2018年5月23日 第12回新型インフルエンザ対策に関する小委員会 議事録

健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室

日時

平成30年5月23日(水)14:00~16:00

場所

厚生労働省 共用第6会議室(3階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

議題

(1)プレパンデミックワクチンの今後の備蓄方針等について
(2)その他

議事

 
○谷口インフルエンザ対策推進室室長補佐 それでは定刻より少し前ですが、皆様既におそろいですので、ただいまから第12回新型インフルエンザ対策に関する小委員会を開催いたします。本日の出席状況です。委員12名中9名の出席です。川名委員、谷口委員、山﨑委員から欠席の連絡を頂いております。定足数には達しておりますので、会が成立しますことを御報告いたします。
それでは、新委員を御紹介いたします。宇田委員の御後任で佐賀県鳥栖保健所長の中里栄介様が新委員となりました。それから、前回の開催以降、事務局にも人事異動がありましたので紹介させていただきます。結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室長補佐の谷口と申します。同じく、新型インフルエンザ対策推進室情報分析専門官の福田です。本日の会議、よろしくお願いいたします。
申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。それでは、ここからは岡部委員長に進行をお願いします。
○岡部委員長 こんにちは、岡部です。第12回新型インフルエンザ対策小委員会を行います。お忙しいところお集まりいただいてありがとうございました。それから、中里所長は御存じの方も多いと思うのですけれども、サーベイランスであるとか感染症対策に随分と御経験のある先生で、いろいろと御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いします。それではまず、審議参加に関する遵守事項、これは事務局のほうからお願いいたします。
○谷口インフルエンザ対策推進室室長補佐 審議参加について御報告いたします。本日御出席をされた委員の皆様から、過去3年度における関連企業からの寄付金、契約金などの受取り状況について申告を頂きました。該当する製造販売業者や各委員からの申告については机上に配布しておりますので御確認ください。事務局で申告内容を確認しましたが、寄付金等の受取り状況につきましては、審議や議決に不参加となる基準には該当はありませんでした。以上です。
○岡部委員長 ありがとうございました。配布資料の確認も事務局のほうからお願いします。
○谷口インフルエンザ対策推進室室長補佐 配布資料の確認をいたします。議事次第、座席図、委員名簿、資料の他参考資料1~4となります。議事次第に記載の配布資料の一覧と照らして不足等がありましたら、事務局までお申し付けください。
○岡部委員長 ありがとうございました。今日の議題ですけれども、この資料の最初の所にありますように、プレパンデミックワクチンの今後の備蓄方針等について、その他となります。
プレパンワクチンは今までもいろいろな所で議論をして、特にどういう株にするか、それから、基本的には備蓄があるので、それに伴って特定接種とか、いろいろなことをディスカッションしてきました。2009年からは時間がたってきているので、どのような備蓄方針がいいのか、あるいは、対象人数はどうするのか、特定接種もあちこちで組んでいただいているのですけれども、そのやり方について現実的にどうなのかとか、いろいろな問題が出ている中で、なかなか討議する場がありませんでした。内閣官房の新型インフルエンザ諮問会議でも、この件は検討すべきであるという意見が出て、その後検討する場としてはやはり、この小委員会や何かが適当ではないかと、そういう経緯だったと思います。ですから、今まで議論はされそうになっても、なかなか議論に踏み込めなかったところもあるのですが、そういうところも含めて今後の新型インフルエンザ対策、特に今回はプレパンワクチンの今後の在り方ということについての議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、事務局から用意をしていただいたプレパンワクチンの今後の備蓄方針等についてということで御説明を頂ければと思います。資料と参考資料1になります。竹下さん、よろしくお願いします。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 資料と参考資料1を御用意ください。「プレパンデミックワクチンの今後の備蓄方針等について」は、5月14日に行われたワクチン作業班で御討議いただいた内容を踏まえた上で、この資料を作成させていただいています。
まず、1つ目にH5N1プレパンデミックワクチンの備蓄の経緯です。平成9年、世界で初めて鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスによる感染確定例が報告されたところが一番最初の発端になっています。そのことを受けまして、2つ目のポツになりますが、H5N1ウイルス由来の新型インフルエンザが発生した場合、その病原性の高さに鑑み、大きな健康被害が引き起こされることが想定されたことから、平成18年度よりH5N1プレパンデミックワクチンの備蓄を行うこととなり、平成30年度まで、適宜ワクチン株の変更等を実施しながら継続して備蓄を行ってきております。3つ目に、備蓄に係る現行の方針は、検討時点で「危機管理上の重要性」が高いワクチン株の備蓄を優先することとされており、現時点ではチンハイ株を1,000万人分備蓄しています。
参考資料ですが、正にインフルエンザ対策全体像としては、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあることに対して、➁ワクチンや抗インフルエンザ薬等を含めた医療対応を組み合わせることで総合的に行うことが必要である。ウイルスの侵入を遅らせるような感染対策を行い、医療体制を十分に準備し、時間を稼ぐとともに、その間にワクチンの開発やインフルエンザの医療体制の整備を行っていくということになっていますが、そうした意味ではワクチンは非常に重要な戦略の1つと考えております。
プレパンデミックワクチンの備蓄の位置付けとして、政府の行動計画及び予防接種に関するガイドライン、こちらも新型インフルエンザ等に関するガイドラインの1つですが、そちらでもここに挙げているように記載があります。行動計画では、パンデミックワクチンの開発・製造には発生後に一定の時間がかかるため、それまでの間の対応として、医療従事者や国民生活及び国民経済の安定に寄与する業務に従事する者等に対し、感染対策の1つとして、プレパンデミックワクチンの接種を行えるよう、その原液の製造・備蓄を進めるとあります。
ガイドラインでは、ウイルスの遺伝子構造の変異等に伴い、新しい分離ウイルス株の入手状況に応じてワクチン製造用候補株の見直しを検討し、その結果に即して製造を行うとあります。また、新型インフルエンザの発生後、最も有効性が期待されるウイルス株を選択し、その際、流行している新型インフルエンザウイルスと、以前にプレパンデミックワクチンを接種した者の保存血清から交差免疫性を検討した上で、プレパンデミックワクチンを使用することになっております。
次のページは、そうした状況を踏まえ、国ではこれまでプレパンデミックワクチンを備蓄しておりました。これは一番最初からというよりも、平成23年度以降の記載がありますが、当初はアンフィ株、チンハイ株、ベトナム株、インドネシア株というようなH5N1の中でも、それぞれの株に関して備蓄を用意していた時代から、危機管理上一番リスクが高い、重要性が高いものとしてチンハイ株を優先的に選択するというように推移してきています。ここで平成30年度の今年度の所をくくっていますが、現在は1,000万人分を満たしていますが、31年度には、このうちの900万人分が有効期限が切れていくというところで、今後どうしていくかを正に検討していかなければいけないというのが現状です。
そうしたことを踏まえ、今後どうしていくか提案をさせていただきたいと思います。その前提としまして、世界の鳥インフルエンザに関する疫学状況の変化があります。同じく参考資料で「鳥インフルエンザA(H7N9)のヒトへの感染の対応について」という資料がありますが、平成25年3月以降は中国のほうでH7N9ウイルスのヒト感染患者が現時点で1,567名まで報告があります。感染患者のうち615名が亡くなっているとの報告もあります。こうした状況の中で、非常に日本と往来の多い中国のほうからこのような症例数が、H7N9の型でこれまでのH5N1とは違う亜型のものが、こうした状況になっているという現状があります。
次のページが、2017年以降の世界における鳥インフルエンザウイルスの人での感染事例ですが、これは2018年1月までの集計になります。H5N1に関しては2017年1月以降は4例にとどまっているものの、H7N9に関しては600例を超えている現状で、H5N1以外のほかの亜型の株が幾つか報告されているのが現状です。
そうしたことを踏まえた上で、今後の備蓄方針を考えさせていただきたいと思います。プレパンデミックワクチンの今後の備蓄の方針等についてですが、公衆衛生作業班会議、これは昨年度3月23日に開かれたもの、また内閣官房新型インフルエンザ等対策有識者会議、これは3月30日に開催されていますが、そちらのほうでも今後のプレパンデミックワクチンの備蓄の必要性はどうなのか。また、備蓄が必要な場合については、亜型についてどのように検討すべきかという指摘を頂いていましたので、そうした指摘を踏まえ、以下のように提案をまとめております。
1つ目として、当面の備蓄方針になります。ちょっと後ろのほうを先に見ていただきたいのですが、2ページの「2プレパンデミックワクチンの中長期的検討課題」にありますとおり、平成30年度末をもって、細胞培養事業の製造体制が整備されるというのが今のプレパンデミックワクチンの現状になっています。このプレパンデミックワクチンの製造設備を使い、現在プレパンデミックワクチンを製造していますが、30年度末の段階までは細胞培養事業の製造体制が拡充している段階ですので、そのちょっと手前の当面の備蓄方針の所で1つ目を記載しています。
また1ページに戻りまして、そのような背景の下、まず1つ目の提案として、プレパンデミックワクチンの当面の備蓄方針について、特定接種対象者に対し、迅速接種を行うためには、プレパンデミックワクチンの備蓄は当面必要ではないか。この際、1,000万人分備蓄するプレパンデミックワクチンとして、近年の鳥インフルエンザ発生の状況等から、検討時点において危機管理上の重要性が高いH7N9株、A/Guangdong株としてはどうか、としております。
理由として、1つ目の☆で、特定接種対象者に対し、迅速に接種を行うためには、プレパンデミックワクチンの備蓄が当面必要と考えられる。2つ目の☆、これまで、危機管理上の重要性の高さについては、人での感染事例が多いこと、人での重症度が高いこと、日本との往来が多い国や地域での感染事例が多いことの3つの観点から総合的に評価し、判断することとしています。次の☆、このため平成29年度まではH5N1インフルエンザのチンハイ株が該当していましたが、平成29年度以降はH5N1インフルエンザの人での感染事例が4例にとどまったこともありますので、中国で流行しているH7N9鳥インフルエンザウイルスについて、先ほど述べました「危機感理上の重要性の高い」という項目それぞれについてですが、まず人での感染事例が多いことに関しては、人への感染者は平成25年以降1,567人が報告されている。また、急激な増加が確認されているという現状です。ちょうど昨年度の一番直近のときには、H7N9も数は少ない状況ではあったのですが、その1つ前のシーズンは多い状況でした。2つ目として、人での重症度が高いことについては、1,567人の報告のうち、613人の死亡事例が報告されており、重症度が高いと言えると考えております。また日本との往来が多い国かどうかについて、中国は日本との往来が最も多い国であるとなっていますので、現在確認されている亜型の中では最も危機管理上の重要性が高いと考えられている。さらに、H7N9鳥インフルエンザウイルスのうち、高病原性から低病原性まで交差性を示すH7N9株、A/Guangdong株を細胞培養によるワクチン製造候補株とするのが望ましいと考えております。
先ほどの参考資料1の6ページを御覧ください。ここにH7N9のHA遺伝子系統樹を概念図として挙げております。HA遺伝子系統は大きく2つに分けると、Yangtze River deltaと、Pearl River deltaのクレードに分類されます。現在の主流はYangtze River deltaになっており、上の図の右の縦の棒軸にある所で、上の棒がYangtze River delta、下がPearl River deltaで、大部分を占めているYangtze River deltaが多くなっています。
2つ目のポツは、2016年に家禽に対して高病原性を示すH7N9ウイルスが出現しています。これらはYangtze River deltaクレードの中でも高病原性、HPAIサブクレードを形成しており、同じYangtze River deltaの中でも低病原性、W5-1、W5-2のウイルスサブクレードが区別されます。2016年からは人でも報告されています。またHPAIサブクレードからA/Guangdong株類似のワクチン候補株IDCDC-RG56Nが開発されていますが、こちらはフェレットで作成した抗IDCDC-RG56N血清が低病原性及び高病原性ウイルスいずれにも広く交差反応をする。つまり上のほうのW5-1、W5-2のほうにも交差反応性をフェレットの血清で示します。そういうことを踏まえた上で提案させていただいております。
また留意事項として、細胞培養事業で整備を行っている一般財団法人化学及血清療法研究所、北里第一三共ワクチン株式会社、武田薬品工業株式会社においては、それぞれアジュバントの有無、種類が異なり、パンデミック時に発生した株の交差免疫性等に違いがある可能性があるため、プレパンデミックワクチンの備蓄に当たっては製造可能な各社から備蓄することが必要と考えられる、としております。
2つ目の提案としては、先ほど当面の形で挙げておりますが、プレパンデミックワクチンの中長期的な検討課題についてというようにまとめさせていただきました。平成30年度末をもって細胞培養事業の製造体制が整備される見込みです。整備後に各社の製造体制、パンデミックの発生からプレパンデミックワクチン、パンデミックワクチンの接種時期、接種体制等を精査し、改めてプレパンデミックワクチン備蓄の必要性について検討することとしてはどうかと考えております。
理由としては、平成30年度末をもって先ほど述べました3社において細胞培養事業の製造体制が整備される見込みです。3社の合計として、ワクチン株の決定から6か月以内に、全国民分のワクチンを製造する計画となっています。このような体制整備が実際に終わるのが30年度末と。そのことを受けまして、細胞培養事業整備後に各社の製造体制、パンデミック発生からプレパンデミックワクチン、パンデミックワクチンの接種時期、接種体制等を精査し、改めてプレパンデミックワクチン備蓄の必要性について検討することが望ましいということで、中長期的な課題とさせていただきたいと考えております。皆さまに御審議いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○岡部委員長 1つは、プレパンデミックワクチンの株は今までH5N1だったけれども、これをそのままでいいかどうかという議論と、それはいつぐらいまでに必要と考えるのかどうか、それから、接種体制も現状のままがいいかどうか。ただ、それはすぐにぱっと切り替えるわけではないので、それらについても議論は進めていくことになります。この提案の中の大きいこととしては、既にプレパンワクチンの備蓄というのは、行っている中で期限がきているものがあるので、それの次にくるものをどうしようかという現実的な部分とに分けられると思います。それで、今の事務局の説明のところで、当面の備蓄方針を先に議論するとして、この辺について御意見を頂ければと思います。ウイルス株の動きは、現状の疫学的なところにも関わるので、そこは大石先生か小田切先生、疫学で見た場合と、ウイルス学的に見た場合、何かコメントがあったらお願いできませんか。
○小田切委員 ワクチン作業班の班長をしております、感染研の小田切です。今、事務局から報告がありましたように、ワクチン作業班では、提案があった2つの項目について審議しました。それで、委員から出たものとしましては、2つ目の項目にあります、ワクチンの中長期的な課題をある程度議論したところで、プレパンデミックワクチンの必要性、継続的な備蓄をするかどうかの必要性も含めて考えて、その上で更に具体的には、H5でいくのか、H7でいくのか。仮にH7とすれば、どういうウイルスでいくのか、そういうことを議論したわけです。
1番のプレパンデミックワクチンの当面の備蓄につきましては、やはり先ほど事務局が言ったように、平成30年度末で細胞培養ワクチンの製造のファシリティーがほぼ完了するということで、フルスペックで細胞培養ワクチンとしてのワクチンを製造する体制が整うので、ここでプレパンデミックワクチンの備蓄のレベルで、どれぐらいファシリティーが稼働するのか。それから、仮に亜型をH5からH7に変えた場合には、全く新しい亜型になりますので、フルスペックで製造できるかどうかを、ある程度エバリュエーションしておく必要があるだろうという議論になりました。来年度で備蓄しているH5N1の有効期限が来るという状況も踏まえますと、備蓄は必要だろうということで、委員の皆さんの合意となったわけです。
では、H5とH7、どちらにという議論では、今現在で危機管理上の重要性を見ますと、H5は、ほとんど人感染事例がなくなっているという状況です。H7のほうが現時点では第6波で依然として流行がある。しかし、H7も人感染事例は第6波に入りまして、非常に少ないという状況ではあるのですが、H7のほうがH5より重要である。
もう1つ、WHOやCDCのリスクアセスメントをしますと、やはりH7N9のほうが、H5N1、H5N6に比べるとリスクとしては高い、そういうスコアリングが出ている現状を踏まえれば、やはり危機管理上の重要性という点からはH7のほうがより重要であるということで、この作業班としましては、H7N9のワクチンの備蓄をすることで合意され、ワクチン株としましては、事務局から説明があったようにGuangdongのIDCDC-RG56Nという、これは高病原性タイプのH7から開発されたワクチン株ですけども、これにしてはどうかということで皆さんの合意が得られました。このGuangdongにした理由は、先ほどの事務局の説明にあったように、このウイルスは、低病原性のウイルスも高病原性のウイルスも広くカバーする。そういう利点があるというこので、この株が選ばれたわけです。補足としては以上です。
○岡部委員長 ありがとうございました。
○大石委員 私は作業班には加わっておりませんけれども、今までH5N1、H7N9、鳥インフルエンザのリスクアセスメントをずっと継続して行っているところで申し上げますと、人の重症感染症事例、また環境中でのウイルスの検出から見ると、H7N9のリスクのほうが高かろうということは、海外の報告と一致していると認識しています。
それともう一点は、ワクチン候補株が挙げられておりますけれども、これまで人の季節性インフルエンザワクチンの選定についていろいろ議論もしておりますけれども、フェレット血清で得られた血清での交差免疫性が合っているから、人でワクチン効果があるかどうかは、分からないので、そういったところは慎重に、新型インフルエンザと季節性インフルエンザの違いはあるにしても、考えておく必要があると思います。以上です。
○岡部委員長 押谷先生、どうぞ。
○押谷委員 私も、H5N1のプレパンデミックワクチンをどうすべきなのかというのは、きちんと議論すべきだと言っていたので、流れとしてはこういう流れになるのだとは思います。ただ、このH7N9のワクチンを備蓄することを決めるに当たって、きちんとしたステップを踏んでやるべきことだと思っています。
資料の中にある危機管理上の重要性のクライテリアというのは、非常にプリミティブで、本当にサイエンティフィックにこれでいいのかと思うような内容になっています。2009年のときも2週間ぐらいで世界中に広がっているわけですよね。これが、日本との往来が多いというのは、どこまで本当に大事なのかということもあるし、今、事務局から言われた人の感染事例が多い、重症度が高いというのをどのように考えるか。1,600人で600人死んでいる、この数は全然実態を反映していないというのは我々の常識なので、その数だけを出して、重症度とかそういう議論をしていいのかという話もあると思うのですよね。
WHOは、御存じのようにパンデミックのリスクマネジメントのガイダンスを2013年に出していて、その後に、パンデミックのリスクアセスメントのツールというのは多分公開されていると思うのですが、いろいろなことを考えなければいけない。それぞれの国がリスクアセスメントをすべきだということをWHOは言っているはずなのですよね。
そこに書かれていることは重症度ということもありますけれども、重症度をどう判断するのかということも、ガイダンスを出すときもいろいろな議論があって、季節性インフルエンザと比べてどうなのか、いろいろなことを考えていかなければいけない。スタートはウイルス側の要因とか、様々な要因を総合して、リスクアセスメントをそれぞれの国がやって対策を考えるべきだというのがWHOがやっていることで、そのツールに書いてある内容から見ても3つの、感染事例が多い、重症度が高い、日本との往来を本当に入れるのかという問題もありますけれども、そういうことだけではなく、もっと総合的にリスクアセスメントをきちんとそれぞれの国がやって対策を考えるべきだとWHOも言っている中で、そういうツールも公開されている中で、プリミティブなもので、この程度のデータを出してH7N9のほうが大事ですと結論付けてしまっていいのかというのは、非常に私自身は疑問に思います。
H5N1のパンデミックのリスクというのは、人の感染事例が少ない、それだけでいいのかと。パンデミックのリスクアセスメントの中でも、シビアリティーという観点からすると、H5N1が高いのは明白なので、その辺をどのように考えて、では日本としてリスクをどのように捉えてこういう方針の転換にするのかという。この1枚紙で言えるような内容ではなくて、多分CDCがリスクアセスメントをやるのに3年か4年かけてやっていると思うのですけれども、そういうことから考えると、これでいいのかなという気は非常にします。
○岡部委員長 ありがとうございました。もう少しデータその他の提示をしなくてはいけないという意味だと思うのですけれども、そのほかに。
○小田切委員 今、押谷委員からリスクアセスメントの指摘がありましたが、非常に重要な指摘だと思います。確かに先ほどもちょっと述べましたけれども、WHOとCDCが組んで作ったツールですが、今、WHOのほうで、まだWebには公開になっていないのですけれども、H7N9とH5N6、H5N1のリスクアセスメントはまとまっています。少なくとも9つの項目について、全部リスクアセスメントのスコアリングをして、それでトータルで見ると、どちらがリスクが高いかという報告が間もなく出るという状況になってきています。
それで見ましても、やはりH5N6若しくはH5N1よりも、H7N9のほうがよりリスクは高いというスコアになっていて、これはいろいろな科学的な項目を全部潰してスコアリングして、トータルで見た、それでもそういう評価になっていると。特に人に対するシビアリティーとかポピュレーションのイミューンレベルとか、そういうのがやはりスコアが高いわけです。
それから、高病原性のH7N9が出現した以降のリスクアセスメントもやっていまして、これは2013年にH7N9が出てきた当時から大きくは変わっていないのだけれども、やはりH5よりはリスクが高いという、そういうエビデンスがあるのを踏まえると、やはり今回の事務局から報告があったような考え方は、妥当なのかなと思います。
○岡部委員長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょう。
○押谷委員 今、小田切委員が言われたのは、WHOのリスクアセスメントのことですが、CDCもリスクアセスメントの結果を1年ぐらい前に公開されていると思うのですけれども、ただ、WHOが言っているのは、各国がそれぞれやれということなのです。ですから、各国がどういう対応ができるか、例えばH5N1だったらワクチンがどのぐらいで作れるのかとか、H7N9だったらどれぐらいでワクチンが作れるかとか、そういう対応能力などもクライテリアの中には入っていて、だから、それぞれの国でやらなくてはいけないと、多分なっているはずなのです。
そういう中で、今、事務局が挙げられた3つの項目というのは、WHOが出しているものに比べると、かなりプリミティブな感じがして、それだけでやはりいいのか、WHOが出したから、CDCが出したから、それに従っていくということでいいのかどうか。やはり日本のリスクアセスメントというのもきちんとやった上で、どのように危機管理上の重要性というのを考えるかということが必要なのかなと、私は思います。
○岡部委員長 そのリスクアセスメントは、今までのところは国内では先生の疫学センターで出しているわけですけれども、その辺のことを踏まえると、大石先生どうですか。
○大石委員 WHOのパンデミックリスクアセスメント、PISAと呼ばれているものは、2013年最初にガイドラインが出て、その後も議論が継続されていて、WHOの会議にも、感染研からも何回か出席しているのですけれども、未だにその進捗が立ち消えているというところです。
我々も会議に出席し、ベースラインとしての季節性インフルエンザをどう評価していくか、その中で新型インフルエンザが発生したときとどのように評価ができるかを検討しました。トランズミッシビリティー、シビアリティー、インパクトについて、日本にあるインフルエンザサーベイランスのパラメータでどう評価するかということを議論しました。しかし、WHOはパンデミックリスクアセスメントのプラットフォームとなるようなツールを作らずに、各国で独自に実施すようにと言っている訳ですが、各国いろいろなパラメータがバラバラだから、全然まとまらないのです。当方もスペインのグループと協力して検討していますが、正直言って進捗が遅れています。
鳥インフルエンザから新型インフルエンザ発生のリスクアセスメントという観点では、我々も文献的な考察はできるところなのですが、実際の新型インフルエンザ発生に際して、新型インフルエンザのアセスメントをする流れを作っていくのには、まだもう少し時間が掛かると思います。これは我々だけの問題ではなくて、グローバルな課題であると思っているのですが、いかがですか。
○押谷委員 WHOのツールは、考え方としてはパンデミックが起きたときのリスクアセスメントをどうするかということだと思うのですけれども、そこに書かれているというか、入っているコンポーネントが、パンデミックが起きるかどうかで、H5N1とH7N9を比べた場合にどうなるかというようなことを考える上でも、重要なコンポーネントなのだと思うのです。ですから、そういういろいろなコンポーネントを考えて、日本では今、H7N9とH5N1を比べた場合に、その危機管理上の重要性というのは、どのように考えて、だからどうするのかと、今後どのように考えていくのかというような、そういう流れをやはりどこかで整理をしておく必要があるのかなと、私は思うのですけれども。
○大石委員 整理が必要なことは私も同意しています。今後もいろいろ検討していきたいと思います。よろしくお願いします。
○岡部委員長 それぞれの1、2、3に対応するような、確かに見た感じでは納得がいくようなところなのですけれども、その裏付けになるようなデータがもう少し提示されるべきではないかというのが、多分、押谷先生のおっしゃっていることだし、これの検討自体はしなくてはいけないことです。ここの所をもう少し、疫学センターでもデータを持っているか、情報を収集していると思うので、その辺の比較はやはりやっていただいたほうが良いのではないか。この人数で言っている重要度は、確かに1,567人中の613人という死亡が数字だけなので、もう少しデータがあったほうが、ほかの人に説明する場合でもしやすいのではないか、その辺をもう少し示せるようにしたほうがいいのではないか、というような御意見だと思うのですが、ほかに関連していかがでしょうか。
○坂元委員 押谷先生のおっしゃっていることは、私もよく分かるのですけれども、以前からずっと備蓄しているプレパンデミックワクチンそのものが必要かどうかという議論と、むしろそういう議論と併せて、将来的にどうしていくかを一括して私は議論したほうがいいのかなと思います。というのは、今、プレパンデミックワクチンは我々地方自治体の行動計画に全て書き込まれて、それをいきなり突然考え方を変えるというのは、多分まだコンセンサスが得られないということになるかと思います。やはり当面その議論をするまで、プレパンデミックワクチン備蓄は続けていかざるを得ないということです。
それと、恐らく国も我々もそうなのですが、予算というものがあって、ある時期を過ぎてしまうと多分、予算確保という問題が非常に大きくなり、そこを1抜かしてしまうと、次から予算が付かないということもあります。まだ将来的にプレパンデミックワクチンをどうするかという議論をしっかりしない前に1つ確保を抜かしてしまうと、非常に次回の予算獲得が難しいだろうということです。
それと、それぞれの自治体がプレパンデミックワクチンは必要だという前提で、自治体内ではいろいろな計画を立てています。それから我々も国と一緒になって、そのプレパンデミックワクチンの登録事業もかなりやっていて、相当数の登録があるので、今の段階では、ちょっとプレパンはどうこうするのは難しいということかと思います。先生のお考えは、将来プレパンをどうするかという中で別に議論に乗せていったほうが、今の段階ではいいのではないかという感じです。私は素人なので分からないのですが、プリミティブなものを見ても、こちらのほうがすごいのだなというように思ってしまって、つまりそういう時期的な関係でそういうものを決めていくというのも、ある意味やむを得ない部分もあるのかなと思っています。
○丸井委員 私も作業班のほうのメンバーで、少しお手伝いをしました。今の押谷先生のお話は、坂元先生と同じように、むしろ今回の話は、2の後半のほうの話の基礎になる所なので、その前提としてリスクアセスメントを十分するというのは必要だと思います。
もう1つは、当面の話として、H5N1よりもH7N9のほうが重要かということになります。そこは私も結論的には賛成なのですけれども、お話を伺っていて、H5N1が出てくる可能性というのはどれぐらいあるのだろうかと。今、H5N1はどうなっているのだろうというのが、少し素人のような質問ですが、ウイルス学的あるいは疫学的に、これで収まるという方向なのか、それともやはり今までと同じように、いつどこかで従来と同じような確率で飛び出してくるというようなことがあるのか、何かその辺りも重要性の背後として、いかがかなと思いました。
○小田切委員 今、丸井委員からの質問もありますけれども、まずH5N1はどうかというと、ここ1年ぐらいというのは、人の感染事例はたったの2例です。その前の年にエジプトで100例を超えるアウトブレイクがあったのですが、あれ以降はパタッと人感染事例はなくなったのです。直近1年では2例という、それぐらいに減っているということです。では、人の感染事例は確かに減ったのだけれど、それが完全になくなるかというと、恐らくその可能性はないと思います。というのは鳥の間でエンデミックに定着してしまっているので、やはり人が不用意に接触すると、感染事例というのは起こるだろうと。だけれども、数がドラスティックに減っているのが現状です。
一方、今度はH7に関しまして、確かに第5波のときは非常に感染事例が多かったのですけれども、今年の第6波になって、感染事例は、やはり少ないのです。今のところ人感染事例は3例という報告があって、そのうち1例が高病原性タイプのH7N9に感染しているという状況なので、人の感染事例ということにだけに注目すると、やはりH5もH7も少なくなっているという状況です。
○岡部委員長 すみません、ちょっと確認なのですが、その場合の高病原性というのは、あくまで鳥の間での高病原性、低病原性ですね。
○小田切委員 そうです。鳥に対する高病原性、低病原性ということであって、人に対するものとは必ずしも違うということです。
○岡部委員長 ありがとうございました。
○釜萢委員 押谷先生にお伺いしたいのですが、押谷先生はH7でなくH5のほうがよいという御判断なのでしょうか。
○押谷委員 いえ、決してそうではないです。
○釜萢委員 そうではないと。
○押谷委員 だから、きちんとしたアセスメントをした上で、H5N1のリスクはこういう形で、H7N9のリスクはこういう状況にあるので、だから今、プレパンデミックワクチンをもし作るのであれば、備蓄するのであればどうするのかという、そういう整理が必要だというのが私の意見です。
○岡部委員長 もう1つ、小田切先生にお伺いしたのですが。H5N1がパタッとなくなってしまった理由というのは、どこかでちゃんと言われているのか、あるいはH7N9はバーンと出たけれども、今、ちょっと落ち目になっていますよね。その理由と、これが中国でしか出てこない、H5N1の場合はバーッと世界中に広がったのだけれども、H7N9はどうして中国だけなのかなというのが、すごく素朴な疑問なのですけれども。
○小田切委員 この素朴な疑問に答えるのが難しいというか、答えは今のところないのです。よく分かっていないという状況です。中国に限定しているというのはなぜかというのは、これもやはり分かりません。それから、第5波であれだけ感染事例があって、第6波でいきなり3例とかそんなレベルになったのはなぜかと。これも正確にはよく分からないのですけれども、1つ可能性として考えられるのは、中国ではH5N1とH7N9のバイバレントワクチンを鳥に対して去年からやり始めているのです。
ということで、鳥が死ななくなって、ウイルスの排出も減っていると。そういう状況で、もしかすると人の感染事例が少なくなったのと関連している可能性があります。ただ、それが本当にあたっているかどうかは、分かりません。
○岡部委員長 いや、もし理由が明確にどこかでなっているならば、その理由をもって、もしかするとH5N1は、また数年後に出てくるのではないかというようなことが言えるような気もするのですが。ただ、世界中でも明確にはなっていないようだということも、今、御説明いただいたのだとすると、現状で判断するか、そこはないわけですね。
だから、そういうことも含めて分かっているのはこれだけれども、分かっていないのはここなので、こういう決定をしましたとしておかないと、押谷先生のおっしゃるような、こうだからこうだからと3つぐらい並べて決めるのは、いかがなものかというようなことになってくると思うのです。ほかに御意見はどうですか。
○信澤委員 今、先生がおっしゃったことの繰り返しになるかもしれませんが、危機管理上の重要性という言葉が出てきたのは、多分去年か2年ぐらい前からだったと思うのです。出てきたときから押谷先生はもちろん、ほかの先生からも3つのここに出ている中身に関して、余りに具体的ではなくて、漠然とし過ぎていないかという御意見はあったと思うのです。
ですので、押谷先生も決して備蓄としてH7は推奨しないという意味でおっしゃっているのではなくて、こういう危機管理上の重要性、この3つの要件を満たしているのでという、その結論としてというのが余りに理由付けとしては希薄ではないかという意味でおっしゃっているのだと思うのです。
公文書として残すときに、その曖昧なまま残すのか、あるいはこれをきちんとアセスメントまでしてから書くのか、ただ、それは時間が掛かると思いますので、具体的にこの3つの中身をもっと正確に記載できないのであれば、あえて危機管理上の重要性これこれを満たしているのでという言葉を避けて今の状況を記載したほうが、明確になるのではないかという気がしました。
○岡部委員長 ありがとうございます。ほかに御意見は。中里委員、どうでしょうか。
○中里委員 先ほど坂元委員がおっしゃられたことと重複するのですけれども、まず今回は中長期的な検討をする時期としては、細胞培養ワクチンができるというこのタイミングは非常に重要だと思います。
一方で、長期的な計画の中で自治体が行動計画を持っていますので、仮に何かシフトするということがある場合、少し時間の猶余を持って計画を立てていただければと、自治体の立場では思っております。以上です。
○岡部委員長 この2番目の中長期的検討課題をやっているのだということを、まず示すのが必要であって、何かコソコソやっているという感じになってしまうと、それはまずいのではないかと思うのですが、それも含めて少し時間を掛けて、この2番については議論すると。
○押谷委員 ちょっとその中長期的な話にも関連するのですが、この1ページ目に、特定接種対象者に迅速に接種を行うためには、プレパンデミックワクチンの備蓄は当面必要だというのが書かれています。特定接種ありきということに対して、私は非常に違和感があって、そもそもプレパンデミックワクチンという言葉が悪いというのは、いろいろな所でグローバルにいろいろ議論されてきていると理解しているのですが、あたかもパンデミックが起きたときに、それに有効なワクチンを備蓄しているかのような印象を与えて、それで自治体は今、特定接種のリスト作りとかで非常にてんてこ舞いして、非常に多くの労力を割いて、特定接種への準備をしています。
だけれども、これは本当に役に立つのですかという、H7N9であろうとH5N1であろうが、備蓄したワクチンが本当に役に立つのですかという問題があって、2009年には全く役に立たなかったわけです。次に起こるパンデミックも全く役に立たないかもしれない。H9N2とかH3N2バリアントとか、いろいろな候補がある中で、だからプレパンデミックワクチンそのものが、その考え方自体が本当に正しいのか、特定接種という考え方が本当に正しいのかということは、きちんと議論しないといけなくて、これも多分10年以上前にH5N1が危ないという話になって、あたかもH5N1だけがターゲットのように皆さんが、私も含めてなのですが、WHOも含めて、誤解していた時代に考え出してきた、プレパンデミックワクチン特定接種という考え方を、今、本当にこのままでいいのかということは、やはりきちんと整理をしないといけない。
非常にたくさんのいろいろな可能性があって、その中の1つだけにしか効かないワクチンなわけです。それがこれだけの労力を使って、特定接種の準備をするということが、本当に正しいのかどうかというのは、特定接種をやるからプレパンデミックワクチンの備蓄をしなければいけないという、ここに書いてあることの内容というのは、非常に私には違和感があります。
○岡部委員長 その2番の所に、本当に中長期的なことに視点を置いて議論をすることであって、ここにも改めてプレパンデミックワクチン備蓄の必要性について検討するとあり、かなり根本的なことを議論することになるので、それは今日の結論にはなりませんが、むしろ今日の結論は、多分今まで押谷先生もおっしゃっていたように、また我々も言っているように、プレパンデミックワクチンの必要性であるとか、対象であるとか、そのような根本的な所にきちんとした、10年たったときの節目としての回答を出すということではないかと思うのです。
あのときのプレパンデミックワクチンが何人分とか、パンデミックが生じたときのワクチンがどのぐらいかというのは、まさしく先ほどのフィーリング的な危機管理だけれども、我々の委員会とは別の所で、ハイレベルと言っていいか、上のほうからは国民の不安感を抑えるためにこれだけのものが必要であるということが最大の理由だったと私は思っているのですが、それが今まで、ここから先の備蓄に必要なことかどうかというのを、むしろサイエンスという立場から出していくというのが委員会の役割だと思うのです。
今日、先生のおっしゃることをここで根本的に議論を始めてしまうと、今日の議論としては成り立たない、しかしそれはおっしゃるように、皆さんも恐らくアグリーだと思うのですけれども、これについての議論をとにかくスタートしましょうと。今までのように、予算が来年度は迫っているからこれをやるのですということではなくて、それに対しての必要性、あるいは不必要なのかもしれないし、あるとしたらどのぐらいのだというようなことについて議論をしましょうという、まあキックオフですね。そのようなことをきちんと議題に乗せるということが、この委員会での結論ではないかと思うのですが、そこはいかがですか。押谷先生どうでしょうか。
では、先に2番の結論を出してしまいましたけれども、2番に書いてある中長期的検討課題というのは、丸々ありきということではなくて、ただ細胞培養事業ということでワクチン製造の方法も変わっていると。それから、今まではパンデミックとかプレパンとか、いわゆるライセンスを取り替えてやるような、そういったようなワクチンと幾つかの方法があるのだけれども、この接種体制も含めて、この委員会が議論をしていくと。
実際の製造は、製造のほうであったり、あるいは公衆衛生のほうであったりという議論があるかもしれません。一応この小委員会としてはそこの議論を、それではこちらでやりなさい、あちらでやりなさいということもあるかもしれないけれど、それを含めて議論しましょうというのが、多分事務局もそういう提案ではないかと思うのですけれども、我々の委員会のほうもそれを了承したというような考え方でよろしいですか。事務局、どうですか。意見はありますか、いいですか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 正にこれまで議論していただいたことを踏まえた上で、今回ではなくて中長期的にどうしていくかというのは、これから御意見を更に伺いたいと考えているところですので、その方向で考えたいと思います。
○岡部委員長 とは言って何年も議論だけやっていると、それは議論をしているだけのことになるので、どこかで結論を出さなくてはいけないと思うのです。ただ、WHOも今、お話を聞いても、議論を重ね議論を重ね、なかなか結論が出ないというところもあるので、ある一定のところではスパッとした結論を出さなくてはいけないけれども、それに必要な科学的な議論をしていこうというのが提案であり、それを委員会のほうが受けたということだと思います。
○大石委員 プレパンの亜型決定について議論があったところですが、感染研のほうでもリスクアセスメントについては日々アップデートはしているところですので、H7N9、H5N1、そしてそれ以外の人の事例、そして鳥の事例も含めて、リスクアセスメントをアップデートしたいと思うので、事務局のほうで御指示いただければ対応しますので、よろしくお願いします。
○釜萢委員 先日のワクチン作業班会議に私も出させていただいて、そのとき初めて理解したのですが、プレパンデミックワクチンは、現在7割方、細胞培養で作っているということ。それから今、3社で進めていて、平成30年度末までに体制が整うといわれているパンデミックワクチンの製造ラインを使って作るのだということがありました。それはパンデミックワクチンの製造の準備をする上では、非常に役立つなと感じた次第です。
それと、そのときに議論が出ましたが、先ほど大石先生も指摘されたフェレットの動物実験での交差免疫性の確認にとどまらず、やはり人を使った臨床試験を全部やると。そして特に接種後の血清をしっかり保存するべきだという御指摘が作業班会議で出されて、私も全くそのとおりだなと感じた次第です。
ただこの件については、事務局でいろいろまた予算等の準備も必要になることなのかなと思いまして、すぐにどのぐらいできるのか、現状では分かりませんが、やはり方向性としては今後のパンデミックワクチンの製造に資するような形で、プレパンデミックワクチンの製造が行われることは私は望ましいと思っておりまして発言をいたしました。
○岡部委員長 ありがとうございました。
○小田切委員 今、釜萢委員の指摘に大体同意なのですけれども、やはり備蓄ワクチンをした場合には、それを使って人でもっての臨床試験をやって、どれぐらい免疫原性があるとか、ワクチン接種後のヒト血清がどれぐらい交差反応性があるかとか、そういう成績をきちんとワンセットで確保しておく必要があること。それを前提にして備蓄のワクチンの製造も必要だという考え方をしていくべきかなと思います。
○岡部委員長 ありがとうございました。そうすると、今すぐ取り掛かるということではないけれども、平成30年度末に、このような体制も違ってくるし、その前の段階から、ここから先のワクチン、プレパンデミックワクチンをどうしようかと。それには特定接種にも関わるし、その後の住民接種にも関わるわけなので、治験の在り方その他も含めて、かなり広範ですけれども、事務局も大変だと思うのですが、その議論はやはりやるべきだと思うので、そのようなやり方で行きたいということを、一応この委員会の結論にしたいと思います。
そうすると、中長期的なところは決まったのだけれども、では、その中長期的なことを決めるまでの間に、自治体の準備というのも当然ありますし、予算のこともあるし、しかし明日にパンデミックが発生来てしまったらどうしようということも含めて、では今回、備蓄をやめて少し様子を見ようという選択があるのか、あるいは従来どおりで備蓄を続けていくのか。そうであればその株は何なのか。H5N1ではなくて、やはり幾つかのエビデンスと推測に基づいて、H7N9というのは選択になるのではないかと。今までもWHOだけではなくて、いろいろなアカデミアの議論でも、H7N9のほうがパンデミックの候補としてポッシビリティーが高いということは、よくおっしゃる方は多いです。
しかし、現実にそれを入れて作るかどうか、それを決めておかなくてはいけないところだと思うのですが、これは余りだらだらやるわけにはいかないのですよね。その点についてはいかがですか。でも作業班のほうでは、H7N9というものは幾つかの流行状況と病原性と、幅から言うとH7N9に切り替えるのは妥当であると。H5N1が全然なくなるという科学的な根拠はないけれども、しかし今の疫学状況からは、H7N9のほうがより可能性は高く、両方備えるわけにはいかないので、そうするとH7N9のほうが、よりポッシビリティーとリスクが高いのではないかという意味だと思うのですが、この点について議論しておかないと、先に進まないと思うのですが、そこはいかがでしょうか。
○小田切委員 まず、H5N1ワクチンの備蓄が継続して更に必要なのかという点について、今は、薬事承認上、H5N1に限定しており、H5N6のような新しい株を使って備蓄できないメカニズムです。そうすると、これまで備蓄してきたものは十何年前の株で、今、流行しているものとはかなりかけ離れたウイルスになってきています。そういう状況を踏まえて、多分、もう一回H5N1で備蓄をやるという考えにはならないと思います。先ほども言いましたように、H5N1の感染事例が激減しているという背景も踏まえて、よりリスクアセスメント的な観点から見てもH7N9なのかと思います。
○岡部委員長 ありがとうございました。信澤委員、それから丸井委員は今のことに関連してですか。
○丸井委員 そうですね。分かりませんけれど。
○岡部委員長 では、信澤委員、先に発言をお願いいたします。
○信澤委員 少しだけ補足いたします。もちろん、H7N9を備蓄することは構わないと思いますが、備蓄していても余り意味がなくて、先ほど幾つか御意見がありましたが、備蓄した株を人に接種してその血清を取っておいて、もしパンデミックが起きたときに、その血清が本当にパンデミックを起こしたウイルスと交差性を示すのかを見ない限り、備蓄している意味がないと思います。血清を保存するというところまで含めて、備蓄と理解していただければと思います。
○岡部委員長 それは、当然、H7N9をトライアルで人に接種すると思いますが、その血清をきちんと取っておいて、仮にパンデミックが発生した場合にその血清と当てるという意味合いですね。
○信澤委員 はい。
○岡部委員長 それも条件の中に含めてということだと思います。確認ですが、中長期的なことを考えるまでに、当面、少し製造をやめて様子を見るという選択はないと思っていいですよね。そうだとすると、H5N1にするのか、今、問題になっているH7N9にするのかという提案と作業班の意見について、どのように思うのかという御意見をそれぞれ頂きたいと思います。いかがでしょうか。
○小田切委員 信澤委員の発言に関連しているのですが、H5とH7は、どうも人に対する免疫原性がドラスティックに違うというエビデンスが科学的に論文として出ています。その場合、今まではH5N1の備蓄は経験があるが、H7の備蓄の経験がないことと、実際、H7で備蓄したワクチンが人にとってどれくらい免疫原性があるのかどうかという、剤形も含めてですが、そういうことも検討する必要があると思っています。それを踏まえれば、H7のワクチン製造は必要なのかと思います。
○岡部委員長 それは、ある意味チャレンジなので、作ってみて、それについて科学的な回答を得ようということですね。
○小田切委員 はい。なので、作らなければそれもできないということだと思います。
○丸井委員 私が伺おうと思ったのもそこです。現場の状況としてH7N9のワクチンの開発は具体的にどこまで行われているのか。本当に人にとってそれが有効で安全なのかという検証をしながら、これから新たに開発していくというところにあるのだとすると、備蓄より前の段階があるのか。今、製造についてどの辺りにあるのでしょうか。
○岡部委員長 では、現状について、事務局から説明をお願いします。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 現状として、基本的に今整備されている細胞培養事業はどの亜型に対しても対応できる形で進められております。実際、その亜型に対してのワクチンを開発するという形で実施できる体制は整備されています。まず、それに対しての製造株、生産株みたいなところに関しては、またそれぞれの亜型によって多少違いがありますので、そういうところはこれからという形です。
○岡部委員長 それについて、非臨床試験、臨床試験の成績は提示できますか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 AMEDを使って研究が進められており、その研究を実施するということに関しては、これまでもこちらで報告しておりますので、一部進行しているという状況です。
○岡部委員長 そのときの血清をきちんと取っておいて、将来に備えるということも条件として加えてはいかがかという御意見だと思います。それは、是非、レコメンデーションしておきたいと思います。ほかの御意見はどうでしょうか。
○信澤委員 あと、先ほど岡部委員長がおっしゃった、備蓄を途中で中断はないのですねというお話でしたが、もし危険と思われるウイルスが流行していないのであれば、あえて備蓄する必要はないと思います。先ほどの危機管理上の重要性というところをもう少し具体的にして、それに合致するような状況でなければ備蓄をしなければいけないという、備蓄ありきで考える必要はないと思います。
○岡部委員長 H5N1のストックとしては、まだ期限切れではないものがあるわけです。それは、備蓄としてなっているので、信澤委員の御意見は、H7N9にするのならば、例えばスモールスケールでやって一気に何百万ドースも作る必要はないのではないかということですか。
○信澤委員 いいえ。H7N9は普通どおりに作られていいのですが、その後、中長期的にという。
○岡部委員長 中長期的な話ですね。
○信澤委員 はい。
○岡部委員長 それを将来的な備蓄にするのかどうかは、もう1つ別の議論でこの2のほうに入ってくると思います。それでよろしいですよね。
○小田切委員 やはり中長期的な検討は、備蓄に使ったワクチンが本当に有効に使えるワクチンなのかどうか、剤形的、免疫原性などに関する成績を全部そろえておく必要があると思います。それを踏まえて、やはり必要ないとなれば、そこでやめてもいいと思います。
○岡部委員長 将来的な選択として、中長期的に備蓄がいらないということになるのならば、それに対してもエビデンスを作っていかなければいけないので、備蓄の条件や接種体制、問題は効果と安全性だと思うのですが、そういうことを含めて、この2番の議論の中に入れようということでよろしいでしょうか。
○押谷委員 やはり、備蓄というと割と長期的に持ってという感じになると思います。今、言っている中長期的なところと、現状プレパンデミックワクチンを製造し続けているという、その中間点みたいなところの話です。仮に、このままこのシーズンにH7N9がほとんど出ず、来シーズンは全く出ないという状況になるかもしれないわけです。それは、現時点では誰にも分かりません。来シーズンになったら、全く違うウイルスの人への感染例が続発するかもしれない。
そういうときに、もう少しきちんとどのように対応してプレパンデミックワクチン、先ほど言ったようにプレパンデミックワクチンという言葉はよくないと思いますが、今の日本の製造ラインを使って作るパンデミックが起きる以前のワクチンを、どのように製造していくのかということをきちんと整理しておく必要があるのかと。
H7N9のことに関して言えば、実際に非常に危機感が高まったのは前の前のシーズンです。2016、2017年のシーズンに非常に人感染事例が増えて、そういうことに対応してワクチンの切替えが迅速にできるということも、中長期的に実際にパンデミックワクチンだけに移行していく過程でもう少しこのワクチンの製造、先ほどの危機管理上の重要性の話にも関連するのですが、その基準を満たした場合にどのように対応するのかというところをもう少しきちんと整理しておく必要があるのかと思います。
○岡部委員長 それは、同じく2で議論するときのテーマとしてノートを取っておいていただきたいと思います。
ほかに御意見はどうですか。例えば、自治体は今すぐやめてしまうというのはとても困る話で、それは体制上も予算上も今までストーリーとしてやっていたことはやっていかなければいけない。でも、そうなったときに、今のH5N1は備蓄分として期限内のものはあるし、新しく出てきたのがH7N9だった場合に、それについて自治体側で何か決めておかなくてはいけないことや困ることはありますか。
○坂元委員 むしろ、自治体は接種スケジュールをどのように立てるのかということのほうが喫緊の課題です。例えば、先ほど押谷委員が言っている1,000万人をいきなり配布されても、1,000万人を接種している間に次のパンデミックワクチンが出来てしまうのではないかという議論もあります。自治体にとって接種スケジュールがどのようになるのかということが重要です。その株が何かということは、自治体は専門家の集団ではないので、ある一定のレベルでこちらのほうがリスクが高そうだという御意見を頂ければ、あと自治体が考えるのは接種スケジュールをどのようにするのかということが、多分、一番重要ではないか思います。中里委員から、ほかに何か御意見があればと思います。
○中里委員 追加で述べさせていただくのは、基本的にはワクチンの株をどのようにするのかは科学的に議論されるべきものだと思います。一方で、先ほど委員長がおっしゃられたとおり、プレパンデミックワクチンは国民の不安感を抑えるためという要素が1つあるとするならば、もし、プレパンデミックワクチンを備蓄しないということになった場合、それに対して国民にどのように説明してどのように理解していただくのかということも併せて議論していただかないと、方向転換が難しいのかと感じております。
○岡部委員長 あくまで、今の時点でということなので、また2番の議論になればそのうちに変わるかもしれないということを前提にしてです。いかがでしょうか。
○押谷委員 今、中里委員が言われたことですが、私が先ほど言ったように、それ以前に今のプレパンデミックワクチンが抱えている問題点もきちんと国民に説明しなければいけなくて、あたかも、パンデミックが起きたときにいつでも役に立つワクチンを相当な税金を使って準備していて、そのために自治体の人たちは、必ずしも、プレパンデミックワクチンの問題点をきちんと理解しないままに非常に労力を使って特定接種の準備等をしている。この辺りは、自治体や国民に対して、プレパンデミックワクチンが持っている限界みたいなものを、きちんと説明していくことは必要なのだろうと思います。
○岡部委員長 もちろん、それは順次やっていくので、例えば、この委員会が今日のまとめとして、やはりプレパンデミックワクチンは効かないから議論は始めるけれど、あれは実は効かないのですよとは言えないわけです。今までのプロセスから言うと、やはり、きちんとやっていくものもあります。ただ、私もいろいろな所で話をしたりする機会があるのですが、その効果と不安定な部分、困った部分について国からも説明していただいて、あたかも、手の内に魔法を持っているわけではないというのは理解していただかなくてはいけない部分だと思います。丸井委員、その辺りについて御意見ありますか。説明をするとか、今までのところに加えて何かやらなければいけないとか。
○丸井委員 お話に出てきたとおりで、変えるときには今までの説明をどこかできちんとそれなりの理由を説明できなければいけないし、それを納得してもらうブロセスがどうしても必要になると思います。そういう意味で、今回の1番は当面やめるのかというと、当面は続けるべきであるし、続けるとしたら、H5N1を続けるのか、それとも、それよりも後発だけれどもポシビリティーの高いH7N9にするのかというところ、今回はそれだけの話だと思います。
○岡部委員長 課題があるからこそ検討していくので、今のがバシッと効くならば議論は要らないのです。そういう課題があるからこそ、次のステップにいこうということです。釜萢委員、医師会ではいかがでしょうか。
○釜萢委員 やはり医師会の立場としては、いかに国民の皆さんにしっかり安心していただける体制を取るのかということは極めて重要だと考えております。果たして、パンデミックのときにどのウイルスがパンデミックになるのかというのは、現時点ではなかなか予想できないわけなので、現在、備蓄しているチンハイ株のプレパンデミックワクチンがそのときにどれだけ効果を発揮するかどうか、客観的に評価するのはなかなか難しいと感じております。
そうであれば、押谷委員が指摘されるように、将来に対するしっかりした検討は必要だと思いますが、現時点においては➀に書いてある方針を決めて、そして、しっかりと進めていくということが妥当ではないかと思います。
○岡部委員長 ありがとうございました。患者が出た場合はどのみち早く見つけなければいけないのですが、私は今、地衛研にいますが、疑いがあった場合にはH5でもH7でも検査は今の地衛研レベルででき、どこでもできると思います。感染研との情報や検体のやり取りがあるので、確認は直ちにそちらでやっていただくということです。10年前くらいに比べると、その辺りは格段に整備されてきたと思います。それから、臨床側もこれはというものはかなり相談しながらやるようになっているという雰囲気は、以前と随分違ってきているのではないかと思うので、そういうところは一歩一歩進んでいるところもあるということではないかと思います。
○大石委員 皆さんの議論を聞いて、プレパンデミックワクチン製造を当面は続ける方針が必要であろうと思います。一定期間の後にはパンデミックワクチンに移行していくタイミングが来るのだろうと思います。
パンデミックは何が起こるのか分からない状況で、今、プレパンについてH7N9がいいのではないかと考えているわけです。H7N9については探索的にワクチンを製造する、本当にワクチンが作られるのかということも含めて検討する。そういう流れで、プレパンデミックワクチン、パンデミックワクチンを一定の時間軸を考えながら進めていく、そこが中長期プランに繋がるのかと思っております。以上です。
○岡部委員長 ありがとうございました。H5N1が効かないからやめようかという議論も出てきているわけですが、でも、ワクチンの製造や鳥インフルエンザに対する対応に残したものはすごく大きいと思います。だからこそ、H7N1に切り替えようかとか、ほかの亜型が出たらという議論ができるので、その点は、今までやってきたことが全く無駄で役に立たない、実情上は役に立っていないけれど、その隠れたところで随分役に立っていると思います。
ただ、それに対してもう少し言うならば、先ほどの治験、あるいは基礎的な研究も含めて、前の委員会でも言っていましたが、これだけ備蓄するのならばこのくらいの費用も研究に回してもいいのではないかということも、2のほうの議論になっていくと思います。そういうことも含めてですが、そろそろ1の結論もディスカッションしておきたいと思います。これですぐにやめてしまうということではなくて、備蓄としてはH5N1の期限の有効範囲のものがあり、それに加えて次回はH5N1ではなくて、ここにあるようなリスキーなものとして、H7N9は現状として少なくなっているけれど、ポテンシャルとしてはまだ残っているから、H7N9で製造してはどうかということに対して御意見はいかがでしょうか。
○坂元委員 私はH7N9のほうで賛成というのは、これはH5N1からH7N9に変わったということで、多分これが報道されると、国民の中でインフルエンザの型がいろいろあるのだという認識が深まると思うので、今後の議論ができるのではないかという1つの経緯になるということ。
それから、プレパンという考え方は接種スケジュールから見ると、確かに自治体は非常に大変なのですが、パンデミックのときにその方法論が非常に役に立つと思います。やはり、ワクチンがドンと一気に配布されても、誰から優先するのかというのは考えなければいけない問題です。1億2,000万人全員に等しく同時に一斉にできないので、やはり自治体がどこから優先するのかということはマンパワーの確保の上でも考えなければいけない問題なのです。プレパンデミックそのものをどうするかというのは、今後、接種スケジュールの中で考えていくということで、私は今の段階の決定は、H7N9で自治体としては全く問題ないと考えております。
○岡部委員長 先ほど釜萢委員からいいだろうという御意見でしたが、大石委員はいかがでしょうか。
○大石委員 もちろん、その点については同意しています。
○岡部委員長 押谷委員は、今の時点でということではいかがでしょうか。
○押谷委員 まず、備蓄を維持するかどうかということなのです。余り表立って議論されてきていないことなのかと思うのですが、危機管理上の観点からすると、国内にきちんとパンデミックワクチンを製造できるキャパシティーが、維持されていくということは非常に重要な点です。
実は、世界の中でも自国内でワクチンを製造できる国は限られています。日本は、近々、国民全体分に接種できるワクチンを製造できる。それは危機管理上は非常に重要なことです。プレパンデミックワクチンの備蓄が、多分、その製造のキャパを維持していくのに貢献している部分はあるのだと思います。余りきちんと議論されていない部分かと思いますが、そういう観点では必要で、今、プレパンデミックワクチンの製造、備蓄を全てやめてしまうというのは、きっとそういう問題もあるのだろうと思います。
その上で、H5N1なのかH7N9なのかというと、少なくとも2018年5月23日の時点で考えればH7N9なのかと思いますが、整理の仕方としては、もう少しきちんとした整理をするということなのかと思います。
○岡部委員長 本当に製造ラインを止めてしまうと、1年たって、ではもう一回すぐに作りましょうと言っても作れません。それは、インフルエンザワクチンが中心になったときに如実に現れたことなのです。そういう意味でも維持は必要だと。当面の中長期的なディスカッションの結論が出るまでは、今の体制はやる。
ただ、H5N1については、リスクの観点から言えば、患者も少なくなっているし、局地的な発生になっているので、リスクから考えるとH7N9のほうが妥当ではないか。なぜならば、2017年は少ないけれど2015年、16年は出ていたし、このピークがあったのは2015年のときですね。そういう状況もあるので、今の時点で、それに備えておくということは妥当ではないか。
その株を選択するのならば、これは技術的なところでいろいろ作業班で議論していただいているので、ここに書いてあるA/Guangdongが候補株になるのではないかという作業班からのレコメンデーションがあるわけですが、この辺りについていかがでしょうか。小田切委員、何か加えることはありますか。
○小田切委員 大体、今、議論に出て情報としてシェアして、その上で議論されたので、特別な追加はありません。Guangdongという株が選ばれた理由ももう既に説明いたしました。
○岡部委員長 ありがとうございました。H7N9の状況については、いろいろな情報源もあると思うのですが、更に出していただいて、感染研や疫学センターでもそれをまとめてリスクアセスメントを続けていただければと思います。したがって、今日の結論は、すごく大きな切替えのところだと思うのですが、H5N1のリスクとH7N9のリスクを考えた場合には、直ちにH7N9のリスクが高いというわけではないけれど、比較の上ではH5N1よりもポッシビリティーは高いということであり、その備蓄の体制についてどのようにやっていくか、あるいは、ワクチンの種類や接種体制も含めて、その中長期的なことは議論の中に入っていくべきである。しかし、現状ではH7N9で、この作業班で決めていただいたA/Guangdongを候補株としてよろしいでしょうか。
                                   (異議なし)
○岡部委員長 では、まとめておいていただければと思います。そうすると、今日の議題の一番肝心な所である備蓄をどのようにするのかという方針については、議論を進められたので、その他として何か用意していますか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 資料については、最終的にまた委員長と御相談という形でよろしいでしょうか。
○岡部委員長 はい。それで、もし出せる新たなデータも含まれるようならば、それも含めていただいて整理するということで、要旨はこうだけれど、結論として書くことを少し相談しようということですね。そのほかについて何かありますか。
○押谷委員 今の議論の確認です。今後、これがどのようになっていくのかということは、今までの例で言うと抗インフルエンザ薬の備蓄も様々な委員会があり、これの親の委員会があったり、その上に何かあるのか知りませんが、内閣官房の有識者会議があって関係省庁何とか会議があったり、我々も理解できていないようなところの会議もいろいろあり、これまでもいろいろな議論の中でかなりの時間が掛かってきているという感じがしています。
これもそのようにステップを踏んでいかなければいけないと思うのですが、事務局では、一体、どういうタイムラインで考えられているのか。それによっては、先ほど言ったように今日の時点ではH7N9が優先順位が高いということになっていますが、最終決定が出されたときには全然違う状況になっている可能性も全くないとは言えないわけです。そういうことも含めて、タイムラインを確認させていただきたいと思います。
○岡部委員長 そのことも含めて、事務局から説明をお願いします。
○海老名新型インフルエンザ対策推進室長 今、押谷委員から御質問いただいたことと、先ほどお話のあったことは関連していますので申し上げます。今後については、多分、この後、委員長からお話されるかもしれませんが、この小委員会は、厚生労働省の厚生科学審議会の感染症部会に属しておりますので、感染症部会に御報告していただき、そこで御議論いただくということが、厚労省としての意思決定の最終的な形です。
今、押谷委員からお話がありました、これまで抗インフルエンザ薬の備蓄等に関して、内閣官房の有識者会議、医療・公衆衛生分科会等でも御議論いただいております。こちらについては、行動計画、あるいはガイドラインの改正を伴うものでしたので、審議していただいたという経緯です。今回のこちらについては、ガイドライン、行動計画に明記してある事項ではありませんので、審議という形になるのかどうかは別ですが、しかるべきタイミングで御報告という形で議論を共有すべきだと考えております。
今、参考で申し上げようと思ったのは、先ほど押谷委員から縷々、中長期的に検討すべきという御意見を頂きましたので、当然、事務局としては今後プレパンデミックワクチンの在り方について、きちんと整理した上で改めて御議論いただこうと思っております。
特定接種そのものについて御指摘いただきましたが、現状の特定接種の法体系で申し上げると、新型インフルエンザの特別措置法の第28条で特定接種を行いますという法律事項になっています。その在るべき姿を議論するとなると、厚生労働省だけではなくて、政府全体で議論すべき課題になってまいります。必ずしも、特定接種でプレパンデミックワクチンを使うわけではなくて、仮にプレパンデミックワクチンが使えなければパンデミックワクチンを使うという形になっています。そういうことも含めて、内閣官房の有識者会議等も含めて広く議論していただかなければいけないテーマだと思っています。
また、アセスメントのお話がありましたが、恐らく、押谷委員の言わんとしているところから言えば、新型インフルエンザ対策全般に対して関わる話だと思いますので、こちらも、厚労省だけではなくて広く政府全体で議論、検討していくべきテーマではないかと承知しております。こういうことも含めて、内閣官房の会議とよく連携して議論を深めてまいりたいと考えております。
○押谷委員 具体的に、もし備蓄の亜型を変えるとしたら、いつから変えられる見込みなのでしょうか。
○海老名新型インフルエンザ対策推進室長 今回、御議論いただいているのは、資料の1の4つ目のポツにあるとおり、平成31年度中に900万人分の有効期限を迎えます。この際、買換えと言ったら変ですが、新しく備蓄するに当たってどのようにしたらいいでしょうかということが今回のテーマでしたので、平成31年度中に整備するプレパンデミックワクチンから、この新しい方針に基づいて対応するということになるかと思っています。
○岡部委員長 もちろん、それは万が一という先生のおっしゃるような流動的なところがあれば、それは直ちに議論になって間に合うか間に合わないかということをやるのだろうと思います。今のステップを踏んでいくということで言えば、平成31年度の備蓄に関してはH7N9になる。ただし、それについては信澤委員あるいはその他からも出たように、効果、安全性、万が一のときの血清のストック等、そういう非常にサイエンスに関わるところもきちんとやっていってもらいたいということになるのだと思います。
押谷委員の話からも出た、今日はプレパン、パンデミックワクチンの議論ですが、もう1つ進んでいるのは、患者発生のリスクやその可能性のある患者数、そこは西浦先生がやっているのですが、その研究班の議論はどこでやるのか。それから、少しおっしゃったのは、ワクチンに代わるような形での抗インフルエンザウイルス薬の議論はどこでやるのかという具体的なこともあるのですが、その辺りもはっきりしておいたほうがいいと思います。分かりますか。
○海老名新型インフルエンザ対策推進室長 今、お話のあった、いわゆる被害想定に関わる部分ですが、委員長からお話がありましたように、北海道大学の西浦先生に研究を行っていただいているということになります。こちらの結果が出てまいりましたら、これは政府全体の行動計画にも被害想定は含まれておりますので、恐らく、厚労省のほうが最初になるのかもしれませんが、きちんと内閣官房の会議まで含めて御議論いただくという形になります。恐らくその場合には、この小委員会あるいはこの下の公衆衛生作業班でまず御紹介し、御検討いただくということになるかと思っております。
○岡部委員長 抗インフル薬もここですよね。
○海老名新型インフルエンザ対策推進室長 抗インフル薬に関する議論は幅がありますが、例えば、今、間近で申し上げれば、後発品が出てきた、あるいは新薬が出てきたことについては、当然、この新型インフルエンザ小委員会の所掌事務ですが、専門的事項については、この下にある医薬品の作業部会で、必要に応じて御議論いただくという形になるかと思っています。
○岡部委員長 ありがとうございました。あくまで確認の意味ですが、少しすっきりしたのではないかと思います。その際には議論をよろしくお願いします。あと、今、方針は決まりましたが、2も含めて今後のスケジュールみたいなものがありましたらお願いします。
○海老名新型インフルエンザ対策推進室長 まだ日程調整中ですが、近々開催される感染症部会に御報告させていただくという形になります。
○岡部委員長 まずはですね。
○海老名新型インフルエンザ対策推進室長 はい、そのとおりでございます。
○岡部委員長 引き続き、議論としてやっていかなくてはいけないことがあるので、その辺りは継続的に余り遅れることなく、是非、よろしくお願いします。あと、全体で何か、意見、注文はございますか。課長から何かありますか。
○三宅結核感染症課長 本当にいろいろな議論をありがとうございました。この1番と2番について、2番が中長期的検討課題となっていますが、霞が関文学的に言うと、これが全然やらないと取られがちですが、そうではないということはみなさんお分かりの上で議論していただいたと思います。私も本当はもっと早く議論したいのですが、とにかく、細胞培養事業が完成される、そこが本当の1つの大きな転換点だと思っています。そのために、一生懸命助走して議論を開始しておくことが重要だと思っており、そのときに今日頂いたいろいろな議論をしっかりいかして、より国民のためになるようなことができたらと思っております。本当にありがとうございました。
○岡部委員長 事務局からはよろしいですか。
○谷口新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 次回の日程については、決まり次第、また御連絡いたします。事務局からは以上です。
○岡部委員長 第12回厚生科学審議会感染症部会新型インフルエンザ対策に関する小委員会を終了いたします。どうもありがとうございました。