第4回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(議事)

職業安定局雇用開発部障害者雇用対策課

日時

平成29年11月7日(火)13:00~14:30

場所

厚生労働省職業安定局第1・第2会議室(12階)
(東京都千代田区霞ヶ関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館)

議事

○阿部座長 それでは定刻となりましたので、ただいまから第4回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会を開催いたします。本日の出欠状況ですが、加賀委員が御欠席とお聞きしております。それでは、早速、議事に入りたいと思いますので、事務局は本日の進め方を説明してください。
○障害者雇用対策課長補佐 事務局です。本日もよろしくお願いいたします。前回と同様に、本日もヒアリングを進めてまいりたいと考えております。本日は2団体にヒアリングをお願いする予定ですが、いずれにつきましてもヒアリングを15分程度行った上で、それぞれ事実確認の関係での質疑の時間を5分程度取りまして、その後、最後にまとめて、改めて全体の質疑、意見交換等のお時間を取らせていただきたいと思っております。
 なお、進め方ですが、これも前回までと同様ですけれども、発表時間15分につきまして、最初の10分が経過した時点でベルを1回鳴らしたいと思っております。またその後、15分を経過した時点でベルを2回鳴らしますので、その場合、速やかに意見をまとめていただきますよう、よろしくお願いいたします。以上です。
○阿部座長 それでは、そのようにお願いいたします。では、まず議事次第の順に、一般社団法人日本難病・疾病団体協議会理事会参与の玉木朝子様より、発表をお願いいたします。
○玉木氏(日本難病・疾病団体協議会) 日本難病・疾病団体の玉木でございます。本日は、こうした研究会という場所に、難病団体としてお招きいただきましたこと、初めてかと思います。こういう雇用関係のヒアリング等に、難病団体としてお招きいただいたのは初めてかと思いますので、少しずつ私どもの団体も認めてきていただいているのかなということを前提といたしまして、お礼を申し述べたいと思います。その上で、私どもの立場を、私自身も当事者の1人として、皆様方に、今日、少しでも御理解を頂ければという思いから、発表させていただきたいと思います。
 私どもの団体なのですが、皆様方のお手元にお配りをさせていただきましたが、正式名称は「日本難病・疾病団体協議会」、略して「JPA」と言っております。疾病ごとの団体、それから各都道府県ごとに難病団体連絡協議会というものがございまして、それを全部集合したものが日本難病・疾病団体という形だと御理解いただければ、よろしいかと思います。実は私どもが「全国難病団体連絡協議会」という名称のときなのですが、平成5年当時ですが難病患者が就労するときに、要するに病気を持っているということで、例えばハローワークの窓口などに行きますと、「あっ、そういう大変な病気でしたら、就労は厳しいと思うので、病気を治してから出てきてください」と言われた、これはどこの県の窓口でも当たり前の状況下でございました。
 平成5年に、厚生労働省ではなくて、その頃は労働省ですね、労働省の御担当のほうに、難病患者が仕事をしたときに、法定雇用率の中に入れてほしいという要望書を出したのが初めてのことでございます。それから約25年たったのですが、まだ、その私どもの希望は受け入れられておりません。やっと、こういう場に難病患者を呼んでいただけた、それに25年も掛かってしまったというのが現状でございます。
 その25年の間に難病患者の現状、それから原因究明、それと治療ですね。そういうものも大分変わってまいりましたし、難病と認められる疾病も、平成5年にお願いしたときは、本当に20疾病足らずでしたが、それが56疾患になり、今年から330疾患ということで、いろいろな形で死亡率はどんなに大きなものも減ってきております。でも、死亡率は減ってきていますが治らない。治らないが、生きていかなければならないというのが、難病患者の現状なのです。障害者手帳がなければ年金の該当にもなりませんし、平成25年に障害者総合支援法の中で、難病も福祉サービスの対象になりましたが、福祉サービスの対象と言っても非常に幅が狭い。特に、この就労関係に関しては、一切進歩していないというのが現状でございます。ですから、今日、基本的に申し上げたいのが、この研究会の中で、一番に私どもとしてお願いしたいのは、これからの障害者の就労を考えたときに、障害者手帳ありきという考え方を、まず改めていただきたい。
 難病患者の場合、15%から20%の患者が障害者手帳を取得しております。ただし、病名が付いたと同時に障害者手帳が取得できる病気もございますが、本当に重症にならないと、障害者として認められないという疾病もあります。これは本当にもう、病名によって極端ですよね。例えば、ALSの患者さんなどの場合は、ほとんど障害者手帳保持者の方が多いですけれども、膠原病のエリテマトーデスとか、あるいは表皮症や皮膚筋炎などという場合は、ほとんど障害者手帳は認められません。しかし、ある程度、治療を受けていれば、働ける状況の患者がたくさんいるのです。でも、病気を隠したままでは無理なのです。やはり医者に行かなければならないし、あるいは無理な仕事はできないので、やはり雇用者の方たちに理解をしていただかなければ、これはどうしようもないです。ですから、ただ、リスクだけを雇用者の方に、「こうで認めてくれ」というのではなくて、お互いにこういう状況であるから、こんな状況の中で就職をさせてくれという部分が、私としては一番いいのではないかと思っております。
 私どもで事前に提出させていただきました論点1の中にありますが、取るべき対応の方向性として就労希望者の多様化に対する取組が進もうとしておりますけれども、難病患者にも障害者手帳、あるいはそれに代わる同等の効力を持つ、証明書の発行が必要なのではないかと考えております。
 今回、難病法が制定されまして3年たちました。その3年がたつ間に、指定難病ではあるけれども、医療費助成の対象とならないという患者も増えてまいりました。そうしますと、患者であるということを証明すること自体が、難病患者の場合は非常に難しくなっております。重い人は働けないのです。障害者手帳を取れる方とか、重症と認められて医療費助成の対象となっている患者さんは、働けない方が多いのです。難病を持っていても少しでも働こう、あるいは病状を見ながら、何とか社会の中で自分自身も何かやっていきたいと思えるようになるまでには、相当、時間も掛かりますし、医療費助成の対象から外れてしまいますと、何にもないですから、自分で医療費を払いながら生きていかなければならないということは、必然的に働かなければいけない。でも、指定難病であることに変わりはない。それで雇用主のほうに、その話をしたとしても、どうせなら、いろいろ働く上で制限のある難病を持った患者よりも、やはり制限のない健常な方を採ったほうが、雇用主にとっては、それはデメリットがないということになってしまうのが現状です。
 先日、私どもの事務所に、わざわざ御担当の方に来ていただきまして、この度の研究会の御説明をしていただきました。その中で、委員の先生方の中に、障害者団体の代表の方がおられますが、難病団体としては、ほとんど出ておりません。ですので、できれば、1種障害者手帳もない、しかし働く上で障害のあるという難病の立場の者も入れていただければ大変有り難いなという話をした次第です。
 それと、もう1つなのですが、働き方改革の実行計画、これは平成29年3月28日に決定されたものとお聞きしておりますけれども、その中で法定雇用率の中に、どのような障害を持っておられる方を入れるかという議論は、既に大分したと、先日お聞きしております。それで不幸にも、私どもの難病というのは漏れてしまいまして、ただ、難病患者雇用開発助成金という制度、最初はモデル事業だったものですが、少しずつ私たちも努力しまして、この助成金制度ができました。それから、ハローワークの窓口にも、難病ということで伺うと、一応、研修を受けてこられた方が、お一人は各都道府県でいてくださるというような状況もできておりますが、雇用開発助成金を利用するのは、非常にハードルが高いです。というのも、これは現実なのです。ですから、そういう障害者の就労という枠の中に、是非、難病患者も一緒に入れていただきたい。本日まいりました中の本当に99.9%が、このことを皆様方にお話ししたいという、そういう思いで本日は出席をさせていただいております。
 ただ、その中で、今までのいろいろな難病対策委員会等の議論の中でも、この就労に関しては何度かしておりますが、この中で確かに難病患者も、重い方から軽い方までたくさんおりますので、難病患者を法定雇用率の中にカウントした場合に、障害者の方々の就労、ほかの手帳を持っておられる方々の就労を少しでも邪魔してしまうのではないかというような懸念がある。そういうことを、私どももそれは知らないわけではありません。ただ、人数的なことを考えますと、指定難病と指定された中の、本当に就労できるという患者は、1割、2割というようなはずでございますので、例えば、80万人が指定難病と指定されているとしても、その中の1割ということになりますと、8万ということになります。就労しながら指定難病になったという患者さんのこと等々を、カウントから省いていただければ、新たに難病を持って就労したいという者が、各都道府県で申込みをしても、それほどカウント的には、皆様方のお邪魔にはならないのではないかと、私どもは考えております。
 ですから、その辺のところを、是非。同じ障害者の多様な働き方という部分ですね、希望や能力等に応じた多様な働き方という部分の中に、是非、難病患者も入れていただければという思いを述べさせていただきまして、私どもからの話とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
○阿部座長 ありがとうございました。先日と同じで、最後にまとめて質疑の時間は取っておりますが、ただいまの発表につきまして、事実関係の確認などがありましたら、挙手をお願いいたします。また、発言の際は、手話通訳の都合上、必ずお名前をおっしゃってから、御発言ください。それでは、どなたからでも結構です。
○工藤委員 御発表ありがとうございました。日本盲人会連合の工藤と申します。今の80万というのは指定難病の方なのでしょうか。そのうち働ける方は1割ぐらいということで、あとの9割ぐらいは、やはり難しいということなのでしょうか。もっと働ける方がいるのかなと思っていたものですから、ちょっとその辺を確認したいと思います。
○阿部座長 では玉木さん、お願いいたします。
○玉木氏 私ども指定難病は今回、330ということで大幅に増えて、疾病対策課さんの計算では、100万人を超えるのではないかということで計算されていたのですが、まだ330と指定されましてから、1年たっていないものですから、大体80万ぐらいというのが現状です。その中で、先ほども言いましたように、会社に属していながら病気になった方ですね、それを除いて、これから新たに就労したいというのが約1割と考えております。
○阿部座長 工藤さん、よろしいですか。
○工藤委員 はい、ありがとうございます。
○阿部座長 その他、いかがでしょうか。
○志賀委員 のぞみの園の志賀です。それでは、今の質問に関連してなのですけれども、雇用率に難病指定の方もなるべく加えるという話の問題は、新規の就労の方なのか、就労継続をされて難病指定された方を、先ほどは除くという話もちょっとされていたのですが、その方たちも含めて障害者雇用率にというような趣旨の話だったのか、そこを、ちょっと確認させてください。
○玉木氏 はい、人数的なものは先ほど申し上げたもので、障害者雇用率の中にというのは、含めてということです。
○阿部座長 ただいま御発言いただいたのは、玉木さんです。それでは、長谷川委員、お願いします。
○長谷川委員 福島大学の長谷川です。お話ありがとうございました。私も同じところで質問なのですけれども、既に働いていて難病になった人を除くと、就労可能なのは、1割ぐらいではないかということだったのですが、既に働いていて難病になった方々の人数、割合というのは、どれぐらいありますか。
○阿部座長 では玉木さん、お願いします。
○玉木氏 正確には把握しておりません。ただ、病気になったために、退職せざるを得なかったというのは24%、先日、私どもの団体でアンケートを取ったのですが、24%の方が病気のために退職をしたと返事をしております。
○阿部座長 その辺りは事務局で、まだ数字は持っていないですよね。
○障害者雇用対策課長補佐 恐らく、先ほどお話があった健康局のほうでも、まだ疾病自体も拡大しているところなので、なかなか把握が難しいというところだと。
○阿部座長 分かりました。その他いかがでしょうか。
○本條委員 全国精神保健福祉会連合会の本條でございます。今日はありがとうございました。せっかく論点について、取るべき対応をまとめていただいておりますので、対応について2点、御質問したいと思います。まず、論点4で取るべき対応の方向性等で、2行目、「経営者に対し障害者の特性を理解してもらう努力をするべきではないか」。もちろん責務は行政にあるのではないかと思いますが、そういう建前論ではなくて、現実に具体的な、どういう努力を、理解を深めるためにしていくべきであるかという、何か方策があれば教えていただきたいと思います。
 それから論点6について、これは取るべき対応のところで、これも企業側の協力を得るために、「制度の確立が必要と考えられる」。私もそう思うのですが、この制度というものについて、もし、こういう制度を設けるべきだという御提案があれば、教えていただきたいと思います。
○阿部座長 それでは、2点の御質問がありましたので、玉木さん、お願いいたします。
○玉木氏 まず論点4のほうですね。経営者に対し、障害者の特性を理解してもらう努力をするべきではないか、ここの部分でございますね。これは本当に障害と言っても、いろいろな意味があって、外面的な障害、外から見て分かる障害ですね。それから、私のほうの場合は内部障害が多いのですけれども、簡単に一番分かりやすく言いますと、例えば私が今のままで、ハローワークならハローワークに行って、「障害を持っているのです」と言っても、「どこが悪いのですか、本当に病気なのですか」と。これは私自身が病気になりまして50年たちますけれども、何度も何度も受けた質問です。ただ、もう50年の間にステロイドも使っておりますので、相当いろいろな部分が悪くなっておりますし、例えばこれで就労した場合に、日に当たってもいけないみたいな。
 本当に患者1人1人によって症状も違うし、特性も違う。それは本当に詳しく書くべきだったのですけれども、例えば経営者に対し、障害者の特性を理解してもらう努力をするべきではないかというのは、就労するときに、そういう部分をどのような形で雇用者側に分かっていただけるようにすればいいのか、そういう意味だと御理解を頂ければよろしいかと思います。ですから、例えばハローワークの窓口に患者が行った場合に、窓口の御担当の方に患者を理解していただく、プラス今度は、その患者を就労という形でつないでいただくときに、雇用者側のほうにもこういうことなのだという知識を持っていただくと、そのように考えたほうがよろしいのではないかと、私自身は思っております。よろしいでしょうか。
○阿部座長 あと、もう1点、論点6のところ、制度とは具体的にどのような制度かという御質問だったと思います。
○玉木氏 これは本当に、先ほど15分掛けて説明をさせていただきました。この制度の確立というのは、障害者雇用法、法定雇用率だけではなくて、その障害者の就労の「障害者」の中に、難病患者も入れていただきたい。それを集約したものとお考えいただければ有り難いと思います。
○阿部座長 本條委員、よろしいですか。
○本條委員 はい。
○阿部座長 そのほか、いかがでしょうか。それでは、私のほうから1点、先ほどの御発表の際に、多分、特定求職者雇用開発助成金のお話があったと思うのですが、その開発助成金のハードルが高いとお話になったと思いますが、具体的にどういった点でハードルが高いとお感じになっているのでしょうか。
○玉木氏 正直に申し上げまして、最初にモデル事業だった頃は、窓口というか、患者自身もこの制度を知らないというのが、まず1点だったのですね。それから、ハローワークの窓口では、一生懸命作っていただいた制度なのに、窓口へ行っても御担当がまず知らなかったという、笑うに笑えないようなお話もございます。患者側としても努力しまして、御担当といろいろ努力をしていただきまして、それでもやはり1つの県で4、5件、多い所でせいぜい10件程度でした。先ほど来から出ております新規でなくてはいけないとか。ですから就労していて病気になった場合は、カウントできないのです。これはものすごく大きなことなのですね。
 それと、やはり先ほどから出ていますように、その程度の助成金で、難病患者さんを雇って、病気で悪くなられた場合にという、雇用者の方々の、やはり無理解といいますか、そういう部分もありまして、なかなか。これは事務局さんのほうで、今までの資料はお持ちかとは思いますけれども、各都道府県窓口に配置された方々、難病患者の相談を受けてくださる方が配置されまして、少しは上がったようですが、やはり一般的な雇用率に入るということと、罰則もございません、各会社に対して罰則というものも一切ございませんし、難病患者を雇わなければいけないということも一切ございません。ただ、雇えばこういう制度があるよ程度の話でございますので、全然、比べものにならないというのが現状です。
○阿部座長 ありがとうございました。その他、御質問がなければ、次の御発表に移りたいと思います。次はNPO法人就労継続支援A型事業所全国協議会理事長の久保寺一男様に御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○久保寺氏(就労継続支援A型事業所全国協議会) 皆さん、こんにちは。長い名前なのですが、通常「全Aネット」というように言っております。御存じのように、A型はいろいろと社会的に問題視されております。2年半前ですが、それに危機感を持った有志で立ち上げを行いました。若い組織ですが、かなり充実してきたと自負しております。それでは、時間もありませんので、発表をさせていただきます。論点1から論点6まであります。それぞれに現状認識、課題等を報告させていただいて、それに対する取るべき対応の方向性という説明を各項目ごとにしていきたいと思います。
 まず、論点1の1つ目です。近年、精神障害者の雇用者数が著しく増加している。しかし、雇用統計、毎年の「障害者雇用状況調査」、5年ごとの「障害者雇用実態調査」におけるその中身については、余り触れられていない。これについては、障害者総合支援法の就労継続支援A型における利用者は、雇用されていて、労働法規が適用される労働者である。特に、精神障害者雇用の受皿として、A型事業所の役割は大きいと考えている。その利用者は、一般就労の難しい、労働力におけるハンディを持った障害者であり、したがって、雇用形態の福祉的就労は重要と考えている。労働政策を論じるためにも、上記、雇用統計、この2つにおいて、A型利用分を明確にすべきであるということです。
 2つ目は、法定雇用率の未達成状況が続いているということです。これについては、企業の法定雇用率が未達成であることをよく指摘される。しかしながら、経済界や企業の努力不足の指摘だけでは無理があるように思う。ということで、これは、論点6で説明したいと思います。
 論点2です。まず、1つ目は、障害者雇用者数は確実に増加しているが、しかし、就労継続支援(A・B型)利用者の増加等を見ると、対比して考えるとき、一般就労の量的拡大は、今後も大きなテーマと考えられる。これに対しては、一般雇用の量的拡大が進まない原因を分析する必要があるということです。
 2つ目は、労働条件が20時間前後・30時間前後では、法定雇用率に換算されるのに差がある。一般就労への就労移行支援において、受入先の企業の対応は、20時間未満では雇用率のカウントにならず採用されないし、30時間未満の短時間労働では、採用されにくいということです。これに対しては、20時間未満、あるいは、20~30時間未満に関しても、精神障害者において時間を短くせざるを得ない条件に応じて、それぞれの場合にも法定雇用率に換算すべきである。例えば、20時間未満を0.5、20~30時間未満を1.0とする。企業の雇用インセンティブが働き、一般就労への支援が取り組みやすくなるということです。
 3つ目、近年、企業の中で高齢化の問題、精神障害者の増加など、その課題がクローズアップされていて、一般就労が難しくなってきた障害者対策に苦慮している。これについては、上記の状況を考えると、一般雇用(特例子会社も含む)とのA型事業所との連携は、就労支援制度の中で重要なことである。例えば、マル1A型事業所からの一般就労へスムーズにできる制度、マル2企業での就労者の高齢期におけるA型事業所での受入れ、精神障害者等の不安定期における一時受入れなどである。これらを障害者就労支援機関(障害者就業・生活支援センターの増設・強化など)が、一般就労と福祉的就労にわたるワンストップ的機能を持つことにより、大きな効果が期待できるということです。
 4つ目、労働能力評価には、障害者雇用率制度上(ダブルカウント)における判定と、最低賃金減額特例制度による判定があるが、それぞれ連動がないように思われる。これについては、上記、2つの労働能力評価を発展的に研究することで、職業的困難度に基づく障害者認定のような判断基準の構築を望むというものです。
 論点3は、一般的な意見になりましたので、これは省かせていただきます。後で読んでいただければと思います。
 論点4です。1つ目、障害者雇用率制度などの雇用施策が十分でなかった時代、障害者雇用、特に、知的障害者などの雇用を支えてきたのは中小企業であった。特に、高度経済成長時代の人手不足時代には、中小企業が極めて重要な役割を果たしてきた。しかし、近年、雇用率から見ると、中小企業の障害者雇用は停滞している。これについては、上記の中小企業の歴史を踏まえるとき、今の中小企業で、そうした取組ができていない理由についても、しっかり把握する必要がある。中小企業では、経営規模が小さく、なかなか障害者雇用までは手が回らないというように思われるが、そのための実態調査などにも、しっかり取り組むべきである。
 2つ目、中小企業の中でも、50人以下の事業所、小規模事業所の障害者就労の実態が明確でない。これについては、特に、50人以下の小規模事業所の障害者就労の実態を、何らかの形で調査していただきたい。また、A型事業所の施設外就労や、一般就労希望者の実習の場として、中小企業の活用が考えられる。施設外就労や実習の受入れのインセンティブを促進するために、この種の受入れに対して、雇用率0.5人カウントも考えられる。また、直接雇用する契機にもなることにより、中小企業の障害者雇用の拡大に寄与すると思われるということです。
 論点5、2つあります。1つ目、就労移行支援先の企業で、特に精神障害者の定着率が低いのは、障害特性の理解不足、支援方法の不備、試行(トライアル)の場の少なさ等によると思われる。これについては、A型事業所や企業の雇用現場にジョブコーチ(企業型)の配置拡大を望む。また、精神障害者の支援ノウハウを企業に広めるための制度、また、支援機関(就労移行支援事業所や就業・生活支援センターなど)の充実が必要である。
 2つ目、病院からの精神障害者の地域移行には、就労の場の確保が重要であり、支援機関との連携が進んでいない。これについては、トライアル雇用、施設外就労、実習の受入れ(特別支援学校や病院などから)など、一定期間試行(トライアル)が柔軟にでき、その間、必要な支援ができるような支援体制を関連機関(ハローワーク、就労移行支援事業所や就業・生活支援センター)の連携でできるような仕組みを強化・拡充すること。特に、ワンストップ支援機関としての就業・生活支援センターの強化が必要であるということです。
 最後、論点6は3つあります。1つ目は、就労継続支援事業(A型・B型)利用者が、2008年の5万7,000人から、2016年の28万9,000人へ、約5倍に増加した。その間の雇用率制度下の障害者雇用者数(実数)の増加率は、はるかに少ない。これについては、「福祉から就労へ」が強調され、それに沿った施策が展開されながら、なぜ就労継続支援事業(A型・B型)の利用者がこれほど増加しているのか、その実態をしっかり把握し、その結果を踏まえて、一般労働者数も増加するような雇用施策を望む。一般就労への移行支援を推進するために、というものです。
 2つ目、論点1で示しましたように、A型事業で雇用される障害者は、法定雇用率に換算されますが、労働者としての社会的認知まではいっていないと思われる。これについては、一般就労への移行支援も大切であるが、就労継続支援A型事業所で、継続して働きたい希望を持った利用者も多くいる。A型において雇用される利用者は、労働法規が適用される労働者である。福祉的財源が投入されている雇用形態の福祉的就労であるので、労働政策を論じる場合、とかく、中途半端な存在のように言われることがある。しかし、一般就労と福祉的就労を横断的に俯瞰するとき、特に、雇用形態でもあるA型事業の存在は、日本の就労支援制度全体を考える場合、非常に重要である。
 最後、3つ目は、福祉的就労分野の仕事の確保に関して、国等を対象とした障害者優先調達推進法(官公需)は、更なる推進が必要であるが、特に、民需での取組が必要である。その取組の1つである障害者納付金制度にある在宅障害者就業支援制度は、広く制度の認知が進んでいない。これについては、在宅障害者就業支援制度の発注枠は、既に雇用に換算されていると考えられる。制度そのものは、施行時、純粋の在宅者の支援を目的に作られたものであり、したがって、「在宅」の名称が使われているので、名称の変更を望む。特に、発注元企業と障害者の間の橋渡しを担う「在宅就業支援団体」は、障害者を支援していることが条件であり、しかも、団体としてのメリットはない。在宅障害者就業支援制度の普及には、上記に関して簡略化が必須である。また当面は、現在、適用されていないが、調整金・報奨金との整合性を考慮しつつ、就労継続支援A型事業にも適用する。そして、近い将来、ドイツやフランスで実施されている「みなし雇用制度」の導入を望む。その適用程度としては、法定雇用率達成以上の上乗せ分のみ適用する(1,000人以上の大規模企業の要件は厳しくする)。また、小規模企業は雇用率の2分の1をそれぞれ、直接雇用分とみなし雇用分とするという提案をさせていただきました。以上であります。
○阿部座長 ありがとうございます。ただいまの発表について、事実関係の確認などがありましたら、挙手をお願いいたします。
○栗原委員 栗原でございます。非常に共感を覚える部分もあるのですが、1つだけ確認させていただきます。論点4の中に、施設外就労の実習受入れをしていただいた所にカウントを付けるということでよろしいのでしょうか。
○久保寺氏 はい、そうでございます。
○栗原委員 要は、雇用という前提で、A型の施設で雇用をして、なおかつ企業にカウントを持っていくというのは、何となくどうなのかなという感じもするのですが、そういうことですね。
○久保寺氏 そうですね。それについては、最後に「も考えられる」というように、少し表現を弱くしたつもりでございます。
○栗原委員 分かりました。
○阿部座長 眞保委員、どうぞ。
○眞保委員 御発表、ありがとうございます。私も実は、今の点で御確認させていただきたいと思っております。論点4の雇用率の0.5カウントの所ですが、これはA型事業所には、例えば、仮に通常の労働時間であれば、1カウントしてということでしょうか、それと、中小企業のほうにも、0.5カウントということなのでしょうか。
○久保寺氏 雇用率0.5というのは、あくまでも受け入れる側にとってのメリットがないと、施設外就労や実習がなかなか進まないということで、受け入れる側の、企業側の話です。
○眞保委員 ありがとうございます。もう一点は、論点2の取るべき対応の、3のマル2の所ですが、「就労者の高齢期における」と書いてありますが、この高齢期というのは何歳ぐらいを想定されているのか。企業は定年を60歳として、その後65歳まで継続雇用ということになりますが、その辺りで60歳前も含めるのか、あるいは、60歳後なのか、あえて高齢期と書かれているので、その点を御確認させていただきたいと思います。
○久保寺氏 すみません、そこまでは正確に考えていたわけではありませんが、ただ、企業が高齢を理由に雇用がなかなか難しくなったと、そういう段階という意味で考えていただければと思います。
○眞保委員 60歳前ということになりますね。
○久保寺氏 も含むということです。
○眞保委員 そうですね。
○阿部座長 では、工藤委員、どうぞ。
○工藤委員 Aネットの久保寺さんではなく、事務局のほうに質問です。この間、就労継続A型について実態を調査してほしいとか、それから、社会問題に最近なっていますので、そういう意味でも調査を、という意見がこれまで何回か出たと思うのですね。当初の計画にAネットさんは入っていなかったのですが、今回、ヒアリングの対象になったのは、今、言ったようなそういう社会的な状況があってなのか、事務局のほうにその件を確認したいと思ったのです。もう一方では、聴覚障害者の、ろうあ連盟さんからのヒアリングであるとか、それから、私どもからは、今後、産業医からのヒアリングとか、そういう発表の場ということも要望してきたのですが、そういうこともありまして、ろうあ連盟さんとかについては、今後、取り上げていただけるのかどうかも含めての確認です。
○阿部座長 それでは、事務局にお願いします。
○障害者雇用対策課長補佐 事務局でございます。全Aネットさんに今回来ていただいたのは、確かに当初、予定はしておりませんでしたけれども、第1回、第2回、第3回のヒアリング及び事務局からの説明の中でも、大分、各委員からA型との連携という話が複数の委員から出されていたと思います。それはライフサイクルの中での連携という意味もあったかと思いますし、地域的な偏在や、様々な事情があったと思いますが、いずれについても、A型事業所をどう活用していくか、あるいは、そもそもA型事業所の在り方がどうなのかということも含めて、様々な意見が出されていた状況等もあったので、今回、座長とも御相談して、全Aネットの方にはヒアリングをお願いしたという状況です。
○阿部座長 漆原委員、どうぞ。
○漆原委員 連合の漆原でございます。1点確認です。論点4と論点5の所で、実習の受入れとありますけれども、論点5のほうは、例えば、今で言うインターンシップのようなイメージのもので、このインターンシップ的なところについては、実習の受入れのところのカウントのことは余り考えずにというようなイメージ、論点4の所については、やはりカウントが重要だという、そういうようなところなのかという、そこがちょっとなかなか理解しにくかったもので、そこのところを教えてください。それから、仮に実習を受け入れるとすると、どのぐらいの期間を想定されているのか、1年か、半年かというところのイメージを教えていただければと思います。
○久保寺氏 まず、論点5のほうは、実はどちらかというと、支援体制の関連機関のことを主に訴えようかと思いまして、論点4とは少し意味合いを変えたというつもりでございます。
 もう一点、実習の受入れの期間ですが、それぞれ障害者の特性によって違いますし、個々のケースに応じてだと思うのですが、短い期間だとなかなか本人の適性が分からないということもあるので、少なくとも、数箇月は必要だろうと思います。
○阿部座長 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。
○志賀委員 のぞみの園の志賀です。論点2の所で、聞いていて、なるほどと思ったのですが、一番最後に労働能力評価の話で、いわゆる重度判定の問題と、最賃の減免の話が出ておりまして、考えてみると、重度判定のほうは、知的障害の方しかないわけです。そういった面では労働能力判定というのは広い意味で、全ての障害についても、というような意図も含まれているのかどうなのかを確認させていただければと思います。
○阿部座長 では、お願いします。
○久保寺氏 これについては前から私思っていたのですが、同じ労働省の中で所管が違うからということなのですが、要するに専門家のそのスキルというか、判定の制度というのが2つあるという、これは社会的資源という意味では、ものすごい無駄だと思っていて、是非、これを、今、御指摘がありました障害の種別を越えた働きづらさのようなものに、是非していただけたら、本当に有り難いと思います。
○阿部座長 工藤委員、どうぞ。
○工藤委員 事務局のほうに、今、ろうあ連盟さんとか、例えば産業医、特に、ろうあ連盟さんについて、今後、どうなのかという質問をしたのですが、どういう状況でしょうか。以上です。
○阿部座長 では、事務局にお願いします。
○障害者雇用対策課長補佐 ろうあ連盟様のほうとは、本日、個別にお話させていただいておりますので、そちらにお伝えしているとおりでございます。
○阿部座長 よろしいですか。ほかに事実確認があれば、お願いいたします。
○本條委員 全国精神保健福祉会連合会の本條でございます。御説明を頂きたいのですが、論点6の一番最後の下から4行目ぐらいですが、「近い将来、ドイツやフランスで実施されている「みなし雇用制度」の導入を望む」ということが書いてありますが、簡単に、どういうものがみなし雇用になるのか、それから、日本に導入する場合は、どの程度のことを考えておられるのか。
○阿部座長 では、お願いします。
○久保寺氏 みなし雇用制度というのは、ここに示しましたように、ドイツとフランスで実施されているということですが、要するに、日本に導入する場合に、ゼロからというのはなかなか難しいという意味合いで、今、この上に説明しました在宅就業支援制度があるわけで、この中に雇用分が換算される、法律の部分ですが、換算されるほうに、引き続きなるといいなという意味合いで、雇用制度を発展的にしていくと、当然、みなし雇用制度になるのではないかという意味合いです。その適用程度については、ここにお示ししましたとおりでございます。
○阿部座長 工藤委員、どうぞ。
○工藤委員 日本盲人会連合の工藤と申します。在宅就業支援制度についてイメージされていることとして、ネーミングですが、例えばどういうのが全Aネットさんの提案に即したものなのかというのをお聞かせいただければと思います。以上です。
○久保寺氏 要するに、「在宅」を取っていただけると、このままいけるのではないかとは思います。「障害者就業支援制度」ということです。
○阿部座長 ほかにありますでしょうか。
○漆原委員 連合の漆原でございます。先ほどの質疑のところで、ちょっと気になったところがありまして、質問させていただきます。最低賃金の減額の特例制度のところについて、現状の4.の所に、こういった記載があって、その下の取るべき対応の所については、「判断基準の構築を望む」と書いてあったので、それだけを見たら、特段、我々としては問題に思わなかったのです。しかし、実は、御存じだとは思いますが、最低賃金の減額の制度ができる前は、適用除外という扱いになっておりまして、それは問題だということで、この制度ができたという背景があります。最低賃金の議論は、御存じのとおり、公労使で参加しておりまして、我々、連合も参加しているのですが、そこの場では、こういう制度があっても、全ての障害を持った方が最低賃金以上をもらえるように、できるだけこの制度とは連動せずに、これ以上払うべきだという主張を実は、ずっと続けてきた経緯があります。連動があったか、ないかというと、我々としては、最低賃金以上の賃金が保障されるべきだという主張をしており久保寺さんのところで言うと、いや、ある程度そういう判断基準としては、それをいかしたほうがいいというところなのか、その連動があるか、ないかというところを含めて御説明いただけると助かります。
○阿部座長 では、お願いいたします。
○久保寺氏 ここで連動というような表現をしましたが、これはあくまでも労働能力評価に関して2つ制度があって、しかも、厚生労働省の中にあるわけです。だから連動がないという表現をいたしました。御指摘のような連動の意味とは違います。
○阿部座長 現状認識として、2つ判断基準があるということをおっしゃりたかったということだと思います。
○久保寺氏 はい。
○阿部座長 ほかにいかがでしょうか。もしなければ、全体を通して、皆様から御質問、御意見等を賜れればと思います。いかがでしょうか。では、栗原委員、お願いいたします。
○栗原委員 栗原でございます。全Aネットの久保寺さんにちょっとお伺いしたいと思います。先ほど私は、共感を覚えるというお話をさせていただきました。それは一般企業で加齢・高齢のために体力が落ちてきた人、フルタイムで働くことが難しくなった人がA型に就労できるようにするということも、私は常々要望しているわけです。それで、その辺が共感をということなのです。ただ、全Aネットさん、A型の施設の方が、例えば能力が上がって就労できるようになった子がいても、就労させたいという要望が余りなかったように思うのです。非常に素晴らしい方がA型にいても、その子が出てしまうと成り立たないので、一般就労させたくないというお話も伺うのですが、その辺はいかがでしょうか。
○久保寺氏 実はこの要望書を作るときに、福祉施策の部分は外したのです。そうしないと、やはり混乱をすると思ったものですから。今言った、俗に言う囲い込みという話になると思うのですが、確かに一生懸命教育をして、訓練をして、能力が上がったのに就労支援をしなければいけないということはあるのですが、これはA型に限らず、どんな福祉的事業でもあることであって、福祉財源が投入されている以上、それはもう宿命だとは思っています。ただ、人情という問題がどうしても付いて回るので、これは今回の労働施策ではないかもしれないけれども、福祉施策のほうではある程度一定のブレーキが掛かるような制度にしていかなければいけないのではないかとは思っています。
○栗原委員 要は私などから見れば、就労できる人だったら、A型から一般就労に移行させていただきたい。その代わり、移行に対するポイントをA型に付与というような、ご要望があれば伺いたいと思ったのです。
○久保寺氏 どうもありがとうございます。正直な話、そういう視点(福祉施策の就労移行支援体制加算でなく、労働施策としてのポイント)はありませんでした。是非、検討したいと思います。ありがとうございます。
○工藤委員 就労継続Aに関連して、これは私どもが相談を受けた事例ですが、前もこの場でちょっと紹介したことがあります。大学のかなりの学歴の方で、能力も高い。それが実際に一般企業ではなくてA型のほうに安易に就職していると。しているというよりも、させられたと言ったほうが正しいかもしれないです。そういう実態もあるということを御報告しておきたいと思います。
 実態調査、先ほどの論点6の所で、やはり実態を調査する必要があるということですので、例えばA型の法人の区分ごととか、そこに就労している、又はハローワークから紹介された障害の種別ごととか、その辺も是非、実態調査のところでは、やるのでしたら入れていただければと思います。以上です。
○長谷川委員 福島大学の長谷川です。関連するとすれば論点6の2の辺りかと思うのですが、確かにA型は労働政策の一環でもあり、かつ福祉的就労の政策の一環であり、重なっている部分であって、その両方を必要としている障害者の方々がいらっしゃることと承知しています。ただ、制度が重なっている分、一方では雇用義務制度の下での調整金あるいは報奨金が支給され、更に一方では障害者総合支援法に基づく障害福祉報酬が支払われているということで、二重で財源が入っていることをどう考えるべきなのかということに関心があります。A型の事業者の方々からすれば、そのような制度をどう捉えていらっしゃるのか、両方からの給付がなければ、事業所を運営することが難しいと思っていらっしゃるのか。もちろん、事業所によって状況は違うと思うのですが、その辺りについてお考えがあれば、是非お聞かせください。
○久保寺氏 A型事業所で働く人たちは、先ほど抱え込みということがありましたが、一生懸命支援して、一般就労に働き掛けている事業所もいっぱいあるのです。そうすると、もともとA型事業所を利用する利用者がどういう人たちなのかという、在り方という問題にもなるのです。今、日本財団の助成を受けて、A型事業所の在り方に関する研究会をやっていますし、是非、A型事業所のあるべき姿みたいなものを提言していければなと思っています。
 全Aネットを立ち上げるときの設立趣旨にもあるのですが、一般就労できない人たちが非雇用の場だけの選択肢しかないというのは、我々A型事業所、あるいは福祉工場からずっとやってきた事業者から見ると、居たたまれないわけです。労働者として身分をちゃんと保障したいと。ただ、一般就労は難しいという人たちがいるのです。そういう人たちのためにA型事業所があると思っています。ただ、それは制度としてどのように構築していくかとなると、なかなか難しい問題がある。先ほど福祉的財源と労働部門の助成金も含めて、ダブルで受給しているのではないかという意見も含めて、是非、持続可能なA型というものはどんなものかということを、研究を深めて提言していければなとは思っています。
 自立支援法になって10年ですが、A型が今ここで社会的問題で大きくいっぱいクローズアップされてきたことは、A型の問題を考えるという意味では良い契機になるのではないかと思っています。以上です。
○長谷川委員 福島大学の長谷川です。今、実態調査中だということで、お答えしづらいかとは思うのですが、金額としてどのぐらいの規模のA型事業所であれば、雇用義務制度からの調整金、あるいは報奨金が出て、障害福祉報酬はどのぐらい出るのかというような、もし数字が今お分かりでしたら教えていただきたいなと思うのと、ちょっとそれが難しいとすれば、事務局で把握していらっしゃれば教えていただきたいと思います。結構大きな金額になるのではないかと思っているのです。その場合に、A型は確かに労働法の適用があるので、最低賃金の適用もあるということで、最賃を払っているということは、そこで働く障害者の方々にとってはすごく重要なことかとは思うのですが、果たして最賃でいいのかとか、あるいは減額特例も受けられるという状況でいいのかとか。ただ、それは実態がそうだから、しょうがないというか、それでしか回らないのだというように考えていらっしゃるのか、すごくまとまらない、感想みたいなものなのですが、実感としてどのように感じていらっしゃるのかというのを、是非教えていただきたいなと思います。
○阿部座長 お分かりの範囲でお願いします。
○久保寺氏 数字については持ち合わせていないので、もし事務局があればお願いしたいなと思います。A型事業所は最賃をクリアするというのが前提にあるわけです。これは制度としてあるわけで、ただ実態は、短時間の労働契約の人たちが多いわけです。これが本当に短時間労働が必要だから、そのようになっているということならばいいのですが、もし最賃をクリアする、賃金を支払うということが短時間労働につながっているとすれば、これは何らかの方法を考えなければいけないし、私は個人的には減額特例を、もちろん審査は厳しくしなければいけないのですが、適用していったほうがいいのではないかなとは思っています。ただ、そうするとA型の在り方というものを考え直さなければいけないので、その辺も含めて、我々の研究会の中ではいろいろな意見も出ています。
○眞保委員 法政大学の眞保です。私は玉木さんのほうのお話を確認させていただきたいところがあります。今回、雇用に向かうためには、患者さんの方々の疾病の特性に合わせた事業主の理解が必要だということをお話いただいたわけですが、そのほかにちょっと、こういう点はないかなという確認です。例えば中小企業に雇用される場合ですと、健康保険は政府管掌健康保険ということが多いと思うのですが、これがもし大企業に新規に雇用されるということになりますと、大企業の場合は独自の健保組合を持っております。そうしますと、難病あるいは指定難病をお持ちの方は、生涯にわたってある程度の医療費がかかってくることはあろうかと思いますので、その点で健保組合の財政というのはどの会社も大変厳しいということがありまして、そうした健康保険上の問題とか、そうしたことで雇われづらいということをお感じになったことはありますか。
○阿部座長 お願いします。
○玉木氏 ありがとうございます。なかなか患者のほうからは言いづらい問題を指摘していただいて、有り難いと思います。1例申し上げますと、例えば肺高血圧症などで、今どんどん健康保険で新薬が認められております。そういう患者の場合は、年間の医療費が約1,000万円かかります。健康保険が適用になって、特定疾患、指定難病になりますと、健保に掛ける負担が非常に高くなるというのは、なかなか表立っては言えないですが、健保組合としては。それから、小さな市町村の場合、厳しいものがありますので、特に患者団体からの封筒等、病名の入った患者団体の封筒で寄越さないでほしいとか、役場にだけは知られたくないとか、いろいろな事情がありますが、就労のときも間違なくそれは障害になっていることは事実です。
○工藤委員 日本盲人会連合の工藤と申します。JPAの玉木さんのお話で、前半は感想になりますが、中途で失明した人と、かなり共通する部分もあるなと思って聞いていました。まず、在職中に発病されて、その24%は退職されていると。多分その24%の中には辞めなくてもいい人もいると思うのです。それから、非常に印象に残った言葉で、「働けるのだったら働きますよ」という、その裏には働けるのだけれども、やはり支援がなかったりして、辞めざるを得なかったという人はいると思うのです。どうしても手帳主義でやっていますので、手帳に該当しなければ、新規の雇用も難しい。例えば特開金というのがありますね。それで若い人が雇用されたと。ところが、その後、それは雇用率にはカウントされないわけです。されない場合に、その後どうなっているのかということ、やはり辞めてしまったとか。採用されるということは働く能力があると、それが評価されて採用されているわけですが、その後、雇用率に算定されないということで辞めてしまった事例もあるのではないかと思います。その辺について、後ほどちょっとコメントしていただければと思います。
 中途の失明者というのは、大体40代、50代の働き盛りで発病するのですね。難病の人もやはり就業中に、それなりのキャリアを積んで、社内でもかなり高い地位にあって貢献して、それが発病したことで辞めてしまう。それが適切な支援があったら辞めなくて済んだのにというのも、やはり相当あると思うのです。そういう意味では、手帳に代わる何か証明書。一定、医学が進んで働ける、症状も軽い状態で維持できる、そういう人もかなりいるのだと思うのです。そういうときの、そういう人が働き続けられるための、ひいては雇用率にもカウントできるようなものは、私は是非あってもいいのかなと思って聞いていました。
 それから、中小企業のところで、これは非常に共感したことなのですが、雇用率だけではなくてということですね。やはり病気のある、その人の人生ですね、その人の働き方、そういうことにも着目して、これこそ働き方改革の、それを実現するところがそこにもあるのかなと思って聞いていました。働き続けていくためには、やはり治療費の問題、今ありましたが、治療費の補助の問題です。それから、通院の保障とか、治療するための特別な休暇制度、また在宅勤務、先ほどテレワークのところで、論点3の所で軽く触れていましたが、研修制度。その研修制度も重要ですし、トータルにそういう仕組みを何か作ることは、それこそ難病の人たちの働く場をしっかり保障してやることは、本当に全ての障害者、それを取り巻く私たち全体の底上げにもなるのではないかと思って聞いておりました。
 もう1つ、長くなってすみません。ハローワークで説明するとき、なかなか分かってもらえない、同じことを何度も何度も聞かれる。それは私たち目が見えない人も同じなのです。一人一人、みんな見え方も違って、説明するのがなかなか難しいという面があります。そういう意味で、何かこういうツールがあったらいいのかなということも思いながら聞いていました。例えば主治医とかですね。この病気の特性、それから現状はどうなのか、こういう配慮があったら十分働けると、そういうものを医療機関で作って、それに御本人も、自分としてはこういう配慮をしてほしいとか、双方で書き込めるような共通言語みたいな、そういうカードのようなものを持って、ハローワークと御本人、それから就職した後は産業医であるとか、人事担当であるとか、そういうところと連携しながら、必要な配慮もしてもらうと。そういう仕組みもあってもいいのかなと思いまして、感想ですが、以上です。
○阿部座長 1点だけ御質問がありましたので、玉木さん、お願いします。
○玉木氏 いろいろ御指摘を頂きまして、ありがとうございます。特に中途で失明なさった、例えば網膜色素変性症とかベーチェットの患者さんは、中高年になってから失明なさる方が多いので、一番大変な時期に会社をどうするか、これからの生活をどうするかということで、非常に難しい立場にお立ちになる方が多いです。ですから、そうなったときには、難病患者の雇用開発助成金、あるいは今は難病患者の就職サポーターの方が各都道府県に配属されるようになりましたので、その辺のところで、いろいろな患者の特性を御理解いただきながらやるしかないのかなと思っております。私どもの会では、難病患者雇用開発助成金、非常に使うのが難しいという意味で、「なんかいきん」と呼んでおります。
 そういう意味で、今日ここに出席させていただき、私どもはまだ皆さんとの議論の中に入れない立場なのです。制度の中に入っていない団体ですので、なかなか制度の中の議論にも入れないのですが、ただ難病患者として就労ということを考えますと、本当に特性を理解していただくしかないと思っておりますので、就労サポーター、あるいは雇用者、就職する側の患者の部分、その部分の意思疎通をどうするのか。それから、その会社の中で、就労しながら病気になったときのフォローをどうするのか。また、その中で配置転換とか、そういう部分をどのようにやっていただけるのかのような、そういう部分が働き続けるという意味では。病気になったときに、まず、会社どうしようと、皆さん思いますからね。クビになるから早く復帰したい。それでは、きちんとした初期の治療もできませんので、その辺の充実したものを是非望みたいなと思っております。
○長谷川委員 福島大学の長谷川です。難病・疾病団体協議会にお聞きしたいのですが、難病患者の方々は、本当に病気があるせいで就労が非常に困難な方もいらっしゃって、しかし障害者手帳の制度とは整合しないので手帳を取得できない。その結果、雇用義務制度の対象になれない方がいらっしゃるのは、重々承知しているつもりです。その人たちを雇用義務制度の対象にしていきたいという御要望もよく分かりました。
 ただ、これは私が実態が分からないので、是非教えていただきたいのですが、難病患者の方もいろいろな方がいらっしゃるのではないかと思っています。恐らく就労ができないであろう方から、雇用義務制度があればできる方。そして、さらには差別禁止とか、合理的配慮の提供がされればできるのではないかという方と、そういったものもなくても就労できる方がいらっしゃるのではないかなと思っているのですが、その認識で正しいかどうかということ。
 加えて最初の御説明のときに、指定難病の方が80万人ほどいらっしゃって、そのうち既に働いていて難病になった人を除くと、残り1割、8万人ぐらいの人しか働けないだろうとおっしゃってくださったかと思います。ただ、他方で、既に働いていて難病になった人の中でアンケートを取ると、そのうち24%の人が辞めざるを得なかったということをお聞きして、その数もすごく大きくて、何とかしなければいけないというのもよく分かるのですが、裏を返すと、7割ぐらいの方が働き続けられているというようにも考えたのです。そうなってくると80万人のうちの1割程度ぐらいの人しか働けないという御説明と、どのように整合的に理解したらいいのだろうというのを、一番最初の疑問とともに感じておりまして、そこを説明していただけるでしょうか。
○玉木氏 その24%というのを非常に機械的に捉えておられるかと思うのですが、アンケートの中には主婦もおりますし、アンケートを取った患者全部が働いていたわけではないというように、まずお考えをちょっと変えていただけますか。就労していた中で、24%の人、その24%も病名によっては違います。全体的に大体並べて、先日JPAで取ったアンケートでという意味と取っていただきたいと思うのです。その80万の中の約1割というのは、就労を希望した者というように、お考えいただきたいと思います。ですから、先ほど長谷川先生が分析した人数は、ほぼ間違っているわけではありません。ただ、就労を希望した者が約1割と考えていただければいいのではないかと思います。24%というのは、全員が就労している人ではなくて、例えば100人アンケートを取ったとすると、その人たちは発病前に働いていた人もいますし、主婦だった人もいますし、あるいは子供もいるというように考えていただくと、もっと確率は高くなるのかなと思います。ただ、働きたくても働けない人、それが雇用義務の中に入るのであれば、就労がもっと進むことは、これは確実だと御理解いただければと思います。
○阿部座長 大変申し訳ないのですが、ただいまちょうど2時30分で、予定していた時刻になりましたので、まだいろいろと御質問もあるかと思いますが、本日はこの辺りで終了させていただきます。御発表いただいた皆様、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございました。次回も引き続き、関係者からのヒアリングを行いますので、日程等について、事務局から説明をお願いします。
○障害者雇用対策課長補佐 事務局でございます。次回第5回は11月24日(金)13時半から予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
○阿部座長 それでは、これをもちまして、本日の研究会は終了したいと思います。本日もお忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございました。