第2回 国立高度専門医療研究センターの今後の在り方検討会 議事録

日時

平成30年5月9日(水)14:00~16:00

場所

全国都市会館 大ホール(東京都千代田区平河町2-4-4)

議題

国立高度専門医療研究センターからヒアリング
1.国立国際医療研究センターからヒアリング
2.国立成育医療研究センターからヒアリング
3.国立精神・神経医療研究センターからヒアリング

議事

 

○江口医療経営支援課長補佐
定刻となりましたので、ただいまより第2回「国立高度専門医療研究センターの今後の在り方検討会」を開催いたします。
構成員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
まず、構成員の皆様の出欠状況を報告させていただきます。
本日は、畑中好彦構成員、山口育子構成員から御欠席の連絡をいただいております。
なお、畑中好彦構成員の代理としまして国忠聡参考人に御出席いただいております。
また、相澤英孝構成員、本田麻由美構成員より、遅れて参加との御連絡をいただいております。
なお、医政局長の武田でございますが、公務のため欠席させていただいております。御了承いただければと思います。
また、今回から新たに門田守人構成員に御参画いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、カメラの方はここで退席をお願いいたします。
議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。皆様のお手元に、議事次第、座席表、資料1から5、参考資料、前回の会議資料及び議事録としましてファイルに綴ってございます。また別用紙で、後ほど終了の際にアナウンスさせていただきますが、7月に予定してございますナショナルセンターの見学の出欠表をお配りしております。不足等がございましたら、事務局までお申し出いただければと思います。
また、本日は、国立高度専門医療研究センターからヒアリングということで、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立精神・神経医療研究センターの3センターから御説明をいただきます。
以降の進行は、永井座長にお願いいたします。
 
○永井座長
構成員の皆様には、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。また、本日から門田構成員が参加されていらっしゃいます。どうぞよろしくお願いいたします。
今、御案内がありましたように、本日は国立高度専門医療研究センターからヒアリングをさせていただくということでございます。
まず、事務局より、資料1と2について御説明をお願いいたします。
 
○松永政策医療推進官
事務局でございます。資料1、資料2につきまして、簡単に御説明させていただきます。
まず、資料1についてですけれども、こちらは第2回、第3回検討会で行う各センターからのヒアリングの日程ですとか項目について、お纏めさせていただいております。
ヒアリング日程につきましては、記載しているとおり、本日3センター、次回5月30日に残りの3センターからヒアリングを行います。
ヒアリングの項目につきましては、前回の検討会で構成員の皆様から頂戴した御指摘を踏まえ、永井座長とも御相談させていただき、事務局にて大きく5つ、センターの役割、研究、医療提供、人材育成、その他の項目に分けて、各センターに資料の作成を依頼しております。なお、項目の大分類として、研究、医療提供、人材育成としておりますが、こちらは法律で定められているセンターの役割に沿って分類しております。
続きまして、資料2になりますが、こちらは前回の検討会で構成員の皆様から頂戴した御意見を事務局にて整理し、論点のたたき台としてお示ししたものでございます。第2回と第3回の検討会のヒアリングで頂戴する御意見も踏まえながら、事務局にて整理を続けてまいりますので、お示しした論点も踏まえて引き続き活発な御議論を頂戴できればと考えております。
事務局からの説明は以上となります。
 
○永井座長
ありがとうございました。
それでは、国立高度専門医療研究センターからのヒアリングを行います。
まずは国立国際医療研究センターからお願いいたします。
 
○國土理事長
皆さん、こんにちは。国立国際医療研究センター、NCGMの理事長の國土典宏でございます。本日は、NCの今後の在り方検討会におきまして、このような機会を設けていただきまして、ありがとうございます。
検討会からヒアリングの前に整理すべき論点の御提示をいただきました後、私どもNCGMのミッションと現状を振り返り、今後の方向性について十分なディスカッションができましたことを、まず感謝申し上げたいと思います。
さて、私どものセンターの正式名称は、国立研究開発法人国立国際医療研究センターでございますが、名前が大変長いことと、最近頻繁に名称が変更され、特に国際とつく他の医療機関や大学との混同も懸念されますので、海外でも浸透しつつある英語の略称でありますNCGM、National Center for Global Health and Medicineと名乗ることを職員にも推奨しております。そこで、本日のプレゼンでは、NCGMという名称を使わせていただきたいと思います。
NCGMには3つのキャンパスがございまして、新宿区戸山には781床のセンター病院と研究所、千葉県市川市には385床の国府台病院と肝炎免疫研究センターがあり、東京都清瀬市には国立看護大学があります。センター全体の職員数は、常勤1,911名、非常勤854名の合計2,765名であります。
(PP)
本日の御説明では、整理すべき論点に基づいて、NCGMの医療提供について、研究について、人材育成について、順番に御説明いたします。
お手元の資料3の概要と詳細な資料、2つに分かれてございますが、これをご覧いただきながら、スライドも共通でございますが、お願いしたいと思います。
(PP)
まず、医療の提供についてですが、NCGMは、国家的・国際的課題に対して専門的かつ継続的な取り組みを行ってきました。具体的には、ここにありますように、エボラ出血熱、MARS、新型インフルエンザ等の新興・再興感染症への対応、それから、薬害エイズ被害者に対する救済医療とHIVに関する先進医療、そして、30年以上の歴史がある国際医療協力であります。国際医療協力については、これを担っている唯一の公的機関であると認識しております。
また、WHO等の国際機関に対する国際保健政策提言、それから、実際の外国人の患者さんに対する診療、そして、国府台病院におきましては精神科、特に児童思春期の精神疾患に対する専門医療を行っております。
重要なことは、これら全てのミッションを果たすためには高度急性期総合医療、すなわち総合病院機能が必須であるということです。これが私どもNCGMの大きな特徴であると考えております。
また、国民・医療従事者への情報発信ということでは、薬剤耐性(AMR)の臨床リファレンスセンター、肝炎情報センター、糖尿病情報センターなどが設置されています。
(PP)
詳細について簡単に御説明申し上げます。
新興・再興感染症につきましては、全国で4施設ある特定感染症病床のうち4床がNCGMにございまして、特に2床は今年の4月からICU対応が可能になりました。これまでにエボラ出血熱の疑似症例を4例、MARSの疑似症例を5例など対応いたしましたし、最近でも時々、電話では疑似症例疑いの相談がございます。直近でははしかが問題になっておりますけれども、それについてもホームページなどで周知をしております。
HIVにつきましては、訴訟の和解に基づくHIV診療の恒久対策と均てん化を担うために、1997年にエイズ治療・研究開発センター(ACC)を設置し、全国450施設の連携を行っております。
また、2011年からACCに救済医療室を設置して、肝炎・関節障害あるいは心のケア、など様々な診療が必要な患者さんに対してワンストップの包括外来を開始いたしました。
研究の面でも非常に活発に行っておりまして、最近5年間でも139報の英文論文を発表しております。
(PP)
次に、国際医療協力でございます。創設以来30年になりますが、特筆すべき成果としては、例えば西太平洋地域におけるポリオ根絶、カンボジアやラオスにおける周産期死亡率の大幅な改善などの成果を上げています。対象の国は中南米、アジア、アフリカなどでございまして、これまでに長期派遣では累計で23カ国に職員を派遣しておりますし、通算139カ国にのべ4,200名の職員を派遣してまいりました。
さらに、海外からの研修も受け入れておりまして、こちらも全て累計しますと154カ国から5,000名の医療関係者を受け入れています。
最近では民間との連携も進めておりまして、一番下の右にございますように、ザンビアにおけるドローンを活用した検体搬送システムなど、このようなプロジェクトも行っております。
(PP)
国際保健政策につきましては、一昨年にグローバルヘルス政策研究センターを設置いたしまして、政策提言あるいは難民健康手帳などのツール開発や、途上国にもある保健ビッグデータの活用についての指導、共同研究を行っております。
また、国際共同臨床研究につきましても、下にございますように、糖尿病、結核、HIV、マラリアなどの国際共同研究を推進してまいりました。
(PP)
最近、日本での高齢化などが問題になっておりますが、全身管理が必要な重症感染症あるいは高齢者のような様々な病態に全て対応できる総合病院というのが私どもNCGMの特徴です。また、国際医療協力のためにも総合病院を中心とした地域医療のモデルを示すことが非常に重要であると考えております。
地域医療の面では、救急医療も非常に重要でございまして、例えば救急車搬送患者数で言いますと、私どもは都内でトップクラスの1万1,000件を年間受け入れております。
(PP)
簡単に特徴的な医療を御紹介しますと、スライド一番上は、0.5ミリ未満の微小な血管を吻合するスーパーマイクロサージェリーが可能な形成外科医が複数名勤務しておりまして、リンパ管静脈吻合などのたくさんの手術を行っております。
また、呼吸器内科では、気管支喘息を非薬物的に治療する気管支サーモプラスティという技術がございまして、これは日本でトップクラスの症例数を持っております。
最後に、私が専門としております肝臓外科でも、術中蛍光イメージングなどを最近活用しております。
(PP)
続きまして、外国人患者の受け入れでございますが、最近2020年のオリンピックを控えて外国人患者が増えているということが言われておるわけでございます。特に私どもの施設では、外国人患者が外来初診患者の12%、新入院患者の5%、救急では15%という高い比率になっておりまして、それに対応するために13カ国の通訳を用意し、あるいは休日・夜間でも5カ国は対応できるようにしております。特に今、外国人患者診療で問題になっております未収金につきましては、一般に高いと言われておりますけれども、私どもでは、いろいろな工夫によって1.18%という低い数字に抑えております。
それから、外国人患者を受け入れるための人材育成の講座も開催しておりまして、これまでに8回、850人が受講しております。
(PP)
次が国府台病院における児童精神でございますが、こちらでは精神科当直医が2名体制で24時間365日、身体合併症に対する精神疾患の救急を行っておりまして、特に児童思春期の専門の精神科病棟を45床有している唯一のNCでございます。
人材育成にも非常に力を入れておりまして、2000年以降でも50名。全国で児童精神科医という専門家は331名しかございませんが、そのうちの50名を国府台で育成いたしました。
(PP)
情報発信につきましても、冒頭に御紹介しましたような薬剤耐性に対するリファレンスセンター、これはガンダムのキャラクターを使っておりますが、このような啓発活動を行っておりますし、国府台にあります肝炎情報センターでは、肝炎対策の推進に関する基本的な指針に基づいて肝炎対策を全国的に推進する、その拠点となっております。
(PP)
糖尿病もNCGMにとって重要な疾患でございまして、糖尿病情報センターのホームページは大変多くのアクセスがあると聞いております。
また、患者さんや一般向けに、糖尿病教室もほぼ毎日開催しております。
国際的には、新興国でも今は生活習慣病が大変大きな問題になっておりますが、ベトナムにおいて、中学生に対する肥満対策などの介入研究を実施しました。
(PP)
次に研究でございますが、NCGMには全国的な研究基盤となる幾つかのインフラがございます。具体的には、国内にある全ての患者のレジストリをデータベース化するクリニカル・イノベーション・ネットワーク事業、糖尿病データベース、生活習慣病の介入研究、JCRACデータセンター、ナショナルセンターバイオバンクネットワークの事務局がございます。
それから、臨床ゲノム情報統合データなどを行っております。
それから、特に私どもが専門としております疾患に対して、HIV、肝炎などについての先進的な研究を行っております。
(PP)
これは先ほど御紹介しましたレジストリのデータベースでございまして、日本医学会連合の御協力もいただきまして、日本に存在する現時点で500を超えるレジストリをデータベース化して創薬に結びつける。企業とのマッチングを今、始めたところでございます。
下は、J-DREAMSという糖尿病の診療録直結型データベースでございまして、電子カルテからデータを自動的に取り込むノウハウを蓄積してまいりました。現在、35施設から3万6,000例のデータを集積しておりまして、100施設、20万人ぐらいの登録を目指しております。
(PP)
これは、生活習慣の行動を変容するためのスマホのアプリ「七福神」でございます。
下にございますのはJCRACというデータセンターでございまして、臨床研究を推進するために、データマネジャーを6名雇用しております。
(PP)
バイオバンクにつきましても、6つのナショセンが協力してバイオバンクネットワークを形成しておりますが、私どもNCGMにその事務局を置かせていただいて、連携しているところでございます。特に私どもは、HIVや肝炎の豊富な検体を有しております。
次の臨床ゲノム情報統合データベースは、これも6つのナショセンや東大、京大などが協力したネットワークでございまして、そのデータベース構築を担当する二次班を現在、取り纏めさせていただいております。
(PP)
もう時間がありませんので、幾つかの研究課題を簡単に御紹介しますと、HIVの治療につきましては、薬剤耐性HIV治療の新規逆転写酵素阻害剤を共同開発しまして、今、アメリカで第2相試験が行われていると聞いております。
それから、HIVに関するたくさんの研究を行っております。
(PP)
肝炎につきましても、B型肝炎の新しい薬剤の開発が終わったばかりでございます。
それから、C型肝炎治療薬であるハーボニーの臨床治験も私どもが代表施設として行いました。
一番下の、ものづくりコモンズという東京都の機構とも共同しまして、臨床現場とものづくり企業と製販企業、この3つが協力できる体制をつくりまして、幾つかのプロジェクトを進行しております。
(PP)
糖尿病に関しては、もう一つ、膵島移植を臨床と基礎研究で行っておりまして、既に脳死体からの膵島移植を1例、自家膵島移植を3例実施しました。
また、日本はドナーが非常に不足しておりますので、それに代わる治療として、ブタ膵島を用いたバイオ人工膵島移植の研究を企業と共同で行っておりまして、順調にいけば数年以内に日本初の臨床試験が開始される予定になっております。
国際感染症につきましても、マラリアやデング熱などの新規の薬剤、あるいは検査機器を開発しております。
(PP)
人材育成についてでございますが、これもNCGMの大きなミッションでございまして、他のNCと連携して行っております。特に私どもは伝統ある総合臨床研修、それから多様なプログラムなどがあります。
(PP)
具体的なものは時間の関係で省略いたしますが、特に初期臨床研修では、これまでに742名の医師を育成いたしました。特徴的なものとしては、総合感染症コースや国際臨床フェローコースなどのNCGMならではの研修コースを用意しております。
国立看護大学におきましては、毎年100名の看護師を育成しておりまして、そのほとんどが6つのナショセンに専門的な看護師として就職しております。
(PP)
次は、ちょっと時間がありません。
(PP)
私どもの課題としては、この5つを考えております。特に、多忙な臨床の現場と研究とをどのように両立させるか、その体制づくりを考えております。
それから、企業と共同で研究を行う場合の知財について、人材がやはり不足しておりますので、これは他のナショナルセンターと協力することがいいのではないかと考えております。
また、不採算部門あるいは累積赤字が私どもセンターの大きな課題でございますが、それについてもいろいろな対策を検討しております。
また、最近問題になっております医師の働き方改革につきましては、臨床研修医当直の廃止を既に4月に実施しまして、時間外診療(の研修)を全て救急センターに一本化いたしました。
(PP)
ということで、私どものナショナルセンターNCGMは非常にミッションが多岐にわたっていてわかりにくいという御批判もございますが、広報委員会のほうでこのようなスローガンを考えました。すなわち、3つのGということで、「Global Health Contribution」「Grand General Hospital」「Gateway to Precision Medicine」という3つのスローガンで外部の皆様に我々のミッションを周知しているところであります。
右上のロゴは、今年創立150周年を迎えるNCGMの記念事業のロゴでございます。明治時代に当院の前身である陸軍病院に勤務したことのある森鴎外にちなんだロゴでございます。
御清聴ありがとうございました。
 
○永井座長
ありがとうございました。
20分余り時間がございますので、どこからでも結構ですから、御意見いただければと思います。いかがでしょうか。
山口構成員から。
 
○山口(俊)構成員
どうもありがとうございました。
ちょっとお聞きしたいのですけれども、経営改善に向けて手術の件数を増やすということが述べられていましたが、781床あって、立派な手術室があって、ICUも整っていて、高度な手術の件数が少ないように思うのですけれども、その原因は何かということと、それに対してどのような対策をこれから立てるかということをお聞きしたいのです。
 
○大西センター病院長
センター病院の病院長の大西と申します。御指摘ありがとうございます。
私も4年ほど前に大学のほうから異動してきたのですけれども、まず気がつきました点は、当センターは、歴史的な経緯から、割かし内科に主眼が置かれた内科中心の病院であるということを認識いたしました。その分ちょっと外科系の強化とか、がんの強化が少し遅れていたので、この二、三年、外科系の強化に努めてきました。そうしないと経営も医療の質も上がりませんので、様々な分野、例えば形成外科とか心臓血管外科、泌尿器科、肝・胆・膵外科、乳腺、いろいろありますが、そういった先端的な外科の優秀な人材を各方面と連携しながら集めて、今はかなり外科の手術が増えてきています。
おっしゃるとおり、この規模としては手術件数が少ないのですが、今はかなり増えてきて、今年は相当増える見込みが立っていますので、それによって経営改善、さらなる医療の質の向上につなげたいと思っております。
 
○山口(俊)構成員
ありがとうございました。
やはり今、急性期病院の中で手術の件数を増やすためには、がんは外せないと思うのです。がんの外科医も優秀な方はたくさんおられますし、がんの診療に対する取り組みというか、そういうものが今のプレゼンでも余り見えなかったので、特に内科系のがんの専門医の強化とか、あるいは内視鏡医の強化とかをやらないと、結局、外科もなかなか働けないという側面があるのではないかと思いますけれども、いかがですか。
 
○國土理事長
ナショナルセンターとしてがんセンターがございますので、がんについては一歩引いて遠慮ぎみにプレゼンしたつもりでございますが、当然、高度医療の中でがんの治療、私も肝臓がんの専門でございますので、がんが大きなターゲットの疾患であることは間違いございません。
総合病院である強みとしては、いろいろな合併症のある患者さん、特に高齢のがん患者さんが増えておりますので、具体名は申しませんが、某がん専門病院から、合併疾患のために私どもに紹介されて、当センターで手術をするというような患者さんも増えておりますので、そういう意味では総合病院の強みが生かせているのではないかと思います。
内科についてはいかがでしょうか。
 
○大西センター病院長
ちょっと追加させていただきますと、確かにがんの診療は一歩遅れていました。ただ、当センターの特徴として、感染症が合併しているとか、精神疾患が合併しているとか、非常に高齢者も多いので、そういった方のがんの診療はまさに当院のミッションの一つであろうということで、今、そのあたりに力を入れて、かなり高齢者や、他の病院ではなかなか手を出していただけない感染症や精神疾患の患者さんのがん診療、手術にも取り組んでおります。
 
○山口(俊)構成員
私はがんの専門病院にいるのですけれども、NCGMみたいに代謝とか感染症に非常にすぐれた体制が整っているような病院で難しい手術がやりたいなと常々思っているので、ぜひ前向きに検討をお願いします。
 
○永井座長
では、中野構成員。
 
○中野構成員
幅広い御活動のプレゼンテーションをどうもありがとうございました。大変わかりやすかったです。NCGMの各ミッションを果たしていただくために、高度急性期総合医療を充実させるということで、救急搬送数、応需率、三次患者の搬送数とかすばらしい数字を出しておられて、私も臨床医の一人として、本当にお忙しいだろうなと実感させられました。
そこで1点教えていただきたいことが、NCGMのミッションの一つ、従来から長く続けておられるという国際医療協力を行う唯一の医療機関。確かに、外務省とかJICAとか、国際医療協力を行う他の機関は国内にもたくさんございますけれども、医療機関として行っていただいているところは本当に唯一だと思うのです。その中で、高度急性期総合医療を充実させて、病院のアクティビティーを上げてやっていただいている中で、具体的にその国際医療協力に人材育成とか研究の面でどんな成果が上がったかというのがあれば、少しお教えいただくとありがたいのですが。
 
○三好人材開発部長
国際医療協力局人材開発部の三好と申します。御質問どうもありがとうございました。
どういう成果が上がったかということですけれども、ここにもありますように、協力局ができた前半の最大の功績は、ポリオ対策、ポリオの根絶を西太平洋地域でWHO、ユニセフ等と行動して行った。特に中国、ラオスでの活動が医療センターを中心に行われましたので最大の功績だと思いますし、それ以外ではMDGに向かって、MDGというのはミレニアム開発目標です。2015年までの目標でありましたが、それへの貢献として、ここに挙げたカンボジアやラオスにおける母子指標の改善、エイズや結核といったプロジェクトを通しての貢献が最大だと思います。
2015年からはSDG、持続可能な開発目標が上げられておりますが、それについてもNCGMは全面的に協力をして、その達成に向けて活動を行っております。
 
○國土理事長
その他にも、日本だけでは症例数が足りない稀少疾患についての国際臨床研究を例えばベトナムと行っていたり、それから、マラリアの新しい検査法の開発を例えばラオスのパスツール研と行っていたり、そのようないろいろな共同的な研究も行っております。
 
○中野構成員
もう少し踏み込ませていただいて、例えば、ポリオ根絶とかMDGに貢献した国際医療協力のスタッフが、その後、病院の機能として、日本の臨床の中ですごく活躍された例とか、あるいは病院の中でトレーニングを受けた医師とか研究者が、その後、SDGに向けての目標とか、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに向かっての活動とか、具体的にやっておられる例は今、どんな感じなのでしょうか。
 
○三好人材開発部長
ありがとうございます。
医療センターで、特に協力局で活動した医師は、一つは国際機関で活躍している人も多くいます。ユニセフ、グローバルファンド、そういったところで活動していますし、臨床に戻って活躍されている方も多くございます。それ以外に協力局では基礎的な部分、そして中級的な部分というふうに段階をもって国際協力の研修を行っており、長い目で見てそういう効果も出てくるものと思っております。
 
○國土理事長
確かにそのような人材のキャリアパスはなかなか難しいということも事実でございまして、これからもう少しそういうところを解決しなければいけないと思っています。
昨年、NCGM内にグローバルヘルス人材戦略センターができまして、そこでは私どもの職員に限らず、国際保健に関心のある日本人の方々をWHOなどの国際機関に就職をあっせんするということも行っております。
 
○中野構成員
ありがとうございます。
グローバルヘルスと日本の臨床のキャリアパスが非常に難しいということは私も常日ごろから理解はしているつもりですので、ちょっと詳しくお伺いしたくて質問させていただきました。
 
○永井座長
では、奥からどうぞ。
 
○岡構成員
東京大学の岡です。詳しい説明をありがとうございました。
私の関心で言いますと、国府台病院の思春期児童の精神科、これは本当に長い伝統がありますし、不登校とかそういったようなことでは先駆的なお仕事をされてきたわけですけれども、実際に国府台病院を中心とした、例えば国の施策とか、そういうことへの貢献とかそういったような部分についてのナショナルセンターとしての機能はどのようなものかというのを教えていただければと思いました。
 
○杉山国府台病院長
どうも御質問をありがとうございました。国府台病院の杉山でございます。
確かにおっしゃるとおり、児童精神は扱っているところが非常に少なくて、そういう意味では人材の育成とか、成果をどんどん普遍化して、特に国民の皆さんにそれを還元する必要があると思っています。ネットワークを築いて、今までここを出身した人たちがかなりのところに就職したり、いろいろなところに分散しておりますので、その人をネットワーク化して、特にセンター化して、もしよければ厚労省のお金をいただいて、そういう事業化をもっと拡大していきたいと、ぜひとも思っております。
なぜならば、やはり思春期とか児童精神は、それだけではなくて多くの精神疾患が児童のときから発生していますので、そこから関与していかないと、大人だけ見ていてもなかなか難しいのです。その意味では、我々は非常に力を入れていきたいと思っております。
 
○岡構成員
ぜひよろしくお願いします。
 
○永井座長
どうぞ。
 
○神庭構成員
九州大学の神庭と申します。
私も国府台病院の児童精疾に関心があるのですけれども、今、岡先生が触れられたように、児童精神医学というのは日本の中のまだ非常に弱い部分で、諸外国に比べて遅れて、専門家も少ない、研究もまだ十分進んでいないと理解しています。この領域は今後強めていってほしいのです。関わっているのは3センターございまして、先生方のセンターと成育とNCNP、この3つでそれぞれミッションが違うのか、そのミッションについて話し合っているような横串の委員会などの組織があるのかということが、まず大きな点でございます。
それから、先生方のセンターと国府台病院とが統合されましたが、組織として有機的に活動してもらえるような状況にあるのかというのがちょっと気になってございます。
先ほど國土先生から、育てた専門医が50人ということでございましたけれども、それでも年に3ないし4です。日本全体で330ですから、それでもかなりのコントリビューションだとは思うのですが、これはもうちょっとキャパシティーを上げられないかというのが願いなのでございますけれども、いかがでしょうか。
 
○杉山国府台病院長
おっしゃるとおりだと思います。私がこの4月に赴任して一番感じたのはそこなのです。もっと3センターにわたる、それぞれのところが少しずつやっているわけですけれども、やはり本来ならシームレスに小児からずっと大人まで診ていく必要があると考えておりますので、これはぜひネットワークを進めていきたいと思います。
人材のほうに関しては、残念ながらこの分野は非常に不採算部門なのです。だから、人を増やそうにもなかなか増やせない状況がありまして、全国からレジデント希望がいるのですけれども、なかなか受け入れられない状況にあるのは御理解いただければと思います。
 
○永井座長
では、奥からどうぞ。その後に花井構成員、どうぞ。
 
○河村構成員
恐れ入ります。私、実は自宅が近くにありまして、私たちはみんな医療センター、医療センターと呼んでいますけれども、非常にお世話になっている地元の立場でもあります。
その立場から見てちょっと御質問いたしますが、今の御説明で、やはり高度急性期医療ということで救急搬送もたくさん受け入れてくださって、総合病院を中心とした地域医療のモデルを示すことも必要だということなのですけれども、我々が見ていると、新しい病院の建物も何年か前にできて、少し診療科の再編をされているのではないのかなと。医療センターに救急車で連れていってもらえなかったという話を聞くときもありますし、それはいっぱいだということではなくて、その診療科はもうやっていなくなった。どういう考え方で診療科について編制されてきたのか、ナショセンとしてのお考えがおありだろうと思うのですが、そこをお教えいただければというのが1つ目です。
もう一つの御質問は、今、いろいろ出ているのですけれども、国府台病院の児童精神のところです。これは非常に専門性が高くていろいろ貢献がおありなのだなということが今日のお話を伺っていてわかったのですが、今日、この後にヒアリングがございますけれども、成育医療研究センターさんとか精神・神経医療研究センターさんとの棲み分けはもうきれいにできているという理解でよろしいのかどうか。その2点をお尋ねできればと思います。
 
○大西センター病院長
まず、前半の御質問にお答えします。
先ほどお話しした外科系の診療科の強化は今やっているのですけれども、その一環として、少し遅れている診療科、診療体制が幾つかあったのです。それに関して、やはり今後を見据えたら体制を変えなければいけないだろうということで、この2年間、幾つかの診療科は体制を変えさせていただきました。一部は少し、一時的に御迷惑をおかけしたところもあるのですけれども、最終的には整備が大分進みまして、今年からは余り大きな変更なく、それぞれ変更した外科系も非常に頑張っていますので、一時的に、体制をさらによくするための体制変化がこの1年ぐらいあったというふうに御理解いただけたらと思います。
救急搬送に関しては、救急車は非常に多くて、都内の大体1位ぐらいの数の一つなのですけれども、やはり転送例が多かったり、あるいは受け入れができなかったり、たまたま麻酔科医が十分でなかったとか、対応する診療科があれだったということです。ただ、そういうことはもうなくそうということで、この4月からさらに質を上げるということで、転送しない救急、断らない救急、そして、なおかつ今まで弱かった外傷とか火傷、複雑な疾患は一部受けていないこともあったのですけれども、それも受けるということで体制を変えさせていただきましたので、さらに質はよくなるのではないかと期待していただいてよろしいのではないかと思います。
では、後半を。
 
○永井座長
手短にお願いします。
 
○杉山国府台病院長
成育も精神・神経センターのほうも神経発達障害をやっているのです。特に成育のほうは学習障害が中心ですし、精神のほうは自閉症が中心なのです。我々のところは、鬱病とか不安障害、拒食症、統合失調症、さらには自殺、ひきこもりなどの情緒的な問題行動へなども全て対応していますので、そういう意味で、児童精神における精神的な問題を全てやっていると自負しております。
 
○永井座長
花井構成員、続いて末松構成員、お願いします。
 
○花井構成員
非常にわかりやすいお話だったと思うのですけれども、私たちにはわかりやすいし、私もここにカルテをつくっているのでよく知っているのですが、いつも言われるのは、6NCを議論するときに、国立国際医療研究センターは国立病院機構とどう違うのかというようなことを言われると思うのです。
いつもある議論なのですけれども、例えば、感染症とかエイズの救済医療を例にとりますと、HIVなどは最近、救済医療室は全国規模でサポートする体制ができつつあって、感染症医療も法律上は自治体レベルだけれども、実際には今まで起こった新興感染症やエイズやいろいろな例を見ても、自治体レベルで右往左往するわけです。その最初の対応を間違ったせいでむしろ広がってしまうとかいうことがあるときに、日本のCDC的な機能を期待するところなのですけれども、これはお金の問題も含めて、政策医療というのはかぎ括弧つきの言葉として、専門用語としてあると思うのですけれども、国家戦略医療みたいなイメージの感染症医療を中心としたミッションという形で明確にすれば、もうちょっと国立国際医療研究センターの意義があるのではないかというのをどうお考えかというのが1つ目。
2つ目は、これもよくある議論なのですけれども、AMEDがインハウスの研究費を持っていない中で、総合病院たる国立国際医療研究センターにある種、研究病床みたいなものが設置されたほうがわかりやすいのではないかという議論ですね。より研究独法としての位置づけが明確化するのではないかという議論なのですが、そういう可能性について。つまり、単なる病院ではないよというところなのです。もちろんTRとか、いろいろなことをやられていることはわかるのですけれども、いよいよここが、いわゆるザ・ナショセンとしてのプレゼンスを外に見せるために、何かそういうたてつけが必要にも思うのですが、この2点についてお考えを教えていただけたらと思います。
 
○國土理事長
重要な御指摘をありがとうございます。
感染症については、私どもとしては、世界のどこで日本人がいかなる感染症になっても最後の砦としてNCGMが機能したいという覚悟でおりますが、制度的にどうなっているかというのは、確かにおっしゃるような制度をつくっていただければ対応したいと思っております。
それから、臨床研究が我々の大きなミッションだと思っています。ただ、御存じのように、がんについてはがんセンターがございますので、そちらで恐らくセンター的なものを。それ以外について、生活習慣病、特に糖尿病とか肝炎に関しては、私ども、やはり疾患ごとにいろいろ得意不得意がございますので、その中で得意なものから全国的な規模のスタディーをできるだけ組みたいと思っております。
 
○永井座長
末松構成員。
 
○末松構成員
2点伺いたいのです。1点は、距離的に非常に近い関係にある国立感染研究所との連携です。そこと皆さんのところのナショナルセンターとの研究あるいは診療における連携体制で何か特別なメカニズムを設けておられるかどうか。
国立研究所というのは非常に組織のフレキシビリティーが小さくて、ポスドクがいないとか、間接経費がとれないとか、相当御苦労されて、厚生労働省とか我々もいろいろ工夫はしているのですけれども、直近にあるナショセンとの連携関係で両方のいいところが生かせる非常に重要な関係にあると思うのですが、そこについて何か工夫があればぜひ教えていただきたいのです。
 
○國土理事長
国立感染症研究所との役割分担につきましては、私どもの中でははっきりしておりまして、我々は病院機能がありますので患者さんを対象に、感染症研究所は菌を対象にということで、基礎研究と臨床ということで分かれていると思います。
確かにおっしゃるような問題もあると思いますので、それぞれの内部委員会にお互いに委員を出し合って、コミュニケーションを図っております。具体的に、例えばそういうポストについてどういうことをやっているか、私もちょっと答えられませんけれども、物理的にももちろん近いですし、常に緊密に連絡をとっているつもりでございます。
 
○末松構成員
ありがとうございます。
もう一点は、20ページの資料で連携大学院、これも非常に重要な取り組みだと思うのですけれども、たくさんの大学との連携大学院をお持ちです。外の大学から人材を受け入れて、そしてまた外に返していくという、人材育成の非常に重要なインキュベーターだと思うのですけれども、東京大学とそれ以外の大学から受け入れている学生の数は実際どのぐらいの割合なのかというところ、もしわかれば教えていただきたいのです。あるいは、トータルでどのぐらいの数を今、受け入れておられるのかというところがわかれば教えていただきたいのですが、どちらでも結構です。
 
○大西センター病院長
細かい実数は忘れてしまったのですけれども、私も連携大学院で慶應大学の客員をやらされているのですが、東大が私の記憶では二、三人でした。順天堂が結構多くて、消化器の連中などが行っていまして、五、六人ぐらいいますかね。あとは慶應が二、三人ですね。あとは恐らく一人、二人ではないかと思っています。そんなに大勢ではないのですけれども、それぐらいの人数で医療センターに籍を置いて、ある程度臨床もやりながら連携大学院で研究して学位を取る、そういう活用に使われています。
 
○末松構成員
これは非常に重要なアクティビティーだと思いますので、ぜひ頑張って、人材の多様性に配慮した育成をしていただければと思います。ありがとうございます。
 
○永井座長
研究費でAMEDから随分受けていると思いますが、文科科研はどのくらい受けているか。今、ランキングが出ていますけれども、千幾つかの研究機関で何位ぐらいのところに位置づけられるか、あるいは他のナショセンと比べてどうか。今日でなくても結構ですけれども、調べていただきたいと思います。
 
○國土理事長
宿題にさせていただけたらと思います。
 
○永井座長
外国人患者さんの未収金が1.18%とのことですが。他の患者さんでは何%ぐらいの未収金を抱えているか、おわかりでしょうか。
 
○大西センター病院長
都立病院のデータでは、平均で16%と聞いています。
 
○永井座長
1.6%ですか。未収金です。
 
○大西センター病院長
国内の患者ですね。国内の患者、実は当院の場合は、ほぼ国内とイコールの数字になっています。やはり1%台です。ほぼ同じです。ただ、そのためにはいろいろな対策をとっているということです。
 
○永井座長
1%でもとても大きな額になります。ぜひ法人化後の総稼働額の和と総収入の和が幾ら違うのか。その違いは未収金と査定と焦げつきだと思いますが、そこを一度教えていただければと思います。それは非常に重要な指標なのです。
 
○國土理事長
ありがとうございます。それも宿題とさせていただきたいと思います。
 
○永井座長
では、門田構成員。
 
○門田構成員
すばらしくアクティブに頑張っていらっしゃる話はよくわかったのですが、私はちょっと違う立場から、今日、この会議では、多分6NCを並べてどのような状況で、NCとはというディスカッションをせざるを得ないと考えますと、今日の御発表はどちらかというと、内部から外に向かって何をどういうふうに、どこまでやっているという話があったのです。
ところが、我々とすれば、それを今度、全体としてどう評価するかという作業が多分あると思いますので、それは我々がする作業という考え方もあると思いますけれども、内部的にNCとしてやっている自分たちの領域をナショナルチームとしてどうなのか、あるいはグローバルとしてどうなのか。特に国際ですから、グローバルとしてどう考えるのかということを内部的なテーマとして継続的にいろいろ考えていらっしゃるだろうと思うのです。そのあたりのことをおっしゃっていただくと、我々の評価するところとそちら側の皆さんの評価が比べられると思うのですが、そのあたりで何かあれば。あるいは今でなくても、また別の機会に提出していただければと思います。
 
○國土理事長
非常に難しい御質問をいただきまして、すぐには答えられませんが、国際医療協力につきましては、何がニーズなのか、相手国のニーズに合った協力をしたいということで、国境なき医師団のような具体的な診療活動はむしろ国内のいろいろな組織がやっていますので、公的な機関ならではの国際協力をやりたいと思っております。
 
○永井座長
それでは、最後に、祖父江構成員。
 
○祖父江座長代理
どうもありがとうございました。
非常に広範なお話、よくわかりましたが、これはいつも評価のときにも出る話で、繰り返しになると思うのですけれども、高度急性期の総合病院として一つ大きな柱がございますね。これは非常に重要なミッションでやっておられると思うのですが、もう一つは、ここに書いてある新興・再興感染症、HIV、国際協力、外国へのいろいろな派遣とか協力ですね。それから、肝炎とか糖尿病、がん、先ほど外科ということもおっしゃって、これはどちらかというと総合病院のほうに入るのかもしれません。最初に理事長がおっしゃった、高度急性型の総合病院であることが国際的なミッションにも非常につながるのだというお話をされたのですが、いつもそこがわかりにくいのです。そこは今後どう整理され、どう表現されていくのかというのは、何度も繰り返しかもしれませんけれども、御説明いただけるとありがたいなと思っています。
 
○國土理事長
私の個人的な考えですけれども、言ってみれば、国際医療協力の中での国際的なショーケースといいますか、モデルとなるような病院ということであれば、やはり総合病院かなと思うわけです。
先ほども、数千名がもう既に研修に来られているわけですが、例えば2週間の研修であれば、NCGMに半分、あとの半分はいろいろな日本の地方の施設に行くという研修コースになっております。そういう国際研修の拠点になるという意味でも、やはり総合病院であることは非常に重要であると考えております。
 
○永井座長
ありがとうございます。
まだ御質問があろうかと思いますが、ぜひメール等でお寄せいただければ、また宿題としてセンターにお願いしたいと思います。
それでは、NCGMのヒアリングはここまでといたします。どうもありがとうございました。
(国立国際医療研究センター退室)
(国立成育医療研究センター入室)
○永井座長
それでは、続きまして、国立成育医療研究センターからプレゼンテーションをお願いいたします。
 
○五十嵐理事長
国立高度専門医療研究センターの五十嵐と申します。今日はお話をする機会をいただきまして、まことにありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私どもの施設は、胎児期から新生児、小児、思春期を経て若年成人に至る生育過程で生じる健康問題について研究、診療、そして人材育成をしているセンターでございます。
病院の病床数は490床、入院患者数は1日平均391名、外来患者数は平均984名であります。平均在院日数は9.8日であります。
(PP)
私どものセンターの診療面での特徴を示しております。子供をバイオ・サイコ・ソーシャルに捉え、子供中心の医療を目指す病院にしたいと考えています。御存じのように、現在の我が国の大学病院の小児科の多くは非常にサイズが小さいですので、そういうものではなく、いわゆる小児病院としての機能を持つだけではなくて、子供が本当に中心となるような療育環境を形成したいと考えているところであります。
それから、交通外傷を含めた全ての子供の救急疾患に対応しています。
また、全ての小児内科、外科系の診療体制を整備している。これも非常に大きな点ではないかと思います。
(PP)
こうしたことで、特に中国や近隣のアジア諸国から診療に関する問い合わせだとか、受診者数が最近になって非常に増えてきております。
(PP)
救急に関しましては、救急車を年間3,000台受け入れています。重症患者の搬送にも私どものスタッフが出向いて、例えばECMOなどを動かしながら、救急車の中で高度な治療を行いながら搬送しています。こうしたことは大学病院や総合病院ではできませんので、そういうところからの依頼が大変増えているという状況にあります。
(PP)
それから、地域病院に若手の医師を派遣しております。私どもの病院だけで研修するということは、いわゆる地域での現場での診療を知らないという医師をつくることになりますので、最低1カ月間、地域の病院に、年間400名以上受け入れておりますし、私どもの施設から20人前後が地方に出向いております。
(PP)
海外、特にアジアからの当センターへの医師や看護師の研修も、ここにお示しするように増えている状況にあります。
(PP)
それから、当センターにおける高度先進医療の中で、生体肝移植患者数と術後の成績は世界のトップを占めております。当センターでの小児の肝移植数は我が国全体の7割を占めている状況であります。また、この生体肝移植を学ぶ医師を指導するために海外、特にイスラム系の国に医師が訪問して技術指導をしたり、あるいはそれらの国からの医師を受け入れて指導を行っております。
(PP)
私どものセンターは、ES細胞の研究の我が国で最大の拠点であると言えると思います。京都大学よりも多くのES細胞を樹立しております。このES細胞を用いた先天性の尿素サイクル異常症患者への移植治療を計画中で、既にPMDAに治験届を提出しているところであります。
(PP)
また、遺伝子治療につきましても、特に小児の医療では大変遅れている状況にあります。そこで、私どもは、慢性肉芽腫症患者への遺伝子治療を実施しましたし、近いうちに先天性免疫不全症候群の一つであるウィスコット・オルドリッチ症候群の患者さんへの遺伝子治療を実施予定でございます。
(PP)
小児がんや小児の先天性免疫不全患者の治療成績は、最近になりまして非常に向上しておりますけれども、依然として難治例も取り残されております。
私どもの施設では、これらの患者に造血幹細胞移植を実施して、極めて良好な治療成績を得ております。これは研究所と複数の診療科での共同作業の結果でございまして、他の小児病院や大学病院では構築することのできない体制ができているということが原因になっていると思われます。
(PP)
小児がんに対しましては、成人と同様にがんの免疫療法も現在計画中でございます。
(PP)
もう一つの特徴は、小児の稀少疾患あるいは難病についての研究でございます。小児の稀少疾患あるいは難病のほとんどは、約9,000に及ぶとされる遺伝性の疾患で占められています。その半数は原因がわからないという状況であります。
私どもの研究所は、AMEDの基幹プロジェクトとして慶應大学病院とともに小児希少・未診断疾患イニシアチブというものを担当しております。既に2,000を超える症例の遺伝子と臨床データを集積しております。解析の結果として、約3割に原因遺伝子を同定しまして、10を超える疾病の原因となる新しい遺伝子を明らかにすることができました。
(PP)
また、インプリンティング異常による疾患の研究も私どもの研究所の誇る成果の一つと言えると思います。我が国の小児インプリンティング疾患のほぼ全てを私どもの施設が把握しておりまして、解析を行っています。その成果の一つとして、鏡・緒方症候群という新しい遺伝性疾患の解明につながりました。
(PP)
また、我が国では年間約1,000名の血液の悪性腫瘍、それから、約1,000名の固形腫瘍の患者が発症しています。当センターは、それら全ての患者の病理組織を病理診断し、あわせて免疫診断や画像診断も行っております。それに関連して小児がんの遺伝子解析も実施しておりまして、新しい原因遺伝子を複数解明しております。
また、小児がんの治療におきましても、成人と同様にプレシジョンメディシンの方向性が現在期待されておりまして、そのための基礎的な成果を生み出している状況であります。
(PP)
これはアレルギーの患者さんですけれども、私どもは小児のアレルギー性皮膚炎と鶏卵アレルギーの発症予防法を解明して、高い評価を得ております。例えば、アトピー性皮膚炎の発症を3割減少するということとか、あるいは乳児期早期から介入することによって鶏卵アレルギーの発症を8割減少するというような成果を生み出しております。
(PP)
それから、性分化研究の拠点としても世界的に貢献をしております。
(PP)
それから、やはり私どもの施設の特徴は、大学病院ではできない全ての小児内科系あるいは外科系の診療体制を整備しているということだと思います。ここにありますように、大学病院や小児専門病院からも多数紹介患者を受け入れております。
(PP)
現在、初めて出産をする我が国の女性の年齢は30歳を超えております。妊娠年齢が高齢化することに伴いまして、合併症の妊娠が非常に増えているわけであります。
それから、小児期から慢性疾患を持って大人に移行する患者さんも最近非常に増えておりまして、そういう人たちも妊娠、出産を迎えることになるわけであります。
そういうわけで、こうした合併症妊娠への対応というものに対しても非常に大きな役割が期待されています。そのためのプレコンセプションケアとか、あるいは産科と内科が一緒になりまして患者さんに対応するような体制をつくることができております。
(PP)
生殖医療研究と不妊治療の研究につきましても、一つの大きなテーマとして成果を上げているところでございます。
(PP)
また、小児領域に関しましては、成人に比べまして、臨床研究あるいは治験体制が非常に遅れているということが言えると思います。恐らく世界的に見ましても、我が国の小児の臨床治験は非常に数が少なくて、それはひとえに体制が遅れていることに尽きるわけですけれども、こうした状況を鑑みまして、関係するところと協力をいたしまして、私どもは小児医療の臨床研究センターをつくりまして、これに向けた対応をとらせていただいているところでございます。
ここにありますように、小児治験ネットワークというのをつくりまして、それを介して治験の進捗を進めているところでございます。
(PP)
次は、小児に用いられる薬の安全性情報の収集や評価につきましても、我が国では大変遅れているわけであります。例えば、添付文書一つ見ましても、小児についての経験は少ないということで処理されているわけですけれども、私どもは、小児と薬情報収集ネットワークを構築しまして、そこから得られた薬剤に関する安全性の情報を発信しているところでございます。
(PP)
また、研究方法の評価方法として、系統的レビューというのが最近非常に重要になっておりますけれども、私どもはコクランレビューセンターをつくりまして、国の施策に役立つ研究を行って、その成果を海外の一流誌に多数報告しているところでございます。
(PP)
次に、小児・周産期の臨床治験を推進するために臨床研究センターを私どものところでつくったわけですけれども、具体的な臨床治験を支援するだけでなく、研究従事者への教育、外部の施設で行われる臨床試験の支援も行っているところであります。
(PP)
この部門を今後さらに発展させ、小児・周産期に特化した我が国随一の臨床研究センターに育てることを目指しております。この臨床研究センターを運営するために年間約1億5,000万円の経費がかかるわけですけれども、なかなかそこが大人と違いまして、臨床研究で製薬会社等から収入を得ることが難しい状況であるということも、一言御報告させていただきます。
(PP)
また、当センターの妊娠と薬事業は、周産期に用いられる薬剤の安全性に関する情報を医療機関や患者さんに提供することを目的としております。多数の利用がございまして、これは我が国における唯一の情報提供機関として極めて重要な役割を持っているものと考えております。
(PP)
さらに、厚生労働省は成人を対象とする指定難病研究事業とともに、小児を対象とする小児慢性特定疾病治療研究事業を実施しております。
この事業を支援する機関としまして、当センターが小児慢性特定疾病情報センターを構築しました。そこで疾病登録の管理とか、788疾患に及ぶ疾病の最新情報を提供しているところでございます。
(PP)
また、小児慢性特定疾病の患者さんが社会に出て自立して生活できるように、移行期の支援モデルの事業に協力をしているところでございます。
(PP)
子供の難病の治療成績が最近向上しまして、成人を迎えることができる患者さんが増えています。その多くが在宅医療を受けているわけであります。しかしながら、重症患者をケアする母親への負担が大きいことが社会問題となっておりまして、こうした状況の中で、私どもは2年前に医療型の短期入所施設「もみじの家」をつくりまして、在宅医療を受けている重症患者さんの短期入所サービスを開始いたしました。重い病気を持つ子供と家族が安心して医療を受けて、これをいわゆるレスパイトケアと申しますけれども、さらに、教育や遊びを経験できる施設として活動しています。本年2月には皇后陛下の御訪問もいただきました。
(PP)
2016年になりますが、米国の調査機関であるトップマスターズ・イン・ヘルスケア・アドミニストレーションが「30 most technologically advanced children's hospital」を選定いたしました。30の中の24施設が米国から、2施設が英国から、それからカナダ、オーストラリア、イスラエル、そして日本から1施設が選ばれています。日本からは、私どもの施設が唯一、18番目の施設として選ばれております。
(PP)
このスライドには、当センターが貢献できるユニークな事業について列挙いたしました。研究所と病院の密接な協力体制のもとで難病の原因究明、治療法の解決をしたり、あるいは高度先進医療の開発推進に向けた治療、研究をしたいと考えています。
それから、高度で専門性の高い小児・周産期医療の提供ということも非常に重要なミッションでございまして、ここに挙げました4つの点について、力を入れて頑張っているところであります。
それから、国が果たす小児・周産期医療・政策への貢献も、私どもの大きなミッションと考えています。全国の小児がん中央病理診断への貢献、妊娠と薬事業、新生児のマススクリーニングに用いられるタンデム・マススクリーニングの中央精度管理、あるいは小児慢性特定疾病研究事業の運営や指定難病事業への協力、小児治験ネットワーク事業の設立と運営、臨床研究センターの充実による小児・周産期分野でのセンター内外での臨床研究の推進・支援、国の成育保健・医療政策に資するための公的な健康課題に対する研究の推進ということを考えているところでございます。
(PP)
最後に、この6つのナショナルセンターまたはナショナルセンター間で共同して取り組むべき事業についてまとめさせていただきました。
1番目に、知的財産管理の6つのナショナルセンターでの一元管理が考えられると思います。
2番目として、小児がんのゲノム診断につきましては、国立がん研究センターと私どもの施設で連携して行いたいと考えています。
今後、人工知能を用いた診療や研究が盛んになると思いますので、これにつきましては6つのナショナルセンターで共同で対応したいと考えているところです。
それから、既に始まっておりますけれども、クロスアポイントメント制度を活用して、センター間での人事交流を図りたいと考えています。
(PP)
最後に、これまでの小児医療、小児保健というのは、どちらかというとバイオロジカルな面への対応が主だったと思います。その結果として、日本では、例えば乳幼児の死亡率とか新生児の死亡率が非常に下がっているわけです。
しかしながら、人間というのはバイオ・サイコ・ソーシャルな存在であります。成育医療研究センターは、病気の有無に関わらず、バイオ・サイコ・ソーシャルな面から子供と青年と家族を捉えて支援し、リスクに対応できる体制を我が国に構築したいと考えて、これからも活動したいと考えています。
以上です。
 
○永井座長
ありがとうございました。
それでは、20分余り御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
岡構成員、どうぞ。
 
○岡構成員
ありがとうございました。東京大学の小児科の岡です。
私自身も同じ領域におりますので、今の先生のお話はよく理解できたかと思うのですけれども、その中で前回、平成27年のときのナショナルセンターの話し合いの中での積み残しとして、ナショナルセンター間の重複で、がんセンターと成育医療センターの小児がんの重複ということが挙げられているのです。それについて具体的に、私自身は両方でやるべきなのではないかと思っているのですけれども、そのメリットといいますか、どのような特色があるのか。そのあたりのことを御説明いただければと思います。
 
○五十嵐理事長
ありがとうございます。
がんセンターは大人の治験、例えば新しい薬を日本に導入する、そして患者さんにそれを応用するというようなことで膨大な知識と経験をお持ちであります。しかし、残念ながら小児分野は、先ほどもお話ししましたように薬の導入が非常に遅れているわけです。そういう意味で、新しい薬の臨床応用等につきましては、がんセンターが中心になってこれからも活動していただきたいと思います。
しかし、小児のがんは大人のがんとは全く違うものでございまして、数も非常に少ないですので、実際の医療として集中治療が必要だった場合だとか、あるいは心の問題なども含めて、小児医療を総合的に子供に対して行うという点では、少なくともがんセンターは子供向きの施設ではございませんので、成育医療研究センターが中心になって子供のがんを担当するということがこれからも必要ではないかと考えています。
 
○岡構成員
ありがとうございました。
もう一つよろしいですか。がんの中央病理診断のことを今日出されているのですけれども、例えば、これは医療の中では本当に必要なことなのだろうと思うのですが、今は財政的には研究費でされているということになるのでしょうか。そのあたり、財政的な点ではどうでしょうか。
 
○賀藤病院長
病院長の賀藤から答えさせていただきます。
確かに今、研究費でやっているところはあるのですが、それはちょっといびつであろうということも考えていますので、今、事業化を進めております。それで全部、いわゆるロジから事務から全ての結果をどのようにやるかということで、今年の秋をめどに事業化を考えて、検査室のISOをとる準備とか、検査室はあるのですが、それをやるということも含めて準備をしています。
年間2,000万ぐらいそれでとれるのではないかと思っているのですが、それに向けて体制整備、ロジも含めて、あとは検体の運搬をどの業者と契約するかも具体的に検討を始めて、この秋から事業化を始める予定でおります。ありがとうございます。
 
○岡構成員
ありがとうございました。
 
○永井座長
では、奥からどうぞ。
 
○大西構成員
貴重なお話をどうもありがとうございました。
ちょっと日常の話と離れたことになるかもしれませんが、34ページにお出しいただきました世界的な評価のところで、見事に30位の中に入られたと、すばらしいことだと思います。一方で、上位の子供病院、世界的な子供病院と比較することが適当かどうかは留意する必要があると思いますが、そういった病院にどういう特徴があるのでしょうか。また、それらとの比較において、成育医療研究センターとしては、どういったところを改善することをお考えでしょうか。さらに、10年、20年と長期的に考えた場合、どういう姿を成育医療センターとしては目指していかれるのでしょうか。皆様が御議論しておられるお考えなどを少しお話しいただければと思います。
 
○五十嵐理事長
ありがとうございます。
この評価は、technologically advancedという視点がついているわけです。ですから、ある意味、高度先進医療をやっているという点で評価をされたと理解しております。この評価をどこまで喜んでいいのかどうかというのも実は大変慎重になるべきだと考えています。しかしながら、私どもとしては、世界最多かつ最高水準の小児の肝移植をしております。これはニーズとしてはこれからもありますので、さらに進めたいと考えています。
それから、先ほどお話ししましたように、日本ではES細胞の研究や臨床試験はまだ行われていないわけですけれども、外国ではもう、iPSよりもどちらかというとES細胞のほうの研究や、実際に応用されつつあるわけでありまして、これについても私どもが中心になって、小児難病の治療に臨床研究として使っていきたいと考えています。
それから、先ほどもお話ししましたけれども、稀少疾患に対する遺伝子の研究あるいは治療を含めて、これも推進したいと考えております。
それから、性分化疾患とかインプリンティング疾患についても、なかなか日本の施設ができるところは少ないので、これをさらに推進するということも考えておりますし、アレルギーの分野でも、世界アレルギー機構から、私どもの施設はアジア初のセンター・オブ・エクセレンスという、どういう意味なのか私も理解できないところがあるのですけれども、非常にいい拠点病院だという認可を受けておりますので、この部分でも頑張っていきたいと考えているところです。
 
○永井座長
次に、いかがでしょうか。
では、末松構成員。
 
○末松構成員
ありがとうございます。
資料の25ページで小児治験ネットワークのお話を伺いました。成育医療センターが国の中心になって臨床研究や治験の活性化を担えるよう非常に大きな期待を私どもは持っています。
伺いたいのは、いわゆるTR機能のところで、国の仕組みとして臨床研究中核病院とか橋渡し研究拠点というのがありますけれども、恐らく施設要件等の問題で、成育医療センターは物理的にそういうセンターに位置づけることが今のところできないわけです。そこら辺は、恐らく五十嵐先生も大変フラストレーションをお持ちなのではないかと。そこの仕組みを変えないと、今、私どものAMEDのファンディングを見ても、横軸に人間の年齢をとって、どこに大体ファンディングされているかというのを、半定量的ですけれども、明らかに小児の領域、あるいは学童の領域というのは完全にエアポケットになっており、クリティカルマスが保てていないのではないかと思います。
このページの赤文字でも書いてありますけれども、ナショセンが中央事務局機能を担って、小児領域における稀少疾患の治験を実施するに当たって、遺伝子治療というモダリティーがこれから入ってきて、治験のやり方とか期間とかも物理的に変わっていくと思うのです。その辺で、今の仕組みだとうまくいかないけれども、これからこういう仕組みが必要だというのを、ナショセンのお立場で何か御意見があったら承っておきたいと思います。
 
○五十嵐理事長
ありがとうございます。大変痛いところを御指摘いただきました。
実は、拠点病院になりたいのですが、例えばCRCの数を十数名用意しなければいけないとなっておりますけれども、小児の臨床治験をやる場合に、特に稀少疾患の場合、対象とする患者さんが10名だとか、あるいは50名だとか、大人の数の100分の1以下でしかないようなことが多いわけです。そのために、恐らく十数名のCRCを用意しなさいと一律で決められているわけですけれども、もし、私どもがその十数名のCRCを雇った場合にどうなるかというと、要するに仕事がないわけです。CRCの人は入っていただけるけれども、預かる患者さんの数は少ないということで、結局、お金が有効に使えないという点がございます。
ですから、国が定めていただいている基準を何とか小児の場合には違う形で認めていただけないかということは、実は幾つかのルートを通じてお願いはしているところですけれども、残念ながらそこまでいかないということだと思います。
それから、御指摘のように、小児の中で特に思春期から成人に行く10歳から21歳。米国では、10歳から21歳を思春期の子供というふうに言いますけれども、この方たちへの医療費の使用度が非常に少ないがために、研究も非常に遅れていますし、研究者も少ないです。しかし、実際にこういう方たちは、大きな病気はしないのだけれども、大人になる上で様々な心や体の問題が出てくるわけですけれども、それに対して十分な対応ができていないというのが日本の状況ではないかと思います。
そういう意味で、そういう分野にこれから光を当てるということが、我が国の日本の子供たちの将来に向けて非常に重要なことではないかと思います。御指摘どうもありがとうございます。
 
○永井座長
中野構成員、本田構成員、祖父江構成員。
 
○中野構成員
小児であるがゆえに、診療も研究もいろいろ御苦労が多いかと思うのですが、そんな中でとてもわかりやすい御説明をどうもありがとうございました。きっと私も含めて日本中の小児科医が成育医療研究センターを大変頼りにしておりますので、引き続きお願い申し上げたいと思うのですが、2点教えてください。
セカンドオピニオンに関してです。海外からのセカンドオピニオンの数、それと大学病院、小児専門病院からのセカンドオピニオンの数をお教えいただきましたけれども、これ以外に通常に受診されるセカンドオピニオンの患者さんがどれぐらいいらっしゃるかということと、あと、地域性です。近隣の方と国内の遠方の方と、どれぐらいの数いらっしゃるかというのが、まずお尋ねしたい1点目でございます。
 
○賀藤病院長
では、賀藤から答えさせていただきます。
正確な数字は申しわけございません。ちょっと言えないのですが、やはりセカンドオピニオンでございますので、どうしても今の治療に対してどうかということの多くの疑問を持たれる方が多いものですから、7割ぐらいは大学病院と小児病院という専門病院になります。ですので、一般の総合病院の小児科からのセカンドオピニオンというのは多くはない。2割ぐらいだろうと思います。
あとは地域性ですが、確かにセカンドオピニオンは4割ぐらいが東京、2割が神奈川、1割ちょっとが埼玉、千葉になりますが、あとは全国から大分ばらけてしまいます。ということで、患者さんから一番言われるのは、遠いと。東京駅か品川駅にあればというのが今一番言われているところです。
 
○中野構成員
ありがとうございます。今の成育医療研究センターに国民が期待すべき機能ということで、どれぐらいの方が遠くから見えているのかなともお伺いしたくてお尋ねしました。
もう一点、手短によろしいですか。先ほど治験のことを御質問いただいたのですが、私も治験のことで御質問したいと思うのです。小児の治験はいろいろな意味で非常に難しいと思うのです。小児治験ネットワークを介した治験というのが、試験数、施設数とも年々増えているのはすばらしいことだと思うのですが、成育医療研究センターでやっておられる治験で、小児治験ネットワークを介した以外の治験はどれぐらいあるかということと、その内容がおわかりになれば教えていただけますでしょうか。
 
○斉藤臨床研究センター長
ありがとうございます。
現在、これ以外で実施している治験が、うちのセンターの者が主任を務めているのは7件ほどございます。先ほど申しましたES細胞、あるいは遺伝子治療、そういったものが中心になっておりまして、基本的には希少疾病でありまして、症例数は全体で3例とか5例ということでPMDAとの相談は成り立っております。
 
○中野構成員
ありがとうございました。
 
○永井座長
どうぞ。
 
○本田構成員
本田です。大変わかりやすい説明をありがとうございました。
今、NCの役割とは何かということがずっと議論される中で、今まで御発表のあったような世界水準の研究とか医療提供というのはもちろん重要だと思うのですけれども、そうしたものを背景にして、NCであるという意味は、やはり国として必要な医療とかヘルスケア政策をきっちり提言していけるとか、政策立案に資するためのデータとか、それを出していくような研究もしていくということはとても重要だと私は考えています。そういう意味でもいろいろな点で、成育医療センターさんは様々なところで国全体としての役割を果たしているという御発表があったと思うのです。
御発表資料の27ページは政策提言に向けたものなのかなと感じたのですけれども、例えば立案に具体的にどのように関わったとか、こういうもので国の先ほどおっしゃっていたような小児とか青年期の医療がエアポケットになっている。どうしても病気になる人の割合が少ないから、メディアとかも、小さい子供とか、高齢者とか、がんとかという部分はあるのですけれども、もっと本当は必要なところがあるはずなのに、なかなか光が当たらない部分もあると思うのです。そういうものをどのように出していっていらっしゃるのかとか、何か具体的に27ページに関係するところを教えていただきたいのです。
 
○賀藤病院長
政策提言という形でもよろしいでしょうか。1つは、先ほど理事長が御説明申し上げましたように、いわゆる一般的に言われている医療的ケア児という言葉。私どもは難病、稀少疾患を全部やっていますけれども、命を助けますが、どうしてもデバイスとかが何か必要になって在宅に持っていかれる患者さんが大変多くなってきています。私の病院で今、月600人の患者さんをフォローしていますけれども、その人たちの存在、あと家族の苦労というものを、今まで社会はほとんど無視してきました。
やはりその医療的ケア児、私はこの言葉がいいかどうかわかりませんけれども、その御家族も含めて、兄弟も含めて、やっとマスコミにそういう言葉が出てくるようになって、ただ、それをサポートする施設がまだありません。民間でちょっと出ていますけれども、公的機関では私どもだけです。それは全くの赤字です。昨年度は6,000万円の赤字でした。今年は何とか1,000万円代弱に持っていこうと思っていますけれども、福祉と医療のちょうどグレーゾーンのところなのですが、その制度、報酬体系を何とかしたいと思って、今、一応そういうことでいろいろデータをとりながら、または政策をどうしたら赤字にならない程度の制度に持っていけるかということを検討させていただいて、提言しようと思っています。
もう一つ、これは移行期医療ということです。これは全く同じ問題です。死ななくなった。だから、子供は病気を持ったまま大人になっていきます。でも、その大人になった方たちの診療をしてくれる内科は、成人側の診療科は大変少のうございます。私どもは成人のがんを診られませんし、生活習慣病も診られません。ただ、診てくれるお医者さんもいません。これが今の私どものというか、アメリカもそうですけれども、アメリカは私どもより10年進んで問題を大きくしていますけれども、大人になった小児慢性の病気を持った子供たちの医療をどうやってシームレスに持っていくかということはまだまだ大きな問題で、その制度設計も行って、今、これも提案しようとしております。
 
○本田構成員
ありがとうございます。
やはりNCという意味合いからも、日本の国の医療体制、政策についての提言というものが一つ大きな役割だと思いますので、その辺はしっかりまた取り組んでいただければと感じました。
 
○永井座長
祖父江構成員。
 
○祖父江座長代理
どうもありがとうございました。
特に前半のお話は、いろいろな世界のトップレベルの領域を幾つかお持ちであることから、全国から患者さんがそれを求めて来られているし、国外、特にアジアからも来られている。それを世界的にも評価されて、18位でしたか、ランクインされているというのは非常にすばらしいと思いました。いい形で展開しているなという感覚を持ったのですが、今後、例えば10年、世界のトップをどうやって切り開いて、さらに上を狙うのかということがもう一つ非常に重要な課題になってくると思います。
今、最後にちょっとお話があったのですけれども、私は2つ御質問させていただきたいのですが、1つは、非常にいい治療をたくさん、例えば生体肝、遺伝子、再生、幹細胞などでやっておられますね。その子供さんたちが長期のフォローでどういうアウトカム、例えば大人になったときにどういう状態の本当の意味の治療成績を発揮しているのかというようなことが世界的にも非常に重要な問題になってきていると思うのです。
今、ちょっと病院長の先生からお話がありましたけれども、それは今後、どう展開していくのか。これは非常に今後のナショナルセンター、特に先生方のところとしては重要な課題だと思っているのですけれども、そこはどうかというのがまず第1点です。
第2点目は、先ほど来、治験の話が出ておりますが、私の印象ですと、稀少疾患を中心にして、非常に高いポテンシャルがあるのではないかと拝察しました。ですから、やり方によっては非常にいいシーズがどんどん出てくるような気がしております。
現時点で企業連携を、あるいは企業と連携しながら創薬に結びつけておられる実績がどれぐらいあるのかというのが一つ。
もう一つ、ナショナルセンターがぜひ今後やっていただきたいと思うのは、国際治験をナショナルセンターが主導してやるものが幾つあるかというのは、今後、非常に重大なポイントになると思うのですけれども、これが現時点ではどうですか。幾つか質問しましたけれども。
 
○賀藤病院長
では、最初の治療とそのフォローに関してですが、まず、私どものセンターの一番の特徴である肝移植のことです。先生が今、御指摘いただいたように、この長期フォローアップは大変大きな問題であり、かつ課題だと考えております。ただ、移植後二、三年経過すれば大抵は安定して、その後、長期的に5年以上の場合は亡くなる患者さんが今のところはほとんどおりません。それは11ページのスライドでも示しております。
ただ、成人をどうするかということも含めて、うちで移植を始めてからまだ10年たっておりませんので、そこら辺は今後、確かにこれは物すごく大きな課題で、フォローするドクターの育成が今後の大きな課題だと思っています。
あとは遺伝子治療に関して、今、先天性の免疫不全に関してはやっています。まだこれもやっと1名ぐらいなのですけれども、今後、先天性、例えば慢性肉芽腫症に対する遺伝子治療をやりましたが、逆に言えば、造血幹細胞移植の技術がすごく上がったものですから、結構これでやれてしまうのです。ですので、遺伝子治療適用になる慢性肉芽腫症の患者さんがだんだん少なくなっていくのではないかと考えています。例えば、慢性活動性EBウイルス感染症でも、造血幹細胞で大分成績がいいですので、そういう意味では、感染症との絡みでの移植はだんだんそちらのほうが主体になってくる可能性がありますので、遺伝子治療に関してはもう少し時間をいただければと思います。
小児がんに関しては、当然これは長期フォローアップが大事です。今、その専門診療科をつくっております。
 
○斉藤臨床研究センター長
2つ目の御質問についてお答えさしあげます。
シーズ案件として先進医療、あるいは特許、あるいは臨床研究の開発、こういったものを含めまして、現在27件のフォローを我々の施設の中でやっております。その中で企業がついているのは約半数だと御理解いただければよろしいかと思います。その中には、我々の施設の中で製造施設を持っておりますので、そこで治験薬を製造して、我々の施設で治験をしているものもありますし、企業のほうから原体を供給していただいているものもございます。
国際連携につきましては、ただいまがんについて1件やっておりまして、先ほど肝移植の話がありましたけれども、その移植対応として我々が対応しているという治験を実施しております。さらに、国際連携につきましてのネットワークといいますか、ヨーロッパのほうにグリップという周産期系あるいは胎児、小児の乳児系のネットワークがございます。こちらのほうに七、八年前から参加をしておりまして、一応、日本として成育医療センターがこのネットワークに参加するという表明をしております。
 
○永井座長
目覚ましい研究が展開していますが、知的財産取得件数が6ナショセンの中で一番少ないのですね。申請件数等も少ないので、支援体制がまだ弱いのではないかと思うのですが、いかがですか。
 
○斉藤臨床研究センター長
ありがとうございます。
おっしゃるとおりでございまして、まず支援をする部屋を設けましたのが2年前でございます。そこに1人、企業を経験した者を置いておりますが、現在、AMEDのほうに出向しておりまして、残念ながら開発の者が併任でその辺を対応しているという状況でございます。
もう一件は、開発、特許の申請をして、一応出すのでありますけれども、実際に使われることがほとんどなくて、これはやはり患者数の少なさとかそういったところが原因かと思われますけれども、まだ実際に応用された件数が非常に少のうございますので、なかなか会社も特許に乗ってくれないというところ。
それから、資金的なものも非常に問題がありまして、国際展開すると安く見積もって600万から700万ぐらいの特許申請料、あるいはその後に対するクレームへの反発料、こういったものもかさんできますので、ぜひこのあたりは、できればナショセンの中でそういった特許を管理する箇所などがあると、非常に我々のほうも助かりますし、これまでのヒューマンサイエンス振興財団のような特許をマッチングしていただける施設もあると非常に助かると思います。
 
○永井座長
知財管理だけではなくて、リサーチ・アドミニストレーターのような企業との橋渡しをする人が必要だと思いますので、ぜひ御検討いただければと思います。
それでは、どうもありがとうございました。
(国立成育医療研究センター退室)
(国立精神・神経医療研究センター入室)
○永井座長
よろしいでしょうか。それでは、お待たせいたしました。
続いて、国立精神・神経医療研究センターからお願いいたします。
 
○水澤理事長
国立精神・神経医療研究センターの理事長の水澤でございます。よろしくお願いいたします。
(PP)
少し見にくいスライドで大変恐縮でございます。私どものミッションは、精神疾患、神経疾患、筋疾患及び発達障害の克服であります。
私どものいただいておりますこのミッションに基づきまして、基礎研究及び臨床研究を行って、首尾一貫して研究開発、先進医療、人材育成、政策提言を進め、成果を国民に還元することに努めてまいっております。特にレジストリやバイオバンクなど、基盤整備を含めた多施設共同研究の中核、中央事務局などとしての役割が期待されていると思っております。そういうミッション性、一貫性あるいは継続性、国立ということからくる公平性といったものが、このナショナルセンターの大学病院等と違うところだろうと理解しております。
私どもの中心的課題は、この精神疾患、神経疾患、筋疾患及び発達障害の克服でありまして、これは我が国の目標であります「脳とこころの健康大国」の実現、まさにそのものであると思います。
その現状でありますけれども、精神疾患及び発達障害は、その原因も、発症機序につきましても、まだ十分究明されておりません。また、確定されたバイオマーカー等もないという非常に厳しい状況でございます。
神経疾患及び筋疾患は、難病中の難病であります変性疾患も含めて、原因遺伝子等が多数判明いたしまして、発症機序の研究も進んでおります。しかしながら、膨大な研究が行われているアルツハイマー病でさえも、まだ根本的治療はできておりません。また、多くは希少難病でありまして、遺伝性の病気は数%であります。大部分を占める孤発例につきましては、これからという状況でございます。さらに、神経系は再生しにくく、様々な神経疾患による神経障害、ディスアビリティーへの効率的なリハビリテーション、再生医療等の研究も重要であります。また、重症心身障害児あるいは障害者のケアの開発も喫緊の課題であります。
このような課題に対しまして、私どもは、精神領域と神経領域を一体として、また、研究所と病院が一体として対応するという非常にユニークなアプローチをしているセンターでございます。
(PP)
ここに病院と両研究所の関係を模式図で示しております。一体的な研究開発を行うということを支えるために、ここにございますけれども、脳病態統合イメージングセンター(IBIC)、認知行動療法センター(CBT)、トランスレーショナルメディカルセンター(TMC)、メディカルゲノムセンター(MGC)、この4つのセンター内センターを配置いたしまして、一体的な研究推進を支えております。
さらに、霊長類や筋ジス犬といった非常にユニークな動物種も含めた形での動物実験施設を有しております。
さらに、11の専門疾病センターをつくりまして、病院と研究所が一体となって研究を進めるということを進めております。
(PP)
こちらのスライドに11の専門疾病センターがございます。この中で下線を付したものは、研究所の研究者がセンター長を務めているということで、病院と研究所がいかに一体となって研究を進めているか、おわかりいただけるかと思います。後ほどその実例をお示ししたいと思います。
(PP)
これは、基礎研究から臨床応用までの研究のステージをお示ししております。研究所と病院、そしてその間に今申し上げました4つのセンター内センター、動物実験施設を含めまして、基礎から臨床までの一気通貫した研究体制を構築しております。これによる成果を後でお示ししたいと思います。
(PP)
医療の提供でございます。我々は486床、そのうち小児、成人を合わせて295床と精神科は191床、の病院を有しております。その大きな特徴の一つは、この希少神経難病の集積性でありまして、例えば多発性硬化症ですと7.5%、GNEミオパチーですと15%近くの患者さんが、我が国全体のこれだけの患者さんが我が施設に来ておられます。
また、二次医療圏以外からの方、東京都以外からの方で見ましても、全国から集まっている患者さんの数は、NCの他のデータをお持ちかと思いますけれども、がんセンターに次ぐ数ではないかと思っております。
こちら側に病棟の構成がございます。色をつけたところがございますけれども、これは一昨年までは精神科の病棟でありました。今、申し上げましたように、精神領域と神経領域を一体としてアプローチしていく。例えば、認知症の精神障害を伴った方々、てんかんの方々に対して、こういうアプローチを進めるためにこの病棟を新しく開棟いたしました。その他、医療観察法の病棟、重症心身障害児の方々の病棟、筋ジストロフィーの病棟、また、ここには治験のための病床も準備してございます。
(PP)
今、申し上げました出口に一番近い研究として、治験・臨床研究の実施状況でありますけれども、過去3年間のデータを示しております。企業治験67件、医師主導治験が4件、臨床研究は624件でしょうか。非常に多数の研究を、私どものミッションに含まれる非常に多彩な疾患をカバーして行っております。
(PP)
これがその実例の一つでありますけれども、基礎研究から臨床応用まで一気通貫で達成した研究だと言えると思います。筋ジストロフィーのエクソンスキッピングの研究でありまして、現在、今年度の承認を目指しているところでございます。
(PP)
これは多発性硬化症のOCH治療でございますけれども、17年前の「ネイチャー」の論文に端を発しまして、着実に研究を進めてまいりました。今年、国内の有名な製薬メーカーの協力を得られることになりまして、いよいよフェーズ2に入っていくことができるようになりました。
(PP)
こちらは、上段がバイオバンクの試料を使ったバイオマーカーの発見の研究でありますし、こちらのほうはAMEDのGAPFREEの例でございまして、企業から提供されました化合物、そして私どもの持っているモデル動物と一緒に研究することによりまして、これからいよいよ臨床研究に入っていくというところまで来ております。
(PP)
これにつきましても1つお話をしたいと思います。精神疾患、特に統合失調症につきましては、その原因、発症機序がなかなかわかっておりません。例えば家族内発症等があって、バイオロジカルな背景が考えられておりますけれども、20年間のゲノムの研究で単一遺伝子の異常は一つも見つかっていないといった形で、神経変性疾患などとは違ったアプローチが必要だろうと思われます。
私どもはセンター内でいろいろ検討いたしまして、やはりここにございますけれども、正確な、そして詳細な臨床情報を持った患者さんのレジストリ、これを多数、ビッグデータとして整えまして、それに対して、DSM-4、DSM-5といった操作的な診断基準ではなくて、機能ドメインに基づく解析を人工知能を含めてやっていく。現在、そういうビッグデータを扱うこと、AIを使うことが可能になってまいりました。それによりまして、本態が何かということを明らかにすることを計画しております。そこには各種バイオマーカーの研究も含まれますけれども、こちらに脳の組織を使うと書いてございます。すなわちブレインバンクが必要であるということになります。
こういうことで、病態を明らかにして、それに基づいた治療をしていきたい。すなわち精神疾患の本態を解明することに正面から切り込んでいきたいということで、精神保健研究所に精神疾患病態研究部を新設いたしました。幸い、学会から全面的な御支援をいただきまして、NCNPと学会とオールジャパンでこの研究を進めていきたいと考えております。
(PP)
バイオバンクのお話を少しさせていただきます。今、申し上げましたように、正確で詳細な臨床情報を伴っているということが我々の特徴でありますけれども、全国の組織からも受け付けております。また、6NCのバイオバンクネットワークの一つとして共通化、標準化に努めてまいりました。これが今、実用化の段階になっていると思います。
(PP)
内容はこちらに多数ございますが、一つ御注目いただきたいのは筋肉でありまして、既に1万8,000件を超えて、世界最大級であります。我が国の筋生検の70%は当神経センターで診断をしているところでございます。
また、これらのバイオバンクの利活用に関しましては、企業を含む利活用が今、着々と進んでいるというところに来ております。
(PP)
先ほどちょっと申し上げましたけれども、ブレインバンクに関しましても、我々は独自に生前同意であるとか献脳のシステムとかで貢献してまいりましたが、我が国の中のメジャーなブレインバンクの方々と協力いたしまして、日本全体をカバーするブレインバンク、ジャパン・ブレインバンク・ネットワークというものを構築しました。研究者の方からの要請に応じてワンストップで検体を供給できる体制をつくっております。
(PP)
クリニカル・イノベーション・ネットワークにつきましては、よく御存じのことでございますけれども、私どものRemudyというシステムが大きく貢献したと理解しております。
(PP)
現在、このRemudy、筋疾患のレジストリでありますけれども、その他に合計10件の全国的なレジストリの運用を我々は行っております。その一つ、AMEDの御支援をいただいておりますけれども、IRUDの研究をこちらに御紹介したいと思います。
(PP)
全国をこのようにカバーするような研究体制を構築いたしまして、この数字は去年9月の段階でございますので、現在は2年半余りの間に1万人を超える方々のエントリーがありまして、その解析を行って、多くの新しい知見を発見しております。
(PP)
これまで多発性硬化症と同じような症状を呈しながら、検査所見に異常がなかったということで、精神疾患ではないかと間違えられていた一群の患者さんがおられます。この方々を詳しく検査することで、画像的に、免疫学的に異常を見出しまして、NINJAという名前をつけて発表いたしました。新しい疾患概念の提唱であります。大事なことは、この発見によりまして、この方々が治療可能になったということでございます。
(PP)
政策研究の例を2つほどお示ししたいと思います。相模原の事件で問題になりましたけれども、これは措置入院の調査をいたしまして、全国で非常にばらばらであるということがわかりました。その背景を検討いたしまして、退院後の支援の仕方、具体的方法を含めたガイドラインを作成いたしまして、今年度の診療報酬改定に反映させることができました。
(PP)
また、薬物依存につきましても、従前の危険ドラッグの時代には包括指定等にも貢献しましたけれども、その他実際の治療につきまして、認知行動療法を用いまして、研究開発を行いました。その効果があるということを実証いたしまして、これも診療報酬改定に貢献しておりますとともに、全国で現在、合計63カ所の施設におきまして、これを展開しているところであります。
40万人の患者さんに対して研究者、専門家が20人ということで非常に少なく、こういう領域にナショナルセンターは特に有用で、役立っていると思っております。
(PP)
その他のことを含めまして、我々の研究が厚生労働省の政策に反映されている事例をここにピックアップいたしました。11件ございます。
(PP)
医療に関しまして2つほど御紹介いたしたいと思います。1つは司法精神医療でありまして、これは、犯罪を犯した方々の精神疾患を治療するということであります。見本といたしました英国と比べましても、また司法病棟が開棟いたします前と比べましても、再犯率は非常に低くて、大変よい成績を上げることができております。
先ほどもお出ししました認知行動療法につきましては、お薬の減量効果、また、多くの精神疾患で有効であるといったデータを着々と出しております。
(PP)
これは先ほど申し上げました専門疾病センターの一つの例でありますけれども、てんかんに関しまして、全国のてんかん診療拠点といたしまして、遺伝子、動物モデルの基礎研究から臨床研究まで幅広く活動を進めております。例えば、我がセンターのみで既に1万人を超えるデータベースを持っておりまして、それをさらに全国に展開していくというところでございます。また、小児の難治性てんかんにつきましては、脳外科での治療は我が国でトップレベルの業績を上げております。
(PP)
人材育成であります。私どもの施設から全国の大学の教授、准教授に発展された方々、この8年間で25名の方々がおられますし、小児神経領域、てんかんの領域におきまして、我がセンターで研修を受けた方々が各地でリーダーとして活躍しておられます。
(PP)
これは逆に、こちら側から外部の方々に講習会等を行った例でありますけれども、主にメディカルスタッフ、医療従事者の方々を中心に、年間2,000名以上の方々にこういう機会を提供しております。最近は企業人、企業の方々にも門戸を開いているところでございます。
(PP)
NC間の人事交流につきましては、今のところ余りたくさん実績はございませんが、国際医療研究センターにおきまして、児童精神医学の分野がございます。そういったところとの今後の連携が考えられると思います。
これは他との連携でございますけれども、人事交流はPMDAあるいはAMEDと連携をさせていただいております。
共同研究におきましては、ここにございますように、非常に多数の国内外の大学や研究施設と共同研究を進めているところでございます。
(PP)
情報発信につきましては、精神・神経疾患につきまして、まだまだなかなかよく理解していただいていないということから、国民の皆さんにそれをよく理解してもらうことが、我々のセンターをよく理解してもらうことにつながるということで、この様に段階を踏みまして、広報に力を入れております。多分、お送りしていると思いますけれども、アニュアルレポートあるいはメディアの方々を対象としたメディア塾などにつきましては、総務省からも高く評価をしていただいているところでございます。
国際化も非常に重要に考えておりまして、なかなか予算措置ができないところがございますけれども、着実に進めているところでございます。
(PP)
重複する可能性のある分野につきまして、認知症におきましては、長寿医療センターとの関連が言われていると思います。重要なのは、緊密に連携、協力いたしまして、きちんと棲み分け、分担をするということであって、無駄な競合を避けることだろうと思います。そして、それは非常にしっかりと実施されていることをこちらのほうに書き込んでございます。
また、精神・神経疾患の診療に関しましては、国際医療研究センターと対比されると思いますが、我々はこの分野に特化してやっておりますけれども、国際医療研究センターにおかれましては、総合的な医療機能の一つとしてやっておられるということがございます。
1つお伝えしておきたいことは、国府台病院には児童精神医学の方々がおられますけれども、昭和62年に我々の病院と統合されました。それが平成20年に国立国際医療センターのほうへ移管されたということでございまして、これにつきましては、私どもの要望ということではなくて、国のほうの方針としてこのようになったと伺っております。
(PP)
独法化以降の取り組みであります。ここに幾つかの指標を挙げておりますけれども、いずれも右肩上がりに大きく発展をしてきております。
(PP)
しかしながら、構造的に、例えば精神科の診療報酬、単価は最低でありまして、神経内科も頑張ってはおりますが、収益が上がるような急性期の脳卒中等は我々のところにはございませんので、大変苦しい思いをしているところがございます。そういったところにも御配慮いただけると大変幸甚に存じます。
(PP)
また、先ほど、臨床研究はどんどん増えているということを申し上げましたけれども、それに対する研究支援部門の経費も増えるわけですが、それに対しまして、運営費交付金のほうは徐々に減っているということがございまして、この辺も大変厳しい状況がございます。
(PP)
この後の3枚は参考資料ということです。脳と心およびそれらの疾患の特徴と、神経疾患、精神疾患は非常に種類が多く患者数も多いということを御理解いただきたいと思った次第でございます。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。
 
○永井座長
ありがとうございました。
それでは、奥からどうぞ。
 
○神庭構成員
九州大学の神庭と申します。どうもありがとうございました。
精神・神経疾患は、WHOの報告にもございますように社会的損失の非常に大きな疾患でございますが、その割に医療費であるとか研究費が少なくつり合わない。先生もお示しされていますけれども、NCNPの運営費交付金も他のセンターに比べてややどうなのかなというところにあるわけですが、大変歯がゆい思いをしています。これを何とか変えていってほしいと思うのです。
そういうことで、精神・神経疾患の患者さんは認知症も含めて大変多くなってきていて、日本政府も「脳とこころの健康大国」という柱を立てて、精神疾患を5疾病の中に位置づけられていますので、今後の改善も期待したいと思います。
先生のお話の中で、世界に一つだけの精神・神経センターということがございましたが、確かに精神疾患を考えた場合に、デカルトが言うように、精神が身体と独立の存在としてあるのであれば、精神疾患というのはあるのかもしれませんけれども、今はそうは考えられないですね。精神疾患には必ず脳の基盤があるので、精神と脳神経両方を理解していく必要があって、そういう意味で精神・神経センターという名称はいいと思いますし、臨床の取り組みは先ほど御紹介いただきましたけれども、それに応じた研究をこれから進めていってほしいと思います。精神だけではなく、神経だけではなくて、両者から攻めていくというようなことができるセンターなのかなと期待していますので、総長が神経と精神でかわっても、その辺のポリシーが変わらないでいてほしいと思っております。
もう一つ、細かな御質問でございますけれども、先ほどNCGMにもお聞きしたのですが、児童精神医学がNCGMと成育とNCNPで行われていて、先ほどのお話では、NCNPでは自閉症に特化して行うということをお聞きしたのですけれども、そういった棲み分けが委員会みたいなもので常時行われていて、情報交換されて決まってきているものなのか、それともそうではないのか。先生のほうからお答えいただければと思います。
 
○水澤理事長
後でまた補足があるかもしれませんけれども、私の理解では、委員会のようなものがあって棲み分けをしているということはないと思います。認知症につきましては、その上に書いているのですけれども、私は、長寿の先生方と一緒にいろいろなことをやっておりますので、お互いによくどこで何をやっているかわかっているのですけれども、国府台病院のほうにつきましては、そういう委員会はないかと思います。それは、この一番下に書いてありますような、そういういきさつがあって、我々としてはどうしていいかよくわからないといった状況が一つはあるという、そういう歴史を持っております。
先生が今おっしゃった自閉症等につきましては、精神保健研究所のほうに研究者がおり、活発に研究をしています。これは全体版の資料のほうにありますが、例えば自閉症等に対する聴覚過敏を活用したバイオマーカーの開発とか、良い研究をたくさんしております。ただ、病院のほうが多分少し手薄だろうと私は理解しております。
 
○神庭構成員
ありがとうございます。
もう一つよろしいでしょうか。私にとっては身近なセンターで、神経疾患の研究は臨床研究から基礎的研究を含めて非常に突出していると思っています。それに比較して、精神疾患の研究が神経の研究に比べてまだ不十分ではないか、もっといけるのではないかと思っていまして、今日のお話では、データベースであるとか、バイオバンクであるとか、研究の基盤整備をこれから目指していらっしゃるようにお見受けしたのですけれども、さらに深く掘り込んで、精神疾患、脳の病態、原因を解明していくというような方針はとらないということなのでしょうか。
 
○水澤理事長
これはまさに先ほど私がお伝えしたことですけれども、精神疾患の本態を解明すべきと思っており、実際これを正面からやっていく研究を開始しました。それがやれるところ、責任がとれるところはやはり我々だろうと思っておりまして、研究所の方々と相談して、これを進めていきたいと思っています。
先生の精神神経学会からも絶大な御支援をいただいていると理解しております。
 
○永井座長
末松構成員。
 
○末松構成員
大変詳細な資料をありがとうございます。
資料5の2つあるうちの概要版ではないほうのフルボディーの資料の13ページ、14ページ、NC間でのデータ共有についてという大変詳細な御報告と御意見をいただきました。ありがとうございます。そこで伺いたい点があるのですけれども、今、まだ構想段階ではありますけれども、まさに書いていただいたように、バイオバンク事業の包括的なサポートをどのようにするかというのは、どこのナショセンも大変御苦労されているところだと思います。運行費がなかなかままならないという問題がありまして、AMEDも出資金事業とかいろいろな新しい基軸は出しているのですけれども、それが直接ナショセンのバイオバンク等の基盤の維持と発展に役立つところまで、まだなかなかいかないところでございます。
伺いたいのは、皆さんの場合の例で結構なのですけれども、こういった基盤の整備や維持に必要なお金を、民間資金を活用して維持しようというような事例や御努力があれば教えていただきたいなと思います。
一方で、我々ファンディングエージェンシーとして、民間の資金を特定の目的に、こちらが集めて、競争的環境でそれを再配分していくようなスキームができないかということを部内で検討しております。もし何かそういうところで御要望ですとか、あるいは既にやられている工夫がありましたら、教えていただきたいと思います。
 
○水澤理事長
ありがとうございます。
後で武田理事に補足してもらいたいと思いますけれども、これは先ほどのバイオバンクの資料でございますが、こういった形で、個々の事例に関しては企業との関連が進んでおりますけれども、全体的な基盤を支えるような形での資金提供にはなっていないと思います。それがやはり大事だろうと存じます。
それに関しましては、1社ではなく、コンソーシアムをつくるなりして、ある一定の条件下でそれをやっていただく。そういう意味で、CIN等は十分活きてくるのではないかということで、先ほど、この後でお示ししたブレインバンクについて、今、幾つかの企業からの申し出がありますので、そういう全体をサポートしてもらうところと、個々の研究におけるサポート、対価というものと分けて進めたいと私自身は考えております。
先生、ありますか。
 
○武田理事
ただいま理事長から基盤整備についてお話がございましたので、私のほうから、その基盤の上を走るプロジェクトについて1つだけ御紹介させていただきたいと思います。今度は概要版の9ページ「NCNPの研究について3」にその記載がございます。
通常、GAPFREEと呼ばれていて、AMEDを代表するプロジェクトの一つと思いますけれども、今、理事長が説明された基盤整備の上に、私どもに蓄積されているバイオリソースを利用して、企業と協力することにより新しい臨床マーカー及び治療薬を発見する努力を続けておりまして、そのページの2化合物の臨床マーカー開発、前臨床研究を見ていただきますと、実際にモデル動物等を使いまして、化合物Aという候補が出てきておりまして、それを用いた臨床試験への展開を考えております。すなわちこれはプロジェクトとして、企業と私どもNCNPが連携をしてやっている一つの例になると考えています。
 
○永井座長
よろしいですか。
では、祖父江構成員。
 
○祖父江座長代理
どうもありがとうございました。いつも広範なお話をいただいて、今日は非常によくわかりました。
2つお聞きしたいのですが、1つは今のレジストリデータのことです。今、そこに出ていますが、レジストリデータというのは今後のビッグデータからの創薬という観点からいっても、企業が非常に欲しいところだと思います。特に先生がおっしゃったように、臨床データとバイオマテリアルあるいは画像、そういうものがリンクしたマテリアルというのは非常に商売になるというか、企業が最も求めているデータだと思います。
企業連携のお話もちょっと絡むと思いますけれども、海外企業からも引きがあるというのは重要と思いました。実際には、企業との連携で何かバイオマテリアル、あるいはこういうバンクをやっていくというのはナショナルセンターの非常に大きなミッションになっていくのではないかと私は感じているのですが、これは実際にはどういうものがこの中に含まれていて、特に先生のところは筋肉が最も世界をリードしているすばらしいコレクションだと思うのですけれども、それなのかどうか。具体的な内容についてお話しいただけるとありがたいと思います。
 
○水澤理事長
では、今、武田理事の方から答えさせていただきます。これは全体版ですね。何ページになりますか。
 
○武田理事
ヒアリング資料全体版を見ていただきたいと思うのですが、2つの要素がございまして、一つがレジストリで、もう一つがバイオリソースでございます。レジストリを出発点として、医薬品、医療機器の開発をするのがクリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)でございますけれども、将来的には、このクリニカル・イノベーション・ネットワークはバイオリソースと連携すべきと考えております。
そこで、全体版の資料15、31ページから見ていただければいいのですけれども、バイオリソースは32ページにあるように、将来構想として運営費交付金をもって行ってきた筋肉が中心のバイオバンクを、第2ステージからは臨床研究開発のインフラとして整備することを考えています。
今、御質問がございましたバイオバンクは、35ページに書いておりますけれども、バイオバンクで保有するリソースの内、脳脊髄液が1,080という大きな数になっております。特に、健常対照と精神疾患の場合に未治療例を多く含んでいることから、企業の御関心をいただいているところでございます。
次の36ページを見ていただきますと、分譲を含む利活用として、極めて多くの企業との利活用が成立しておりまして、企業の11のうち2は海外企業に対する血漿と血清の提供でございます。特に、共同研究だけではなく、有償分譲として企業に渡すということを考えて、実際にそれが今、出てきております。御質問がありましたが、海外企業等に対して分譲を行なう場合に、日本国民のゲノム・遺伝子情報が流出することは避けなければいけませんが、それ以外の検体に関しましては、バイオリソースの活用がより進み、新たな医薬品等の開発が進んでくると考えております。
 
○祖父江座長代理
どうもありがとうございます。
その枠組みが今はないので、ぜひそれもつくりながらやっていただけるといいなと。海外の企業に日本の税金で集めたものをどんどん売り買いするという枠組みがまだないのですね。ですから、ぜひそれをつくりながらやっていただけるといいなと思っています。
もう一点、クイッククエスチョンですけれども、稀少疾患で悉皆的に全国からそれぞれ10%ぐらいの患者さんが集まってこられるというのは、最初に理事長がおっしゃったように非常にすばらしいなと感じたのですけれども、これは何のために全国から集まってこられるのかという内容を教えていただけたらと思います。診断だけではないですよね。後の治療のこともあって、やはり非常にトップレベルの治療を受けたいということがあるのではないかと思うのですが、御説明いただけますでしょうか。
 
○水澤理事長
おっしゃるとおりで、治療のことが入っていると思います。例えば、多発性硬化症につきましても、当センターで新しく開発した治験だけではなくて、他の通常の治験もたくさんしておりますし、患者さんがたくさんおられます。私が前任地にいたとき、私の患者さんもこちらに行きたいと言ったことがあるくらいでございます。
それから、筋ジストロフィーは先ほどのエクソンスキッピングがございますし、GNEミオパチーはシアル酸の治験に関する時期が随分ありますので、やはり治療が先に見えるということが非常に重要になっているのだと思っております。
 
○村田病院長
それは、例えばGNEミオパチーですとまだ治験段階ですので、そのために年に1回ずつ評価をしながら、この次の1年、どのように暮らしてほしいか。例えばどういうリハビリをする、どういうことに注意をして生活するというようなことと、今の1年間の変化をお話しする、あるいは精神的サポートも一緒につけるというようなことをしております。そのために全国からいらしていただいております。
 
○永井座長
他にいかがでしょうか。
どうぞ。
 
○神崎構成員
杏林大学の神崎と申します。
先ほど重複する可能性のある分野について、認知症という話が出ましたが、NCNPもNCGGも両方とも認知症に関するレジストリ研究をやっていらっしゃると思います。そのあたりのところの棲み分けを含めて、具体的に今、どのようなレジストリをやっていらっしゃるのでしょうか?
 
○水澤理事長
このあたりに書いてございますけれども、先ほど申し上げましたように、私はNCGGの主催する認知症医療介護推進協議会といったところにも参加しておりまして、常に意思の疎通が非常にいい状況の中で、例えばレジストリにつきましては、御存じかもしれませんけれども、長寿のほうではMCIとかアルツハイマー病、認知症そのものの方々をやっておられますし、我々はその委託を受けて、無症状の方々、すなわちプレクリニカルですね。健常人の方々のインターネットを使ったレジストリをやっておりまして、そこで協力しながらやっているということがございます。
最初に書いてございますけれども、我々はそれぞれそう大きくはありませんので、必要な研究を全て自分の施設で行うということはなかなか難しいわけでありまして、やはり協力連携したほうがずっといい、あるいはそれが必要だということを私は思っております。そのような形でうまくいっているかと思います。
 
○神崎構成員
わかりました。実際に既にお互いに情報を出し合った上でレジストリを行っているという理解でよろしいでしょうか。
 
○水澤理事長
そうですね。それから、我々も少し、例えばMCIでも分担研究者としてお手伝いをしておりまして、将来データを統合できるような形でやっております。
 
○神崎構成員
ぜひ、一緒になれるといいのではないかと思ったものですから、ありがとうございました。
 
○永井座長
よろしいでしょうか。
最近は、医学研究もイノベーション、あるいはオープンイノベーション体制が言われているのですが、センターとして何か対応をとられていますでしょうか。
 
○水澤理事長
オープンイノベーションですね。具体的にこの言葉を使ってやっているということではないのですが、先ほどちょっと申し上げましたように、例えばこれまで十分になされてこなかった精神疾患への本質的な研究を進めるといったことを私はやりたいと思っています。
また、今日は申し上げられなかったのですけれども、認知症の研究の中で私の専門とするプリオン病というのがございますけれども、これはなかなか稀少疾患でサポートが余りないということがございます。その異常蛋白質を中心としたプリオンメカニズムの研究を進めるべきでありまして、これは是非、多くの企業の方々とか施設の方々と協力してやっていきたいと思っております。
 
○永井座長
ありがとうございます。
よろしいでしょうか。どうぞ。
 
○武田理事
1つだけ追加させていただこうと思います。今、理事長が全般のことをお話しになりましたけれども、私たちは6NCとして臨床研究を進めていくための工夫が必要ではないかと考えております。永井先生は、オープンイノベーションの準備あるいは土台造りとして知財あるいは産学との連携の窓口をという御意見と伺っておりますけれども、私たちは、例えば倫理あるいは生物統計について、6NCでエキスパートを共有して、さらに臨床研究を進めるという方向もあるのではないかと考え始めておりまして、それをできれば将来的に具体化したいと願っております。
 
○永井座長
ありがとうございます。よろしいでしょうか。
それでは、どうも御苦労さまでした。ありがとうございました。
まだ御議論が尽きないかもしれませんが、もし何かありましたら、構成員の方々から宿題といいますか、質問を事務局へ投げていただければと思います。
時間になりましたので、本日はここまでにしたいと思います。
次回の日程等につきまして、事務局から連絡をお願いいたします。
 
○江口医療経営支援課長補佐
長時間にわたり、どうもありがとうございました。
次回の会議につきましては、今回と同様、残り3センターからのヒアリングを予定しております。日程につきましては、改めて御案内申し上げますが、5月30日14時から、本日と同じ場所で予定しております。
なお、最後に、お手元にお配りしてございます7月18日に予定しています3センターの見学の出欠表につきまして、見学を御希望の方は御都合のよい時間にマル、合わない時間にバツを記入していただき、机上に残していただいても結構ですし、後日、職場等で御確認の上、事務局のほうに送っていただいても結構でございます。
事務局からは以上でございます。
 
○永井座長
ありがとうございました。
以上で第2回の検討会を終了いたします。