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第1回免疫アレルギー疾患研究戦略検討会 議事録
厚生労働省健康局がん・疾病対策課
日時
平成30年7月25日(水)15:00-17:00
場所
田中田村町ビル・貸会議室 8階8E会議室
議事
- ○貝沼がん・疾病対策課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより第1回免疫アレルギー疾患研究戦略検討会を開会いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。事務局を務めます厚生労働省健康局がん・疾病対策課の貝沼と申します。検討会の座長が決まるまで、議事進行を務めさせていただきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。
続いて、構成員の御紹介をいたします。お手元の構成員名簿に沿ってお名前を読み上げますので、誠に恐縮ですが、お名前を呼ばれた構成員の方は御起立いただき、一言御挨拶をよろしくお願いいたします。足立剛也構成員です。
○足立構成員 日本医療研究開発機構(AMED)で免疫アレルギーの事業等を担当している足立と申します。よろしくお願いいたします。
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 天谷雅行構成員です。
○天谷構成員 慶應義塾大学の皮膚科を専門とする者です。よろしくお願いします。
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 新井洋由構成員です。
○新井構成員 PMDAのレギュラトリーサイエンスセンターから来た新井と申します。現在、東大薬学部の教授も兼任しております。よろしくお願いします。
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 海老澤元宏構成員です。
○海老澤構成員 国立病院機構相模原病院臨床研究センターの海老澤です。よろしくお願いします。
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 園部まり子構成員です。
○園部構成員 NPO法人アレルギーを考える母の会の代表の園部と申します。患者の立場から代表して参加させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 玉利真由美構成員です。
○玉利構成員 東京慈恵医科大学分子遺伝学の玉利真由美でございます。専門は免疫アレルギー疾患のゲノム解析をやってまいりました。よろしくお願いいたします。
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 藤枝重治構成員です。
○藤枝構成員 福井大学の耳鼻咽喉科の藤枝と申します。花粉症及びアレルギー性鼻炎を専門としています。よろしくお願いいたします。
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 松本健治構成員です。
○松本構成員 国立成育医療研究センター免疫アレルギー・感染研究部の松本でございます。もともとは小児科医ですが、現在は基礎研究を行っています。どうぞよろしくお願いいたします。
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 山本一彦構成員です。
○山本構成員 理化学研究所の山本でございます。専門は内科学、免疫学、ゲノム科学でございます。どうぞよろしくお願いします。
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 吉本明美構成員です。
○吉本構成員 共同通信で編集委員をしております吉本と申します。医療関係の記事を書いております。どうぞよろしくお願いいたします。
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 続きまして、事務局を紹介いたします。厚生労働省健康局長の福田につきましては現在遅れております。申し訳ございません。健康局がん・疾病対策課長の佐々木です。同じく推進官の丹藤です。課長補佐の川名です。改めまして貝沼です。どうぞよろしくお願いいたします。
次に資料の確認をいたします。議事次第、座席表、構成員名簿、資料1「開催要綱」、資料2「免疫アレルギー疾患研究戦略の策定について」、資料3「アレルギー疾患対策の研究基盤の構築について」、資料4「免疫アレルギー疾患研究戦略の方向性について」、参考資料1「アレルギー疾患対策基本法」、参考資料2「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針」、参考資料3「免疫アレルギー政策/実用化研究の取組の状況について」、参考資料4「免疫アレルギー研究10か年戦略策定に資する報告書」、こちらは資料3「アレルギー疾患対策の研究基盤の構築について」の全文の報告書となります。以上です。資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお申出ください。
以上をもちまして撮影を終了し、カメラを収めていただきますよう、御協力のほどよろしくお願いいたします。
それでは、議事(1)「免疫アレルギー疾患研究戦略検討会の開催等について」に進ませていただきます。開会に当たり、本委員会の趣旨について御説明をさせていただきます。まず、資料1「免疫アレルギー疾患研究戦略検討会開催要綱」を御覧ください。こちらの1の趣旨の途中、中段から書いているように、平成26年6月に「アレルギー疾患対策基本法」が成立し、平成29年3月に「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針」が策定されました。これらの中には、調査及び研究に関する今後の取組が必要な事項として、「国は、疫学研究、基礎研究、治療開発及び臨床研究の中長期的な戦略の策定について検討を行う」と規定されました。本検討会においては、これらを踏まえて免疫アレルギー疾患領域における研究の中長期的な戦略策定に向けた検討を目的に開催するものです。
2の検討事項としては、免疫アレルギー疾患研究戦略の在り方について、そのほか免疫アレルギー疾患の研究に関することとさせていただきます。
さらに、3のその他ですが、本検討会は厚生労働省健康局長が別紙の構成員の参集を求めて開催します。また、本検討会には、構成員の互選により座長を置き、検討会を統括していただくこととさせていただきます。以上です。
続いて、今説明しました資料1の「その他」の(2)にあるように、構成員の互選により座長を選任させていただきたいと思います。どなたか御推薦はありますでしょうか。
○玉利構成員 本領域の研究を長年にわたり進めてこられました山本構成員を推薦いたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 ただいま玉利構成員から、座長に山本構成員を推薦する旨の御発言がございましたが、いかがでございましょうか。
(異議なし)
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 御異議がないようですので、山本構成員に本検討会の座長をお願いしたいと思います。山本座長、お手数ですが座長席にお移りいただきまして、議事進行をお願いいたします。
○山本座長 山本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。まず初めに、規定にはありませんけれども、慣例によって、座長に事故があることもありますので、座長代理を指名させていただきたいと思います。事故があったとき、あらかじめ指名された構成員がその職務を代行する必要があるということで、短期間にまとめるということがありますので、その関係で座長代理を作らせていただきたいと思います。恐れ入りますが、天谷雅行構成員にお引き受けいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○山本座長 ありがとうございます。御異議がございませんので、天谷先生に本検討会の座長代理をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
引き続き、議事を進めていきます。「免疫アレルギー疾患研究戦略の策定について」に移ります。まずは事務局から資料2の説明をお願いします。
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 資料2をお手元に、また資料1の開催要綱、さらに参考資料1の基本法、参考資料2の基本指針をお手元に御用意ください。
まず2ページを御覧ください。厚生労働省におけるアレルギー疾患に関してのこれまでの取組を示しています。平成17年、平成23年に厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対策委員会が開催されており、そちらでまとめられた報告書を基に、今後のリウマチ及びアレルギー疾患に関しての取組の方向性などがまとめられ、それに基づいて取組を進めてまいりました。
3~5ページは、先ほども紹介したように、平成26年に成立した基本法、そしてまた平成29年に告示された基本指針に基づいて、現在アレルギー疾患対策の総合的な推進を図っているところです。
5ページ、6ページを御覧ください。基本指針における研究に関する事項として、特に基本指針の資料の12ページから14ページに、その研究に関しての全文が書かれていますが、こちらの第四のアレルギー疾患に関する調査及び研究に関する事項の中で、「今後の取組の方針について」という中で、有病率の高さ等により、社会全体に与える影響の大きさ、そしてまた未解明な課題の多さ、発症並びに重症化要因の解明、ガイドラインの有効性の評価、薬剤の長期投与の効果や副作用など、これらを基に疫学調査、基礎病態解明、治療開発、臨床研究の長期的かつ戦略的な推進が必要と示されました。
さらに13ページの(2)にあるように、今後取組が必要な事項として、疫学研究、基礎研究及び治療開発、そしてまた臨床研究、これらについて中長期的な戦略の策定について検討を行うというように明示されています。
めくっていただきまして、これらを受けまして私どもとしましては、資料2のスライド7ですが、免疫アレルギー疾患研究戦略(仮)策定という中で、平成29年度厚生労働特別研究事業の中で「アレルギー疾患対策に関する研究基盤の構築」という課題の下、玉利真由美先生に主任研究者をお務めいただいて、アレルギー疾患に関連する以下の7つの学会の方に参画していただきながら、班会議の中で検討をしていただきました。
平成30年の3月にこの報告書を取りまとめていただき、今回その報告書を基に、この免疫アレルギー疾患研究戦略検討会を開催していくことになっております。この検討会の中で議論を進めていただきまして、免疫アレルギー疾患の研究戦略を取りまとめていきたいと考えております。
8ページ目のスライドです。「今後の検討会の進め方(案)」として、まず第1回目は本日でございますが、免疫アレルギー疾患研究戦略検討会の開催について、さらに研究班「アレルギー疾患対策の研究基盤の構築」の報告書について、そして研究戦略の方向性についてとして、3つのAction Planについて御議論いただければと考えております。そしてまた8月下旬の第2回には、私どものほうから骨子(案)を示し、更には研究戦略のGoal及びVisionの設定を御議論いただければと考えています。第3回は9月下旬に予定をしてございますが、報告書の取りまとめに向けて取り組んでいきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
○山本座長 今回のこの検討会の策定についての今までの歴史、今回のミッション、今日の第1回、それから第2回が8月下旬、第3回が9月下旬、この3回でまとめるという方向です。まずは全体について、構成員の方々から御意見があれば出していただきたいと思います。「短すぎる」という意見があってもよろしいと思いますが、余り延ばしても仕方がありませんので、手短にきちんとまとめようというのが、今回の骨子であろうと理解していますが、いかがでしょうか。よろしいですか。もしなければ進めさせていただきたいと思います。
それでは、今事務局から説明があったとおり、平成26年の法と平成29年の基本指針が、今回の検討会の骨子ですので、ここにいつものっとって議論することが重要であると思われます。この研究戦略の策定に当たって、特別研究班で研究成果を基に議論を進めていくことということで、玉利先生を中心として特別研究班ができたということです。
それでは、議事(2)「アレルギー研究10か年戦略策定に資する報告書について」に進みます。今、事務局から説明があったとおり、昨年度末に玉利構成員が研究代表者としてまとめられた、参考資料4「免疫アレルギー研究10か年戦略策定に資する報告書」の内容について、玉利構成員に資料3についての御説明をお願いします。
○玉利構成員 資料3に基づいて御説明いたします。この研究班は昨年度の8月1日より発足しまして、アレルギー対策基本法が成立したということを受けて、平成31年度から免疫アレルギー疾患の有意義な研究を推進するための基盤形成として、研究戦略を適切に立てようという目的の下、行われました。7つの学会と連携して行われており、一つ一つの学会を訪問して趣旨を説明し、各学会よりこの研究班に参画する研究協力者を2名ずつ推薦いただきました。原則として55歳程度の教授クラスの方、そしてそれを引き継ぐ目的もあり、45歳程度の若手クラスの計2名の研究者を御推薦いただいております。
スライド3にいきます。このスライドには、その研究協力者及び分担者の氏名が書かれております。各学会の理事長より御推薦いただきました研究協力者と分担者によりまして、複数回の議論、そしてメールによる検討を重ねまして、報告書を作り上げてきました。
スライド4に、本報告書作成までの経緯が書かれております。まず8月に、第1回の研究分担者ミーティングを行い、アンケートを行うということを決めまして、それぞれの研究協力者の方々にアンケートを行いました。「ヒト・モノ・コト」に関する現状把握を中心にキーワードを出していただきまして、第1回検討協議会で検討して、年度末、12月から1月にかけて、各研究協力者や分担者にレポートの作成をお願いしまして、小グループミーティング、そして第2回協議会と議論を重ねまして、報告書にまとめております。
スライドの5番目も、その大きな流れが書かれております。10月の第1回検討協議会である程度のキーワードの議論を行いまして、絞り込むべき課題についてレポートを作成していただき、議論を重ねて提言書を取りまとめております。この例となったのが、「がん研究10か年戦略」でありまして、がん研究10か年戦略は新たな研究戦略として8つの研究分野が重点課題としてまとめられております。このような戦略を見本として、我々もレポート作成を行ってまいりました。
スライドの7番に移ります。まず初めに行ったアンケートですが、ヒト・モノ・コトの3つに大きく分けて、それぞれ横断的問題、垂直的問題、国際的問題を念頭に、現状把握、そして課題を抽出していただくこと、また将来の志や展望を記載していただいて、アンケートを行いました。
そのアンケートを1枚のスライドにまとめたものが8番目のスライドです。それぞれのヒト・モノ・コトについて、人材育成とか、患者からの希望や意見等をうまく取り入れられる仕組みの構築であるとか、診断の推進、適切な治療の開発、基盤整備等、様々な課題の提案がありました。これを第1回の検討協議会にて話し合いまして、それぞれを8つのAction Planに分けて、それぞれ小項目に分けて、どの課題について優先すべきか検討しました。全部できればいいかとは思うのですが、最終的には26の小課題から、研究分担者を中心にして点数を付けて、最終的に12個の課題に優先課題を絞り込みました。
この絞り込んだ12課題ですが、その中には入らなかった内容についても、レポートについてたくさん盛り込まれておりますので、そこに書かれている26の小課題はなるべく取り込むような形でレポートが書かれています。
スライドの10番目は、3つのAction Plan、そしてそれぞれ小項目4課題ということで、まとめております。
そして最後のスライドですが、10年後のVisionとGoalということで、報告書にはそこに挙げられているとおり、全国民の一人一人の貢献と国内外の産学官民連携に基づく、ライフステージ内ごとPrecision Medicineの実現により、免疫アレルギー疾患の減少と重症患者死亡の根絶を目指すということを挙げました。また、Goalも3つ設定しているのですが、特にGoal1の免疫アレルギー患者数の10%の減少という部分は、今後この検討会でいろいろと議論を重ねていけたらと考えております。以上になります。
○山本座長 ありがとうございました。この報告書をまとめていただいた玉利構成員は研究代表者でいらっしゃいましたが、そのほか5名の研究分担者の方々も構成員として今回の議論に参加していただいていますので、何か議論することがあれば、議論したいと思います。今回の資料3については、次の議事(3)の「免疫アレルギー疾患研究戦略の方向性について」にも関係しますので、取りあえず大きな議論はしないでこのまま進めさせていただいて、それぞれについて、この後で議論をしたいと思います。それでは、議事(3)「免疫アレルキギー疾患研究戦略の方向性について」に移ります。資料4「免疫アレルギー疾患研究戦略の方向性について」ということで、事務局より御説明をお願いします。
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 お手元に資料4、参考資料2の基本指針を御準備ください。資料4はまず2ページ目です。特別研究班より報告書に示された3つのAction Planそれぞれについて、広く分かりやすい形での記載について、御提案させていただきます。まず2ページのⅠ.「先制治療等を目指す免疫アレルギーの本態解明に関する基盤研究開発」として書かれていましたが、そちらについては「先制治療(予防)や新しい治療につなげるための基盤となる研究を推進する」ということで、なかなかまだ本態解明が進んでいない本領域について、それらの解明を進め、そこから先制治療、予防や新しい治療につなげていくということを目標とするということが分かる文章にしております。こちらにつきましては、基本指針の13ページの(2)のア及びイに対応したような内容と考えております。特に(2)の中でも、疫学調査をしていくこと、更にはイのような免疫療法をはじめとする根治療法の発展及び新規開発を目指す、本態解明の研究を推進するといったところに対応していると考えております。
こちらのⅠ.の中では、Ⅰa.のDeep-phenotyping、マルチオミックス統合解析等に基づく免疫アレルギー疾患の多様性の理解と層別化に資する基盤研究、Ⅰb.のPrecision Medicineに立脚した将来の先制治療の実用化を目指す開発研究。これらのように、免疫アレルギー患者一人一人の情報をきちんと収集し、どうすることによってより詳細な研究推進を可能とするのか。そしてまた、その研究推進をされた結果、得られた成果に基づいてグループ分けされた患者それぞれについて、層別化をしていくといったことが記載されています。更には、1Cと1Dのように、免疫アレルギー疾患の本体に注目した本態解明を目指す研究には様々な分野の統合が必要であるといったことが書かれています。
3ページ目に移ります。Action PlanⅡ.免疫アレルギー研究の効果的な推進と評価に関する横断研究開発として、国内外のあらゆる力を結集して研究開発を進められるようにする仕組み作りと記載しています。こちらについては、指針の12ページの第四の(1)の中に示されている内容や、14ページの(2)のウの内容、そしてまた人材育成については、12ページの第三の(2)のキのような、人材育成に関する項目に対応している内容かと思います。
特に、Ⅱa.のPatient and Public Involvementの推進に関する研究としては、免疫アレルギー患者などにも研究グループの一員として主体的に加わっていただき、多様な視点を取り入れることで、特に介入研究などにおいて、効果的な研究開発が進められるようにする。そしてまた、Ⅱb.のような免疫アレルギー領域におけるunmet medical needsの調査研究開発として、現在進められている研究や既存の枠組みでは見落とされていることや、実際の患者の生活の質の向上に十分につながっていない状況がないか等を洗い出していく研究も重要であるといったことを記載いたしました。更には、Ⅱc.に関しては、臨床研究基盤をどう構築していくか、更にはⅡd.のような国際連携、そしてまた人材育成に関してどのように検討していくかということが記載されています。
続いて4ページです。Action PlanⅢ.ライフステージと免疫アレルギー疾患の特性に注目した重点研究開発としては、年齢によって病気や症状が変わっていく特徴に合わせて診断や治療を開発すると記載しました。こちらは幅広い内容になっているので、基本指針の13ページ、14ページの研究に関する内容の(2)のア、イ、ウの全てに関わってくるものです。特に、Ⅲa.の母子関連を含めた小児免疫アレルギー疾患の研究開発、Ⅲb.の高齢者を含めたAdult-onset免疫アレルギー疾患研究開発のように、様々な世代における疾患に対して重点的に研究をしていくこと、更にその中でもⅢc.のように、重症や難治性の疾患、更にはⅢd.の希少疾患と関連する疾患、これらについてもそれぞれの研究をどう進めていくか、それについて記載をさせていただきました。
続いて、資料4の5ページに移ります。この研究戦略の策定に資する文言です。基本指針に書かれた疫学研究、基礎研究及び治療開発、臨床研究、それぞれの中長期的な戦略の策定について検討を行うというところを、もう一度示させていただきました。それらに基づいて、研究班のほうで示していただいたAction Plan1、Action Plan2、Action Plan3のそれぞれに対応する、Goal1、Goal2、Goal3、そしてまたそれらのGoal1、Goal2、Goal3を合わせた結果、新しい研究戦略のVisionを皆様で再度御検討いただければと思い、このように示しております。
6ページです。先ほどの繰り返しになりますが、免疫アレルギー研究戦略の全体像に関して、Action Planに基づく「Goal」及び「Vision」はいかがでしょうか。更に追加すべき事項はないでしょうか。例えば、免疫アレルギー疾患を有する者の生活(就労、教育)の質の向上に資する社会の構築に向けての研究などは必要ではないでしょうか。更には、研究分野での国際連携については言及されておりますが、がんのように患者の国際連携を進めていく必要はないでしょうか。そういったことを御議論いただければと思います。以上
○山本座長 ありがとうございます。本検討会のこれからの方向性について、事務局からの案という形でプレゼンしていただきました。最初のⅠ、Ⅱ、Ⅲの3つのAction Planについて、玉利先生の研究班報告書で示された小課題をコンパクトにまとめた資料として、今回提示していただきました。
これをたたき台として議論をして、内容を充実させていきたいと思いますけれども、まず全体として、これでいいかどうかという議論をしてみたいと思います。どうでしょうか。最後のほうに「例えば」ということで、免疫アレルギー疾患を有する患者さんの生活の質というものを取り上げたらどうかということもあります。それから研究者の国際連携も難しいのですが、患者さんの国際連携はもっと難しいかもしれないので、この2つも議論すべきだということであれば、なるべく早めに入れていきたいと思います。また、それ以外に追加すべき項目なども。まずはⅠ、Ⅱ、Ⅲについて個別に議論をしていきますので、その後でもよろしいのですけれども、何かすぐに気が付くところがあれば言っていただきたいと思います。どうでしょうか。
○足立構成員 前身となる研究班で分担を務めておりました、AMEDプログラムオフィサーの足立と申します。研究班で初めに議論をした際に、この研究計画が何年を目指すものなのかというところから議論をしたので、その点について初めに確定させておいたほうが、今後の議論が進めやすいかと思い、発言させていただきました。
資料3とアジェンダ2においては、免疫アレルギー研究を10か年戦略ということで、10年を目指す研究というのが明記されている一方で、本検討会のタイトル及び議事の3においては、まだ年数及び開始の時期というのが。
○山本座長 そうです。中長期とあるだけですね。
○足立構成員 まだ明確に定義されていない状況かと思います。この点で、なぜ10年を初めに考えられたのかという経緯について、大きく3点発言させていただければと思います。まず1点目は、世界的な研究戦略において、多くのものが10年を目指して構築されているものが多いということです。米国のNIH(National Institutes of Health)の各センターの研究戦略は、10か年戦略をベースにしているものがありますし、各ファンディングエージェンシーが合わさって構成されるような研究コンソーシアムにおいても、多くのものがやはり10年を目指した研究戦略になっております。
2点目ですが、我が国の研究の競争的資金によって推進される研究プロジェクトは、一部のものを除き、多くのものが3年単位の研究プロジェクトになっております。この点から、研究戦略を短期、中期、そして長期に考えていく上で、やはり3年×3年の9年というものと走り出す期間の1年を合わせた10年というのが、比較的イメージしやすい期間になるだろうということで10年が考えられました。
最後に、構成されるメンバーを考える際に、今後何年間か長期的に見ていただける方に協力者として加わっていただくという観点で、45歳程度の比較的若手の方に加わっていただくと。そして、その方々にこの研究戦略を最後まで見届けていただきたいという観点を含めて、資料3が構成されておりましたので、我々としては上記3点を併せて10か年という点についての妥当性を考えてきたわけです。この場において、事務局及び構成員の方々から、この期間についてのコメント等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
○山本座長 確かに「中長期」という言葉があったのですが、それが一人一人違うイメージになってもいけませんね。確かに短期ではなくて中長期ではあるけれども、それがどのぐらいであるかということについて、もう少し具体的にという足立構成員のコメントでした。どうでしょうか。世界的にも10年であるし、競争的な資金・研究費が3年だと。3年は短いという意見もありますけれども、欧州では5年、アメリカでは3年が基本だと思います。欧州の5年というのは、2期になれば10年になるということですね。それから、研究者の年齢もだんだん高齢になってきますので、45歳の方が始めたとして、10年ぐらいで55歳でちょうど脂が乗ってくるということで、社会に対しての責任が十分出てくる、そういう1タームという意味で、10年がいいだろうということだと思います。
5年のほうがいいという人と、15年がいいという人と、20年がいいという人がいると思いますけれども、どうでしょう。その中で何か御意見はありますか。ここで決めたからといっても、政府の方向もあるでしょうけれども、取りあえず今回の研究戦略については、一応10年を中心に考えているということは表明してもいいかと思います。
もし御意見がなければ、既に構成員研究班のほうで以前に検討しているわけですから、それがリーズナブルであれば、今回も10年を一応目標として考えるということで進めさせていただきたいと思います。そのほかにありますか。患者さんの国際連携について、園部さん、どうですか。
○園部構成員 その前に、私の意見を言ってもいいでしょうか。海外の患者さんがアレルギー疾患について、どういう認識を持ってどう自己コントロールに取り組んでおられるかというのは、今まで国際的な勉強の場になかなか恵まれていませんので、もちろんできたらいいなとは思います。一方、この研究戦略全体を見ると、来年で20年になる母の会の相談活動の中で浮かび上がってくるのは、ここに来てくださっているような先生方を受診すれば、患者さんたちはアレルギー症状のコントロールが付いていくのですけれども、実は多くの実地の医療はそうではない現状があります。今ある、実践段階と言われている、きちんと受ければ慢性疾患のアレルギーも症状をコントロールできる、クオリティーの高い、今のガイドラインに沿った治療を受けていくことで、多くの患者さんが健康を回復できて、普通に社会生活を送っていかれるにもかかわらず、標準治療を受けていない人のほうが多いという印象を持っています。特に困っている方々はですね。
この法律全体を動かしていく中で、各地域の病院が決まって、これからお医者さん方へガイドラインの医療の均てん化が進められていくわけです。ホームページが充実してくることにはなっておりますが、やはり患者側が正しい医療を理解し、エビデンスに基づく医療を受けていくためには、患者たちも勉強できるチャンスがほしいですし、今の医療を知っていくチャンスがほしいのです。そういうことについての長期的な展望が、この中に盛り込まれていないと思いました。
実践段階の医療を受けることで重症化も防げるし、専門医の先生に出会えていない方で、今は重症と思っている人が、実は標準治療を受けていないという場合もあるわけです。そういうことで家庭に引きこもってしまって、医療不信、薬不信になってネグレクトになってという人たちがいるのです。それで法律ができたと理解しておりますので、是非、今困っている、現段階で困っている患者たちもどんどん新しい知識を得て賢くなって、下手な医療には手を出さない、適切な医療をチョイスできる力を付けていくような戦略も必要かなと思います。
○山本座長 非常に大事な点だと思います。策定についての今日の資料2に説明があったとおり、アレルギー疾患対策基本法の指針の構成は1~5まであって、基本的な事項からアレルギー疾患に関する啓発、知識の普及及びアレルギーの予防のための施策というのがあります。その中で、今回のこの検討会の中心は4です。調査及び研究ということですが、それに関係して、知識の啓発は非常に重要だと思います。それをどういうようにこの研究の中に組み入れていくか。それは疫学研究などにも非常に結び付いていくので、これは違う、2だというのではなく、これも視点に入れながら疫学研究を進める必要があるかと思います。
それから、後でCentral IRBという考え方も議論をしなければいけません。例えば、治験をやったときの治験の委員会が均てん化していなくて、地方によってというか、大学によって全然決定事項が違ってきてしまうということもあります。そういう議論もしていく中で、患者さん方一人一人が知識を均てん化、標準化していただくことが非常に重要だと考えます。どういうように組み合わせていくかについては、また途中で議論していきたいと思います。ありがとうございました。そのほかに何かありますか。
○海老澤構成員 国際連携のところです。医学の世界だけではないかもしれませんけれども、国際的な動きの情報の中に日本がアジアの代表として入っていくというのが、今だとシンガポールが入ってしまうということで、日本を素通りしてしまうということが、医学では結構起きているのです。それを何とか食い止めなければいけないなと、国際的な舞台に出ていくと感じることです。国際共同研究みたいなものに乗り遅れないように、常に情報に目を光らせていくことも、すごく重要かなと思います。それがまず1点です。
もう1つは、国際的なグローバルな製薬会社などが国際共同治験をするときも、日本が対象に入らなかったりするということが、最近はよく起きてしまっています。その1つが、日本の製薬会社が、例えば国民皆保険制度に準拠している、要は縛られて薬価がきちんと付かなかったりすると、グローバルな会社がペイしないと判断して、治験の対象外となってしまうということも起きます。アレルゲン免疫療法というのは、アレルギーの根幹的な治療として今は位置付けられているのですけれども、例えば蜂毒のアナフィラキシーに対しての治療は、日本に実際に入れようと思っても、まだ入ってきていないのです。どうしてかというと、その前に行っているダニとかスギの免疫療法で製薬会社が十分なメリットを得てないというところがあって、非常に臆病になってしまっているという状況があります。日本にそういうものが入ってこないことによって、いつまでたっても予防医学、例えば蜂のアナフィラキシーを予防していくことが実行不可能になってしまっている。どうやってそういうバリアを克服していくかというのが、非常に重要ではないかと思います。
ですから、国際的な情報を常にキャッチしていくということと、外国と連携していこうといったときに、日本でバリアになってしまうようなことをどうやって取り除いていくかという、この2つの視点が少し入っていないような気がしたので、意見を述べさせていただきました。
○山本座長 今日は各項目について深く議論すると言うよりも、そういう問題があるという指摘をして、次回ぐらいにそれを取り上げるということになると思います。国際的な情報のキャッチアップと、日本の中に存在するバリアについても、議論していきたいというように思います。よろしいですね。誰もが確かにそうだと思いますので、それについては検討項目に入れておいていただきたいと思います。そのほかにはどうでしょうか。
○天谷構成員 Action Planをやった後、そのPlanがどれだけ効果があったかということは、必ず社会的に示さないといけないと思うのです。その中で、例えばスライド5のGoal1に、「アレルギー患者数の減少」というのがあります。この患者数というのをどう捉えるかです。アレルギーの場合は、1回でもアトピー性皮膚炎と診断されれば、基本的にはコントロールされていてもアトピー患者さんですし、患者数の減というのが、そのまま数字に表わしにくいところがあるのではないかと。
例えば、アナフィラキシーにしても接触皮膚炎にしても、抗原が分からないためにある頻度で起こってしまうのです。抗原を同定してその抗原を避ければ、実際にアレルギー症状は起こらない。しかし、その患者さんはアレルギー患者として数えられてしまうのです。実際に患者数の減少というのは、もちろん大切ですけれども、アレルギーを克服して、アレルギーに苦しんでいない時間だったり、何らかのファクターだったりをきちんと設定し、それを数値化することも必要ではないかと思います。
例えば皮膚科領域だと、アトピー性皮膚炎でスクラッチしている時間とか回数を、もっと簡単にモニターできるようなディバイスがあれば、実際にアレルギーで悩んでいるものを数値化できるのです。ある時はしょっちゅうかいているのが、ある治療をしてその治療が奏功すれば、ほとんどかかなくなっていると。それを数値化するようなモニターのディバイスなども含めて、そういうものを数値化していくファクターを決めていくと。そうすれば社会に対し、アレルギー戦略に対して克服したことを、もう少し見えやすくできるのではないでしょうか。そういうものを明確にしながら、Action Planをしていくことが非常に大切ではないかなと思います。
○山本座長 確かにある時にスギ花粉が大量に出てくると、有効な治療をしていても患者さんの数は増えてしまうことがありますよね。それに比べて、アレルギー症状をどういうようにコントロールしたかというのを、国民全体として数値化することができれば、違う尺度になりますので、そちらのほうが目標としては達成しやすいかもしれないということですね。
○吉本構成員 今の御意見に関わるところです。効果の検証をする際に、日本で患者さんが何人いるかという基本的な情報が大変少ないのです。今がどうなっており、結果を測る時点ではどうなったというきちんとした尺度を、あらかじめ決めておくということをしていただきたいのです。それが社会の理解を得る上で、すごく大事だと思います。今、先生がおっしゃったような新しい方法を導入する場合、それ自体はとても素晴らしいと思うのですけれども、ある時に作った尺度で測って、それが5年後、10年後にはなくなっているということが、私どもが取材をしていると往々にして経験するところです。何か尺度を採用する際には長期的に続くもので、時間的な比較が可能であるものを選んでいただきたいということを、是非お願いしたいと思います。
○山本座長 ただ、尺度というのはその時にいいと思って、しばらくはそれを使っていても、10年後にはもっと素晴らしいものが出てくると、そちらに移ってしまうということがありますよね。そこのところはなかなか難しいですけれども、我々が今の時点で考えられる一番いいだろうと思うものを、なるべく採用するという姿勢ですよね。では、全体として尺度も含めて天谷先生から。
○天谷構成員 今、吉本構成員が言ったのはそのとおりで、やはり非常にシンプルな尺度にしておかないと。複雑にしてはいけないと思うのです。ですから非常に簡単に、例えば皮膚炎だったら「掻く」ということが非常に大きなファクターなので、それを数値化なり時間なりで簡単にモニターできるようなことを想定し、それぞれのアレルギー疾患で苦しんでいる時間、苦しむ程度というものがどれだけあるかというのも、1つの大きな研究テーマではないかと思います。これが余りテクノロジーに寄ってもいけないのですけれども、最近では生体モニタリングがかなりいろいろとできるという現状もありますので、そういうものをうまく利用して、始める前の10年と終わった後の10年できちんと比較できるようなことを、ぶれずに想定していくことは、すごく大切な観点かなと思います。
○山本座長 そうですね。国際化を考えると、日本より進んでいる所もあるわけですけれども、まだまだ日本に比べて遅れている所もあって、そこの方たちの水準に合わせると、また尺度が劣化してしまうということもあるわけです。それから、アメリカなどでトップでやっている所にはものすごいお金が掛かるけれども、今よりも素晴らしい数値が出ます。しかしその数を増やすと、とたんに研究費が出なくなってしまうとか、いろいろな問題があると思うのです。ですから、何でも全てベストを目指すのがいいかどうかということも含めて、その辺はまた議論をしたいと思います。
アレルギー疾患の患者さんの数だけでなく、どういうように現在のトータルなアレルギーの状態を把握するかということについての研究ですね。本領域の中心は研究ですので、それについても少し議論をしていきたいと思います。余りたくさん項目があっても無理かもしれませんけれども、今挙げていただいた項目については、一応このぐらいでよろしいでしょうか。「例えば」と言って挙げていただいたところについては、患者さんの質も含めて異論がないから言わなかったのでしょうけれども、重要だと思いますので、これも含めて検討項目としたいと思います。どこまで検討できるかは分かりませんが、一応検討して、どういう方向という結論を出す方向にいきたいと思います。
それが全体としてで、あとはⅠ、Ⅱ、Ⅲで、その後のAction Planと一緒です。Action PlanもⅠ、Ⅱ、Ⅲ、GoalもⅠ、Ⅱ、Ⅲで、それらが合わさってニュービジョンになっていくということです。このⅠ、Ⅱ、Ⅲのそれぞれについてですが、Ⅰは先制治療や新しい治療につなげるための基盤となる研究を推進するということで、4つの項目があるわけです。この1個1個について、まず議論をしていきたいと思います。どうでしょうか。ここでは疫学研究、基礎研究、応用研究というところが重症になるのを未然に防ぐと。
「Precision Medicine」という言葉は、もちろん御存じだと思います。個別医療というのは、今はものすごく高価なってしまうだろうという反省からPrecision、グループ分けをして、グループに適した治療をしていこうというのが最近の考え方です。それから本態解明です。宿主要因や外的要因という研究、それから新しい考え方として臓器関連です。例えば腸と免疫、腸と神経という関連もありますので、そのような新しい考え方についてもどうでしょうか。何か御意見はありますか。
○藤枝構成員 アレルギーの疾患に関しては、症状がすごく重症であっても、例えば花粉症がすごく重症だけれども、抗ヒスタミン薬を飲むとスッと治ってしまうという方もいれば、本当に重症で何をやっても駄目な治療抵抗性という方もいらっしゃる。同じことがアトピー性皮膚炎でもあるのです。重症だけれども、死にはつながらないと。しかし喘息だと、治療抵抗性では死につながったり、薬剤アレルギーは重症でも何でもないけれども、一旦起こると死につながるということがある。重症と治療抵抗性と難治化という3つが、ここで混同してしまっているので、これをもう少し明確にしてやったほうが、先ほどのGoalについてもいけるのです。Ⅰb.に関しても重症化と言うよりは、治療抵抗性を未然に防ぐような内容だろうと思うので、その辺をもう少し明確にしたほうがいいのではないかと思います。
○山本座長 「重症」という言葉で言わせていただくと、Ⅲのほうに重症が出てきています。そこで「重症」という言葉だけでなく、「治療抵抗性」というのを入れるということですね。これは重要な指摘だと思います。Ⅲでもう一度議論をしたいと思います。
それと、Ⅰの疫学研究ですね。言葉で言うのは易しいのですけれども、本当にやるのは非常に難しいのです。しかし、やっていくことが非常に重要です。特にこの中で患者さん一人一人、国民全員が関与するということになってきますと、Ⅱにも関与してきて、疫学研究をどういうようにやっていくかということです。先ほど園部さんが言われたとおり、患者さんへの啓発も含めてどういうようにやっていくかというところが重要です。
疫学研究をどうしようかということだけでも喧々諤々、なかなか1回や2回では終わらないのですが、とにかく疫学研究の重要性をこの研究戦略の中でうたい上げるようにするかどうかです。「重要じゃないよ」と言う人は恐らくいないと思うので、それをこの戦略の中にどのぐらい書き込むかというところかと思います。
○新井委員 ちょっと気になったと言いますか。表面上、マルチオミックスを使った解析で層別化とか、恐らくそれに基づいてPrecision Medicine等が始まってくるのでしょうけれども、日本の現状ではなかなか。もちろん今後の方向性ですので全然あれですけれども、データの統一化とか、今回の場合は特に患者の症状だけでなく、環境要因とかいろいろなものが、統一したデータとして統計処理できるところに持っていくというのは、免疫領域だけでなく、あらゆるほかの領域でもみんなすごい苦労をしている状況ですから。もちろん、目標はあってもいいと思うのですけれども、バリアは結構高い所にあるかなと感じています。
○山本座長 確かにそうだと思います。しかし天谷先生の所で進められているようなマルチオミックスというか、いろいろディメンションの違うものを統合して出てくる最終的なものになってくると、随分縮約されていって、幾つかになって出てくる。それを広い疫学的なもので調整するのも可能です。最初から全部を調整するというのではなく、例えばアトピーの方の1人から取ってくるたくさんの要素をずっと縮約して、これとこれとこれだけだというようになれば、それを疫学にすればいいということになります。ですから、いろいろなやり方があると思います。最初から全部投げてしまうと、相当大変ですよね。確かにそうだと思います。Precision Medicineについてはどうですか。何か御意見はありますか。
○足立構成員 恐らくⅠb.のポイントというのは、大きく2つあると思います。1つは、Precision Medicineをどのようにやっていくかという研究の点です。もう1つは、恐らく先制治療にいかにつなげていくかということが重要な点になると思います。先ほど座長がお話しされた、一人一人個別のものがなかなか難しいという中で、個々のグループ分けした方々に対して適切な治療を見つけていくというところが、初めの野心的な目標になると思います。この10か年の戦略で、更にその先の野心的な目標を設定すると、適切な治療だけではなく、発症する前若しくは治療抵抗性を獲得する前、更に悪くなってしまう前に止めていく治療に結び付けられるような研究成果を、この中から得られるかどうかという点になるかと思います。「Precision Medicine」という言葉が一人歩きするのではなく、何を目標にするかというのが、Ⅰb.の点でも明確になることが重要になるかと考えられました。
○山本座長 確かに多くの疾患領域で、先制治療や予防ができないかという議論があるのですけれども、恐らく多くの疾患の中で、アレルギーが一番きちんとやればできるかもしれないというところがあります。ですから、ここのところでうまく、こういう方向も大事だというのを強調することによって、幾つかのプロジェクトが立てば。例えばゲノムの情報と、もう1つ何かの情報で層別化できれば、その方たちはこのアレルゲンについては気を付けろ、そこにばく露しないように気を付けろということだけでも、大分発症が違ってくるだろうと思います。
簡単に言えば、花粉の量が減れば花粉症が大きく減るというのは間違いないわけです。それはなかなか難しいことは難しいのですけれども、その中ではもちろんアレルゲンを減らすことだけでなく、宿主側の要因を決めることによって、このグループについては極力こうしたいということができれば、かなり先制医療になります。予防的にある一定期間だけ、ある薬を飲むというのでもいいのかもしれません。一般に今はそうしています。しかし、それをもう少し明確にするというところを含めて、先制治療というものをPrecision Medicineから持ってくるというのは、確かに重要かもしれません。ここを強調することも非常に重要だと思います。どうしたらいいかというぐらいは、議論をしてみたいと思います。
それに合わせて、Ⅰc.の宿主因子と外的因子。明らかにアレルギー疾患は、間違いなく宿主因子と外的因子によってという、その両方が残念ながら見事に合わさってしまって発症する疾患なのです。花粉症もそうでしょうけれども、特に喘息など、100年前はほとんど患者さんがいらっしゃらなかったわけですよね。それがこれだけ増えてしまったということから考えても、もう間違いないところだと思います。そのようなところで、もしⅠについてなければ。
○松本構成員 私は、基礎研究をする側で呼ばれていると思いますので、基礎研究のほうからお話をさせてください。現在、Ⅰに書かれている内容は、主に患者さんをよく解析する、患者さん検体を解析するということで、研究の入口としては当然非常に重要な点だというのは分かりますし、またゴールはその患者さんに返す。すなわち治療であり、予防であるというのは非常に重要だということは言うまでもないです。
現実的に、患者さん検体というのは、実際にアレルギーが非常に取りにくい。例えば、アトピー性皮膚炎で皮膚をバイオプシーするというのも非常に侵襲が伴いますからハードルが高いと思いますし、喘息の肺組織を取ってくるのも非常に難しいというのはあると思います。その辺のことに関して、ボランティアの患者さんたちに協力してもらうのも含め、実際に患者さんの検体を集める、あるいはバイオバンク等も利活用するといったことを積極的に行うという点をやっていかなければ、実際のPrecision Medicineに向けるための、いわゆるエンドタイプ解析のようなことは難しいのではないかというのを1つ思います。
もう一点は、今のその部分の解析と、実際の患者さんの解析というのがあります。基礎研究というのはその間をつなぐ部分であり、例えばin vitroの実験で気道上皮細胞であるとか、気道平滑筋細胞であるとか、それを使った実験、あるいは動物モデルを使った実験というのが絶対に必須です。それは、ここにおられる構成員の皆様はよく御存じだと思うのです。これだけを読むと、そのような基礎研究の部分がどうも抜け落ちているように読めてしまいます。特に一般の方が読むと、そこが抜けているように感じるのではないかというのを私は非常に危惧しています。
現在、日本の基礎研究の地位が国際的に下がっているということが問題になっていますので、そういう意味で基礎や動物実験の重要性をなんとかこの指針の中にも文言として入れていただきたいというのを基礎研究者側としては感じております。
○山本座長 やや基礎研究が抜けてきてしまったと、AMEDのほうは何かありますか。
○足立構成員 今御指摘を頂いた点は非常に重要な点で、Ⅰだけでなく戦略全てに関連するところだと思います。例えばⅠd.の「異分野の融合等」の所の視点というのは非常に重要な点になると思います。また、先ほど海老澤構成員のほうから、国際連携の点もありましたけれども、恐らくⅡd.の所で記載されていた、例えば日本が30年間にわたり予算をずっと出してきたHuman Frontier Science Programは、ノーベル賞を27人も輩出してきた基礎研究の国際連携プログラムです。その研究成果というのは多くのものが患者さんに還元されるものである一方で、基礎研究の成果としての純然たる価値も認められてきたという点があります。この部分が、やはり患者さんに分かりやすい文章をうまく構築しようとする過程で、中に入り込みづらいところが恐らくあると思うのです。この部分が抜け落ちないような文章構成になっていくところが非常に重要な点になりますし、基礎研究から実用化までの隘路をなくし、橋渡ししていくことの重要さというのは、AMEDのほうでも常日頃理事長から言われている点です。
○山本座長 ゲノム科学などは、患者さんの検体を使っていながら、やはり基礎研究です。GWASをやったら全ておしまいではなくて、GWASが研究の初めなので、それをもっとメカニズムに持っていかなければいけない。そこには基礎研究も必要ですし、それから患者さんの検体も必要です。
別の視点を考えると、動物実験による研究と、それからヒトの研究、これを両方とも調和させることの重要性です。ヒトだけやっても、分からないものは分からないので、動物との対比でやっていくことになると思います。その辺をしっかり書くという方向にしましょうか。
○天谷構成員 今話題になっているのはすごく重要で、私も気付かなかったのですけれども、やはり基礎研究の相手は異分野ではないと思うのです。その異分野の中に基礎研究が入ってくるのではなくて、明確にヒトでの限界というのがありますから、動物実験を用いた、vivoの系を用いた研究の重要性は確固としてありますし、そこに新しい治療戦略も出てきます。それは文言、あるいは項目として落としておかないと、国民目線から見ると抜け落ちてしまう可能性は十分あると思います。基礎研究の大切さは、単に研究者の自己満足だけでは絶対にないので、この分野をアレルギー疾患研究戦略の中でも、重要な位置付けとして明確にする必要はあると、今、強く気付きました。
○山本座長 逆の視点から言うと、マウスを中心とした免疫学、アレルギー学は、ある意味で今までかなりきちっとしたサイエンスを作ってきた。逆に言うと、ヒトの検体になった途端に、それがサイエンスとしては低い状態であって、それはいろいろな分野でそうだと思いますけれども、ヒトを研究する生物学が余りにも貧弱だというのは逆にある。だから、両方とも進めていくということで、アレルギーの状態に関しては、マウスとヒトをいつも対比してやっていくのだというようなことを書き込めればいいのかという感じがします。そんなところでⅠはいきましょうか。それでⅡ、Ⅲへ行ってから、もし時間があればまた戻ってきます。Ⅰは取りあえずそういう形でいきたいと思います。
次は3ページのⅡで、「国内外のあらゆる力を結集して研究開発を進められるような仕組みづくり」です。これは、患者さんにも研究グループに入っていただくという視点です。Patient and Public Involvement、PPIというのがこれでいいのかどうか。違う研究者は、これはプロテイン・プロテイン・インターラクションだろうと思ったりしますから、Patient and Public Involvementというのを、もう少しきちっと説明しながらだけれども、使えたらこういうのを使っていくということで、良いですか?
それからunmet medical needs、これはいつも言われていますけれども、なかなかそれが見えないでずっと研究を進めていることもあります。ここは後で新井先生にも御意見を聞きたいのですけれども、免疫アレルギー領域に関わるCentral IRBの必要性と可能性のようなことも議論したいと思います。それから先ほど御指摘のありましたように、国際連携、人材育成ということになりますが、この全体について、まず新井先生、Central IRBの必要性と重要性、それから本当に可能かどうかということについて先生のお立場からお話をいただいて、それから足立先生にお願いいたします。
○新井構成員 すみません、私はこれをちゃんと勉強してこなかったのです。
○山本座長 本日は、こういう所を議論する余地があるかどうかということで、これは全く無理だということであれば、それほど強調してもしようがないです。
○新井構成員 そうですね。いや、全く無理だということはないと思います。
○山本座長 全く無理だということはないだろうということですね。
○新井構成員 はい。
○山本座長 そこのところをある程度均てん化しないと、日本全体として、例えばグローバルに立ち向かうと言ったらおかしいですけれども、グローバルと協調していくときに、日本だけが入れない研究機関がいっぱい出てきてしまうというのはまずいので、そこのところを各それぞれの研究施設、大学のIRBに任せないで、日本として均一のIRBを持っていくというのがこのCentral IRBの考え方だと思います。これは、そういう意味ですよね。
○新井構成員 はい。
○山本座長 それが構築できると、患者さんに対してのメッセージとしてもきちっと言えて、例えばある治験についてとか、ある疫学について、こういう方に参加していただきたいというのを発することができるという感じですよね。いろいろな意見の方をIRBにお呼びして意見を聞くことは重要なのですけれども、IRBと言ってもそれほどたくさんの委員の方がいるわけではないので、そこの中の1人か2人が少し極端な意見を発言して、でもそれは尊重しましょうということになると、そのIRBでの決定はこの研究は駄目ということになってしまう。そういうことが均一化できていない点が今問題視されています。
これについて吉本構成員、メディア側から御意見はありますか。IRB、治験などの検討委員会の不均一化というか。
○吉本構成員 それは免疫アレルギーの分野ではないのですけれども、いろいろな研究で不均一で、人が非常に足りないというのはよく聞くところです。今は構成要件が厳しくなっていて、一般の立場を代表する人を、例えば複数入れる必要があるとか、そういうことを満たすために、たくさんの委員会があると大変なことになっているというのはよく聞きます。
特に先端分野の研究では、本当によく分からない人の意見を、どこまでどのように反映するかというのはすごく難しい。ごく一般の立場からの意見はとても大事なのですけれども、今回の免疫アレルギーのように、それをそのまま理解するのは大変難しいという問題ではどうすればいいかというのは難しいと思います。数をたくさん作って、どこでも受けられるようにするというのも大事ですけれども、最終的には質がある程度保たれていないと、そこへの信頼性が落ちていってしまう。
○山本座長 Centralにすれば、例えば日本で1つというのでなくて、東日本と西日本でもいいのですけれども、そのぐらいでそこに委員の方が今の人数、これより少ない人数で決めるというよりも、これの倍ぐらいの人が集まって、質の高いディシジョンをしていただくというところの重要性というのを、ここから発する必要があるのか、それはここのアレルギーのレベルを超えているのかというところです。
○吉本構成員 でも、戦略を考える立場としての意見はこうであるというのは入れてもよろしいのではないかという意見です。
○山本座長 入れてもいいのではないかと。足立先生どうですか。
○足立構成員 この研究戦略の前身の研究班での報告書を記載するに当たって、世界の状況等を少し確認いたしました。イギリス等の海外において、このCentral IRB若しくはPatient and Public Involvementという考え方は非常に推進されております。この考え方というのは、比較的一緒に考えていくことが望まれる点になるかもしれません。
Central IRBのほうからですけれども、今、臨床研究中核病院及びAMED等で推進されている革新的医療技術創出拠点の中で、自分の施設のIRBとしての機能だけではなくて、他の施設の審査もやりましょうという話が少しずつ動いているところです。この国全体の動きの中で、アレルギーに特化するというよりも、アレルギーのことをよく知っている方が入りやすい施設というのが出てくると、多くの研究機関がそこにIRB審査をお願いしやすい状況が出てくるかもしれません。
そして、このCentral IRBに入ってくる外部委員としての患者さん若しくは市民をどのように教育若しくは質を担保していくかということは、吉本構成員がおっしゃられたことが非常に重要な点になるかと思います。このような知識レベルをしっかりと上げていく点については、がんの分野若しくは難病の分野で少しずつ、フィージビリティスタディとしての試みがなされております。実際に委員として呼ばれた患者さんがどのようなコメントをすべきなのか、というようなことを学ぶようなワークショップ等も開かれているようです。このような他領域での試みを免疫アレルギー領域でも行うことで、質の担保及び研究の質の向上につなげるようなフィージリティスタディを研究として進めることが可能になり得るかと考えられました。
○山本座長 私はイギリスの例を知らないのですけれども、イギリスの例だと、例えば、そのCentral IRBはアレルギーをかなり中心にできるIRBで、また別のIRBはがんがというように分かれる感じもあるのですか。
○足立構成員 実際にその施設において、領域がすごく得意なところがあるか、という点までは情報を持ち合わせていませんが、特定の施設においては、比較的多くの審査申請が集まってきやすい所と、そうでない所があるということはお伺いしております。恐らく委員の構成、若しくはそのスムーズさ等によって、依頼数の数のばらつきが出ているのではないかと推察されます。
○山本座長 分かりました。
○園部構成員 先ほどの発言につながることなのですけれども、アレルギー分野においては、例えば脱ステロイド療法のお医者さんがいたり、EBMの医療を全く理解するチャンスのなかった患者さんたちが結構いて、本当にそれを素人考えでこういうところに混乱を招かないためにも患者の啓発、国民の誰もが標準的なアレルギーの医療について知るチャンスというのは非常に大事です。特にそういうところに関わるかもしれない人たちのEBMの理解とか、疫学の理解とか、ガイドラインがなぜ大事なのかとか、そういうことをトータルに理解するのはまだまだです。がんや他の医療分野に比べて、アレルギー疾患は本当に軽症の人から重症の人までいろいろなアレルギーがあるのでなかなか難しいのですけれども、是非それを国レベルでというか、この会議の中でも検討していただきたいと願っております。
○山本座長 そうですね、軽症の方から重症の方までいて、非常に多様性がある。だから、どこに真実があるかというのをつかむのは難しいわけです。ですから、その状況を患者さんにも理解していただいて、自分がどの辺の立ち位置かということを含めたものがあって、あるものでバチッと切って、全ての方に適応できるものではない。だから、どうしてもステロイドが必要な患者さんもいるし、今は使ってはいけない患者さんもいるので、多様性をどのように知っていただくかということも含めた重要性ですね。
○吉本構成員 先ほど、一般の方に分かっていただくのはすごく難しいと言ったのですけれども、やはり研究も医療も社会の中でやる以上、どこかで全くの素人の人に理解してもらう手続きはどうしても必要です。そのためには、委員の中にすごく勉強した人を入れるというのも1つの考え方ですが、例えば、何段階かにして、本当の専門家が、専門家コミュニティの中でこれが妥当なものかという判断をした後に、それを次のもう少し幅広い分野の人に提示するという、段階を踏むというやり方もあると思います。あくまでも1か所でと考えてしまわなくてもいいのではないかと思います。
○山本座長 そうですね。
○海老澤構成員 IRBに関連するかもしれないのですけれども、研究の倫理について、今、日本において4月から臨床研究法がスタートしました。あれは、主に厚生労働省は特定臨床研究をきちんと管理していこうということで、ノバルティスの事件等から始まったことだと理解しています。そこで、日本だけに独特な努力義務という対象が設定されているのです。これは、医薬品等の保険適応内の薬を、例えばランダム化してスタディ、研究をしようと言ったときにそこに該当してしまうのです。
そういうことが求められているのは日本だけで、逆に本来我々が薬を使って、薬効についてきちんと検証していくべき臨床研究の阻害になるようなことが日本で実際には始まってしまっているという状況は何とかしていかなければいけないのかと思います。そういうことも、IRB、倫理委員会等で、例えば認定倫理委員会に申請するというようになると、今は90万円必要になります。いろいろな研究者が、それぞれの施設でもし自前の倫理委員会で申請ができれば、無償に近い状態でできるものが、90万円払わなければそういうシンプルな臨床のクリニカルクエスチョンを解決できないなどという状況に日本は今追い込まれてしまっているということは、是非何か改善していきたい。
あと、こういう研究戦略においても、より研究が盛んになるような方向をなんとか、もちろん患者さんを守ることは非常に重要だと、COIをきちんとしていくことも重要だと思うのですけれども、日本は規制が行き過ぎてしまっていて、そういうことの研究のリサーチマインドを逆にやるのは嫌だなというようになってしまうような状況に追い込むような、御上の方針をなんとかしてほしいと思う次第です。
○山本座長 なかなかそこまで書き込むのは難しいかもしれません。現状把握をするということも含めてだと思います。新井先生どうぞ。
○新井構成員 PMDAの立場として、現時点で、これを審査の中に入れるということになると、また大分大きなハードルになる。現時点ではまだそういうのを行ったケースはないのではないか。
○山本座長 先生が言われているのは、このCentral IRBですか。
○新井構成員 そうです。もちろん入っていくことは良い方向だとは思うのですけれども、実際に規制を作る当局において、それこそどういうメンバーを入れるか。パブリックコメントをやるとか、そういうことは今でもずっとやっています。こういう実際の審査段階になると、なかなか難しい問題がいろいろあるかなと、現実的にはそういうことです。
○山本座長 現実を把握しながら、少しでも現実を良くしていくという方向の提案をするとすれば、方向性としてこれはありかなとは思います。10年ずっと待って、やっと一歩進んだというよりも、もう少し2、3歩進みたいですよね。
○新井構成員 はい。
○山本座長 そのほか、国際連携、人材育成等についてどうでしょうか。国際連携は海老澤先生が言われたように、とにかくグローバルの中で遅れないということも重要です。人材育成はどうでしょうか。今は専門医のシステムが変わっていく中で、若い人たちがアレルギーの分野を支えてくれるかという重要な時期です。ここは研究ですので、いかに基礎研究、臨床研究を若い人にやってもらうかというところです。足立先生どうぞ。
○足立構成員 Ⅱb.の所では、恐らく人材育成と国際連携をセットで記載されているところで、大きく3つの点が考えられるかと思います。
1点は、海老澤構成員が先ほどおっしゃられたように、研究成果を英語等で海外にしっかりと情報発進していき、国際連携研究プロジェクト若しくは国際共同治験に、日本が落ちないようにしていくという情報発信と連携推進という観点になるかと思います。2点目は、日本から海外へ出ていく人をどのように後押しするか。3点目は、行った人が戻ってくるときに、どのように後押ししてあげるか。この3点になるかと思います。
特に3点目は、今まではなかなか見落とされがちだった点だと思います。先ほど話題に挙がったヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムや、アメリカのNIH等非常に優秀な研究をされている海外の研究者が、日本に戻ってきたときに、同じように研究を継続しづらいという点があるかと思います。ここにいらっしゃる構成員の方々も含め多くの方が海外で非常に優秀な研究をされてきて、今の立場を作られてきていると思います。このような方々が戻ってくる際に、いかに研究を推進しやすい状況を作っていくかという点は2番目に申しました、日本から海外に出ていく方を後押しすることにもつながるのではないかと考えられるかと思います。
○山本座長 そうですね。学術振興会でも一応そういうプログラムが動いていることは動いているのだと思います。アレルギーに特化したこのシステムを作るのはなかなか難しいかと思います。協調してそれと同じようなものを、別の機関もやるとサポートされる人数が増えるということはありますので、そういうところかと思います。とにかく人材育成をきちっとしないと、その分野は先細りになる可能性はあります。これについて、実際に若い方たちを教育されている先生方はどうでしょうか。松本先生どうぞ。
○松本構成員 まず第1に、基礎研究者として医学を学んでいなかった、要するに、PhDのコースの先生方自体が減っている。基礎研究の道に進みたいという方が減っているというのが1つあります。もちろん医師の中で基礎研究をやりたいという人が減っている、というのは更に大きな問題だと感じています。先ほど座長が申されたとおり、専門医志向と申しますか、まず専門医を取ってというような方向に進みますので、基礎研究をやりたいという意欲も少なくなっています。また、学位を取ること自体が少なくなっているというのもあって、基礎研究をやりたいという方が減っているのは事実だと思います。
これは日本だけではなくて、世界中がその方向だということです。現在基礎研究をやっている先生たちは50歳ぐらいの方たちです。ここにおられる先生方も含めて、15年後にこの方たちが退官された後には、本当にやる人間がいなくなるのではないかということがすごく懸念されます。それを解決する方法としては、やはり基礎を学ぶ機会を設けてあげるというようなことを、学会を含めてその機会をもっと持たなければいけないと感じております。
日本アレルギー学会では、基礎研究推進委員会を立ち上げて、実際に基礎研究をやりたい人たちをなんとか育てるというようなプログラムを考えています。その一環として足立構成員が言われたような、海外に留学するような機会を設けるというようなことを考え、行うことを入れました。今回のこの中に入れるものはそういう教育の機会、特に医師の基礎研究だけではなくて、医師以外の方も含めてそのような機会を設けるというのを是非提案して書き込んでいただきたいと思います。それはトップのトップを行くというだけではなくて、もっと裾野を広げるという意味での発言です。
○山本座長 そうですね。学術振興会では、かなり厳しいハードルで10%ぐらいしか通らないと思います。それを学会として、同じようなシステムでやれば倍になるわけです。ですから、そういうことをしてでもこの分野を強化する必要があるということですので、是非ここで議論したいと思います。
○玉利構成員 人材開発については、医学系の方も大事だと思うのですけれども、このゴールの所で「産学官民連携」と書きました。民間の方とか、産業界、ヘルスケアの方といった方が積極的にこういう研究開発に参画できるようにというのを、Ⅱにまとめました。これを見ると、産業界とかヘルスケアの方がどこに入るのかというのがちょっと分かりにくい感じになっていますので、その辺はより表面に出していければ、人材育成にもそういう分野の方が参画していただければと思います。
○山本座長 そうですね。天谷先生どうぞ。
○天谷構成員 Ⅱのa、b、c、dがあるのですが、これは決して免疫アレルギー分野に限っている問題ではないものがほとんどなのです。今の基礎研究、あるいは医学研究全般に関わることを免疫アレルギーに特化して言っていますが、その部分を記載するのも大切なのですけれども、免疫アレルギーに特有のインターディシプリンなのか、横断研究開発なのかもここに盛り込んでいくことが必要なのかと感じました。
つまり、多くの問題が、もっと国の基盤的なことを言っています。この計画班というか、戦略だけで解決できない要素をすごく多く含んでいるから、10か年やったときに達成度が、このⅡだけ低く評価されてしまうのではないか。だから、少し整理しながら免疫アレルギー分野に非常に特有した問題点をここに書き込んで、この10か年戦略で、そこがこれだけ改善したみたいなものを盛り込んだほうがいいのかなというのを、今の議論を聞いていて感じました。Patient and Public Involvementの一つ一つはすごく重要なのですけれども、欧米と日本の大きな違いは、日本は患者さんの立場としてはどうしても常に完成された医療、完成されたお医者さんに医療を受けたいというのが根本にあるので、社会自体が医療を一緒に発展させていくというマインドは決して高くないと思うのです。
だから、その辺はこの分野だけのことではないので、やはり社会と一緒になって医療は進むべきものであって、そういうものを医療以外の人も感じながらこれを作り上げていかないと。
今までの医療形態というのは、医療機関とか病院とか、そういう場の中で行われるものが想定されてきました。これからは医療の治療にしても、診断にしても病院の外にどんどん出ていくので、社会の中に入り込んでいくので、一般の方の医療に対する考え方というのは一緒になって作っていくのだ、医療人のほうも一般の人と一緒に開発していくのだ、正にPatient and Public Involvementというものを具現化するというのは、この国の最も重要な体重の移動なのではないかと。
それをこの中に入れるときに、免疫アレルギーの10か年計画として本当に達成されたかという評価の中に落とし込んだときに、10年後に厳しい評価を受けかねないかなと。そこを意識しながらこの部分を策定したほうがいいのではないかと感じました。
○山本座長 実際に国民の一人一人が免疫というのはどういうものかということの理解度がどのぐらいかということも含めて、アレルギーがどのように起こってしまって、それは可能であればこういう方向に向かうこともできるのだというようなことを含めた、Patient and Public Involvementが研究のほうばかりではなくて、理解していただくということの努力も重要だということですよね。そういうことの総合的なものとして、それでは私も参加しようということになってくれるとまた良いかもしれないというところです。
○藤枝構成員 基礎的な研究者を育てるというのはすごく大事なのですけれども、患者会の方が言われるように、正しい治療をできるアレルギー専門医を増やすということも極めて重要なことです。この10か年戦略が正しい医者をつくるということもあるので、例えばアレルギー専門医を増加させるようなことであったり、各診療科の専門的な人、アレルギー専門医を増やすようなコメントも、医者を増やすという、正しく治療できる人を増やすということも是非加えていただいたほうがいいのではないかと思います。
○山本座長 それはどこに入れますかね、やはり人材育成の中に入れていくということですか。
○藤枝構成員 人材育成だと思います。
○山本座長 そうですね。そういう形にしましょう。ありがとうございました。取りあえずⅡを離れて、次にⅢのライフステージです。年齢によって、病気や症状が変わっていく特徴に合わせて診断や治療を開発する。特に母子関連、それから高齢者、特に高齢発症の疾患。それから重症・難治性、先ほど議論のあった治療抵抗性ということにも触れて、それから希少疾患。希少疾患というと、いろいろな原因なのでしょうけれども、ある意味で言うと、希な遺伝子変異をお持ちの方がかかる疾患も含めてです。アレルギーだと好酸球性の幾つかの疾患なども入るかもしれませんが、そういう患者さんの少ない病気について、これは希少疾患になってきますから難病の範囲に入ってくるかもしれません。そんなところについての御意見はどうでしょうか。
○海老澤構成員 小児から成人、高齢者まで、そして重症・難治性、更に希少疾患と、非常にうまくカバーできているのではないかと思います。あと、フェノタイプとかエンドタイプとか、そういったようなところも少し入れておいてもいいのかなという気もしました。
○山本座長 そうですね。前回の玉利先生のところではエンドタイプの議論も結構あったと思います。ここではそういう言葉も抜けているので、入れていただいたほうがいいかもしれないですね。
○園部構成員 高齢者を含めたAdultと書いてあるわけですが、先ほど厚労省が、例えばということで書いてくださった就労支援の問題、がんの分野では、今、相当始まっていますけれども、治療を継続しながら働き続けていくというのは、実はあまり着目されたことがありません。アレルギーの患者さんたちがアトピーが重症化して、または喘息であることを職場に言えないで辞めている人が結構おられます。そのあたりを啓発をして、産業医の先生方を中心に職場での理解を頂いて、安全配慮義務があるわけですから、アレルギーの患者さんで慢性疾患があるのだったら、当然、治療を継続しながら働き続けられる社会にしていくという視点も大事だと思います。
○山本座長 これは非常に重要な所を御指摘いただきました。もう少し議論して盛り込んでいくということにしましょう。アレルギーの特殊性を少し強調して、花粉症でも、実際には、花粉症の季節に休まれる方は少ないかもしれないけれども、結構大変ですよね。
○園部構成員 仕事が忙しくて休めないという方は、受診を諦めてしまうことのないようにしたいです。
○山本座長 そうですね。喘息などは本当にちょっと間違えると、無理して出て行って生命の予後に関係することもありますので、その辺は議論したいです。母子関連はどうですか。今は胎児の間からの環境のばく露によって起こってくる問題とか、いろいろ出てきますけれども。
○園部構成員 これについては、既に疾病対策課の方も動いてくださっているのですが、お医者様のもとには発症してから患者さんが来るわけですから、母子保健分野でアレルギーのことをしっかり分かっている人材育成をしていただくことで、健診の折とか赤ちゃん訪問のときに最初に発症予防ができるように、乳児湿疹をこじらせたままにすることはリスクが高くなってしまうから、何をどうすればいいか具体的に保健指導していただくことで、発症予防につなげていくという考えの取組も大事ではないかと思っています。
○山本座長 そうですね。小児の病気は全体として小児専門医より、一般診療医が診るような方向にあるのかもしれないですね。そうすると、その中でもアレルギーの小児の方たちはいっぱいいるので、その方たちをきちっと診られるような体制を作らなければいけないということです。全体の流れをここだけでやってもしようがないのですが、でも、その中でアレルギーとしては、こういうことをやってほしいと発信していくことは重要だと思います。アレルギー学会のほうでやっているのですよね。どういう動きなのでしょうか。海老澤先生、どうですか。小児の各年齢の方、赤ちゃんからですね。場合によったら一般の、要するにGeneral Practitionerが診療するという体制に、今、なりつつあるという状態の中で、アレルギーについてはどういうふうにやっていったらいいか。
○海老澤構成員 先生、今日、おっしゃっているように、アレルギー疾患は軽いところから重いところまでいろいろございます。小児領域のアレルギー疾患は多岐にわたりますけれども、一般医科の先生方のサポートなしには成り立ちませんから、一般の先生方のアレルギー疾患への知識、そして見識を広めていただくということは基本法のほうでもきちんと書かれています。日本アレルギー学会としても、そういう研修、教育の機会を増やすことは総合アレルギー講習会などで行っています。
ただ、重篤な、例えばアナフィラキシーを起こすような食物アレルギーで、なかなか治らないような方の治療とかは特殊な専門医療機関において取り組んでいます。そういう所の病診連携等も非常に重要な点かなと思いますので、そこら辺のすみ分け、さらに一般の先生方の知識を普及していくという活動、いずれも重要な点だと思います。
○山本座長 ありがとうございます。あと、ここでは小児期と高齢者となっていますけれども、小児期から成人に移るときのトランジションについても非常に重要で、そこのところの橋渡しをうまくしなければいけないと思います。そこも盛り込んでいただいてⅢa.とⅢb.をつないでいただくということになると思います。治療抵抗性も入れた重症・難治性のこと、それから希少疾患、この辺はいいですか。
○松本構成員 先日、抗IgE抗体のゾレアですね、市販後調査の結果という論文が出たので拝見しました。数字は全て覚えていませんが、使われた患者さんが確か7,000人ぐらいで、実際に有効性が60%台、70%台ぐらいだったと思います。私たちがそういうのを見たときに一番聞きたいことは、効いた人と効かない人の違いは何だったのか。すなわち効いた人にこれから先もどんどん投与するし、効かない人は使わないようにするべきだと思いますが、そういうことに関する市販後調査では、そういうことは全く解析されないわけです。3割ぐらいの方たちは高額医療を使っても実際には無効であったということですから、そういうことをなくすために是非とも市販後調査ですね。今の市販後調査は副作用があったか、なかったかの調査であって、有効性がどうだったかの調査ができていません。こういう高額な医療が、抗IL-5抗体、抗IL-5受容体抗体、抗IL-4受容体抗体と、どんどん適用先が広がっていますが、是非ともそういうふうな方向に官と言いますか、制度の方向で是非ともそういうことを検証することに取り込んでいただきたいと思います。
○山本座長 そうですね。ありがとうございます。
○足立構成員 今の松本構成員の観点は非常に重要な点で、恐らくこのⅢc.に書かれている重症薬剤アレルギーや、Ⅲd.に関係する点では、例えば指定難病の1つであるスティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症など、薬剤等も原因になり得るような難病においても重要な観点になり得ると思います。その点でPMDAの新井構成員もいらっしゃいますけれども、MID-NET、市販後調査のデータベースが今年度から動き始め、さらに、副作用救済機構のほうで集めているデータの研究開発での利活用若しくは二次活用の促進等が、この部分においての研究開発を推進する観点で、非常に重要な連携の施策若しくは研究推進の1つになり得るかなと考えられます。どのような点が可能か模索するところが言及されると、より良いのではないかと考えました。
○山本座長 ありがとうございます。
○松本構成員 それに関連して是非とも、こういう高額医療を行う患者さんに関しては、例えば血液を頂く、要するにゲノムを頂く。あるいは血清を頂くということで、実際に市販後調査の一環というか、実際に効いたかどうかを後からでも検証できるような形にして、何らかのバイオマーカーを見つけに行くということを是非とも行っていただきたい。要するに、今、足立構成員が言われたことは、恐らく枠組みとして副作用を見るということであって、作用を見るということではないと思います。作用を見るための枠組みがあっていいのではないかと特に思いました。
○足立構成員 恐らくMID-NETが、その点は含んでいるものとして両方併せて発言したつもりだったのですが、うまく伝わらず恐縮です。
○新井構成員 今、そういうデータも含めて取ろうとしているのですが、まだ取れる施設がそれほど全国的レベルではないのです。有効性も十分、データとして取り込んできていますので、それでサンプルまで取れるかとなると、そこはちょっと。
○山本座長 全例ですよね。市販後全例調査が入ったときには、要するにインフォームド・コンセントがうまく取れるかどうかで、薬が使えるか使えないかになってしまうと選別になってしまうから、そこは難しいところですね。可能な限り、そういう方向に向かって行くべきだというステートメントは重要だと思います。ありがとうございます。大体、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲについて大きな議論はさせていただいたと思います。
最後に、資料4の5ページと6ページを見ていただいて、全体の方向性としてのAction Plan,Goal,Visionの設定について、それぞれAction Plan1、2、3、Goal1、2、3、それで、合わせて最後にThe New Visionという形で、たたき台として作っていただいています。これでよろしいのかということを最後に検討したいと思います。よく見るといろいろあると思いますけれども、細かいことについての深い議論については、可能であれば次回やりたいと思いますが、今までの議論を踏まえて全体として、このAction Plan,Goal,Visionという設定については、どうでしょうか。これについて御意見がありましたら、どうぞ。
○園部構成員 Visionの一番最後の所に、「免疫アレルギー疾患の減少と重症患者の死亡の根絶」とありますが、喘息の患者さんは重症とは限らない人が亡くなっているということと、アレルギーを発症してしまった人は減少と言うと、私は関係ないなとなってしまいます。「コントロール良好」というような言葉も是非入れていただくと、今、アレルギーを発症している患者さんは希望が持てるのではないか。
○山本座長 先ほど天谷先生が議論されたように、数だけではないんだというところを、ここで強調したほうがいいということですね。
○園部構成員 はい。
○山本座長 それから、重症患者さんの死亡と言うと、亡くなってしまう方を重症と認定しないでコントロールが十分でなかったから、突然死があるということだと思いますので、そこのところの書き方ですね。
○天谷構成員 今のNew Visionというか、最終的なゴールに関わってくるので言葉に落とすなら、1つはアレルギー疾患の見える化みたいな、つまり疫学もそうですし、いろいろなものが見えているようで実は客観的な見える化ができていないので、アレルギー疾患を見える化して、その見える化したファクターが、実際、10年前と10年後で減っているということを見せることによって、もっと多くの社会の理解が得られるのではないか。今は患者が減少するのではなく、要するに苦しんでいる時間が減少すればいいので、それを何か定量化できるような、それが例えば「かゆみ日記」とかいろいろなことが今までやられているのですが、そうではなくて、もっと簡単に取れる客観的な方法はないか。そういう見える化に対する努力をひとつしていくと、いろいろなアレルギー疾患がもう少し理解されてくるのかなと感じました。
○山本座長 「見える化(把握の尺度)」とか、そんな感じですかね。
○天谷構成員 そうですね。
○山本座長 ちょっと言葉を、また検討しないといけないですね。
○天谷構成員 はい。それぞれのアレルギー疾患によって見える化のファクターは異なってくると思いますが、それを少し簡単な見える化ですね。
○山本座長 「見える化・尺度」にしましょうか。取りあえずそういうふうにしておいて、アレルギー疾患は次回につなげましょう。それから、突然死を含めて重症患者さんでない方が亡くなると、そこについてはどんな表現がよろしいでしょうか。きちっと把握しているということが重要ですね。普段、お元気でいらっしゃるので大丈夫だよと言って、そのままコントロールしないと、あるとき突然死されてしまうというところを含めた医療側の把握の状態ですね。
○海老澤構成員 例えば、これを書くに至ったときの議論として、アナフィラキシーの死亡患者を減らしていけたらいいよねというディスカッションがありました。アナフィラキシーは、厚生労働省が取っている人口動態統計の客観的なもので、ハチ毒とか薬物とか食物とかありますから、そういうものを1つのパラメータとして見ていくといいのかなと、そのときに話したのです。
○山本座長 アナフィラキシーは項目というか、1つの文章として普通の慢性に起こってくるアレルギーと分けて、アナフィラキシーはまず数を減らしていくと。件数を減らしていくというのは重要ですね。そこは別書きにしましょうか。アナフィラキシーを起こさないようにすることと、起こったときに適切に対応することだと思いますので、10年でできることはそこだと思います。
○海老澤構成員 本来だったら、落とさなくていい命を救えるという観点からしたら、非常に重要な点かなと思います。あと、アレルギー疾患の見える化ということに関連して、今、一番見えているデータというのは、実際に学童期の文部科学省のデータが一番見えているのです。気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、結膜炎の有症率というのが、2004年には1,200万人の子供たちを対象にして、2013年には900万人の子供たちを対象にしてデータがあります。そういうデータを日本で定期的に取るということが決まっていないのです。2013年にやったのは調布で女の子が亡くなったから取ったのです。そういったものも定点調査ではないですが、10年後にどうなっているのかというのを、今までのデータがありますから、そこで学童期にどうなっているか。例えば喘息は横ばいですけれども、アトピー性皮膚炎は学童で少し下がっていて、鼻炎、結膜炎はすごく上昇している。食物アレルギー、アナフィラキシーは3倍に増えている。そういったデータがあるから、そういうものを10年後のどこかで、例えば2013年から10年だとすると、2023年ぐらいのときに実際にどうなっているか。そういうのも文科省の協力を得れば可能かと思いました。
○山本座長 疫学調査の継続みたいな感じですかね。
○海老澤構成員 そうですね。それはアバウトと言えばアバウトですが、一番お金をかけなくて簡単にできる1つのメルクマールになるのではないかと思います。
○山本座長 ありがとうございます。New Visionについては、ここが最終的なメッセージとして重要になってくるので、ここについては議論しながらアナフィラキシーを外出しするのと、免疫アレルギー疾患の「見える化・尺度」とするのかも含めて、少しここはリライトしていただく所になると思います。ここら辺の国民の協力・参画、国内外の産学官民連携、ライフステージに応じた医療、Precision Medicineの実現までは、いいですか。これでもう少し増やすことがあったら、また議論していただくことになると思います。Action Plan、Goalについてはこんな形でということで、1つ1つの文言については次回、目を通していただきたいと思います。こんなところでよろしいでしょうか。
○吉本構成員 ここにいらっしゃる方にとっては、荒唐無稽な意見かもしれないのですが、自分がアレルギー疾患を持っていない人が「アレルギー」と聞いたときに、あらゆる過敏症を指す意味に受け止めることが多いので、アレルギーとは何を指しているのか、ここで扱うアレルギーとはこれであるという範囲を決めて、分かるようにしていただくのが、見える化にもつながるかなと思います。
○山本座長 国民に対する啓発でしょうけれども、そうですね。だけど、ここにおいて、ここまでというのはなかなか難しいですね。
○吉本構成員 報告書には、他の疾患も広く対象にすると書いてあって、広く対象にすると、受け取るほうは限りなく広く受け取ってしまうということがあるので。書けるか書けないかは私も分からないですが、一般にアレルギーと聞いたときには、あらゆる過敏症という意味に受け止めてしまうことがあるので、それでいいのか。
○山本座長 あらゆるというか、あらゆるものに対してということですか。
○吉本構成員 そうです。都合が悪い症状で困っている人は、ここで論じられているアレルギー以外の人でもたくさんいて、それが何かに対する過敏症であるということはよくあるので、そういう受け止め方がありますという情報提供として申し上げました。
○山本座長 書き過ぎて何でもアレルギーだと言ってしまうと、何か分からなくなってしまうと。もう少しはっきりと。
○吉本構成員 もしかしたら法律とかでは厳しく決まっていて、研究はそれより広くやりますとあるのですが、そのほかに範囲を設定する必要があるか。
○山本座長 アレルギーとは何かということは書いてもいいですね、最初にね。確かにおっしゃるとおりです。足立構成員、どうぞ。
○足立構成員 今の点ですが、免疫アレルギー疾患実用化研究事業、AMEDの事業ですけれども、この公募の中で対象となる疾患の記載というのが明確に決まっているので、そのような内容を分かりやすく記載し直すというのは、1案になり得るかと思います。そのような疾患が恐らく、この免疫アレルギー疾患の研究戦略の中でも、対象疾患の主たるものになりやすいと考えられます。
もう1点、参考資料4の29ページが、この全研究班の報告の中でもう少し望まれるものとして記載されていた所です。この中で、今回のAction Plan,Goal,New Visionに入れ込むかどうかは別として、本日、議論がされなかった点が1点ございました。それが7-1.の3ポツ目、「本研究分野への投資によって、どのような世界戦略がうまれ得るかの記載の追加」、これは恐らく経済的な観点等も全部含めての内容になるかと思いますけれども、この部分が少し記載として。
○山本座長 すみません、何ページ。
○足立構成員 29ページです。
○山本座長 なるほど。
○足立構成員 この7-1.の3ポツ目の所を、うまく入れ込めるような部分があれば、この観点を入れ込む点で重要になるかと考えられますので、この点についてコメントさせていただきました。
○山本座長 世界戦略という言葉が独り歩きして、変な言葉になってしまうといけないけど、一応、ここの所については入れておいて、どういう形で書けるか。世界戦略を生むことの意味というのを、もう一度議論しないと。
○足立構成員 いかに日本が先駆けて、この研究分野、そして免疫アレルギー分野を進めていくかという、非常に重要な一丁目一番地になり得る記載にもなりますし、そうではなく収めるところも可能に。
○山本座長 日本からの発信という意味でも、いいわけですね。そういう意味合いだとものすごく平和になるし、世界でトップを取るというのだけ考えると、ちょっと問題かもしれません。どうぞ。
○園部構成員 今のお話に患者としては怖さがあります。かつてアトピービジネスという言葉があったように、ステロイドは怖い薬ではないかと思ったときに、ステロイドではないですよということで、いろいろなビジネスがものすごく患者さんを翻弄しました。今回、アレルギー対策基本法ができたときに、母の会にたくさんのメーカーさんから、例えば商品の照会をホームページでしてくれたら、売上げの10%はお宅の会にあげますみたいな、そういうこともあったりして、アレルギーのことをきちんと分かっているわけではない企業の方が、ビジネスチャンスというふうに血道をあげるのは、患者の人生が台無しにされることにもなるので、とても怖く思っている部分があります。ここら辺が産官学の連携ではあるのですが、まず官がしっかりして、各自治体も振り回されないような基盤を作っていただいた上で、いろいろな所と連携していっていただきたいと思います。
もう1点は、研究に患者が協力するわけですが、この研究に参加する先生方はそんなことはないと信じたいですけれども、中には患者は研究材料みたいなことを平気で患者さんに言いながら、患者さんが良くなるのも良くならないのも気にしないで、研究から脱落しないようにと背中を押されて怖い思いをした患者さんたちも実際にいますので、研究に携わる先生方には、是非、患者さんの人権と命を大切にする姿勢で、真摯に向き合っていただくことをお願いしたいと思います。
○山本座長 ありがとうございます。重要な点を御指摘いただきました。そのようなものを含めて、世界戦略という言葉は誤解されることもあると思いますから、言葉を変えながら日本から発信できるものという形で持っていく方向で、ちょっと検討してみたいと思います。十分な議論ができなかった点もあるかと思いますので、次回、改めて検討させていただきたいと思いますし、具体的な文章とか数値目標等についても同様とさせていただきたいと思います。本日、予定しておりました議事は、一応、全て終わりましたけれども、何かどうしても御発言ということはありますでしょうか。もし、なければ時間となりましたので、本日の検討会は終了したいと思います。最後に、事務局から連絡事項等がありますでしょうか。
○貝沼がん・疾病対策課長補佐 皆さん、本当に今日はありがとうございました。次回の検討会の日程につきましては、8月の下旬を予定しております。詳細は追って事務局より御連絡をいたします。お忙しい中、恐縮ですが、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○山本座長 ありがとうございます。それでは、構成員の皆さん、長時間にわたり熱心に御議論いただきまして、ありがとうございます。これをもちまして本日の検討会は終了させていただきます。また次回、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。