第8回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(議事)

職業安定局雇用開発部障害者雇用対策課

日時

平成30年3月30日(金)10:00~12:00

場所

厚生労働省専用第21会議室(17階)
(東京都千代田区霞ヶ関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館)

議事

○阿部座長 出席予定の委員皆様がおそろいですので、ただいまから「第8回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」を開催したいと思います。本日の欠席委員は加賀委員、志賀委員です。
早速ですが、議事に入りたいと思います。まず事務局から、論点である多様な働き方のニーズ等に対応した障害者の働き方の質の向上について、資料に基づいて説明を頂きます。その後、委員の皆様から御意見を頂きたいと思っております。それでは、事務局から資料1について説明をお願いします。
○障害者雇用対策課長補佐 厚生労働省障害者雇用対策課の高沢です。よろしくお願いいたします。
本日、資料が若干長くなっております。委員の皆様には事前に資料もお配りしていますので、少し手短に御説明していきたいと思います。また後ほど、個別に座長から整理があると思いますが、少しずつ分けて幾つか論点をそれぞれ御議論いただければと思っております。
資料1の2ページです。こちらは昨年9月、研究会の第1回においてお示しした関係団体からの主なヒアリング項目です。これまでこの項目に沿って15団体からのヒアリングなどを進めると同時に、皆様からも御意見を頂いてきました。
そうしたものを踏まえ3ページ及び4ページに、本研究会において今後検討を行っていただきたいと考えている論点について、幾つか整理しております。※印として障害者雇用の現状の評価と書いてありますが、後ほど、雇用の現状の評価も書いてありまして、こちらについては、ある程度、委員の皆様あるいはヒアリングにおいても、一定と言いますか、ある程度同じ方向の御意見があったのかと思っております。論点としては個別の方策、今後の対策についてということで幾つか挙げております。
論点1として、今も座長からお話がありましたように、多様な働き方のニーズ等に対応した障害者の働き方の質の向上と掲げております。更に細かく分けると、4点ほどあろうかと思っております。これを今後、今回を含めて3回ないし4回程度をかけて御議論いただく予定で我々としては考えております。
1-1は、障害者の職業生活の自立の推進、いわゆる雇用の質の向上、あるいはもう少し絞って表現すれば、職業生活における自立の推進ということで、障害者雇用全般の方策、中高年齢層の方の雇用の安定、精神障害者の方の雇用の安定・雇用継続というところを、それぞれ御議論いただければというものです。
1-2は、今回研究会を進めていく中で、大分議論として大きく出てきた話ですが、週20時間未満勤務の障害者の方への対応というものです。こちらも後ほど簡単に御説明します。
1-3は、在宅就業等の雇用以外の働き方をする障害者の方への対応です。現状でも在宅就業支援制度というものがありますので、そういったものを中心に御議論いただければというものです。
1-4として、そうした制度面での対応と、もう1つ大事な話として実態面と言いますか、運用面において地域の支援機関がどうやって連携を促進していくのか、その他助成金を含めて各種支援策をどういった形にしていくのかが大きなところであろうかと思っております。
そのほか、論点2として「中小企業における障害者雇用の推進」、論点3として「その他、制度の在り方について」ということで、法定雇用率制度の在り方などについても御意見を頂いていますので、そういったところを御議論いただければと思っております。
質の向上について、4ページにもう少し具体的に書いています。1つ目に書きましたのは、障害者雇用対策の推進に当たって「雇用の量」と書いていますが、いわゆる雇用者数という意味においては、特に近年は一定の改善が見られるのですが、一方、希望や特性に合った仕事で、長く安定的に働き続けられるなどのいろいろな概念がありますが、いわゆる雇用の質の向上に着実に取り組むべきという方向性については、ある意味共通の課題として議論が進められてきたのではないかと思っているところです。
2つ目以降ですが、まずは雇用の質の向上といったところで、実際には具体的な指標や中身についても、様々な視点が言及されているわけです。加えて、障害者お一人お一人の希望や特性、あるいは障害特性なども多様化してきている中にあって、どのような視点から今後の対策を進めていくことが必要であると考えられるかが最初の論点です。
例えば、ヒアリングを進めていく中で幾つかの意見として、現行の雇用率制度や納付金制度において、雇用の質の向上を追加的なポイントとして評価してはどうかという御意見がありました。具体的には、例えば正社員として雇用している場合や、週40時間あるいは正社員と同水準の勤務時間によって雇用している場合、あるいは長期間にわたって雇用継続し続けている場合など、様々な観点がいわゆる職業生活の自立に資する点としては考えられるわけですが、そういったものをこうした形で評価することについてはどう考えるかというところも、論点としてあろうかと思っております。
加えて、中高年齢層の障害者の方が離職した背景としては、体力の低減等が考えられるわけですが、そうした方々が長く働き続けられる環境を整備するためには、どういった方策が考えられるか。本日は、この辺りまでを御議論いただければと思っております。
次回以降をお示ししますと、精神障害者の方をはじめとして、職場定着に困難を抱えるケースが多く見られるわけですが、そうしたお一人お一人の傾向に対応した安定的な雇用の場をどういった形で作っていくのか。次がいわゆる週20時間未満の話、近年のICTの発展であるとか、多様な働き方が浸透していることによって、これは社会全体の話でもあるわけですが、働く時間や場所の制約というものが、だんだんなくなって取り払われつつある中で、例えば週20時間未満で勤務したいということを希望する方だけではなくて、これまでであればなかなか雇用に結び付かなかったけれども、週20時間未満であれば働くことができる、あるいは雇用契約として雇用労働者として働くことができるという方も多く見られることから、こうした方々への対応が求められているというのではないかという論点もあろうかと思います。
加えて、障害者の多様な働き方の希望を実現するためには、雇用に限定せず、企業活動の中で障害者の就労に対する支援も促していくことも求められているのではないか。こうした取組が、中期的には障害者雇用の促進につながるようなことも考えられるわけですから、そうしたことも踏まえて、在宅就業支援制度などについて今後どういった対応が求められていくのか。
最後が先ほど御説明したように、地域の支援機関の連携、各種助成制度の活用など、具体的にどういったものが考えられるかを、今後、次回以降も含めて御議論いただければというものです。
6ページ、7ページに障害者雇用の現状の評価ということで、これまでヒアリングを進めてきた中で出てきたような御意見を記載しております。時間もありませんので、ここは若干省略させていただきますが、全体として、障害者雇用の現状に関しては、いわゆる雇用者数、雇用の量というところは、前向きな評価が多かったのではないかと思っております。7ページはヒアリングにおいて出てきた意見をそのまま抜粋しておりますが、地域の支援機関などの増加あるいは受け皿の拡大というところで、雇用率に達していないなど幾つか課題意識は当然あるわけですが、全体としては雇用者数、雇用状況というのは非常に改善しているという御意見が多かったかと思っております。
8ページ以降で、先ほど御説明した障害者の雇用の質の向上ということで、まず障害者雇用全体に関わること、あるいは中高年齢層の方に関わることを御議論いただきたいと思っております。9ページ、10ページは、先ほど御説明した内容を今回御議論いただく点について枠囲みをしているものです。
11ページを御覧ください。障害者雇用の在り方についての考え方ということで、現行制度においても当然障害者の雇用者数を増やすことのみを目的としているものではありません。例えば、法律の第1条においても、目的において、まずは障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置ということで、いわば雇用者数を増やしていくということを念頭に置いた規定もあるわけです。ただ、その他ということで、全体としては、障害者がその能力に適合する職業に就くことなどを通じて、職業生活において自立することを促進するなどの措置を総合的に講じるものとするということ。第3条の基本理念においても、職業生活においてその能力を発揮する機会を与えられるものというようなことが書かれております。
最近のもので申し上げれば、働き方改革実行計画においても、実現会議の決定の中で、障害者の意欲や能力に応じた仕事を提供するなど、障害者等が希望や能力、適正を十分にいかし、特性に応じて活躍できることが普通の社会を作っていくものであるということで、いわば質的な観点も目指しているところではあるというものです。
12ページです。例えば雇用率制度に入れてはどうかという御意見も幾つかありましたので、現行の雇用率制度の考え方を簡単に御紹介いたします。現行の雇用率制度においても、例えば対象となる労働者をどういった線引きにするか、あるいは短時間労働者の整理をどういった区分にするかということについては、正に長く働ける環境であるかどうかなどの職業生活における自立という観点から整理を行っています。幅広い意味においては、雇用の質の向上に資するような観点からも、雇用率制度というのは一定の線引きをしているものであろうかと思っております。
他方、重度障害のいわゆるダブルカウンターなどについては、就労困難性の観点から整理を行っているものです。制度としては、正に職業生活における自立が可能かどうかという観点と、それぞれお一人お一人が就労困難性をどれぐらい持っているかという観点の双方から、障害者雇用率制度あるいは納付金制度というのは、それぞれの区分整理を行っている制度であるということかと思います。
13ページですが、今申し上げた就労困難性というものについて、簡単に独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構で整理しているものをお示ししています。一般にお一人お一人の職業能力を考える際、このピラミッドで言うところのいわゆる上の職業適性のようなものが非常に注目される傾向が、特にかつてはあったわけですが、実際にはお一人お一人の就労困難性というものを考えていくと、むしろピラミッドの土台にあるような対人技能や日常生活管理あるいは健康管理というような、正に通常の生活を送ることがどれぐらいできるかという能力も、非常に重要な要素を占めているところが最近言われてきています。これは御紹介までですが、そういった論点があるというものです。
14ページ以降、幾つか障害者雇用における質の向上、あるいは職業生活における自立というものに関連する指標を整理しておりますので、簡単に御説明したいと思います。14ページは、これまでも御説明してきているものです。いわゆる平均勤続年数については、身体障害の方が最も長く、知的障害の方、精神障害の方と短くなる傾向が全体像として言われているところです。
15、16、17ページが、それぞれ40代の方に限定して、勤続年数と雇用形態を整理しているものです。身体障害の方を見ていただきますと、これは40代の方に絞って見ていますので、全体としては正社員の方が多いということに加え、その中でも20年から25年の勤続年数を中心として、恐らく新卒あるいは比較的若い頃に就職してから長く働いているという方が多くを占めています。
一方、正社員に関しては0年から10年程度の方も一定数いらっしゃるわけですが、全体としてはそういう山があります。他方、有期契約の方については、ある意味想像のとおりですが、比較的継続期間の短い方が多い傾向になっているのが、身体障害の方の、これは中途障害を除いた調査ですが、傾向かと思っております。
続きまして16ページの知的障害の方、これもやはり40代について見ていきますと、身体障害の方に比べると、やはり全体として正社員の方は割合としては少ないわけです。他方、正社員の方の中で申し上げれば、正に20年から25年を中心に長く働いている方、長く継続されている方が、非常に多くなっているということが言えるかと思います。
ただ、全体としては有期契約の方が多くなっているということと、もちろん雇用契約継続期間が短い方も多いわけですが、有期契約のまま、雇用継続期間が20年から25年になっている方も一定数に昇っているということで、そういったところが身体障害の場合とは傾向が異っているということかと思います。
最後は精神障害の方、これも中途障害の方を除いた場合の調査です。これを見ていきますと、圧倒的に有期契約の方が多いということと、0年から5年程度の方が全体の約6割を占めているということが言えるかと思います。他方、正社員の方とか非正規の方は非常に少ないということ、雇用継続期間についても、一定年数以上の方というのは非常に少なくなっているというのが、全体の傾向として言えるかと思います。
18ページから21ページについては、第1回目でお示ししました障害種別の定着状況について、幾つか重要と思われるものを抜粋いたしました。こちらは御参考までというものです。
22ページです。障害種別の正社員割合を見ていきますと、全体としては身体障害の方が約6割弱であるのに対し、知的障害の方の場合には2割弱、精神障害の方の場合には4割程度に留まっているのが、正社員の割合かと思います。平成20年から25年にかけて数字が下がっておりますが、平成20年度の調査では正社員の定義について、契約期間の定めのない社員、実質的に無期契約社員ということで定義を置いていた関係と、一方で平成25年については勤め先での呼称ということで、後ほど御説明しますが、他の調査と同じような形で調査を行った関係で、数字が下がっているというように考えていただければよろしいかと思っております。
続いて23ページ、そういった形で正社員ということで調査をしているわけですが、いわゆる正規雇用や正規雇用労働者については、確立した定義はないというのが現状です。個別の調査であるとか制度においては、それぞれ次のように定義しています。まず、労働力調査等における「正規雇用」というのは、正に今、御説明したように勤め先での呼称により整理しています。例えばキャリアアップ助成金や当方の障害者雇用安定助成金における「正規雇用労働者」というのは、イからホまでの定義に該当する者として正社員という定義を置いています。無期契約社員であるとか、派遣労働社員ではない、あるいは勤務地が限定されていない、所定労働時間が通常の労働者と同じである、あるいは賞与等の就業規則が同様の形態を持っているということで、呼称だけでなく、労働時間であるとか就業規則などにおいて、通常の労働者、正社員と同じ扱いになっているかというところを見ているものです。
加えて※印に書いてありますが、それぞれの助成金においても、勤務地限定正社員あるいは職務限定正社員という定義を置いています。それぞれ勤務地が限定されていること、あるいは職務が限定されていることというのは、要件として除いているというものです。そうした形で、助成金制度などにおいては、それぞれ明確に線引きするものとして正社員の定義を置いているところです。
24ページ以降では障害者雇用実態調査ですが、いわゆる正社員の呼称で調査しております。障害種別の平均給与及び勤続年数を見ていただきますと、いずれの障害種別においても、いわゆる決まって支給する給与の平均は、正社員が最も高く、正社員以外の無期雇用、有期雇用の順に低くなる傾向にあるわけです。加えて、平均勤続年数も正社員、無期、有期ということで、結果としては同じように連動するような形になっております。全体としては、給与水準はこういった形になっております。
参考までに、福祉的就労における平均収入を見ていただきますと、A型の場合は7万1,000円、B型の場合は1万5,000円、B型は工賃ですが、A型事業所に比べると、水準としてはいずれにしても高水準を維持しているということであろうかと思っております。
加えて、それぞれ賃金カーブのような形で、25ページから27ページにそれぞれお示ししています。25ページは雇用形態別の賃金カーブです。身体障害者の方については中途障害を除いて見ていただきますと、青が正社員の形ですが、全体としては雇用継続年数が長くなればなるほど待遇が改善していく様子が見られます。他方、正社員以外の場合には、雇用継続期間にかかわらず待遇が改善していく様子が見られないこと、加えて無期と有期においても、それぞれの間でほとんど差が見られない状況です。
26ページです。知的障害の方についても同様に、雇用継続年数が長くなるに従い、徐々にではありますが、待遇が改善していく様子が見られます。他方、正社員以外の場合には、雇用継続年数にかかわらず待遇がそれほど改善していく様子は見られないということ、やはり、こちらも無期契約と有期契約の間では、待遇面での直接的な格差は見られないところです。
27ページが精神障害の方です。精神障害の方の場合、先ほどもお示ししましたとおり、長期間にわたって雇用継続されている方というのは、そもそも非常に少ないということで、15年以上についてはデータをお示ししておりません。ただ、全体としては正社員とそれ以外ということで、待遇面では異なるという点と、やはりこちらも無期と有期の間では、純粋な金銭面での待遇においては格差が見られないという状況です。ここまでが、雇用継続年数や正社員、賃金といったものについて、それぞれの整理をしたものです。
加えて、雇用の質の向上といった場合に、こういったいわゆる待遇面に加えて、様々な配慮も考えられるだろうということで、28ページに整理をしているものがありますので御覧いただければと思います。28ページ、これも同様に平成25年の雇用実態調査における調査です。左側が雇用障害者への配慮事項ということで会社側に質問したもの、右側が本人に配慮を受けているかどうかを聞いたものです。左側と右側で若干、当然ですが、会社として配慮しているという答えと本人の受止めでは、一定程度の格差があるわけですが、会社としては、約7割ぐらい配慮しているというアンケートを頂いているわけです。
その内訳、具体的な配慮あるいは本人が感じている配慮という点を見ていきますと、それぞれ数字は当然異なるわけですが、全体の傾向というのは、ある程度似ているところがあります。例えば、会社側の配慮という点でも、色を塗っていますが、配置転換などの人事管理面、あるいは色は塗っておりませんが、その上の短時間勤務、休暇取得、通院等への配慮というところは、一定程度の配慮が行われているというように言えるかと思います。
あるいは、例えば特に知的障害の方に限定しますと、工程の単純化など職務内容の配慮であるとか業務遂行を援助する者への配置というのは、一定程度配慮が行われているということかと思います。他方、配慮が行われていないものとしては、研修・能力開発機会の提供が4%台に留まっているのに加え、職場復帰のための訓練機会の提供、あるいは他の支援機関との連携体制確保というようなものが、配慮を行っていないというものでは挙げられるかと思っております。
御本人が感じている配慮という点も、やはり傾向としては似ているようなものがございます。やはり調子の悪い時に休みを取りやすくするとか、能力が発揮できる仕事へ配置するというところも配慮は見られるわけです。ただ、全体として、職業生活や生活全般に対する相談員の配置、あるいは教育訓練・研修の充実という意味で、やはりキャリアを長期にわたって形成していくという観点においては、十分な配慮が行われていないという意見もあるというところかと思っております。いわゆる質の向上ということにおいては、こういった点について、正社員待遇などの話から始まり、このような配慮も含めて、どういったものが必要であるかを御議論いただければということかと思っております。
29ページ以降が、本日の最後の議論である中高年齢層の関係です。29、30ページは、既に第1回においてお示ししているものですが、身体障害の方の場合には高齢化の傾向が見られるのに対し、知的障害や精神障害の方の場合には全体で若年層が増加傾向にある中、55歳以上の労働者の割合というのは非常に限定的であるところが、29ページでお示ししているものです。
30ページにおいても同様に、推計を用いたものではありますけれども、一般労働者より早いタイミング、おおむね50代前半ぐらいで、特に知的障害の方を含めて引退の時期が到来していると言えるのではないかということで、中高年齢層になっても継続して働ける環境を整備していく必要があるだろうというのが、最初の段階でもお示したものです。
31ページはハローワークにおける職業紹介状況です。棒グラフが新規求職者数、折れ線グラフが就職率です。一般労働者に比べ、やはり身体障害の方の場合、60歳から64歳が最もピークになる、中途障害の方が多いことも含めて、60歳から64歳がピークになるということかと思います。他方、左下の知的障害の方、青いグラフですが、19歳以下の方が非常に多いのに対し、高年齢層になるに従って急激に下がっていく傾向が見られます。これは療育手帳を持っている方が、特に高齢層の場合に少ないこともあろうかと思いますが、やはり全体としては、年齢が上がるに従って働く方が減っていくという傾向とも対応するのではないかと思っています。
精神障害の方、右下を見ていただきますと40歳から44歳がピークになっております。一般労働者に比べますと、やはり40歳から44歳がピークということで、中年、高年辺りの方が多くなっております。やはり、こちらも中途障害の方が一定割合を占めているところも、傾向としては含まれるのかと思っております。
他方で、就職率について見ていただきますと、これはあくまでもハローワークに就職したいということでいらっしゃっている方に限定されるわけですが、50代ぐらいまでは、それほど年齢によって就職率が低下していくという傾向はありません。60代になると低下していくわけですが、60歳前までであれば、就職率は一定程度維持しているということが、全体、それぞれの種別について言えるのではないかと思っております。職業紹介状況全体についてはそういった状況です。
32ページ以降は中高年齢層の方が求める配慮です。ある意味、先ほどの全体の配慮と近しいところですが、お示ししているものです。32ページは第1回でお示ししたデータですが、求められているものとしては、体力を要する作業を減らす、残業時間を制限する、通院時間を保障するというようなことが求められているのに対して、配置転換あるいは雇用形態を見直すというところを配慮として行われているものは少ないということです。加えて、訓練・研修を受けさせるというものも、全体としては非常に低くなっているということが言えます。
続いて33ページ、これはハローワークにおいて直近(平成30年2月)に調査したものですが、ハローワークにおける50歳以上の求職中の障害者の方にアンケートしたものです。本来であれば、雇用継続にどういった配慮が必要かという意味においては、現に働いている方にも調査をするほうが望ましいと思いますが、当面速やかにできる調査ということで、ハローワークで行ったものです。調査の内容としては、現在求職中の方に、前職において年齢を重ねていくことで継続して働くためには、どういった配慮が必要だと当時考えていましたかというようなことを聞いています。こちらに挙げている5項目について「大いにある」から「全くない」まで4段階で回答していただいているものです。
見ていただきますと、全体として離職理由にかかわらず、「職場の環境が整っていない」を挙げる方が最も多く、「勤務時間を減らしたい」を挙げる方というのは限定的であります。ただし、「仕事の内容を軽易なものにしたい」、「ノルマを減らしたい」という方は一定数いらっしゃることを考えますと、仕事の負担感という意味においては、全体としては減らしたいということを考える方がいらっしゃるということかと思います。加えて、自分の能力やスキルが活かせないと感じていた方も、一定割合を占めているというところが、論点としては重要な論点かと思っております。
34ページも同じ調査について、障害種別に整理し直したものです。全体としては同じような傾向でありますけれども、「職場の環境が整っていない」を挙げる方は精神障害の方が非常に多く、あるいは知的障害の方も一定程度多いのに対し、身体障害の方は比較的少ないことが、全体の傾向で言えるかと思います。「勤務時間を減らしたい」方については、むしろ身体障害の方が比較的多いのに対し、知的障害、精神障害の方は比較的少ないというのが、全体の傾向であろうかということが言えるかと思っております。
最後の35ページは「勤務時間を減らしたい」、「職場の環境が働く上で整っていない」について、それぞれ「大いにある」と「ある」に回答した方について、後ろの自由筆記欄を我々で整理をしたものです。したがって、どこに入れるかというのは我々の判断によるところもありますので、データとしては若干不正確なところもありますが、全体の傾向をつかむ上で見ていただければというものです。まず「勤務時間を減らしたい」ですが、「大いにある」「ある」と回答した方のうち、実際7割程度は関連する記載はないということで、そもそも書いてある中身は「ノルマを減らしたい」などの別のことが書いてある。時間を減らしたいと言っているけれども、実際に特に求める内容は何ですかと自由筆記で聞くと、余り時間のことは回答がないのが全体の傾向です。
ただ、全体30件程度ですが、回答いただいている中で見ていきますと、「残業時間を減らしてほしい」「通院のための時間を配慮してほしい」といったものもあるのに対し、一部、「パートに変えてほしい」「体力がないので減らしてほしい」ということで、正に所定労働時間自体を減らしてほしいという声も一定数あるわけですが、全体としてはごく僅かに止まっております。
他方、「職場の環境が働く上で整っていない」について、これも「大いにある」あるいは「ある」と回答した方について、要望内容の整理を行っていきますと、aとbはいずれも広い意味でのコミュニケーションでのものだと理解しておりますが、aは正に周りの社員とのコミュニケーションそのものが不足しているといったものでして、これを挙げている方が全体の8.4%です。加えて病気や障害への認識をもってほしい、知らせてほしくない人へ言わないでほしかったというものもあれば、周りにもっとちゃんと伝えてほしかったという両方がありますけれども、両方含め13.2%、全体で約2割、50人程度がそういったことを挙げています。
加えて、スピードが落ちてきたので配置を変えてほしいとか体力が落ちてきたことを挙げる方もいらっしゃいます。加えてfのところ、長く働ける環境を整備してほしいということで、処遇改善であるとかジョブコーチ支援、スキルアップなどの配慮というものをやってほしいという方もいらっしゃいました。関連する記載なしというのはごく一部に止まっておりますが、全体としてはこういった傾向になっているということかと思います。
全体を説明いたしましたが、それぞれ論点を分けて御議論いただければと思っています。よろしくお願いいたします。
○阿部座長 ありがとうございました。それでは、意見交換に移りたいと思います。毎回お願いしておりますが、発言される際は挙手をしていただき、お名前を名乗ってから発言するようお願いいたします。
それでは、資料1に従って御議論いただきたいと思いますが、先ほど事務局からありましたように大部にわたりますので、少し区切って御議論いただきたいと思います。まず、資料の3ページ目の今後検討を行っていく論点について、御議論いただきたいと思います。これは多分、私の記憶に間違いがなければ、今年の夏ぐらいまでには中間報告をまとめるということになっております。その中間報告でまとめるものと、あるいはその後で、また時期を見てまとめていくものもあると思いますが、中間報告なり、あるいは中間報告まで間に合わなければ、その先でもいいといったメリハリについてもお話を、以前も頂いたとは思いますが、またここで何かありましたら、それについてもお話を頂ければと思います。それでは御意見があれば、どなたからでも結構ですので、よろしくお願いします。
○工藤委員 日本盲人会連合の工藤と申します。全体の論点の立て方について、基本的に異論はありません。賛成です。最初、この研究会で説明を受けたイメージだと、どうしても雇用率の制度、雇用率の議論が優先というような印象を受けていたのですが、今の立て方を見ると、1つは働き方の質の問題、すなわち質ということは、やはり雇用管理、職場環境の管理、そういうことなしには実現できないわけですので、そのためには、まず、事業主の支援はもちろんであるし、それから障害者に対する支援、それから障害者を支援する人への支援、そういうことが今後、議論されていくのではないかと思っています。
2つ目は中小企業、それから3つ目が、いわゆる雇用率制度、その他雇用率制度ということなので、基本的にはそういうことで、是非、進めていっていただきたいと思います。
それと、この全体の資料の中で、今、説明の中に出てこなかったのですが、障害者基本計画の数字だとか、書きぶりが引用されているのですけれども、第3次のことが書かれています。今、ちょうど第4次の計画がパブコメで求められているところですので、今後そういうことも擦り合わせていきながらの議論を展開していけたらいいかなと思っています。取りあえず、今のところはそんな感じです。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。
○本條委員 全国精神保健福祉会連合会の本條です。論点の整理と言いますか、3つ分けてあるということ自体は賛成であります。ただし、論点1の1-2、「週20時間未満勤務の障害者への対応」となっております。これは恐らく現行の週30時間未満週20時間以上を短時間雇用として、20時間未満については雇用率のカウントに入れないということを、どうしていくかということだと思います。それ自体はいいのですけれども、やはりここで短時間カウントというもの自体を議論する必要があるのではないかと思っています。
前回に頂いたフランス等の短時間カウントによりますと、週40時間かどうか分かりませんが、40時間としますと、20時間以上と20時間未満に分けて措置を取っているようですので、それがいいかどうかは別として、そういうものも踏まえて議論していただきたいと思っております。
それから、論点2につきましては、中小企業における障害者雇用の推進ということで、これは大企業は雇用率を達成している割合が非常に多い、中小企業は達成できていない企業が比較的多く見られるということですので、これの対策を取っていくということは必要だと思いますので賛成なのですが、ただ、大企業と言いましても、数十万人、数万人という従業員がいる超大企業と、数百人の規模の大企業では、雇用率がどのようになっているのかという分析も必要ですし、それから、規模が大きくなればなるほど、雇用率がそれだけ達成度合いが高いかということも検証する必要があるのではないかと。以前に頂いた資料によりますと、必ずしも中小企業等においても、一番小さい所が一番低いということではないようなデータでしたので、人数別による分析も必要ではないかと、それを基に議論していく必要があるのではないかと、このように思います。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
○工藤委員 日盲連の工藤です。今、私も資料を点字と墨字を比較して読めないものですから、今の例えば14ページは勤続年数ですね。22ページが正社員比率、それから24ページが平均給与と平均勤続年数、今言った14、それから22、24ページは、障害者の比率しか出てこないので、要するに障害者でない、一般の人との比較というものもあったらいいかなと思います。以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。
○栗原委員 栗原です。ただいまの工藤さんのされたお話に、ちょっと付け加えたいのですが、例えば22ページの、平成20年度正社員、知的障害者が37.3%と、平成25年がかなり落ちて、約19%という話なのですが、この辺がどうも何となく数字が本当なのかなという感じがします。平成25年の場合は、勤め先で正社員又は正職員と呼ばれているということですから、でもこれは、やはり正規というふうに見るべきだろうと思いますので、そうすると、なぜこんな下がるのかなと。普通であれば上がらなければいけないのが、なぜこんなに下がってしまうのかなと。
賃金も、26ページですが、賃金ベースで知的障害者のほうが勤続30年以上の場合が23.3%ということで、30年というと大体50歳前後のお歳ですね。そうすると、だんだん加齢が始まってくる、それで冒頭のほうでも中高年層の障害者が離職した背景としては、体力の低下等が考えられ、それで50年というのは、4ページに論点案が出ていまして、どんどん上がっていくのは何となく奇異に感じ、数字的に本当にこのまま読んでいいのかなという感じがしました。
あと、休職中の方が、短時間労働は余り望まないというのは、これは当然だと思うのです。休職するのに時間を短くして働きたいというと、やはり就職に支障が出るということで、その辺についても、当然、私は時間を長く働きたいというようなデータが出てくるのではないかというような感じもしているわけです。また、働いている人で、ある程度高齢化した人に少し時間を短くしたいかどうかというような質問であれば、また違った見方が出てくるのかなという感じがしました。以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。データについては工藤委員と栗原委員から、いろいろと御指摘がありましたので、工藤委員のおっしゃる一般の労働者との比較というのは、1個付け加えれば、資料としては出てくるのかとは思いますので、事務局のほうでできたら用意していただければと思います。
あと、栗原委員がおっしゃった26ページの所で、若干、確かに知的障害の人たちのところで、25年以上で賃金がかなり他の勤続年数グループよりも高いですけれども、1つはもしかしたらですが、人的資本の高い人たちだけが長期勤続をしていて、その結果として賃金が高くなったというようなこともあるのかというのが1つあります。全員が全員、長く働いているというわけでもないと思いますので。
○栗原委員 栗原です。好意的に見ればそうだと思うのですが、これはやはり全国の平均だと思うのです。東京だとか神奈川だとか、賃金の高い所であれば、ある程度分からないではないのですが、やはり全国平均で見ると、そんなに上がっていくというのは、何となく本当かなという感じがしてしまうわけです。
○阿部座長 そうですね。全国平均であっても、東京だとか高い賃金の地域にいらっしゃるだけではなくて、本人が例えば体力的に強い人ですとか、あるいは勤続が伸びるような、そういう人的資源を持っている人たちが残ってしまっている可能性があるのではないかという、よく専門用語ですと、サンプルセレクションバイアスと言って、ある特定の人たちだけに偏ってしまった結果、賃金が偏りを持って出てしまうという傾向が、よく統計上は現れるのです。
これは一般労働者でも、例えば55歳以上の人たちは賃金が下がるのですが、それは一般雇用者から、例えば役員だとかに昇格していくと、賃金のデータには入らないので、下がってしまうとか、そういういろいろな要素があります。これはこれで正しい数字ではあるのですけれども、読み方には注意したほうがいいかなとは思います。
○漆原委員 すみません、連合の漆原です。じっくり考えさせていただきました。質問のタイミングが遅くなってしまって申し訳ございません。こちらの研究会の表紙のほうを御覧いただくと、障害者雇用の質の向上となっておりまして、量もさることながら、質に着眼していただいたということは、本当に有り難いと思っております。
一方、こちらの横の資料の3ページの所ですと、障害者雇用の質ということではなくて、論点1のほうは、「障害者の働き方の質」と書き方が変わっている所があります。研究会のほうの縦の紙の雇用の質というと、受けるイメージとしては雇用形態ですとか、障害者が自立して生活できる賃金の話ですとか、そういったことをイメージするのですが、働き方の質と言ったときには、いろいろなものがそこに入ってくるので、ちょっと受けるイメージが1ポツの所と論点1の所は、何か若干違いがあるのかと、つらつら考えていたところでした。
その中でも、取り分け1-1の「障害者の職業生活の自立の推進」というのは、是非、進めていただきたいということなのですが、今後議論できる回数が、やはり限られていますので、論点1の4つと2と3を全部、3回から4回で仕上げるというのは、かなり難しいのかなとは思っているのです。これを論点3を含め、どういうペースで議論をしていくのか、お伺いできればと思っているところです。
○阿部座長 では、御質問ですので、事務局からお願いします。
○障害者雇用対策課長補佐 事務局です。まず1点目の雇用の質の向上と働き方については、基本的に持っているイメージとしては雇用の質の向上なのですが、表現ぶりとして、あるいはもう少し適切な表現があるのかもしれません。例えば1-3の在宅就業支援制度は雇用ではないので、その関係で雇用という言葉をここに使えないので、働き方と代替していますが、イメージとしては、そこは本来的に言うと雇用の質の向上につながるような話に絞ってと言いますか、働き方という広い意味で申し上げているというよりは、雇用の質の向上と、それに並ぶものとして在宅就業支援制度も考えているというものです。
2点目については、具体的な回数を、今、ここでお示しするのはなかなか難しいところもありますが、論点1について、おおむね3回から4回程度、御議論いただくということと、論点2、論点3もそれぞれ会を設けて御議論いただくということを予定しております。その上で、全体をまとめるということも含めて、若干、春以降、回数的に言うと厳しいと言いますか、回数多くお願いすることも出てくるかとは思います。そういう意味では、個別の論点をそれぞれ、ここで言うところの6項目を、大体1回ずつぐらい御議論いただいた上で、最後、中間整理みたいなものをやっていくということで、それぐらいの回数を予定しようかと思っております。
○阿部座長 少し付言させていただくと、以前、長谷川委員が雇用だけではなくて、記憶が正しくないのですけれども、雇用類似の働き方についても検討すべきではないかという御発言があったように記憶しているのです。厚生労働省の中でも、今、雇用類似の働き方について議論されているということは、漆原委員も御存じのとおりかと思いますが、労働市場全体の動きを見ていくと、やはり雇用類似の働き方というのは、今後増える可能性もありますし、そういった中で障害者の皆さんも働いていく、そういうところは我々も射程として捉えておく必要があるのかなと。
そうすると、今、漆原委員がおっしゃったように、前のほうでは雇用の質という言葉だけれども、論点1では障害者の働き方の質と変わっているのは、もしかしたら雇用の質だけではなくて、働き方の質というように、少し捉え直しても間違いではないのかなと。働き方の質の中に雇用の質というのを入れていくというのもあり得るのではないかなと、今、漆原委員の質問をお聞きしながら、私なりに感想を持った次第です。ほかにいかがでしょうか。
○塩野委員 塩野です。24ページの賃金実態の資料で、正社員と正社員以外では大きな格差があるというご説明を頂いておりますが、正社員以外の方の働き方については、例えば1か月の所定労働時間数が正社員の方とは異なっていることも想定されるため、単純な比較は適当ではなく、処遇差は、ある程度説明ができるのではないかと思います。
また、A型事業所については、今回は調査対象としていますが、、A型事業所の場合、必ずしも一般就労と同様ではなく、異なる就労実態があることから、本来であれば調査から外すべきではないかと考えます。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。多分、ここは、それこそ雇用の質のところを見たいということなのではないかと思うのですが、確かに塩野委員がおっしゃるように、働き方が違うとか、労働時間が違うとかという、厳密にはそういった違いもあるので、それは含まれているとは思うのですが、ただ、障害者の自立ということを考えると、こういった資料で平均給与というか、月当たりの給与を比較して、雇用の質の違いというのを見たいというのが事務局の意図ではないかと、私なりに察していますけれども。
○障害者雇用対策課長補佐 ありがとうございます。
○阿部座長 いいですか。ほかにいかがでしょうか。
○長谷川委員 福島大学の長谷川です。今、いろいろ御意見が論点があったのなかで、どこから話をするのがいいのか難しいのですが、雇用の質について、考えたいと思います。雇用の質は、私も非常に重要だと思うのですが、その際に雇用の質の中身とはそもそも何なのだろうかというのを少し考える必要もあるのかなとは思っています。恐らく同じようなイメージは持っていると思うのですけれども、その具体的な中身というのはいろいろあり得るだろうと思っていて、収入が高くなることももちろん重要ですけれども、それだけではないかもしれないですし、雇用の安定ということも、雇用の質かもしれないと考えていったときに、雇用の質とは一体何なのだろうかというのを、特に障害者の方々が、どのように考えていらっしゃるかというのを聞きたいなと思っています。そういった議論というのは、その後の、その雇用の質をどういう制度で保障していくのかというところと直結してくると思うので、非常に重要な議論ではないかと思いました。
もう1点なのですが、先ほどから24ページ辺りの賃金の大きな違いが示されているのを見た際に、それぞれの立場の方々が御意見をおっしゃっていましたが、ここに障害のない人たちの賃金についても、載せていただきたいと思っています。それはなぜかと言うと、普通、一般的にも正社員と正社員以外というのは、大きな賃金格差が実態としてあるわけです。障害者だけの問題ではない中で、それは日本の社会的な問題だとなっていて、どのように正規と非正規の賃金の格差を解消していくかというのが、労働法と言うのですか、労働分野全体での議論になっているので、そういう法制で障害者の問題も賃金格差を解消していくと考えるのか、それとも障害者だから非正規雇用になっていて、障害者だからこその問題として、非正規の人が多いのだとすれば、やはり一般の労働法で任せておけないので、ここでしっかり議論しなければいけないことになると思って、そのどちらで議論したらいいのかなということを考える上でも、障害のない人たちの賃金の違いというのも、是非知りたいと思うところです。以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。では、長谷川委員からも資料の話がありましたので、一般労働者についての資料も準備をしていただければと思います。また、雇用の質とは何かということで、非常に重要な御発言、論点がありました。処遇が重要なのか、安定が重要なのか、あるいは先ほど資料では28ページですか、職場における障害者への配慮というところだけではないとは思いますが、例えば短時間勤務ですとか、あるいは通院のときの休暇制度の充実とか、そういった意味では大きく言えばワーク・ライフ・バランスと言うのですか、仕事と生活、あるいは仕事と健康との両立というのも、質という意味では重要なポイントかと思います。
こういった雇用の質というのは何かというのを、我々はある程度一致した認識を持って、この報告書をまとめるということは、その後の政策の立案の上でも大事かと思いますので、少しその辺りも目配りをしたいと、私は今の御意見で感想を持った次第です。
○工藤委員 日本盲人会連合の工藤です。ちょうど先ほど第4次の障害者基本計画の話をしましたけれども、その中で非常に印象に残っていたのが、農福連携、農業と福祉の連携ということがあったのです。この働き方改革の実行計画の中に、正に4本柱の1つは在宅就業、もう1つは農福連携ということもありますので、そういう意味では、農業と福祉の連携というところについても、少しせっかくですので資料を提供していただきながら議論を進めていってほしいと思います。
それともう1つ、これは2月にハローワークで希望者、50歳の求職障害者を対象にして調査した、これは障害の部位別のデータというのは分からないのですか。ふと、そんなことを思ったものですから、ちょっと御質問です。
○阿部座長 では事務局、お願いします。
○障害者雇用対策課長補佐 今、御指摘頂いたこの調査については、大変申し訳ありませんが、部位別には取っておりませんので、これ以上細かくは分からないと思います。あくまでも簡易な調査として行ったものですので、その点を御理解いただければと思います。
○阿部座長 それでは、いろいろと論点も出てきましたので、またこれは整理いただきたいと思います。実は雇用の質の向上というのを、次で議論していただきたいと思っていまして、特に4ページの○があると思うのですが、雇用の質の向上といったところを、少しまた議論していただきたいと思います。そもそも雇用の質の向上というのは一体どういうものなのか、長谷川委員の先ほどの問題提起と重なるかとは思いますが、この辺り、特に工藤委員や久保委員、あるいは本條委員のほうで、どのようにお考えになりますでしょうか。では、工藤委員お願いします。
○工藤委員 雇用の質ということですけれども、まず1つは、正社員か非正規かというところで、障害があればあるほど、やはり正社員を望むのです。特に視覚障害者の場合は、やはり正社員を希望する人が多いので、1つはそういうことです。
それと、障害が進行していくことが多いのです。先ほど職場復帰だとかも、やはりしっかりできるような、それも雇用の、ある意味で質ではないかと考えているのです。先ほど、職場復帰を保障する、そういう配慮は非常に少ないと、そういう結果が実態調査で出ているのです。やはり中途障害者の職場復帰、雇用継続支援ということについても、大事だなと思っております。以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。では、本條委員お願いします。
○本條委員 全国精神保健福祉会連合会の本條です。雇用の質ですけれども、もちろん雇用契約を結んで、それが正規社員であるとか、あるいは労働時間とか、そういうことも考えていくことも大事ですけれども、やはり障害のある方にとって、雇用そのものも大事ですけれども、社会に貢献して社会参加していくということも、非常に重要なことであります。したがいまして、雇用だけではなく、先ほども論点の中に雇用以外ということが書いてありましたけれども、これを十分議論していく必要があるのではないかと考えております。
もう1点は、やはり自立ということは、支援が余り要らないで働くとか、あるいは社会参加していくということが自立というように捉えてはいけないのではないかと私は思います。支援を受けながら働いていく、これも私は立派な自立であると思いますので、そういう雇用がもし難しいのであれば、そういった意味で適正な労働に対する報酬と言いますか、対価が得られて、支援を受けながら社会参加していくということも考えていかないといけないのではと。ちょっとここで議論する対象でないかと思いますけれども、やはりそこを考えていかないと、障害者の方の社会参加というのは進まないのではないか、こういう具合に思っています。
○阿部座長 ありがとうございます。久保委員、よろしいですか。
○久保委員 全国手をつなぐ育成会連合会の久保です。私どもも知的障害の団体ですので、知的障害の人で会社勤めをしている人から、いろいろ話を聞いたりもしております。その中で、本人たちが働くことにどんなふうに感じているかを聞いてみますと、1つは賃金があります。それと、働きやすさ、職場の雰囲気とか、そういうものです。一生懸命働いている人でも、職場の同僚から心ないことを言われたり、いろいろなことをされて我慢しながら働いている人は結構多いのです。そういう職場の雰囲気です。
それから、どういう労働形態であって、労働の中身がどうであろうと、本人がやりがいを持てるのが大事なようです。単純労働であっても、本人がやりがいを持ってやることが、続けられる1つの要素でもあると思います。それから評価です。賃金での評価でなくてもいい、言葉掛けでもいいので、評価してもらっていることが、やりがいにもつながることになると思います。それから、先ほど心ない言葉とかいうことを申し上げたように、障害者理解というか障害の理解を、もう少し社会全体と言いますか、会社、企業全体がもう少し進んでいったらいいと思っております。もう1つは、労働外の社員旅行とか、いろいろな所での労働外の中での仲間としての扱いと言いますか、そういうものがあると、本人たちはやるぞと、そのような気持ちになることも聞いておりますので、その辺のところが、雇用していただく側からの質を考えていただく1つのポイントかと思っています。以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。
○工藤委員 視覚障害者にとって、どうしても忘れてならないのは、あんま、マッサージ、指圧、鍼・灸の職業なのです。まず3年間という勉強をして、国家資格免許を取って、かつては自営開業をして、それで十分お客さんもついて自立できていたのです。それが今、非常に厳しくなってきている。あんま、鍼・灸の自営業者に対する問題です。これも就業というところで広く捉えていただいて、そのことが1つ。
ハローワークの就職状況を見ても、視覚障害者の約半数は、あんま、鍼・灸を軸にした就職なのです。そうすると、かつては整形外科とか病院、そういう所に就職できていたのが、今、それがほとんど皆無に近い状態で、訪問マッサージという所の求人はたくさんあるのです。やむなくそういう所に就職する。
少し戻って、ヘルスキーパーという企業の中の社員の健康管理とか維持増進、そういう所ではそれなりに安定して働けていますが、訪問マッサージという現状は、実は昨日も相談を受けたのですが、本当に労働者としての人権も何もあったものではないのです。車に乗せられて、運ばれていって、そこに降ろされて、そして何十分か後に迎えに来る。トイレに行きたくても、なかなか行けないとか、たまたまそういう所の昨日の実態を聞いたら、12人ぐらいの中小の会社で、その中でマッサージ師が7、8人。そのほとんど全員が視覚障害者なのです。その実態は、本当に給料も安いし休みも取れない、そういう実態で、それでいいのかどうかです。その辺の働き方もそうですし、雇う側の事業主としての資質、そういうところにも問題があるのではないかと思いますので、それも私たちにとって非常に大きな問題だと感じています。以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。いかがですか。
○栗原委員 栗原です。障害を持たれている方は、特に知的の場合、ある程度の年齢を境にだんだん体力的に落ちてくる。それで、先ほど私はそのような言い方をしていたのです。一般的な話ということで聞いていただきたいのですが、体力が落ちてきて、時間を短くしてほしいという人も当然いるはずなのです。ただ、口で言うか言わないかの違いだと思うのです。その際に、この中で4ページにあるのが、中高年齢層の障害者が長く安定的に働き続けられる環境ということで、1か所に限定した働き方だけがいいのではないと。例えば、正規で雇用されていて、ある程度の年齢と加齢によって、もう少し楽な仕事に移行するのも、これは1つだろうと。その際に、一般企業からA型へ移るとか、50歳の後半になったらA型からB型に移るとか、そういう循環ができれば、ある程度自分が働きたいところまで働けるというような流れになってくるのではないかという感じがしております。ですから、そういう制度的なものがなるべくできれば、障害を持たれている方も、自分の意思である程度そういう動きができるのかと。ただ、当然、移行するということは、A型に移れば時間が短くなるかも分からない。そうなれば、最低賃金をもらっても給料は下がる。それがまたB型へ行けば、仕事に楽になる代わりに工賃が下がる。こういうことがついて回りますが、それについては、ほかの補助か何かで補えるような流れになればいいのかという感じをしております。以上です。
○阿部座長 ありがとうございます。私の進め方が悪かったのですが、雇用の質の中には、確かに年齢層、部位別、障害の種類別といろいろ分かれています。その中で全般的に雇用の質を議論したいと思っています。今のは大変参考になる議論ではあるのですが、後でまた中高齢者に特化して議論をさせていただきたいと思います。ただ、今、栗原委員のおっしゃる、そういった循環型というのも、1つの考え方としてはあるのだろうと思います。今、お話したように、全般的に雇用の質について議論していただければと思います。
○漆原委員 連合の漆原です。今、各委員から御発言を頂いた中で、久保委員より、職場の雰囲気とか、コミュニケーションも含めてですが、仲間として扱うという御発言がございました。正にそれはそのとおりだと思っております。33ページに、これは障害の種別が出ておりませんが、自己都合で退職された方の中で、「職場の環境が整っていない」というところは突出して高くなっていると思っており、多分、職場の環境の中には、人間関係なども含まれているのではないかと考えているところです。
これは障害者に限ったことではなく、ハラスメントなどの問題は、実際に起こっており、厚労省のパワーハラスメントの検討会は数日前に終わりましたが、その検討会の中でも「受け手の感じ方」などを含め、今後労政審で検討していくこととされたところです。職場が人間関係を含めて快適であるとか、そういったことの周知・啓発も含めて、それは今後進めていく必要は当然あると思うのですが、どういった方向で理解を更に促進するとか、関係をうまくしていくところは、結構、障害があるないにかかわらず難しいところも実はあって、悩ましいところではあるのです。もちろん、労働組合としても、啓発も含めて積極的にやっていくことには全く異存はないのですが、事務局としては、障害者雇用の観点からは、どういう方面からのアプローチが良いのか考えているかを聞きたいのです。例えば、労働安全衛生法にも「快適職場」のガイドラインで、人間関係を良好にするとか、そういったこともあったと思いますが、もし周知・啓発も含めてどういう方向が考えられるのが、御示唆いただければと思います。
○阿部座長 非常に難しいですが、先ほども長谷川委員がおっしゃった、一般の労働者と障害者の特性に合わせた部分を分けて、障害者雇用の特性に合ったところだけを議論するのかというような、そういう話にも通じると思うのですが、御質問ですので事務局からお願いします。
○雇用開発部長 これは障害者雇用対策に限らない、おっしゃるとおり一般的な雇用政策の問題でもあるのだろうと思っております。私どもの部でも、別の課になりますが、雇用管理改善といった場合に、いろいろな諸制度を整えるだけではなくて、実質的に働きやすい、働きがいのある職場をつくっていくと、生産性も上がり、人も定着する、人も育っていくというデータもありますので、そういった観点から切れ目なくやっていくべき話かと思っています。そういった中で障害者の方が働きやすい職場については、障害特性も踏まえながらこの研究会の中で含めていくのかとは思っています。
1つ参考になるのが35ページであり、マル2の回答の内訳で「コミュニケーションが不足している」、あるいは、もっと「認識をもってほしい」という回答があったりします。また、fの「長く働ける環境を整備して欲しい」というところでも出てくるのかと思っていまして、その中身を一つ一つ細かく詰めていき、障害特性に合わせた働きやすい職場づくりを、この研究会の中でも、どこまでできるかどうかというのはありますが、追求していければいいのかと思っています。
○阿部座長 非常に難しいところではありますが、今、お話があったような雰囲気は、我々もできたらいいとは思います。
○本條委員 関連です。34ページを見ますと、特に知的障害者、精神障害者で、職場環境が整っていないところが一番多くなっているわけです。障害というものが、社会とかそういう偏見、差別も含めて、社会による障壁によって制限されていることを障害と言うわけですので、当研究会においても議論していく必要があると思います。
私が以前も提案しておりましたIPSモデルというのは、本人を支援するだけはなく、職場を開拓していくのに多くの時間、労力を割くわけですが、これが1つの手段、方法ではないかと、こういう具合に思っております。
また、それも含めてジョブコーチとかそういう人が、職場を教育と言ったら少しおこがましいですが、啓発していくことも大事になっていくのではないか。もう1つは、ここで議論する話ではないですが、教育は必要ではないか。幸いにも学習指導要領が改訂され、高校の保健の教科に精神疾患も教えていくことが決まり、平成34年度の教科書から載るようです。全ての学習段階と言いますか、教育段階において、障害に対する障害の人権とか、そういうものを教えていく、あるいは障害特性を教えていくことが必要でありますし、それは学校教育にとどまらず社会、ここで言えば職場に対する教育、啓発が大事になってくるのではないかと、こう思っておりますから、もし、そういうものに予算が付くようであれば、少し進むのではないかと、こういう具合に思っております。
○阿部座長 ありがとうございます。今、本條委員から具体的にこうしたらいいというお話も頂きましたので、今の議論と併せて、雇用の質の向上に向けて、どのような対策を取っていくとよいのかというところまで含めて御議論いただきたいと思います。
○工藤委員 質問したいことがあります。質問は簡単ですが、実際、ハローワークの2月の調査は、サンプルはどれぐらい集まったのかと、調査されたエリアは都内だけなのか全国なのかと、その辺を教えていただけますか。
○阿部座長 事務局、お願いします。
○障害者雇用対策課長補佐 回答数は約500ですが、アンケートとしては全国のハローワークで実施しています。
○阿部座長 ということだそうです。いろいろな対策があると思うのです。質といってもいろいろと幅広いですから、具体的にどういう。例えば、ここでも議論になっていたのは、先ほど本條委員からお話があったものもそうですが、その前に本條委員からあった単時間雇用率の話もそうだと思いますし、あるいは、前にあったと思いますが、勤続年数が延びたり、スキルアップが図られたりすると雇用率に反映させる制度があったりというようなものもありましたので、そういった幅広に御議論いただきたいと思いますが、いかがですか。
○眞保委員 法政大学の眞保です。雇用の質を外形的に何をもって観察すればよいのかというところに議論が入ったと思うのです。私はこれまでの御議論や企業を訪問させていただいてお話を聞いていて思うのですが、時期とか、障害特性とかはあろうかとは思うのですが、質ということでは、長く安心して働けるというところが大切ではないかと考えております。それでも知的障害者の場合は、現実、40歳代ぐらいから顕著に職業能力が落ちていくことは実際観察されるわけですので、それに対する対応は重要で別に考えるとして、一般的に申しますと、長く安心して働けるところが重要ではないかと思っています。
今回、資料で示されている点ですが、知的障害者の方の場合で申しますと、正社員とそれ以外の2つの雇用形態とそこで賃金の格差は結構出ているのですが、ただ、私自身は、この格差というのは、障害のない方の議論とは少し異なっていて、事業所がどのような業態と言いますか、事業をしているかということと、知的障害者に限って申しますと、知的障害者の方がどのような仕事をしているのかで相当差が付いてくるのではないかと思っています。
特に、製造業などの場合では、20年、30年前から、正社員として、実際にその工場で障害のない方がやっていたことを代替するような形で仕事をしている場合は、賃金も高くなりますし、正社員の雇用であることが多いですし、長期雇用も可能になっていきますが、近年、サービス業等で事務作業の補助という仕事ですと、この賃金の差は妥当かとも思えますので、一般の障害のない方の議論である正規か非正規かということとは少し違うのではないかと思っています。
そうだとするならば、今は労働契約法によって、5年たてば無期雇用になるわけですので、安定して長く働けるために、能力開発とキャリア形成に支援をする、あるいは、今、入口の部分での助成が多いわけですが、長期的に働けるようにするための助成など、その点について少し企業にとってインセンティブが働く助成などそうしたことが重要ではないかと考えています。
○阿部座長 ありがとうございます。先ほどの32ページの資料でも、訓練・研修を受けさせる企業は少ないとか、ほかにもそういった資料が出ていたと思いますので、確かに今の長く安心して働けるためにも、障害者の方たちのキャリア形成は非常に大事なポイントだとは思いますので、そういったところに政策の資源を振り向けるのは非常に大事なことだろうと思います。
あと、眞保委員がおっしゃったところで、普通の一般労働者に比べて早く引退を迎えるという特性がもしあるとしたら、これは今パッと思い付きなのですが、そのためには、それで雇用継続を企業に求めるのは大変なことになるでしょうし、一方で、労働者にとってもそれが果たしていいことかというと、そうでもないので、そういった一般労働者で考えているような安定措置とは別途、40、50代で早期引退を迎える障害者のために、どういった法的あるいは制度的な担保が必要かというのもあり得るのかと思うのです。例えば、障害者の場合には年金を早期支給できる制度にするとか、あるいは、もちろん先ほど栗原委員がおっしゃったと思いますが、ほかの福祉のほうに行く制度を整えるとか、そういったことも少し実際の制度としては考えていく必要があるのかもしれません。それは今パッと思い付きましたので、特に整理しているわけではないのですが、そういったことも制度としてはあってもいいのかもしれませんが、それはまた皆さんで議論していただければと思います。
○工藤委員 思い付きですが、普段、中途の視覚障害者をたくさんやっていますと、キャリア形成にもつながってくるし、今までのキャリアがゼロになってしまうと思ってしまうのです。それはそうではないのだということで、それはまた形を変えて、いかすことができるのではないか。そういう意味では、相談、お互いによく話し合って、納得した上で、場合によっては、極論を言うと、当事者の立場では働けるだけでもいいではないかということを言うのです。そして、これが50、60歳近くになってほかの会社に転職するということは、これは本当に大変だと。そこにいて、人間関係そのものも財産なのです。それもその人のキャリアを支えていく1つの重要なファクターなのです。そういう意味では、必ずしも当事者が今よりももっと賃金が高くとか、自分から言わないまでも、若干下がっても、長期的に見たときにということで、心理的なそういう面もあると思っているのです。そういう意味では、カウンセリングも含めてそういう施策も充実していくことが大事ではないかと思うのです。長く働ければ、例えばポイントを上げて雇用率を少し増やすとか、そういうことで長くということではないと思います。
思い付いたことですが、当事者として、逆、自分から条件というか、形だけから見た条件、賃金とかを少しダウンしてもいいと、そう思う障害者もいるということです。事業主が御本人と、それをどうお互いに納得いく形で話し合えるかというところがポイントになると思います。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。工藤委員は、先ほどから中途障害の際の復職とか職場復帰のポイントだということもおっしゃっていますし、その際に、今お話になったようなカウンセリングあるいは事業主との話合いで、どういう職場復帰を果たせるかも大事だと思うのです。ということでお話を承っていますが、現状は、職場復帰に際して、何か事業主にとってメリットのあるような、例えば補助金制度とかがあるかというと、どうなのでしょうか。
○障害者雇用対策課長補佐 事務局です。現状、機構のほうで行っているリワーク支援もありますけれども、加えて障害者職業安定助成金の中で事業主が職場復帰支援を行うような計画を立てて、実際に支援を行った場合には助成措置を講ずるというものは、今年度から障害者職業安定助成金の中で実施しているところではあります。
○阿部座長 2016年。
○障害者雇用対策課長補佐 障害者職業安定助成金になったのは、今年度からです。
○阿部座長 だから、どのように使われているのかは、これから出てくると思いますので、それを見ながら、それで足りなければ工藤委員がおっしゃるようなカウンセリングなどにも何か制度導入する、支援をするというのもあり得るのかなと、お聞きしながら思いました。ほかにいかがでしょうか。
○久保委員 全国知的障害者、全国手をつなぐ育成会連合会の久保です。16ページの表を見ましても、知的障害者の40代の方のデータを取っているのですけれども、大体20年から25年ぐらいがピークで、ずっと下がっていきますよね。というのは、大体18歳ぐらいで就労したとしますと、25年で43歳ぐらいですね。その次のポイントになっている30年で48歳です。知的障害の場合は、やはり40歳から45歳になると急速に能力が低下していくというのは、私たち親も実感としてあります。会社に就職している人の親御さんの話を聞いていますと、今までずっと働いてきたけれども、少しミスとかがあるなというのが、子供や職場からの連絡で見えてくると、親自身が頑張りなさいというのではなく、心が折れてしまうというか、もう辞めるかということを親自身が本人に言って、家庭内で、じゃあA型に行くかという感じになっているところが結構多いのですね。私たちの中では、同じ企業の中でも正規雇用から外れたとしても、例えば有期でも構わない。1年、2年の有期で、そして、その時その時の、1年たったら、2年たったらというときに、本人と職場とで続けられるかを話し合いながら、もう一度、もう1年という形ができたらいいねという話をしています。そこでもまだ無理になってくると、A型かなというような感じで、一気に今はA型に行っているというのが結構多いように思いますので、そういう仕組みがあったらいいなと思っています。以上です。
○阿部座長 長谷川委員、お願いします。
○長谷川委員 福島大学の長谷川です。今、おっしゃられたことで労働法的には無期契約のほうがよかろう、無期契約のほうが雇用が安定しているから、そっちのほうがいいだろうと考えてしまうのですけれども、現場においては、まずは1年頑張ってみよう、それで1歩ずつ続けていくほうがいいということもあるのだなというのを、今、お聞きして、改めてしることができました。ただ、無期契約であったとしても、1年たったときに労働条件を変えましょうかということができるので、そういった制度の理解をもっと広めていったほうがいいのか、難しいなと感じました。すみません、感想です。大変勉強になりました。
もう1つ、雇用の質にはどういったものがあるかを、いろいろお聞きして、個々人によっても考え方が全然違うだろうなと感じたのと、障害種別によっても、どこに価値を置くかは違うのだろうと感じました。また、身体障害の中にはいろいろな障害の方がいらっしゃって、その中でもまた違ってくるのだなと思って聞いていたところです。雇用の質をその会社が高めたときに、何によってそれを評価すべきかが、余計難しくなるなと思ったのですね。もちろん雇用率の中でプラスのカウントをしていくというのはあるでしょうけれども、そのときに、どの基準を満たしたらプラスに評価するのかというのが、障害種別によって全然違う中で、果たして1つの基準で立てられるかどうかが、大きな難しさを感じています。そういった中で考えられるのが、1つの方法としては、「くるみん」や家族的な責任を持っている人に対して、会社としてしっかり取組をしている場合には認証するとか、若者の支援をしている場合には「ユースエール」というのがある中で、障害者についてもいろいろな取組をしている場合には、それを公的に評価するというのは1つあるのかなと思いました。ただ、人数がその会社にいないときに、どの取組をやったら認証するのかというのは、またそこで難しさが、くるみんみたいな対象者が比較的多いものと比べると一緒にはできないのかもしれないのですけど、そういうのも1つ方法としてはあるのかなと思いました。以上です。
○阿部座長 確かに4ページ目の2つ目のマルのところにありますけど、障害者一人一人の希望や障害特性等も多様化する中で、どのような視点からと考えると、例えば企業の労務管理、あるいは人事管理にしても、どちらかというと今はマスで管理しているところもありますよね。実際、今度政策に落とし込むときにも、ある基準を設けてマスで管理しないと、補助金を支給とかなかなか難しいわけです。その一方で、こういった多様性を考えて制度設計をしていく、あるいは人事、労務管理をしていくというのは、今までにないチャレンジかもしれないのですが、その辺り、長谷川委員がおっしゃったように、例えば認証や評価制度を作ったときにどのように落とし込むかというのは、チャレンジしてもいいかもしれませんけど、確かに難しいなとは思います。
企業としても多分、塩野委員は御苦労されるのではないかと思いますが、多様性が本当に広がっていますよね。だから、その中で障害者雇用を充実させようといったときに、どの方向でいくのかというのは単純な話ではないですよね。もちろん長く働ける人、長時間労働できる人、短時間しかできない人、そういった特性に合わせて雇用管理していかなければいけないので、はた目から見ると不安定な雇用ではないか、処遇が悪いのではないかと見られる恐れもあるけれども、本人と企業にとっては、それがベストだったりというのは、久保委員もおっしゃったようなことだと思いますので、その辺り、どのように考えればいいのかというのは、私自身も今は難しいなと思った次第です。
○塩野委員 塩野です。今、ご説明いただきましたように、企業サイドとしましては、障害者の方といっても決して一括りで言い表せるものではなく、障害特性も当然違いますし、個々人の方と話をすれば考え方も違います。今は高齢化の中で考えている部分もありますが、やはり働き方の選択肢をいかに拡大していくかが重要ではないかと思っています。また後から話があるのかもしれませんが、企業において、高齢化への対応は1つの大きな課題です。大企業を中心に高齢化に伴い退職する方が増えてきており、働き続けるためには、例えば短時間労働など働き方の選択肢を拡大していかなくてはいけないのではないかと常々感じているところです。
○阿部座長 そういう意味では、工藤委員がおっしゃったようなカウンセリングとか、あるいはジョブコーチという役割は結構大事ですね。障害者の方と企業の間に立って、どのようにうまく障害特性に合わせて仕事をしてもらうか、だから、そこら辺も目配りしたほうが。もちろん目配りしているのですけど、更に目配りをしていくというのが大事かもしれませんね。工藤委員、何かございますか。
○工藤委員 工藤です。そのときに大事だなと思うのが、当事者の、初めて相談したときに、同じ障害の方がそこに関わるということが1つポイントかなと思っています。その人を見て、自分の気持ちの中に、この人のようになりたい、この人の言うことを信じられるなというような、それを感じたときに変われるのですね。そして、会社といがみ合って、だんだん関係が崩れていくのではなく、やはり会社も悩んでいるのですよ、相手を変えようと思ったら自分が変わらないと駄目じゃないですかという辺りを、同じ当事者が加わる中で、そういうことを何回か繰り返す中で、場合によっては外から、一般的に見たら労働条件の賃金ダウンとかそういうことはあるかもしれないけど、気持ちはずっと楽になるのです。そして、自分の居場所も、ちゃんと周りも評価してくれて、その人間関係は本当に財産であると、そういう中で、会社全体も非常に温かくなってということも、うまくいっているところでは、社長自ら中途で障害になった人を励ましたり、そういうところは非常にほかの社員に与える影響も、いい影響が出ていると感じています。以上です。
○阿部座長 それでは、一部、中高齢者の雇用にも入っておりますので、もし、中高年齢層の雇用について御意見がございましたら、お願いしたいと思います。
○栗原委員 栗原です。ただいまの話の中にジョブコーチが間を取り持つというような話がありました。大企業では、確かにサポートは行き届くと思います。しかし中小では、それを望むほうが無理だと思うのですよ。やはり、一緒に仕事をしながら、教えながらということはできるにしても、日常の中ではできても、細かいところまで目が行き届かない。また、それを求めても、それに応えられるかどうかというのはなかなか難しい面もある。まして、そのような状況の中で、ある程度分けて考えなければいけないのではないかなという感じがします。全体を一緒くたにというのではなく、その辺も考慮しながらやっていかないと、中小の障害者雇用を進めていかなければいけない、これから45人に1人というように、段々下がってくる時代になっていますので、その辺を整備してあげないと中小で雇用を進めるのはなかなか難しいのかなという感じがします。
○阿部座長 工藤委員、どうぞ。
○工藤委員 工藤です。訪問型のジョブコーチを増やすことで、中小企業にも負担なしに雇用も安定して進むのではないかと思っているのです。そういう意味で、最初の段階で地域における地域支援の在り方で、ジョブコーチの重要性が非常に強調されて、視覚障害については少ないとずいぶん強調したのですが、職業センターの人から聞くと、今度ジョブコーチを増やすということも聞いておりますので、多分予算も措置されて、今後ジョブコーチ養成研修が進んでいくのではないかと思っておりまして、期待しているところです。その辺の現状、何人いて、平成30年度にどういう計画があるのかという辺りも、お聞かせいただけるとうれしいです。以上です。
○阿部座長 それでは、事務局からお願いします。
○地域就労支援室長 地域就労支援室長の田中です。御質問がありましたジョブコーチ養成研修ですけれども、来年度拡充を予定しております。これまで年間に機構で行っております研修は、大体350人だったのですが、約2倍に拡充することにしております。また、研修の種類につきましても、ジョブコーチ養成研修を終わった後、更にサポート研修ということで新たな種類の研修を考えております。それぞれ実際に直面しておられるケースについてどう支援するかということを、それぞれの地域障害者職業センターでカウンセラーが支援をするといったような、これまでになかったことについても新しく拡充するということで、来年度実施する予定となっているところです。
○阿部座長 工藤委員、よろしいですか。
○工藤委員 はい。
○阿部座長 ほかにいかがでしょうか。事務局で、この辺り、もう少し委員の皆さんから聞きたいということはありますか。何か逆質問みたいですけど。いいですか。事務局が期待していた、例えば雇用率制度の辺りは。工藤委員は、雇用率制度よりも、むしろ、カウンセリングや事業主と本人との対話をもっと促進していくほうが望ましいのではないかという御意見はありましたけども。でも、雇用率そのものが悪いとまでは、工藤委員は言っているわけではないですよね。そうですよね。では、もし委員のほうから発言がなければ。本條委員、お願いします。
○本條委員 障害者施設等で生産したりする授産品ですね、そのみなし雇用ということは、私はやはり一度検討すべきではないかと思うのです。もちろん、これをすると、1つの意見として、逆に雇用が進まないのではないかという懸念があるのではないかと思います。しかし、そうではなくて、やはり障害者の方の理解を促進するという意味において、雇用率に反映することではなく、何らかの授産品を購入した、あるいは、役務を発注した所には、恩典を与えることによって、発注した側の障害者理解も進むのであって、決して雇用を進めるというものに対する反対の効果ばかりではない、むしろ上がるのではないかと思っているのです。是非検討だけでもしていただいたらどうかと思うのです。
○阿部座長 また整理して、皆さんで議論できればと思います。よろしいでしょうか。
○雇用開発部長 雇用開発部長の坂根です。今日から中間取りまとめに向けて、より詰めた議論を行っているところですけれども、今日の議論を伺っておりまして、思い付きですけども2点申し上げたいと思います。1点は、今日の御意見、思い付きだけれどもということでおっしゃっていただいた委員、座長もそうですけれども、非常によかったと思っています。それは、他の委員の御意見に触発された御意見であるし、また、これまでかなりの回数、議論を重ねてきていますので、そういった蓄積を踏まえた御意見ですので、相当真実をついた部分があると思います。そういった観点から、まだまだ夏まで短いといっても時間がありますので、思い付きの意見をおっしゃっていただければ有り難いと思っています。
それから、2つ目ですけれども、時間は限られていますから、今日いろいろな御意見いただきましたけれども、あとで思い返して、これ言っておいたらよかったかな、あるいは、自分なりに整理して、やはりこういうことが大事だなということがあれば、あとでも結構ですので文書で頂いたり、あるいは次回に、前回の続きですがということでおっしゃっていただければ、より充実した議論ができるのかなと思っています。頂いた文書については、御欠席の場合は事務局から御紹介いたしますし、出席される場合は、また御自身でおっしゃっていただいても結構ですので、そういった形で重ね重ねになっていくかもしれませんけど、議論が充実していくやり方がいいのかなと思いましたので、思い付きですけど発言をしました。以上です。
○阿部座長 それでは、事務局からありましたように、夏頃に向けてこの研究会を精力的に開催させていただきたいと思っておりますので、委員の皆さんには、どうぞよろしくお願いします。また、雇用開発部長からも思い付きでも構わないということですので、是非思い付きをどんどんしていただいて、御発言をしていただければいいのかなと思います。それでは、次回の日程について事務局より説明をお願いします。
○障害者雇用対策課長補佐 事務局です。次回につきましては、追って御連絡を申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○阿部座長 それでは、本日はこれをもちまして終了したいと思います。年度末のお忙しい中、御参集いただきましてありがとうございました。また、今後ともよろしくお願いいたします。