターを設置、平成20年に国府台病院を統合し、肝炎情報センターを設置しております。
 「成育」の行をごらんください。昭和17年、妊産婦手帳規程が制定されておりますが、当時は、流産・死産・早産の防止、妊娠及び分娩時の母胎死亡の軽減が主要な目的でございました。その後、昭和22年に児童福祉法を公布、同法に母子衛生行政を位置づけ、昭和40年に母子保健法が制定されました。その後、乳児死亡率や妊産婦死亡率の低下を図ることに寄与してきましたが、新たに、少子高齢化、女性の社会進出、生殖補助医療、出生前診断等、母子保健にかかわる変化への対応が求められてきております。その間、平成21年に健やか親子21が策定されております。こうした状況を背景としまして、小児医療の専門的な施設として、昭和40年に国立小児病院を設置、その後、国立大蔵病院と統合し、平成14年に国立成育医療センターを設置しております。平成22年に独法化し、現在に至っております。
 「長寿」の行をごらんください。老人保健医療対策につきましては、昭和38年制定の老人福祉法による事業として老人健康診査が開始され、昭和57年に、国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため、疾病の予防、治療、機能訓練等の保健事業を総合的に実施し、もって国民保健の向上及び老人福祉の増進を図ることを目的として、老人保健法が成立しております。昭和64年には寝たきり老人ゼロ作戦ということでゴールドプランを策定、また、認知症対策が大きな課題とされる中、平成24年に認知症対策5か年計画(オレンジプラン)を策定し、その取り組みをさらに加速させるため、新オレンジプランが平成27年に策定されております。なお、老年人口が総人口に占める割合である高齢化率が7%以上の高齢化社会を昭和41年に我が国は迎え、その後、高齢化率が14%以上の高齢社会を平成6年に迎えております。この間24年と極めて急速に高齢化が進んできたことが我が国の高齢化の特徴となります。そうした状況を背景としまして、昭和41年、旧国立愛知療養所と旧国立大府荘を統合し、国立療養所中部病院を設立、その後、日本学術会議に国立老化・老年病センター(仮称)の設立を勧告され、昭和天皇御長寿・御在位60周年記念の一環から平成7年に国立療養所中部病院長寿医療研究センターが開所、平成16年に国立長寿医療センターが設置されております。
 「医療政策上の主な課題と各NCの役割と取組」です。
 3ページをごらんください。1ページ目で御説明させていただきましたが、その時代に合った健康課題への対応ということで各NCが設置されてきたところでございますが、その背景等、国として実施してきたこれまでの医療政策、NCが果たしてきた具体的な役割につきまして、研究開発、医療提供、人材育成、情報発信等について整理させていただいております。少し繰り返しになる部分がございますが、まず、がんにつきましては、死因の上位にあり、研究開発につきましては病態解明・治療法の開発等、医療提供につきましては死亡率の減少といったことが喫緊の課題でございまして、国としては、がん研究10か年戦略の策定、がん診療連携拠点病院の整備、がん登録の法制化等を進めてきたところでございます。がんセンターにおきましては、例えば、肺がんの切除数において国内最多の実績を有するところでございますが、そういった素地を生かし、遺伝子異常の解明とか、それに基づき創薬につなげるという臨床と研究の両輪を回すような取り組みを行ってきております。また、レジデント制度等により、がん医療に取り組む多数の医師の育成やがん情報サービスにより科学的根拠に基づく正しい情報の発信、がん対策推進基本計画等、国の政策の策定に向けたエビデンスを提供するなどの政策提言の実施といったさまざまな取り組みを行ってきました。
 4ページ、未来志向になりまして、さまざまに対応してきた今、何が課題なのかということをおまとめしたものが「主な今後の医療政策上の課題」の行となります。例えば、新しい医療技術の出現ということで、ゲノム医療やAIを活用した革新的な診断・治療法の開発が必要ではないか。がんの本態解明等、ある程度の効果を上げてきましたが、いまだ効果的な治療法が開発されていないような希少がんや難治性がん対策がさらに必要ではないか。既に判明しているがんに関する知識について、医療関係者にはある程度浸透していても一般の国民には伝え切れていない部分について、もっと普及・啓発が必要ではないかという課題があります。これに対して、がんセンターの今後の取り組みや計画を一番下の行におまとめしておりまして、例えば、ゲノムでありましたら、がんゲノム情報管理センターをこの6月に整備し、そこを拠点とした取り組みを進めていくことなどを計画しているところでございます。以降、同様に、全センター分をおまとめしておりますが、こうした医療政策上の課題にNCが対応してきた状況を踏まえ、今後の在り方について検討を進めていただければというところでございます。なお、記載しているNCの各取り組みにつきましては、基本的に既に第2回・第3回のヒアリングで各センターが聴取していただいていたところでもありますので、詳細については、時間の関係上省略させていただきます。
 5ページ、国立循環器病研究センターの内容になります。こちらにつきましても、死因の上位ということで、その治療法の確立、予防の推進、医療の均てん化、人材育成等が課題であり、NCとしては、例えば、死因上位である循環器疾患の治療法の確立・予防の推進等に資する取り組みとして、t-PA両方の導入・普及、国内最多の心臓移植の実施、ナトリウム利尿ペプチドの開発、補助人工心臓の開発等の取り組みを行ってまいりました。
 今後の取り組みとしましては、来年度、移転し、より革新的な医薬品・医療機器等開発の推進のためのプラットフォームとして「オープンイノベーションセンター」を設置予定でございます。
 7ページ、国立精神・神経医療研究センターでございます。現在では、精神疾患は患者数が300万人以上となり、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病といったいわゆる4大疾病よりも多い状況となっております。神経疾患とともに社会的コストが大きく、いずれも難治性・希少性があり、根治療法の開発が課題となっている中、NCNPにおきましては、認知行動療法の国内初最大の施設として、研究、臨床、研修等の取り組みや、筋ジストロフィーのエクソンスキップの治療薬の研究開発、バイオバンクの構築を行うなどの取り組みを行ってきております。
 今後は、精神疾患において、例えば、神経心理学、生理学、生化学、脳画像解析学等を導入して、病態解明、診断・経過判定に有効なバイオマーカー同定を目指した研究や、筋ジストロフィー、多発性硬化症等の治療薬の研究開発等の取り組みの推進を行っていく計画です。
 9ページ、国立国際医療研究センターの内容になります。こちらは、喫緊の課題でございました感染症対策と戦後の安全保障から出発した国際協力から発展的に国際保健分野における協力体制の強化、また、健康寿命の延伸のため、3大死因対策に加えて糖尿病対策の必要性を背景として、例えば、薬害エイズ患者の受け入れの中心的役割を果たしたり、JICAプロジェクトやWHO等の専門家として途上国が進める保健事業を直接支援するなどの取り組みを実施してまいりました。
 今後は、新興・再興感染症の標準的なガイドラインのさらなる作成や訪日患者の受け入れ等を円滑に行う体制構築等の取り組みを計画しています。
 11ページ、国立成育医療研究センターになります。急速な少子高齢化の進展により、将来を担う世代の健全な育成が課題となっており、小児医療、母性医療、父性医療、及び関連・境界領域を包括する成育医療の向上とともに、小児難病の病態把握と治療法・治療薬の開発が必要という背景のもと、例えば、大学病院ではできない全ての小児内科・外科系診療体制を整備するとともに、小児治験ネットワークの整備に資する取り組み等を実施してきました。
 今後は、医療技術の進歩に伴うゲノム解析やコホート研究の継続による成育疾患の本態解明や、小児慢性特定疾病研究事業において、全国の患者登録・分析のセンター機能を果たしていくなどの取り組みをさらに推進していく計画でございます。
 13ページ、国立長寿医療研究センターのデータになります。こちらは、人口構成の変化、すなわち急速な高齢化が進む中、高齢者の健康寿命の延伸や認知症対策のニーズの高まりを背景として、例えば、もの忘れセンターを設置し、多くの認知症の方への医療を提供するとともに、認知症のオールジャパン研究であるオレンジレジストリを構築し、その病態解明や認知症サポート医研修の実施等の取り組みを行ってきました。
 今後は、ゲノム編集技術を活用した老化・老年病モデル動物の開発や病態解明の実現、さらには介護ロボットの開発の推進等を計画しております。
 15ページ、参考として、現在医療法上規定している、特定機能病院、地域医療支援病院、臨床研究中核病院、国立病院機構、NCの比較表となっております。
 16ページ、国立研究機関、大学病院、NCとの比較表を用意してございます。それぞれの根拠法から、目的、主に取り組む医療・研究についておまとめしておりますので、参考としていただければ幸いです。
 最後に、資料3の御説明をさせていただきます。1枚紙をごらんください。こちらは、これまでの御意見を踏まえたNCの今後の役割について、たたき台として事務局で整理させていただいたものとなります。
 1つ目の○、これまで医療政策上の課題の克服に取り組んできたことを踏まえ、NCの普遍的な役割として、国民の健康に重大な影響のある特定の疾患等に係る医療に関し、研究開発、関連する医療の提供、人材育成等を実施するという基本的な考え方は今後も維持しつつ、おのおのの具体的な取り組みについては、世界最高水準の医療を実現し、地球規模の課題や時代の変化に対応していくという視点で取り組んでいくべきではないか。
 2つ目の○、国立研究開発法人として研究開発成果の最大化を目指し、ナショナルレジストリの構築やクリニカル・イノベーション・ネットワークの活用・強化をより一層促進するべきではないか。
 3つ目の○、研究開発については、国としての研究・医療の基盤を構築するという観点から、大学等の他の研究機関では十分な取り組みが確保できていない分野、すなわち、中長期にわたって継続的に実施する必要のあるレジストリやコホート研究、難治性・希少性疾患関係、国の医療政策やガイドライン関係等の基盤的研究を中心的課題として取り組むべきではないか。また、これらの取り組みを推進するため、データ共有のための情報連携・拠点化に向けた検討や産学連携ネットワークの強化、リサーチ・アドミニストレーターといった方々の育成に向けた検討が必要ではないか。
 4つ目の○、医療提供については、高度専門医療の提供とともに各領域の全国水準の向上という大きな2つの役割を担っていくべき。高齢化に伴う合併症のある患者への対応等、時代の変化を踏まえた対応の必要性。各NCのミッションや担当領域の状況等を踏まえた役割の整理の必要性。臨床研究の基盤として医療提供も必要であるという視点の必要性。
 5つ目の○、人材育成については、これまでと同様に、各専門領域のリーダーとして活躍できる高度専門人材の育成とともに、各領域の医療従事者に対する研修の実施など全国的な水準の向上に取り組むべきではないか。
 最後に、我が国の医療政策への提言や国の医療政策の評価・検証、国民への情報発信をこれまで以上に強化するべきではないかといった御意見がございましたので、NCの今後の役割として事務局で整理させていただいております。
 以上をたたき台として、NCの今後の役割について御議論いただければというところです。
 長くなりましたが、私からの説明は以上となります。
 
○永井座長
 ありがとうございます。
 いかがでしょうか。
 いろいろな論点があろうかと思うのですが、最初に私から。
 先ほどの資料1の18ページに、外部資金の獲得状況で数字が出ていますね。がん研究センターが49.8億円、2位が循環器病センターで4億7,000万円と10分の1以下なのですね。あとは横並びになります。産学連携拠点とか、オープンイノベーション体制という意味では、がんセンター以外はほとんど体制ができていないように思います。先ほどもリサーチ・アドミニストレーターの数もよくわからないということだったわけですが、各センターの課題の中に、今後、産学連携や外部資金の導入をいかに確保していくかということがもっと強調されるべきと思います。法人化以降、運営交付金が急激に減っている状況の中で、各センターは苦労をされていると思います。しかしそれは外部資金の導入をふやすということと抱き合わせだったと思うのですが、そこはどうなのでしょうか。がんセンターには公的研究費だけではなくて外部資金が入るけれども、ほかのセンターには入らないのであれば問題だと思うのですが。
 相澤構成員、どうぞ。
 
○相澤構成員
 外部資金は、外部から投資をしていただくということに焦点があります。そうすると、投資する企業も収益を上げなければいけないわけですから、研究機関にも投資をしていただく仕組みがないと上手く行かなと思います。そこのところが従来の運営費交付金とか科研費とかと違う側面があって、そこで、知的財産をどのように使って、投資をする人にとって魅力のあるように仕組みを整えていくかということが必要であると思います。
 従来の産学連携で、研究機関が権利を持つというのが一つのパターンですが、必ずしもそれに限る必要がなく、権利は投資をした方に行くけれども、それに見合う研究資金を研究機関に入れていただくことも考える必要があると思います。
 投資に当たっては、AMEDのファンディング機能がどうやって生かされていくかということも考えていく必要があると思います。投資の仕組みに、AMEDが入っていることによって投資環境が整うという面もあると思いますので、そういうことを含めて考えていく必要があると思います。
 その前提としては、6センター間で情報共有がある程度されていないと、投資スキームとして、問題が生じることもあると思います。
 
○永井座長
 最近は、研究のエコシステムということが言われています。研究の土壌をうまくつくっていかないと投資も導入できないということだろうと思います。
 渡部構成員。
 
○渡部構成員
 産業界で、いろいろな大学とか、いろいろな病院、医療機関と共同研究をやるときに、最終的な形は、どちらかというと、企業からお願いをして研究をしていただくというフレームワークに最後はなってしまうのですね。途中までの議論であるといろいろな課題を一緒に見つけて解決していこうということで議論をしていても、そういうフレームワークになるケースが多いということで、少しそういった点は発展性がないのではないかということを一つ感じるのと、がんセンターとか、これからの循環器病センターでオープンイノベーションのフロアをつくって一緒に共同研究をしていこうということは、質的に変わってくるきっかけになるのだと思います。いろいろな課題を見つけるところからやっていくという意味で、非常に期待をしています。
 
○永井座長
 末松構成員。
 
○末松構成員
 私も、最初の御意見に全く同感でありますが、AMEDで6NCのいろいろなファンディングのマネジメントをさせていただいていて思うことが幾つかありますので、ちょっと挙げたいと思います。
 ポイントは、6ナショセンが全部統合されてワークしないとまずい課題、恐らく知財の管理、活用などは全くそのとおりだと思います。
 それから、病気の構造ごとに連携を考える必要があります。例えば、認知症も国民的な大きな問題なので、ここの課題解決をするために、精神・神経センターと成育医療と国循が、機能的連携ができていないと、そこは解決できないだろうと考えています。子供の健全な成育を考える場合に、成育医療センターだけでできるかと言うと、一方で精神・神経センターの機能が極めて重要なのです。6NC間でいろいろな申請とか情報共有のためのフォーマットが標準化されているのかどうかというのはどうなのでしょうか。ひょっとしたら余りやられていないのではないかと思うのですけれども、その辺はどうなのかなということを伺いたかったのです。
 そう申しますのも、AMEDは今のところファンディングルールを一元化してということで努力はしているのですけれども、例えば、ゲノムの解析がイギリスのNIHRのように1カ所でヒトのゲノムの解析をメーンのところを行って情報を管理している仕組みがある一方で、アメリカのNIHの場合には26の研究所がばらばらにファンディングを受けて完全にサイロ化しているようです。5~6年ほど前だったと思うのですけれども、27番目の研究所としてNCATS(National Center for Advancing Translational Sciences)ができたのですけれども、それをNIHのバジェット全体を一定にしたまま27番目の兄弟をつくったので、残りの26人の兄弟が予算を削られて、なかなか大変だったもののなんとかできたのですね。横串を刺すことには大きな労力がかかる。NCATSの運営がうまくいっているかどうかはまだこれから評価されるところだと思うのですけれども、恐らく6NCの場合も、同じような機能統合に特化したところを一生懸命やるヘッドクオーターとか機能が必要なのではないか。我々AMEDはファンディングの統合化はできるのですけれども、例えば、情報インフラを共通のフォーマットにしてナショセン同士で情報共有をしたりとかを、そういった初歩的なことをちゃんとやっていかないと、6NCに蓄積されているいろいろなデータが、結構危うくなるのではないか。ナショセンのデータをどのようにサステーナビリティーを維持するかというのはすごく重要なことだと思うので、発言させていただきました。
 
○永井座長
 ありがとうございます。
 大西構成員。
 
○大西構成員
 今の末松先生のお話にも共感するのですけれども、これまでの歴史のお話も先ほどありましたが、その時々の社会的な背景、疾患の重要なものについて、重点的にいろいろなリソースが投入されてきた、または施設が充実されてきたということだと思います。先ほどのお話、この1枚紙にもありましたけれども、高齢化が進んできて併存症がだんだん多くを占めるようになっていくと、がんであってかつ循環器病の患者さん、糖尿病の患者さん、または感染症など、いろいろな疾病の共存またはコエグジスティングということになります。それらを同時にマネージしながら暮らしていくことも必要になってくるので、先生が言われたとおり、データの共有化、もしくは治験もそうだと思うのですけれども、どういう患者さんがどのセンターにいるのかということなどを、すぐに検索や共有化ができる形があるというのは、重要なインフラなのではないかと思います。
 もう一つの視点として、患者さんがどういう経路を経てNCに至ったのかということも、先ほどどの県から来られているのかというものがありました。これに関連して、例えば、成育医療センターについていえば、子供病院は全国各地に幾つかありますし、国がんの配下にはがん専門病院が全国に多くあります。こういった、がんセンターもしくは地域のがん病院が、どのような診断や治療上の連携、または、高度な治療に当たっての移送とか、入院、転院に対して、どういう流れで取り組んでいるのかということについて、一つの研究テーマとして、取り上げていただくことも重要かと思います。どういった診療の流れ、また、診療の在り方があることによって均てん化が進むのかとか、または最先端の治療が行き渡る道筋ができているのかということについても研究をしていただきたいと思うのです。診療の実施の仕方についての研究、データの共有化、患者さんの状態を共有的に管理していくもしくは診断していく在り方についてもできるような形が、今後は必要なのではないかと強く思いました。
 
○永井座長
 ありがとうございました。
 本田構成員。
 
○本田構成員
 今の先生方の御意見に私はとても賛成で、医学・医療の分野は詳しくは何も言えませんけれども、例えば、同じような考え方で、国の医療政策提言、例えば、特にがん対策にしてもそうですし、循環器病対策でもそうなのですけれども、そういうことを今はデータとかエビデンスに基づくがん対策もしくはエビデンスに基づく医療政策ということを考えていかなければいけないと思っています。
 そういう中で、国立がん研究センターの場合はがん対策情報センターとかがあって、いろいろな形でそういうもののデータを何とか分析して、それを政策提言に結びつける。医療分野とあわせて政策提言をするということが少しずつ進んでいるとは思うのですけれども、ほかのNCの場合は、例えば、ヒアリングの際も、なかなか人材がいないとか、そういう教育システムもないという中で、難しいという部分もあったかと思います。そういう意味でも、6NCがそういうところを連携していく。例えば、NCの連携の中で教育システムをつくるとか、そういうこともあわせて連携を考えていってはどうかと私は思っています。
 
○永井座長
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 岡構成員。
 
○岡構成員
 先ほどデータサステーナビリティーというお話がありましたけれども、多分そのことも含まれて言われているのだと思うのですけれども、今回のナショセンの各プレゼンの中に、バイオバンクをそれぞれ持っておられるということで、バイオバンクなども本当にどのように維持していくかという部分はいろいろ共有できる部分があるのかなと。多分それぞれのセンターが御苦労されているのではないかと思います。かなりその部分では非常にどこも力を入れられていると感じました。それをどのように利用していくか。そのあたりも一つ共有の対象かと思いました。
 
○永井座長
 どうぞ。
 
○末松構成員
 バイオバンクの件に言及していただいて、本当にありがとうございます。ここでもデータとリソースのサステーナビリティーは危機的状況にあるということがポイントなのですけれども、ナショナルセンターの役割をこれから考える上で、もう1個重要な視点は、AMEDの部内ではハブ・アンド・スポークと言っているのですけれども、例えば、国立がん研究センターとがん拠点病院がどういう連携をするかとか、自転車の真ん中の軸受けのところとスポークが出ていて、それぞれのナショセンがそれぞれのハブ・アンド・スポークをつくるという仕組みを何とかファンディングルールを変えてやっていこうということを、やり始めています。
 今までは、ナショナルセンターのところにデータを集めて、吸い上げ型のセンターの機能が中心だったのではと思います。しかし、ナショナルセンターで人を育てて外に出すとか、集めたデータを解釈してちゃんと返してあげるとか、スポークの先端からクエスチョンが来たときにアンサーでちゃんと答えるとか、そういったことがどのぐらいトラックレコードとして積み上がっているかということを、研究費の評価事由として入れようという考えです。非常に小さい試みではありますけれども、難病のIRUDというプログラムではそれを評価軸にしているわけです。つまり、地域のニーズに応えて、どのぐらいの診断の回付、結果の回付をやったかということが実数で出てくるので、成果が評価しやすい。そういう視点をナショセンの業務の中に入れていく必要がある。どのくらいハブ・アンド・スポークをつくって、外に対して貢献しているかということを数値化して、それに基づいて限りあるファンディングのリソースをどう配分するか。こういう視点がこれから望まれると思います。
 ファンディング以外の機能に関してもそういった視点があれば、国税を使って支援するという、論理もできると思うので、そういった仕組みを将来に向けて考えるべきだと思います。
 
○永井座長
 花井構成員、どうぞ。
 
○花井構成員
 そもそも前提として、今、ここの検討会の役割、最終アウトカムをどういうものを出すかというときのたたき台というものがこの延長線上にあるとしたら、書けばこうなるみたいなところはあるのですけれども、今、議論された具体的なことが何点かあると思うのですが、その辺については、これだけは具体的にやるという形にならないと、何となく現状を記述したペーパーをつくって終わりとなると何も変化がないということになるので、幾つかキーワードがあったと思いまして、基本としては、レジストリとかビッグデータで、リアルワールドデータとか、今後の一つの中心的な問題になっていくときに、各アカデミアのいわゆるレジストリが分断されているという状況はなかなか是正しにくい部分もあるけれども、6ナショセンに関しては、これは国の財産的に運用できるというところは大きなアドバンテージなので、そこを発揮する仕組み、先ほど末松先生がおっしゃったような一つのヘッドクオーターみたいな司令塔をつくって、それはどこでつくってもいいですね。事務局機能は国立国際医療研究センターでもいいですし、どこでもいいのですが、そういったこと。
 書きぶりの一番最初の独立行政法人通則法の記述をそのまま転写して書いているのですけれども、実は国の政策的な問題をやっていくんだよという話と、ファンディングをするという話は実は矛盾するのですね。だって、ファンディングするのは、お金を出す人の都合のいいことをやってくださいという話になるのであって、国のやってほしいことについては、理屈で言ってしまえば、ナショセンはいわゆる指定研究の受け皿であったらいいわけで、国がやってほしい研究は国が指定してこれをやれという話だから、それは指定研究という形でファンドを出せばいいという話になるわけですよね。ところが、一方で、国がその国の税金の研究で全部指定研究化した上で、国がどうぞとやったら、今度はその受け皿になったところは、全くの競争も努力もせずに、のうのうとして、むしろパフォーマンスが落ちてくるというのも事実であって、一定程度の競争的な原理が必要だというところもまた真実なのですが、そこの書きぶりですよね。医療提供に対する書きぶりとかも、これでは10年以上同じ議論をしていると思うのですけれども、いわゆる国立病院機構とNCとの区別がつかないではないかというところに対して、微細な反論は長くつき合ってきている私たちはできるのだけれども、一般国民からすれば、それはどこまでいっても経産省や内閣府あたりからすれば、どこが違うのかと、同じことを聞かれている。毎回それを言われていて、連中はわかってはいないんだという反論でもいいのだけれども、ナショセンならではのファンクションはもうちょっと明確に書いたほうがいいと思うのですね。
 私は、この前もちらっと提案しましたが、国立病院機構でやっているのは政策医療なのですけれども、ナショセンでやっているのは、医療提供なのだけれども、ある種、政策研究医療なわけですね。一般的な高度な医療を提供することも必要だみたいに書いてしまえば、それは別に国立で言えば隣の女子医大と一緒ですよねとか、そこら辺の病院と一緒ですよねという話になるのであって、今回のここの役割をどこまで書くかという話なのですが、具体的なレジストリ等々の、例えば、統合とか、同じフォーマットにするとか、割と各論になるのだけれども、しかしながら、これだけは今回はやるべきだということを明確にしないと、同じようなことの繰り返しになると思いますので、取りまとめ方について考えてほしいかなと思います。このままいくと、いつもの最終提言みたいな形になると、両論がいろいろ書かれていてということになってしまう。何も変化しないということになりますので、取りまとめ方についてもうちょっと工夫してほしい。
 私の感覚では、最初の記述ですよね。総論的なところの記述はもうちょっとクリティカルに議論して、書きぶりに濃淡をつけて、その文章についてはここの先生方全員で合意ができるような形で書き下して、その具体的な内容もそこにやれることは書くという形までやるといいのではないかと思いました。
 以上です。
 質問なのですが、最終的に、この会のアジェンダなのですけれども、何をアウトカムで出せばいいのですかね。役割についてという、こういうペーパーを出すのですかね。
 
○永井座長
 あとはタイムスケジュールですね。いつごろまでにどんな形にするのでしょうか。
 
○花井構成員
 いつごろまでにどのような紙としてお出しするものなのですか。
 
○樋口医療経営支援課長
 スケジュール感的な話を先にさせていただきますと、当初は10月ぐらいまでと考えていたところでございますが、先日のヒアリングをさせていただいた各センターからの状況を踏まえますと、もう少し時間が必要ではないかと考えておりまして、年内をめどに取りまとめに向けて議論をいただければと考えているところでございます。
 もちろんこの取りまとめのたたき台は今回初めて出したたたき台でございますので、今後の議論を踏まえて、これをさらにブラッシュアップさせていただければと考えておるところでございます。
 
○花井構成員
 もう一つ、細かい話なのですが、いわゆる独立行政法人通則法がそれぞれの法律でありますよね。法律にも書いてある書きぶりでここに転写されているのですけれども、特にここの、いわゆる国が政策医療、国立病院機構がやるべき医療についてそれを向上するとか、つまり、半分トートロジーみたいな記述で、結局何をやるかということがわかりにくい。法律の文章がそうなっているのだと思うのですけれども、そこはちょっとそれを超えてここでもう少し位置づけても構わないというイメージなのですかね。法律が外に出たらまずいでしょうけれども、NCの役割、やるべきこととして、法律の書きぶりは、そこがそもそもよくわからなくなる原点になっているのですけれども、そこはどうなのですか。
 
○樋口医療経営支援課長
 ここでの方向性につきましては、必ずしも法律の言葉そのものにこだわる必要はないと思っておりますので、どういう方向性に行くかというのは自由に御議論いただければと思っております。
 
○永井座長
 どうぞ。
 
○末松構成員
 これは厚労省に伺いたいことなのですけれども、いわゆる医療用IDナンバーが、あるタイミングで導入されるところから逆算して、例えば、きょう出てきた情報をどう扱うかという議論をやって、今後の在り方検討会の役割について明文化すると、ID番号が導入されるところから逆算していくとどういうスピード感で何をするべきか。予算のことをどういうタイミングで何年度から考えるのかとか、その辺の粗々のスキームがもしあるようでしたら伺いたいのです。国立がん研究センターで名寄せ問題が問題になっていたり、先ほどもほかの構成員の方から御指摘があったけれども、1人の人が複数の合併症があるときにどうマネジメントをするかとか、その辺のことでもしコメントがあれば厚労省からいただきたいのですけれども、どうでしょうか。
 
○森光研究開発振興課長
 医療IDの話に関しては、現在、被保険者番号なりを使ってできないか、その履歴等についてもできないかということでの議論を進めていますし、それはワーキングなり別の検討会で進めています。ただ、その議論とこのナショナルセンターの在り方に関する議論は連動していないと思われます。先生がおっしゃるのは、基本的には医療情報を一括化するためにそういう仕組みを作るべきということだと思いますけれども、その議論は別の場所で行われつつも、医療情報を集約化していくことがご提案であれば、ご提案の中に入れていただければと思っております。
 
○永井座長
 どうぞ。
 
○花井構成員
 関連してなのですけれども、いわゆる次世代医療基盤法というものを向こうでやって、この前に施行されていて、あれは病院が出すものを受ける。あれは民間が想定されていると思うのですけれども、その匿名化ルールを決めた法律だと思うのですが、病院が嫌だよと言ったら出せないというたてつけになっているので、結局、普通に考えると、病院からデータを買う民間機関を想定して、それを国が認定して、認定したところは買うというたてつけだと思うのですけれども、コホート化をすると、毎年同じ患者さんのデータをアップデートしてやるのかとか、今出ている資料では詳細が不明なのですが、例えば、それも情報が入れば教えてほしい。ナショセンでやるのであれば、ああいうたてつけを使わずしても、こちらで内々でやる分にはできるわけですよね。むしろ匿名化ルールとかは、あれは法律で、いわゆる認定匿名加工医療情報作成事業者でしたか、そういったスキームとは別に、ナショセン独自にいろいろもっと柔軟に使いやすいデータの在り方も検討し得ると思うのですけれども、横目で見る話としては、もしわかれば情報提供をしていただいて、こちらでナショセンのレジストリを構想する上でも参考になればと思います。
 今、わかっていることはあるのですか。
 
○榎本総務課長
 総務課長です。
 次世代医療基盤法は、今、先生に御指摘いただいたものが基本的な枠組みだと思っていますけれども、昨年法律が成立し、今年6月から施行されておるのですが、先生に御指摘いただいたように、今回、認定加工取扱事業者の仕組みを新たに作って、加工を行う事業者の認定作業がこれから具体的にスタートをするという状況です。
 この次世代医療基盤法自体は、今、先生からコメントがありましたけれども、個人情報保護の特例のような形で、加工事業者が情報提供をしていただく医療機関と契約をすることになりますが、その医療機関から情報を集めるときに、その都度、患者さんの同意を得た上で出していただくのではなくて、患者さんから出してほしくないという意思表示が無ければ情報提供をしていいという形になっているということが次世代基盤法の特性になっています。
 ナショナルセンター自体は、今、先生からお話があったように、それぞれ患者情報などを持っておられると思いますので、それを活用するというのはあり得ると思いますが、一方で、それを外に出したりするときに個人情報の取り扱いがそのままで当然出すわけにはいかないということがありますので、その匿名性をどう確保するかというところが、それぞれ学術研究の世界の中で整理をしていくことになるかと思っております。
 こういう仕組みになっているということについて必要な資料があれば御用意させていただきたいと思います。
 
○永井座長
 最初の現状認識のところなのですけれども、これまで、ナショセンは、医学研究・医療、国内はもとより世界最高水準を目指してきました。これはこれからも変わらないのでよいのですが、最後の地球規模の課題や時代の変化に対応していくという点、ここをどう考えるかだと思います。
 特に今、医療費をはじめとする社会保障費が日本の財政を圧迫しているという状況であれば、医療の評価や研究開発でイノベーションを牽引しないといけないし、医学に限らず、サイエンス全体をリードし、経済を引っ張るくらいの意識がこの「地球規模の課題や時代の変化」の中に入ってしかるべきだろうと思うのですが、いかがでしょうか。そういう認識のもとに全体をどう考えるか。医療・医学で頑張ることは前提ですが。ビッグデータ、バイオバンク、レジストリなどの話をどう有機的につないで、新しい生命科学、医学、科学、イノベーションを、大きなスケールで進めることができるか。まさに今、ナショセンにはそういうことが求められていると思うのですが、いかがでしょうか。それでは、大西構成員。
 
○大西構成員
 いろいろなイノベーションが進んでいることを考えますと、これから5年後、10年後の病院での診療もしくは治療がどんな姿になるのかというのは、なかなか見通しが難しくなってきているような気もいたします。先ほどからお話がありますけれども、実臨床で集めたデータ、もしくはダイレクト・トゥー・コンシューマー検査で集めたデータなども診療に使用していくという流れも出てきています。AIなども出てきていますので、先生がおっしゃるとおりで、今後の医学もしくはサイエンスの新しい姿を探求していくということについても、少なくともどこかにスローガンとして掲げていただくというのは、まことに的を射たお話かと思います。
 
○永井座長
 そうすると、医療費の必要な話ばかりになってしまうのですが、それを経済に還元、あるいは輸出できるぐらいの産業をつくらないといけないと思いますが。
 
○大西構成員
 そうです。そこで、先ほどちらっと申し上げたのは、医療もしくは診療がどのように今後変遷していくのかということも大きな研究テーマだろうと思うのです。病院に必ずしも行かなくてもいい、もしくは、地域が離れていても診断ができる、診断のサポートができる、治療のサポートができるということが実現できるのであれば、それはそれで一つの効率性を高めていけますし、生産性も上げることができるということも考えられます。今は地域にある病院の周辺地域の患者さんが患者層の主体であるということは一つの現象としてよくわかるのですが、今後のことを考えると、それをいかに広げていくのか。そのために、ハブ・アンド・スポークの考えもあるでしょうし、ICTなり、AIなり、いろいろなデータの交換なりということをやりながら、ということもあってもいいのかなと思います。
 
○永井座長
 医療の問題と研究開発の問題と2つがあります。いかがでしょうか。
 渡部構成員。
 
○渡部構成員
 経済界でいうと、今、ESGとか、環境の問題とか、SDGsということで、Sustainable Development Goalsということで、国連が決めた25の目標を、経団連を含めて企業はしっかりサポートをしていこうと。これはもともと南北問題から出ているものですから、貧困をなくしていこうというものが1番目にあって、3番目に人々に健康・医療を提供しようというものがあるのですね。ですから、バッジをつくって、みんなバッジをつけていますけれども、あれはオリンピックのバッジと勘違いされるのですけれども、実はSDGsというものでしっかり日本の企業が世界に貢献していこうということなのです。かなり大風呂敷を広げていますので、それが具体的にどういうアクションにつながっていって、どういうリターンが返ってくるかというのは、道筋は遠いかもしれませんけれども、そういう大義というものは、今、掲げてやっているということで、そういったことも一つの参考になるかということで御紹介いたしました。
 
○永井座長
 本田構成員。
 
○本田構成員
 この一番初めに当たるようなところで、当たり前なのですけれども、必ず書いておいてほしいのは、私は、一般国民、患者の立場としては、こういう医療も高度医療も、全て国民の生活、QOLの向上が大目的にあるのだということを一言入れておかないと、産業のためでもない。もちろん産業も重要ですし、高度先進医療を開発していくことがひいては国民のためになってくるのはわかるのですけれども、やはり生活、QOLの向上のためにということを書いておいていただかないと、目的が何なのだろうかということを感じるので、それは大前提として文言として入れてほしいと思っています。
 
○永井座長
 まさにそれはナショセンに期待される医療の問題ですね。全国区であってほしいと思います。また余り強調されていないですが、合併症を持つ方々がふえているわけで、その辺の医療提供体制をどうするか。例えば、診療実績の高いがんセンターでも同じ課題があります。
 
○相澤構成員
 大きな目標といいますか、大きな方針と、運営費交付金が減っているのでこれからお金を何とかしないと研究開発を進めることが難しいという、フェーズの違う問題があります。大きな目標はもちろん必要だと思いますが、ある程度具体的な問題として、投資をする側のことも考えてあげていくことが必要であると思います。これから財政状況がすぐに好転することは余り期待できないので、投資も考える必要があると思います。
 今のままでいくと、アメリカのほうが投資しやすいという環境進んでいるので、これからの研究開発の国際的な遅れを危惧しています。日本も研究開発の受け口ということを考えてスキームを考えていただかないといけない時代になってきていると思います。
 
○永井座長
 現実に、医薬品開発ではすでに起こっています。医薬品の国内市場は10兆円です。数年前まで外資の医薬品は2兆円だったのですが、わずか数年の間に4兆円になっています。ですから、国内企業は8兆円から6兆円に縮みました。こうした変化が加速度的に進んでいます。こういう状況の中でナショセンへの期待が大きくなっていると思います。
 
○河村構成員
 私も文系の人間で、経済の仕事とかをしていまして、あとは行革の仕事とかもさせていただいているのですけれども、きょうも、各ナショセンの領域ごとに、これまでの戦後の医療の流れ、どういう取り組みがあって、どう我々国民が利益を受けてきたかということを、本当に説明を伺っていて、長寿、寿命も本当に延びて、こういうたくさんの先生方がいらっしゃる、医療の分野の先生方のいろいろな御研究とか診療とかの御努力があってこうなってきているにもかかわらず、本当にじくじたる思いがあるというか、これだけ高齢化が進んでいて先も見えているのに、それにたえられるような仕組みを我々のような社会科学系の人間がつくれているかというと、全然できていないです。非常に厳しい状況だと思います。
 そういう中で、行革とかをやっているような目から見ますと、ヒアリングのときにも幾つも感じることがありましたけれども、いろいろ大変な努力をされてきていて、高いパフォーマンスを上げていらしているなと。それは実はこの国のほかの分野ではできていないところもありますし、ヒアリングのときに伺ったような話をちょっとほかのところの人に本当に聞いてもらいたいなと思った御説明が幾つもありました。
 私からの意見というか、お願いなのですけれども、きょうはいろいろ意見が出ていましたように、例えば、データの面、レジストリの面とかで、本当にナショナルレベル、全国レベル、本当にそういう分野ごとにNCが中心になって共有をできるような仕組みをつくるとか、ある意味、これだけデータ化をされた時代に当然のことだと思うのですね。誰でも納得できる。そのようにやっていってほしいとみんなが思うのですけれども、なかなかできていないのがこの国の全体の現実ではないかと。
 ですから、ぜひこういう機会に、NCでさらに1段、そういうできるような枠組みも少し考えてぜひやっていただけたら本当にありがたいなということが一つと、もう一つは、対外的な情報発信なのですね。これまでの御研究の取り組みとかについても、財政からなかなかお金が出てこなくなるようになる中で、それだけ高いレベルでやっていらっしゃるというのは、なかなかほかの分野もみんなできているかというと、どうもそうではないところもありますので、ぜひそういう情報発信をしていただきたいということと、あとは各ナショセンがやっていらっしゃる分野の医療、国民的な課題の分野ばかりだと思うのですけれども、国民の側が実は余りわかっていないのですね。きょう御説明くださったような内容、がんだったら今まではどうだったものが、医療が進んで今はここまでできるようになって、次の課題はどうだということを、そういうことなのだなと思って、本当に今日などは御説明を伺っているのですけれども、みんな多分知らないと思います。
 だから、がんセンターが築地にあるとか、大阪に国立循環器病研究センターがあることは知っていますけれども、それ以上はわからない。だから、国としてそれなりのお金を投入してやってきて、これまでどこまでできるようになっていて、これからはどういう課題があって、今、NCが先頭に立って取り組んでいるのかということを、ぜひもっと国民向けにも情報発信をしていただきたい。それは医療の方だけがわかっていればいい話ではなくて、私たちごく一般の国民の立場からしても、診療とかの医療の均てん化という話があちこちで出ていますけれども、そういうものが本当に全国津々浦々で浸透するようになる上でも、ぜひその分野ごとの情報発信をナショセンを中心にやっていただければと思います。
 以上です。
 
○永井座長
 山口構成員。
 
○山口(俊)構成員
 きょうの資料1で大変いろいろなことがよくわかったのですが、永井先生もおっしゃいましたけれども、基本的に開発と診療はかなり切り分けて考えなくてはいけないと思います。ナショナルセンターがこの両方の機能を持っているとしたら、投資されたその資源がどれぐらいの割合でどっちに行っていて、それぞれがどういう成果を上げているかということをわかるようにしてもらったほうがいいと思うのです。
 例えば、国立国際医療研究センターは救急をたくさんやっていて、かなり医療資源がそちらに向けられている可能性があると思います。それは、本来やるべきかどうか検討が必要です。例えば、長寿のほうでは、ただ普通の一般の患者さんをたくさん診ているところに人が配置されていて、本当の研究開発にはどれぐらいのお金が使われているのかよく見えません。先ほどそういうことに関してもまた次に調査して出すということがあったので、ぜひそのあたりがわかるような資料が出てくればありがたいと思います。
 
○永井座長
 釜萢構成員、どうぞ。
 
○釜萢構成員
 このナショナルセンターの在り方を考えるということは我が国にとっては非常に大事なことなので、永井座長が言われるように、現在、日本の置かれている状況をしっかり踏まえて、将来に向けて何をなすべきかという議論がぜひ必要だと思いますが、一方で、それぞれのナショナルセンターが、今後、この答申が出たところで、それを踏まえて、それぞれのナショナルセンターをどのように運営したら目標に近づけるのかというのが余り曖昧では役に立たないと強く感じます。
 したがって、6つあるナショナルセンターが共通して目指すべき、今、いろいろな御指摘のありました、改革すべき視点がありました。それらをどうするかということ、それから、今、山口構成員からもお話が出ましたが、それぞれのナショナルセンターはどのように変わってほしいのか。今、現状でやっているけれども、このように変わってほしいというところをしっかりわかりやすく具体的に指摘をして項目を立てるという形の提言が求められているのではないかと思います。
 今後、この在り方検討会はいずれまたやらなければならないだろうと思いますので、その時点でしっかり継承ができるように。在り方検討会はこのように言ったけれども、現実はとても難しかったということもあるかもしれない。それから、お願いをしたけれども、それぞれのナショセンの努力が足りないというか、うまく現実には回らなかったということが先々に検証できるような形での提言にしなければならないと感じます。
 既にお話がいろいろ出ていますが、運営費交付金がこのように減ってしまう中で、成果を出せというのは、場合によっては、ある意味、非常に厳しいことだと思います。外部資金の導入ががんセンターはあってそれ以外はないということですが、私は小児科で、成育医療研究センターで企業に求められるようなものをどんどん出せるだろうかと考えると、なかなかこれも難しいし、企業が求めるものばかりをやって果たして国民全体に役立つのかどうかというところもなかなか難しい。一方で、運営費交付金はどんどん減っていっているという中で、何ができるのかということを考えなければならない。
 したがって、この在り方検討会は、それぞれのナショナルセンターが今後の運営に資するように、具体的な指標なり目標をしっかりとお示しして、それに基づいて運営を変えていけばうまくいくという形の提言にぜひしたいなと願っております。
 以上でございます。
 
○永井座長
 どうぞ。
 
○神庭構成員
 言うまでもないのですけれども、今後の人口動態を考えても、超高齢化社会とともに少子化社会が来るわけで、これまでのナショナルセンターがその時々の大きな問題に対応すべくできてきたように、今後の日本の社会のことを考えると、どうしても高齢化の問題、少子化の問題、これには6ナショナルセンターは少しずつ動いていかざるを得ないと思うのですが、中でも高齢化の問題を考えたときには、長寿、精神・神経、もちろん国循ほかもそうかもしれませんが、活躍を期待したいと思います。外部資金の獲得などを見ても、もっと頑張ってアクティブにやってほしいと思います。
 国の研究費が限られていて、これをふやしてくれと言うのは易しいけれども、なかなか現実にはならないでしょう。高齢化社会の、例えば、認知症、先日の久山の研究はびっくりしたのですけれども、将来、日本人高齢者の3人の1人は認知症になるという予測をするデータが出てきたのです。それでは、認知症を治すのか、早く発見するバイオマーカーを見つけて先制医療に入っていくのか、あるいは、もっとその前から、若いころからの予防、生活習慣の予防というところから入っていくのか、範囲を狭めていかないと研究費を有効に使えないのではないかという気がします。
 一方、少子化を考えた場合は、もちろん成育、精神・神経センター、国際センターの国府台の活躍が期待されます。現実に臨床的に問題になっていますのは、お子さんが、児童精神でも小児神経でもいいのですけれども、専門の方にかかりたいとなると、半年先とか、地域によっては1年先とか、そこには専門家がいない、という診療科と医師の偏在とが同時にありまして、この3ナショナルセンターには、これらの医療を担える専門家の育成に力を入れていくべきではないかと思います。
 それから、研究も世界トップレベルでイノベーションもというのは、確かに否定はできないのですけれども、もしかしたらセンターによっては研究も臨床も人材育成もトップでと言われても、それは荷が重いのではないかと言わざるを得ないので、ネガティブなことを言うようですが、そのかわり、日本には理化学研究所とか他の研究施設があって、むしろその辺の役割分担や連携をもっと大所高所から考えてもいいのかなと思いました。
 
○永井座長
 メディカルな開発研究はナショセンに期待せざるを得ないのではないのでしょうか。荷が重いかもしれませんが、ミッションとしてぜひ掲げていただきたいと思います。
 
○神崎構成員
 本日の議論をお聞きしていて、少しずつ私も頭の整理がついてきた気がしますので、発言させていただきたいと思います。永井座長がおっしゃったように、大きなテーマというか、目標というか、これを掲げることは大変重要であり、たたき台の1行目は私も少し理解できなかったところがあったのですが、先ほど永井座長から医療と研究開発という2つの大きな柱があるというお話を伺いましたし理解することができました。そして、「医療」という点に関して花井構成員から「医療は患者のためであるべきである」というお話がありました。そして、研究開発において日本の産業や経済とのつながりが非常に大事である、というお話もありました。この2つのことをたたき台の中に書き入れる必要があることと、もう一つは、大きな絵だけでは物事が動かないという現実がありますので、今まで出てきたような、企業からの投資を具体的にどのようにしたら受けることができるのかというところも、明確に6NCに伝えることが必要だと思います。あとはデータの共有性という点についても本日何度も指摘があったと思います。このような大きな視点と具体的な方策を明確にし、かつ、この在り方検討会で出した成果をもって「あなたのセンターにはこういうことが求められています」ということを明確に示して差し上げることができれば、この検討会の意義があるのではないかと思います。
 
○永井座長
 先ほど理研の話が出ましたけれども、理研も運営費交付金が急激に減っていいます。なお理研には病院がありません。ナショセンが病院を持っているということは、それを生かした開発研究をすることが非常に重要なミッションだろうと思います。
 いかがでしょうか。
 岡構成員。
 
○岡構成員
 すごい提案があるわけではないのですけれども、先ほど座長が今後のこととして地球規模の課題や時代の変化に対応するようなという非常に高いビジョンを出されました。それを今回の提言の中に打ち出していただけると本当にありがたいと思うのです。しかし、ナショセンの研究所も日本の中では比較的大きい研究所ではありますけれども、これだけ資金的な面で年々厳しくなっている中で、しかも戦う相手は海外の非常に規模の大きな研究所ですので、決して海外と戦うときの十分な環境ではない。そういう中でどうするかという、前向きな提言を入れていただくことは本当に大事ではないかと思います。
 各ナショセンの研究所の方がプレゼンをする中で、どちらかというと、一生懸命これだけ頑張っているぞということをよくおっしゃったとは思うのですけれども、ただ、その展望として明るいかと言われると、年々資金が減ってくる中で工夫をされているというのが現状かと思っています。
 その中で、AMEDの研究費なども、最近、成果を上げるようなものに重点的に資金を振り分けていただいていますので、そういう中から、結果が出るものについて、より研究をしていければいいのかなと思います。例えば、成育医療研究センターの研究所にしても、全ての分野をカバーするわけにはいかないと思いますので、研究所の中でコンペティションがあって、結果を出しそうなものについて選択をして生き残ってきているということだと思います。なかなか大きなビジョンを持つには、全体としては厳しい状況であることは間違いがないのではないかと思います。大学のほうもが今は厳しいですけれども、ナショセンの研究所としても決して海外との研究の競争の中で楽な状況ではない。そこのところは理解してあげないといけないと思っています。
 先ほど小児の領域でのお話があったのですけれども、小児の領域で言いますと、確かに、例えば、お子さんを支援する医師の地域偏在などもあるのかもしれませんけれども、児童精神など分野によってはなかなか予約がとれず受診できないという状況がある。そういう中で、実際にはかなりナショセンは頑張っているほうではないかと、私の大学にいる立場からすると思います。かなり人材育成という点では頑張っておられますので、その点はさらにむしろプッシュしていただければと思います。成育医療研究センターもそうですし、あるいは、精神・神経センター、国際医療センターも本当にそうだと思います。むしろそれが足りないという感じだと思うのですね。大きさとして不十分である。だから、人材を育成しその枠内で育てても、砂に水をかけるように、どんどん地域に吸収されていく。本当にそういう状況なのではないかと思いますので、そこはむしろ拡張していくことができれば本当はすばらしいのだと思います。
 以上です。
 
○永井座長
 どうぞ。
 
○末松構成員
 今後の役割の前段の総論のところ、メーンの目的、国民のQOLの向上に資する研究開発をナショナルセンターに担っていただくということは大体皆さん共通だと思うのですけれども、今度は各論にブレークダウンをしていくときにお金の問題が当然出てくる。
 そこのお金の問題に関しては、一つはパブリック・プライベート・パートナーシップというやり方があります。それにもなかなか限界があるものの、一つの手段として、民間の資金をパラレルに使うというのは非常に重要なやり方だと思います。
 もう一つは、これはAMEDが発足してから1年ちょっとたった頃、外部有識者による医療研究開発の政策提言の内容としてホームページにも公開している内容があります。これはかなり厳しい議論が出るかもしれませんが、医療費の1%程度を医療のR&Dに向ける。これは、正確な数字は忘れましたけれども、1%でも相当のお金になるわけです。イギリスはそれを実際にやっています。1%がR&Dに向けられていて、そのR&Dが全部成功するわけではなくて、当然失敗があるわけですけれども、それがまた新しいバリューを生み出すという好循環が、ここ10年ぐらいでできてきているのではないかと推移を見ています。そういった議論も恐れずに思い切ったNCの改革をするのであれば提言の中に本当は盛り込めればいいのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○永井座長
 今の点、追加させていただきます。医療が41兆円ですが、そのうちの4割、16兆円は国と自治体からの支援です。国から11兆円、地方自治体から約5兆円の支援が行われています。医療の評価研究や開発研究、さらにインフラ整備は、11兆円の1%、1,100億円を研究費に充ててもよいように思います。法的な問題があるかもしれませんけれども、そういうことを考えませんと、ナショセンが必要な研究費をまかなえません。いかがでしょうか。
 
○佐原審議官
 末松先生の御意見のクラリファイだと思うのですが、今でもAMEDに1,000億円を超える額が行っているわけでありまして、そういう意味では、国費を投入している部分のうちの約1%に近い額は行っていることになります。御趣旨がもっとNCだけで行けということなのか、大学も含めてやったらどうかということでしたら、現在のところ科学研究費や運営費交付金なども含めればかなりの部分が行っており、むしろその使い方が問題だと思いますので、御発言の御趣旨を伺えればと思います。
 
○末松構成員
 医療の研究開発のお金の使い方にいろいろな無駄があって、できるだけそれをミニマイズしようという努力はAMEDとして並行してもちろんやるのですけれども、座長がおっしゃられているエコシステムですね。これだけ地域的にばらばらなところに見事にナショナルセンターが散っていて、ジオグラフィックに非常に近いところに凝集したいろいろな機能ユニットが産学連携で集まるような仕組みはなかなかつくりにくいですよね。そこを再編成するのに、我々が今持っている研究開発費は充当できません。箱物はなかなかつくれませんし、つくらないほうがいいと思うのですね。
 それとは別に、しっかりとしたエコシステムをつくるための資源投資をどういう財源でやったらいいかというのは、なかなかオープンディスカッションになっていないと思うのです。それをやっていただきたいというのが私の意見です。お金をくださいとは言っておりません。AMEDに入れてくださいとは一言も申し上げておりませんので、そこはよろしくお願いいたします。
 
○永井座長
 AMEDに入れた分、AMEDの資金を別の基礎研究に使えばよいと思います。医学に限らずです。新たな研究費の財源確保は国として非常に大きな問題です。社会保障費が研究開発費を圧迫しているのであれば、医療の意義を評価するための研究費くらいは社会保障費を充てても良いのではないかと思います。ほかにいかがでしょうか。
 
○花井構成員
 ちょっと各論になりますけれども、資料として、ずっとこのナショセンの議論で、トランスレーショナルリサーチという言葉があって、要は、国立国際医療研究センターに関しては、臨床研究センターがあって、研究所があって、国際協力の一環で大学があって病院があるのですけれども、研究所と病院との縦割りの感じがここ何年かで大分解消してきたという話もありますけれども、その後、どうなっているのかという実情を、国立国際医療研究センターでいえば満屋先生が来てくれて、エイズセンターもあるのだけれども、そこはそんなに風通しがいいかというとそうも見えないというか、そういうところもある。
 それから、人材育成と交流について、これも古くからのテーマなのですけれども、国立時代から、人を動かしにくいというか、つまり、先ほどナショセンでどんどん地域に砂にしみ込むようにと言うのですけれども、必ずしもそうなっていなくて、結局、国立系と国立病院機構間で人材をやりとりしようとすると、結構いろいろ困った障害がたくさんあって、例えば、こっちに行ったら降格人事になるからだめだとか、給料は上げられないとか、そういった人材を本当に循環させるための障害が、かつての国立時代のいわゆるいろいろなルールとかしきたりで動脈硬化を起こすというシーンをよく見るので、もしそういう点について何か現状がわかるものがあれば教えていただき、この機会に、適材適所というもの、また、評価についても、例えば、給料が公務員並みでなければいけないとか、いろいろあると思うのですけれども、ある程度の能力で報酬も柔軟にできるようにすると人の循環がやりやすくなるのですが、現状は余りやりやすいとは言えないというか、そういう状況があるように思うのですが、現状の認識でもしわかる資料があれば、今のTRについての現状と、人材の交流ではなくて循環に関する論点で何かわかるものがあれば、今後、出してほしいし、現状で何かコメントがあれば教えてほしいです。
 
○永井座長
 いかがですか。
 
○樋口医療経営支援課長
 医療経営支援課長でございます。
 一般的な法人間の人事交流の話ということで言えば、例えば、NHOとNCの間の人事交流になりますと、それぞれ独立した法人ということでございまして、現在、在籍出向の仕組みが双方の法人にないということもあります。そのため、形式的には転籍出向みたいな形になるということで当人の承認がないと異動させられないといった仕組みとなっております。そういう意味では、何ら塀がない形で人事交流をさせるというのは、外形的には多少のハードルがございます。
 
○花井構成員
 細かい話で各論になってしまっているのですけれども、近畿で異動していますよね。国循に行って、ナショナルから行って、キャリアパスで結局回って階段を上がっていく感じになっている。あれは、近畿は近畿とか、ブロックで分かれているのですか。
 
○樋口医療経営支援課長
 国循は近畿にございますので、基本的には近畿管内の方々で異動をお願いして回っていただいているということでございます。関東地区は関東エリアの人たちで人事を回しているという状況になっております。
 
○永井座長
 研究者もそうなのですか。研究者が異動するとか、さっきのバイオバンクとかデータベースでしばらく国循からがんセンターへ行って職を得て共同で開発するとか、そういうことは今のところはないのでしょうか。
 
○樋口医療経営支援課長
 研究者とかドクターに関しては、6NC間で活発に人事交流がされているということはあまりないと思います。
 
○永井座長
 前にも発言しましたけれども、がんの研究者があるときから脳科学を研究してもよいと思うし、その逆もあってよい。また、バイオバンクやデータベースもいかに有機的に結びつけるか工夫が必要と思います。
 いかがでしょうか。
 山口構成員。
 
○山口(俊)構成員
 先ほどの議論に戻るのですけれども、医療費から1%を出すべきだというのは、私は反対です。どういう御理解をされているかわかりませんけれども、今、病院は非常に苦しくて、利益は3%とか4%というレベルのときに、これから新しい投資をしなくてはいけないとか、いろいろなことがあるときに、そこから1%を持っていかれるというのは、筋違いだと思います。本来は研究費は税金の中から投入すべきだと思います。
 
○永井座長
 イギリスは医療費の1%を研究開発費に回しています。私は国の支援している11兆円の1%くらいは医療の検証に使う。それぞれの医療が本当に有効かどうかをきちんと評価していただきたいと思います。日本では大規模なレジストリ研究や介入試験ができないのは、まさにそのための研究費がないからなのです。
 まだいろいろ御意見がおありかと思いますが、そろそろ時間になりましたので、ぜひ次回に向けてメール等で御意見をお寄せいただければと思います。
 本日はここまでですが、事務方から連絡事項をお願いいたします。
 
○江口医療経営支援課長補佐
 どうもありがとうございました。
 次回の会議の日程につきましては9月中を予定しておりまして、また詳細な日時、場所等は、構成員の先生方に追って御連絡をさせていただきたいと思います。
 また、来月、7月18日に23区内の3センターの見学会を開催するように御案内しておりますが、参加の御予定をいただいている構成員の方々におかれましては、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
 
○永井座長
 以上で終了いたします。
 どうもありがとうございました。