他分野の取り組み「地域共生社会」の実現に向けて

厚生労働省においては、改革の基本コンセプトとして「地域共生社会」の実現を掲げ、「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)や、「『地域共生社会』の実現に向けて(当面の改革工程)」(平成29年2月7日 厚生労働省「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部決定)に基づいて、その具体化に向けた改革を進めています。

1「地域共生社会」を提案する背景

かつて我が国では、地域の相互扶助や家族同士の助け合いなど、地域・家庭・職場といった人々の生活の様々な場面において、支え合いの機能が存在しました。社会保障制度は、これまで、社会 の様々な変化が生じる過程において、地域や家庭が果たしてき役割の一部を代替する必要性が高まったことに対応して、高齢者、障害者、子どもなどの対象者ごとに、また、生活に必要な機能ごとに、公的支援制度の整備と公的支援の充実が図られ、人々の暮らしを支えてきています。

しかし、我が国では、高齢化や人口減少が進み、地域・家庭・職場という人々の生活領域における支え合いの基盤が弱まってきています。暮らしにおける人と人とのつながりが弱まる中、これを再構築することで、人生における様々な困難に直面した場合でも、誰もが役割を持ち、お互いが配慮し存在を認め合い、そして時に支え合うことで、孤立せずにその人らしい生活を送ることができるような社会としていくことが求められています。

また、人口減少の波は、多くの地域社会で社会経済の担い手の減少を招き、それを背景に、耕作放棄地や、空き家、商店街の空き店舗など、様々な課題が顕在化しています。地域社会の存続への危機感が生まれる中、人口減少を乗り越えていく上で、社会保障や産業などの領域を超えてつながり、地域社会全体を支えていくことが、これまでにも増して重要となっています。

さらに、対象者別・機能別に整備された公的支援についても、昨今、様々な分野の課題が絡み合って複雑化したり、個人や世帯単位で複数分野の課題を抱え、複合的な支援を必要とするといった状況がみられ、対応が困難なケースが浮き彫りとなっています。

「地域共生社会」とは、このような社会構造の変化や人々の暮らしの変化を踏まえ、制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会を目指すものです。

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2「地域共生社会」の実現に向けた改革の骨格

「地域共生社会」の実現に向けた今後の改革の骨格は以下のとおりです。

1.地域課題の解決力の強化

生活に身近な地域において、住民が世代や背景を超えてつながり、相互に役割を持ち、「支え手」「受け手」という関係を超えて支え合う取組を育んでいきます。

これにより、我が国に暮らす国民一人ひとりが、生活における楽しみや生きがいを見出し、様々な困難を抱えた場合でも、社会から孤立せず、安心してその人らしい生活を送ることができる社会を実現していきます。

2.地域丸ごとのつながりの強化

耕作放棄地の再生や森林などの環境の保全、空き家の利活用、商店街の活性化など、地域社会が抱える様々な課題は、高齢者や障害者、生活困窮者などの就労や社会参加の機会を提供する資源でもあります。

社会・経済活動の基盤でもある地域において、社会保障・産業などの領域を超えてつながり、人々の多様なニーズに応えると同時に、資源の有効活用や活性化を実現するという「循環」を生み出していくことで、人々の暮らしと地域社会の双方を支えていきます。

3.地域を基盤とする包括的支援の強化

地域包括ケアの理念を普遍化し、高齢者のみならず、生活上の困難を抱える障害者や子どもなどが地域において自立した生活を送ることができるよう、地域住民による支え合いと公的支援が連動し、地域を『丸ごと』支える包括的な支援体制を構築し、切れ目のない支援を実現していきます。

4.専門人材の機能強化・最大活用

住民とともに地域をつくり、また、人々の多様なニーズを把握し、地域生活の中で本人に寄り添って支援をしていく観点から、専門性の確保に配慮しつつ養成課程のあり方を見直すことで、保健医療福祉の各資格を通じた基礎的な知識や素養を身につけた専門人材を養成していきます。

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3「当面の改革工程」に基づく取組の進捗

1.地域課題の解決力の強化

複合化した課題を抱える個人や世帯に対する支援や「制度の狭間」の問題など、既存の制度による解決が困難な課題の解決を図るため、地域住民による支え合いと公的支援が連動した包括的な支援体制の構築を目指し、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律により、社会福祉法が改正されました。(平成29年6月2日公布。2018年(平成30年)4月1日施行)

※平成28年10月に「地域力強化検討会(地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会)」(座長:原田正樹日本福祉大学学長補佐)を設置。住民主体による地域課題の解決力強化・体制づくりの在り方や包括的な相談支援体制の整備の在り方についての検討が行われ、平成28年12月に中間とりまとめ、平成29年9月に最終とりまとめを策定・公表しています。


 平成30年度のモデル事業実施状況
 令和元年度のモデル事業実施状況


※ モデル事業実施自治体を中心とした関係者との情報共有を目的に、地域共生社会の推進に向けた「かわら版」を発行しております。


※ 「地令和2年度 地域共生社会の実現に向けた市町村における包括的な支援体制の整備に関する全国担当者会議https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000114092_00001.html」の資料等についていただいたご意見やご質問を「質疑応答集」としてまとめました。  

改正「社会福祉法に基づく市町村における包括的な支援体制の整備に関する指針」を策定・公表しました。併せて、(1)社会福祉法改正の趣旨、(2)社会福祉法に基づく市町村における包括的な支援体制の整備に関する指針に関する補足説明、(3)社会福祉法改正による記載事項の追加等を踏まえて改定した市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画の策定ガイドライン等を内容とする通知を発出しました。

2.地域丸ごとのつながりの強化

「地域丸ごとのつながり」の具体的取組を普及する観点から、平成29年度から新たに「保健福祉分野における民間活力を活用した社会的事業の開発・普及のための環境整備事業」を実施し、その中で、地域経済活動の活性化と参加者の健康増進、自立支援等の同時実現を目指す事業の支援に取り組んでいます。

市町村や社会福祉施設等の事業者が、地域づくりに取り組みやすくする観点から、平成29年3月31日に、以下の2本の通知を発出しました。

社会福祉法人が「地域における公益的な取組」について、より一層取り組みやすくすることを目的に、平成30年1月23日に、以下の通知を発出しました。

子ども食堂の活動に関する関係機関の連携強化や運営に当たっての安全管理を促進する観点から、平成30年6月28日に、以下の通知を発出しました。

介護サービス事業所が、その利用者を対象とした社会参加活動等を円滑に実施することができるようにする観点から、平成30年7月27日に、以下の事務連絡を発出しました。

3.地域を基盤とする包括的支援の強化

高齢者と障害児者が同一の事業所でサービスを受けやすくするため、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律により、介護保険と障害福祉両方の制度に新たに共生型サービスを位置づけました。これにより、介護保険又は障害福祉のいずれかの指定を受けている事業所が、もう一方の制度における指定も受けやすくなるようにするものです。(平成29年6月2日公布。平成30年4月1日施行)

地域の実情に合った総合的な福祉サービスの提供に向けたガイドライン

高齢者介護、障害福祉、子育て支援等の複数分野の支援を総合的に提供する場合の各福祉制度の人員配置基準、設備基準等に係る現行制度の規制等について、現行制度において運用上対応可能な事項を整理することで、総合的なサービスの提供の阻害要因を解消することを目的としています。

4.専門人材の機能強化・最大活用

厚生労働科学特別研究において、保健医療福祉の共通基礎課程のあり方について検討を進めています。

福祉系国家資格を持つ者への保育士養成課程・保育士試験科目の一部免除について

共通基礎課程創設までの間の当面の措置として、平成30年度より、福祉系国家資格所有者(介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士)が保育士試験を受験する際に全9科目のうち3科目(社会福祉、児童家庭福祉、社会的養護)の受験を免除する、介護福祉士養成施設の卒業者が指定保育士養成施設で学ぶ場合に必修科目のうち6科目(10単位)の履修免除を行うなどの措置を講ずることとしています。

5.今後の検討課題

当面の改革工程では、2019年(平成31年)以降の改革について、以下の検討課題をあげています。

  • 地域課題の解決力強化のための体制の全国的な整備のための支援方策の検討(制度のあり方を含む)
  • 保健福祉行政横断的な包括的支援のあり方の検討
  • 保健医療福祉の共通基礎課程の検討

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