第3回 国立高度専門医療研究センターの今後の在り方検討会 議事録

日時

平成30年5月30日(水)14:00~16:00

場所

全国都市会館 大ホール(東京都千代田区平河町2-4-4)

議題

国立高度専門医療研究センターの今後の在り方について (ヒアリング)
1.国立がん研究センターからヒアリング
2.国立循環器病研究センターからヒアリング
3.国立長寿医療研究センターからヒアリング

議事

 

○江口医療経営支援課長補佐
それでは、定刻となりましたので、ただいまより第3回「国立高度専門医療研究センターの今後の在り方検討会」を開催させていただきます。
構成員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
まず、日本製薬工業協会で人事異動がございまして、今回から畑中好彦構成員から中山譲治構成員に交代となっております。
続きまして、構成員の皆様の出欠状況を御報告させていただきます。
本日は、岡明構成員、中野貴司構成員、中山譲治構成員から御欠席の連絡をいただいております。なお、中山譲治構成員の代理としまして、国忠聡参考人に御出席をいただいております。また、相澤英孝構成員、本田麻由美構成員より、おくれて参加との御連絡をいただいております。
なお、医政局長の武田につきましては、公務のため、おおむね14時40分ごろに中座させていただきますので、御容赦いただきたいと思います。
それでは、カメラの方はここで御退室をお願いいたします。
議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。
お手元に、議事次第と座席表、各々2分冊から成ります資料1~3、参考資料としまして参考資料1~3、編綴をしておりますファイルでございますが、前回までの会議資料と議事録をお配りしております。なお、前回第2回の議事録につきましては、現時点では未定稿になっているものを編綴しておりますので、御留意いただきたいと思います。
不足等がございましたら、事務局までお知らせいただきたいと思います。
また、本日は、前回に引き続きまして、国立高度専門医療研究センターからのヒアリングということで、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立長寿医療研究センターの3センターから御説明をいただきます。
以降の進行につきましては、永井座長にお願いいたします。
 
○永井座長
それでは、これから国立高度専門医療研究センターのヒアリングを始めたいと思います。
構成員の皆様方には、お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございました。
センターから、早速、よろしくお願いいたします。
 
○中釜理事長
国立がん研究センターの中釜です。
それでは、早速「国立がん研究センター(NCC)の役割と課題」について、お話しさせていただきます。資料は、このA4横あるいは目の前のスライドを使って行いますが、加えて、A4縦の「資料」と書かれた2アップのものを適宜参照しながら説明させていただきます。
(PP)
まず、「I 国立がん研究センターの役割」についてです。
これまで、国立がん研究センターは、基礎研究とTRの連携強化により、新しい診断・治療法を開発することを進めてきました。具体的に言いますと、内視鏡診断や、ここに書き示しましたNCCオンコパネルの開発、RET融合遺伝子といった肺腺がんの新しい遺伝子の発見、新規医療技術の開発等を進めてきました。また、がん診療連携拠点病院は全国で437施設あり、大学病院等とも連携しながら、日本のがん医療の均てん化も進めています。加えて、がん医療・がん研究における中心的な人材を数多く輩出してきた実績があります。それから、これらの開発研究の基盤となるような全国がん登録あるいは長期多目的コホートをベースとした研究基盤を構築し、これらの研究基盤を用いた研究を強力に推進してきた経緯があります。さらに、ここには記載していませんが、バイオバンクというがん患者さんから得られる膨大な試料(検体)バンクも着実に構築しており、それらを広く研究開発に活用しています。
今後の目指す方向性としては、がん領域の内外ネットワークのハブとして、研究開発成果を最大化することだと考えています。また、世界レベルの開発力をつけることです。具体的には、グローバルに通じる新しい診断・治療法の開発、全ゲノム解析やAI開発を含めた個別化医療の推進です。それから、先ほども申しましたが、がん医療のネットワークのハブ機能として、症例集積の観点からの連携が必要な希少がん・難治性がんといったアンメットニーズの高い疾患領域のがん領域においても研究を推進していく。予防から、発見、さらにはサバイバーシップにいたるまでのがん医療の全体を俯瞰した科学的根拠に基づく政策提言というものを進めていきたいと思います。加えて、持続可能ながん医療システムの構築が非常に重要で、医療経済的な視点、こういうものも踏まえながらやっていきたいと思います。
(PP)
簡単に1枚のスライドで示したものがこの資料ですが、現在、センターの中では、このNCCの将来像を、中長期ビジョンを見据えて進めています。一番上に、我々が目指す方向としては、「がんを克服し、安心してがんと生きる社会を実現」することが示されています。そういう社会像を目指しながら、世界をリードするキャンサーセンターとして進んでいくということであります。
その中において、真ん中に書かれていますが、まず、NCCの強みとして、豊富な臨床例を活かした本態解明、中長期の大規模な開発基盤、さまざまなステークホルダーの方々とのネットワーク、こういうものを形成し、政府との協働・連携体制によって、このようなNCCの強みを生かしながら、日本のがん医療を牽引する、同時に、世界トップ10の開発力を推進していくということであります。
具体的に、日本のがん医療の牽引という点においては、国民皆保険下で持続可能ながん医療のシステムを構築するとか、国内がん医療ネットワークのハブ機能を果たす等であります。
また、世界トップ10の開発力においては、グローバルに通じる独創的ながん医療を創出することと、アジアに多いがん種に関しては、その予防・診断・治療まで俯瞰したような開発を進め、世界を牽引したいと考えています。世界をリードする創薬、医療機器・技術開発を目指したいと思います。
これを可能にするために特に注力する課題としてここに示しましたが、情報基盤の充実したものを構築することであり、同時に、この情報基盤を踏まえたゲノム・免疫医療の最適化、希少がん・難治がんの解決、患者本位の医療モデル提示、政策提言、国民への正しい情報提供、こういうものを進めていきたいと考えています。
(PP)
これから、「II 研究・開発」、「III 医療提供」、「IV 人材育成」、「V 国民への情報発信、政策提言」等について、個別に説明させていただきます。
まず、「II 研究・開発」ですが、これは研究開発法人として、まず第一に中心に据えて進めていきたい課題です。
NCの強みを生かした重点研究開発領域としまして、先ほど申しましたが、豊富な診療実績と独創的ながん基礎研究を土台とした、基礎~臨床が連携して、シームレスな連携に基づく新しい診断・創薬・医療機器の開発研究を進めていく。それから、恒常的な長期縦断的取り組みを基盤とする研究、いわゆる、がん登録、各種コホート、レジストリによる科学的根拠に基づくエビデンス構築を目指す。がんに関する全領域をカバーするという総合力を発揮したいと考えています。
具体的に基礎~トランスレーショナルリサーチの領域においては、これは2008年に始めてから10年になるのですが、国際的ながんゲノムコンソーシアムという大きな事業の中の一員として貢献しています。最近では、人工知能を用いた先端的ながん創薬・個別化医療の研究も進めています。これまでに既に臨床家と一体となってオリジナルな抗がん剤、核酸医薬とか、小分子化合物によるがんの阻害剤、抗体医薬、こういうものを開発し、実際に臨床試験に入ったところです。それから、製薬企業との連携によるTRあるいはrTRの研究の推進においても、具体的にはGAPFREEとか、PDXライブラリーの構築を目指して、より積極的にさらに一層この産学の連携を進めていきたいと考えています。
臨床開発においても、ここに示しました国際共同治験の推進を図っており、例えば、アジア地域の4カ国を中心とした創薬開発としてPATHWAY trialや、早期開発としてアジア5カ国が連携したAsian Oncology Early Phase 1 Consortium、 Asia Oneといいますが、こういうものを積極的に進めて、アジア地域における早期開発のリーダーシップをとりたいと考えています。それから、実用化に直結するような医薬品の開発等々も進めており、加えて、低侵襲・高性能な機器開発についても取り組んでいるところであります。
(PP)
公衆衛生領域においても、ここに示しましたコホート研究に基づく健康寿命の延伸のためのエビデンス構築を進めており、これが、今後、増え続けるがん患者さんやその他の年齢に依存する疾患の克服にも活かされることで、健康寿命の延伸に貢献したい。
4番目のレジストリ、CINの主導に関してですが、既にがん登録法に基づき全国のがんの登録を進めていますが、加えて、産学連携によるレジストリ構築として、いわゆるSCRUM-JapanあるいはMASTER KEY Projectといったものも既に進めているところです。SCRUM-Japanの場合は、肺がん、消化管といった比較的コモンながん種のレジストリ、MASTER KEYの場合は、希少がんのレジストリを進めております。がんゲノム情報管理センターは今年から始まるがんゲノム医療の中心となるようなレジストリー事業です。
これに関しては、添付資料の20ページを見ていただきたいのですが、ここに詳細が書かれています。このがんゲノム情報管理センターで行うことが、我々センターが目指す一つの代表的なモデルです。この4月以降、来年のがん遺伝子診断におけるパネルの承認を目指して先進医療がスタートしたところですが、これの目指すところは、ゲノム情報に基づいた個別化された最適医療を実現することであります。これをがんの領域で実現するためには、これを全国規模で進めて行くためにも、保険収載のもとで全国民を対象として進めることが必要です。そのためには、パネルを承認した後、それが保険収載のもとで広く国民に届く仕組みをつくると同時に、その集積された情報をストレージする仕組みが重要で、ストレージされる情報には、がんゲノム情報に加えて詳細な診療情報が付随するわけで、これを正確に精度高く保存・保管をして、これを国民が広く使うことができる、新しい創薬開発につなげられるような日本の財産として構築していくことが重要です。これが我々センターのミッションだと考えており、このがんゲノム情報管理センターの推進は非常に代表的な我々の取り組みを示しているかと思います。
それから、これらを支える支援体制についても進めているところですが、課題もあります。いわゆる中長期で一貫した取り組みが必要なものに関して、外部資金が得にくいもの、いわゆるコホートやレジストリ構築、こういうものをいかに効率的かつ継続的に進めていくかということが課題としてあります。それから、個人情報保護の観点から、まだまだ法的な整備が途上のものに関して、開発成果最大化と個人情報との兼ね合い、バランスをいかに保つかということに苦心する必要があるかと考えています。
(PP)
続きまして、「III 医療提供」についてお話しいたします。
医療提供も、実質的には先ほど申しました開発研究とリンクして、研究・開発を付随しながら進めていくものでありますが、このNCの役割を踏まえた医療提供としては、まず、豊富ながん診療と臨床研究基盤に基づいて、全国のがん医療の水準向上に資するエビデンスをつくるということです。加えて、両病院が臨床研究中核病院として主導的に治験・臨床試験を推進しておりますが、これにつきましても、開発研究とリンクしておりまして、例えば、資料の23、24ページには、昨今、がんセンターがこの開発研究において急速にこれらを展開していることがグラフで示されています。産学と連携しながら、産業界と連携しながら進めていることが見てとれるかと思います。
今、申しました疾患に特化した研究開発法人の機能をフルに活用して、ゲノム医療の最先端研究を推進することとし、これも病院と連携しながら進めていく必要があります。希少・難治性がんについても、研究開発の一環としてエビデンスを創出しながら、新しい医療シーズの開発を医療側としても推進しているところです。
まず、全国の診療水準向上に資するエビデンス創出に関しては、既にJCOGという事業の中で、これまで86のJCOG試験が診療ガイドラインに組み込まれているという実績があります。加えて、新しい研究・開発領域としては、IVR研究グループとか、支持療法のエビデンス構築、さらに新しい試みとしては、アピアランスという非常に新しい領域のエビデンス構築というものにも取り組んでおります。一番下の、がん診断初期から総合的な患者・家族支援サポートにも力を入れておりまして、東病院では平成26年度からサポーティブケアセンター、中央病院でも平成28年度から患者サポート研究開発センターを構築しております。これについても、お手持ちの資料の41、42ページあたりに細かい資料がありますので、御参照ください。
(PP)
次に、先ほど申しましたゲノム医療の実装です。これも開発的な部分と連携するわけですが、既にTOP-GEARというシステムで、ゲノム医療が実際に臨床現場で実装できるかということで検証していますし、SCRUM-Japanでは、産学連携をして、全国ネットワークでのゲノムスクリーニングが機能するのかということで、実際にその実績を示してきました。両病院が連携し、それぞれの強みを発揮してがんゲノム医療の実装に向けて力を発揮してきたわけですが、本年度は両方ともにゲノム医療中核拠点病院として指定されました。先ほども言いましたが、この両病院が中心的なハブ機関としてその役割を果たすことは、診療情報とゲノム情報が集約されるがんゲノム情報管理センターの設置と相まって、本当に大きな意味を持つと考えています。
高度医療技術・低侵襲医療機器の開発に関しても、昨年、NEXT棟というものを東の柏キャンパスにつくりました。これは次世代の外科・内視鏡治療開発をするということで、外科領域においても、新しい医療技術の開発にも精力的に取り組んでいるところであります。
それから、我々センターの役割、ミッションとしては、希少がん・難治性がんというアンメットニーズの高い課題に関して積極的に取り組む必要があると考えています。先ほど紹介しましたMASTER KEYもその一環ですし、加えて、情報発信や啓発・支援活動として、中央病院では、月に2回、Meet the Expertを開いて患者さんとの情報共有を図っているところであります。加えて、国の希少がんの中央機関として指定されますので、今後もさらにこの希少がんの領域においては、新しい薬の開発や様々な医療シーズの開発に取り組んでいきたいと考えます。この下のほうに難治性がんも書いていますが、難治性がんに関しても、がん研究センターならではの総合力を発揮して、これまでの方法では治しがたい治療抵抗性のあるがんに関する早期の診断技術あるいは新規治療法の開発に関しても、研究機能と連携しながら医療現場でも実現して行きたい。
難治性小児がんに関しては、これも国内初の医師主導治験を実際に現在始めているところであります。
ただ、課題もあります。これから高齢化、超高齢社会を迎えるに当たって、高齢患者、臓器障害合併患者さんの総合的な診療を行うにはどうしたらいいか。これはこれまでのセンター完結型では不十分であり、今後は地域で完結できるような高度がん医療提供体制の構築、こういうものにもさまざまなネットワークを有効に生かしていきたい。加えて、麻酔科医の確保とか、さまざまな専門職、新しい専門職、電子カルテの広い利活用、こういうもの進めていく必要があると考えています。
(PP)
「IV 人材育成」に関して、これまで幅広くがん医療・研究に携わる人材を育成してきました。例えば、医療現場においてはレジデント制度を始めて50周年ですが、既にこれまでに1,400人を超える医師を育成しており、全国で活躍してしている多くの病院長・大学教授等を輩出しています。それから、診療連携拠点病院での医療・相談支援に対する人材の育成、海外からの数多くの研修生の受け入れ、平成29年度は194人ということで、平成25年で95名ですので、この数年間で大幅に増えたと思います。このように、国内だけの人材育成ではなくて、国外にも目を向けた人材育成というところでも、我々のセンターとしては機能を発揮している。これを可能にするのが人材育成センターというセンター横断的な取り組みであり、さらに内容を充実していきたいと考えます。
今後の方向として、高度がん医療・研究の現場で活躍する人材育成は必須だと考えています。専門医制度との連携という観点では、専門医制度がかなり大学や地域に特化した医師育成のシステムですが、この中で高度がん医療を育成する人材というところで当センターの担う役割は大きいのかなと考えています。加えて、一番下に書いていますが、新たながん医療・研究に必要となるバイオインフォマティシャン、生物統計家、リサーチアドミニストレーターも、がんの現場における特化した必要人材であり、専門性の高い人材の育成にも貢献していきたいと考えています。
(PP)
それから、新専門医制度との関係については、先ほど言いましたが、NCCの人材育成では、地域完結型という大学中心の新専門医制度とリンクし、補完的な意味において、高度な技術を持った人材の中央育成機能を果たしていきたいと思います。
課題としては、下に書きましたが、がん医療・研究に必要となるこれまでにない専門職育成のために、教育研修を充実させることが必要となると思います。
(PP)
「V 国民への情報発信、政策提言」に関しては、がん対策情報センターが平成18年に設立されて10年となり、この10年間でかなり充実した情報発信のページを作成できました。今後さらに複雑・多様・高度化する情報をいかにタイムリーに更新していくか、新たなシステムを構築する必要があると考えています。これには、センターだけの機能ではなくて、全国のエキスパートと連携しながら、新しい体制を構築していく。まさにその議論に入っているところであります。
(PP)
政策提言に関しても、いくつかの例を示していますが、厚労省と一体となって進めております。がん登録、希少がん対策、国のがん対策評価という非常に重要な機能において、我々の実績・経験を生かして、今後ともこの領域で貢献しながら、日本全国のがん医療の充実あるいは開発研究の推進に貢献していきたいと考えています。
(PP)
「VI その他」、NCやその他機関との共同に関しては、今、お話ししましたが、まずはNCC、がんセンターとして、高度に専門化された機能、複雑化される機能をさらに強化していきたい。そのために、より効果的・効率的な事務機能を含めて、センター全体で組織の運営をより効率化していきたい。加えて、センターだけではできないものに関しては、専門能力を持ったほかの機関との連携、それに関するハブ機能を十分に発揮していきたいということと、加えて、効率的な運用というところは注視すべきかと考えています。業務の共同化あるいはNC間で機能を集約できるような、例えば、バイオバンクのようなものに関しては、協同・集約による効率的な運用を目指していくべきかと思います。ただ、NCCとしては、がんにおける専門性、世界をリードするリーダーシップ、アジアのリーダー、そういうものを目指し、先ずはそこの高度化を図ることによって、NC間の連携もより有機的なものが生まれると考えています。
(PP)
NC全体としての組織の在り方については、今、申したとおりですが、検討の方向としては、繰り返しますが、各NCがネットワークのハブとして機能するために必要な環境をまずは整備する。高度な医療ができる体制を整える。その上で、有効・効率的な連携の在り方について目指していくべきだと思います。
1つ、課題として挙げられていることとして、国立がん研究センターと国立成育医療研究センターの小児がんの体制についてですが、これは両センターの強み、成育医療センターにおいては小児医療の均てん化、国立がん研究センターに関しては新しい医療シーズの開発、こういうものを連携しながら、小児がんというアンメットニーズの高い領域にも踏み込んでいきたい、両センターが共同することにより、その目的が果たせるのではないかと考えています。
(PP)
独法化以降の取り組みとして、少し具体的な数値として挙げますと、新しい体制下で、企業との共同研究推進による共同研究費の大幅な増加、公的競争的資金の継続的獲得、企業との柔軟な連携体制、そのようなものを進めており、寄附に関しても最近は大幅にふえているところであります。
課題としては、このような成長する戦略を中長期に一貫して進められるような外部資金の獲得、あるいは外部資金の得にくいようなところ、例えばレジストリやコホートのような研究基盤的なものに関して、どのような工夫をして継続的に維持していくかということが課題として残ります。全体を俯瞰したマネジメントに関しても、きちんとした体制を整えることが課題と考えます。
私からは以上です。
 
○永井座長
ありがとうございました。
それでは、構成員の方から御意見をいただきたいと思います。
山口構成員、どうぞ。
 
○山口(育)構成員
山口でございます。
国立がん研究センターについては、患者から見ても非常に存在感が大きいセンターであり、特にがん対策情報センターのインターネットのページは月間510万ページが見られているということで、かなり情報も活用されていると実感しています。通っている患者さん以外にとっても非常に有効な情報発信をされていると思っています。
1つだけ今のお話の中でわからなかったのが、中央病院と東病院は協力をいろいろされていると思うのですけれども、何かすみ分けというか、役割分担というか、そのあたりをどのようにされているのかということを教えていただければと思います。
 
○中釜理事長
まず、私のほうから簡単に説明します。
両病院の大きな特徴としては、中央病院は高度に専門化された医療の提供、東病院はより開発的な医療の開発とその展開ということであります。ただ、これはお互いに連携するものであり、また補完するものであり、がん種や病態によってはそれらを切り分けているところがあります。例えば、東病院では、SCRUM-Japan、肺がんの全国ネットワークを東病院を中心に産学連携という形でやっています。中央病院では高度専門医療を提供する大規模な病院として希少ながんも集まってきます。希少がんに対する対策としては、同じネットワーク構築でも中央病院が主体となっているということですが、両病院の違いという点においては、冒頭に申したようなことかと思います。
両病院長から発言があれば。
 
○西田中央病院長
中央病院長の西田です。
私は、両方の病院で病院長をさせていただきました。まず、診療科等を見ていただいてわかりますように、中央病院はほぼ全部の診療科がそろっております。東病院は、もともとの開発の経緯から特定の診療科に特化してやっています。もちろん今はほかのニーズがあるので、少し以前よりはふえております。ですから、全体的に総合的にやるというところに関しては中央病院、政策的なところに関しては中央の築地のほうでやっていて、開発的なところはむしろ東のほう、中央もやらないというわけではないのですけれども、積極的に力を入れているのが東のほうと御理解いただけるといいと思います。
 
○大津東病院長
東病院のほうは、基本的に、理事長、西田院長からお話があったことと全く同じでございます。
病院の規模は中央のほうが578で東のほうが425ですので、サイズ的にはちょっと小さいですけれども、基本的には先端的なところが我々が一番求めているところで、かつ、世界のトップ、一番先端のところで研究に極力入っていくというのが東のポリシーです。
もう一つは、東病院の場合は、周囲が東大柏キャンパスと今度は産総研人工知能研究拠点も来ますので、かなり研究学園的な形になってきています。そういった先端的な医療が展開しやすい環境になりつつあるかと思っております。
 
○永井座長
よろしいでしょうか。
山口構成員、どうぞ。
 
○山口(俊)構成員
今のことに関連して、お伺いします。
我々は結構内容がわかっているので今の御説明でわかるのですけれども、患者さんの立場から見たら、例えば、胆道がんになったときに、なぜ私は東病院を選択して、私は中央を選ぶのかということは、今の説明でわかるかというとなかなかわかりにくいところがあります。ぜひそのあたりをわかるように少し皆さんに教えていただければいいのではないかと思います。
将来的に、このままの形で、関東圏にごく近いところにこうやって2つあるという形が理想的なのか。あるいは、いずれ統合したほうがいいのか。そういう将来の展望についても教えていただければと思うのですけれども。
 
○中釜理事長
先ずは私から。今、御指摘の点は、非常に重要な視点かと思いますけれども、実際には、東病院と中央病院は30数キロ離れているところでございまして、来院される患者さんの地域性はある程度特徴があるかと思います。柏のほうがより地域性が高い。それでも全国から患者さんが来ているわけですけれども。その際に、あるがん種だから、どちらを選ぶかということに関しては、それは両方の場が提供されていて、よりアクセスのしやすいほうかと思いますし、疾患の状態によっては、専門性の必要とされる技術について、お互いに意見交換をしながら、より適切な医療を提供できる。そういうことも可能かと考えます。
 
○西田中央病院長
中央病院長の西田です。
正直に申し上げると、標準治療の間は極端に変わりません。標準治療が終わった後がそれぞれの特色があるところだと思います。例えば、肝胆膵の話で言えば、どちらかというと肝臓側に東病院が力を入れて、我々のほうは膵臓に入れているというような分け方でやっております。
 
○大津東病院長
患者数の全体像でいうと、中央病院は東京都が半分の48%ぐらい、東病院は千葉県の患者さんが50%強です。それ以外は関東圏が主で、あとは全国ということで、地域的に、都内と柏の千葉県のほうとの違いがあって、一般的な標準医療のところは、それほど大きな差というか、患者さんの居住地による部分が多いと思います。
ただ、それ以降の標準治療を超えたところにおいては、若干それぞれの特徴が出る部分があるのではないかと思っております。もちろん両病院を経験している私自身も、レジデントのころは今の中央病院でやっていましたし、西田院長もそうですし、人においては、ある意味、両方を経験している人はそれぞれにいるということで御理解いただければと思います。
 
○永井座長
末松構成員、どうぞ。
 
○末松構成員
中央病院と東病院、研究所で、運交費の削減のプロセスで、中で相当苦労されたというのは私自身も知っておりますので、それについて伺いたいのですが、そういうお金を使って、例えば、臨床研究のデザインをサポートするようなスタッフとか、知財のマネジメントをやるスタッフが、今の国立がん研究センターはアウトプットが非常にたくさん出ているので、一体どれぐらいの陣容というか、人数や予算で行われているのか。それが中央病院と東病院で別々に行われているのか。その辺りのことを教えていただきたいのです。
 
○中釜理事長
まず、最初の知財に関して言うと、基本的には両キャンパスを同時に見ているのですが、人材としては4~5人のスタッフでやっています。これも、独法化以降、少しずつふえては来ているのですけれども、現在ではそのあたりの人数でやっています。ただ、非常に効率的に行っていると思うのは、知財収益の確保というよりは、知財となる様々な技術を生かして共同研究を推進しているという点で、実際には共同研究費による外部資金の獲得が大幅に伸びてきていることが特徴であると思います。
先ほどの研究支援に関しては、研究支援センターは両キャンパスを横断的に見ているのですが、実際にはCRCの育成を含めて両病院の特徴がありますので、そこは各病院で独自のシステムを交えながら、情報の共有に関しては研究支援センターを通して行うという体制をとっているところです。人員に関しては、CRCを一つとってみても、両キャンパスそれぞれにおいて40~50人規模とかなり多いわけですので、研究支援全般に関してかなり大きな規模を維持していると思います。
 
○大津東病院長
両病院は、臨床研究中核病院に承認されていますので、基本的には支援部門もそれぞれで持っているというのが承認の要件ですので、当初は倫理委員会とかサポートの一部分に先ほどの知財と産学連携の部分も共通的に置いていたのですが、実地調査等で臨床研究中核病院それぞれで独自に持つことをかなり言われて、柏のほうもほぼ全てがそろっていますし、知財、産学連携の対応の担当者も敷かれております。
 
○藤原企画戦略局長
戦略局長から追加させていただきますと、予算的には、運営費交付金から中央病院・東病院には余りお金は入っておりません。1億とか2億ぐらいしか入っていません。その運営資金は、大半が臨床研究中核病院、中央が2億、東が1億ちょっとですけれども、そのお金でやっておりまして、治験収入が現在両病院を合わせて30億ぐらい、共同研究費が20数億です。そのあたりを使って実際の運営をしていく。中央病院の臨床研究支援部門は100人ぐらいの体制、東病院も100人ぐらいの体制でやっておりますけれども、ほとんどそういう競争的研究資金は、AMEDからもいただいておりますが、大体60~70億ぐらいです。そういう競争的研究資金と治験と共同研究費を運営の費用として進めている状況です。
 
○永井座長
1つ、私から。
最近は、産学連携やイノベーションが強調されますけれども、実際、産学連携の成果として、イノベーションがどの程度起こっているのでしょうか。
 
○中釜理事長
産学連携のイノベーションは非常に難しい面がありますけれども、我々は企業との包括的な連携協定を結びながら、そのあたりを実現してきたと思います。新しい研究棟が昨年8月に開所しまして、その中ではワンフロア、企業連携フロアを設けていて、そこには、今、8企業ほどが入って、その中で今後さらにどのようなオープンイノベーションが可能かというところを議論し、実現していく。それが一つの課題かと思います。
 
○間野研究所長
お手元の資料のページ14をごらんください。
そこに、当センターの研究所から創薬の標的を見つけて、製薬会社と共同で薬を開発し、さらに臨床試験まで持って行った例を示してあります。例えば、IDH1変異型に特異的な阻害剤を開発して、前臨床試験でのPOCを研究所で取得して、その薬剤の臨床試験を病院で行うという、臨床開発が非常にオリジナリティーのあるシーズで行われている例があります。
ページ15、これでお示しするのはRET融合遺伝子を研究所で発見して、その遺伝子の患者さんを日本中から見つけるために、今はSCRUM-Japanになりましたけれども、前身であるLC-SCRUMという全国のがん患者さんのスクリーニングシステムを作り、バンデタニブという抗がん剤の臨床試験を行い、その有効性を臨床試験において証明し、さらには、バンデタニブを使っている人に耐性が起きるというメカニズムまで研究所で明らかにしたものがあります。
研究所と病院は連携して動いていますし、今、理事長が申しましたように、我々NCCは企業とさらに連携を深めて、研究所の中で企業が場所を持って開発研究もしていますし、既にこういう14ページや15ページにありますような成果も出始めております。
 
○永井座長
ライセンスアウトをして、ビジネスとしても動き始めたということですか。
 
○間野研究所長
そうです。もちろんそれらはいずれも知財を確保しているのですけれども、全般的には、知財のライセンスアウトをして、あとは企業に任せるというよりは、そこで実際に臨床試験とか、バイオマーカーであれば臨床性能試験も、がんセンターが中心となってそれを進めていきたいと我々は思っています。
 
○祖父江座長代理
どうもありがとうございました。
2つ聞きたいと思っているのですけれども、一番最初の将来像のところで、世界のトップ10の開発力を掲げておられたのですが、現在はトップ10に入っているのか入っていないのかよくわからないのですけれども、前にお聞きしたときに、例えば、米国などの世界の本当のトップと比べるとまだまだなのですというお答えが返ってきたのですけれども、そういうところとベンチマークとして比べて、何が足りない、今後、何をやっていくべきだと。特にこの開発に関連して、まず、それをお願いできますか。
 
○中釜理事長
この世界トップ10は、今、具体的な指標をお示しできるかというと、私も準備していないのですけれども、ただ、世界、例えば、米国のMDアンダーソンのような非常に大きな規模を持った病院、その規模感の違うところと単純な比較できないと思うのですけれども、どの辺を目指すのかといったときに、一つには、臨床試験あるいはファースト・イン・ヒューマン(FIH)、グローバルなFIH試験の臨床試験の数とか、そこから新しいシーズを創出する数、といったものは目標値として挙げられるのかと考えています。
もう一つは、今度、ゲノム医療を日本は日本全体で推進するわけですから、そこで蓄積されるデータの利活用を日本全体として取り組んでいく。そういった意味で、がん研究センターはそのハブ機能を果たすと思うのですけれども、世界のトップ10と称されるような形で、いつも表に出てくるという形では実現できるかと期待しています。
3点目は、アジア地域に多いがん、アジアでコモンながんの希少フラクションにおける臨床開発においては主導的なリーダーシップを発揮することによって、そういう視点から、アジア地域のがん種に関して、希少フラクションに関しては世界トップだというところを目指すのが一つの具体的な目標かと考えています。
 
○藤原企画戦略局長
あと一点、企画戦略局のほうから補足しますと、今、おっしゃられた、例えば、アメリカの最大のがんセンター2つ、スローン・ケタリングとMDアンダーソンがいますけれども、そこの予算規模が、スローン・ケタリングが大体年間4,400億、MDアンダーソンが5,000億ちょっとで、当センターが700億弱なので、かなりの違い。職員数も、スローン・ケタリングが1万4,000人ですし、MDアンダーソンが2万人おりますので、私どもの規模3,000人と比べたら、予算が今の10倍ぐらいに行かないとトップ1・2にはなれないだろうと。
ただし、例えば、ハーバードの関連病院のダナ・ファーバーだと年間予算1,400億ぐらいです。ドイツの国立がんセンターは270億、イギリスで一番有名なのはロイヤルマースデンですけれども、あそこは500億ぐらいなので、そのクラスとは多分引けをとらないだろうということで、ベスト10には入っているとは思うのですけれども、ただ、国際広報がいまいちで、まだネーミングがそこまで広まっていないというところはあります。規模感と実績は十分伍していけるような感じはすると思います。
 
○祖父江座長代理
どうもありがとうございました。
もう一点だけいいですか。細かい問題になるかもしれませんが、がんゲノムを非常に期待しているところなのですが、今のお話の中でも、トップ10になるにはそういうがんゲノムをやっていくということだと思うのですけれども、臨床データが非常に重要になってくるのだと思うのですが、長期予後とか、臨床データをどれぐらいきめ細かくフォローできているのかというデータのデポジットシステムが気になるのですけれども、その辺はどうされようとされているのですか。
 
○中釜理事長
それについては、間野から説明します。
 
○間野研究所長
ページ20、がんゲノム情報管理センターの図があります。恐らく来年の春ぐらいに、日本でがん遺伝子パネルが保険で通るのではないかと考えられています。それに向けた体制づくりということで、当センターの中にがんゲノム情報管理センターというセンターをつくって、情報を集約して、逆にそこからも各患者さんにゲノム変異に基づいてクリニカルレポートをつくって送り返すという体制をつくろうとしています。そこで集めるのは、がんの患者さんのゲノム情報も集めますけれども、同時に、先生がおっしゃるように、臨床情報を集めることが極めて大事だと思っています。
一方、保険収載のもとで行うと、患者さんの数はすごく大きなマスになりますので、臨床医がその臨床情報をたくさん入力してここに送るとなると、かなり実現性が危ぶまれて、そこのバランスが難しいところです。私たちが必ず集めたいと思っている情報は、ゲノム変異情報に基づいて、ある薬を選択して投与して、それがその患者に有効だったのか、効かなかったのかという情報はぜひ集めたい。それから、薬を投与した際に、すごく重篤な副作用が出た、Grade 3以上のAdverse eventが出た場合に、その情報をぜひ集めたい。それがゲノムプロファイルによってある程度予測できれば、新しいバイオマーカーがこのセンターから発信されていくわけです。そのように、予後、薬剤反応性、重篤な副作用の有無に関して、できるだけ臨床の先生方に負担をかけない形で情報を集めるように、例えば、今、やっていますのは、日本は電子カルテの開発ベンダーがそんなに多くありませんので、電子カルテの中にそれを集めるためだけの簡単なページを2枚から3枚、新たに各ベンダーにつくってもらって、それを拠点病院に実装するようなことを考えています。
ですので、労をできるだけ少なくして、本当に必要な情報を集めたいと考えています。
 
○永井座長
本田構成員。
 
○本田構成員
研究の話もとても重要で、患者、国民として大変期待しているところなのですけれども、NCとしての役割として、国の政策を支えるもしくは国の政策が不十分なときにはかじを切るとか、そういうための役割がNCとしてあると思うのですけれども、それに対して、いろいろなこういうことをやっているという御発表があったかと思いますけれども、例えば、エビデンスに基づくための政策を確立していくために、今、どのような体制をセンター内で設けていらっしゃるのかということと、いろいろやってきていらっしゃるとは思うのですけれども、その視点で、今、一番足りていないのは何かを教えてください。
 
○中釜理事長
政府、特に厚労省との連携という意味では、センターの中では、企画経営部、企画戦略局を中心に、そういうところの情報をできるだけ集約しながら、必要な対策については厚労省とできるだけ多く意見交換をするような場を設けたいと思います。
センターのほうは、体制としては、今、言ったような体制だと思うのですけれども、そこで課題として残るのは、重要なテーマに関して、常にタイムリーに意見交換ができるような仕組みになっているのか。それは我々としても改善する余地は残っているのではないかと考えています。恒常的に情報を共有しながら、それを常にバージョンアップしていきながら、よりよい仕組みを提言として示し議論する。そのためには、情報の共有とより密な意見交換の場が必要かと思っているところです。それは課題としてあると思っております。
 
○永井座長
藤原先生、手短にお願いします。
 
○藤原企画戦略局長
企画戦略局としては、今、本田構成員がおっしゃったことは非常に大事だと思いますけれども、何しろ人材が足りないところがあります。ただ、それに向けて、厚労省、PMDA、AMED等との人事交流も続けておりますし、厚労省の出先と言っては悪いですけれども、企画経営部みたいなものを置いて、厚労省からのいろいろな情報をしっかり集約する。それから、がん対策情報センターにはたくさんのがん科からのコンタクトがありますので、そこも窓口になっている。
将来的にもう少し人員がふえてくれば、企画戦略局に政策室が置いてありますので、そこにワンストップでいろいろなものがコンタクトできるような体制にしていきたいと思います。
 
○永井座長
河村構成員、どうぞ。
 
○河村構成員
国立研究開発法人として、中でも本当にとりわけ大変高い研究の業績を上げていらっしゃると認識しているのですけれども、そのお立場で、医療の提供をどうお考えかというところをお尋ねしたいと思います。
きょう御説明くださった中でも、6ページ、7ページのあたり、全国の診療水準の向上に資するエビデンス創出とあって、そういう位置づけでやっていらっしゃるのかなと思っていたのですけれども、いろいろきょうの御説明を伺っていると、例えば、ケアのところをお考えになるとか、今後の課題のところで全国的な協力も視野に入れながら、地域で完結できる高度ながん医療提供体制といういろいろな御説明があったのですけれども、がんの治療は全国津々浦々の大きな病院でやっていらっしゃると思うのですけれども、御研究のための、もちろんいろいろな診療が必要でエビデンスが必要だということだと思うのですが、それ以上に、日本全体としてのがんの治療、診療とかケアも含めて、それも何か統括していかれる役割、認識もお持ちでしょうか。
 
○中釜理事長
短く言うと、そう認識しています。
医療においては、現在の最良の医療を届けるというミッションと、医療を改善する、あるいはニーズがないところの医療をいかに開発するかというところの大きく2つがあるかと思うのです。その中で、開発の部分に関しては、治療薬だけではなくて、今、支持療法とか、サポーティブケア、アピアランス等々、いろいろな社会的なニーズも高まっているものの、十分なエビデンスがなく行われているところもあるので、そこに関してもエビデンスをつくるような臨床研究の必要性を考えていて、それができるのは我々のセンターと考えています。日常的な最高の医療の提供と開発研究を両立しながら進めていく必要があると認識しています。
 
○大津東病院長
東病院のほうは、柏でちょっと田舎の地域というところが、地域との連携が極めて強い部分がございまして、緩和ケアスタッフが充実していますので、地域連携をかなり盛んに行っております。かなり以前から緩和ケアに関しての地域連携の柏モデルを構築しまして、そのモデルを、今、全国的に展開している。一番最初につくっているのが、診断早期からの緩和ケアの介入ということで、サポーティブケアセンターが早い段階から組織されて、そこの対応をしているというところです。
 
○永井座長
手短に。
 
○西田中央病院長
追加で言いますと、医療のほうに関しては、クリニカルクエスチョンに関して、幾つかそれに対しクリニカルトライアルをする臨床研究グループがあります。それを全体的にまとめようということで、今、中央病院は全国のグループをまとめる活動を中心的にやっています。
2番目には、J-SUPPORTとか、先ほど言いましたように、ケアの領域に関してはオールジャパンでやっています。ですから、これからそういったところが広がっていくのではないかと思います。
 
○河村構成員
今の関係で、国のほかの病院があると思うのですけれども、例えば、国立病院機構さんとかでも政策医療の5疾病でがんが入っていると思うのですけれども、そういうところとの関係はどうなのでしょうか。すみ分けはどうなのでしょうか。がんについては、がん研究センターでなさらなければということですか。
 
○中釜理事長
がんに関しては、そうですね。特に新しい医療の開発あるいは十分にエビデンスがないところの開発研究は、こういう高度専門医療の病院できちんとしたネットワークを組みながら進めていって、エビデンスが出たものに関しては、それを広く普及・実施する均てん化のエンジンとしていろいろな仕組みを使っていく。そのように理解しています。
 
○永井座長
ありがとうございました。
まだ御質問はおありかと思いますが、メール等でお寄せください。
それでは、がん研究センターの皆様、ありがとうございました。
続いて、国立循環器病研究センターにお願いしたいと思います。
(国立がん研究センター退室)
(国立循環器病研究センター入室)
○永井座長
ただいまから、国立循環器病研究センターからヒアリングを行いたいと思います。
それでは、小川理事長、よろしくお願いいたします。
 
○小川理事長
国立循環器病研究センターの小川でございます。
それでは、早速始めさせていただきます。
(PP)
国立循環器病研究センターは、昭和52年6月に創設されましたので、現在、41年になります。脳卒中と心臓血管病の研究と診療を扱う世界でも特徴あるセンターでございます。
(PP)
現在、来年7月1日の新センター開設に向けて、移転建て替え準備に取り組んでおります。
(PP)
新センターは、新大阪駅から7分の岸辺駅に直結した建物で、30ヘクタールから成る医療クラスターを形成し、北大阪健康医療都市(健都)と呼ばれるようになります。
(PP)
まず、センターの役割として、現在の中心的課題について御説明いたします。
国立循環器病研究センター、以下、国循と略させていただきますけれども、その使命は循環器病の予防と制圧です。
これまで果たしてきた役割としましては、まず、医薬品や医療機器のシーズから実用化まで一貫した研究と開発を行ってきたところでございます。ナトリウム利尿ペプチドやグレリンの同定と臨床応用、補助人工心臓の開発、脳動脈瘤治療用多孔性カバードステントの開発などがございます。また、治療法の研究開発や高度先駆的医療の提供・普及でも、いろいろございますけれども、主なものは急性期脳梗塞静注血栓溶解療法の導入や普及、心臓移植治療の確立などがございます。もう一つは、循環器病対策の基盤として、30年の歴史がある都市型コホート研究である吹田研究や、日本循環器学会と共同して行っている循環器疾患診療実態調査、The Japanese Registry Of All cardiac and vascular Diseases、JROADと略していますけれども、それがございます。
(PP)
現在の課題としましては、このように7つの課題を挙げておりますけれども、一番の課題としましては、循環器分野における臨床研究をさらに促進し、臨床研究中核病院となることが大きな課題でございます。
(PP)
重点を置いている研究領域といたしましては、肺高血圧症、川崎病の冠動脈疾患、サルコイドーシスなどの希少疾患ですが、国内一の症例数を有し、病因の究明や治療法の研究を行っています。また、遺伝性不整脈、家族性高脂血症、マルファン症候群などの遺伝性循環器疾患も症例が多く、責任遺伝子の同定を行っているところでございます。さらに従来より行っていますナトリウム利尿ペプチド、アドレノメデュリン、グレリンの臨床研究、さらには人工心臓の研究もさらに発展させて行っております。
また、真ん中にございますように、電子カルテ情報、DPCデータなどのビッグデータの解析も、最近ですけれども、AIなどの手段を用いて行ってまいりました。
(PP)
新センターのオープンイノベーションセンターは、現在、準備中ですけれども、国循内の一つ屋根の下に企業との共同研究拠点を有するもので、既に会社も契約ができていますし、共同研究の準備中でございます。
(PP)
研究領域で、世界的プレゼンスを示すものとしましては、繰り返しになりますけれども、当センターの寒川前研究所長により発見されたANP・BNPは、実際に心不全治療薬として使用されていますし、特にBNPは、心不全パンデミックと言われる今の時代の心不全の世界的指標として臨床応用をされて、世界的標準のバイオマーカーとなっております。
研究所と病院が連携して、開発、臨床応用してきた人工心臓も、開設当初から行っており、開発が進んでいます。
また、小林院長らが積極的に主導しました人工心肺を用いない動脈グラフトを用いた冠動脈バイパス手術、望月研究所長らが国循で開発した血管平滑筋可視化ゼブラフィッシュは、世界で標準使用をされております。
(PP)
レジストリとしましては、日本循環器学会との共同作業でありますJROAD、脳卒中データバンクなど、11のレジストリがございます。JROADは、日本に循環器専門病院が1,353病院あるわけですけれども、そこの全てのデータの循環器疾患の症例数が登録されております。さらに、744病院のDPCのデータが123万件がございますけれども、そのビッグデータを、現在、国循で保存しております。これは循環器学会会員なら申請すればどなたでも使えるとしております。脳卒中データバンクは、日本の96病院から16年間で17万件のデータが収集されております。
(PP)
連携事業としましては、これは各6ナショナルセンターでやっておりますバイオバンクの事業、コホートの事業も一部協調してやっております。
(PP)
NC間でコホート事業などはデータを共有して進めていますけれども、技術者など、人材確保の面で少し難しい点もございます。また、各NCで領域別に実施しているデータ共有、活用に関しては、医療用IDなどの統一IDが必要と思われます。そのIDがないために少し苦労しております。
(PP)
医療提供の現状について、説明いたします。
心臓移植に関しては、国内最多の111例を実施、手術死亡はなく、術後15年の生存率は96%と世界最高水準です。また、植込型人工心臓の成績も世界最高水準で、本年3月にはアジアで唯一、世界で9番目の指導施設に認定されました。さらに、国循が開発しました世界最小で高流量の体外式人工心臓も、開発治験の登録がちょうど今月終了いたしました。また、脳卒中の治療においては、血栓溶解療法の導入と普及に努めておりますけれども、脳動脈瘤の治療としてのカバードステントの開発治験も、研究・開発から治験まで一貫して当センターで行いまして、これも今月に登録が終了しました。
(PP)
「政策医療」を担う国循の診療機能としましては、上段に書いてございます新しい治療技術の開発、改良で、経カテーテル僧帽弁治療は国内第1例目を行いましたし、ロボット手術でも指導的立場にございます。
その下に書いてございます、希少疾患・難病に関しては、慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈拡張術、これは日本が世界に誇る治療なのですけれども、国内でもトップクラスの症例数を有し、海外からの研修も多く、AMEDの予算で全国レジストリを始めたところでございます。
また、災害時の対応としまして、東北大震災、熊本地震で支援活動を行いました。
(PP)
熊本地震は、余震が2,000回以上もございましたため、多くの方が車中泊、車で寝泊まりするような状況でございました。そのために、肺動脈血栓塞栓症、いわゆるエコノミークラス症候群が多くなりまして死亡例も出ましたので、地震の翌週に国立循環器病研究センター、国循から現地にドクターが向かい、支援活動をいたしました。
(PP)
その中で、AMEDの予算がICT基盤構築であったため、現地で撮影した下肢静脈のエコーを国循に送り読影できるシステムをつくりました。実際、昨年、仮設住宅からその検証も行い、実効があることを確認いたしました。
(PP)
今後の方向性ですけれども、国循は従来より臨床研究では観察研究が多く、相対的に介入研究が少なかったために、いまだ臨床研究中核病院になっておりません。医師主導研究数は十分にございますので、特定臨床研究、とくに介入研究を行い、早期に臨床研究中核病院取得を目指しております。
(PP)
診療機能での大学病院との違いですが、循環器疾患の全領域のエキスパートを配していること。また、全国から広く医師を採用し、その医師が全国に戻ることによる医療水準の全国的均てん化に貢献しています。
(PP)
入院患者の4分の1は、大阪府外から入院されております。特に重症患者は、全国から来られていますし、海外からも来られております。
(PP)
人材育成としましては、連携大学院制度を充実させ、研究所員のみでなく、病院のレジデントなどの若手医師も積極的に連携大学院に学び、既に47名が博士号を取得しております。
(PP)
レジデント出身は全国に及び、私もその一人でしたが、レジデント・専門修練医の合計は、2,020名となっております。
(PP)
国循では、研究所もあり、基礎と臨床のバランスを持った研究遂行が可能でございます。国循から、私もその一人ですが、40年間で214名の教授を輩出しております。
(PP)
新しい分野の専門医としては、がん患者の心機能障害などからOnco-cardiology、また、先天性疾患の子供さんの予後がよくなり成人に移行してまいりましたので、成人先天性心疾患という分野のニーズが高まっております。
(PP)
新専門医制度では、国循のレジデント制度が崩れるリスクを感じております。例えば、国循が内科専門医の基幹病院になれないことから、レジデントで今まで行っていました3年間学ぶものが難しくなるのではないかと心配しております。
(PP)
現在行っている取り組みでは、研究でのバイオバンク事業、コホート研究の連携、人材交流、共同調達などがございます。
(PP)
今後の取り組みとしましては、複数疾患有病者に対する研究・診療でございます。循環器疾患とがん患者の合併は重要となってきております。また、血管性認知症、先ほど申しました成人先天性心疾患、さらに、国循の特徴でございます脳卒中と心臓血管疾患の合併は、国循で取り組む課題といたしまして、今、重要な研究を進行しているところでございます。
(PP)
情報発信としましては、プレスリリースがまだ少ない状況でございますので、さらに増やすように努力しておりますし、右下、下段に書いてございますような、今年から始めたのですけれども、ナレッジキャピタル超学校という一般向けの新しい試みも行い、市民公開講座を増やしているところでございます。
(PP)
政策提言といたしましては、ガイドラインの作成のみならず、「脳卒中と循環器病克服5カ年計画」の策定に積極的に参画しております。
(PP)
最後に、組織の在り方の検討につきましては、ここに書いてございますように、国循は、診療においても研究においても、患者の年齢層を問わず、胎児から成人までの循環器疾患に特化して行い、循環器病の予防と制圧に向けて努力を続けていくつもりでございます。
以上でございます。
 
○永井座長
ありがとうございます。
それでは、御質問、御意見をお願いいたします。
末松先生。
 
○末松構成員
現状で、予算の限りもあるのでなかなか難しいと思うのですけれども、AMEDで難病の取り組みで、平素センターの皆さんから大変大きい御協力をいただいていて感謝しているのですが、6つのナショセンの中で、この難病の領域は1つの遺伝子の異常で複数の臓器システムに異常が来る人がいて、例えば、国循と精神・神経センターと成育医療センターの間で何か情報共有をする仕組みとかをお持ちかどうか。もしあったら、教えていただきたい。なければないで、どんなふうにすれば、患者さんの診断の提供とか、治療法の回復につながるか、お考えがあったらお聞かせいただきたいです。
 
○小川理事長
それに関しましては、望月研究所長からお願いします。
 
○望月研究所長
研究所の望月でございます。
御質問いただきました点に関しては、バイオバンクでデータがまとまれば、それに各センターからアクセスできるようになりますので、積極的にそういう考え方を持つドクターがいればできるのではないかと思うのですけれども、今、先生が御指摘されたようなことを思っていくドクターが増えていくことが解決になるのではないかと考えます。
 
○永井座長
山口構成員、どうぞ。
 
○山口(育)構成員
幾つか質問させていただきたいと思います。
国立循環器病研究センターということで、循環器に特化された取り組みをされているわけで、今、複雑系といいますか、いろいろな疾患を抱えた方がどうしてもふえてきていると思っておりまして、そういったいろいろな複雑系になった方たちの診療に対して、どのような体制をとっていらっしゃるのかということが1つ。
これだけ研究に今まで力を注いでこられたのに、臨床研究中核病院ではないということに、今、改めて驚きまして、さっきさらっと説明をしてくださったのですけれども、具体的にもう少し突っ込んで、何がネックになっているのかということを教えていただきたいと思います。
3つ目が、人事交流、人材育成ということで、例えば、事務、看護、コメディカルについて、6NCと国立病院機構等々で交流、研修をしていると書いてあるのですけれども、結構事務の方の人材が、どうしても流れが悪いというか、手薄になっているということを耳にしたことがあるのですけれども、事務の方の存在も、研究や診療を進めていく、あるいは経営の上で大きいと思うのですが、そのあたりで何か困っていらっしゃるというか、もう少しこのようにしたいというものがもしおありであれば、教えていただきたいと思います。
 
○小川理事長
まず、第1点なのですけれども、循環器病センターは、消化器以外はほぼ全てそろっております。正確に言いますと、消化器・血液疾患以外です。脳、心臓、大血管、腎臓、糖尿病、高血圧、ほとんどそろっていますので、がんのほうはないのですけれども、可能な限り、特に脳と心臓に関してはそうなのですけれども、腎臓、糖尿病に関して積極的に、今、ほとんど全ての患者さんは多くの種類の疾患を持っておりますので、その研究を進めております。それは、あとは院長から少し補充していただきます。
2番目の臨床研究中核病院に関して、これも私もいろいろ頑張ってやっているのですけれども、まず、治験が少し少ないことと、循環器病センターは年間に1万2,000人以上の入院がございまして、症例が非常に多い。観察研究で結構いい論文を書いてきましたので、つまり伝統的に観察研究でどんどんデータが出るものですから、なかなか積極的な治療介入試験を行っていなかったということがございます。ただ、いわゆる医師主導治験は十分にやっていますので、その能力はあると思います。今、通常の介入試験、それを積極的に進めているところでございます。
3番目に関しては、これは局長から説明していただきます。
まず、院長から2番目の多臓器疾患を。
 
○小林病院長
多臓器疾患、心臓・脳以外の疾患ということだと思うのですけれども、先ほど理事長が申しましたように、消化器はちょっと弱いと思うのですね。あと、整形外科とか、耳鼻科、眼科等はセンターに常勤の医師がおりませんので、問題かとは思うのですけれども、今度は、健都といって新しく移るところはすぐ横に吹田市民病院がございますので、そこの協力を得て残りの科はカバーしたいと考えております。既に今はかなりの患者さんが、抗凝固療法、ワーファリンとか、DOACを飲まれておりますので、そのような方には、我々のところでは歯科も備えておりますので、場合によっては入院して治療ということもやっております。
 
○柳楽企画戦略局長
事務局員の人材交流でございますが、これは今も、国立病院機構との間での人材交流は非常に活発に行われております。ただ、かなり前、国立病院であった国の時代と比べますと、旧国立病院は国立病院機構という1つの法人となり、我々NCはそれぞれ国立病院機構とは別の法人として存在しておりますので、そういう点では、それぞれの法人の業務に照らした人材配置という、それぞれの利害もありますので、かつてほどは、柔軟にやっていくような状態ではなくなってきている面もないわけではないと思います。
もう一つは、国から独立行政法人になりましたので、そういう点で、事務職員の数も、単に業務上の必要性の面で人を増やすということではなくて、経営にも配慮しながら適正な事務職員の数を考えていくという両にらみでいく必要があるという、やや複雑な考慮をしながら対応していく必要がある状態にはなってございます。
 
○永井座長
神崎構成員、その後に祖父江座長代理。
 
○神﨑構成員
杏林大学の神﨑と申します。
お聞きしたかったのは、たくさんのコホート研究とかレジストリ研究をやっていらっしゃると思うのですが、昨今の事情を考えると、データを集めることもそうですが、データの質を落とさないというところは非常に大事だと思っています。その点、国循としてどのように頑張っていらっしゃるか、ないしは、苦労があるのかというところをお聞きしたいと思います。
 
○小川理事長
今は、センター独自でやるよりも、学会と一緒にやらないとなかなか症例は集まらない。JROADがなぜうまくいっているかといいますと、あれは循環器学会と共同でやっていますので、登録をしないと循環器学会の専門医にはなれないという制度になっています。ですから、登録をしないといけないということで全例登録していただいています。
ただ、詳細なデータと申しますと、今はDPCでやっているわけですけれども、DPCが、各1,300の病院に全部了解を得て、そこで使っていいというデータだけを集めているわけです。それで123万件なのですけれども、これが今度は法律が変わりまして、次世代医療基盤法で研究に自由に使ってとなりますと、恐らく170~180万件のデータがそろうようになると思います。ただ、それもDPCのデータですので、パーフェクトではございません。
脳の分野でいいますと、DPCに入っている病院が全てではございませんので、そこら辺も苦労しているところですけれども、とりあえず学会、脳のほうも今は脳卒中学会と協力するような体制ができかけておりますので、それができれば、もう少し多くの症例が登録できると思います。ただ、先生の御指摘は、予後の問題とか、そういうものだと思うのですけれども、それに関しては、今、非常に難しい状況です。
 
○神﨑構成員
ぜひ質を落とさないよう頑張っていただきたいと思います。
 
○永井座長
祖父江座長代理。
 
○祖父江座長代理
どうもありがとうございます。
途中で御説明になったのですが、オープンイノベーションセンターの話はお聞きしているのですが、移転とともに新しいシステムを導入されて、これに書いてあるように、一つ屋根の下で企業と共同研究拠点をつくっていくというのは、私は今後のNCの一つのやり方ではないかと思って非常に期待しているのですが、現状、どの程度まで企業との具体的なものができているのか。あるいは、将来的にはどういう形でこれを運営されようとされているのか。その現状と見通しを教えていただければありがたいと思うのですけれども。
 
○小川理事長
これは望月所長からも補足していただきますけれども、広さが3,000㎡ございまして、どのくらいの企業の数が入るかどうかは不明なのですけれども、恐らく20~30の企業は十分に入れるようなスペースをとっております。現在の契約状況に関しては、望月所長から説明いたします。
 
○望月研究所長
OICの特徴として申し上げたいのは、共同研究のテーマを必ず決めないと入れないということなので、単なる貸しラボという体制をとってございません。ですので、必ずアウトプットが出るように、まずは目標設定をして、それに合致したものをとっていくということで、既に5社くらいは確定していますので、あと数社が入れば全部埋まる予定です。ナショナルプロジェクトに関しても、一緒に入っていただくということを計画してございます。
 
○永井座長
大西構成員。
 
○大西構成員
どうもありがとうございます。
1つお尋ねしたかったのは、資料の19ページのところで、地域別の患者さんの割合が書かれておりますが、ざっと見ますと、兵庫県と大阪府を合わせますと90%近くになっています。これは地域的な特性があるのは当然かと思うのですが、一方におきまして、センターとしての役割に期待されるところとして、医療の均てん化、または、先端医療を広めていくということもあると思います。今後のビジョン、または、方向として、どのように均てん化もしくは全体の医療水準を上げていくという取り組みについてお考えでしょうか。人材育成とは違う視点で教えていただければと思います。
 
○小川理事長
おっしゃるとおり、兵庫県と大阪はかなり多いのですけれども、兵庫県もかなり広い領域でございまして、すぐ近く以外にも山間部からもかなり来ているというのが事実でございます。
全国からかなり来ているのですけれども、均てん化というのは、学んで帰るという、特に先ほど申しました特殊な治療に関してです。慢性血栓閉塞性肺動脈高血圧症とか、そういう治療に関してはかなりの方が学びに来ていまして、帰って、その地域で治療をして、そして、また新しい先生方を送ってくるようになっていますし、心臓移植に関しては、全県を対象に行っています。人工心臓に関しても全県から来ておりますけれども、補足は小林先生にお願いします。
 
○小林病院長
御承知のように、循環器疾患、例えば、急性心筋梗塞とか、脳梗塞、動脈解離というものは、時間との戦いでございます。ですから、来られる方というのは、基本的にそんなに遠くの方は来られないということが1つございます。
もう一つは、この残りのパーセントが非常に重症の患者さんで、これは逆にセンターから巣立ったレジデントあるいはスタッフの方々に重症の患者さんを送っていただいて、国循で治療しているという形になっております。ですから、どうしても急性ということになれば、これだけ多くの人が、近辺、比較的近くから来るというのはいたし方ない。逆に、そういう方を治療できるというのも、センターの役割かなと思っております。
実際のところ、救急外来が年間1万1,000人おられて入院が4,500人程度ですので、どうしてもこういう地域的な偏り、センターは国の施設なので、全国から満遍なく来てくださいというのはよくわかるのですけれども、実際のところはこういう形になっております。
 
○永井座長
ほかにいかがですか。
どうぞ。
 
○国忠参考人
資料の中に大学病院との違いが書かれていまして、私が気になるのは、循環器ですと、近くに、大きな大学病院、京都大学とか、大阪大学とかがあります。そういうところとどういうところが差別化ができるかということと、どういう点で共同でやっていけるかという、両面からお聞かせいただければと思うのです。
 
○小川理事長
非常に大事な御質問です。共同でやっていくというのは、まだ積極的にはできておりませんけれども、京都大学の心臓外科の教授は循環器病センターの部長からなっておりますので、医師の連携もかなりできております。大阪大学も、院長は大阪大学出身で心臓外科なのですけれども、その連携もできています。実際、研究面での密接な連携はまだ十分ではございません。ただ、センターにあります特殊な機器は、大阪大学の循環器内科からは積極的に来られて研究施設を使っていまして、いろいろな共同研究はできているところでございます。
これに関しては、望月先生と小林先生から補充していただきます。
 
○望月研究所長
研究に関しましては、特に大阪大学の老年科とか、いろいろな分野で個々の研究を共同で実際にいろいろやらせていただいていて、お互いにカバーするようになっています。どちらかというと余りコンペティティブではないと私どもは認識しております。お互いに補うべきものは補っていけると感じていますので、非常に交流はさせていただいているという認識でございます。
 
○小林病院長
私の専門領域の心臓血管外科の話になりますけれども、京都大学、大阪大学、神戸大学からたくさんの人が来られて、あるいは帰ってということで人事交流もございます。
また、カテーテルの治療とか、ロボットの手術とかは、我々が行って、失礼な言い方かもしれませんけれども、教えてあげているみたいなところもありますので、結構そういう交流はあるのではないかと考えています。
 
○永井座長
どうぞ。
 
○神庭構成員
専門医制度が人材育成とバッティングするというお話がありましたけれども、例えば、基幹病院になっても、現行の制度では長期間基幹に置いてはいけないことになっています。現行の制度全体の枠組みの中で、今後、先生方はどのように人材育成を考えていらっしゃいますか。
 
○小川理事長
ありがとうございます。
本来なら、先ほど申しましたように、急性期の専門家も1人いますし、消化器の症例もたくさんございますので、循環器病センターで十分全体を学べますので、何とか基幹施設にしていただきたいと希望しているのですけれども、内科学会がどうしても許してくれないという状況で、非常に困っております。
一番困っておりますのは、みんな通常は内科専門医をとって循環器専門医ですから、まず内科専門医を基幹施設でとりたいということがございます。3年間のレジデント生活を十分に国循で送れないという状況になってきております。
その対応としまして、親しい教授、全国の親しい大学病院、親しい内科専門医病院と連絡しまして、連携病院となりまして、連携病院として国循にいる間はそのカウントをしていただくという方法を、今はとっております。ただ、それがうまいこといくかどうかというのはまだわからない状況です。
 
○永井座長
いかがですか。
それでは、私から。これは座長のみの手元資料なのですが、2009年に法人化されてから、数年間、論文が減りましたね。今は大分回復したのですが、法人化後に論文が減ったのは国循だけですが、何があったのでしょうか。またどうやって回復したかということを教えていただけますか。
 
○小川理事長
ストレートに申し上げますと、回復の原因は人材を活性化したことに尽きるのではないかと思います。非常に極端な言い方ですけれども、内科の部長を全部、前理事長が変えられました。そして私が新しい部長を全部全国から集めた。全く新しい部長が集まって、新しいレジデントが来まして、論文数が増えた。そのように思っております。
 
○永井座長
つまり、運営費交付金がどんどん減っていくなかで、なかなか体力がついていけずに人事を刷新したということでしょうか。
 
○小川理事長
それもございます。20億減っていますので、研究が非常にしにくくなったということもございましたけれども、その中でもやれるような人材を探したということもございます。
ただ、先生が御指摘のように、今後の問題としましては、人事の活性化は、なかなか循環器病院センターはやりにくいところがございまして、国立病院機構と連携を組んでいるのですけれども、事務方はできているのですけれども、医師はなかなか連携ができていない。別々に採用しているものですから、それが私の悩みでもございます。
 
○永井座長
門田先生。
 
○門田構成員
ページ19の円グラフは、先ほども話題になっておりましたけれども、このナショセンの在り方を考えていく上で、こういう形で大阪にあるので、大阪に救急として来るものが多ければこうなるという、これはわかりました。
それはわかるのですが、それでは、このナショセンは全国民に高度医療を提供することがデューティーだと、もしそれがあるとするならば、こういう状況をどう考えるかということ。
逆に、もう一つは、研究を進めるという意味で、研究対象はこれで十分にいけているのだという考えになるのか。これから、全体の中で1つある循センをどのように考えるかという点で、皆さん方はどのように考えていらっしゃるか。教えてください。
 
○小川理事長
私から、後でまた小林先生から補充していただきますけれども、入院患者の大体年間1万1,000~1万2,000なのですね。その中のパーセントと考えていただいたらわかると思うのですけれども、相当県外からの数は来ております。特に人工心臓、心臓移植が必要かどうかというのは、移植部のスタッフが全国に飛び回って、その適応があるかどうかというのを調べて、必要があれば連れてくる、運んでくるという状況をとっていますから、恐らく全国の重症患者、特にほとんどやっていません肺動脈の治療とか、そういうものは来ておりますので、全国への貢献としては行っているのではないかと思っております。パーセントの問題ではなくて、数の問題では結構貢献しているのではないかと思っております。
補充をお願いします。
 
○小林病院長
先ほどの繰り返しになるのですけれども、急性疾患が多いということが1つと、例えば、この全体版の48のスライドを見ていただいたらわかるかと思うのですけれども、ずっとバイパス手術などが数年の間にものすごくふえて、あとは減っておるというのは、これは逆にセンターにおったレジデントたちが、いろいろな各地に帰ってその手術を始めるということで、均てん化されておるということになります。
そのように新しい治療とか手術をセンターで開発あるいはたくさん行うことで、まず、我々がやった後に、3~4年してから日本に広まるという形になっております。それは、そもそもレジデントたちが帰るからということで、そういう意味では、国循が大阪にあっても、広く日本に技術が広まっていっているのではないかと考えているのですけれども、返事はそれでよろしいでしょうか。何かまたほかの意味ですか。
 
○門田構成員
私は、循センが考えていらっしゃる医療あるいは研究と、国で考えた場合にどうそれを位置づけるかという別の見方をした場合、どうとれるかということをお尋ねしたかったのです。心移植の場合はよくわかりますね。非常によく頑張っていらっしゃると思います。大阪府下のものが、これが全て救急疾患なのか、あるいは場合によれば、ほかの都道府県であれば普通のところで医療として行われていますね。それはちゃんとしたことができていないのか。あるいは、できるのか。逆に言うと、場合によったら、今、大阪府から非常にたくさん来ているものは、循センでやらなくてもいいものもたくさんあるのかという疑問を感じてきますから。
 
○小林病院長
例えば、先ほど理事長がちょっとお話ししました慢性の肺血栓塞栓症というのは、センターが何年か前まではそれこそ日本の症例の50~60%を占めていたのです。今はそのパーセントが下がっているということになっていますので、やれていなかったものが日本でいろいろやられているということになっているのではないか。そうしたら、日本中では低いレベルの治療しかされていないのではないかということを危惧されているかと思うのですけれども、最初のころはそういうことにならざるを得ないのではないかとは思っています。例えば、ロボット手術でも、2施設しか今のところやっているところはないので、これを広めていくと、また割合が変わる。
ちょっと説明がうまく言えませんけれども。
 
○永井座長
最後に、相澤構成員。
 
○相澤構成員
お話を聞くとわかるのですけれども、資料からはわかりにくいので、NCとしてどういう貢献を全国にしているかについてのデータを、取りまとめ等の段階では出していただくと、わかりやすいのではないかと思います。
 
○永井座長
ありがとうございます。
また追加資料等で事務局に届けていただければと思います。
これで国立循環器病センターを終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
続きまして、国立長寿医療研究センターに移ります。
(国立循環器病研究センター退室)
(国立長寿医療研究センター入室)
○永井座長
それでは、国立長寿医療研究センター、鳥羽理事長からお願いいたします。
 
○鳥羽理事長
よろしくお願いいたします。15分という時間なので、多少早口になることをお許しください。
国立長寿医療研究センターは、高齢者の心と体の自立を促進するため、その心と体の自立阻害要因、特に近年、統計的に重要になっております認知症及びそこに書いてあります3つの病態を含めたフレイルというものに焦点を置いてやっております。
(PP)
センターの成果を最大化するための組織について説明いたします。これらの独法前後の変遷、改革につきましては、資料編1ページをごらんください。
(PP)
例えば、認知症におきましては、研究所からより臨床研究を推進するための認知症先進医療開発センター、病院からはもの忘れセンター、それらの生体試料や診療情報を集めたメディカルゲノムセンター、また、認知症の予防のための老年学・社会科学センターやIoTのロボットセンターなどの連携を図って、最大化を図っております。フレイルについても、同様の取り組みをしております。
(PP)
このようなセンターの会議の中の意思疎通を図るために、四半期に1回センター長会議を実施いたしまして、論文を含める事業報告や、知財、その他の注意事項を、意思疎通、情報共有をいたしまして、計画の実行の推進しているところであります。
(PP)
現在、一番力を入れておりますことです。
(PP)
この丸で5つでございますが、本日は、認知症とフレイルを中心にお話ししたいと思います。なお、フレイルという言葉は、加齢や慢性疾患によって、ストレスに対する脆弱性で機能が戻りにくい状態をFrailty、日本語でフレイルという形で示してございます。
(PP)
研究で、大学との相違ですけれども、この4点を挙げさせていただきました。
(PP)
まず、長期縦断研究はなかなか大学では長く続けられないところでありますし、また、オレンジプランといいます国の認知症の基本政策の全ての領域において、研究を実施することもなかなか継続的にできないところであります。また、オールジャパン体制の情報収集制度、オレンジレジストリといったものも、これもナショナルセンターが得意とするところでございますし、また、国民的な予防戦略といったものを開発して均てん化を図るといったことも、ナショナルセンターと大学の違いかと思います。
さらに、これらを生かした認知症に関する政策提言を2回行っておりますけれども、これらの政策医療に結びつく基礎臨床研究の一体化といったものがナショナルセンターの研究の独自性であると私は考えております。
(PP)
これが新オレンジプランの7本の柱に対応した当センターの研究の総体でございますけれども、もちろん予防・創薬、リハ・ケアといった基礎から臨床研究を主体としながらも、当時者参加や理解、適時適切なケア、介護負担に至るまで、認知症を単なる病気として見るだけではなくて、認知症の当事者及び家族を支える地域といったもの全体を研究対象あるいは臨床対象として行ってきたところであります。
(PP)
例えば、長期縦断研究におきましても、以前、独法化前にNILS-LSAというアクティブコホートで認知症やフレイルの危険因子を同定して数多くの論文を出しましたが、2015年以降はこれらのデータをオープン化いたしまして、センター外の研究者の方にも研究ができるようになってきております。
また、これらを受けて、多くの危険因子にどのようなことをやったらいいかということで、介入コホートといったものを1コホートで2万6,O00人が開始しておりまして、これらは認知症やフレイルに関しましてやっております。コグニサイズなどのものについては、資料編15ページにございますように、これらの情報は自治体ともデータシェアリングをしまして、介護保険情報と突合することによって、実際のアウトカムがわかるような仕組みをつくっております。
また、認知症前臨床コホートは後になります。
これらの介入コホートまでを受けまして、さらにJAGESの近藤先生のグループですけれども、地域診断、その地域の保健・介護情報等を含めまして、どのような地域が強いかということまで得た上での提言に結びつける。コホートでありましても、リスク同定、介入、提言までを見据えたコホート研究を行っているところであります。
(PP)
これは、オレンジレジストリという日本全国の認知症などの情報登録制度の概要でありますが、30施設以上のものが参加しておりまして、さらにこの認知症で最後のときに変化がおきますアミロイドやタウの画像、10カ所のアミロイドの画像、また、タウの8カ所の先端画像の施設も入っておりますので、将来の臨床研究、治験に十分な体制が組まれていると考えております。
(PP)
これらの評価といたしまして、世界的なGAP、EPAD、オーストラリアのAIBLなどとも同一に評価されているところでございます。
(PP)
アルツハイマーの前臨床コホートの重要性が増しておりますけれども、6カ所の全臨床コホート以外に、さらに今後の需要を考え、愛知あるいは鹿児島のコホートを増強すると同時に、より健常な方の巨大なコホートであります東北メディカル・メガバンクと包括連携協定を昨年10月に結びまして、この前臨床コホートのオールジャパン体制の構築にさらに努力していきたいと思っております。
(PP)
このような情報登録制度の利用でございますけれども、本日は、バイオマーカーと先端画像の一部あるいはロボット研究に絞ってお話ししたいと思います。
(PP)
アルツハイマーの早期発見のためには、以前はアミロイドイメージングといって、PETでお金がかかり、また、全国で十数カ所しかできないところで時間がかかったりしたわけですが、それを0.5ccの血液から早期診断し、90%の正確性をもってアミロイドの脳での沈着がわかることを発見いたしました。これは研究所長の柳澤及び島津製作所の共同研究でございます。これらは、将来、アミロイドイメージングを使うにしても、それらのスクリーニングとして相当額の医療費の節約になる、あるいは、臨床研究、治験に応用できるのではないかと期待されているところであります。
(PP)
また、脳内のブドウ糖代謝といったものをはかりまして、これらが認知症の進行に有効な検査法であることを報告してまいりましたが、これらが評価されまして、現在、先進医療Bといたしまして、複数の医療機関で研究を継続しているところでございます。
(PP)
近年、認知症を防ぐには、創薬はもちろんのことながら、生活習慣病に着目した脳の予備能をいかに保つかということの重要性がWHOで叫ばれておりますけれども、糖尿病、高血圧といった既存のもの以外に、虚弱、心房細動、難聴といった新しい危険因子に着目した臨床研究がこのオレンジレジストリの中で開始されています。
(PP)
また、治験などについても、既存のものを含めて、これを利用して走っているところでございます。
(PP)
ロボット、IoTの利用に関しましては、現在、23の臨床研究が走っておりますけれども、認知症関連でもデイケア、認知症リハビリ、傾聴会話ロボット、癒やし系のロボットも含めて、多くの臨床系のロボットの実証を当センターで行っているところであります。
(PP)
次に、フレイルに移ります。
(PP)
フレイルは、先ほど申しましたような状態でございますけれども、日本人の約1~2割くらいの方は、手をかければもとに戻るけれども、放っておくと要介護になってしまう重要な病態でありまして、加齢だけではなくて多くの慢性疾患によって加速されるため、当センターの循環器内科の者はフレイル外来も出ておりまして、フレイル予防といったことを重点に循環器診療に当たっているということが違いかと思います。
フレイル高齢者のまとめといたしまして、これらは要介護になりやすく、ポリファーマシーにも弱く、また、ポリファーマシーが多いという大きな問題がありますので、重要な病態であると位置づけて、当センターでは力を入れているところであります。
(PP)
ロコモティブシンドロームは、フレイルの原因の重要な一部でありますけれども、その中で、脊柱管狭窄症は、今まで病系の分類が必ずしも十分でないところでありましたが、病院、研究所、ゲノムセンターの共同研究によって、遺伝子解析、オミックス解析、あるいは画像診断によって、靱帯性、非靱帯性の分類を新たに構築して、それに応じた治療方法を開始することによって、良好な成績を得始めているところであります。
(PP)
NC間の研究協力です。
(PP)
多彩に行っておりますが、オレンジレジストリで精神・神経センターがIROOPとしてやってきております。逆に、シロスタゾール治験では国循のお手伝いをしております。また、最後になりますけれども、NCGGが主宰する政策研究会議にも、在宅医療推進会議にはがんセンターから、認知症医療介護推進会議には精神・神経センターから委員を出していただいて、政策提言を共同して行っていただいているところであります。
(PP)
例えば、大きな課題となっております国立精神・神経医療研究センターとの認知症医療・研究におけるすみ分けでございますが、国立長寿医療研究センターは、アルツハイマーを初めとする多くの加齢性の認知症疾患を数多く扱っておりまして、非常に小さくて見にくいかもしれませんが、そこに示しましたような多くのバイオバンクの生体試料を集めてございます。
一方、精神・神経センターは、パーキンソンなどの神経変性疾患や精神疾患などが原因で発症する、あるいは、遺伝性の小児性の認知症といったものに関しての診療・研究とバイオバンクの蓄積がありまして、これらの総体といたしまして、シンドロームといってもいい、認知症全体をカバーして共同で上手にすみ分けてやっていると考えております。
(PP)
医療提供でございます。
(PP)
国立長寿医療研究センターの大学病院との違いは、自立を目標にすること。生活機能評価をルーチンに行っていること。最大のもの忘れセンターのデータセンターを持っている。また、先進的なロコモや感覚器のセンターというものを持っていることと、治す医療だけではなく、治し支える医療としての包括的なリハビリのシステムを構築していることにあると思います。
(PP)
先ほどから話題になっておりますポリファーマシー、多剤薬剤の投与でありますけれども、多職種共同によって有効かつ安全な薬剤の削減が図られ、このような取り組みは、日本老年医学会とともに安全な薬物療法ガイドラインとして国民に発信されたところでございます。
(PP)
もの忘れセンターでは、単なる診療だけではなくて、家族教室、地域連携、リハ、データベースの利用、人材育成まで幅広くやっております。
(PP)
その中で特筆すべきは本人の参加と家族の重視でございますけれども、家族教室による介護達成感の向上により、これらの家族教室を行うことによる介護負担感の軽減を全国に発信するため、テキストを発信し、また、教室運営マニュアルといったものもごく最近発行したところでございます。また、徘徊の調査を全国的に依頼されまして、その対策などについても提言を行ったところでございます。
(PP)
感覚器センターは、まだ新しい試みではありますけれども、WHOでこれからは感覚器の世紀と言われておりますが、今までばらばらに行われていたさまざまな感覚器のものを一堂に集めまして、これらがある程度不便にならないような五感満足ケアを目標に新たに取り組んでいくということであります。
(PP)
支える医療としてのリハビリテーションの実績は、近年、急速に伸びております。これらは、スタッフの数も、東大病院の3分の1のベッド数でありながらリハスタッフが2倍いることからも明らかだと思います。
(PP)
特に近年、外来認知症リハが実績を上げまして、その効果が実証されてきたところであります。
(PP)
健康長寿支援ロボット開発では、先ほど申しましたように、23の臨床研究が走っておりますけれども、開発段階から相談に乗りまして、市販済みまで7件、このように社会実装を見据えた多段階のロボット支援開発をしておりまして、共同研究費も、わずかではありますけれども、次第に企業との共同研究の数もふえてきてございます。
(PP)
人材育成でございます。
(PP)
課題でありました専門修練医も3名を獲得することができまして、そのほか、大学ではできない研修といたしまして、認知症サポート医研修や初期集中支援チーム研修といったものを行っておりまして、これらは認知症領域におきましては、世界的にも評価をいただいているところであります。
(PP)
特に認知症サポート医研修におきましては、新オレンジプランで5,000人をいち早く達成いたしまして、この前倒しでさらにサポート医を1万人にふやすという目標を新たにいただきましたと同時に、これらの地域連携、地域包括ケアの中で、なかなか重要性を増しているということで、本年度から認知症サポート指導料として診療報酬上もついたことは特筆すべきことと考えております。
また、認知症の医療・介護の支援で困っている家族を訪問して助ける認知症初期集中支援チーム研修は、全国で100%の市区町村への普及を要求されておりましたけれども、我々の研修によって96%まで達成することができました。このように、医療の均てん化や人材育成についても全国レベルで頑張っているところでございます。
(PP)
最後に、地域モデルであります。
(PP)
認知症にしても、虚弱高齢者にしても、これからは地域包括ケアの時代と言われておりまして、ナショナルセンターは、もちろん全国の地域に飛び回るわけにはいきませんが、愛知県と一緒に、また政府の支援もいただきながら、オレンジタウン構想という認知症に優しい地域づくりについて努力しているところでございます。
つい1月に、地元の大府市で関連団体を集めましたが、関連企業だけで70企業、団体が集まって、これらの企業、団体が、今後、自分たちがどのようにアクションプランを起こしていくかということを表明していただいて、列車事故の街の大府が、認知症条例ができたわけですけれども、全国で最も認知症でも安心できるまちづくりを目指していこうということで、協力させていただいております。
(PP)
多くの課題がありますけれども、特にこの疾患あるいは状態のものを、ロボットも含めまして、認知症、フレイルを含めまして、まだエビデンスの足りない領域を着実に積み上げるとともに、既成社会を乗り越えるイノベーションを通じまして、健康長寿社会における高齢者にとって優しい社会の創造に今後とも努力をしていきたいと思います。
どうもありがとうございました。
 
○永井座長
ありがとうございました。
それでは、御質問、御意見をお願いいたします。
山口構成員。
 
○山口(育)構成員
山口でございます。
コホート研究とか、研究面においては全国にということで、いろいろ共同でされているということもよくわかりましたが、特に世界最大のもの忘れセンターというものが病院内にあるということで、利用される方の地域が限定的になってしまうのではないかと思います。国立ということもございますけれども、例えば、外来、入院、ともにどういった地域の方たちが来られているのか。そういったことで、国立として還元できることは、幾つか御発表の中にも、そこから得られたものを返していくというお話がございましたけれども、患者さんとしては、大府市の方にとっては非常にありがたいセンターだと思うのですけれども、そのあたりはどれぐらいいろいろな地域の方が利用できるのか教えてください。
 
○鳥羽理事長
ありがとうございます。
大府市が一番多いのですが、名古屋市を含め愛知県が99%ぐらいではないかと思っております。
もの忘れセンターも、設立当初はより多くの県から来ていただきましたけれども、臨床疾患医療センターの整備とともに、むしろその増加はそれほど多くないと思っております。画期的な長寿だけしかできない認知症の治療法とかがまたできますと、しばらくの間はうちに集まることがあるかもしれませんが、うちのセンターとして、もちろん全国から評判を聞いて来ていただきたいと思っておりますけれども、うちのノウハウにもしすぐれているところがあるならば、全国に均てん化を図って、同じようなモデルとしてコピーをしてどんどんまねていっていただくことによって、ナショナルセンターとしての役割を果たしたいと思っております。
 
○山口(育)構成員
このもの忘れセンターのいろいろなノウハウは、コピーしてほかのところで簡単にできるようなものなのでしょうか。
 
○鳥羽理事長
これらは、冊子として、初期集中支援についても全てDVD化して、あるいは、さまざまな研修やテキストを通じて、コピーできるところはコピーできるようにしてきたつもりでございます。
 
○永井座長
ほかにいかがでしょうか。
どうぞ。
 
○神﨑構成員
杏林大学の神﨑です。
同業者ですので、ほかの委員の方々と少し視点が違うかもしれませんが、ナショナルセンターということで、新しい診療技術であったり、きょうはロボットの話もいただきましたけれども、世の中に発信していくような、例えば、新しい医療技術であったり、産業であったり、そういったものを創出するとか普及するということは、恐らくどのナショナルセンターもやらなければならない使命だと思います。一方では、日本がこれだけの超高齢社会になっていっている段階で、投入できる医療資源は、特に経済的な問題だと思いますけれども、限られている。すべての高齢者に対して高い技術の医療を提供することは現実的ではないということはみなわかっていると思うのですが、恐らくここがNCGGの大きな特徴が出るところではないかと思うのですが、限られた医療資源の中で、ポリファーマシー対策もそうだと思いますが、どのように高齢者の医療政策につなげていくことをお考えか。そのあたりをもう少し説明していただけますでしょうか。
 
○荒井病院長
病院長の荒井です。
非常に大切な視点だと思います。先進的な医療については、認知症の治療薬の開発も行っていますが、現時点で認知症を治す治療薬がないということで、認知機能低下を予防するためのリハビリテーションに取り組んでおりますし、認知症の人のエンド・オブ・ライフまできちんと一気通貫のケアを提供する、そういったモデルを長寿医療研究センターとして出す、そしてそれをできるだけ全国的に広めていくことが重要であり、NCGGの使命だと思っています。
その資源という点につきましては、確かにどのようにお答えするか難しい点もありますけれども、ポリファーマシーに対するアプローチもNCGGが中心になって取り組んでいますし、非がんのエンド・オブ・ライフ・ケアも長寿医療研究センターが中心にやっていると自負しておりますので、そういったエビデンスをしっかりと出して政策提言をしていくということをしていかなければいけないと思っています。
 
○神﨑構成員
地味だとは思いますが、私はこの先20年はそこが非常に大事だと思っておりますので、ここは残念ながら大学病院では取り組めない、余りにも大きな課題なので、ぜひNCGGにやってほしいと思います。
 
○永井座長
どうぞ、本田構成員。
 
○本田構成員
今の御質問に少し関連するかもしれないのですけれども、新しい医療の開発、創出、展開は、前向きな話で皆さんも力を入れてやっていらっしゃると思うのですけれども、政策的にいろいろなものを出していった後で、それがどうなっているのか。実際には、それが有効に活用されていなくて無駄につながる可能性だってあるわけですよね。そういうことを検証していくというのも、政策医療を担うもしくは政策支援をするという意味でのNCの役割として大事だと思うのですけれども、そういう機能はお持ちなのでしょうかと。
例えば、具体的に聞きたかったのが、37ページ、新オレンジプランというのは、認知症の政策という意味では、鳴り物入りでやろう、国を挙げてやろうという話になったものだと思うのですけれども、例えば、初期集中支援チームにしても、そんなに進んでいない。その仕方が海外で言われているものと日本の現状と合っているのか合っていないのかとか、いろいろな課題がありますね。例えば、そういうものを検証していくとか、そういう体制を持っているのかとか、その辺はどのようにされているのでしょうか。
 
○鳥羽理事長
国の医療政策の検証・研究事業は、特に高齢者領域では当センターの最も重要なものとして位置づけさせていただいていて、初期集中支援チームに関しても、地域偏在や多くの課題がわかった一方、家族の介護負担が減少するなどの有効な効果について、英文論文も含め、報告させていただいているところです。
オレンジプランはもっと広いものですから、研究と同時に、認知症医療介護推進会議を通じて、当時者の方、家族の方、ステークホルダーの方からどんどん指摘をいただきまして、昨年の夏から、これらの反省点についてのワーキンググループでディスカッションを重ねまして、ことしの1月に新オレンジプランの課題について、特に当事者参加について提言をさせていただいたところでございます。もし時間がありましたらまた見ていただければと思います。
 
○本田構成員
そういう場合に、例えば、こういうものの実際にどれぐらい進んでいるかという評価みたいなものも、全部研究としていろいろなテーマでやる体制にあるということですか。
 
○鳥羽理事長
全国サンプリング調査や厚労科研などを通じて、認知症の政策研究には、全部とは言いませんが、3分の1くらいは国立長寿がかかわってやっていると考えております。
 
○荒井病院長
具体的な例としまして、認知症サポートチームという、長寿の活動を中心に、そこからデータを集めて、政策提言をして、今、加算がついているのですけれども、そういった認知症サポートチームとか、高齢者機能評価は、理事長がつくったものですけれども、CGA7というもので外来の評価をして、それを退院支援につなげるということも、当センターが中心になってやったことにつながったということで、そういったこともこれからしっかりとアウトカムを検証していく必要はあると思っています。
 
○永井座長
神庭構成員。
 
○神庭構成員
NCNPとの共同研究あるいはすみ分けは、比較的うまく、良好にいっているようにお話があったのですが、これは自然の流れとしてこうなってきたのでしょうか。それとも、2つのセンター間で情報共有をして、計画を立てて、こういう流れが生まれてきたのでしょうか。
 
○鳥羽理事長
偶然でございます。
 
○神庭構成員
今後、話し合っていくようなことは計画にありますか。
 
○鳥羽理事長
もちろんよく話し合って、競合する分野については共同し、連携ですみ分ける部分についてはお任せするようなことを、理事長、研究所長、病院長とよく話し合って、よりやっていきたいと考えております。
 
○永井座長
河村構成員。
 
○河村構成員
今の御質問に関連して、国立・精神神経医療研究センターでやっていらっしゃる部分とのすみ分けの25ページのところ、このようにきれいに本当に切れるものなのかなというのがちょっとよくわからない。
それから、治すだけではなくて支えていくということでなさるということなのですけれども、そのような側面から考えたときにも、こうやって高齢になってから発症するものということだけを分けてお取り組みになられるのと若年性のものとかとあるのも、私たちもよく聞くようになりましたし、そのあたり、実際にはどうなのでしょうか。もっといろいろ連携を深めてやっていらしたほうが、国民にとってはいいのではないかという気もするのですが、いかがでしょうか。
 
○柳澤研究所長
研究所長の柳澤です。
歴史的には、例えば、認知症研究を二つのNCでどのように分担するかということについて、発症年齢で分けた時期があります。例えば、60歳あるいは65歳以前は精神・神経センター、高齢者の場合は長寿でやると。しかし、御案内のように、認知症というのは非常に長い時間経過の中で発症してくるものであって、また必ずしも記憶障害が最初から全面に出るわけではなく、さまざまな精神症状や、精神・神経センターの皆さんが得意とする症状から始まることも多くあります。認知症という非常に多様な、まだ重大な病態を議論する際には、さまざまな切り口から協力関係を構築することが重要だろうと思うのです。
個人的には、非常にここ数年、うまく協力関係が構築できていると思っています。
 
○永井座長
末松構成員。
 
○末松構成員
認知症のいわゆるプレクリニカルレジストリをつくるのは我々にとっても大きな課題なのですが、専門のお立場で、国内に相当数のコホートがあって、公費でサポートされている単純な前向きのコホートの参加人数をおおよそで数えると、36万という数字が出てくる。ところが、それぞれが個々の、例えば、文科からサポートをされている、あるいは厚労からサポートをされているというサイロ化が現状であり、そこをうまく連携させるというところは我々の使命だと思うのです。先生方は、今回、非常に期待されるバイオマーカーの発見とかバイオバンクのシステムを整備されたということで、先生方のお立場で、プレクリニカルレジストリを充実させて国内や国外の製薬企業がR&Dに参画できるような仕組みをつくっていくために、こういう工夫ができるのではないかというのは、何か提言があれば、簡単なことではないのですけれども、教えていただければと思います。
 
○鳥羽理事長
まず、研究費がどこから出ているとかということを余り考えずに、どういう目的でそのようなプレクリニカルコホートが国民に還元できるかということで、特に責任者の方、関係する学会の理事長の方などと話し合って、まず、その辺の大きな枠組みをしっかりと決めることが大切だろうし、私も理事長としてはその辺のことをまず第一に考えて進めたいと思います。
技術的なことは、研究所長から何かありますか。
 
○柳澤研究所長
プレクリニカルの重要性は非常に増しているわけなのですけれども、ことしの2月に、御案内のように、FDAが認知症薬の承認に関して、その基準を大きくシフト致しました。臨床症状が仮になくても、バイオマーカー等の客観的なエビデンスの改善があれば、それで承認しましょうというところに来ました。
しかし、先ほども申し上げたように、認知症、アルツハイマー病に限って申し上げると、非常に長い時間経過の中で起きてくる病気で、恐らく発症の20~30年前にいろいろなことが起きている。
私どもは、正直に申し上げて、5年ぐらい前にはそこまでの考えもなかったのですけれども、ToMMo(東北のメディカル・メガバンク)と連携をして、プレクリニカルの非常に早い段階から、運用面での統一がきちんと図られた形で、二つのバイオバンクを連結させていくことで、本当の意味での認知症のリスクファクターの客観的な評価ができ、その結果としてどういう予防手段が有効なのかということが初めて議論できると思います。
私が知る限り、世界的にはこういった非常に長い時間軸でのコホートを一つの国でやったという経験は今までないと思います。そういった意味で、ぜひ御指導いただいて、私どもも頑張っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
○永井座長
祖父江座長代理、どうぞ。
 
○祖父江座長代理
どうもありがとうございます。
毎回お聞きしておりますので大体理解しているところなのですが、きょうまた改めてまとめてお聞きして、非常に理解が深まったと思います。
いつも、フレイル、認知症というのは、非常にミッションの中心としてお話しいただくのでお話も多いのですが、むしろ先ほども幾つか議論が出ていましたけれども、この枠組みの中で、老年学・社会科学研究センターというものがありますね。ここでは、今後の社会構造、老年・高齢化というものを、社会システム論でもいいのですが、そういうものをどのようにしていくのかという研究が先生方のところから出てくるということも、私は非常に重要ではないかと思っているのですが、このような方向は実際にはどうされているのか。例えば、社会学、工学、インフォマティクスとか、ITとか、そういう人たちも合同されているのか。どういう組織立てでどのようにやっておられるのか。いつもここが余り表に出てこないので、お教えいただけるとありがたいなと思います。
 
○荒井病院長
ありがとうございます。
私は、こちらのセンターのセンター長も拝命しておりますので、少しだけ御説明させていただきます。
老年学・社会科学研究センターは、現時点では主に認知症・フレイルに関する前向きの観察研究、介入研究をはじめ、在宅医療についての研究もやっていますし、認知症の介護者の負担についての研究とか、NILS-LSAという老化に関する長期縦断研究のコホートに関するデータ解析をやっているというのが主たる現在の研究状況です。
先生からお話があったように、医療経済に関する研究もこれからしっかりとしていかなければいけないと思いますし、将来の2030年とか2050年ぐらいの社会を考えた提言を行っていかなければいけないと思っておりますけれども、その分野の研究者がいないこともありまして、現時点ではやっておりませんけれども、将来的にはしっかりとやっていかなければいけないと思っています。
 
○永井座長
よろしいでしょうか。
山口構成員、どうぞ。
 
○山口(俊)構成員
資料の3ページを拝見したのですけれども、診療科が結構たくさんあって、321床が動いていて稼働率は80%ぐらいだと思います。結構忙しいし、外来の数も結構やっているのです。その患者さんは、もともと国立長寿医療研究センターが診るべき患者ではない者が相当に地域の関係もあってまじってくるということなのですね。こういう膨大な作業を70人の医師でやっていて、研究を担当する医師はどれぐらい自分の研究に専念できるのか、非常にマンパワーが足りな過ぎるのではないかというのが一つの心配です。先ほどちょっと議論がありましたけれども、疾患的には移植とか高度の心臓の手術と違って一般的な疾患なので、あえて附属病院を持つ必要はなくて、例えば、国立病院の中に、国立国際医療研究センターでもいいですけれども、そういうところに研究施設をつくるほうが、そこに専任の研究ができる医師を置いたほうが、研究の方向としては効率的ではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
 
○荒井病院長
現在、病院の常勤の医師は70名ということで、今、御指摘にありましたように、321床のベッドの稼働率が80%ということで、かなり業務としては多忙になっています。その中でどのぐらい研究者がいるかということなのですけれども、研究につきましては、例えば、循環器診療の中でやるという研究もありますし、他施設との共同研究も行っているということで、かなり研究をしながら臨床を行っているという状況と、老年学・社会科学研究センターにもポジションを持って、併任で、例えば、老年内科と老年学・社会科学センターで両方ポジションを持って、コホート研究もやりながら臨床もやるという形です。純粋に研究に専念をしているということについては、マンパワーの点から現在そういったスタッフを持つことは厳しいと思います。医師が臨床研究をやるという時間につきましては、なかなか厳しいと思っていますけれども、これからも臨床研究等をふやしていかなければいけないと思っていますし、治験はかなりこなしていただいています。特に認知症に関する治験はかなりの数が出ています。現状はそういった状態だと思いますけれども、できるだけ効率は上げていきたいとは思っています。
 
○永井座長
ほかによろしいでしょうか。
それでは、大体時間になりましたので、本日はここまでといたします。
長寿医療研究センターの皆様、御苦労さまでした。ありがとうございます。
(国立長寿医療研究センター退室)
○永井座長
次回の日程等につきまして、事務局から連絡をお願いいたします。
 
○江口医療経営支援課長補佐
ありがとうございます。
次回の会議につきましては、6月29日、14時30分から開催する予定となっております。場所につきましては、追って構成員の先生方にまた改めて御連絡させていただきたいと思います。
事務局からは以上でございます。
 
○永井座長
それでは、これで第3回を終了いたします。
どうもありがとうございました。