第8回がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

平成30年5月25日(金)13:30~15:30

場所

全国都市会館 3階 第2会議室

議題

(1) 循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方について(報告)
(2) 緩和ケアチームの育成のあり方について
(3) その他

議事

○事務局(久保田) 定刻となりましたので、ただいまより第8回「がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日の構成員の出欠状況につきまして御報告いたします。
本日は、三宅構成員、山田構成員より御欠席の御連絡をいただいております。
本日は、参考人としまして、国立がん研究センターがん対策情報センター、がん医療支援部長、加藤雅志参考人。
○加藤参考人 よろしくお願いいたします。
○事務局(久保田) 日本ホスピス緩和ケア協会副理事長、京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻臨床看護学講座、緩和ケア・老年看護学分野教授、田村恵子参考人。
○田村(恵)参考人 よろしくお願いいたします。
○事務局(久保田) 御出席いただいております。
それでは、資料の御確認をお願いいたします。
資料1、循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方についての説明資料。
資料2は、その本文となります。
資料3 緩和ケアチームの育成のあり方について
資料4 緩和ケアチームの育成に関する取組の紹介(加藤参考人提出資料)
資料5 厚生労働省委託事業 がん患者の療養生活の最終段階における実態把握事業「患者様が受けられた医療に関するご遺族の方への調査」概要(加藤参考人提出資料)
資料6 緩和ケアチームの看護師教育(田村参考人提出資料)
参考資料1 「がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会」開催要綱
参考資料2 緩和ケアチームの育成:精神科医・心理士の育成への取組(日本サイコオンコロジー学会)(小川構成員提出資料)
参考資料3 緩和ケアチーム薬剤師の育成(日本緩和医療薬学会)(加賀谷構成員提出資料)
参考資料4 緩和ケアチームの社会福祉士等(ソーシャルワーカー)育成(田村構成員提出資料)
参考資料5 第3期がん対策推進基本計画(平成30年3月閣議決定)(概要)
参考資料6 がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会の開催指針
参考資料7 がん診療連携拠点病院の指定要件の見直しに関する報告書(平成30年4月11日がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ)
なお、参考資料7は、がん診療提供体制のあり方に関する検討会のもとに設置されたがん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループにおける報告書であり、4月11日に開催された同検討会の議論を踏まえ、指定要件の見直しに関する報告書を現在取りまとめ中です。
机上資料1 子どもの緩和ケアを考える(日本医師会総合政策研究機構)(道永構成員提出資料)
以上でございます。
資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。
以上をもちましてカメラをおさめていただきますよう、御協力のほどよろしくお願いします。
この後の進行は、福井座長にお願いいたします。
○福井座長 御多忙のところ、御出席ありがとうございます。
お手元の議事次第にございますように、議題は3つございます。最初の「循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方について」、ワーキンググループがまとめた報告書についての活用方法等の御議論をいただくことになります。
最初にワーキンググループの座長を務められました木原構成員から一言お願いいたします。
○木原構成員 本親会議の諮問を受けまして、循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループを昨秋より立ち上げ、ことしの4月まで3回の会合を持つことができました。その中において、WHOの報告等を見ても、非がんの領域の緩和を要する方々は非常に多くおられるということをまず確認をいたしました。病みの軌跡ががん領域と非がん領域では異なるということを念頭に置いてでありますが、非がん領域の緩和としては、全人的な苦痛をもって緩和の対象とする必要があるだろうということを皆で考えました。
また、既存の緩和チームがあり、それから循環器系のチーム等がありますので、そういうものを実際にどういうふうに活用していくかという方策に関しても検討しました。基本はチーム医療ということになるかと思います。
以上、答申させていただきます。ありがとうございました。
○福井座長 それでは、詳細につきましては、資料1と資料2の報告書を用いて事務局より説明をお願いします。
○事務局(久保田) 事務局の久保田です。
では、お手元に資料1と2をお願いします。資料2がワーキンググループの報告書となり、その報告書について、資料1を用いて説明させていただきます。
まず、資料1のスライド2をごらんください。本検討会では、(1)のウにありますように、循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方について検討することとしておりました。
スライド3をお願いします。平成28年に取りまとめた本検討会の議論の整理においては、ワーキンググループ等の設置をして検討すべきであるとしておりました。
スライド4です。こうしたことから、平成30年1月から4月の間に計3回のワーキンググループを開催し、本日ワーキンググループの取りまとめを報告させていただきます。
スライド5は、報告書の目次に当たる内容を記載しております。この順番に沿って説明させていただきます。
スライド6になります。まずは緩和ケアの対象となる循環器疾患について説明します。
スライド7です。WHOの緩和ケアの定義においては、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者と家族が緩和ケアの対象であり、がんに限定されるものではないことを示しております。
また、スライド8にありますように、WHOの約2,000万人を対象としたデータでは、人生の最終段階に緩和ケアを必要とするものが心血管においても多いと報告されております。
スライド9をお願いします。心疾患は日本の死因の第2位を占めており、左の円グラフにありますように、心不全は心疾患の死亡の多くを占め、右の折れ線グラフのように心不全の死亡者は年々増加しております。
スライド10です。心不全患者の現状について説明いたします。左の円グラフにありますように、心不全患者の約70%が75歳以上であり、さらに高齢者の割合が増加することが予想されております。また、多くの患者が心不全の増悪により入院を繰り返すことが知られています。
スライド11は、日本心不全学会が示している高齢心不全患者の特徴になります。この中では、上から3つ目のチェックにありますように、大半が心疾患以外の複数の併存症を有していること。5つ目のチェックにありますように、自己管理が重要であることなどが掲示されており、心不全の管理に当たっては、矢印の下にありますように、個々の症例の治療方針は、重症度や併存症、社会的背景等の全体像を踏まえながら地域連携を進めていくことが必要であると示しております。
スライド12のイメージ図にありますように、増悪と寛解を繰り返す臨床経過を踏まえつつ、中央右寄りのオレンジのラインで示す心不全治療と連携した緩和ケアが必要とされております。
スライド13になります。このような背景を踏まえまして、全ての心疾患に共通した終末的な病態であり、今後患者数の増加が予想される心不全を主な緩和ケアの対象とし、今後の取り組みとして進めていく必要があると考えられます。
続きまして、循環器疾患患者の全人的な苦痛について説明します。
スライド15は、中央の表は終末期における疾患ごとの苦痛の頻度を表にしたものになりますが、左の赤枠で囲んでいる心疾患においては、呼吸困難などの身体的苦痛や不安などの精神心理的苦痛が右枠のがんと共通して頻度が高いことが示されております。これらに加えて、社会的苦痛やそのほかさまざまな背景を含めた多面的、複合的な苦痛が存在します。
スライド16は、身体的苦痛とその対応のスライドです。進行した心不全では、特に呼吸困難、全身倦怠感、疼痛などの苦痛が問題となり、これらに対する対応は医療用麻薬か、非麻薬性鎮痛薬などの薬物療法や非薬物療法に加えて、適切な心不全治療そのものが含まれております。
スライド17をお願いします。これらを踏まえまして、今後の取り組みに向けた考え方としましては、上の四角の2行目、心不全の苦痛は多面的、複合的であり、全人的な苦痛として捉え、全人的なケアのためには多職種連携、地域連携、医療・介護・福祉連携などが必要となります。
身体的苦痛については、下の枠内の1つ目の○にありますように、心不全治療を継続しながら緩和ケアを提供すること。3つ目の○にありますように、がんとの相違点に留意しながら薬物療法を行うことなどが示されております。
スライド18は、心不全における精神心理的な苦痛についてまとめております。心不全には、右の四角にありますように、3Dと呼ばれるせん妄、認知症、うつや不安などの頻度が高く、これらに加えて睡眠障害やデバイスに伴う不安などさまざまな苦痛が知られております。精神心理的苦痛は心疾患の自己管理を困難とし、予後を悪くすることなどから、上の青の矢印にありますように、精神症状の緩和を行いながら連携したセルフケアの支援を行うことが重要であることを示しております。
スライド19になります。1つ目の○にありますように、精神心理的苦痛の緩和に当たっては、支持的なコミュニケーションを基本としながら良好な医師・患者関係を構築すること。2つ目の○にありますように、身体管理と連携した精神心理的なケアを行うことが必要であることとしております。
スライド20になります。社会的な苦痛についてです。社会的な苦痛には、1にありますように、患者と家族が高齢であることが多く、情報を得る手段が少ないため、介護負担や家族関係に問題が生じること。2にありますように、療養が長期にわたるため、療養場所の選定が難しいこと。3の経済的な問題。4の専門的な相談が少ないといった地域コミュニティーの問題などがあります。
スライド21になります。こうしたことから、社会的な苦痛に関しては、1つ目の○の2行目のように、患者や家族がアクセスしやすい相談場所を提供すること。2つ目の○の2行目のように、地域全体で支えることや、医療・介護・福祉連携の必要性。3つ目の○にありますように、病気の情報の共有だけでなく、患者や家族の療養に関する考え方などの情報を共有していくことが必要とされております。
スライド22は、循環器疾患の臨床経過を踏まえた緩和ケアについてになります。
スライド23をお願いします。右の円グラフは、心不全の緩和ケアの必要性を循環器専門医研修施設で行ったアンケートの結果です。98%の医療者が緩和ケアが必要であると認識しているにもかかわらず、その正確な概念は十分共有されていないことが言われております。
これらを踏まえまして、スライド24にありますように、1つ目の○、緩和ケアのニーズの認識と正確な概念の共有に当たっては、疾患の初期から治療と並行して緩和ケアを提供すること。全人的な苦痛が緩和ケアの対象であること。専門的な緩和ケアを提供する医療従事者のみが関与するものではないことなどが重要とされております。
スライド25は、心不全の臨床経過に伴う課題となっております。中央の表をごらんください。こちらは左から右に行くほど心不全の重症度のステージが上がっていくことを示しております。一番上、身体機能の緑の線にありますように、心不全は増悪と寛解を繰り返しながら進行しますが、その予測が困難であること。その下の赤い線のように、心不全の進行とともに全人的な苦痛が増悪することなどが課題として挙げられております。
こうしたことから、その下の青い線のように、従来の治療とケアを、さらにその下の黄色い線の緩和ケアを並行して提供する必要があること。臨床経過全体において情報共有、多職種連携、意思決定支援などを継続的に実施していくことが必要とされています。
スライド27をお願いします。緩和ケアにおける多職種連携と地域連携について説明します。緩和ケアの提供に当たっては、左の多職種連携のイメージにあるような専門的な医療従事者の連携や、右のイメージにあるような入院・外来の治療に応じた連携体制が必要ですが、いまだ十分に整備されておりません。
スライド28になります。こうしたことから、1つ目の○にありますように、地域のかかりつけ医や看護師が中心的な役割を担い、人材育成に取り組む必要があること。2つ目の○にありますように、適切な緩和ケアが提供されるように、地域の実情に応じた連携体制を構築することが重要であることを示しております。
続きまして、循環器疾患における緩和ケアのチーム体制です。スライド30をお願いします。緩和ケアにかかわる多職種には、左の図にありますように、拠点病院などの緩和ケアチームや右の図のような循環器疾患の多職種チームがあります。
スライド31をお願いします。中央の図左側の緑の円は、がんを中心とした緩和ケアチームを有する施設。右側の黄色い円は循環器研修施設であり、緩和ケアチームのある病院の73.5%が循環器研修施設でもあります。
スライド32です。その一方、緩和ケアチームは大病院に多く設置され、中小病院においては少ない傾向があります。
スライド33をお願いします。こうしたことを踏まえて、左のイメージにありますように、緩和ケアチームと心不全多職種チームがともにある施設では互いに協働して地域の医療機関を支える。右のイメージのように、同一医療機関内にない場合は、おのおののチームが連携しながら地域の医療機関と有機的に連携することなどが提案されています。
スライド34枚目の3つ目の○にありますように、緩和ケアチームの体制においては、地域の実情や患者の意向などに応じて柔軟に設定される必要があることなどが示されております。
スライド36は、循環器疾患とがんとの共通点、相違点を示しております。表の左上の疾患特性の共通点にありますように、ともに生命を脅かす疾患であり、病状の進行とともに、全人的な苦痛が増悪することを踏まえて、右に示すような共通した緩和ケアを提供する必要があること。その一方、緩和ケアの提供に当たっては、下段の相違点に留意する必要があることなどを示しております。
スライド37になります。最後にがんと臓器不全の疾病経過のイメージを示しております。患者や疾患によりその臨床経過はさまざまでありますが、右のイメージに示すように、循環器疾患やCOPD、脳卒中などの臓器不全は、増悪と寛解を繰り返しながら徐々に悪化していく臨床経過をたどります。これらを踏まえると、スライド36の循環器疾患とがんとの共通点、相違点は、非がん疾患の患者に対しても参考にできると考えられております。
こうしたことから、スライド38にありますように、本検討会の論点案としましては、「循環器疾患を含めた生命を脅かす疾患に向けた報告書の活用等について」とさせていただいております。どうぞよろしくお願いします。
○福井座長 ありがとうございます。
それでは、資料1、資料2の報告書に関しまして御意見を伺いたいと思います。また、最後の論点案にございますように、循環器疾患を含めた生命を脅かす疾患に向けた報告書の活用方法などについての御意見も伺いたいと思います。いかがでしょうか。
この報告書の対象は、患者やその家族、医療従事者、行政機関、関連団体等の循環器疾患の緩和ケアに関連する全ての関係者に向けての報告書ということなのですね。
○木原構成員 ワーキンググループの木原です。
今、座長がおっしゃったように、全ての関係者に向けてと考えております。
一番最後の38枚目のこれから先の報告書の活用等についてでございますが、循環器、とりわけ心不全を対象としながら議論を進めてまいりましたけれども、非がん領域においては、生命を脅かす慢性疾患の終末像が多々ございますので、そういうものに関してもこれは応用をされていくべき報告と捉えていただければと思っております。
○福井座長 ありがとうございます。
桜井構成員。
○桜井構成員 ありがとうございます。
この報告書をつくって終わりにしてはいけなくて、これをどういうふうに実装化していくかというところが非常に重要だと思っているのですが、このあたり、事務局としてはどういうお考えがあるのかということが一つ。
もう一つは、医政局の地域医療計画課のほうで終末期の部分だったり、地域包括のほうをやっていたりすると思うのですけれども。そういうところとの連携をどうされるのかというあたりについて、ちょっとお聞かせいただければと思います。
○福井座長 事務局からどうぞ。
○事務局(久保田) 御質問ありがとうございます。
まず、実装化ということですけれども、こちらの報告書を用いて必要な取り組みを行っていくということですので、今回のこちらの論点にもありますように、今後これをどう活用していくかというのをぜひきょう御議論いただきたいと考えております。
また、医政局が行っております「人生の最終段階における医療のあり方について」におきましては、このワーキンググループの中でも一緒に協力しておりまして、事務局として医政局からもこのガイドラインについて説明していただいております。
○福井座長 どうぞ。
○桜井構成員 ありがとうございます。
そうすると、今度今後e-learningへ変更になってきますけれども、ああいう研修のシステムをこういう非がんの部分にも活用していくのかとか、応用編をつくるのかとか、あるいはピアレビューのようなかたちで実際に現場へはいっていく形式で広めていくのかとか、少し検討が要るのかなと思いました。
健康局でカバーできる緩和の領域というのは、がんと循環器とアレルギーしかないと思うのです。今、途上国を含めて国際的に緩和ケアと考えたとき、疾病ごとで区切っているのは特殊だと思っていて、がんと非がんというものではなく、全人的にというのが基本的な考え方だと思うのです。そうすると、肝炎とか難病とか感染症とか、健康局でカバーできない方たちの緩和ケアというのは、今後どうやって進めていくのかということについてお聞かせいただければと思います。
○福井座長 これは事務局でいいのですか。それとも木原先生、何か答え。
○木原構成員 事務局のほうでお願いできたらと思います。
○福井座長 よろしくお願いします。
○がん対策推進官 御意見ありがとうございます。
そうした御指摘は大変ごもっともだと思っていますので、そういった疾患にとらわれずに、緩和ケア、いかにあるべきかといったことも含めてこれから検討していきたいと思っております。ありがとうございます。
○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。小川構成員、どうぞ。
○小川構成員 ありがとうございます。
今回のこの報告書をまとめていただいて、今までがんだけで、ある意味もやもやとしていて、はっきりしなかったこういう緩和ケアであるとか、全体の構成というのがこれではっきり確認されたのではないかと思います。その辺で今、桜井構成員がおっしゃったのと関係するかなと思うのですが、緩和ケアを全体として見たときのいろいろな概念のポイントを抽出して、そこから全体の報告書を生かしていくというものと、多分個別の疾患ごとに考えていくもの。例えば症状緩和の具体的な薬物療法とか。そういうのを切り分けて話をしていくというのが現実的な整理になるのではないかと思いました。
そういう点でいけば、今回この報告書で示してくださったのは、37枚目のスライドのあたりにありますように、病みの軌跡と言われるところ、全体を含めてその人の過ごし方を考えていくというのが全人的という点で、そしてかかわるというときには、症状緩和もあるのですけれども、恐らくこういうがん以外の疾病を考えたときには、先ほど出ましたように、疾病管理教育、疾病の初めの段階からその後のことを少しずつ話し合う。そういうきっかけをつくるであるとか、あるいはそういう情報を話し合っていく。意思決定といってもいきなりできませんので、そういう積み重ねをやっていく。そのあたりがこういうがん、それ以外の緩和ケアを考えるときのキーになるのではないかと思いました。
がんでいけば、それこそ診断時からの緩和ケアというのは、非がんでいけば、こういう疾病管理教育で当たるというのも見えているのかというのも改めて認識したところです。
ありがとうございます。
○福井座長 田村構成員、どうぞ。
○田村(里)構成員 これをおまとめいただいてありがとうございます。
循環器を切り口にこれの考え方が、人生の最終段階というところも展開されるいろいろな疾患に一つの考え方として使っていけるということを示していただいて、本当にありがたかったなと思います。というのは、特に医療機関内で暮らしとその人の療養生活が終わらないというところが、心疾患の場合、とてもわかりやすく、人にも伝わりやすい。医療が生活を地域と連携し支えるというところ。だから、医療と介護の部分のつながりがあってこそ支えられるというモデルとしてもとても伝わりがいいので、これをうまく活用しながら、いろんな疾患の長い療養の経過を支えられるようなものにしていけるとありがたいかなと思います。
○福井座長 ありがとうございます。
池永構成員、どうぞ。
○池永構成員 ありがとうございます。
特にこの報告書の中で、先ほどからもありますように病みの軌跡、このイメージというのは、普及啓発していく上では非常に大事なことだと思っています。それと同時に、医政局でやっております人生の最終段階においての意思決定プロセス、それと一緒にあわせて。多くの国民の皆さんは、ぎりぎりまで元気で、最期しゅっと亡くなるみたいなイメージだけで考えておられるかもしれませんが、決してそうではなくて、特に非がんの場合、徐々に弱っていく中で、意思決定をしていかないということ。ガイドラインと非がんの緩和ケアをセットで国民啓発をしていただくような取り組みをぜひ医政局と健康局でやっていただきたいと思っております。
以上です。
○福井座長 ありがとうございます。
中川構成員。
○中川構成員 小川構成員、田村構成員が触れていただいた資料1の37枚目のグラフは、多くの国民がこういったことがわかるような啓発、とりわけがんとともに国民の関心が認知症なども右側に入るのだと思いますけれども、こういったことを国民全体が知っていくということが非常に重要なのかなという気がいたします。
ありがとうございます。
○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。細川構成員。
○細川構成員 非常によくまとめていただきまして、一般の方にもよくわかると思うのですけれども、この形から次の実務にどう入っていくかという流れになると、今までがんに関しまして、レスパイト入院とかも含めまして、緩和ケア病棟というものをどうやって扱っていくかというのが、終末期だからないということが言われるのですけれども、まさにがん以外の場所では、丸で囲まれていますように、しばしば悪化を繰り返すわけですが、そういった部分を集中的に見るためには、今度緩和ケア病棟とかをがん以外のところにも広げていくということをやらないと、HCUを持っているところはそうございませんので。また、そういうところに入りますと、あくまで循環器とか呼吸器のその病気のみしか診ないということになりますから、そういったところと提携して緩和的なものを提供できるようなことを考えていくというのが実践的なことだと思いますので、そのあたりのことをまたよろしくお願いいたします。
○福井座長 有澤構成員、どうぞ。
○有澤構成員 ありがとうございます。
各構成員の方がお話しになっているように、大変わかりやすくまとまった報告書になっていると思います。
36ページのところにありますように、がん、非がんとの違いということで、食事や運動等の生活習慣あるいは自己管理が疾病に与える影響が大変大きいという特質があります。こういった点では、例えば地域で通院、あるいは在宅でかかわるさまざまな職種の方々がそれぞれに患者さんに理解ができるように、最初の段階から37ページのグラフのような形になっていくことを、患者さんあるいはそのご家族も含めて伝えられるような資材等を提供していくことも必要ではないかと思います。
○福井座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。木原構成員、どうぞ。
○木原構成員 追加で申し上げますと、在宅の部分が大きいのです。悪化したときに入院できるバックアップも大事なのですが、多くの時間は家庭あるいはそれに準じたところでの生活があります。それをどういう具合に長期にわたって支えていくかということが、これらの非がん疾患でのテーマになると思っております。そういう意味では、基幹病院だけではなく、地域の中でどういうふうに緩和というものを根づかせていくかということが、これら疾患での課題ではないかと考えております。
○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。桜井構成員、どうぞ。
○桜井構成員 地域の中に緩和を根づかせていくといったときに、疾病での区分というのは全くないと思います。肝炎とか、先ほどもちょっと出たほかの局でやっているようなところ、検討の場を今後どうしていくのかというのもきちんと考えて、約束をしていただきたいなと思います。循環器だけでもない話ですし、その中には家族もいます。疾病の違いによって受けられる医療なりサービスなりが異なってくるということだけはなくしていきたいなと願っています。
○福井座長 いかがでしょうか。少なくとも認知症とかCOPDとか、国際的な書物などでは必ず出てくるがん以外の疾患としては、心不全に加えて、そういう疾病についてもこの考え方を広めていくということは、構成員の皆さんがおっしゃったように、絶対に必要だと思います。
よろしいでしょうか。事務局、どうぞ。
○事務局(久保田) 事務局の久保田になります。
先ほど認知症に関して少し御指摘がありましたけれども、当課は、省内の認知症施策推進室とこちらの考え方について情報共有を行っておりまして、逆に認知症施策推進室からもヨーロッパにおける緩和ケアのあり方などについて情報提供いただきました。その中で、循環器疾患でまとめましたさまざまな共通点、相違点などが認知症に関してもかなり共通している部分が多いということでした。できるだけこの報告書の中で横展開できるものに関してはしっかり横展開しながら、また、疾患ごとに個別性にも十分に配慮していくというのももちろん必要なことだと思います。これは当然しっかりとやっていきたいと思っております。
○福井座長 ありがとうございます。
どうぞ。
○がん対策推進官 あと一点、肝炎対策につきましては、当課で肝炎対策推進室ががん疾病対策課の中にございまして、当然肝炎対策も含めて疾病対策は当課、健康局で持っている内容ですので、そこは先ほど久保田が申し上げたように、それぞれの疾病の特性に応じて緩和ケアについてこれからも考えていきたいと考えています。
以上です。
○福井座長 よろしいでしょうか。
それでは、次に移りたいと思います。ありがとうございます。
本日のこの報告についての御意見を踏まえまして、事務局にさらに整理をしていただいて、積極的に活用していただくということでお願いしたいと思います。
それでは、議題2「緩和ケアチームの育成のあり方について」に移りたいと思います。
事務局より資料3を用いて説明をお願いいたします。
○事務局(久保田) 事務局になります。
お手元に資料3を御用意ください。では、資料3「緩和ケアチームの育成のあり方について」をお願いします。
スライド2枚目、本検討会では2の緩和ケアの充実に向けたその他の具体的な対策について検討することとしております。
スライド3及び4をお願いします。本検討会における議論の整理などを踏まえまして、がん対策推進基本計画に記載された取り組むべき施策につきましては、表の右にあるような形で具体的に推進していくこととしております。この中で現在推進方法について決まっていない赤の部分について、本日は検討していただくこととしております。
スライド5をお願いします。がん対策推進基本計画におきましては、現状と課題の中にさまざまな苦痛に対して迅速かつ適切なケアが十分に提供されていない状況にあるとされており、取り組むべき施策として国は専門的な緩和ケアの質を向上させるため、緩和ケアチームの育成のあり方について検討することとしております。
スライド6になります。現在がん診療連携拠点病院等におきましては、指定要件の中で緩和ケアチームに関する人員配置や求められる取り組みについて定めております。
スライド7です。また、同じく都道府県がん診療連携拠点病院などを中心に緩和ケアセンターが整備されており、同様に人員配置が求められる取り組みが定められております。
ここで参考資料7をお手元に御用意いただけますでしょうか。こちらは現在指定要件の改正におきまして議論を行っているところになりますが、緩和ケアにつきましては、例えば7ページのマル5、苦痛のスクリーニングなどにつきましては、緩和ケアチームだけでなく、病院全体で取り組みをすることや、意思決定支援ができる体制を整備することなどの御意見が出ております。
9ページをお開きください。中央の(3)緩和ケアチームの強化のことについて記載されております。
また、10ページの診療実績の(1)をお願いします。こちらについては、1の中に緩和ケアチームの依頼の件数を診療実績とすることなどが書かれております。
14ページをお開きください。一番上の部分にジェネラルマネジャーの権限の強化などが提言されております。こちらの緩和ケアの検討会の中からの提言を受けてこちらのものが含まれております。
資料3のスライド8をお願いします。こちらは拠点病院の緩和ケアチームの新規依頼件数における実績について示しております。現在緩和ケアチームは、平均166件の年間の新規依頼件数がありますが、依頼件数が50件以下の病院が65施設に及ぶことが知られております。
スライド9をお願いします。新規依頼件数のほかに、上の四角の1つ目の○にありますような依頼手順やカンファレンスの開催、2つ目の○の地域の病院や診療所、緩和ケア病棟との連携等、チームの取り組みにおける格差が指摘されております。
下の四角にありますように、緩和ケアチームの各職種の状況におきましては、身体症状を担当する医師においては、専門性が高いと認められた資格、例えば日本緩和医療学会の専門医や暫定指導医が配置されている施設が205施設であること、精神症状を担当する医師が精神科または心療内科の医師が配置されている施設が347施設など、各職種の配置などに差があることが示唆されております。
スライド10をお願いします。これらの課題を踏まえまして、厚生労働省としましては、現在緩和ケアチーム実地研修に取り組んでおります。この研修は、診療機能の高いチームが他病院の緩和ケアチームを受け入れて実地研修を提供することによって、緩和ケアの質を向上させることを目的としております。
スライド11は、実地研修の約半年後のアンケートになります。右のグラフにありますように、依頼元のサポートの改善や、患者の苦痛への評価・対応の改善が見られるなど、実地研修におきましては一定の効果が報告されておりますが、実際の緩和ケアの依頼件数の増加などについては、現時点ではデータが得られておりません。
スライド12をお願いします。スライド12のイメージは、緩和ケアチームの質の向上に向けた戦略案について示しております。こちらのイメージでは、国、国立がんセンター、学術団体等が調査や研究などから得られた知見及び育成に向けた取り組みについて、互いに成果を還元しながら患者及びその家族の苦痛を軽減することを目標にしております。
本日は、この中で緑とオレンジの一部につきまして参考人の加藤先生から、田村先生から資料4、5、6を用いて御意見をお伺いする予定としております。
こちらのオレンジの部分につきまして、学術団体の取り組みについて、先に御紹介させていただこうと思います。参考資料2をお願いします。こちらは、日本サイコオンコロジー学会から小川構成員が提出していただいている精神科医、心理士育成に向けた取り組みの資料になります。現状と課題として、精神科医、心理士に関する教育の問題や、専門的緩和ケアの質のばらつきなどを提示していただいております。
日本サイコオンコロジー学会では、必須臨床能力を明確にし、それに応じた研修やガイドラインの作成、ICTの活用や登録精神腫瘍医制度の推進などの取り組みを示していただいております。
続きまして、参考資料3をお手元にお願いします。こちらは日本緩和医療薬学会から加賀谷構成員が提出いただいております緩和ケアチームの薬剤師の育成についての資料になります。緩和ケアチームの現状と課題としまして、スライド2にありますように、緩和医療に対する薬剤師の先入観や地域の偏り、知識や技能のばらつき、薬局薬剤師の緩和医療の普及などに関する現状と課題を踏まえまして、スライド1の認定薬剤師の普及、刊行物の出版、ピープルの研修会などを実施していただいていることを記載しております。
参考資料4をお願いします。こちらは田村構成員より提出いただいた資料で、緩和ケアチームの社会福祉士等の育成についての資料になります。現状と課題として、ソーシャルワークの実践に必要な知識・技術が不明瞭であること、研修の機会が少ないことなどから、ソーシャルワークに必要な実践力を明確にし、セミナーや研修などに取り組んでいただいていることについて記載しております。
以上になります。
○福井座長 ありがとうございます。
それでは、ただいまの説明にもございましたように、資料4と5につきまして、加藤参考人から御説明をお願いします。
○加藤参考人 よろしくお願いいたします。
私は、国立がん研究センターがん対策情報センターの加藤雅志と申します。本日は、国立がん研究センターにおける活動の報告と、学術団体である日本緩和医療学会の取り組み、この2つについて御紹介したいと思います。
まず、国立がん研究センターからの報告ですが、国立がん研究センターではがん対策の推進の一環としてがん医療の支援、そして全国のがん拠点病院の支援というものを行っております。私がおりますがん対策情報センターがん医療支援部というのは、そういった拠点病院の支援を行う部門です。全国の都道府県がん診療連携拠点病院が集まる都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会の事務局や、緩和ケアに関する都道府県がん診療連携拠点病院の緩和ケア担当者が集まる緩和ケア部会の部会長も務めております。今回は都道府県内で提供される緩和ケアの支援について、国立がん研究センターがどのようなことをしているのか御報告してまいりたいと思います。
資料4の2ページをごらんください。国立がん研究センターは都道府県の活動の支援を幾つかしておりますが、そのうちから3つご紹介したいと思います。まず、研修として行っております、都道府県がん診療連携拠点病院の緩和ケアセンターの活動の支援と、都道府県内で研修を開催してもらうための支援の2つです。そして、現在進めております拠点病院間の相互訪問による実地調査のピアレビュー、その報告をしてまいります。また、日本緩和医療学会の立場から、緩和ケアチームの支援ということで行っている緩和ケアチーム登録とセルフチェックプログラムを御紹介していきたいと思います。
3ページをごらんください。国立がん研究センターの活動の1つ目です。現在、都道府県がん診療連携拠点病院には緩和ケアセンターの設置が義務づけられております。緩和ケアセンターという新しい概念をいかに有効な活動にしていくのかということを検討し支援しております。平成25年度からこのような取り組みを行っておりますが、現在まで36都道府県、延べ50施設からご参加いただき支援を行ってきています。
4ページには昨年度行いました研修のプログラムを掲載しています。5ページを見ていただきますと、研修の前後でみられた受講生の改善の変化、取り組みが難しいと思っていた困難感が1年後にどのように改善しているのかについて示しています。例えば青で書いてあるスクリーニングに関する項目ですが、全国の拠点病院で取り組んでいることですが、研修では、このような事項について具体的にどのような取り組みをすればいいのかということを参加者間で話し合い改善策を考えていくことなどが研修の内容になっています。これらの項目は、具体的に困難感を改善させる解決策がはっきりと見えやすいところなのですが、今後の課題の一つとしては、赤で記載しておりますが、地域に向けた取り組みになります。地域への取り組みは、都道府県がん拠点病院だけではなく、恐らく全国のがん拠点病院でも同じだと思いますが、こういった取り組みについては、まだまだ具体的な改善の取り組みを開始するのが難しい部分なのではないかと考えております。課題は多いですが、「具体的に今、緩和ケアセンターとして何をしていくのか」、また、今回書かれています「ジェネラルマネジャーとしてどのような活動をすればいいのか」については非常に重要な課題になっていますので、このような課題を解決できるよう研修を開催し都道府県の支援を行っていることが、報告の1つ目になります。
6ページは、各都道府県内で緩和ケアチームに関する研修会を開催できるような支援を国立がん研究センターでは行っております。
7ページは、この研修会のイメージになります。黄色で囲っているところを一つの県だと考えてください。都道府県内を取りまとめている都道府県がん診療連携拠点病院の方に私たち国立がん研究センターの研修にご参加いただきます。国立がん研究センターの研修では、参加者がどのように有意義な研修を都道府県内で開催していくのかについて検討しプログラム案の作成を行います。研修参加後も、受講生が実際に開催した県内での研修などについて、それがどうだったのかということを一緒に考えるという支援もしております。
8ページのほうを見ていただくと、この研修に参加したことでどのような変化があるのかについて記載したものです。本研修の一番の目的は、各都道府県県内で研修を開催してもらうことになります。例えば平成28年度は9施設が参加していますが、9施設のうち8施設が各県で実際に研修を開催したと報告を受けております。このように都道府県の活動が着実に始まり進んでいると思います。私たちが開催している研修では、実際にどのように研修のプログラムを考えていけばいいのか、県内の関係者と連携していけばいいのか、そういったことを具体的に解決できる方法について一緒に考えていく研修になっています。こういったことも都道府県の活動の支援の一つになっているかと思います。
9ページをごらんください。国立がん研究センターからの3つ目の話題です。がん拠点病院のピアレビューに関することです。こちらに関しては第3期のがん対策推進基本計画でも書かれております。緩和ケアの実情がどうなっているのかということを相互に訪問して、緩和ケアに関する問題点を解決していこうという活動です。厚生労働省のほうも以前、いくつかの施設を訪問して、実際に緩和ケアの現場を見ていくという活動をされていたかと思います。私たちも相互訪問の支援のあり方の検討を研究班から、平成14年度から始めております。最初の頃は、まず拠点病院が指定要件を満たしているのかどうかについてチェックリストを用いて確認するということも含めた実地調査を行っていました。このような実地調査の方法は行政の立場とか監査する立場で行くときにはなじむのかもしれません。しかし、これを全国各都道府県内で自主的に、同じ立場で相互に訪問し合うというときに、このようなチェックリストを使ってあら探しではないのですが、やれていないか、やれているかということを見ていくということになると、せっかく実地に訪問しても建前だけの話になったり、本当は困っているはずのことを話したりすることが難しくなってしまうということもありました。試行錯誤を重ねていく中で、私たちが今、提案していることとしては、同じ立場で相互に訪問する場合は、指定要件を満たしているかどうかということを厳しく見るというのではなく、どちらかというと訪問を受ける側が困っていることを解決しに行くために訪問するというスタンスのほうが、個別性の強い緩和ケアの領域に関してはなじみやすいと思っております。
医療安全や感染対策ではすでに広く相互訪問をやっているかと思いますが、このような領域ではしっかりとチェックリストを使って、やるべきことをやっているかどうかを確認していくことがなじみやすい領域かもしれません。緩和ケアのように医療機関によって取り組み状況がかなり違うような場合には、チェックリストでできていないところを探すというより、同じ拠点病院同士であるならば、困っていることを解決するという方法のピアレビューが向いていると考え、最近はそのようなやり方を勧めております。
10ページは、実地調査をPDCAサイクルの枠で考えた場合、PDCAのPである「改善」の部分で活用すると効果的であることを示したものです。
11ページは、緩和ケアのピアレビューを私たちが支援するときに行っている3つのステップを示したものです。必ずこれをやらなければいけないというわけではないのですが、各都道府県内で初めてピアレビューをしていこうというときには、まずピアレビューというのはどういうものなのか説明した後、2番目として各県の中でどのようなピアレビューをすればいいのかということを考えてもらい、3つ目として具体的なスケジュールを考える。このような3つのプロセスを経て準備を進め、各都道府県でピアレビューを実施できるよう支援をしているところです。
12ページです。ピアレビューのプログラムになります。大体3時間ぐらいのスケジュールで実施するプログラムになっております。
13ページですが、実際にピアレビューをやることのメリット、デメリットを示しています。メリットとしては、自分たちだけでは気づかないことを、訪問してもらい指摘してもらえること。現場に来てもらえるからこそ実現可能な具体的な改善策を示してもらえること。緩和ケア担当者が困っているが、なかなか病院全体で共有してもらえなかったことについて、病院全体で共有して、病院長の指示で改善の具体的な活動が始めることができるということ。この点がとてもよかったという話をよく伺います。ただ、課題として、このようなピアレビューをやるに当たって、レビュアーの質の確保も必要ですし、負担感も大きいというものも実際あるかと思います。
続きまして、14ページからは日本緩和医療学会の取り組みになります。日本緩和医療学会のほうでも緩和ケアチームの活動の支援を行っております。1つ目ですが、2010年度の緩和ケアチームの活動について2011年から開始した活動で、緩和ケアチーム登録というものがあります。緩和ケアチーム登録により、全国で緩和ケアチームがどのような活動をしているのかということを横断的に、そして今は継続的にやっていますので、縦断的にも見られるようになってきました。日本緩和医療学会からの2つ目の報告として、各施設が緩和ケアチームの活動状況を自分たちで確認して改善していく、いわゆるPDCAサイクルを確保していく活動の支援としてのセルフチェックプログラムを行っていますので、その御紹介をしたいと思います。
15ページをごらんください。ホームページにおいて、このようなことを具体的にやっていますということを紹介していますので、もしよければ緩和医療学会のページを見ていただけたらと思います。その中から一部を御紹介したいと思います。16ページにありますが、毎年行われている緩和ケアチーム登録の中で、どのような患者さんが緩和ケアチームに紹介されているのかについて情報を収集しております。16ページの下の棒グラフを見ていただくとわかりやすいと思うのですが、依頼全体のうち、がんの治療の開始前もしくはがん治療中の患者さんの割合について、その経年的な変化を出したものです。2012年度の活動から2016年度の活動を並べたものですが、青が拠点病院、ピンクのほうが拠点病院以外の病院の緩和ケアチーム活動の症例数と集計です。例えば2012年度の活動では、がんの治療中などの患者さんは48%だったのに対して、2016年度には55%にふえています。このように、緩和ケアチームの活動状況が、がん対策の推進と並行してとまで断定できませんが、経年的に次第に早い時期からの依頼がふえているということが全国のトレンドとしても把握できます。
また、こういった全国の活動状況を自分たちのチームと比較することで、自分たちのチームの特徴を知るということもできます。例えば18ページのほうにありますが、緩和ケアチーム登録では、全国と自分たちの施設を比較したものをフィードバックするという形で、各施設が自分たちの活動がどういう状況なのか、そういったことを客観的に見ていただくことをしております。
日本緩和医療学会からの2つ目の報告になります。19ページのほうになりますが、新しく始めた緩和ケアチームセルフチェックプログラムというものです。これは何かといいますと、まず私たちが作成したCheckシートといったものを各施設の緩和ケアチームのメンバーがチェックします。続いてActということになりますが、Checkシートを取りまとめたものを緩和ケアチームの中で共有しチームの課題を話し合います。具体的には、緩和ケアチームの中でCheckシートなどをもとにして自分たちの課題を1回議論した後、それを踏まえてPlanということで緩和ケアチームリーダーなどが中心となって、自分たちの課題を解決するための1年間の行動計画案を作成します。その後、またチームメンバーが集まり行動計画案について話し合い、具体的な行動計画を確定していくことを、日本緩和医療学会では支援しております。
20ページにありますが、このセルフチェックプログラムの活動に、昨年度は75施設にご参加いただいたところです。
21ページでありますが、こういったPDCAサイクルを各施設で確保して回していくための支援を学会として初めて行ったところですが、参加する施設もなかなかなれないこともあって、参加してみたものの実施は難しいという施設もありました。しかし、こういう取り組みをすることで自分たちの活動を見直すよい機会になったという意見も聞いています。こういった活動を緩和医療学会としては支援していきたいと思っています。
22ページはまとめになります。まとめとしましては、国立がん研究センターとしては都道府県の活動を支援していくということを一つ重要なことだと思っております。先ほど、緩和医療学会のセルフチェックプログラムをご紹介いたしましたが、このようなチームの施設ごとの活動を、都道府県単位で改善方法について一緒に考える取り組みが大切だと思っております。がん対策を進めていく上で、各医療者、各施設が診療の質の改善に取り組むことは非常に重要です。それをさらに、都道府県という地域の単位で相互に見たり、アドバイスしたり、考えたりする、そういった枠組みも重要だと思います。多次元という考え方で各医療者、各施設、都道府県でそれぞれ取り組み、そしてそれを全国で取りまとめていくことが求められています。このような活動を国立がん研究センターとして進めていきますし、緩和医療学会としても各施設のチームの支援をしていきたいと思います。
もう一つ、遺族調査に関しての報告も続けてもよろしいでしょうか。
○福井座長 どうぞ。
○加藤参考人 時間も限られておりますので、恐縮ですが、進めさせていただきます。資料5をごらんください。こちらのほうは、厚生労働省の委託事業で昨年度行いました調査の報告になります。いわゆる遺族調査というものになります。全国のがん患者さんを含めた我が国における死亡者の方々を無作為に抽出し、その方が人生の最終段階でどのような医療を受けていたのか、また、介護をしていた遺族がどのような生活をしていたのかについて調査を行ったものです。全国を対象とした大規模な調査としては初めてのものになります。現在の段階での状況を報告させていただきます。
1ページ目の2枚目のスライドですが、遺族調査の必要性については、これまでもさまざまな機会で強調されてきたかと思います。医療の質を評価するに当たっては、どのような体制や方法で医療を提供しているのかというストラクチャーやプロセスの評価だけではなく、それを受けている患者さん本人を評価するアウトカムを評価することが求められます。医療の質を適切に評価していくためにも、できれば患者さん本人がどのような状態にあるのか、どのような思いで過ごしているのか聞ければいいのですが、それが終末期にある方に行うのは現実的に難しいわけです。そのため、患者本人ではなく、実際にそこにかかわっていた遺族を対象とした調査というものが終末期の医療の質の評価に関しては必要だと言われており、我が国以外の多くの国でこういった遺族調査が全国規模ですでに実施されておりました。
我が国で初めてこの遺族調査をしていくということになり、昨年度その予備調査というものをさせていただきました。
3ページをごらんください。一次調査というのが今、申し上げた予備調査に当たるものです。こういった初めての全国規模での、そしてまた調査内容も繊細なことを取り扱いますので、まずは予備調査を行い実施可能性を確認した上で、今年度に本調査を行う予定になっております。調査対象なのですが、がん患者のみならず、それ以外に心疾患、肺炎、脳血管疾患、腎不全で亡くなった方も含めており、初めての全国での調査ということですが、人口動態調査死亡票を用いて無作為に対象を抽出して調査を行っています。
調査項目としては、患者さんの属性、亡くなった場所、療養生活の様子、介護などの社会資源の利用、そして患者さんの病状理解に加えて、遺族の病状理解や遺族の属性、そういったものを尋ねるものとなっております。
5枚目をごらんください。現在集計作業を進めているところです。当初、回収率は30%ぐらいを予想して行ったのですが、実際には総回収数というところを見ていただきたいのですが、何らかの形でお返事くださった方が64%もございました。
ただし、今回予備調査を実施してある程度いろいろなことがわかったのですが、その中の一つで調査票の構成なども重要だということがわかりました。調査の同意に関するもので、この調査に協力するということをを確認するためのチェックボックスがあるのですが、そういったものにチェックをして同意を示してもらうようにしておりました。しかし、そこにチェックをつけずに回答して返してくださる方が多くおりまして、そうすると協力するという意思表明をしていないという状況になってしまい、今、この集計の中には入れておりませんが、そういった方が17%もいらっしゃいました。しかし、アンケートの中身を見ると、この調査に協力したいという思いで回答してくださっているので、そういった回答を無駄にしないように、今、当センターの倫理審査委員会などでどのような対応をすべきかについてよく検討しているところであります。そのような方も含めると、恐らく半分ぐらいの方がこの調査に協力してくださったということになっています。このように改善すべき点はございますが、この調査は実施可能性が十分にあると判断しております。
この予備調査を行ったときの重要な課題として、こういった調査は遺族の方に大きな負担になるのではないかということが懸念されました。実際に調査をしてみて、そのアンケートの感想として書かれていたことなどを6ページに書いております。この調査について負担ではあったけれども、回答をしてよかったという内容で書かれている方が、6ページの円グラフの右上にありますが、よかったということが「あった」「少しあった」を合わせると四十数%ありました。こういうことを前向きに考えてくださっている方も多くいらっしゃることが明らかになりました。 一方で、この調査が負担になったという意見も多くはなかったのですが、ございました。自由記述の内容を見てみると、1割ぐらいの記述に何らかの不満というか、ネガティブなことが書かれていました。しかし、中身をよく見てみると、不満として何が書かれているかというと、医療に対する不満がほとんどでした。自分の家族が亡くなった状況について、こんな状況でひどかったとか、もっと日本の医療をよくしてほしいという自由記述が多くありました。これは今後分析していく価値のあるものだと思っていますが、そういったものが1割程度ございました。このアンケート自体に対する不満というものはほとんど見られなかったという状況です。
また、電話での事務局への意見というものも七十数件ありましたが、そのほとんどは実際にアンケートを回答する上でどう答えればよいのかという質問であり、このアンケートを行うこと自体に対する不満の意見というのは2件でした。全国へ4,800ぐらい配布して、2件の意見ということですので、確かに一部の方には御迷惑をかけるとは思うのですが、調査としては非常に有効なものだと思っています。
最後の7ページのスライドになりますが、現在、調査結果の分析を進めております。粗データは確かに出ているのですが、解釈がなかなか難しいところもございます。例えば死亡場所別や疾患別で、いろいろな差が出てきそうなのですが、その背景などをそろえて分析をしていかないと、もしかしたら間違ったメッセージを伝えてしまうのではないかということもあり、本日はまだ回収状況の報告ということにとどまっていることをどうか御容赦いただけたらと思います。今後の終末期のがん医療、その他の疾患も含めた医療に関して、示唆を与える結果が得られるのではないかと思っておりますので、また機会があれば御報告させていただきたいと思っております。
ありがとうございました。
○福井座長 ありがとうございます。
それでは、引き続き資料6について、京都大学の田村参考人から説明をお願いします。
○田村(恵)参考人 京都大学の田村でございます。
本日は、日本ホスピス緩和ケア協会の副理事長、そして看護師教育支援部会の委員長としてこちらのほうに来させていただきました。緩和ケアチームの看護師教育ということで、当協会が取り組んでおります専門緩和ケアに関する看護師教育について御紹介をさせていただきます。
まず、専門的緩和ケアに関する看護師教育の現状というところでスタートしましたが、何が問題かというところでかなりブレーンストーミングを重ねてまいりました。具体的に現場の方々や患者さん等に御意見をいただきながら、私たちが専門的緩和ケアの担い手として行っていかないといけないことは何か、先ほどから「全人的苦痛」という言葉がありますが、それとよく似た言葉ですけれども、もう少し苦悩とかそういったところも含めて、苦や死に向き合って生きるがん患者さん・家族を支えることが求められるのではないかと考え、さらに、そうしたところから専門的緩和ケアに対しての継続教育の体制が不十分であるとか、教育を行っていくには、まずコアコンピテンシーと呼ばれる必須臨床能力といったものが明確になっていないといったところです。それから、現実には知識の習得だけではなくて、現場で実際ケアを行っていくことが必要ですので、実践を熟達していくといったことが専門的緩和ケアに関する態度、姿勢、実践能力といったものにつながるのではないかというところから、このプログラムの開発が進められています。
スライド3からは日本ホスピス緩和ケア協会の看護師教育支援部会で説明をさせていただいていますスライドをそのまま使わせていただいております。まず、このプログラムの開発の流れですが、もともと日本ホスピス緩和ケア協会は、2004年から2019年にかけてホスピス緩和ケア看護職教育カリキュラムといったものを作成しておりまして、それをもとにその協会に加盟する施設の方々の看護師教育といったものを進めてきておりました。しかしながら、さまざまな社会の状況の変化とともに、その教育そのものを見直していく必要があるのではないかというところで、先ほどのような課題を持って新たなプログラムの開発に取り組んできました。
2011年から基本的緩和ケアとしてはELNEC-Jコアカリキュラム看護師教育プログラムといったものが日本緩和医療学会によって行われていますので、そのことに基づきながら、さらに専門的という部分のプログラムの開発という形で進めてまいりました。それが専門的緩和ケアの看護師教育プログラムでございます。
スライド5をごらんください。実際にはこのような形で開発を行ってまいりました。看護師に求められる必須臨床能力といったものをデルファイ変法を用いて検討し、そして上記の臨床能力の向上を意図したプログラムの開発を行っております。この間、有識者レビューやファシリテーターマニュアルの作成、事前訓練等を重ねて、そしてパイロットスタディを行いました。そのパイロットスタディの結果として、受講前後の受講者の効果がある一定得られるのではないかということと、実施可能性といったところがそこで認められましたので、実際にそのプログラムを行うことにしました。
ここで先ほどから御紹介しております専門的緩和ケアを担う看護師に求められる臨床の実践能力として、コアコンピテンシーを7項目抽出しております。スライド6をごらんください。
1点目は、患者・家族のニーズや状況に応じて、柔軟にコーディネートする。2点目は、協働するメンバーをエンパワメントし、良好なチームを育む。3点目は、患者・家族のありのままを理解し、尊重する。4点目は、患者・家族のケアニーズを洞察し、問題に早期から対応する。5点目は、患者・家族のスピリチュアルな苦悩に向き合い、支える。6点目は、専門的緩和ケアを実践する上で遭遇する自己や協働するメンバーのストレス・悲嘆に対処する。7点目は、意欲的に専門的緩和ケアを担う看護師としての役割・責任を果たす。こういった7つのカテゴリーができておりますけれども、この下に20のサブカテゴリー、62項目が抽出されております。
専門的緩和ケアのプログラムの受講対象者です。スライド7をごらんください。まず、目的ですが、リーダーシップを発揮し、意欲的に専門的緩和ケアの質向上に取り組むことができる看護師の育成といったところで、みずからそういったことを行っていきたいという方をかなり積極的にアピールして、目的として挙げております。苦や死に向き合っていけるがん患者や家族を支えるために必要となる必須臨床能力の向上を図るといった2点を目的にしています。
対象者は、当協会がもともと専門的緩和ケアを担う施設、それに準じた形で個人で活動を行っておられる方の団体ですので、専門的緩和ケアを担う場の臨床経験が2年間以上ある方。この2年間以上というのは、例えば新卒の看護師さんが直接こういったところで働くという機会はほとんどございませんので、何年かの臨床経験を持っていらっしゃる方がほとんどなのですけれども、その中でもさらにそういった専門的なところで働いた方と規定をしています。そして、先ほどのプログラムの中で御紹介しましたように、ELNEC-Jコアカリキュラムが下地になっていますので、その指導者もしくはそのプログラムを修了しているといったところを対象者の条件として提示をしております。
スライド8をごらんください。プログラムの構成内容でございます。大きくは事前自己学習と研修会といった2つのものからでき上がっています。通常事前自己学習といったあたりは行われていないことだったのですけれども、この間さまざまな専門的緩和ケア教育についての看護師教育のプログラムを調べていく中で、みずからが学ぶというところを大切にして行っていきたいというのが委員の中の一致した考えでした。そこで、専門的緩和ケアに必要な知識をまとめた看護師教育用のガイドを作成して、それをCD-ROM化し、それを受講される方におおよそ1カ月半ぐらい前にお送りして、そして自己学習用のワークシートを完成させて当日持ってきていただくということを毎回課しております。
研修会の5日間というのは、知識の確認というよりも、そのことをもとに、例えば専門的緩和ケアの専門といったところは、どういうふうにみんなが考えるのかといったテーマを挙げながら、1回目、2回目は新しいメンバーですので、連続した2日間で行っております。3回目以降は、それぞれ皆さん、御自分の所属するところで約1カ月ぐらいのインターバルを置いて、さらに集まってきていただいて、そしてディスカッションをして深めていくといったプログラムになっています。
この話し合いの基盤になっているのがJacksonによる「Safety community of inquiry」といった考え方です。まだ日本ではそんなに普及していることではないのですけれども、学校教育の中で「Safety community of inquiry」というのはかなり使われようになってきています。学校教育の中で子供たちが疑問に思うことを話し合い、自分たちで問いを探究するといった活動です。ともに考えるということは、実は方法論ではなくて、態度であって、その経験を積み重ねていくことが大切と考えています。
ともに考えるためには、緩和ケアチームであれば、チームメンバーがみんなが安心して話せる場といったことが重要ですし、そこでほかのメンバーに自分が心に思っていることを正直に打ち明けて、そして周りの人たちが誠意を持って、関心を持って聞くといった、ともに考える「Safety community of inquiry」といったことをこのグループワークの中では大切にしております。
スライド9をごらんください。2014年から2017年度に全国で7回開催いたしました。210名の方に受けていただいています。それぞれ緩和ケア病棟、緩和ケアチーム、在宅緩和ケアといったところの方々です。それぞれの方のバックグラウンドもそこに示しているとおりでございます。
スライド10は、その結果の必須臨床能力の状況です。コンピテンシー7つに関してそれぞれ研修を受けて、5回目終了後にも調査を行っていますが、それぞれ改善されていて、それが比較的長期にわたっております。
スライド11です。その結果としてどういうことが起こっているのかということを、聞き取りもしくはアンケートで答えていただいたものです。御本人たちからは、深く話せるようになったとか、協働するメンバーの方たちは、コンサルテーションを通して相談する機会がふえたとか、それから語って一緒に考える機会がふえたということが評価として挙がっております。
こういった専門的緩和ケアの教育プログラムから得られた全体的な専門的緩和ケアの人材教育に関する示唆としては3点でございます。人材を育成するには、まず必須臨床能力といったものを明確にすることが必要だと考えております。2点目には、自己学習、探究するコミュニティーの形成、対話・問答といったものを組み合わせることで長期間の効果が得られると考えます。3点目には、患者・家族の苦痛緩和を促進して、医療従事者からの依頼数の増加や協働の改善につながっていくということが具体的には必要と思います。
最後に、緩和ケアチームの看護師教育において今後取り組むべきこととしましては、今回御紹介しましたように、必須臨床能力に基づく看護師教育プログラムを計画し開催していくこと。また、同時に、プログラムの受講だけでは十分な能力開発は難しいと思いますので、先駆的な活動を行っているチームで、看護師の実地臨床研修プログラムを行っていく必要があると考えております。
以上でございます。
○福井座長 ありがとうございます。
ただいま御説明いただきました加藤先生と田村先生の資料、それから事務局から説明がございました参考資料2から4も参考にしながら、事務局としましては、特に資料3の12枚目のスライド「緩和ケアチームの質の向上に向けた戦略(案)」のスキームについて、先生方の御意見を伺いたいということですので、よろしくお願いします。
では、ちょっと早かった服部先生から。
○服部構成員 緩和ケアチーム、一つのチームの個体として教育するというのは非常に難しいと思いますけれども、いろんな方面の努力、非常に敬意を表するものであります。
参考資料7の7ページ、厚生労働省のほうから提供された7ページのマル5に、当初のころからですが、集学的治療の中に緩和ケアを取り組むべきということをよく言われて、いろんなカンファレンスとかに緩和ケアがどんどん参加しましょう、集学的にやりましょうということで、集学的医療の中に緩和を入れてくださいということは言ってきているのですが、では、緩和ケアが集学的なのかどうかということを最近疑問視しているところがあるのです。
そこで、加藤参考人にお伺いしたいのですけれども、緩和ケアチームセルフチェックプログラム、緑のやつは、精神科の先生がつくられたセルフチェックプログラムですか。
○加藤参考人 こちらのほうですが、もともと緩和ケアチームの基準というものを2015年、神戸大学の木澤先生を中心に作成したものがございます。それは、がん診療連携拠点病院の緩和ケアチームはこういうことをやりましょうという基準なのですが、その基準をかみ砕いて解釈してつくったものがセルフチェックプログラムになります。
私は、精神科医ではありますが、セルフチェックプログラムをつくる上でのメンバーは、精神科医のみならず、身体症状緩和を行う医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどを含めて作成しております。
○服部構成員 ありがとうございます。
それを聞いた理由としては、緩和ケアチームの皆さん方で見るCheckシートの中に、ほかの科へのコンサルトをするというところが非常に抜けている。ただ、精神科だけは一番最後に精神保健専門家と協働できるとかあるのですけれども、ほかの部門に関しては、アセスメントから含めて専門家にコンサルトするというところの姿勢というか、緩和ケアチームで収束するのでなくて。なぜかというと、専門家というのは、何十年もその専門をやって身につけている者ですので、見る目もまた違うと思うので、そういった部門を入れる教育をぜひ今後してほしい。
それに関して、厚労省のほうにお伺いしたいのですけれども、緩和ケアチーム、今、いっぱいできてきたのですが、厚労省として例えば緩和ケアチームがほかの専門家にコンサルトをしているということをチェックするということは何かお考えかどうか。
○がん対策推進官 拠点病院の間の質については格差があるということは指摘を受けていまして、基本計画のほうにもそうした対応について検討することとしております。これからの検討課題として受けとめて、しっかり対応していきたいと思います。
○服部構成員 お願いします。これを言った理由は、実は緩和ケアチームというものは格差があると言われたのですけれども、要件を満たすため、加算のため、依頼数を確保するためにとりあえずつくっているというところが多いというか、それが格差の原因にもなっていると思うのです。そうなりますと、緩和ケアチームだけでいろんな患者さんの診療を、アセスメントも含めて完結させてしまおうとする傾向にどうしてもなってしまう。これは加算があるとか看護指導料があるということで、仕方ないことなのかもしれないですけれども、患者さんのことをまず考えると、緩和ケアチームで全体を評価するとしても、必要があればどんどん各種の専門家、例えば僕だったらペインクリニックとして来ていますが、ペインクリニックにコンサルトするとか、放射線治療が適用があるかどうか最初からアセスメントする等の。循環器もそうなのですが、今、緩和でなくて、もしかしたらもうちょっと利尿が必要なのでしょうか。呼吸器、呼吸不全に関しても、ただ息が苦しいからだめだということでなくて、呼吸器科的に何か必要なものがあるのではないかとか、多職種に行くに従ってそういったコンサルトが今後重要になってくると思うのです。ですから、そこら辺をチェックする方法をぜひ厚労省に考えていただきたいと思います。
○福井座長 よろしくお願いします。
中川構成員、どうぞ。
○中川構成員 今の服部構成員が指摘されたことにかなり重なるのですが、終末的がん治療の中で緩和ケアを考えていく。そこで緩和ケア的放射線療法のことを少し指摘したいと思います。放射線治療です。第3期のがん対策推進基本計画の放射線治療についての現状、課題、取り組むべき施策の中でこういう記述があります。放射線療法は根治的治療のみならず、痛み等の症状緩和にも効果があるものの、十分に活用されていない。こういう現状が指摘され、取り組むべき課題の中にはこういう記載がございます。
症状の緩和に有用な緩和ケア的放射線療法をがん治療の選択肢の一つとして普及させるため、緩和ケア研修等の教育項目に位置づけ、がん治療にかかわる医師等に啓発を勧める。こういう大きな課題が示されたわけです。緩和ケア研修の中でe-learningの中にもそれが盛り込まれていく。
一方、これは服部構成員も御指摘をされましたが、参考資料7の7ページ目、服部構成員が指摘されたものと同じページのマル3に「放射線治療の提供体制」とあります。最後のところに「緩和的放射線治療についても、提供できることが望ましい」と。一番上に強度変調放射線治療も望ましいと書いてあります。
今、拠点病院には放射線治療が原則常勤とされていますが、今後原則が外れるとも伺っておりますが、この中で強度変調放射線治療と緩和的放射線治療では難易度が全く違います。つまり、緩和的放射線治療は、ある意味技術的な課題としては最も簡単なものです。これを強度変調放射線治療と同じように療法とも望ましいとするのは非常におかしい。基本計画の中の書き込みと矛盾するということを指摘しておきたいと思います。
それから、これも服部構成員が指摘された資料4のCheckシートです。最後から2ページ目にCheckシート【症状別】というのがあります。この中にマル7として「症状緩和につながる薬物療法以外の方法(マッサージ、体位調整、罨法)」。放射線治療はないのです。これも大きな問題だと思っております。資料3の緩和ケアチームの育成について、質の向上に向けた戦略の中でぜひ放射線治療をきちっと位置づける必要がございます。検討していただきたいと思います。
以上です。
○福井座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。先に小川構成員、どうぞ。
○小川構成員 済みません。先に失礼します。
今回幾つかの緩和ケアチームの育成ということで話があったのですけれども、お話を伺っていく中で、拠点病院のあり方とかを踏まえますと、一つ、それぞれのチームの育成という面、あるいはメンバーの育成という点の教育もあるのですが、もう一つ、拠点病院に実際にそれが実装されているかというところとか、そちらの外からの目線とどうバランスをとっていくのか。今後の拠点病院全体を見ると、均てん化というところがかなり拠点病院のあり方でも議論されましたので、そういうガイドラインを含めた外からの枠というのもどれぐらい使われるのかというのを見ていかなければいけないのかなと思いました。
例えば日本サイコオンコロジー学会のほうで参考資料2で少し挙げていただいているのですが、今まではそれぞれの職種の教育とか、精神科医とか、あるいは心理職の教育というのもあったのですけれども、それを超えて病院となると、ガイドライン等の、専門職種だけでなくて、施設とか、あるいは地域を含めてどういうふうにしていくのか。そのあたりが目線になるのかと思いますし、恐らく加藤先生が出された遺族調査というのは、拠点病院を超えた広い枠の地域での実際の効果というのを見ていく上で必須になってくるのかなと思いました。
そういう点でいきますと、思いますのは、緩和ケアチームの育成というときに、今までの個別の職種の育成というよりは、現実にその施設の中で本当にどれぐらいまで使われているのか。今、服部構成員とか中川構成員がおっしゃったように、そういう適切な者がコンサルトをかけるとか、実際に病院の中で機能しているのかというのを見ていく必要が出てくるのかと思いますし、緩和ケア、拠点病院がどちらかといえば治療中心に動いて、そういう中で地域につなげていくとなれば、地域のネットワークの中での位置づけというのは何か評価が。それこそ遺族調査がそういうところできいてくるものになるのかと思いました。そういう点で、そういう緩和ケア、外からの枠でこういうチームのあり方というのは評価の方向をつくっていただくというのが一つ。
そういう中で、先ほどのがん以外のところの報告書も生かすというときに、地域の中でいろいろな病気の中の一つとしてがんを見て、そこでどういうふうに展開するかというときに、この報告書は本当に役に立つのかなと思いました。
そういう点で、先ほど事務局のほうで御紹介くださった認知症の緩和ケアというのも、広く老衰とか全身の衰弱というところで、病みの軌跡、36枚目のスライドで3つ並べて出ているものですので、そういう病気あるいはエンドステージのところをどう見るかというのを地域でどういうふうに考えるか。こういう枠組みとして報告書も使っていただきたいし、そういう中でこの緩和ケアチームというのもどうあり得るのか。がんだけという人も少なくなってきています。例えば、今、がんも分子標的薬中心に進んでくれば脳転移が進行して、ほとんど認知症とがんみたいな方も肺がんを中心に多数おられますので、そういう人に適切な専門家にちゃんとコンサルト、かかっているかとか、そういうのを見る目線というのも埋め込んでいくのがチームの育成の必要になってくるかと思いました。
ありがとうございます。
○福井座長 ありがとうございます。
それでは、桜井構成員、どうぞ。
○桜井構成員 ありがとうございます。
いろいろな研修があちらこちらで行われていて、少しずつでも進んでいるのだなということを一患者家族としてありがたく思います。その上で、このチームをどうやってつくっていくのかという戦略的な展開として重ねてお願いをしたいのは、ぜひ外来で患者が緩和ケアの恩恵を受けるようにしていただきたいということです。緩和ケアチームがふえてきてはいますけれども、入院しないとそのチームの恩恵を受けられないという声をたくさん聞きます。外来にもこのチームのにじみ出しができる、そしてそのチームのにじみ出しができているかどうかを、先ほど小川構成員のほうも言われましたが、データとしてしっかり把握していくことがすごく重要だと思っています。資料3の12ページの調査や研究等の実施調査の具体的内容がわからないのですけれども、その中に、データの把握という単語を明記し、チームが院内の、システムとしてどういうふうに動いたのかという部分を把握するようにして頂きたい。
例えば先ほど拠点病院指定要件の中で外来からの紹介の件数がどのぐらいあったのかというのが入ってきました。そういうところが非常に重要だと思うのです。あるいは資料4、加藤雅志参考人からお話がありましたが、16ページにあるような登録施設の数の推移だったり、この中でどんなことが行われていっているのかということをぜひこの戦略マップの中に一文入れていただきたいと思います。
外来機能強化として、例えば薬剤師外来の中でも、今は対象が化学療法しか扱っておりませんので、「オピオイド」という言葉を入れていくということもありだと思います。あるいは門前薬局の研修をどうされていくのかという部分も非常に気になります。看護外来ももっともっと強化していただきたいと思います。外来で看護師さんとほぼ会いません。そんな現場の中でもハイリスクのがん患者さんたちはたくさんいらっしゃいますので、せっかくこの研修されているのだったら、その経験をどうやってシステムの中に入れていくのかということと、その成果を把握していくのかということをこの戦略マップの中に入れていただきたいと思います。
2点目としては遺族調査。これは本当に重要な日本の緩和医療を考える上での第一歩だと思っています。これは例えば5年に一度は大規模調査をして、2年に一度ぐらいは小規模でもいいので目的を絞って調査していく。あるいはがん対策推進基本計画の更新のタイミングと合わせて3年に一度、6年に一度にするのか。そのあたり、遺族調査に関しては定点観測をして、結果を政策評価にも反映していっていただきたいと思っています。
3点目として、この戦略マップ、12ページのところに再三この検討会の中で言っている医学部の中での緩和ケアの卒前・卒後教育の話が全然入っていないのです。やはりこれは入れていただきたいと思います。学術団体なのか、どこに入るのかよくわかりませんが、この言葉を一言入れていただくということをお願いします。
全体としてこの戦略マップ、最終的には右側にある「患者・家族苦痛の軽減」というところに矢印が向かいますけれども、ここを疾病の区分なく、全人的に広げていくような考え方の文言に広げていただきたいと思っています。
私からは以上になります。
○福井座長 ありがとうございます。
先に池永構成員からよろしいですか。
○池永構成員 ありがとうございます。
お二人の参考人の方からの発表を聞かせていただいて、私自身のチームもいろいろとお世話になり、また勉強にはなっていますので、取り組みに感謝いたしますが、教育であるとか育成というのは、モチベーションがある方々にとっては非常に効果的であり、よいチームがよりよいという形に持っていくためには非常によい取り組みではあると思うのですが、加藤参考人からあら探しをするようなピアレビューというのは非常に難しいという意見もございましたが、現場においてはなかなかモチベーションが上がらない。これは単に緩和ケアチームだけではなくて、病院というのもあるのだろうと思うのですが、そういう方々に対しての教育であるとか育成というのには何らかの取り組む方向性があるのだろうかというのは、この検討会でも非常に議論にはなってくるのですけれども、なかなかモチベーションが上がらない拠点病院やチームに対して、どう育成を取り組んでいったらいいのかということ。もし御意見を聞けるのであれば聞きたいなと思っておりました。
以上です。
○福井座長 加藤参考人、どうぞ。
○加藤参考人 ありがとうございます。
おっしゃるとおりで、例えば緩和ケアの研修会を進めていく上で皆さまが感じているところだと思うのですが、モチベーションのある方に関する教育は問題なくスムーズにいくのですが、モチベーションのない方に対してはどうするかということがございます。私がいる国立がん研究センター中央病院では強制力という言い方は変ですけれども、病院長のほうから「これは受けなければいけないものだ」というメッセージを受講しない医師に個別にPHSに電話して言うぐらいのことをやって、「あ、これは受けたくないけれども受けなければいけないのだな」と理解してもらいました。そういうことで受けた医師も、実際に研修を受けると、受けてよかったという感想を多くもらいました。受けても意味がなかったというような先生もいましたが、受けてみると、よかったと言う方も多かったです。このように、やらなければいけないことであるならば、そういう指示を出せる立場の方がまずそれを理解して指示を出すことが重要だと考えます。例えば緩和ケアチームの育成であれば、病院長がこの病院も拠点病院であるからには、緩和ケアチームに質の高い医療を提供できるメンバーを置かなければいけないのだということを理解し、その病院長から働きかけることが重要だと思います。病院長が理解しないのであれば、拠点病院の指定を管理すべき都道府県庁、都道府県庁が理解していないのであれば厚生労働省が指示していかなければいけないかもしれません。本人が難しければ、それを指導できる立場の人に理解してもらうことが重要だと思います。
○福井座長 レビュアーを養成するコースとか勉強会をちゃんとやった上で、あら探しをするようなレビュアーを送ってはだめなわけですね。
○加藤参考人 そうですね。レビュアーに関してですが、ピアレビューを平成24年度から本当に試行錯誤してやってきました。最初のころにレビューをした施設に対してはもっとよいレビューができたのではないかと本当に申しわけなく、今、思っているところですが、ここの構成員の中には実際に実地調査をやってきた方も多いので、わかっていらっしゃると思いますが、実際にピアレビューを行うには、ある程度その領域に詳しい方でないと、結局、行って見学に終わってしまうだけなのです。したがって、おっしゃるとおりしっかりとしたレビュアーが訪問する必要があり、レビュアーを教育していくということも今後の大事な課題だと思います。レビュアーの教育は重要だと思います。
○福井座長 安斉構成員、どうぞ。
○安斉構成員 加藤参考人からお話がございました遺族調査は、チームの質の向上に向けたアウトカム指標ですし、非常に重要だと思っておりまして、今回心疾患を含めていただいてすごくありがたいと思っています。ただ、症例数ががんに比べるとかなり少ないというのは、人口動態統計に基づいた抽出というわけではないということなのですか。
○加藤参考人 おっしゃるとおりでして、今回はがんが中心だということなので、がんに関しては、お亡くなりになった場所別の分析や、より詳しい分析をするために対象数をふやしております。今後本調査をするときも、今度は都道府県別のデータをできるだけ出したいということで数をふやすのですが、都道府県別にお亡くなりになった場所別の分析をするということになると、やはり数が必要になってきます。あとは予算との兼ね合いで、がん以外の4疾病についても同様の数でやれるかどうかなど、今、ちょうど検討しております。今回思ったより回収率が高く、うまくいけば全ての疾患において細やかな分析ができるぐらいの調査をできるかもしれないと思っていますが、今後、厚生労働省とも相談しながら構成を考えていきたいと思います。
○安斉構成員 ありがとうございます。
平成28年度ですと、まだ心不全の緩和ケアが始まっていないかと思いますので、今回のワーキンググループでまとめた結果をもとに始まった緩和ケアがどういったアウトカムに影響を及ぼすかといった検討もぜひお願いできればと思います。
ありがとうございます。
○福井座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。服部構成員、どうぞ。
○服部構成員 先ほど厚労省のほうにぜひチェックすることを考えてほしいと言った理由は、何回も繰り返すようですが、加算をとるためとか要件を満たすためということで、結局、質より量にこだわってきてしまう病院がふえてきているのです。ですから、質をしっかりと評価する指標をこれからつくっていくということが大事だと思います。こういう研修や教育プログラムはすごく大事だと思いますし、少なくともそれによって底上げにはなっていると思うのです。
僕が専門家へのコンサルトもぜひと言った理由は、つい最近、ある薬剤師の先生からコンサルトがあったときに、ある大学病院でそこの緩和ケアで診ていただいた患者さん、そこにはペインクリニックもあれば、いろんな科があるわけですけれども、在宅に来たら、ケタラールという麻酔薬を使われて、ほとんど眠った状態になっている。これが緩和ケアでないはずだということで、僕のところに在宅の先生からコンサルトが来て、行ってみたら大変なことになっていたということで、神経ブロック等を加えたら、今は元気に起き上がって生活をしているのです。でも、その時点ではあと1週間ぐらいでしょうと言われていた人が、今、元気に動いているわけです。これはたまたま僕のペインクリニックの領域なのですけれども、専門家にコンサルトしているのかということ。もし今後厚労省が拠点病院とかの質をチェックするということをやる場合には、ぜひそこら辺にポイントに当てていただきたいなと思います。これは精神面も含めてです。全てに含めてです。よろしくお願いします。
○福井座長 ありがとうございます。
ほかにはいいかがでしょうか。加賀谷構成員、どうぞ。
○加賀谷構成員 ありがとうございます。
緩和ケアチームの育成のあり方について、資料3の12の一番最後のところで、「学術団体等」というくくりになっているのですが、参考資料2、3、4という形で、それぞれの職種の背景を持つ学術団体があり本会議の構成員として私も含め、そこから出てきております。緩和医療学会に所属している人が本構成員にはいっぱいいらっしゃるわけですし、私自身もそうです。緩和医療学会の中にそういう学術団体を束ねるような機構を持っていただきたいということと、そこに厚労省のほうのチェック機構が入るという形で教育あるいは研修をしていかないと、なかなか成果が出てこないのではないかと思っております。ぜひ御検討いただければと思います。
○福井座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。有澤構成員、どうぞ。
○有澤構成員 ありがとうございます。
最初に、患者の遺族調査は今までこういったものがなかったということで、先ほど桜井構成員がおっしゃったように、経時的な指標としてぜひ続けていただきたいなと思っています。予算の関係もあると思いますが、先ほど言われたように5年、3年等の間隔でやることによって、医療職種、あるいは介護職種の緩和ケアにかかわった者が、自分たちがどういう研修をして、どのようにやっていくかという指標になると思いますので、ぜひこれは続けていただきたいと思います。
それから、先ほどご指摘があったように、最近、緩和ケアチームの拠点病院ばかりでなくて、結果的に在宅に移るケースが大変多くなってきています。そういった中で、訪問診療している先生も薬剤師も必ずしも専門家ではないという場合もありますので、こういった拠点病院等の緩和ケアチームをぜひ派遣していただいて、継続的な研修や、あるいは参画できる現場を見学させていただくことも必要かと思います。実際の現場に行かないことにはわからないこともあると思いますし、在宅の現場では必ずしも症例数がたくさん出ているわけではなく、半年に1度関与した後、2~3カ月で患者さんがお亡くなりになれば、次はいつ患者さんが来るかわからない。来たと思ったら2年たっていて、当然薬物治療に関しても疼痛緩和についても、投与経路等、さまざまな薬剤が日進月歩、更新されています。そういった意味では、都道府県単位でも構いませんので、研修の機会を提供していただければと思います。その点については、先ほど加賀谷構成員からもありましたように、学会と職能団体である者として連携して、地域の包括ケアシステムあるいは地域の緩和医療に薬剤師としてしっかりと携わっていきたいと考えております。
○福井座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。大分時間も過ぎてまいりましたので、それでは、本日の議論につきましては、事務局のほうで整理をしていただいて、最後に座長と相談して内容につきましては詰めさせていただきたいと思います。
それでは、議題3「その他」でございますが、事務局から何かございますでしょうか。
前川委員、どうぞ。
○前川構成員 済みません。その他のときに発言したいなと思って待っていたのですけれども。
今まで10年ぐらいか、はっきり覚えていないのですが、緩和ケアの検討会など、いろいろかかわってきました。きょうも議題も研究とかデータとか数値、研修をしていますとか、研究データばかりです。それを聞いていて、これは研修や研究をこんなにやっていますよというのはわかるのですけれども、以前にも言ったことがありますが、「患者」という言葉はほとんど出ていません。患者の気持ちはどうなのだろうか、患者さんは何を感じているのだろうか。研究とかがすごく進んでいるけれども、現場の患者さんはこの10年どのぐらい満足したのだろうかと感じます。
遺族調査ですけれども、遺族というのは、本当の患者の気持ちはわかっていません。私は、患者サロンを9年ほどやっていまして、参加人数は延べ4,000人です。何度も来られる方もいらっしゃいますけれども。終末期の方も来られています。そうすると、そこでは本音が出ます。でも、家族には言えないということもあります。ですから、今後も緩和ケア検討会なりこういう会がまた立ち上がりましたら、ぜひ患者ということを忘れないでいただきたい。そして、これはよく言われる言葉ですけれども、がん患者さんががんとともに最期まで生きるようにできる緩和ケア、がん医療になってほしいと思っております。
以上です。
○福井座長 ありがとうございます。
世界的にもPatient Reported Outcome(PRO)という言葉がありまして、患者さんの満足度も含めて、患者さんからの意見、考え、感情などを指標にして医療を行おうという動きはかなり広まってきています。亡くなる直前の患者さんが多いものですから、どうしても遺族調査という形にはなると思いますが、これから前川構成員がおっしゃった方向に進んでいくと思います。
どうぞ。
○服部構成員 前川さんはいろんな患者さんや家族の声を聞いていると思うのですけれども、この10年間でこういう緩和ケアに関して改善したなという感じはありますか。
○福井座長 どうぞ。
○前川構成員 最初はすごく夢を持っていました。緩和ケアセンターができるとか、いろんなことでアドバルーンがぼんぼん上がったときには、これは患者さんに反映されるという喜びでいっぱいだったのですが、この10年を振り返ると、がんと向き合っていらっしゃる患者さんにとって、例えば緩和ケアチームがあるということすら知らない。がん看護の専門看護師さんがいらっしゃるということも知らない。そこへどうやってたどり着くかも知らないということが多々あるのです。ですから、そこのところが有識者の皆さんと現場の患者さん、あと現場の普通の看護師さんとの間に乖離があります。それは泣きたい思いがします。
以上です。
○福井座長 桜井構成員、どうぞ。
○桜井構成員 私が最初に患者会活動を始めたのは、友の看取りをしたときからです。患者会ですから、仲間の看取りを何度も経験していきますけれども、緩和ケアに関しては正直ここ十年間全く変わっていないなと思っています。MSWに相談をしたい、介護保険制度を利用したいと患者が希望しても医師の許可が要ると言われたりする事例があります。あるいは緩和ケアを利用したいと言っても、まだあなたは治療しているからだめですとか、こういうのを本当に聞きます。そういうことがないようにしていくためにも、今回のこのマップを一つ一つ実装化させていくことが本当に重要だと思っています。
それから、1点だけですが、資料5の2ページ目のところになぜ遺族調査かという話がまとまっています。中間評価等々で患者調査をやっており、急性期病院での患者の声は拾っています。そして遺族調査がはじまった。となると、遺族調査と患者調査の間の患者さんの声が結構抜けてしまっていると思っているのです。今後はこういった部分、今、抜けている外来の頻度が少なくなっている2年目、3年目ぐらいの患者さんたちがどんな社会的な問題を抱えているのか、何をしなければいけないのかというところも、調査等々を期待したいなと思っています。
○福井座長 中川構成員、どうぞ。
○中川構成員 ちょっと論点が変わるかもしれませんが、がん治療の現場では、余命宣告という状況の方が5年以上生存するという例が非常にふえています。とりわけ日本人に多い肺腺がんの特定のドライバー遺伝子変異例の方がチロシンキナーゼインヒビター、4つありますが、これを使っていって、担がん状態で5年あるいはもっと。あるいはオプジーボに代表されるような免疫チェックポイント阻害剤ですと、ほとんど治癒に見えるような3年、5年。これまでの我々の常識とはちょっと違った世界も生まれつつあって、これはがんの領域ですけれども、今後緩和ケアの中でこういった新しい知見を加味していかないと、誤ったギアチェンジが行われるということもちょっとあるのではないかと思います。今後の課題だと思っています。
○福井座長 田村構成員。
○田村(里)構成員 緩和ケアチームの力を高めるというところで、職種それぞれがどうやってその力を高めるかというところでいろいろ議論も出てきたと思うのですが、チームの力を全体として高めるのは、もちろんメンバーシップとして一人一人がスキルアップしていくということもあるのですが、メンバーと接点を持ちながら動くという機会をたくさん持つというところが保証されないと難しいです。全体としてのケアの底上げのため、例えば本当に社会的な問題を持っている若年層になかなかソーシャルワーカーがリーチアウトできないとか、そういうことがいっぱい起きているので、やはりチームとして教育をする。私の資料でも出させていただいたのですけれども、チーム医療の他メンバーとともに学ぶ機会というところが一つすごく大事な鍵になる。他専門職に社会福祉士のソーシャルワーカーの機能を伝えることでもっとたくさん使っていただける機会をふやせる。そういうことがとても大事なことのように思いますので、教育というところでそういったアプローチというところも検討していただけたらありがたいと思います。
○福井座長 ありがとうございます。
細川構成員。
○細川構成員 今、前川構成員、田村構成員の話にもつながるのですけれども、14年間という月日が流れてあれなのですが、結局、今、緩和を必要とする患者さんはどこに行っていいかわからない。これは不思議な話で、例えば目が悪ければ眼科に行くわけですし、耳が聞こえなければ耳鼻科に行くわけですし、緩和に行きたいと思えば、緩和の講座があれば行けるわけですが、ここまで国是として広げてくるなら、七十幾つある医学部に全て緩和ケア講座をつくり、そこを窓口にする。そうすれば、今、田村構成員から話があったように、MSWにしろ、緩和ケアチームにしろ、全部そことの接点でつながりが当然できていくので、核になるコアなしでやっていくというのは、これ以上は無理だと思うのです。
変な話ですけれども、私があしたから、私、耳鼻科の医師になりましたとは言えないのに、現状というのは、ある先生が、きょうから私、緩和ケア医ですと言えるような状態というのも、スタートラインの原始の時代ではいいかもしれませんが、ここまでやってきた時代ではちょっとそぐわないのです。ですから、いつまでたってもレベルアップをどんどんしていくところと全然動かないところが出てくるということが起こってくる。
それから、よくあるのですが、アンケート調査は非常に大事と思うのですけれども、以前学会とかにも音楽会をやりました、みんなが喜んでくれましたというのがデータに出るのですが、患者さんだって、家族だって、忙しい中で医師や看護師が音楽会をやってくれれば、大変だとわかっているわけで、それでおもしろくなかったら、誰もつけないわけです。それと同じようなことがアンケートで起こって、よかった、よかっただけでは、14年間で現場の最先端のところでは変わっていないという意見が出るのは仕方がないのではないかと思うので、もう一回基本に戻って、次の10年、15年は一番核になるところをもう一回つくるというところを、ぜひ厚労省は文科省と今後も相談していただいてやっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○福井座長 ありがとうございます。
池永構成員。
○池永構成員 その他ということでありますが、基本計画の中で、私自身は実地調査というのに非常に期待している部分がございます。座長もおっしゃったとおり、質の高いレビュアーがきちっとしたレビューをし、現場を変えていくということには十分取り組んでいかないと。頑張っているところは頑張れるかもしれないけれども、十分ではないところを均てん化ということにおいては非常に大事な取り組みだと思っています。
前のワーキングの中で実地調査をさせていただきましたけれども、その中で患者会、患者さんに参加してもらうということは、全く違う目線として非常に重要だったと思いますし、なおかつ多職種で全人的な苦痛というテーマであるならば、チームで医療を改善していくということの実地調査を深めていただいて、よりよい患者さんの目線に合った緩和ケアというものを育成していただけたらなと思っております。
以上です。
○福井座長 前川構成員、どうぞ。
○前川構成員 今、実地調査の話が出たのですが、私も参加させていただきましたけれども、実地調査に行った病院、非常に質の悪い病院でした。ところが、ある先生がこんなに悪かったらまた来ますとおっしゃいました。そうしたら、少しずつ変わってきているのです。ですから、目がある、自分たちが見られる視線があるというふうに病院に思っていただくことは非常に必要なことだと感じました。
ごめんなさい。
○福井座長 よろしいでしょうか。
それでは、事務局のほうからその他で用意していた報告事項はございますか。
○事務局(久保田) 手短に御報告させていただきます。
参考資料5をお願いします。本検討会の構成員の皆様の御協力も得て作成されました第3期がん対策推進基本計画は、平成30年3月9日に閣議決定されました。今後の6年間のがん対策は本計画に基づいて進めていくことというふうにしております。
続きまして、参考資料6をごらんください。こちらはがん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会の開催指針です。平成29年12月1日に健康局長より通知され、平成30年5月9日にe-learningの事務手続の簡素化などを含めて一部改正を行っております。あわせて報告とさせていただきます。
以上になります。
○福井座長 それでは、道永構成員から机上資料についての説明をお願いします。
○道永構成員 ありがとうございます。
日本医師会には日医総研と呼ばれる日本医師会総合政策研究機構というのがございます。いろいろなことに関してワーキングペーパーを作成しております。この検討会では主に成人のがんの緩和ケアが主題となっておりますが、このワーキングペーパーは、子供の緩和ケアについて述べています。英国が成人・子供の緩和ケアとともに提供レベルが高いと言われておりますので、そちらの研究がされました。
ポイントですけれども、病気を認識したとき、あるいは診断されたときから子供の生涯を通じて死亡時、死亡した後まで続くケアのことを言っています。必ずしも終末期にのみ提供されるケアではないということで、今、「がん等」になりましたが、緩和ケア検討会での話題となっていると思います。非常に内容が濃いものなのです。後で内容を見ていただければと思います。
以上です。
○福井座長 ありがとうございます。
最後に一つ確認したいのですが、先ほどの前川構成員と桜井構成員のお話にかかわることで、がんで亡くなった患者さんの中で何%くらいが、緩和ケアチームのケアを受けたとか、緩和ケアのトレーニングを受けている人たちに診てもらったというデータはあるのでしたか。もしあったら申しわけないのですけれども。
○桜井構成員 私たちがやった遺族調査では15%でした。自分の実感としては、私たちは患者会なので、患者さんたちに緩和ケア外来を早く使うようにと勧めているので、7割、8割ぐらいの方は併用したり、併診したりを患者さんたちはやっています。
○福井座長 加藤先生、どうぞ。
○加藤参考人 ありがとうございます。
今回桜井さんの意見なども参考にして、専門的な緩和ケアサービスの利用についても遺族調査の中に入れたのですが、遺族の方から見ると、どれが専門的な緩和ケアチームのサービスで、どれが普通のものなのかの区別がつかなかったと思われるような回答状況だったというのがあります。これに関しては、がん対策の指標としても重要ではありますが、残念ながら正確な数字として把握できる手法がないというのが現状だと思います。
○福井座長 中川構成員。
○中川構成員 もう時間が来ているようなのですが、実はもう少し意見というのはございます。何名かの構成員の方と一緒に意見書という形で座長、事務局に提出したいと思っております。よろしくお願いします。
○福井座長 了解いたしました。
それでは、本日をもって現在の構成員のメンバーでの検討会は最後となります。会を締めくくるに当たりまして、佐々木課長から一言お願いいたします。
○がん・疾病対策課長 構成員の先生方、皆様、本日まで本当にありがとうございました。もともとは健康局長の福田がきょうこの場に参って自分の思いも含めて、また、厚生労働省、政府としてのことで御挨拶を差し上げたいと申しておりましたが、今、どうしても国会情勢等々がありまして、私が局長から預かっている内容と私自身がこの職責で感じていることを申し述べたいと思います。
まず、局長の福田とも常々話しておりますのが、先ほど福井座長もオーバーラップ、まとめる形でおっしゃっていただいたように、緩和ケアの答えを出せるのは患者さんしかいらっしゃいません。なので、私どもの政策も全ては患者さんに届くのか、それにかかっていると思っております。きょう構成員の皆様からさまざまな御指摘をいただいたことも、それが最終的に患者さんに届くのか、その視点で改めて再整理をしたいと考えております。
私、この職責を預からせていただいて思うのが、このポストは私が3代目です。佐々木健、渡辺真俊、そして私とこのポストを務めているわけでございますが、幸い最初担当させていただいた佐々木健は、今、地域医療計画課長、医政局におりまして、きょう最初のほうで話がありました人生の最終段階における医療とか、在宅医療とか、またがん・循環器を含む医療計画を担当しております。その次の渡辺真俊も今、国立病院機構の医療部長として全国143の病院を、先ほど申し上げました患者さん・御家族と直接接する。チーム医療を考えるときに多職種連携という言葉がありますが、きょうの指摘でありますと、同じ医師の中でもちゃんと診療科ごとにつながっているのか。また、今の時代のチーム医療の考え方は、資格を持っている職種だけではなくチームを組むということに移ってきております。それが進んでいるのか。さらには、今、政府全体として進めているのが病院完結型医療から地域完結型、また、患者さんはその都度病状が変わりますので、地域循環型医療ということも含めて政策を打っているところでございます。
きょう御指摘いただいた中でも、均てん化ということを考えますと、今、401にまで及びましたがん診療連携拠点病院、また地域病院まで含めると437までふえてございます。それに加えて均てん化を考えますと、当然拠点病院、その先に在宅医療もあるでしょうし、例えば仕事をしていらっしゃる方で言えば、仕事と治療の両立、子供で言えば学業との両立。また、今、さまざまな形でがん患者さんを支えてくださっている方々がいらっしゃいますので、病気を持っていても暮らせていける社会・地域を目指しているわけです。
その端的な例として、今、働き方改革をこの国会での法案も含めて政府が進めているわけですが、その先にあるのは、地域そのものが100歳まで活躍できる、病気を持っていたとしても活躍できる、そういう社会づくりを目指しているところです。
繰り返しになりますが、今までさまざま御指導いただいた点はこの視点から展開していきますし、最終的には患者さんにちゃんと届くような形での緩和ケアを政策として講じていきたいと思います。まずは第3期がん対策推進基本計画が、もう5カ年度残っておりますので、そのスパンの中での検討を進めていくわけですが、今の社会というのは、医学・医療だけではなく、さまざまな要因が急速な勢いで進んできております。なので、あるものは早い進歩に対応していけることが必要ですし、あるものは変わらぬ価値観としてつないでいかなければならないものがあります。その組み合わせも含めて今後政策を進めてまいりたいと思いますので、きょうが一つの区切りではありますが、引き続きさまざまな形で御支援いただきながら、また御相談を差し上げたいと思いますので、最後の言葉としては、引き続きよろしくお願いいたしますという言葉をもって、この構成員の皆様、福井座長のもとでのこの検討会を区切らせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
○福井座長 ありがとうございました。
構成員の皆様には2年間にわたり円滑かつ非常に貴重な御審議をいただきまして、ありがとうございました。
以上で本日の会議を終わりたいと思います。ありがとうございました。
 

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健康局がん・疾病対策課

代表 03-5253-1111(内線3826)