第2回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(議事)

職業安定局雇用開発部障害者雇用対策課

日時

平成29年10月23日(月)10:00~12:00

場所

厚生労働省専用第21会議室(17階)
(東京都千代田区霞ヶ関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館)

議事

○阿部座長 おはようございます。ただいまから、「第2回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」を開催いたします。本日は、前回欠席されていた委員に出席いただいておりますので、御紹介させていただきます。法政大学教授の眞保智子委員、全国精神保健福祉会連合会理事長の本條義和委員、よろしくお願いいたします。本日、欠席されている委員は久保委員です。また、本日、ヒアリングを予定しております日本発達障害ネットワークの橋口様は、遅れて御参集くださるということです。続いて、前回以降に委員に交代がありましたので、事務局から新たに委員となられた方の御紹介をお願いいたします。
○障害者雇用対策課長補佐 お手元の参考資料1の参集者名簿を御参照、御確認ください。新しく委員に御就任された方については、下線を引いております。吉住正男委員が辞任されまして、後任として新たに日本労働組合総連合会総合労働局雇用対策局長の漆原肇様に御就任いただきました。よろしくお願いします。
○阿部座長 よろしくお願いします。それでは議事に入ります。事務局から、本日の進め方などについて説明をしてください。
○障害者雇用対策課長補佐 第1回研究会において、今後ヒアリングを実施していく流れについてお示しいたしましたが、本日以降、それに沿って関係団体の皆様からのヒアリングを実施してまいります。なお、ヒアリングについては、各団体の皆様の御都合等を踏まえ順次実施していくこととしており、本日は全国精神保健福祉会連合会様、発達障害ネットワーク様、全国就業支援ネットワーク様の3団体から御発表いただくこととしております。また、次回以降の日程については、改めてお示しします。
 また、本日については、各団体の皆様から15分ずつ御説明いただきたいと思っております。その説明の後に簡単に一旦質疑の時間を5~10分程度取った上で、各団体の皆様に発表していただき、最後、残った時間、大体30~40分ぐらいだと思いますが、その段階で改めてまとめて意見交換等の時間を取りたいと思っております。したがいまして、各団体の皆様がそれぞれプレゼンされた後の質疑においては、基本的には中身を確認されたいとか、そういったところを質問いただくということで、意見等については最後にまとめてお願いできればと思っております。また、大変申し訳ございませんが、御説明の時間が15分と設定しておりますので、事務局で10分経過した段階でベルを1回鳴らさせていただきたいと思っております。また、15分を経過した時点で改めてベルを2回鳴らしますので、その場合に適宜意見をまとめていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
○阿部座長 それでは、関係団体からのヒアリングを始めます。議事次第の順に、公益社団法人全国精神保健福祉会連合会副理事長の松澤勝様より御発表をお願いします。よろしくお願いします。
○松澤氏(全国精神保健福祉会連合会) 皆様、おはようございます。私は全国精神保健福祉会連合会副理事長を務めております松澤と申します。今日は、委員の本條のアシストに参りまして、役に立つかどうか少し心許ないかもしれませんが、頑張ってみます。よろしくお願いいたします。高い席からの発言お許しいただきたいと思います。
 お手元の資料1-1を御覧ください。私どもの設立、団体概要について、そこに書いてあるとおりです。2006年、NPO法人として発足いたしまして、現在、公益社団法人になっております。
 活動目的及び内容については、そこに書いてあるとおりですが、主たる内容は、精神障害者等、その家族の福祉の増進に寄与するのが最大の目的です。主な活動内容としましては、機関誌「みんなねっと」の発行、全国大会。今年も先週の岡山での大会、1泊2日で開催しております。そのほか、関係機関・団体等の連絡調整に関する事業を行います。
 私どもの加盟団体は、全国47都道府県連合会が会員でして、そのほか、機関誌「みんなねっと」を1万2,000部発行しておりますが、この購読者は精神障害者本人及び家族が中心となった購読者です。手前どもの障害者雇用に関する歴史を改めて顧みまして、前内閣から叫ばれております働き方改革実行計画で、私ども障害者等の希望や能力をいかすという就労使援の推進がうたわれたことには、隔世の感があります。
 私どもの障害者の雇用に関する法律としましては、身体障害者雇用促進法が1960年に制定されて、来年、私ども精神障害者についても雇用義務化が実施されることになりましたので、ほぼ50年、半世紀掛かってここまで達成したということについては、私どもは皆様方のお力添えを感謝いたしますとともに、今後ともよろしくお願いしたいと。
 今回の来年4月からの実施についても、いわゆる猶予期間が5年付けられておりました。今回の平成30年4月からの実施のときにも3年間の緩和期間が付けられて、そのやり方が非常に悠々たる、のんびりしたペースでして、こういうことは即実施することで、50年掛かってようやくここで来たわけですので、改めてお願いしたいと思います。
 今後のことについては、次のとおり御意見申し上げたいと思います。論点1ですが、障害者雇用についての就労希望者の着実な増加、就労希望者における障害特性の多様化等がありますが、いろいろな現状についてどのように評価するかという問題ですが、私どもは次のように考えます。
 私ども精神障害者については、この10年間の増加が顕著で、平成28年6月現在、4万2,000人、前年比44.4%と大幅に増加しております。この間、新規の就職申込みは2万3,000件から8万6,000件と着実に増加しております。ですが、この精神障害については、その歴史的な背景から、差別偏見にさらされ、雇用においても障害特性や社会的背景の理解が未だ不十分であります。精神障害に関する知識が不足しているという大きな要因と考えられます。
 今後とるべき方策、対応については、次のように考えます。企業におきまして、現場職員の教育、幹部はもちろんのことですが、現場職員の教育を是非引き続き進めていただきたいということです。メンタルリテラシーという基礎知識だけではなくて、現場感覚で合理的配慮を社会的モデルの接し方について、ジョブコーチなども活用した教育が求められるところです。また、ジョブコーチだけではなくて、できれば更に進めて事業主体の責任で支援に移行していただきたいというのが、私どもの考え方です。
 論点2は、近年の障害者雇用者数の大幅な増加に対して、長く安定的に働き続けられる等、雇用の質の向上を図るためにどうしたらいいかということですが、今回の平成30年4月からの雇用の義務化ということで、是非、精神障害者についての就労の困難なことを徐々に改善していくと同時に、中高年層の障害者についても、働き方を改善できるように対応していただきたいということです。
 現状がどういうことかと言いますと、平均勤続年数から見ますと、私ども精神障害者に関しては、4年3か月、身体障害者の10年、あるいは知的障害者の7年9か月と比較してみますと、短い傾向は見られます。定着率を経過期間別に見ますと、就労後3か月で69.9%、これに対して知的の方は85.3%、発達障害の方が84.7%、身体の方が77.8%と、私どもは定着困難な状況が読み取れます。これは精神障害者特有の問題がありますが、同時に障害の非開示就職、いわゆるアウトカミングと言いますが、外にディスクローズする比率が非常に低いことも見られます。これは他の障害者と比べて実に高い32.6%のケースが見られます。これは基本的には、精神障害は隠しておきたいという気持ちが表れていると言えます。
 希望勤務時間については、私どもはこれを非常に重要に考えておりますが、4割近くが30時間未満、いわゆる短時間労働者という形での比率が高いことは仕事内容、賃金、評価等の労働条件よりも、体質的に疲れやすい、体力・意欲が続かないという病気からくる精神障害者特有の勤労耐性の弱さからきているということです。短時間労働の中でも一定時間ごとの休憩時間の設定とか、優しい休憩場所の提供を考えていただくのが得策かと思います。そういう意味で障害者ごとの特性を見ていただくためにも、上司、専門職等による定期的な相談の機会を企業責任で設けていただきたいことも、私どものお願いです。
 今後、とるべき対応については、短時間雇用の柔軟運用がまず第一です。精神障害領域については、週20時間未満での就労可能者は多いので、この時間枠での採用の在り方を確立する必要があります。せめて30時間未満20時間以上の雇用率の見直し、現在のカウントの仕方が0.5ですが、是非、0.5という数字のカウントの仕方を1ということで考え直していただきたいと。やはり0.5というイメージはいかにも悪い。あるレベルの仕事を達成したら、短時間雇用と言えども1とカウントするのが本当かと思います。0.5にすることによって、逆に障害者自身が自分たちの労働は0.5人前なのかという感じを持たれては困るわけです。そういう意味で、是非、一人前の扱い方、人並みの扱い方をしていただきたいのが本旨です。
 雇用率カウント対象者の問題ですが、現在、精神障害者福祉手帳が基本的ないろいろな行政の手続のカウントの対象ですが、できれば手前どもとしましては、自立支援医療受給者証の取得、この制度を利用している方が手帳所持者よりずっと多い、2倍以上の数字の精神の方々が利用しておられます。下のほうに、自立支援医療に関する簡単な説明が書いてありますが、この自立支援についても、身体障害者も御利用なさっていますが、精神については、自立支援医療は対象者として非常に大きなマスを考えられるわけです。是非、精神保健福祉手帳の所持者だけではなくて、それを含めた大きなマスで精神障害者のことを考えていただきたいということです。
 時間の関係がありますので、論点3に入らせていただきます。現在、論点3につきましては、ICT技術の発展等に伴い、私ども精神障害者の在宅就業を含め、働き方をいろいろ変えてみたらどうかということが求められております。現状認識としましては、これに対して私どもは、ILOが認めております保護雇用制度、英語ではシェルタード・エンプロイメントという言い方をしておりますが、シェルタード・エンプロイメントは国際的には認められた雇用形態の1つでして、一般就労でもなく、福祉的就労でもない、第三の雇用形態として認められているわけです。今後とるべき方向性としましては、保護雇用義務制度を取り入れていただく形で進めていただきたいというのが、私どものお願いです。
 論点4です。現在、中小企業の障害者雇用が停滞していると言われておりますが、中小企業こそ正に私ども精神障害者にとっては働き場所の宝庫と見ております。確かに難しいところがありますが、中小企業の経営者の方々の前向きな態度を持っておられる方々が多うございまして、是非、中小企業を利用した障害者雇用の増加を考えていただきたい。
 その際の考え方の中心となるのが、IPSモデルという考え方です。IPSモデルと言いますのは、そこに書いてありますように、障害があるから、障害が治ってから就労ということではなくて、障害があるけれども、まずplace、入ってから、就労している間に改善の方向に持っていくという考え方です。place-then-trainというアプローチ、モデルが私どもで考えている方向です。就労そのものは治療的であり、リカバリーの重要な要素となるという意味では、IPSモデルも是非考えていただきたいということです。
 論点5です。これについては、先ほど来申し上げております、自立支援医療制度に基づく精神障害者の取上げを大きく捉えていただきたいという問題でして、これにつきましても、職場復帰プログラムの対象となります方々、最近、これは非常に心の健康問題ということで疲弊する労働者が増えているだけに、是非、この問題も含めて考えていただきたいということです。
 論点6です。これは障害者雇用率制度、雇用納付金の問題ですが、単にペナルティを高くすればいいという問題ではなくて、雇用率、納付制度が基本的には雇用することが最優先とする社会の考え方、社会の義務があるという基本原則をむしろ抑える捉え方になっておりますので、罰金があるから雇用しますということではなくて、雇用することによって社会そのものが良くなるという考え方に従っていただきたいというのが、私の考えです。大変時間のない中で早口で申し上げて申し訳ありません。以上、私の説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○阿部座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの発表につきまして、質疑を行いたいと思います。御質問のある方は挙手をお願いいたします。なお、前回もお願いしていますが、発表される際は、名前を先に言っていただいて、それから発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。それでは、どなたでも結構ですので、御質問があれば。
○栗原委員 言われることはごもっともだと、私も思います。それで、資料を見させていただきまして、ちょっと、質問があります。最初の論点2について、20時間以上30時間未満を、0.5から1にカウントというお話があったと思うのですが、これでもしフルタイムになった場合は、1.5とか2というようなこともお考えでしょうか。
○松澤氏 みんなねっとの松澤です。私はそこまで考えておりませんが、まず精神障害者に対する何となく0.5人前という考えを広めたくない、まず、一人前なのだと思っていただくという意味では、その先のことは考えずに、まず1.0にしていただきたいというところを、まず第一目標にしたいということです。
○栗原委員 実は私どもの会社で、5年ほど勤めて辞められた精神障害者の方がいらっしゃるのですが、辞めたのは一般就労したいということで、手帳を隠して就労したのですが、やはり転職先を2か月で退職しました。私どもの会社で勤めた5年間というのは、精神の方は、ほかの人となかなかうまくやっていけないので、単独の仕事ならばいけるだろうということで、1人作業で5年も勤めていただいたのです。また、その人はフルタイムで働けたのです。ですから、仕事によっては、フルタイムで十分やっていける方が、かなりいると私は思っていますので、何となく、これでいくと30時間以上は、精神の方はちょっと働けないのだよという見方に、私は見えてしまいました。
○阿部座長 それではその他、御質問を。
○工藤委員 日本盲人会連合の工藤と申します。精神障害者の場合、自立支援医療受給者証を持っている人の方が精神障害者保健福祉手帳を持っている人よりもずっと数が多いということでした。そこで、精神障害者については、精神障害者保健福祉手帳の所持者だけではなくて、自立支援医療受給者証を含めた大きなマスで精神障害者のことを考えていただきたいということでしたが、精神障害者の場合、大体どれぐらいの開きがあるのでしょうか。要するに自立支援医療受給者証の所持者数と、精神障害者保健福祉手帳の所持者数はどうなっているのでしょうか。
○阿部座長 松澤様、お願いします。
○松澤氏 みんなねっとの松澤です。お答えいたします。精神障害者福祉手帳を持っておられる方は、私どものカウントでは8万で、自立支援のいわゆる制度を利用している方が、その2倍以上はいると、大体の推定はしておりますが、そんなところでよろしいでしょうか。
○工藤委員 もうちょっと、自立支援医療受給者証と精神障害者保健福祉手帳との違いについて、症状の安定性というところでは、手帳のほうが安定しているという理解でしょうか。それは余り気にすることではないのでしょうか。
○松澤氏 みんなねっとの松澤です。症状うんぬんは、精神障害者福祉手帳の配給には関係ありません。いろいろな社会的な制度、例えば税金ですとか、公共交通機関の割引とか、そういう場合に必要なのが障害者福祉手帳でありまして、いわゆる自立支援のほうは、もう名前のとおり、医療に関わる医療負担を軽減するための国の制度です。よろしいでしょうか。
○工藤委員 ありがとうございました。
○阿部座長 それでは、その他御質問。
○漆原委員 論点3の下のところにあります、「コーディネートを行う者の配置」というところでお伺いしたいのですけれども、例えば、産業医でも、全ての事業場で専任されているわけではなくて、事業場の規模によるところもありますが、ここでいう「配置」というのは、やはりその事業場に「常駐」してほしいということなのか、あるいは専任義務というようなイメージだと受け止めたほうがよろしいのでしょうか。
○阿部座長 松澤様、よろしいですか。
○松澤氏 今の御質問、ちょっともう一回、論点の。
○漆原委員 論点3のですね。
○松澤氏 論点3のどこでしょうか。
○漆原委員 下のほうのゴシックになっているところで、「雇用関係の場面にもコーディネートを行う者を企業の責任として義務付けること」とあるのですが、その前に「配置など」と括弧の中に書いてありまして、これは専任義務として、例えば中小規模の事業場でも、誰かそういう専門の人を専任しておくということなのでしょうか。「配置」となるとかなり大きな事業場なのかなと思ったのですが、そこのところの御意見を伺えればと思います。
○松澤氏 みんなねっとの松澤です。どうも失礼しました。お答えいたします。まずは専任ということで、できれば配置していただきたいという考えです。よろしいでしょうか。
○阿部座長 その他いかがでしょうか。
○志賀委員 今の点プラス論点1なのですけれども、いわゆる一般雇用であっても期間の定めなく利用できるジョブコーチ的支援というものが求められておりますが、いわゆる障害非開示の方も含めて、コーディネートを行うことも含めてだと思われますが、その辺、非開示の方に対して、具体的にどのような障害の配慮を求める支援が必要なのかイメージが湧かないのですが、具体的な何か思い描けるものがあればと思いまして、質問させていただきます。
○阿部座長 それでは、お願いします。
○松澤氏 みんなねっとの松澤です。今の問題につきましては、ちょっと私ども、見解をまとめきれておりませんで、これからの宿題とさせていただきます。いろいろと精神障害者特有の雇用に関するバリアがあります。もう御存じのとおり、精神障害というレベルと、それから障害でありながら病気を持っているという二重の障害者という意味では、非常にいろいろな問題が複雑に絡んでおりまして、是非その問題につきましても検討させていただきたいと思いますが、ここではちょっと、まだ結論を出しておりませんので、よろしくお願いします。
○阿部座長 ありがとうございます。その他いかがでしょうか。もしなければ私からも1つ質問をさせていただきたいと思います。栗原委員の御質問とも関連するのですが、論点2の短時間雇用の柔軟運用の際に、松澤様は多分、私の記憶が正しければ、30時間未満20時間以上の雇用率の見直しの際に、あるレベルに達したら、1カウントするというようなことを、おっしゃっていたと思うのですが、この「あるレベルに達したら」というのは、時間とは関係なく、例えば仕事の内容であるとか、あるいは技術的なレベルであるとか、そういうことをイメージされているのか、あるいはそれ以外のことをイメージされているのか、教えていただきたいと思います。
○松澤氏 みんなねっとの松澤です。お答えいたします。先ほど来、申し上げておりますが、精神障害者特有の事情、特性がありまして、いわゆる時間で縛られるのが非常に苦手な障害者ということで考えていただきたいと。ですから、よく欧米ではジョブ・ディスクリプション、職務明細書というものがありまして、あるレベルに達したら、その時間の問題はさて置いて、その仕事を一応クリアしたというようにもっていく考え方が多いのです。
 日本では最近でこそようやく同一労働同一賃金という考え方が入ってきているだけに、そういう時間をちょっと切り離した考え方、したがってあるレベルの仕事を達成したら、ある仕事に対する報酬ないしは成果を認めるという方向に持っていくべしという意味で、0.5から1.0にしてほしいという考え方は、その時間の要素は一応考えますが、全然これに縛られるということは、私どもにとっては非常になじみにくいということでは、0.5から1にすることに際しては、是非そこは柔軟に考えていただきたいというのが本旨です。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。
○工藤委員 先ほどサポーティドエンプロイメントということについてお話がありました、日本では、かつてはサポーティドエンプロイメントということを言われたことがよくあったと思うのですが、今は特例子会社制度がありますので、特例子会社もたくさんできておりますし、福祉サイドの就労継続A型事業所もたくさんできておりますので、そこまで要るのかなと思って聞いておりました。保護雇用制度について、特例子会社や就労継続A型事業所とは違ったメリットみたいなものがもしあるとすれば、それとの比較において、何かあればお願いします。
○阿部座長 では、お願いします。
○松澤氏 みんなねっとの松澤です。お答えいたします。保護雇用制度につきましては、いわゆる日本で行われております福祉就労という形でのレベルから、一般就労に一挙に持っていくのではなくて、その中間にある第三の雇用形態として考えていただけないかと。どうも日本の考え方は、福祉でなければ労働という二者択一の考え方なのですが、そうではないでしょうと。
 私どもは精神障害者の特性を考えれば、その中間もあり得るでしょうということで、この提案をさせていただいています。かつWHOの世界でも、シェルタードエンプロイメントという形での位置付けがなされておりますので、そういう意味では私どもの国の制度の中に、こういう考え方を是非、取り入れていただきたいということで申し上げたわけです。
○工藤委員 ありがとうございました。私は保護雇用について、シェルタードエンプロイメントと言うべきところを、うっかり、サポーティドエンプロイメントと言い違いをしておりました。失礼しました。
○松澤氏 いいえ。
○阿部座長 それでは、お時間もありますので、ここまでにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは続きまして、一般社団法人日本発達障害ネットワーク事務局長、橋口亜希子様より御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○橋口氏(日本発達障害ネットワーク) 一般社団法人日本発達障害ネットワークで事務局長をしております橋口と申します。今日はちょっと電車が遅れてしまい、遅刻してしまい申し訳ありませんでした。
 では、私のほうから説明をさせていただきます。まず、団体概要ですが、私たち一般社団法人日本発達障害ネットワークは、平成17年4月1日に施行されました発達障害者支援法に基づき、団体が設立されました。活動としましては、私たち団体は、とても珍しい団体ですが、当事者はもちろん、親の会というのももちろんですが、学会・研究会、それから臨床心理士や作業療法士など、専門職といわれる職能団体が集まってスクラムを組んでいる幅広いネットワークです。そういった中で私たちが活動しているのは、発達障害の理解・普及、啓発活動というのはもちろんですが、関係府省庁に対しての政策要望の提出であったり、様々な会議等への参画というものをしています。
 今回、このような大変貴重な場を頂き、ありがとうございます。その中で、発達障害ということに関して簡潔に述べさせていただきます。発達障害は、大体、人口の10%いると、日本では言われています。ただし、それは海外から比べると、少ないと私は感じております。実はとても発達障害は幅が広いです。知的障害を持つ人もいれば、持たない人もいる。それから手帳を持つ人もいれば、持たない人もいる。もっと言えば診断を受けている人もいるし、いない人もいる。更にもっと言えば、本人が、又は周囲も気が付いていない場合もあるというものです。
 ですので、発達障害というのは、ある意味、この雇用という中でも枠に当てはまらない人たち、つまり、制度に当てはまらない人たちだと言われています。そのような中で、とても大切なのは、昨年改正されました発達障害者支援法の中で大きくうたわれている環境調整です。雇用の場で環境調整が行われるということが、とても重要であると考えます。
 では、論点に移っていきます。まず、論点1に関しましては、私たちは現状認識としては、障害者雇用については就労支援者の増加、それぞれの障害特性の多様化に配慮した支援、企業における障害理解や取組の進展、それから地域の就労支援機関の増加などしていることの充実等を評価したいと考えています。特に発達障害者支援法施行以来、発達障害者を対象とする様々な雇用政策が拡充されてきたことも評価しております。
 今、述べた上記の取組というものも、10年余りということで、他の障害分野と比較して年月が浅く、雇用・就労施策がある程度整ったとは言い難い状況、発達障害は障害の中でも歴史が浅い、また、認知がまだまだされていないという意味では、まだまだ施策が整ったとは言えない状況だと思います。その中で取るべき対応の方向性ですが、発達障害と、その多様性を理解した雇用・就労施策の再構築が必要なのではないかと考えます。
 先ほど松澤さんが、「週2時間未満枠での採用の在り方」とおっしゃっていましたが、今、国が掲げている働き方改革というところでも、このような部分で具体的に、柔軟性や多様性というものが必要ではないかと考えます。それから、キャリア形成というものを考えると、ライフステージを通した支援となり、小・中・高・大学における将来の働くことを目指した支援や、そのための関係諸機関、つまり福祉と教育、福祉と民間、教育と民間の連携の再構築が必要だと思っています。
 昨年に改正された発達障害者支援法では、切れ目のない支援というものが重要であると言われています。ですので、ライフステージを通した支援が必要であると考えます。それから、働く場としての、小・中・大を含む企業における発達障害者の雇用支援の普及のための戦略づくりと、雇用定着の工夫の必要性。それから、発達障害者の雇用・就労支援のための相談機関の改善が必要だと思っています。
 発達障害者支援センターというものがありますが、昨年の改正法の中で、複数設置となっていますが、先日、ある県に行きましたが、そちらの県は、今、予約をすると、来年の5月が初診、初めてカウンセリングが受けられるという、ものすごい待ち状態です。ですので、相談機関というものも、もっと増やしていただく必要があると思います。
 では、論点2に移らせていただきます。こちらの論点2の現状認識、課題というところに関しましては、障害者雇用者数は着実に増加していると、私たちは認識しています。しかしながら、働くことを希望していながら様々な理由で働くことができない障害者が、まだ多数、存在しているのではないか。その意味では、障害者雇用の量的拡大は、今後も大きなテーマになると考えています。一方で、発達障害者など、きめ細かい支援が必要な障害者には、質の向上も同じように重要なテーマとなっていると思います。
 では、それに対し「対応」です。発達障害者については、キャリア形成が重要ではありますが、多様であるために整理されたものとはなっていない。つまり、合理的配慮というのも、発達障害に対する合理的配慮はとても難しいと言われています。なぜならば、客観的でなく、至って主観的であるということです。ですので、大学等高等機関で学ぶ者も多いので、就労支援機関も教育間と連携する仕組みを作る必要性があるのではないか。教育機関サイドとしては、早期の診断に基づいて、小・中・高の時代からキャリア形成の筋道を付けておく必要があると思います。
 それから相談支援の機関が、発達障害についての理解をしていただいているのは、大きな進歩でありますが、多様な状態に対するきめ細かい支援とは、必ずしもなっておりません。地域及び相談者の力量の差異が、大きなものとなっております。もう一度、訓練・研修のシステムを見直すことが必要です。それから職業訓練についても道は広がっていますが、まだ身体モデルが大きく、発達モデルとは言い難い。それから、平成30年4月からの精神障害者の雇用義務化に伴って、「精神障害者(発達障害者を含む)」と、法律上明記されていますが、発達障害者についての新たな段階の雇用施策・就労支援施策を構築することが重要ではないかと考えます。
 では、論点3です。こちらに関しての現状認識、課題ですが、雇用・就労支援を含めて、様々な支援におけるテクノロジーの進歩については、目覚ましいものがあると考えています。雇用・就労の場面において、本人のニーズに基づく支援がきめ細かく提供されているかが課題であると考えています。テレワークや在宅就業というのは、発達障害の人たちにとって有効な就労の場であると、1つ考えています。そのような場面において、本人に必要なニーズのアセスメントと、それに基づく最新のテクノロジーによる支援を、きちんと計画に落とすこと。それから、アセスメントできる人材の養成というものが必要だと思います。これは関係者、みんなで作るということが重要だと思います。それから、そのような最新のテクノロジーが、どこにおいても地域差がなく、活用できる体制の整備が必要であると考えます。
 では、論点4です。中小企業というところですが、現状認識、課題等というところですが、大企業のみならず、中小企業においても障害者雇用が進んでいることを、私たちは評価しております。発達障害者については、それぞれの事情は異なりますが、障害者枠で、あるいは一般枠で就職するか、どちらを選択するかという課題があります。障害者枠は、大企業というイメージが強いので、中小企業にも拡大していくことが重要ではないかと考えます。その中で「取るべき対応」というところですが、是非、今一度、もう一歩進んで、中小企業における発達障害者理解の促進を図っていただきたい。それから、ジョブコーチの派遣・利用は、必要であれば、どこの地域においても地域差なく利用できる施策の実現というものを求めたいと思います。
 では、論点5です。こちらに関しての現状認識、課題ですが、発達障害者支援法施行以来、地域の就労支援機関や、教育、福祉、医療等の現場の連携が進んでいると評価しております。連携会議や支援計画による協働などが着実に進んでいます。ただし、進んだ半面、その連携がどこか形だけ、被支援者の意思が反映されていない、もっと言えば、被支援者の信頼を得ていない、アリバイづくりのようなところもあり、どこまでその成果が出ているのか、曖昧であると考えています。特に公的な就労支援機関のアウトカムというものが見えづらい。もっと言えば、ここに関しては、その被支援者が働けてよかった、支援を受けてよかったというメタアウトカムというものが見えることも必要ではないかと思っています。ここに関しての取るべき対応、対応の方向性ですが、地域の就労支援機関や、教育、福祉、医療等の現場の連携などを評価して、それを地域でいかす仕組みづくりが必要ではないか。そして、それを互いが共有し合えて、実際に変化が生まれる、ブラッシュアップしていく、そのような状況を作り出すことが重要であると考えます。
 では最後です。論点6です。こちらに関しての現状認識、課題です。来年4月からの精神障害者の雇用義務化に伴って、「精神障害者(発達障害者を含む)」と法律上、明記している中での発達障害者についての雇用が進む可能性を、私たちは評価しております。精神障害者の雇用義務化の際には、この制度のそもそもの成り立ち、そしてその範囲を含めて、多くの課題が問われているのではないでしょうか。
 そこに関しての対応、方向性を、私たちはこのように考えます。精神障害者の雇用義務化に伴って、発達障害者についての新たな段階の雇用施策・就労支援策を構築することが重要である。冒頭に述べましたように、発達障害とは、とても幅が広く、手帳を持っている人もいれば、いない人もいる。診断を受けている人もいれば、いない人もいる。そのような形で、新たな段階の雇用施策というものが必要ではないか。その際、確かに雇用・就労の困難者ということで、その範囲が定められるべきであるとは考えられますが、それは従来の確定し得る障害の範囲という観点のみならず、就労・雇用の困難な人という観点も重要になってくるのではないか。これは障害者にかかわらず、今の社会においても言えることだと思っています。
 発達障害の場合、障害の厳格な規定より、むしろ個々の状態に着目した支援、つまりその人が、どのようなことで困っていて、どのようなことでつまづいているのか、そこに着目した支援が必要な時代に来ているのではないでしょうか。障害者雇用施策の障害そのものを、どう規定するのかの必要性があると考えます。それは障害ではないが、多くの就労に困難を抱えている人たちへの支援に道を開くことになるのではないでしょうか。その手掛かりとして、発達障害を理解していただくと有り難いと存じます。以上です。
○阿部座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの発表につきまして、質疑を行いたいと思います。御質問のある方は、挙手をお願いいたします。
○長谷川委員 福島大学の長谷川です。お話ありがとうございました。論点2のところと、最後の論点6のところで、新たな段階の施策が必要なのではないかとおっしゃっていただいたのですけれども、その中で具体的にどのようなものが新たな施策と考えていらっしゃるのかと感じまして、質問させていただきます。
 2013年の障害者雇用促進法の改正では、精神障害者の雇用の義務化だけではなくて、合理的配慮の提供義務についても定められました。これについては、もう施行されておりますが、発達障害は特に多様であって、個別な対応が必要であるということなのであれば、既に施行されている合理的配慮の提供義務によって、対応できる部分もあると考えていらっしゃるのか、それとも、それだけでは足りなくて、更に新たなものが必要と考えていらっしゃるのか、どちらなのかなと思って質問しました。よろしくお願いします。
○阿部座長 では、お願いいたします。
○橋口氏 日本発達障害ネットワークの橋口です。御質問ありがとうございます。まず、新たな段階というところに関しては、最後にも申し上げましたが、この障害者雇用という、今、直面している私たちの課題というものが、果たして障害という観点だけで解決できるのでしょうかということです。というのは、今、働き方改革という中で、私は女性ですが、女性がよくこの日本の中でキャリアを築きづらい、それはライフステージという中で、働き方が選択できない課題があります。例えば子供を出産したときには、育児休暇を取る。小さい頃は時短で、もっとショートタイム的に働くことができるとか、そのような選択できる働き方というものができることではないかと考えます。
 そういう新たな段階という意味では、これは最後に申し上げたように、障害という枠に捕らわれず、全ての人たちのライフステージにおいて、その人その人がそのライフステージのどの部分で、どういうところで困っているのか、どういうところでつまづいているのか、もっと言えばどういう選択肢があれば、働くことができるのかというところを考えていただきたい。また、発達障害というところは、そういう意味で、幅が広いというところで、手掛かりとしていただけるのではないかと考えています。ちょっと答えになっているかどうか分かりませんが、このように考えました。
 それから2番目の合理的配慮というところに関しましては、これは合理的配慮、対応できる部分が多々あると思っています。なぜならば、発達障害の人たちの困っていることというのは、実は社会の人たちも困っていることであったりするのです。どうでしょうか、例えば小学校とか中学校といった所で、忘れ物をよくしてしまうという、発達障害の子たちの特徴があります。でも、忘れ物をしてしまうのは、発達障害のある子たちだけではないですよね。でも、その子たちへの、どうしたら忘れないで済むか、スペアを学校に置いておくとか、いろいろな配慮がある。そういった発達障害のある人たちへの支援をすることによって、社会の困っているを解決することができる。ですから、そういう意味では、合理的配慮というものは、対応できる、対応が十分可能というよりも、対応できる部分であると考えています。以上です。
○阿部座長 よろしいですか。その辺り、いかがでしょう。
○栗原委員 先ほど発達障害の方が10%ぐらいいるとのご説明で、非常に多いということと同時に、自分が発達障害であるということが分からない人がいるというお話を先ほど伺いましたが、分からないということは病院にも行っていないということになると思うのです。何の治療もされていない。ということは、本人が発達障害であっても、外部の人は、その方が発達障害かどうかというのは、分からないということになります。そうすると、先ほど来、出ています、合理的配慮など出来ず、職場での指導、教育等が非常に難しくなってくるのではないかと思っています。その辺について、いかがお考えなのか、伺いたいと思います。
○阿部座長 では、お願いいたします。
○橋口氏 御質問ありがとうございます。今、頂いた御質問は、企業からたくさん私たちが頂く質問です。よく御相談を受けるのが、本人も周囲も気付いていない。だけれども、何かうまくいかない、コミュニケーションが取れないとか、組織運営につまづいてしまうとか、そういったことがあります。そういう中で、本人は気付いていないのだけれども、周囲が困っていたり、周囲は困っていないのだけれども、本人がすごく困っていたりということがあります。
 ですので、その点に関しては、どうでしょうか、私がすごく考えるのは、発達障害という診断名が大切なのではないと思います。先ほども申し上げましたが、発達障害の特徴というのは誰もが持っている部分なのです。それで困るということがある。そういう意味では、私たちの自責も含め、もっと発達障害のことを、もっともっと社会に周知していくことが大切だと考えます。それは診断名ありきではなく、こういうことで困っているというところでの、解決策というものを出していくことが必要だと思います。
 それから、治療というお言葉が出ましたが、昨年改正されました発達障害者支援法では、もう明記されているのですけれども、私たちは、まず第一に治療とは考えていないのです。まず第一に考えているのは、環境調整です。つまりそれは合理的配慮ということです。ですので、職場の中に私たちが必要な持っていただきたいなと思う視点は、困る人は困っている人だという視点で、その人がどんなことで困っているのかということを理解し、そしてそこに環境調整、つまり合理的配慮をしていくという視点が重要になると思っています。ちょっとお答えになっているかどうか分かりませんが、以上です。
○阿部座長 よろしいですか。その他、いかがでしょうか。
○志賀委員 ちょっと障害の範囲の話ではなくなるのですけれども、逆に今、障害者の職業訓練並びに職業リハビリテーションを受けたいと思っていても、なかなか通常の方法では就職が難しいという人の問題で、論点2になります。職業訓練については、かなり広がってはいますが、身体モデルあるいは精神モデルということで、発達障害にある程度、特化したモデルをということで書かれております。
 しかし現在は、全国の障害者職業センターさんの職業準備訓練等は、多分、圧倒的に発達障害が多い。その他障害としての発達障害、さらに精神障害枠の方の中でも、かなりの率は発達障害で、知的障害を併存する人の可能性まで考えると、正確な数字までは分かりませんが、多分、直感的には6割、7割は発達障害の方だと思います。
 それから、福祉の分野の就労移行支援事業でも、都市部では発達障害を中心とした事業がかなり増えているということで、この辺、今回の雇用の施策も含めて、いわゆる発達障害というのは、そういった面では、精神障害、身体障害と一部違うのは、ほとんどの方が基本的には子供のときから、発達障害としての状態像が長期間続いていたと、その中で職業リハビリテーションあるいは就労支援は、どちらかと言うと短いスパンの中でサービスをするということになります。その辺も含めて、今の現行には存在しない新しいサービスを求めているという意味で、書かれているかどうかという確認です。
○阿部座長 では、お願いします。
○橋口氏 御質問ありがとうございます。今、おっしゃっていただいたとおり、発達障害の人たちの、その特徴というのは、小さい頃から出てきているものですので、長期間ということです。ですので、ここでも書かせていただいたのが、学校時代から、働くということはどういうことなのか、自分はどういった所で働きたいのか、もっと言えばどういった所だと、自分は自分の強みをいかして働くことができるのかという、それを教育機関との連携として、きちんと作る必要があると思っています。
 今、社会の中で大きな課題となっているのが、大学まではストレートで、もっと言うとエリートコースで進んでくる。だけれども就労したとたんに、就労でつまづいてしまう、そういう人が多いのです。ですので、就労してからでは遅いと思っています。
 発達障害のある人たちに対して、私が必要だなと思うのは、3つあると思います。1つ目は小・中・高という教育の段階できちんと就労できるための教育をしておくということ。それから2番目が、就労したときに、きちんとビジネスルール、ビジネスマナーというものも、また、そこで学べること。そして3つ目が、今、大きな問題ですが、リセット組といわれている就労してつまづいてしまった人たちに対して、もう一度きちんと、その就労というものに関してのビジネスルールであったり、マナーであったり、そういったものを学ぶ機会を、ちゃんと作ってあげること、その3つが必要なのではないかと考えます。以上です。
○阿部座長 その他、いかがでしょうか。
○漆原委員 最後の論点6についてですが、取るべき対応ですとか、対応の方向性のところに記載のある、個々の状態に着眼した支援というのは、発達障害だけでなく、精神障害者の雇用においても必要だと思っています。ただ、先ほどのお話にもあったように、障害の診断名にこだわらないというようなことですと、雇用義務化のところで、では、その働きづらさをどのように受け止め、どのように支援するかがわからなくなってしまうと思うのです。
 そこの取るべき対応の最初のポチのところに、新たな段階の支援の構築とあるのですが、診断名等がない場合、冷たい言い方になってしまうかもしれませんが、制度を新たに作る場合に、どうしてもそこがネックになってしまうと思うのです。その点についてお考えを、お聞かせいただければと思います。
○阿部座長 お願いします。
○橋口氏 御質問ありがとうございます。今、頂いた御質問というのは、私たちのほうにも、よく聞かれる声です。発達障害のある人を、できれば障害者枠で雇用したい。ですから手帳をどのようにしたら取ってもらえるかというところまで、踏み込んだ意見をおっしゃってくる方たちもいます。
 ただし、一番最初に申し上げましたように、人口の約10%いる、もっと言えば、その中でも、手帳を取らなくても一般就労として、うまく就労している人たちもたくさんいるわけですよね。では、その人たちが、どうしてそこで働けているのか、そういう意味で言うと、やはり環境というものが大きく影響しています。もっと言えば、これはよく御存じかもしれませんが、発達障害のある人たちの職業では、どうでしょうか、企業のトップであったりとか、そういう方たちも多いと言われています。
 ですので、そういった点も踏まえ、やはり発達障害というものは、雇用義務化という、その枠組みの中で捉えてしまうと、とても難しい。手帳を持つ人もいれば、取らなくてもいい人もいるし、診断を受けている人もいると思えば、診断を受けない人もいるという中で、やはりそういう枠組みに捕らわれず、本当に就労という、雇用という大きな枠組みの中で、しっかり考えていく必要があるのではないか。そういった個々に対しての支援というものをすることによって、いろいろな人たち、社会の全ての人たちが働きやすくなっていくのではないかと私たちは考えて、ここの取るべき対応の方向性というものを書かせていただきました。以上です。
○阿部座長 それでは、お時間もありますので、また御質問があれば、最後にお受けしたいと思います。それでは続きまして、特定非営利活動法人全国就業支援ネットワーク事務局長の酒井京子様より、御発表をお願いいたします。
○酒井氏(全国就業支援ネットワーク) 特定非営利活動法人全国就業支援ネットワーク事務局の酒井と申します。よろしくお願いいたします。本日は私どもの小倉代表が御報告をさせていただく予定でしたが、急遽、今日は飛行機が欠航で飛ばないということで、私がピンチヒッターとしてまいりました。よろしくお願いいたします。
 まず、私どもの特定非営利活動法人全国就業支援ネットワークという団体なのですが、構成されているのは障害者就業・生活支援センター、全国に330あります、そこの約半数がお入りいただいているということと、あと、障害者職業能力開発施設という職業訓練をする民間の施設と、あと就労移行支援事業所が60か所、合計256の事業所で構成されている団体です。全国に会員がいます。理念としては、地域で連携して実践に基づいて政策に関与してということで、障害のある人が働き続ける、特に一般就労・一般雇用において働き続けることの支援の在り方を、それぞれの地域の実情に応じた支援の在り方を考える活動を展開している団体です。NPOになりまして約10年たちました。
 それでは論点について御説明いたします。まず論点1です。障害者雇用の現状についてです。障害者雇用数であるとか実雇用率、就職件数等は増加しております。一方、送り出す側の支援機関、就業・生活支援センター、就労移行支援事業所等は、かなり数も増えて充実してきて層も厚くなっているということで、総体的には、現場の実感としても、障害者雇用は確実に進展していると思っております。ただし、雇用者数、あるいは支援機関の数も、量が拡大したことによって、送り出す側の支援機関、受入側の事業主、企業、双方に様々な課題も起こっているのではないかと感じております。
 企業につきましては、そこにも記載しておりますように、コンプライアンスの高まりということで、かなりの企業がたくさんの障害者雇用をされるようになってきて広がりも見せています。ただ、現場の支援機関からの声としてよく聞かれるのは、雇用率、コンプライアンスを重視する余り雇用率の達成に重きが置かれて、雇用ありきになっているのではないか。障害者雇用促進法の第5条の事業主の責務には、「社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有する」と理念として書かれていますが、そもそも障害者雇用の理念というものがなかったりとか、あるいは、有為な職業人という観点での受入れというところが少なからず欠如している企業がやや増えてきているのではないかということが、現場からの声として聞かれております。
 一方、支援機関においても、特に都市部においては、求人がかなりたくさん出ておりまして活況な状況ですので、働きたいという方がいて、一方では、働く障害者を求めている企業がおられたら、そこで十分なアセスメントとか、職業能力開発、職業訓練、トレーニングを行わず、職業準備生活が整わないままで就労へとつなげて、結果的にミスマッチが起こっているというケースがよく見受けられるという現状とか課題があります。
 そこで取るべき対応です。まず1つは、雇用は確かに伸びてはいるのですが、雇用の中に、今、現状では、福祉サービスである就労継続支援A型事業所の就職者数も併せてそこの件数に入っておりますが、就労継続支援A型事業所は、労働契約に基づいた雇用ではあるのですが、一方では、福祉サービスの下で働くという働き方という観点から、できればこれは分けて公表していただいて、障害者雇用の実態に努めていただきたいということ。あと、今は離職者数は公表されていませんし、離職者を正確に把握する手立てが、どのような手立てがあるのかもはっきりとは分かりませんが、例えば、雇用保険の資格喪失の数等から、もし離職者が分かるのであれば、離職者数も併せて公表していただいて、本当の意味での障害者雇用の実態が知りたいというのがあります。あと、先ほども理念がやや欠如している企業があるのではないかと申し上げましたが、やはり働く人、障害者を雇うというよりは、障害者である前に一人の労働者、働く人を雇うという観点の再確認が今こそ必要ではないかと考えています。今までは量の拡大と質の担保というところできましたが、今、これだけ量が拡大した中で様々な弊害も起こっていると認識しております。質の担保、向上にウエイトを切り替えた施策の展開が必要ではないかと思っております。
 続いて論点2に移ります。課題のところを見ていただきます。今度は雇用の質を考えます。障害者雇用だけに限ったことではないのですが、やはり正社員という安定した労働形態で働いている人は少なくて、私どもの団体では統計は取っておりませんが、他の就労移行支援事業所連絡会が取られた統計によると、正社員雇用は14%となっておりまして、やはり一般の雇用と比べても正社員の割合は低いかと思っております。あと、法律の改正には、5年を超えての有期雇用の場合の話も、働く本人たちに十分この件については周知されていない事案がたくさんあると聞いております。
 あと雇用環境の問題です。合理的配慮の提供義務がスタートしました。基本的には、本人の申出による建設的対話を進めることになっていますが、御本人側からの発信がすごく難しい方であったりとか、あるいは、最初の能力がなかなか身に付いていない方で、そこの部分で困難さを抱える障害の人に対しては、事業所側からの把握に努めることが必要ではないかと考えております。事業所によってかなりの濃淡があるように見受けられますので、ここも確実にやっていただくような体制が必要かと思っております。あと、賃金についても、先ほど正社員の率が低いと言いましたが、正社員で雇用されている方は別ですが、やはりパート、アルバイトの方は最低賃金に近い条件で働かれている方が多いですので、この辺りも、まずは実態把握に努めて、改善に向けての施策が必要ではないかと思っております。
 あと高齢化についてです。以前から雇用をされている企業においては、やはり定年を迎える方、あるいは定年まではいかなくても、高齢化に伴って労働稼働能力が低い状態になった社員を抱えておられる事業所もたくさんありますので、その次の働き方、労働能力が低下したとは言えゼロではないので、その方の持っている力を最大限活用できる場に行かせる、発揮できる場にうまくシフトしていく、そのシフトの仕組みが今後ますます必要になってくるかと考えております。
 4番目は、より重度、働きづらさのある障害者の雇用に関する課題です。雇用の受皿の拡大とか、支援機関側の充実ということで、たくさんの方たちが、これまで働くことを諦めていた方たちも、働くことに向かうステージに就いて、実際に雇用のほうへと向かっています。それでも、やはりこれまでなかなか雇用の対象になってこなかったより重度の方々に対しての支援も、次の段階としてはしていく必要があるのではないかと考えております。ただ、そこに今後は新たな雇用率制度の導入なども検討する必要があると書いておりますが、これについては、まだ私どもの団体の中で十分議論はしておりませんので、具体的にここで今日は述べることができない状況です。あと、最初に申し忘れましたが、今回ここに記載されている意見は、私どもの全会員からの意見の聴取りの下に、集約をした意見として記載をしております。
 時間がきております。この論点2で申し上げたいのは、まず雇用管理、企業側の、先ほどの論点1でも言いましたが、雇用管理のノウハウがやはりまだまだ蓄積されていないのではないかということで、そこを是非充実する。雇用管理のノウハウを習得したりする機会を充実していく必要があるのではないかということで、広く浅くのサポーター養成講座等も今年度からスタートしていますが、職業生活相談員の研修の充実であるとか、企業在籍型ジョブコーチについても、ますます拡充が必要ではないかと思っております。
 論点3です。ICTについては、求人はそれほどたくさんはないですし、あるいは、それを必要としている側の人も、全体から見るとそれほど多くはないとは思いますが、ただ非常に有効な手段であるには違いないので、その有効な手段をどうマッチングさせるかというところが必要かと思っております。ただ、在宅就労については、通勤形態で働く以上に、様々なコミュニケーション能力とか、自己管理能力、職務遂行能力が求められると思いますので、その辺の技能習得機会の保証が必要であると認識しております。あと、市場自体は小さいということですので、例えば、育児とか家族の介護をしている方で時間等の制約がある方では、移動の制約がある人の就労支援策と併せてすることによって、スケールメリットが得られるのではないかと考えております。あと、やはりなかなか企業での在宅雇用が進まないというのは、在宅での雇用管理のノウハウがないことが考えられますので、これについても、成功事例とかモデル事例を広く普及させる必要があると思います。
 論点4の中小企業の雇用です。停滞とありますが、ほかの団体の方もおっしゃっていましたが、私どもは停滞とは捉えておりません。障害のある人たちの貴重な働く場となって、確実に障害者雇用の下支えをしていると思っております。障害者雇用調査で、雇用者数50人以上は47万人いて、5年に1回の雇用実態調査では63万人ということで、単純計算で言うと、5人から50人の企業ではその差の16万人が働いているという、乱暴な計算ですが、と考えられて、相当数の障害者が中小企業でも働いて重要な戦力となっていると認識しております。ただ、中小企業側からしたら、人材として欲しいけれども、まず出会う機会がない、情報が入らないという声を聞きますので、出会える場というか、マッチングするような仕組みが必要ではないかと考えております。
 論点5については、現場レベルでの連携と、あと、制度、政策、行政レベルでの連携双方が必要であると思っております。特に、例えば制度、政策レベルであれば、次年度、平成30年度に就労定着支援事業が始まります。一方、福祉サイドでの就労定着支援事業が始まります。一方、労働サイドでは、従来ジョブコーチによる支援というものがございますので、そこの連携をどう取るか。行政の縦割りによって支援を受ける人たちの支援が後退することがないように、制度間での連携をより求めていきたいと考えております。
 最後、論点6です。駈け足ですみません。カウント制度については、是非もありますし、私どもの団体の中でも十分まだカウント制度について議論はできていない部分もあります。例えば、精神障害の短時間トライアルでは、10時間以上でも認められるという制度がありますので、10時間以上の雇用もカウントに入れるべきではないか。あと、先ほどの報告にもありましたが、0.5カウントではなく1カウントとすべく、ここは、一人一人に応じた多様な働き方という観点からすると1カウントとすべきではないかと認識しております。あと納付金は、納付金の金額の性質が、雇用している側の事業主の経済的負担を調整するということであれば、今後、精神障害者の雇用を進めていくに当たっても、やはり人的支援の層を厚くするという意味でコストが上がっていくものと思われますので、そういう意味合いでは、納付金の金額は今よりも引き上げる必要があるのではないかと思っております。かなり駆け足でまいりましたが、以上です。
○阿部座長 ただいまの発表について質疑を行います。御質問のある方は挙手をお願いいたします。
○眞保委員 法政大学の眞保です。質問させていただきます。まず、論点1の所ですが、量にウエイトを置いた施策から質に重点を置いた施策に変えるべきではないかという御指摘がございましたが、具体的に質というのはどのようなものをお考えなのかということと、それを測っていく指標のようなものについてはどのようにお考えでしょうか。
○酒井氏 全国就業支援ネットワークの酒井です。雇用率の引上げに伴い、かなりの雇用者数が出て量の拡大ということと、支援機関も自立支援法がスタートしたときに比べると、就労移行支援事業の数も3,000を超す状態でかなり量が拡大してきています。その中で質をどう測っていくかというのは非常に難しいところではあると思っていますが、1つは、A型についてかなりの量の拡大によって質が問われていますが、私どもの団体の半分以上の構成員である障害者就業・生活支援センターも、量の拡大に伴って同じように質が問われていました。
 当初、私どもの中から自己評価シートを作りまして、自分たちの取組についてはまずは自分たちで評価すべきというところで、自己評価シートを全くの任意で作り、現在は就業・生活支援センターの全部に対して、そのシートをベースにして労働局のほうでやっていただいています。A型についても同様のものを、例えば大阪府はやっているということがあります。だから、まずはセルフチェックをするという意味合いで、障害者雇用についての理念はどのようなものが企業としてあるのかとか、そういうセルフチェックのところの仕組みが必要かなと思っています。あと、私どもの役員間で出たのは、当事者側からの評価、働いている本人からの評価も必要ではないかという意見が出ておりました。理念とともに雇用管理の様々なチェックポイント、できているかどうかというような指標を示す必要があるのではないかと考えています。
○志賀委員 志賀です。今の話はこれまでの2つの団体と違って、いわゆる障害と障害ではない連続線上の狭間の話と言うよりも、どちらかと言うと自ら障害者として、いわゆる職業生活と日常生活の双方に一体的な支援を必要として、どちらかと言うと障害者雇用全般の中でも手厚い支援をしている団体からの意見としてお聞きしたいと思います。
 質問というよりも確認になりますが、いわゆる雇用の現場でこういった比較的手厚い支援を必要とする人たちの支援を行っている外部の側として、論点にも書かれておりましたが、いわゆる障害者職業相談員研修であったり、あるいは企業在籍型のジョブコーチ、職場適応援助者の問題といった研修というのを、ある程度企業の中の障害者雇用の質を担保していくためには、今よりも量あるいは内容も含めて、かなり切実に必要だと思われているのかどうなのかというのをもう一度確認させてください。
○酒井氏 全国就業支援ネットワークの酒井です。雇用の拡大に伴って、もちろん送り出し側の支援機関も定着支援という形で関わるのですが、本来的にはまず雇用管理だと思っております。そういう意味では、障害者雇用管理のノウハウがまだ十分に蓄積されていない企業については、そこを強化していくということが1つ大事になってくると思っています。
 今おっしゃった職業生活相談員、ジョブコーチ研修あるいは各自治体で独自にされているたくさんのセミナー等があります。私は大阪から参りましたので大阪の例ばかりを申し上げて恐縮ですが、大阪でもいろいろなセミナーをやっていまして、体験型セミナーというのもやっています。これから障害者を雇用される企業の方が支援の現場に入り込んで、実際に体験するというものです。単に座学ではなくて、ジョブコーチ研修でも実習が設けられていますが、身をもって雇用管理あるいは指導の体験をするというところも含めた、様々な機会の提供が必要であると認識しています。
○栗原委員 栗原です、2つほどお伺いいたします。1つは、実習の進んでいる支援校の生徒で就労できる方が就労支援A型のほうに就労目的で親の意向で行かせてしまうということです。神奈川県の実習が進んでいる支援校で私が評議員をしている学校があるのですが、40名のうちの1割ぐらいしか就労していないということです。なぜかというと、働ける方であっても親御さんが、かわいそうだからA型で訓練してもらって、それから就労しても遅くないという考えの方がいらっしゃるのです。それはおかしなことだと思うのですが、そういうことに対して学校にいろいろな話をされることもあるのでしょうか。
 もう1つは、高齢化、加齢化の問題です。今、中小企業で障害者を雇用していて困っているのは、高齢化、加齢化によって体力が落ちてきているということです。仕事上、危なくなってきている人も出てきている中で、そういう方のサポートというのはどのようにやられているのでしょうか。
○酒井氏 全国就業支援ネットワークの酒井です。先ほど連携のところで、業者の連携も大事だけれども現場での連携がすごく大事だということを申し上げましたが、正しく教育、福祉の現場、企業との連携の中で、特に教育から次のステージにいく、働く場に移るところの連携はすごく大事だと思っています。そこで、保護者がより安心を求めるというのは確かにあると思います。ただ、A型が安心の場であるかどうか。A型本来の役割を考えたときに、そこはやや違うと思っています。そこは福祉サイドと教育がより連携して、例えば就労移行等の訓練を利用して、一般企業に行っても安心なのだということをどうやって分かっていただくか。それと、一般企業に行っても安心だという雇用の在り方をもっと作っていく必要があると思います。
 中小企業で加齢を迎えた方々については、中小企業は本当に人手が少ない中でされているのでどこも人材不足です。例えば新しく迎え入れた障害者にも教える人がいないという人的な課題も抱えているとよくお聞きします。新しく障害者を迎え入れた所には、中小企業については人的サポートが必要だとは思っています。あるいは加齢に伴うという場合こそ、A型の出番だと思っています。ただ、そこをつなぐ人がいないのです。雇用で加齢を迎えた人が、もう一回福祉サービスの中で働くことにつなぐ場、つなぐ役目が必要だと思っています。
○栗原委員 私の考えと同じで安心しました。ありがとうございます。
○本條委員 全国精神保健福祉会連合会の本條です。3ページの論点1の現状認識の4つ目のポツに、求人が活況であるがミスマッチを起こしているケースが見受けられる。この現状認識については、私もそのように思いますが、その原因として職業準備性が整わないということです。これは障害のある方の職業準備性だけを問題にされているのか、それとも企業等も含めてという意味でしょうか。もし、企業等のミスマッチの原因が雇っていただくほうにもあるとするなら、どういう方策が考えられるでしょうか。具体的なことがあれば教えていただきたいと思います。
○酒井氏 全国就業支援ネットワークの酒井です。この職業準備性について支援機関の役割としては、アセスメント、訓練をして職業準備性を整える、就職へと送り出して定着支援という流れが、就労支援機関側に必須の役割だと思っております。そこの役割を十分に果たしていない事業所も見受けられるという意味合いで記載しています。そういう意味では、「本人の」という意味合いで書いていたのですが、御質問をお伺いしていて、確かに企業側の準備性も十分に必要な要素であり、そこのミスマッチを起こしている部分は多々あると思っています。
 そのミスマッチを防ぐためにはどのような手立てが必要かについては難しいですが、就労支援というのは経験を積んでいくことによって本人の働く力と企業が求めることをきちんとつなげていけるのですが、そこの経験が全く不十分なままに就労支援されている機関もたくさんあると思います。経験の多い人が経験の少ない人に技術を伝えていくという仕組みも必要だと思いますが、その支援機関側のスキルアップも皆無のままに事業が行われている部分において、ミスマッチが起こっていると思います。そこの部分も技術習得の機会の提供が必要ではないかと思っております。
○阿部座長 各団体からの御発表はこれで終わりとさせていただきます。今からは、全体を通しての質疑に移ります。時間も限られておりますので、御意見、御感想があれば、ポイントを絞って御発言いただければと思います。いかがでしょうか。
○長谷川委員 福島大学の長谷川です。雇用率のカウント方法をどのように考えていくかについて、皆さんと考えたいと思います。今は20~30時間未満の短時間の場合には、労働時間が短いということで0.5カウントされています。制度上は、それが半人前だからということではなく、労働時間の長さで整理しているものであって、一見、確かに合理的な制度のように思われます。私も実際そう思ってきました。他方、ダブルカウントの制度を見ると、あちらは就労が困難であるということに鑑みて2倍ということにしています。そうであればハーフカウントについても、長時間働くことが困難であるから、それゆえに短時間労働になってしまっているということを前提にすれば、労働時間の長さにこだわってハーフカウントにする必要はなくて、それを1カウントにしていくということもあり得る考えなのではないかと思いました。意見です。
 ただ、そうなったときに、現在、法定雇用率あるいは実雇用率をカウントする際、障害のない人たちで短時間労働の人たちも0.5カウントとされていて、そういう計算の下で制度が成り立っているときに、果たして障害のない人たちの0.5カウント分をどのように考えていくかというのは、もっとしっかりと検討しなければならないのだろうと感じています。
 これは厚生労働省側への質問になると思いますが、今後、そのようにカウント方法を新たに考え直すといったときに、団体の方からも少し御意見がありましたが、カウント方法をもう少し小刻みにすることもあり得るのではないかということがありました。それもあり得ると思うのですが、そのときに制度的に可能なのか。そういうことで各事業主の報告義務等との関係、あるいはそれを集計する中で煩雑になってくると思うのですが、パソコンを使えば難しいことではないというのか、その辺りについて何か想定していることなどがあれば御意見を伺えればと思います。どうでしょうか。
○障害者雇用対策課長補佐 厚生労働省の事務局です。今の御質問のお答えになるかは分からないのですが、制度的には小刻みにすることは可能だと思いますし、いろいろと御意見を頂いていることを踏まえて今後研究していくということだと思います。一方で申し上げれば、特に納付金・調整金の事務においては、お一人お一人の所定労働時間と実労働時間を書いていただいているという仕組みになっていまして、これは会計検査院からの指摘でそのような仕組みになっていますので、それ自体は当面は変更の余地はないものと思っていますので、その辺りの煩雑さとの兼ね合いはあると思います。ただ、逆に申し上げれば、もともと納付金においては時間を細かく書いていただいているので、そういう意味では実務上は既に細かく申請していただいているということだと思います。
○阿部座長 今、長谷川委員から御感想、御意見がありましたが、これはこの研究会でも今後考えていくことだということなので、取りあえず本日は御意見として承りたいと思います。ありがとうございます。そのほかはいかがでしょうか。
○工藤委員 感想です。事前にテキストデータを頂いて、繰り返して読んできたのですが、なかなか記憶に残っていません。議論を聞いて思ったことは、1つは、雇用率のことも話題になりましたが、何のための雇用なのかということですが、雇用率達成のための雇用ではないと思いました。1つのキーワードは「雇用管理」、これからは雇用管理を重視していく必要があるのではないかと全体を通して感じました。
 酒井さんの話を聞いて、今回発表されたのは会員へのアンケートを集約して報告書を作られたと理解しています。その中に、有期雇用5年での無期転換ルールについて、本人たちに十分周知されていない事案がたくさんあるとのことでした。実際に視覚障害者の相談をしていて、当事者が一番心配しているのは、契約社員なのでいつ雇い止めをされるかということで、視覚障害の中で割と安定しているヘルスキーパーでも、本人はどのような雇用契約書をもらっているかがよく分からないということがあります。加盟団体のスタッフの人たちがどういうことから雇用5年の無期転換が、ここでの問題になっていると述べられたのか、そこを知りたいと思いました。
○酒井氏 全国就業支援ネットワークの酒井です。これは会員から上がってきた内容でした。障害のある働く本人たちが、企業側から制度の変更についての十分な説明を受けていないことを問題にしていると思われます。
○工藤委員 スタッフの人たちも障害者から相談を受けたときに的確な答えができないということもあるのではないかと思ったので質問しました。障害者がゆえのいろいろな心配を抱きながら働いているというところはあると思うのです。そういうことで、障対課が障害者向けに無期転換ルールに対する解説書を作成し、例えば話合いのときにどのような対応をすればいいのか、働いている障害者に向けた具体的な解説書のようなものがあってもいいのかなと思いました。○志賀委員 高齢化の問題が出ましたので、それについてです。質問というよりも、これからの検討でお願いしたいことです。私は知的障害の数字ならよく分かりますので、65歳以上の知的障害者はまだ6万7,000人ぐらいということです。療育手帳所持者の1%未満という少ない人数であるのが現状ですが、確実に増えています。高齢化することによっての能力の低下は、15年以上前に松為先生が中心になって調査研究をされていますが、その頃と状態が全く違っていると思います。その頃は、働いている知的障害者で60歳、65歳以上の方というのは余り想定されていなかったと思います。40代あるいは50代になるとしたらどうなるかという話だったと思います。
 今は65歳を超えた方でも雇用されている方がいらっしゃいますので、その辺の実態です。知的な能力で言うと、いわゆる流動性の知能は落ちていくけれども、結晶性の知能というのは人生経験等で余り落ちないと言われています。個人差が大きいですし、かなり生活に支障があっても、いったん学習した仕事はできている人もいます。その辺が分かっていなくて、単純に雇用の施策から引退して福祉のA型、B型等にといっても、結晶性知能は残っていて同じ仕事はできるけれども、B型事業所に行ってもできる仕事が何もないという現状が非常にたくさんあることからも考えられます。今は知的障害の話だけをさせていただきましたが、ある程度は労働の施策の中でもそういった問題を考えていかなくてはならない。逆に、そこまで考えないと雇用率が高くなっていく今では、難しい問題だと思います。もちろん、ここの検討会だけで議論するのは難しいかもしれませんが、調査であったり、そういった高齢化と労働の問題というのは、単に福祉のほうに渡すというのではない60歳、65歳、あるいは70歳までというのも、是非検討できればなと思っています。
○本條委員 先ほどのミスマッチとも関連するのですが、橋口さんからも御意見が出ていたように、環境が大事になってくると思います。そういう意味から言うと、資料1-1の5のIPSモデルです。障害者だけを訓練して就労できるように持っていくのではなく、環境整備も必要だと思います。実はIPSモデルというのは、例えば病院に入院してきた人をできるだけ早く就職させてという制度ですが、その前の段階の入院中から御本人はもとより、例えば就労スペシャリストという人は1週間に5社前後を訪問することが義務付けられているのです。しかも、その就労スペシャリストが適切にやっているかどうかをスーパーバイザーがスーパーバイズして、十分に企業を把握しているかもスペシャリストは知っていますから、こういう状態の人であればこの会社に雇っていただいたら、支援をしていきながらであれば働けるであろう、こういうことであるから、就職したら定着率がいいというエビデンスがあるわけです。
 もう一点です。ワーク・イズ・セラピーという考えがあり、統合失調症などは再発率が低下しますので再入院率も低下するという、リカバリーにおいて非常な効果があるということで取り入れられています。そういうことですので、私はミスマッチというところで意見を言ったのは、環境面も取り入れていかないと、就職できても離職率が高くなるという結果になるのではないかという意見です。
○工藤委員 日盲連の工藤です。合理的配慮の関係です。どなたかのテキストに、今の合理的配慮の仕組みについては、当事者が申し込まないと駄目だということで、そうではなくてもっと頻繁に、むしろ事業主からも丁寧にコミュニケーションを取って、どういうことが必要なのかをよく聞く仕組みにしてほしいということがあったと思います。これを読んで全く同感だと思いました。
 視覚障害者の場合は周りがよく見えないということで疑心暗鬼になったり、普通の感覚だと自分からお願いすることは極めて正当なことで、職業訓練を受けたいということなどを申し出ることは全く遠慮する必要のないことなのですが、実際には遠慮してしまうことがあります。結局言い出せなくて、そういう訓練の機会も逸してしまう。それで自分自身が追い込まれていく。そういうことのないように、合理的配慮を本当に機能させていくためにも、本人からの申出だけではなくというように進めてほしいと思いました。
 それから、それぞれの報告の中にジョブコーチのことがあったと思います。視覚障害と聴覚障害専門のジョブコーチが非常に少ないことは1回目の会議の時にも発言しましたが、地域の障害者雇用支援の在り方に関する研究会の第1次、第2次報告書の中にも、視覚障害、聴覚障害についての専門のジョブコーチが少ないため、今後養成し、配置していくことが必要だと書いてあったのですが、それが実現していないので、今後につなげていってほしいと思いますが、酒井さんの所は、実際にジョブコーチは知的、精神、身体といろいろあると思うのですが、現状で十分だと思われているでしょうか。それとも、派遣型とかいろいろあると思うのですが、実際にどういうジョブコーチが求められているのかをお聞かせいただければと思います。
○酒井氏 ジョブコーチについては、支援機関側の訪問型ジョブコーチ、企業側の企業在籍型ジョブコーチと大きく2つがありますが、訪問型ジョブコーチについては就労移行支援事業所の定着支援とジョブコーチによる集中的な定着支援ということで、併せて使っておりまして、比較的活用されているのかなと思います。企業在籍型については、ジョブコーチという制度そのものを使った支援というよりは、ジョブコーチの研修によって企業側が雇用管理のノウハウ等を十分に習得する機会としては、ジョブコーチ研修はすごく貢献していると思います。
 私どもも大阪でジョブコーチ研修をやっておりますが、例えばこれまでに聴覚障害者がジョブコーチ研修の受講に来たことがあるのですが、ジョブコーチとして稼働する側としては視覚障害者の事例はないのですが、支援事例としては視覚障害と聴覚障害も幾つか上がってきてはいます。
 ジョブコーチそのものが足りているかどうかについては、ジョブコーチだけで考えるというより、企業側も福祉サービスなどのほかのサービスと併せて、トータルに考えるとすると、そんなに不足している感じはないと思います。ただ、企業在籍型についてはもう少し充実していく必要はあると認識しています。
○松澤氏 みんなねっとの松澤です。工藤委員の質問のジョブコーチの役割と数の問題ですが、先ほど少し申し上げた、先週の私どもの全国大会のテーマが「地域移行」でした。地域移行というのは、病院から地域に精神障害者をどのように入れるかという問題と、就労支援という問題が取り上げられました。その際に注目されたのは、ピアサポーターという制度です。これは一部厚労省の中でも取り上げていただいて、予算も付いている事業がありますが、ピアというのは同じ立場あるいは同等の立場の人が、仲間にいろいろと支援するという立場の人で、これを計画的に養成し、地域移行ないしは就労支援に使っているケースが報告され、これは全国的にも認められた制度になっていますので、精神の世界ではピアサポーターという制度もあるということです。しかも、ジョブコーチは非常にコストが掛かるコーチですので、そういう意味ではピアサポーターというのは、比較的使いやすくて効果が上がっています。皆様方、経営の立場から言われたら、コストも若干下がるということでは使えるのではないかと考えております。
○橋口氏 日本発達障害ネットワークの橋口です。先ほど漆原委員から頂いた質問に関して補足いたします。就労、雇用の困難な人という観点も重要ですが、障害の厳格な規定より、むしろ個々の状態に着目した支援というものに関しては、今、教育の現場では逆引き支援というものが主流になっています。その背景は、特別支援教育というのをお聞きになったことはあると思いますが、それが始まった当初というのは障害の厳格な規定から始まりました。例えばADHDの子に対してはこういう対応法、アスペルガー症候群の人に対してはこういう対応法というところから始まりました。そうすると、教育の現場でおかしなことが起きました。忘れ物をしたという事例で考えれば、片方は診断名が付いているから忘れ物をした場合は支援が受けられるけれども、片方は診断名が付いていない人は支援が受けられない。だからこそ、困っていることやつまづきやすさから支援をすることが必要なのではないか。そういったことが雇用でもされるといいのではないかという点です。
○阿部座長 本日はこの辺りで終了させていただきます。御発表いただいた皆様、大変ありがとうございました。次回も引き続き関係者からのヒアリングを行いたいと思います。日程等については事務局から説明をお願いいたします。
○障害者雇用対策課長補佐 次回は10月30日(月)の10時から予定しております。ヒアリング団体等については追って御報告いたします。お手元のファイルは、これから各回の資料と基礎資料を入れていきますので、お持ち帰りにならずにいただきたいと思います。
○阿部座長 これをもちまして本日の研究会は終了いたします。本日はお忙しい中ありがとうございました。