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第5回社会保障審議会年金財政における経済前提に関する専門委員会 議事録
●日時
平成30年5月18日(金)10時00分~12時30分
●場所
航空会館 7階大ホール
●出席者
植田 和男(委員長)
小黒 一正(委員)
小野 正昭(委員)
小枝 淳子(委員)
玉木 伸介(委員)
野呂 順一(委員)
山田 篤裕(委員)
吉川 洋(委員)
米澤 康博(委員)
森 審議役(年金積立金管理運用(独):GPIF)
佐藤 参事官(内閣府計量分析室)
井嶋 統括研究員(独立行政法人労働政策研究・研修機構)
木村 嘱託研究員(株式会社三菱総合研究所)
長井 在日代表(オックスフォード・エコノミクス)
●議題
有識者ヒアリング
(1)中長期の経済財政に関する試算について
(2)労働力需給推計について
(3)金融政策と経済の関係について
●議事録
- ○植田委員長
- それでは、定刻でございますので、ただいまより第5回「年金財政における経済前提に関する専門委員会」を開催いたします。
お忙しいところ、どうもありがとうございます。
本日は、権丈委員、駒村委員、武田委員が御欠席、それから何人かの先生方が途中で退席される予定と伺っています。
また、GPIFの鎌田部長も所用により欠席と伺っています。
それでは、議事に入らせていただきますので、カメラの方はここで退席をお願いいたします。
では、事務局から資料の確認をお願いいたします。
- ○武藤数理課長
- 年金局数理課長の武藤でございます。
私から資料の確認をさせていただきます。
資料1-1「中長期の経済財政に関する試算について」
資料1-2「中長期の経済財政に関する試算(2018年1月23日経済財政諮問会議提出)、内閣府計量分析室の御提出資料です。
資料2「労働力需給推計について」、労働政策研究・研修機構の御提出資料です。
資料3「世界的な長期金利の行方:ファンダメンタルズと中央銀行」、長井滋人様の御提出資料です。
皆様、お手元にございますでしょうか。
- ○植田委員長
- それでは、議題に移りたいと思いますが、最初にヒアリングということでいらしていただいた方々を御紹介したいと思います。
内閣府計量分析室の佐藤鐘太参事官。
- ○佐藤参事官(内閣府計量分析室)
- よろしくお願いします。
- ○植田委員長
- よろしくお願いします。
それから、独立行政法人労働政策研究・研修機構の井嶋俊幸統括研究員。
- ○井嶋統括研究員(独立行政法人労働政策研究・研修機構)
- よろしくお願いします。
- ○植田委員長
- それから、2015年の労働力需給推計研究会委員でいらっしゃいました株式会社三菱総合研究所の木村文勝嘱託研究員。
- ○木村嘱託研究員(株式会社三菱総合研究所)
- 木村でございます。よろしくお願いします。
- ○植田委員長
- 元日本銀行国際局長でいらっしゃいまして、現在はオックスフォード・エコノミクスの在日代表でいらっしゃいます長井滋人さん。
- ○長井代表(オックスフォード・エコノミクス)
- よろしくお願いします。
- ○植田委員長
- それでは、議事次第の順に御説明いただきたいと思いますので、まず最初は、「中長期の経済財政に関する試算について」、佐藤参事官、よろしくお願いいたします。
- ○佐藤参事官
- 内閣府計量分析室の佐藤でございます。
本日は、経済財政モデル、これは内閣府から毎年、年2回、中長期試算を公表しておりますが、この中長期試算を作成する際に依拠しているモデルでございますが、その概要と、本年1月23日に公表しました最新の中長期試算につきまして御説明したいと思っております。
資料は、先ほど御紹介いただきましたように、横書きで用意していますポイントと中長期試算の本体をお配りしておりますが、主に横紙のポイントのほうをごらんいただければと思います。
まず、1ページ目でございますけれども、経済財政モデルの概要ということでございます。このモデルにつきましては、マクロ経済だけではなくて、国・地方の財政、社会保障を一体かつ整合的に分析するためのツールとして開発されたものでございまして、経済再生と財政健全化の進捗状況の評価を目的として、主に5年から10年程度の中長期展望用につくられた計量モデルということでございます。前回の年金財政検証の際にも、こちらのモデルを御紹介させていただいておりますが、その構造につきましては、前回から大きな変更はございません。
3つ目の○に、このモデルにおきまして、どのようにマクロ経済の推計を行っているのか、その基本構造についてまとめておりますけれども、技術進歩、いわゆるTFP上昇率や、労働参加率につきまして、外生的に想定を置いて、供給面の経済成長、潜在成長率のパスを決めます。それとともに、足元から短期・中長期的な需要面の経済変動を、それぞれ供給サイドと需要サイドとで推計しておりまして、物価や金利の調整メカニズムによって、徐々にその乖離が縮小していくという構造を持たせながら、マクロ経済の推計をしているといったところが基本的な特徴かと考えております。
2ページ目に移っていただきまして、このモデルの全体像をこちらで示しておりますけれども、経済財政モデルにつきましては、人口・労働ブロックとマクロ経済ブロック、財政ブロック、社会保障ブロックの4つのパートに分かれておりまして、先ほど申し上げたとおり、経済財政・社会保障を一体的に分析できるように工夫しております。
先ほどお話ししましたマクロ経済の姿と整合的な形で、財政や社会保障の姿についても推計する形になりますけれども、マクロ経済から財政・社会保障に一方的に波及していくという推計だけではなくて、双方向で波及し合うという構造を組み入れておりまして、いわば4つのブロックで成り立つ連立方程式体系で推計するという形になっているということでございます。
具体的には、人口・労働ブロックにおきましては、社人研で公表されています将来人口推計をベースにしまして、外生的に与える労働参加率とか、マクロ経済ブロックで推計される失業率をもとにして労働力人口や就業者数を推計するということでございます。そういった人口とか就業者数をマクロ経済ブロックのほうに移していきまして、そこで、先ほど申し上げた供給面・需要面の経済の姿を推計して、そこから所得・物価・金利などのマクロ変数を推計していくという形になります。
あと、財政ブロックでは、そうしたマクロ経済で推計しました所得・物価・金利等をもとにしまして、国・地方の歳出歳入を推計していくということでございますけれども、その際に、社会保障ブロックで推計される年金・医療・介護等に関する公費負担額についても用いて歳出を計算していくという形になっているということでございます。
また、財政ブロックでそのように推計された歳出につきましては、政府消費、政府投資という形でマクロブロックにおける需要項目の一つとして計上していくという形になっているということでございます。
あと、社会保障ブロックにつきましては、人口とか就業者数やマクロブロックで決まった物価・賃金などによって、年金・医療・介護などにかかわる給付額とか国民負担などを推計する形になるということで、4つのブロックで主に波及し合いながら推計していくという形になるということでございます。
3ページ目以降は、本年1月に公表しました中長期試算に基づきまして、実際にどのような経済シナリオのもとで、どのような試算を行っているのかといったことについて御説明していきたいと思います。本年1月に公表しました試算の特徴につきましては、冒頭にございますように、昨年の経済財政諮問会議における御指摘を踏まえて、これまでの経済シナリオを見直したということが大きな特徴としてございます。
真ん中のシナリオの考え方といったところをごらんいただきたいのですけれども、これまで中長期試算につきましては、高い成長を描くシナリオと低い成長を描くシナリオの2つの経済シナリオのもとで試算をつくっていくという形でございまして、この構造は変えておりません。
まず、高いほうの成長につきましては、これまで経済再生ケースと呼んでおりまして、その考え方としては、ここにございますように、2020年代初頭にかけて日本経済がデフレ前のパフォーマンスを取り戻していくという考え方で試算してきたところでございます。
今回は、昨年の諮問会議におきまして、もう少し過去の実績も踏まえた現実的なシナリオにすべきという御指摘がございましたので、今回の試算では、このアベノミクスの目標、アベノミクスにおきましては、実質2%、名目3%以上の経済成長を達成していくという政策目標を掲げておりますので、こういう目標に向けて、政策効果が過去の実績も踏まえた、より現実的なペースで発現していくという考え方で試算するという形にしております。名称につきましても、成長実現ケースと名づけてございます。
具体的には、参考のところにございますように、潜在成長率の決め手になりますTFP上昇率につきまして、これまでの経済再生ケースでは、2020年代初頭にかけて2.2%程度まで上昇していくという想定を置いてきたわけでございますけれども、今回は、その上昇度合いにつきまして、82年から87年の5年間で0.8%上昇したという過去の実績を踏まえまして、足元0.7%から1.5%に5年間かけて上昇していくという想定に見直しているところでございます。
また、労働参加率につきましても、近年の女性、高齢者の労働参加の高まりを踏まえまして、その上昇トレンドが継続するという形で想定を置いているということでございます。
他方、低いほうの成長ケース、これはベースラインケースと呼んでおりますけれども、こちらにつきましては、経済が足元の潜在成長率並みで推移するというシナリオの考え方自体は変えておりませんけれども、これは内閣府の別の部署の推計でございますけれども、足元の潜在成長率が1%を上回る、1.1%ぐらいまで、今、高まっているということを踏まえまして、将来にかけて、実質1%強、名目1%台後半で推移するという姿を示しているということでございます。
4ページ目に具体的なマクロ変数の動向につきまして、整理しております。
まず、成長実現ケースは赤い実線で、青い実線がベースラインケースでございます。なお、点線は前回の夏の試算、昨年7月に出しました試算の結果を示しております。今回の経済シナリオの見直しの結果の変化が、前回の試算と比較していただけるとわかるかなということで示しているところでございます。
まず、左上の実質成長率でございますけれども、2020年度に1.5%、2020年代前半に2%に達成していくということで、中長期的には、先ほど申し上げたとおり、潜在成長率に収れんするという姿になっているということでございます。
右上の名目成長率につきましては、赤い実線につきましては、2020年度に3%を超えまして、2020年代前半に均衡水準である3.5%程度で推移するという形になっているということで、点線と実線を比較していただくと、前回と比べて緩やかに成長率が上昇していきますが、最終的には政府が掲げる実質2%、名目3%以上の成長率を中長期的に実現する姿になっているということでございます。
左下、消費者物価上昇率につきましては、こちらの数字は2019年10月に予定されています消費税率の引き上げの影響を含んだ物価上昇率でございますけれども、成長実現ケースを見ていただきますと、この消費税率引き上げの影響を含めますと、2019年度から年平均で2%を超えるという形になりますけれども、仮にこの影響を除いた形で見ますと、2019年に1.6%程度、2020年に1.9%程度となります。年平均で2%を達成していくのが、前回試算から1年後ろ倒しになります2021年ということになりまして、前回試算から比べますと物価上昇率の見通しがやや下方修正されているという形になります。ただ、中長期的には、日本銀行が掲げております2%の物価安定目標とも整合的な形を示しているということでございます。
あと、右下の長期金利でございますけれども、今回の試算におきましても、これまでの中長期試算と同じような形で、消費者物価が2%を達成するまでの当面の間は、日本銀行における金融緩和策が継続されるという想定を置いております。その上で、今回の試算では、先ほど御説明したとおりの物価見通しの下方修正を踏まえまして、前回試算よりも1年長く、2019年度まで足元のゼロ%程度の金利が続くという見通しを置いているということでございます。
また、その後の2020年度以降の金利の動向につきましては、これは経済財政モデルから出てくる数字でございますけれども、足元の金利動向を土台としまして、将来の経済成長とか物価上昇率の見通しなどと整合的になる姿をお示ししているということでございます。このため、前回の経済再生ケースと比べまして、成長率の上昇ペースとともに金利の上昇ペースも緩やかになっているということでございますけれども、最終的には長期金利が名目成長を上回るという点につきましては、前回試算と同じ形になっているということでございます。
5ページ目に参考までに、そうした経済前提のもとでつくった財政の姿といったものもつけております。こちらの財政の想定としましては、2019年度以降の歳出については、社会保障については高齢化要因等で増加していくということと、それ以外の一般歳出については、物価上昇率並みで増加するということで推計しておりまして、いわば歳出改革を織り込まない、私どもで歳出自然体という形で呼んでおりますけれども、そういった財政の姿ということでございます。
そういった想定のもとで推計しました、国・地方の基礎的財政収支対GDP比と公債等残高対GDP比のグラフをこちらで2つ示しておりますけれども、まず、PBでございますが、成長実現ケースでは、2020年に10.8兆円の赤字ということで、黒字化時期につきましては、前回の試算では2025年度でございましたけれども、今回の試算では2年おくれまして、2027年に黒字化するという姿を描いているということでございます。
なお、この2020年に10.8兆円の赤字ということで、前回の試算から2.6兆円程度悪化しているわけでございますが、これは2019年10月に予定されている消費税増収分の使途の見直しなどが影響した結果ということでございます。
また、右の公債等残高対GDP比につきましては、成長実現ケースでは今後、低下していくということでございますけれども、ベースラインケースで見ますと、2020年代半ばにかけて低下ペースが緩やかになって、2027年から反転していくという姿になっているということでございます。
簡単でございますけれども、私のほうからの経済財政モデルと中長期試算についての説明を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
- ○植田委員長
- ありがとうございました。
それでは、御質問、御意見おありの方。
吉川先生。
- ○吉川委員
- 御説明、どうもありがとうございました。
たった今、説明していただいた横長の資料で、4ページ。昨年の試算と比べてということで、左上の実質GDPの成長率については、前回の経済再生ケースよりはもう少しコンサバティブに成長率を低目に見積もって成長実現ケースとしているというあたりは、恐らく多くのエコノミストが当然といいますか、納得するだろうと思います。私もそう思います。
質問は、同ページの右側ですが、成長実現ケースと、それに対応する前回の経済再生ケースについて、実質の成長率を下に見込んでいるということから、当然、名目GDPの成長率も、それに影響される名目長期金利も、将来的に下方にシフトしているというわけですね。そこまではいいのですけれども、例えば数字が打ってある2025年でいいと思いますが、名目GDPの成長率は、前回3.9から3.5へマイナス0.4%下方修正になるというわけですね。一方、定性的にはもちろん下のほうにということなのですが、名目長期金利のほうは4.3から3.2。つまり、1.1下方修正されているというわけですから、成長率が長期金利を上回る、その幅は前回よりも大きくなると理解するのですが、それはなぜそういうことになっているのか。
左下の物価のほうの動向というのは、ほとんど変わらないですね。長期的にCPIで言うと成長実現ケースでは目標とする2.0になっているということで、そこも微妙に違っていますけれども、物価はほとんど変わらない。もちろん、GDPのところはGDPデフレーターになるのかもしれませんが、CPIでこれくらい前回と変わっていないということであれば、GDPデフレーターのところも余り変わらないと考えますけれども、大きな修正は実質GDPのところである。
ただ、繰り返しになりますが、それを反映してくる名目GDPと名目長期金利、定性的には両方とも下方修正は当然、方向は同じですが、定量的に見ると長期金利の低下のほうが大きくなって、成長率と金利の幅が、成長率が上ということで拡大する形になって、それで次の5ページ。ここは前回試算がないのですけれども、成長実現の場合、右側のデットのGDP比、27年までは単調に落ちていくということですが、落ち方のペースが前回試算に比べて大きくなっているのか。金利と成長率の関係からすると、そういうことになっているということがちょっと想像されるのですが、そこのところをちょっと確認させてください。
繰り返し、2点ですが、成長率と金利に与える数字がこういう形になっているのはなぜなのか。それを反映してデットGDP比の推移は前回試算に比べてどういうふうになっているのか。この2点、御説明いただければと思います。
- ○佐藤参事官
- 御質問いただいた件につきまして御説明させていただきたいと思います。
こちらの経済財政モデルにおきましては、長期金利については均衡金利というものを置いていまして、これは吉川先生がおっしゃったとおり、名目GDP成長率とほぼ同じような水準で均衡金利を置いているという形でございます。ですので、最終的には、長期金利については名目成長率の水準に、若干リスクプレミアム等も加味した水準で推計するということで、最終的には名目成長率を上回るところに収れんしていくという推計をしているところでございます。
ただ、そういった形で推計されます均衡金利と足元の金利は当然差があるわけでございまして、そこの調整を経済財政モデルの中で推計してやっているということでございます。足元の金利の水準から、どのような形で均衡金利のほうに収れんしていくのかというパスを、この経済財政モデルの中で計算しているということでございますけれども、先ほど説明の中で御説明したとおり、今回、長期金利を推計する際の想定を1つ変更しておりまして、これまでは物価上昇率が2%に達成するまで足元の金利が続くという想定を置いておりまして、前回の試算では、それが2018年度までは足元の金利が続きます。
今回は、それが2019年まで1年長く足元の金利が続くということで、その調整が始まるタイミングが1年後ろにずれているというところがございます。先ほど名目成長率の落ち方に比べて、長期金利の落ち方が大きいじゃないかという話がありましたけれども、これは多分、いろいろな要素があるのだと思いますけれども、その大きな要素の一つとして、1年分の調整のおくれがそこに影響している部分があるのではないかということで、当方は分析しているところでございます。
あと、その影響で公債等残高対GDP比の動きが、前回試算に比べて、さらにスピードが進んでいるのではないかという御質問がございましたけれども、比較しますと、前回に比べて名目成長率自体が落ちていますので、その影響から、公債等残高の落ち方自体は前回に比べて緩やかになっている。前回に比べて、公債等残高対GDP比が上がる結果になっているということでございます。ただ、おっしゃるとおり、金利の引き下げ分については、引き下げの影響にきいているとは思うのですけれども、結果として、名目成長率の下方修正のほうが大きく影響した形になっているということでございます。
- ○吉川委員
- 成長率が低くなっているというお話だったのですが、繰り返しになってしまうけれども、金利のほうはもっと下がるような想定に今回なっているわけでしょう。それでもデットGDP比の落ち方は、今回のほうが緩やか。前回のほうが急。
- ○佐藤参事官
- 今回のほうが緩やかということでございます。
もう一点、違いがございますのが、プライマリーバランス、基礎的財政収支も悪化しているということで、公債等残高が悪化するという形にもなっているということでございます。
- ○植田委員長
- はい。
- ○小黒委員
- ありがとうございます。
この内閣府の中長期試算は、年金の今後の長期のシナリオを考えるときの、一番最初の発射台というか、土台につながっていくので、非常に重要だと思っています。吉川先生が御質問されたところは、実は私も少し質問したいなと思っていたところですけれども、今、吉川先生、高成長シナリオのほうの成長実現ケースについて質問されていましたので、私は下のほうの低成長ケースのベースラインケースについて質問させていただきたいと思います。
成長率・金利論争は、吉川先生が経済財政諮問会議の委員のときに議論があって、私は吉川先生の議論が正しかったと今でも思っているのですけれどもね。先ほどの吉川先生の議論の延長線で言うと、このベースラインケースのほうは、成長率が去年の7月では1.2%だったのが1.8とか1.7%で、0.5%ポイントぐらい上がっている一方で、金利のほうは1.8から2とか2.2とか、上がり方が緩やかになっているということがどうしてなのかというのが、まず1つです。
もう一つは、ここが一番コアだと思いますけれども、低成長ケースのベースラインケースで成長率が上がっている理由です。1995年から2015とか2016年ぐらいの名目GDPの成長率を実際のデータでならして平均でとると、0.5%程度だった。正確にはもうちょっと細かい数字がありますけれども、それぐらいですね。前の低成長ケースの1.2%でも結構高かったのに、今回の1.7%。日本経済は潜在的には成長の余力がまだあって、ちゃんとした成長戦略とかいろいろな戦略を打てば、成長率が上がる余地は十分あると思うのですけれども、1.2から1.7に引き上げられた理由、メカニズムですね。
きょう、御説明はありませんでしたけれども、もう一つのよく出ている資料のほうの後ろのところに低成長ケースと高成長ケースのTFPが載っていると思います。前回、私の記憶が正しければ、2017年7月に出ている版ですと、TFPは高成長ケースで大体2.2%。それが低成長ケースだと1%ぐらいだったと思います。今回、出した2018年1月版では、高成長ケースの成長実現ケースだと2.2のTFPが1.5に引き下げられて、他方で低成長ケースのほうでは、同じ1から1。
そうすると、1.2から1.7に引き上げられた理由というか、なぜ引き上げられているのかということ、どういうメカニズムが働いているのか。女性や高齢者を含む労働力の次の話と関係するかもしれませんけれども、その辺のメカニズムを少し教えていただけないでしょうか。
- ○佐藤参事官
-
ありがとうございます。
まず、ベースラインケースの金利のペースも緩やかになっているではないかという御質問ですけれども、これも成長実現ケースと同じ想定を置いております。ベースラインケースでは、ずっと2%を達成しないわけですけれども、足元の金利からモデルの金利に移るタイミングについては、成長実現ケースにあわせて2019年からモデルのペースに移っていくということで、1年後ろ倒しにしているといったところが影響しているのかなと思います。
ただ、最終的には、前回試算に比べて、ベースラインケースについては、金利水準が前回試算を超えていくという推計になっているところは、この成長率の上昇、前回からの上方改定が影響していると考えているところでございます。
あと、ベースラインケースの成長率が前回から引き上がっているではないかということのメカニズムでございますけれども、こちらは先ほど経済財政諮問会議の御指摘を踏まえてということで申し上げたのですけれども、ベースラインケースについては若干悲観的ではないかという御指摘もありまして、足元のトレンドで着実に推移する姿を示すべきだという御指摘があったところでございます。ベースラインについては、先ほど説明したとおり、足元の潜在成長率が1.1%ということで1%を超えるところで推移していますので、その1%強の実質成長率で推移する姿を描いているということでございます。
それはどういうメカニズムかといいますと、TFP上昇率は基本的には1%ということで変更しておりませんが、労働参加率の想定を変えております。前回の試算では、この労働参加率が足元横ばいで推移するという想定を置いていたところでございますけれども、労働参加率の足元のトレンドを踏まえますと、高齢者の方とか女性の方の労働参加がかなり進んでいるという形になっていまして、これから御説明があると思いますが、2015年に雇用政策研究会が出された労働需給推計の見込みとほぼ同じぐらいか、さらには上回るぐらいのペースのトレンドで推移しているといった状況も踏まえて、労働参加率がこの雇用政策研究会の報告書のトレンドで推移する、それに従って上昇していくという想定に今回は置きかえて推計し、その結果、足元の潜在成長率が維持されるという推計の仕方をしているということでございます。実質成長率の上方改定幅が0.5、名目成長率の上方改定幅もほぼ0.5ですので、そこの潜在成長率の上方改定幅がこの名目成長率の上方改定幅にも影響しているということでございます。
- ○植田委員長
-
どうぞ。
- ○野呂委員
-
どちらかといえば素人の一般国民の受けとめ方のような質問ですけれども、物価上昇と長期金利の関係で、5ページの赤丸の消費者物価上昇率2%には別途、政策的な意味があるということで1直線に置かれていると思いますが、それにもかかわらず、長期金利が新しい試算でしたら3.8%まで上がっていくというのは、2%に達した段階で金融政策が変わって、本来の金利に上がっていくという意味じゃないかと理解しています。
前回の試算の赤三角でも消費者物価上昇率はほぼ2%。にもかかわらず、長期金利の行き着く先が、2025年でしたら4.3%から3.2%に落ちるという点に少し疑問があります。普通、物価と長期金利というのは、長期トレンドでは相関関係が強いように思うのですけれども、物価の前提が同じなのに今回の試算で長期金利だけ変わるというあたりは、一般の国民的にはどのような説明をされるかということを教えてほしいと思います。
- ○佐藤参事官
-
物価と金利との関係でございますけれども、基本的に先ほど申し上げたとおり、2%に達成した段階で日本銀行の金融緩和策から経済財政モデルの金利に変わっていくという前提を置いているところでございます。ただ、金利の水準につきましては、基本的に名目成長率との関係でほぼ決まってくると思います。なので、物価が確かに2%で前回試算から変わっていませんけれども、成長率が下がっているので、基本的にはそれで下がるということでございます。
ただ、その下げ幅が金利のほうが大きいじゃないかということについては、先ほどの御質問で回答したとおり、調整のタイミングが1年おくれたといったところが影響しているということで説明している。ただ、当然のことながら、長期的に収れんする水準については、名目成長率を上回っていくといった関係については、前回も今回も変わっていないということでございます。
- ○植田委員長
-
ちょっと関連して私からもですが、今の名目金利の赤い線で3.8が大体長期の姿ということでよろしいのですか。
- ○佐藤参事官
-
ほぼそのとおりかなと思うのですが、前回は名目成長率が3.9で、長期金利が4.3で、そのギャップが0.4あるということでございます。今回、0.3しかございませんので、若干上がっていく可能性はあるのかなということでございます
- ○植田委員長
-
何となくざっくりとした感想ですけれども、1つは、3.8に上がっていくスピードが非常にゆっくり置かれていまして、全く違う見方からすると、長期の姿がそういうことであれば、2021年くらいには3.8になっていても不思議はないという見方も十分あり得ると思います。そういうふうに早目に長期金利が長期の姿に上がったときに、この財政の5ページにあるような図にはどういう影響が出るかということと。
それから、長期均衡ではいずれにせよ名目金利が成長率を上回っているわけですけれども、それが財政にとっては当然苦しい設定なのですが、例えば公債残高GDP比をもっと右のほう、将来に向けて計算していったら、赤い線の場合、下がり続けるのか、どこかで反転して上がってくるのかというあたりはいかがでしょうか。
- ○佐藤参事官
-
そういう金利の上昇が早まったらどうなるのかということは、政府としては出しておらないのですけれども、そういったものが仮に発生した場合ということでございますが、市場金利と実際の債務残高できいてくる金利との差で言いますと、過去に発行した既発債の金利についてはすぐに影響するわけではございませんので、その市場金利の上昇がきいてくるには、ある程度の波及時間がかかってくるということでございます。今、国債の平均残存期間が9年ということが言われていますので、その市場金利がいわゆる実効金利にきいてくるには、そのぐらいの時間がかかってくるかなと思います。
ただ、最終的に金利が成長率を超えていきますと、ドーマーの定理で言いますと、そのときにプライマリーバランスの黒字が達成していなければ、この公債等残高が上昇していくというのは、定理上そうなってくるのかなということで、そういう状況に備えて、きっちりと財政運営を図っていくことが大事なことなのかなと思います。
- ○植田委員長
-
では。
- ○小枝委員
-
今の植田先生の質問に関連しているのですけれども、長期的にフィッシャー方程式が成り立っているように見えるのですが、そこでリスクプレミアムとかにゼロと置いていらっしゃるのか、特に何らかの仮定を置いていらっしゃるのかということを教えていただけるでしょうか。
これをぱっと見ると、フィッシャー方程式というか、名目金利と実質金利と潜在成長率とかで動くような、実質均衡金利とインフレの期待みたいな式が、特に長期的に簡単に成り立っているような気がするのです。そこで、何らかの金利のリスクプレミアムの仮定などを特に置いていらっしゃれば教えていただきたい。ゼロと置いているのかということです。
- ○佐藤参事官
-
プレミアムについては、回帰して推計しているわけでございますが、公債等残高等がそのプレミアムに関係しているということで推計しておりまして、それが長期の水準でいきますと、例えば2027年が名目成長率3.5%に対して長期金利が3.8%ということで、0.3%高まっているかと思いますけれども、そこの部分がプレミアムとして加わっていると御理解いただければと思います。
- ○植田委員長
-
はい。
- ○山田委員
-
先ほど、小黒委員とのやりとりの中で労働参加率の想定が予想上に進んでということなのですけれども、進んだ労働参加というのは高齢者と女性ということで、賃金がそれほど高くなくて非正規が多いということは厚生労働白書でも分析されていますけれども、そんなに生産性が高くない。その中で、TFPとこういう高齢者・女性労働力率の上昇の関係というのは、どういうふうに整理されているのでしょうか。特に、ベースラインの関係で念のためにちょっと確認させていただきたいというのが質問です。
- ○佐藤参事官
-
そこは、完全に我々の想定で外生的に与えているということで、そこの相関関係をきちんと分析しているわけでは必ずしもないということでございます。女性と高齢者の参加がふえれば、例えば高齢者がふえれば生産性にある一定の影響を与えるのではないかという分析があることは承知しておるのですけれども、そこは今回の試算においてはTFPと参加率は別々に置いているということで、TFPについては前回の試算から変えない。1%で推移するということで、現行水準が維持されるという簡単なシナリオの置き方をしているということでございます。
- ○植田委員長
- 済みません、この後、まだ盛りだくさんでございますので、手を挙げていらっしゃる方、手短に御質問いただいて、まとめてお答えいただけたらと思います。
- ○米澤委員
- ありがとうございます。
物価上昇率と名目長期金利との関係でちょっと教えていただきたいのですが、ベースラインケースです。
2点ありまして、1点は、消費者物価上昇率が19年、20年あたりに高くなっているのは、これは消費税の引き上げということでいいわけですね。その後、ベースラインケースですと物価が2%に達していないわけです。1%ちょっとですね。そのときに名目長期金利は上がり始めているわけですけれども、これは今の日銀の金融政策は余り念頭に置いていなくて、聞きたいのは、相変わらず10年物であってもゼロ金利ぐらいのところに持っていくような政策というのが今は行われているわけですが、それはもう想定していないということの理解でよろしいでしょうか。
- ○植田委員長
-
小野委員。
- ○小野委員
- ありがとうございます。
年金財政における経済前提ということですので、そちらのほうから質問申し上げたいのですが、前回、5年前というのは、内閣府さんの平成26年1月の推計を使っていたと思います。今回も同じ方法でいくとすれば、足元は来年の推計に依拠するという話になってくると思うのですけれども、その5年間で、先ほどモデルが基本的には変わっていないとおっしゃられましたが、設定する仮定の中で、先ほどおっしゃられた労働参加率の仮定は、大分変わっているのではないかと思います。年金財政上、それ以外に変更点があれば教えていただきたい。
それから、5年前にもお伺いしたのですが、アウトプットとして賃金上昇率が出てくると思います。その動向だけでも押さえていらっしゃったら教えていただきたい。
この2点です。
- ○植田委員長
-
吉川委員。
- ○吉川委員
- 何回にもなって恐縮です。
横長の資料の5ページ、右側のデットGDP比、成長実現ケースは、少なくともこの図にある27年度まで右下がりになっているのは、私は非常に明確なポリティカルなメッセージを持つと思います。それはということですが、1つ、少なくとも私の頭の中ではっきりしているのは、長期金利の動向に非常に大きく依存しているということだと思いますね。
縦長の内閣府の本体のほう、いただいている資料の6ページに同じ図があって、その下に破線に成長実現ケースとベースラインケースについての簡単な説明がありますが、上の成長実現ケースでは、先ほども御説明にあった既発債のことが言及されていて、これによって、言ってみればラグが生じるということだったのですが、それはベースラインケースでも同じ話だろうと思います。同じように当てはまるポイントだと思います。
問題は、先ほど植田委員長が言われたことの繰り返しになると思うのですが、長期均衡はある意味では同じ話であって、そこに至る経過、トランジションの話です。この27年までの図しか、国民というか、我々は見せていただいていないのですが、これはまさにトランジションの話で、ベースラインケースでは非常に微妙ですが、26年が底打ちの年になっていますね。27年から、若干ではありますけれども、ベッドGDP比が上昇し始めている。しかし、成長実現ケースでは、この27年度中は下がり続けているという今回の試算結果です。
繰り返しですが、これは長期金利動向に非常に大きく依存した結果で、いずれにしても長期は長期金利のほうが少し上回る形になっていてピンどめされている。そこは変わらないので、トランジションをどう描くかというところがホールドポイントということですが、その点の説明というのは、本来、諮問会議や何かでもうちょっと議論されるべきなのか。もうちょっと言えば、日銀の政策に依存するのか。しかし、それは発射台の話で、2%物価上昇を実現した後は、言われたとおり日銀の手を離れて、内生的なモデルの中で金利が試算されているということですから、内閣府に説明責任があると思います。そこは今じゃなくて結構ですが、将来的にはもう少し世の中と議論していただきたいと思います。
- ○植田委員長
- それでは、佐藤参事官、お答えになれる範囲で。
- ○佐藤参事官
- まず、ベースラインケースの物価と金利との関係ということでございますけれども、確かにベースラインケースだと2%を達成しない段階で金利が上がっていくという想定を置いております。これは、2%は達成しないので、金利がずっとゼロ%程度で推移するという姿の置き方も考えられなくはないのですが、そうしますと、モデルとの均衡金利の差がずっと生じ続けるということで、若干、我々の推計上の問題があるということでございます。
特に、2020年以降の日本銀行の金融政策はこうあるべきという想定を置いているわけでは必ずしもないのですが、2020年以降は、成長実現ケースもベースラインケースも我々のモデルから出てくる数字を使うということで、予断をもって設定しないという考え方で推計しているということでございます。
あと、賃金の話の説明でございますけれども、確かに中長期試算では賃金を公表しておりませんけれども、賃金の決まり方については、基本的に名目成長率で名目の所得の水準が決まり、そこから分配されているという考え方で推計しています。そういう意味では、賃金の動向は、名目成長率とほぼパラレルになっていると御理解いただければいいかなと思います。そういう意味では、生産性であるとか物価であるとか。あと、先ほど御指摘があったとおり、女性とか高齢者の労働参加が進むと若干非正規の方がふえるということで、そことの関係も踏まえて推計しているのですけれども、動向としては、名目成長率並みの賃金上昇率になっているとお考えいただければいいかなと思います。
最後、吉川先生から御指摘いただいた点については、こちらとしては重々踏まえて、今後検討していきたいと考えております。
- ○植田委員長
- ありがとうございました。
質問も尽きないようですが、時間の関係もありまして、次の御説明をいただけたらと思います。
「労働力需給推計について」、井嶋統括研究員、よろしくお願いいたします。
- ○井嶋統括研究員
- 本日は、当機構で行っております労働力需給推計について、お話しをする機会をいただきまして、まことにありがとうございます。実は、私自身はこの4月からの労働力需給推計の研究に携わることになりまして、御質問にお答えするには少々心もとないところもございますので、本日は三菱総合研究所の木村さんに御出席をお願いしております。木村さんは、2015年版の推計で労働力需給推計研究会の委員として御参加いただいておりまして、また、現在、行っております2018年版の推計にも御協力いただいているところでございます。
それでは、御説明させていただきます。今回、御説明するのは、2015年版の労働力需給推計の内容でございます。現在、2018年版の推計を厚生労働省の要請を受けて実施しているところでございますが、前回と同様に当機構に労働力需給推計研究会を設置いたしまして、まさに作業しているところでございます。今回は、その内容を御説明することがでませんので、前回のものということになります。
2015年版の労働力需給推計では、2030年までの性・年齢階級別労働力人口と就業者数、それから産業別就業者数を推計しております。2015年版については、当然、2018年版とは想定が異なることとなりますが、今のところ、モデルの考え方など、基本的な部分は踏襲することと前提して作業を行っております。2015年版では、社人研から平成24年1月に公表されました日本の将来推計人口の中位推計と平成27年6月の「日本再興戦略」改訂2015の成果目標を使って推計を実施しております。
また、2015年版では都道府県別の推計も行っておりますが、今回の説明は全国の推計に絞りまして、都道府県別の推計部分は割愛させていただいております。この後は、推計の仮定について、労働力需要部分と供給部分に分けて、それぞれ御説明してまいります。
まずは、労働力の需要の仮定についてです。産業連関表などを用いて産業別の最終需要から生産額を算出し、19業種別に労働力需給関数を使って労働力需要を推計しております。生産額の算出に用いる最終需要には、後でお示しするように、「日本再興戦略」改訂2015における成長分野の新規市場規模に関する成果目標や社会保障に係る費用の将来推計の改定における医療・介護費用を考慮しております。
続きまして、労働力供給の仮定についてでございます。
性・年齢階級別に労働力率を推計し、それを将来推計人口に乗ずることで労働力人口を推計しております。ここで女性については、有配偶と無配偶に分けております。推計に用いている労働力率関数では、若年層、女性、高齢者の共通の説明変数として失業率やコーホート要因を採用しており、また若年層、女性、高齢者では、それぞれにここに記載しているような説明変数を採用しているところでございます。
労働力供給については、説明変数の一部を操作することで政策を反映させています。また、説明変数として取り込んでいないものについては、外生的に算定し、労働力率等に直接加算するという方式をとっております。具体的には、後ほど説明いたしますが、「日本再興戦略」改訂2015における雇用制度改革・人材力の強化の成果目標、労働政策審議会などで審議された政策目標を考慮しているところでございます。
2015年版の推計に当たって、2つのシナリオを設定しております。
1つ目は、経済再生・労働参加進展シナリオでございます。各種の経済・雇用政策を講ずることにより、経済が成長し、若者、女性、高齢者等の労働市場への参入が進むシナリオです。
2つ目は、ゼロ成長・労働参加現状シナリオでございます。性・年齢階級別の労働力率が2014年と同じ水準で推移すると仮定したシナリオでございます。労働参加が進展するか、現状のままなのかに注目したシナリオ設定ということでございますが、説明は省略いたしまして、最初のほうを経済再生シナリオ、2つ目をゼロ成長シナリオと呼ばせていただきます。
各シナリオについて、順に見ていきたいと思います。
経済再生シナリオは、ここで11項目について定性的に記載しております。経済成長率が実質2%程度に高まって成長分野の市場拡大が進み、さまざまな雇用環境の整備が行われ、労働力参加が進展することを想定したシナリオでございます。
次のゼロ成長シナリオでは、ゼロ成長に近い経済状態であり、労働参加は現状にとどまるシナリオでございます。ここで、まるの3にありますように、社会保障に係る費用の将来推計の改定における改革後の医療・介護費用のみは考慮しておりますが、経済再生シナリオとは異なって、他の政策目標については考慮しないということでございます。
それから、マクロ経済の想定で経済成長率でございますけれども、先ほど御説明いただいたものの少し前のバージョンの中長期の経済成長に関する試算をベースにさせていただいておりまして、いろいろ数字を並べておりますが、右側の欄をごらんいただければと思います。2014年から2020年のところと、それから2020年と2030年の数値でございます。
経済再生シナリオでは、実質経済成長率を2014年から2020年で1.8%、2020から2030年で2.2%。ゼロ成長シナリオでは、2014年から2020年が0.5%、2020年から2030年で0.0%と想定しております。
物価の想定でございます。こちらも同じようなものにしておりますが、2014年から2020年から2030年の右の欄のところをご覧いただければと思います。経済再生シナリオでは、消費者物価指数の変化率を2014年から2020年で1.9%、2020年から2030年で2.0%。ゼロ成長シナリオでは、2014年から2020年を0.8%、2020年から2030年を0.0%と想定しております。
経済再生シナリオでは、労働力需要に影響を与える財・サービスの需要額について、「日本再興戦略」において示している分野、例えば健康分野では、ここに書いてありますように、健康増進・予防・生活支援関連産業の需要額が2020年に10兆円。というふうに、先端医療技術、エネルギー、次世代インフラ、農業、訪日外国人観光、それから社会保障に係る費用の推計値として、医療・介護などを取り込んでいるところでございます。
ゼロ成長シナリオでは、8ページで御説明したように、社会保障に係る費用の推計値として、医療・介護費用のみを反映させているところでございます。
労働力の供給について、先ほど労働力率関数の変数を操作することや、外生的に算定して加算するということで政策を反映させていると御説明いたしましたが、具体的に取り込んだものを幾つか見ていきたいと思います。
経済再生シナリオでは、若年対策において、地域若者サポートステーション、通称サポステと呼んでおりますけれども、その充実等によりまして、ニートからの就職者が増加すると想定し、あるいはフリーターの数が減少すると想定して、若年層の労働力率を加算しております。
次の赤で囲んだところでございますが、経済再生シナリオでは、女性のM字カーブ対策として、両立環境の整備による継続就業率の向上や、保育の受け皿の整備による待機児童解消の効果を考慮して労働力率を加算しております。
それから、経済再生シナリオでは、フルタイム雇用者について年次有給休暇の取得率の向上や、週労働時間60時間以上の雇用者の割合が減少することにより、平均労働時間が減少するとしております。短時間雇用者の平均労働時間は逆に増加するように想定しておりますが、結果として、フルタイム雇用者と短時間雇用者を加重平均した労働時間は短縮する想定としております。
なお、ゼロ成長シナリオでは、平均労働時間は一定と置いております。
以上のような想定を用いて推計を行うこととなりますが、その推計モデルをフローチャートに示したものが参考に示したものでございます。このモデルは、労働力需要ブロック、供給ブロック、そして需給調整ブロックの3つからなります。今までの説明の繰り返しになりますが、推計のフローを見ていきたいと思います。
左の需要ブロックでは、経済成長率や最終需要構成は外生的に外から与えますので、その外から与えた数字で各最終需要の額などを求めます。求めた最終需要の額から産業連関表を利用して産業別の生産額を算出いたします。産業別の生産額を算出する際に、先ほど御説明したように、最終需要に成長分野の新規市場に関する成果目標や医療・介護費用も考慮して調整を行います。産業別の生産額、賃金水準、労働時間から労働需要関数を用いて労働力需要を推計いたします。
右の供給ブロックでは、労働力率関数を性・年齢階級別に推計します。この関数の説明変数も、先ほど御説明したように効果を盛り込んでいきます。推計した労働力率に社人研が出している将来推計人口を乗じて、労働力人口の推計値を得ます。
中央の下のところの需給調整ブロックでは、需要ブロックで推計される各産業の労働力需要の合計と、供給ブロックで推計される性・年齢階級別の労働力人口合計の比率を、ここでは労働力需給倍率と呼んでおりますが、労働力需給倍率を出して、それを有効求人倍率に変換いたします。変換は、過去の実績に基づいて推計した変換式に基づきます。有効求人倍率と外生的に与える消費者物価上昇率などから賃金上昇率を求めます。
賃金上昇率は、需要ブロックの労働需要関数と供給ブロックの労働力率関数の説明変数として、それぞれフィードバックされ、再び産業別労働力需要及び性・年齢階級別労働人口を推計するという繰り返し計算を行ってまいります。賃金上昇率が収束するまで行って、その収束した時点の労働力人口が推計値となるというフローでございます。
このようにして推計した結果を少し御説明したいと思います。
最初の図は、労働力人口でございます。2030年の労働力人口は、ゼロ成長シナリオでは2014年の労働力人口6,587万人と比較して787万人減少すると見込まれます。一方、経済成長シナリオでは、225万人に減少幅が縮小することが見込まれます。
年齢階級別に見ますと、経済再生シナリオでは60歳以上の高齢者の大きな増加が見込まれます。また、15歳から29歳の2030年の労働力人口は、2014年の1,106万人に対して、ゼロ成長シナリオでは159万人の減少となっておりますが、経済再生シナリオでは79万人の減少にとどまることが見込まれます。
労働力率の推移でございます。2030年の労働力率は、ゼロ成長シナリオで55.5%と、2014年の59.4%から低下いたしますが、経済再生シナリオでは60.8%と、2015年水準を上回ると見込まれます。
次に、女性の労働力率の推移ということですが、女性労働力率のM字カーブについては、ゼロ成長シナリオではほとんど変化しておりませんが、経済再生シナリオでは大きく改善することが見込まれます。
続いて、就業者の推移でございます。2030年の就業者数は、2014年の就業者数6,351万人と比較して、ゼロ成長シナリオでは790万人減となりますが、経済再生シナリオでは182万人の減にとどまることが見込まれます。
就業者数については、労働力人口とほぼ同じ傾向になっておりますので、飛ばしまして、産業別の数字を御紹介したいと思います。2020年の産業別就業者数は、2014年と比較すると、経済再生シナリオでは、「日本再興戦略」の成長分野に関連する農林水産業、一般・精密機械器具、電気機械器具、輸送用器械器具、その他の製造業、情報通信業、その他のサービス業で増加するほか、高齢化の進展とともに需要が増大する医療・福祉において増加すると見込まれます。
2030年の産業別就業者数については、2014年と比較すると、いずれのシナリオでも増加数が大きい産業は、医療・福祉及び情報通信業などと見込まれます。一方、2030年の就業者数が2014年と比較して大きく減少する産業は、卸売・小売業などが見込まれます。
最後に、労働生産性の推移をつけておりますが、労働生産性につきましては、労働投入量が減少した分だけ上昇するという推計になっているところでございます。
簡単ですが、説明は以上でございます。
- ○植田委員長
- ありがとうございました。
それでは、御意見、御質問等、お願いします。
山田委員。
- ○山田委員
- 御説明ありがとうございました。
前の御報告で、労働参加率が高齢者と女性のほうで非常に予想外に進んだということで、この推計も現実の数値と乖離が、プロジェクションですから、当然ながら出るというのはわかるのですけれども、予想外に開いた理由は一体どういうものが考えられるのかということと。
あと、2点目としては、いろいろと制度的な外生変数が入っているということですけれども、例えばここの労働供給の単純な図では出てこないのですけれども、支給開始年齢の引き上げのスケジュールがどういうふうに影響しているのかとか。あとは、今後、重要になってくるのは、適用拡大により社会保険料がどういうふうにかかるか。これは、世帯類型とか、もちろん有配偶関係でも異なってくると思いますけれども、そのパラメータというのはどうやって推定したりしているのかということですね。
あと、3点目としては、短時間労働者です。もちろん、ここで出てくる労働力の将来需給推計での短時間労働者というのと、年金制度でいうところの短時間労働者がどういうふうにリンクしているのかというのは、また別の話だと思うのですけれども、そういった中でも、社会保険料に対する短時間労働者の労働供給の反応というのはどういうふうにモデルに取り込まれているのかということをまずお伺いしたいので、わかる範囲でお答えいただければと思います。
- ○井嶋統括研究員
- まず最初が、女性と高齢者の現在の状況が拡大しているのと、推計との乖離、開いている理由は何かということでございますが、このところ、予想以上に女性・高齢者の労働力の参加というのが、経済情勢もあるかもしれませんけれども、進展しているというところで、そこが今の前提の中に取り込めていなかったということではないかなと思っております。新しく2018年にしますので、そこを足元まで入れたものでもう一回やって、その状況を見てみようと思ってございます。済みません、御説明になっていないかもしれません。
- ○木村嘱託研究員
- 高齢者につきましては、いわゆる60歳以降の継続雇用制度が義務化されていく過程で、目標を設定して推進していましたので、特に男性の高齢層につきましては、それが関数としては結構きいていたのです。60-64歳のところが働き続けると、コーホート的な要因でその上の年齢も結構働けるようになるので、そのコーホート要因を入れることによって高齢者の雇用を確保するという形で織り込んでいたのですけれども、足元の実態の進展の方が大きかったということかと思います。
年金支給開始年齢の引き上げなどの話は前回のとき、余りうまく入らなかったのです。本当は入れたかったのですけれども、今回はまたそれが課題になっておりまして、年金との関係で高齢者がどれだけ働くかというあたりをもう一回検討したいと思っています。
それから、女性のほうは、仕事との両立とか、いろいろ変数を試していて、現在、保育所にどれだけ預けられているかとか、そういう指標が入っています。
もう一つ、この2015年モデルでは男性がどれだけ家事に参加するかという変数を入れたりしてやっているのですけれども、女性の方の就業もどういうふうに扱うかというのが、ちょっと今のモデルでは検討中になっております。
- ○植田委員長
- 小黒委員。
- ○小黒委員
- ありがとうございます。
私も年金の制度改革の話が盛り込まれているのが、ちょっと疑問に思っていて、そこは山田先生が質問されたので、とりあえず、今のところ大きく入れるのは難しい話だということで、そこの質問は除かせていただいて。
残りの部分ですけれども、2つ質問させていただきたいのがありまして、1つは、女性のM字カーブが最近、変わってきている理由をきちんと実証分析されているのは、研究論文ではまだ余り出てきていないような気もしていまして、メカニズムとして、単身の未婚の女性がふえている中でM字カーブが解消されているのか、あるいは保育所のいろいろな施策とか少子化対策の効果があって、M字カーブが解消されてきているのか、2つ考えられると思うのですけれども、現状、もしその2つのダイレクションがあると、かなり違った効果を長期的にはもたらすと思います。
前者であれば、人口が減っていく、長期的な労働力が失われていくというシナリオになりますし、後者であれば、両立できているということなので、出生率にすごい影響が出てくるかどうかわかりませんけれども、改善するかどうかわかりませんけれども、マイナスの影響は余りないと思っていまして、モデル上、どういうメカニズムが働いて解消されているのかという、そこを1つ教えてください。
もう一つは、グローバル化の影響ですけれども、今でも実質的には外国人の技能実習制度とかを使って、コンビニとか、かなりいろいろなところに入ってきていると思うのですが、このモデルの先ほどのマップを見させていただく感じだと、外生的に入れられているのか、内生的になっているのか。なぜその話を伺いたいかというと、雇用が今、全体的にアメリカとかほかの国も二極化されている中で、すごい高技術を持っている人については、今であればAIとかビッグデータとか、いろいろな知的技能が高い人については需要がすごく発生している一方で、単純な、余りはっきり言うとあれですが、そういう方々については、需要が余りはっきりしなくて、むしろ賃金が下がっていく傾向にあると思います。
特に、男性の賃金が下がっていく中で、女性の方々が就労参加するというメカニズムが働いていると思うのですけれども、かなり複雑なお話しをしている感じになっているので、一概にお答えできるのかわからないですけれども、そういうメカニズムとか全部含めて、労働力が出るようなところというのは何か考慮されていらっしゃるのか、その2点を教えていただけないでしょうか。
- ○木村嘱託研究員
- 1点目の有配偶・無配偶の女性労働力の関係ですけれども、無配偶の方はM字の谷がない格好の労働力率にしていますので、そういう意味で、有配偶・無配偶を集計した結果が現在見ているような女性の労働力率のカーブになっています。予測する際には、社人研の有配偶・無配偶別に就業者数を人口で分けて推計していますので、その有配偶・無配偶のウエートは社人研の数字に従うわけですが、有配偶の方のM字の谷が施策上、いろいろ底上げされて上がる格好で現在、推計された結果になっていると思います。
無配偶の方はもともと谷がないので、それが若干相対的に少し上に上がりますけれども、形を変えるという観点では、有配偶の施策が谷を解消する格好になっているのではないか。2018年も同じような考え方で、有配偶・無配偶別にやろうかと思っています。
それから、グローバル化の影響というのは具体的にどういうふうにするかというのはよくわからないのですけれども。
- ○小黒委員
- 1つは、単純なのは、外国人労働者が、従来、中国でしたけれども、今、ベトナムとかが入ってきています。そういうものを考慮するとしたら外生的になると思いますけれども、そういうものを入れられているのかどうか。あと、所得分布の影響ですね。
- ○木村嘱託研究員
- 形としては、実績データに入っている外国人は全部カウントされた状態で、明示的に外国人かどうかとか、そういうことは考慮されずに関数を推定している形になっています。例えば、外国人が入ることによって、何か関数に影響があるとしたら、最近、どうなっているかというあたりで織り込まれていると考えざるを得ないのですけれども、そういう意味では、明示的に全く取り上げていないと言ってもいいかと思います。
- ○植田委員長
- ほかによろしいですか。
どうぞ。
- ○野呂委員
- その前の資料の山田先生の御質問と同じ内容ですけれども、高齢者の労働参加が今後進むと思いますが、とりわけ65歳以上で労働参加した場合の時間当たり生産性につきまして、現時点では目の子しかないというご説明だったと思います。私が少し関係しています建設業界でも、65歳以上の人については補助的な作業しかさせない等、高齢者には生産面での限界があるように思います。高齢者の労働参加がどんどん進むと、健康面等で少しハンディのある方も労働参加することになり、生産性への影響は結構大きくなると思います。今、そうした高齢者の参加の進み方と時間当たりの生産性についてどうかという御研究の取り組みはあるのでしょうか。
- ○木村嘱託研究員
- このモデルでは、結果的に生産性が上がらざるを得ないようなモデルになっております。といいますのは、需要は内閣府のほうで試算されたマクロに依存して決まると形に外生的にしていますし、人口の方も人口が決まっているので、労働力率のほうの動きがどれだけ変わるか次第です。結局、もともと労働力人口が減っていく中で経済成長している形になっていますので、生産性が上がらざるを得ないという中で、高齢者の就業者数も増えていく。そういう意味では、マクロの生産性が本当に達成できるのかというのは、結構何回もいろいろ議論になっているところであります。
今、実は具体的に高齢化が進むと生産性が本当にどうなのかという問題とか、サービス化が進んでいる中、どうなのかという問題もありますので、そういう中で、今年度はAIとかロボットとか、そういう影響をOECDが今、試算していますので、そういう結果を織り込んでほしいというリクエストがございます。実は、このモデルは無理やり生産性を上げて調整してしまっているので、逆にOECDの結果みたいなものは、何で生産性がそんなに上がることができるのかというのを検証するような資料になるのではないかと思っています。そういう意味では、高齢化が進む中で本当に大丈夫かという検討は、別途必要なのではないかと思っています。
- ○植田委員長
- ありがとうございました。
それでは、3番目の話に移りたいと思います。「金融政策と経済の関係について」、長井様、よろしくお願いいたします。
- ○長井代表
- それでは、御説明させていただきます。まず、このような貴重な機会をいただきまして、どうもありがとうございます。
私、御紹介にありましたように、昨年の6月まで日本銀行におったのですけれども、きょうは日本銀行の内幕を話すとか、そういう話ではございません。オックスフォード・エコノミクスは、エコノミストが世界中に200人ぐらいおりまして、民間の独立系では最大のマクロ経済の調査会社だと思っております。そこの同僚たちが、きょう御議論いただいているようなトピックについて、幾つかおもしろいリサーチを行っているのを昨年7月に入りましてから発見しまして、ぜひこれを皆様と共有させていただきたいなという形で幾つか資料を準備させていただきました。
テーマが世界的な長期金利の行方ということで、具体的にはアメリカの長期金利が今後どうなるかというお話をさしあげたいと思っております。こちらの委員会の最大の関心がJGBであることはよくわかっているのですけれども、JGBの行方を見るに当たって、先ほどの御議論の中でも中央銀行の役割とかファンダメンタルズの関係、いろいろと御議論になっていました。これをアメリカというか、グローバルな国際基軸通貨のドルの長期金利のコンテクストで御説明することで、同じところとか違うところを見出していただいて、何か御参考になればなというのが基本的な考え方でございます。
まず、ファンダメンタルズと長期金利というお話からさしあげたいと思っております。
こちらのグラフでございますけれども、全て英語で書いてあって恐縮でございますが、基本的に世界のトレンド成長率とトレンドインフレ率でアメリカの10年債の金利はかなりきっちり説明できてしまいますねというお話でございます。これから金融政策でQEがどうなると、いろいろ細かい話をさしあげるのですが、その前にこれをちょっとお見せしてしまうと、要は世界の成長と物価がどうなるかだけ考えておけば、長期金利は大体わかりますという元も子もない話になってしまうのですけれども、この問題というのは非常に重要だなと思っております。
そういうコンテクストの中では、成長率、物価がずっと下がってきた中で、QEだ何だと中央銀行の大胆な政策を巡る議論が色々ありましたが、もしかしたらこれもマクロのトレンドの中の内生変数にすぎないのかなという、ちょっと達観した見方もできるところではないかなと思っております。そういった意味で、この年明け以降、長期金利が少し上がって金融市場が動揺するなど、市場はいろいろ注目しているのですけれども、今後、成長及び物価がどうなっていくのかなという、そこを考えておけば、大きく間違えはしないだろうなと考えております。
という意味で、まず成長のほうでございますけれども、弊社はいろいろモデルを使いながら長期の予測をしておるのですけれども、こういった形で、中長期でもセキュラー・スタグネーションといいましょうか、ぱっとしない成長というものが、今後、先進国も続きますし、新興国についてもそう高い成長がこれから来るとは思えないという中で、ここが成長をドライビングフォースにして長期金利がどんどん上がっていくというのは難しい。特に、生産性の議論もきょうありましたけれども、そういう一種の奇跡的なことが起きない限り、成長会計上の長期の予測をしても、成長率が加速することは余り望めないということであります。
もう一つ、今のマクロ環境ということで皆様にお知らせしたいこととして、非常にぱっとしないながらも、危機の後では成長が大分よくなっているのですが、その成長の質もなかなか良うございまして、いろいろな意味で、国別のばらつきとかコンポーネント別のばらつきとかインフレのばらつきといったものもどんどんなくなってきていて、どの国も、どの指標も一様に改善している。よく弊社ではシンクロナイズド・リカバリーという言葉を使うのですけれども、そういうことが起きているということであります。
それと同時に、右側のグラフですけれども、弊社も含めて民間では成長予測の精度をいろいろ競い合っているのですが、だんだんフォーカスト・エラーがなくなってきていて、商売あがったりになってきている。このぐらいマクロ経済がかなり安定してきている。インフレも含めて、これが安定してきているということが、後ほども少し触れますけれども、先ほど御議論もありましたタームプレミアムといったところの落ち着きにも効いてきているということが言えるかと思っております。
もう一つ、マクロという意味では、長期金利のコナンドラムではないですけれども、グローバルに見た10年債の実質金利の低下というのと、グローバルな貯蓄超過のGDP比で見た青の線というのは、結構一緒に動いています。これはグラフのマジックかもしれないですけれども、こういうグローバルな貯蓄と投資のバランスという意味でも、世界的な長期金利の低下というのはうなずけるところがございます。
というのが大きな、ざっくりしたマクロ環境でございまして、そういった意味では、年初来、特に足元はアメリカの金利とかは大分上がってきていて、マーケットはびびっているのですが、そんなに大騒ぎにはならないだろうというのが弊社のハウスビューであります。
次に、中央銀行の動きというものが今後の長期金利にどういう影響を与えるのかということをお話ししていきたいのですけれども、その際には、特にQEがどんどん巻き戻しといったことがアメリカの長期金利にどういう影響を与えるか、そこについて、基本的なメッセージとしては余り御心配いただかなくてもいいのではないかということを申し上げたいと思います。その過程で、アメリカの10年債に対する需要と供給、取引フローみたいなものにちょっと目を向けて、結構細かいデータを御説明さしあげたいと思っています。
グローバルな金利の低下は貯蓄超過の中で余った貯蓄が限られた投資機会に向かっていると理解することが出来ます。ただ、御覧いただいているグラフにあるようなマクロ経済的な貯蓄超過を見ているだけでは現実世界の金利の動きを十分に説明出来ません。実際にそれが10年債の金利にどう影響するかとなると、ちゃんと貯蓄を持っている方が買える金融資産、インベスタブルな形のアセットへの需要と供給がどうかという視点を持たなければいけません。
後で申し上げますが、新興国から多くのお金がアメリカとか先進国に逆流しているというのは、そういうインベスタブルなアセットが新興国にはまだ余りないといった観点を入れなければいけないということであると思います。
もう一つ、このグラフについて制約点を申し上げると、これはネットの数字でございまして、ネットの投資不足、ネットの投資超過といったことでございますけれども、実際に先ほど申し上げたような貯蓄と投資を結ぶような資本フローというものは、グロスで出たり入ったり、いろいろしております。そういった意味では、このネットだけではなくて、グロスでどういうお金が需要と供給として動いているのかということをきちんと考えることが、10年債の今後とかを考えていく上でも重要であるということを申し上げた上で、次のセッションから金融政策への影響ということに移っていきたいと思っております。
中央銀行の動きと長期金利の関係いうことで、2つのチャネルに整理しております。1つは、政策金利、短期金利の引き上げということでございますし、もう一つは、QEと総括しておりますけれども、これの巻き戻しという2つに分けてインパクトを御説明したいと思っております。
最初の基本的な政策金利の引き上げということでございますが、今まで議論がありましたので基本的に割愛させていただきますけれども、こういう金融の正常化、政策の正常化があったときに、市場がどのぐらい不安定になるのかは、コアイールドといいましょうか、基本的な長期金利、特にアメリカの長期金利が不安定化しないことが重要と考えております。金利水準が上がるにしてもボラティリティは上がらない、ペースも緩やかにしか上がらないし、予測可能な形でしか上がらないということです。株式などの資産価格の安定については、ディスカウント・レートであるコアイールドの安定というのが重要なことは言うまでもありません。
では、長期金利がどういうふうに安定するかといえば、1つは、短期金利の先行きということで、もう一つは、小枝委員からも御指摘がありましたリスクプレミアムがどうなるかということであると思っています。
まず、短期金利の先行きについては、弊社の見方も市場の一般的な見方と余り変わりがありません。賃金と物価の上昇はゆっくりでありまして、それに対応する金融政策の金利の引き上げペースもゆっくりであると考えております。それがゆっくりでFEDはビハインド・ザ・カーブにならない。それに加えまして、冒頭で申し上げましたような金融経済自身のボラティリティが非常に下がって、偏りもなくて、しかもみんな似たような動きをして安定しているという安心感が、このリスクプレミアムも引き下げていく、低位に安定させていくと作用すると考えております。
皆さん似たようなものですけれども、弊社としては年4回、FEDの利上げがあるということで、そう極端なポジションをとっていないということであります。
その根拠といたしましては、今、そういう一種ゴルディロックスといいましょうか、適度な成長と適度なインフレの非常に心地いい組み合わせが世界経済の安定の背景にあるのですけれども、その中で一番重要なのは賃金ですね。これが日本も含めて、労働市場がかなり引き締まっても急加速はしないだろうと考えていて、それがいわゆるフィリップスカーブの形状に関するいろいろな議論になっているところでございます。
これにつきましても、大変恐縮ですけれども、弊社としてここが違って、ぜひ御注目くださいという物すごいポジションを持っているわけではございません。資料ではフィリップスカーブのスロープとかポジションに影響を与える各種要因、世界にほぼ共通な尺度をリストアップしております。賃金上昇の急加速に寄与するリスクがあり得るとすれば、例えば経済、世界的に市場の調整メカニズムが非常にフレキシブルになって需給を反映しやすくなるとか、あるいは、高齢化によって労働参加が構造的に落ちる場合が考えられます。ただ、それ以外は、インフレ期待もオフショアリングあるいはオートマイゼーションの動き、あるいは労働分配率の低下に伴う労働組合の交渉率の低下といった要素はいずれも、これから賃金が急加速するという兆候は余り見せていません。
ということで、ここまでナッシングニューなのですけれども、今回、特に皆様と共有させていただきたかったのが、QEの巻き戻しでどうなるのかという話。ここで、ちょっと御注意申し上げたいのは、FEDのQEの話をさしあげ結論として、QE巻き戻しは大した影響がありませんということですけれども、それはBOJとかECBが全く影響ありませんということを必ずしも申し上げているわけではありません。中央銀行の大胆な政策は十把一からげに議論されることが多いのですけれども、国よって規模もやり方もかなり違いますということをぜひ御理解いただきたいなと思っています。
FEDのQEですけれども、資料ではアメリカ国債の需給のごく一部にすぎなかったと書いてあります。危機の後、FEDがいっぱいアメリカの国債を買ったので、それで金利がぐっと下がって世界か救われたという見方があるのですけれども、それを検証するために欧米の国債の需給を見て、フローベースの需要の伸びにどのぐらいFEDのQEが貢献したのかなというのを見ているのが、このグラフです。
左のほう、わかりにくいのですけれども、これはユーロ圏とかアメリカのフィックスド・インカムに対する需要を棒グラフでお示ししていて、御案内のとおり、危機の前には大分高い伸びを示していました。特に、アメリカと欧州の民間セクターが大分買っていた後、危機の後、黄色のFEDがぐっと買って、それを買い支えたというのは間違いないところでありますし、それが1回終了した後、ECBとBOEの似たようなQE、灰色ですけれども、続いたということであります。
ただ、そうは申し上げましても、危機前の債券に対する需要の伸びと比べると、FEDとかが頑張っても、債券の伸びというのはあくまでも低い水準にすぎなくて、この間、どんどん長期金利が下がっていった。こんなに伸びが低いままなのに少しおかしいなということがここからも見てとれるのではないかなと思っております。
もう少し違う見方で、今度は右側のグラフですけれども、これはアメリカのトレジャリーに関する年間の平均保有額が、主体によって、お示している年限の間にどのぐらい変わったのかということです。一番左のまさにFEDのQE、華やかなりし頃は、確かに赤のFEDは確かにいっぱい買い増しているのですけれども、そうは言っても、青、レスト・オブ・ザ・ワールドのオフィシャル、これは外準ですね。これと同じような水準しか買い足していないし、ほかの参加者たちの需要もいっぱいありましたねということであります。
2015年、16年のFEDが買い増すのをやめた後は、御案内のとおり、外準がちょっと減った時期があったので、青の外準は減っているのですけれども、その中で比較的高いアメリカのトレジャリーの需要を支えていたのは、黄色の「その他国内」、これは何かと申しますと、アメリカ国内の銀行が、規制対応のために米国債を買いまくったというのがありました。これがかなり需給を支えていたということであります。最後、右側の2017年というのは、やっと資源価格の回復とともに外準がふえてきたので、また外準さんが買っていますというのがこれまでの動きでございます。
いずれにせよ、申し上げたいことは、危機の後に、なぜ米国の長期金利が下がっていったかを需給に着眼してみてみると、需要の伸びだけではFEDのQEを入れてもいま一つ迫力不足だったですねということであります。
何でそういうふうに民間からの国債への需要が下がったのかということですけれども、このグラフでアメリカのフィックスド・インカムのポートフォリオがどのような要因で増えたかを分析しております。これからわかるのは、危機前の伸びと危機後の伸び鈍化が、株などの他の資産への投資とのリバランスで生じたのではなく、投資家のポートフォリオ自身の規模拡大と縮小で起こっていたということです。その背景には、危機前の債券を用いたレバレッジ拡大が、危機後は規制の強化などもあって起きなくなったということであります。
このように、需要の伸び、幾らFEDのQEがあっても、それだけじゃ、なぜあんなに長期金利が下がっていったのかというのはなかなか説明できないところがあります。そこで、需要と供給という意味では供給もちょっと見てみようというので、こちらのグラフでは、市場における債券の発行ですね。特に、投資ができるようなそれなりに安全性があるものの発行量の推移をお示ししております。
危機後、赤がぐっと落ちていったのがおわかりだと思うのですけれども、御案内のとおり、危機の前はバブルの中で、特に欧州系の銀行中心に金融債を山のように発行しておりましたし、アメリカではサブプライム・バブルの中でエージェンシー債が山のように発行されて、インベスタブルなアセットが非常にあったものが一気に終息していったということであります。その後、次第に金利が低下する中で、一般企業の社債は増えていったのですけれども、特に危機後の数年というのは、インベスタブルなアセットの供給が非常に減って、これがむしろ需給という意味では金利の低下の要因として一番説明しやすいと思っております。
今まで基本的に先進国の中だけの話をしていたのですけれども、もう一つグローバルな資本フローを加えて考えてみます。引き続きUSとEUのフィックスド・インカムに対する需要について、今まで申し上げていた青と赤の先進国の民間需要だけではなくて、新興国の外準が中心ですけれども、それがどのぐらい需要に加わっていたのかということをお示ししております。これも緑でお示ししているように、それなりに一定の寄与をずっと続けてきて、このグラフでは、例の資源価格の下落で少し寄与がなくなってきていますけれども、足元は戻ってきているというのは皆さん御承知のところであります。
これが新興国の需要の内訳ということでございます。冒頭で申し上げましたとおり、こういうふうに新興国からお金がある程度流れてきて、アメリカの国債の金利を押し下げる力を加え続けてきました。「ブレトンウッズ2」体制という表現が使われることもありますが、グローバルなグロスの資金フローが、先進国からサーチ・フォー・イールドという形でエマージング諸国に流れ込み、それを放っておくと為替がどんどん増加してしまうので、介入してドルの外準がたまって、それを持っていきようがないので、またアメリカの国債に戻ってきましたという大きなサイクル、資本のリサイクルが起きていた。
なぜそういうふうになったのというと、外準を運用するに当たって、安心してインベスタブルなアセットというのは、アメリカを中心とした先進国にしかなかったということだと思っております。
ということで、ここまで主にFEDのお話をさしあげてきました。メッセージとしては、QEというのはアメリカのトレジャリーを巡る、外準も含めて、欧州系の投資家も含めて、グローバルな需給の中のほんの一部にすぎませんでしたという話をさしあげました。ただ、同じような議論がECBとかBOJについてできるのかということで、構図がちょっと違いますねというのが左側のグラフであります。これは、QEで国債を買い入れる額と、ネットで国債がどのぐらい発行されているかというギャップを示しているものですけれども、全体の国債の発行額に対して買い入れている比率というのは、FEDと比べて日本とユーロ圏というのは圧倒的に大きいことがわかります。
その結果と申しましょうか、右側のリスク・プレミアについても、アメリカの国債市場というのは、こういうQEによる政策的なディストーションが比較的少ない、小さいマーケットであって、市場機能もかなり残っていた中でのノーマライゼーションであったということであります。それと比べると、ドイツとか日本でのQEがタームプレミアムを抑え込む程度はより強い。逆に言うと、そのたがを外したときの反動、ファンダメンタルズに沿って何か動き始めているときの調整というのも、大きい可能性があると思っております。
これが最後のスライドになりますけれども、ユーロ圏あるいはECB、BOJのQE、あとタームプレミアムの押さえ込みというのは、同じようにディストーティブで強かったのですけれども、それに対する投資家の反応というのは、特にユーロ圏は非常に強かったなと。これは、アメリカとユーロ圏のネットの債券ポートフォリオフローですね。下のほうに出ていくと、海外にユーロ圏からお金や債券フローが出ていくということですけれども、ECBが本格的にQEをやってから、こんなリターンじゃやっていられないということで、少なくともポジティブなリターンを出している債券にかなりお金が出ていったのが見てとれると思います。
これが徐々に逆流し始めているのが年初来の動きであるということで、アメリカの金利も上がり始めました。だんだんECBのノーマライゼーションの動きも出てきましたということで、トレジャリーとブンズの金利がともに足並みをそろえて徐々に上がり始めていく中で、今までアメリカの債券を買っていたユーロ圏の投資家も、徐々に彼らであってもホームバイアスがありますので、それなりのリターンが得られるのだったらブンズに戻ろうかということで戻っているということで、一種、ドルの下落みたいなものも含めて、いろいろ起きていた、ユーロ高が起きていたというのが、この構図なのではないかと思っております。
という意味では、今後の年の後半にECB、まずQEの停止。それから、利上げは来年以降の話だと思いますけれども、正常化していったときの、こういうグローバルな資本フローを含めての反動というのはそれなりに大きいのかなと思っております。
最後に、きょうのお話を総括させていただきますと、アメリカの長期金利について、今、上昇はしているのですけれども、その上昇度合いは今後も極めてゆっくりしたものになるかなと思っております。
1つは、冒頭に申し上げたファンダメンタルズ的な成長とかインフレという意味で、急加速は今のところ弊社としては考えていないということであります。
それから、グローバルなアメリカ国債に対する需給という意味でも、確かに中央銀行による買い入れによる押さえ込み効果は、バランスシート調整で徐々に小さくはなっていきます。
それから、民間の需要というのも、金融規制がきつい中でレバレッジみたいなもので拡大する余地も余りないと思っております。
一方で、外準みたいな需要というのは、特に新興国とかを中心に引き続き続いてくると思いますし、こういう債券の需給のバランスの調整というのは余り急に起きるものではなくて、緩やかにしか起きないという意味で、マクロの意味でも、グローバルな債券需給の取引フローという意味でも、今後、確かに緩やかにはアメリカ金利は上がっていきますけれども、そんなに慌てていくようなものではない。特に、アメリカのFEDがビハインド・ザ・カーブにならないという意味では、この前提が崩れない限り、余り大きくサプライズはないのではないかと思っております。
ちょっと雑駁なお話で、日本についてどういうインプリケーションがというところがなかなか知恵がなくて申しわけなかったのですけれども、とりあえず私の御説明はここで終えさせていただきます。
- ○植田委員長
- ありがとうございました。
それでは、御質問、御意見、どうぞ。
- ○小黒委員
- 済みません、先に質問させていただきます。全体を通して少しまとめというか、方向性というか、このプレゼンからうかがえる含意を少しお伺いしたいのですけれども、よろしいでしょうか。
なぜかと申しますと、16ページ目のスライドで、銀行債とかエージェンシー債が急減して、投資可能な債券が不足している。金利低下をもたらしたのではないかという文章がありますけれども、どちらかというと、トーンとしては、RBC、リアル・ビジネス・サイクルみたいな形で実体経済の動きがあって、基本的には金融政策の効果は限られているので、世界的に見るとそちら側のほうの影響を受けているのだという話なのか。
あるいは、もう一つ、金融政策で見たら、短期の部分と長期の部分の金利の誘導があった場合に、貸し出しをふやすために、本来であれば、短期金利を少し低目にしておいて長期を引き上げて、スプレッドというか、長期金利と短期金利の差をつくってあげれば、銀行も利鞘がれて貸し出ししやすくなるという形で、経済を刺激する効果というのはあると思うのです。でも、その機能がうまく働いていない。
本来であれば投資先があるのにもかかわらず、そういう状況じゃないのか、あるいは投資先がないのか、という議論もありますが、みんなゼロ金利になっているから、長期金利も短期金利もゼロに張りついてしまっており、銀行は融資をしても利鞘がとれずに稼げないわけです。
なので、長期金利が上がっていくと、日本もそうですけれども、利鞘が取れて銀行とかもリスクをとって投資できるので、経済成長もそれでブーストされていくというシナリオなのか。どちら側のスタンスで見ればいいのかというのをちょっと教えていただけないでしょうか。
- ○長井代表
- 今、先生から御指摘いただいて、今後のアメリカの長期金利の先行きで言い忘れた重要な項目が1個あるなと思います。
それは、今、御指摘のスライド16で、金利が下がったときにはインベスタブルな債券の供給が減ったからと申し上げたのですけれども、今後を見通すと、このすごく減ってきた金融債というのがこれから結構出てくるなと弊社は思っておりまして、特に欧州の金融機関ですね。ごらんのとおり、ユーロ危機とかいろいろなものでかなりバランスシートを小さくして、邦銀が残ったものをいただいたりしていたのですけれども、そろそろ欧州のほうも銀行のバランスシートが戻ってきました。貸出もだんだん伸びたりしてきていて、かなり元気になってきて、彼らはもう少し金融債をこれから出していくだろうなと思っております。
そういった意味で、それの供給が今後出ていくというのも、緩やかに長期金利がグローバルに上がっていくという一つの要因だなと思っております。そういうふうに欧州の金融債がなぜ出て行くかというと、先生、御指摘のように、景気のサイクル的にある程度貸し出し需要が出てきていて、それが債券の発行の増加と長期金利の増加という形で、きょうの私の債券需給の御説明につながってきていると理解していただきたいと思います。
イールドカーブの形で金融仲介機能がどのぐらい強まるかというのは、今、日本のコンテクストで非常に重要だとは思うのですけれども、きょうのこのプレゼンで私が申し上げたかったのは、特にアメリカの金利については、そういった意味で余り人為的に長期金利がどこにとめられていてということではなくて、市場がかなりナチュラルに形成して、このイールドカーブの傾きが出てきているのだろうなと思っています。
そういった意味では、長期金利も市場の見方にかなり沿ってできているので、それをFEDとかが改めてもっと立ててみようとか寝かしてみようみたいなことは多分なさらずに、そこは市場に任せながら、伝統的な短期金利の操作という世界に戻っていきたいなとしているというところだと思います。
そういった意味で、さっきのタームプレミアムの潰れ方でお示ししましたように、欧州と日本においては、長期金利はある程度人為的に押し下げて、今、金融緩和をやろうと思っているので、そこをどういうペースで戻していくかというコンテクストでは、先生、御指摘になったような、スロープでどのぐらい金融仲介機能が生きるのか死ぬのかという話を真剣にやっていかなければいけないとは思っていて、そこは今のところ、日本銀行は金融仲介機能はまだ損なわれていないというポジションだとは思っております。
- ○植田委員長
- 玉木委員。
- ○玉木委員
- 主に2つ質問がございまして、3ページの名目GDPの動きで10年債金利は説明できてしまうという長期のグラフが60年間にわたるグラフになってございますけれども、このグレーのModel residualというものがグラフの左半分のほうでは上も下も非常に大きくなっていて、右半分が非常に小さくなっていますね。これはなぜかというところが質問なのですけれどもね。
1つは、左側のほうは非常にインフレが激しい時期であったり、あるいは真ん中辺、86年の少し左あたりは金利が非常に上がっています。これは、レーガン政権の時代のボルカー金融政策とかインフレに絡んだものがたくさんあった。それが右のほうに来るとインフレ率も収れんしてくるものだから、このグレーのものもだんだん縮んでくるのだという、非常にリアルなといいますか、ファンダメンタルな要因によっていると考えたほうがいいのか。それとも、特にこのグラフの一番右のほうは、金融政策でも抑圧しているといいますか、押し潰しているからだというところ、どっちのイメージをとったらいいのかということが1つ質問でございます。
もう一つは、御指摘の中にインベスタブル・アセットという表現が何回か出てきたと思うのですけれども、これはこの委員会で金利などについて議論する一つの目的は、年金積立金の運用利回りが対賃金でどれぐらいのスプレッドがとれるだろうかというところを考えなければいけないからだと思うのですけれども、インベスタブル・アセットが不足してくると、インベスタブルなものを求めている積立金を持っている日本政府とか、大きな機関投資家にとってみると、いわば不利な状況になってくるわけです。
それが恐らく、きょうの御指摘を伺っていても、過去5年や10年はもう続いていた話だろうと思うのですけれども、他方で過去10年ぐらいの我が国の積立金の運用利回りを見ると、対賃金スプレッドはかなり高いものに実際なってございます。これは、今後、金融政策が日本でも巻き戻しとか出口とかになっていくかもしれないわけですけれどもね。
そのときに、きょうのお話を伺っていると、インベスタブル・アセットが少なくて、サーチ・フォー・イールドみたいなものが起きるわけですね。いい資産をみんなが追いかけるということで、結局、金融抑圧のようなことがやりやすいといいますか、長期金利を人為的にでも抑えやすいような環境があるとして、そうすると、運用する側にとっては不利ですね。
だけれども、そういう状況が過去5年とか10年、続いている割には、賃金は上回ったようなスプレッドがとれている。200ベーシス以上上回るようなものがとれているということになるわけでございまして、これはどうしたのだろうか。運用の利回りが高いのか、あるいは賃金が低いのか、どっちかわからないですけれども、その辺について何か御示唆いただければと思います。
- ○長井代表
- 最初の御質問で、歴史的なグラフですね。これは、基本的に成長のトレンドと物価のトレンドで10年債をどのぐらい説明できるかで、その残渣ということがこのグレーの波みたいになっているところであります。そういう意味では、ファンダメンタルで説明し切れない残差ということで、ここは基本的に上に下にランダムに動けば動くほど、この推計がある程度もっともらしいと私は思っております。そういった意味で、特に右のほうに行けば行くほどランダムに見えているので、結構フィットしているなと申し上げているのはそういうことであります。
もっと歴史的に長く見て、この幅が大きいねというのは御指摘のとおりで、私もいろいろ考えたのですけれども、正解じゃないかもしれないですけれども、私の推測は、要はファンダメンタルズどおりに金利が動いていないということなので、それは一種、金融の規制というものが戦後かなりいろいろあって、今みたいにファンダメンタルズをビビッドに動かして長期金利が動けるような金融環境になったというのは、80年代、90年代以降の話なのであろうということです。
それ以前については、アコードじゃないですけれども、いろいろな歴史があった中で、この残差というものが大きくもなるし、あるいは一方向にずっと出続けたりしているという意味で、このインフレと成長率のトレンドで説明しようとしてもフィットが悪かったという時代だと思っております。
2番目の御質問は、もっと深遠で難しい御質問で、賃金スプレッドという意味では、ここ5年間とかの話であれば、まさに私が話すまでもないですけれども、ベアを含めて賃金の上昇が低かったということでありまして、それについては、途中でフィリップスカーブの傾きとか、そういったところでいろいろリストアップした要因というものがグローバルに働いているのだろうなということに加えて、日本固有の問題としては、そう言う識者の方がいっぱいいらっしゃいますけれども、私は特に正規雇用の方のベアが弱いということは日本固有の雇用システムで、長期雇用の安定の代償に低賃金を甘受しているという、一種合理的な選択がなされてきた結果であると思っております。
そういった意味で、賃金の安定が今後も続くし、したがって、2%になかなかいかないというのは、この雇用システム自身を変えなければいけない。ただ、雇用システム自身、ただ企業の一存では決められなくて、まさに御議論いただいている年金制度も含めて、国の社会保障制度と一種補完性のある一部でありますので、税制も含めて抜本的な改革をしないと、この終身雇用システムはなかなか変わらないだろうなと考えると、ベアも上がらないし、物価も上がらないですねということを、弊社の中で日本担当エコノミストとして私も情報発信しております。
あと、インベスタブル・アセットという意味では、こと日本の年金の運用という意味では、釈迦に説法でございますけれども、きょう御説明したインベスタブル・アセットはグローバルなエマージングを含めて、いろいろな投資機会、もうちょっと目を広げるとインベスタブルなものはありますけれども、それに対して、特に為替とのヘッジとか、そういった制約、あるいはどの程度の投資ホライズンで考えるのかと考えられることで、かなりインベスタブル・アセットのユニバースも広がりますし、そういったことをまさに御検討されていると思うのです。
そこのところについて、為替の呪縛はなかなか大きいのですけれども、為替も10年たてば大体もとに戻っているなと考えると、投資ホライズンをもう少し柔軟にするとか、そういった形でインベスタブル・アセットのユニバースをふやすとか、そういうこともあり得るのかなと素人ながらには考えております。
- ○植田委員長
- どうぞ。
- ○米澤委員
- 大変興味深い話、どうもありがとうございます。
我々の今後の作業とのかかわり合いで、ちょっと教えていただきたいのですけれども、一番最初の3ページは、今、いろいろ議論が出ましたけれども、要は経済成長とインフレとでもって長期金利がかなりうまく説明できるということですね。そうしますと、今の低金利というのは、マクロ的に見れば経済成長が主要先進国で非常に低くなっているので、こうやってインフレも低くなっているので、説明できる。
他方、我々のところでは、長期金利みたいなものを企業の利潤率、ROAとかROEでもって説明しようということも今、検討されているわけですけれども、それらは経済成長が下がる中、各国、かなり上がってきているのです。日本もROEとかROAが上がってきていますので。何を聞きたいかというと、長期金利の今後の動向を知る際には、ROAで見ていく限りは上がっていくような感じがしますし、経済成長率で見ていきますと大して上がらないという見込みがあるわけですけれども、その場合にはどちらのほうが適切とお考えでしょうかということです。
1つは、なぜ経済成長率が実質金利に影響を与えているのか、もう少し裏でどういうメカニズムがあるのか。リアル・ビジネス・サイクルみたいな話になるのですが、その辺のところの多少ミクロ的な要素について教えていただきたいと思います。
- ○長井代表
- 大変難しい御質問で、私もどうお答えしていいのか、むしろ先生方に御意見をお聞きしたい感じですけれども、例えばROAとか、そういう形で企業の利潤が上がっているというのは、逆にある程度成長してパイが上がっても、企業の取り分が上がっていて、労働分配率といったところが余り上がっていないという、さっきのフィリップスカーブのところで申し上げたようなことも起きているのかなと思っています。
そのときに、同じような成長でも、日本で起きていることは多分グローバルにも起きていると思うのですけれども、パイの取り分できちんとそれが労働のほうに分配されず、それが消費を通じて、また次の需要につながってという好循環がうまく働かなくなっているというのが、今、起きていることなのかなと思っています。
そういうものがきょうの話にどういうふうにつながるかということですけれども、もしかしたらと、話ながら考えているのであれですけれども、投資と貯蓄のバランスというところに少しかかわってくるのかなと思いまして、企業とかの貯蓄というのはどんどんたまっていってしまって投資をしていないということ。
あるいは、労働分配率は下がりつつも、一方で家計は将来の心配もあるし、いろいろな人口動態もあって貯蓄率はそんなに落ちないというところで、さっき申し上げたような労働分配率の低下、あるいはその裏にある企業のお金のため込みみたいなものが、こういう投資と貯蓄のバランスみたいな形で経済に影響を与えているという、ミクロじゃないですけれども、ちょっとイメージを持っております。必ずしも十分なお答えではなく申し訳ございません。
- ○植田委員長
- それでは、よろしければ、せっかくですので、私からも一、二。
アメリカの国債の需給のところで、FEDが占めた割合はそれほど大きくないというのが一つのお話のポイントだったと思うのですが、それはそうだとしまして、お話にあったかどうか、ちょっとあれですが、今後、予想されますアメリカの財政赤字の拡大ですね。これは、量的に大まかにある程度のものではないかと思うのですが、そこのあたりをどう思われているかという点と。
それ以外のところについてですが、例えば11ページに10年債のリスクプレミアムの推計のグラフがありますけれども、これは恐らくニューヨークFEDの推計を使われているのだと思うのですけれども、これで歴史的に見ますと、左から右に赤いグラフを見ると、ある意味異常に低いところにいるわけですね。リスクプレミアムがゼロか若干マイナスぐらいのところ。長期の平均で見れば、ここから100とか150ベーシスぐらい上がっても不思議がないぐらいの現状だと思いますし。
それから、若干関連して、14ページに民間のフィックスド・インカムへの資金フローの動きがグラフにされていますが、これを見ると、運用資産の成長率の増減がすごく需給にきいているというよりは、運用資産の中のフィックスド・インカムに行く割合の変動のところが数年単位では大きく動いているという姿に見えますね。2014年、15年くらいから二、三年間、そこがすごく引っ張って債券に対する需要がふえて、さっきのタームプレミアムの低下にもつながっていると思うのですが、こういうふうに動いているということは、逆に青い線が下のほうにマイナスに出ても不思議はないわけです。
その辺、先ほどは当面、金利が急上昇することはないとおっしゃったのですが、そう簡単に結論づけていいのかなという気も、ちょっと漠然としていますが、しないでもないというあたりが気になりました。
- ○長井代表
- ありがとうございます。
ちょうど開いていただいた14ページからいくと、グリーンの線自身はフィックスド・インカムのポートフォリオの伸びということなので、この間、金利自身は御案内のとおり、もう少したらたらと低位に下がっていて安定していたということだと思います。その中で、おっしゃるとおり、かなりリバランス的に債券に行ったり戻ったりというのが起きていたということではあると思っております。ただ、それで金利が上がったり下がったりしたのかなというのは、またちょっと違う話なのかなと思っています。
さっき時間がなくて申し上げられなかったのですが、もう一つ、これで申し上げたかったのは、QEは債券のデュレーションリスクを全部奪い去ってしまって、リスクアセットにどんどんポートフォリオ・リバランスを促すのだということを日銀も言っていますし、FEDも言っているのですけれども、フィックスド・インカムからもっとリスキー・アセットにみんな移っていったわけでもないのですよということを、この証左として1つ申し上げたくて、局面によって出たり入ったりしていたということが言えると思っています。
民間のポートフォリオ、アメリカですけれども、フィックスド・インカムのシェアはほとんどこの間、ずっと変わっていなくて、QEとかで債券とリスキー・アセットの間でもっとポートフォリオ・リバランスをというかけ声の割には、そのシェアも変わっていなかったねということは、グラフはないのですけれども、1つ事実として申し上げたいなと思います。
それから、2番目で、最初の御質問かな。これからアメリカが財政赤字とかが続いていったときのインパクト如何ということですけれども、その点については我々もいろいろ心配はしております。この双子の赤字みたいなものが起きたときに、それで金利がいつも同じように上がったり下がったりしているかというと、そんなに相関が必ずしも強くない。逆に何が起きているかというと、結局、財政あるいは経常収支の双子の赤字を外にファイナンスしてもらわないといけないので、そういった意味で、みんなが納得するリターンをアメリカは提供し続けなければいけないということだと思います。
そのリターンの提供の仕方というのは2つあって、1つは、金利ということだと思うのですけれども、あとは為替。特に、ex anteで見て為替がどっちに動くかみたいなことが重要で、そういった意味では、今まで双子の赤字とむしろ連関性が強いのはドル安の進行がかなり起きていて、弊社としてこれから少し心配だねという話をしています。足元、こんなに円安になって、ドル高になっているので、何を言っているのだと思われるかもしれないですけれども、もう少し長い目で見たときに、ドルはまだ割高感があるなというのは、いろいろな識者の方もおっしゃっていることです。
そこで今、申し上げたような双子の赤字をファイナンスするためのex anteでのリターンというのを為替も含めて考えると、長期金利もある程度上がるかもしれませんけれども、むしろドル安のところでそのリターンを稼ぐような形でドル安が続くというリスクがあるのではないかということを私どもも考えております。
タームプレミアムについては、御指摘のとおりで、当面、FEDがビハインド・ザ・カーブにならないという意味では、低位が当面は続くだろうなと思いますけれども、タームプレミアム自身が、別にFEDの政策だけのサプライズで動いているわけではないので、今後、もう少し今までのゴルディロックスと余りにも心地よい状況が崩れていくと、いろいろな理由でタームプレミアムは上がり得るだろう。ある意味、タームプレミアムは御案内のとおり残差でございますので、そこのところは長期金利の足元で見ているような変動とともに、ちょっと上がってくるだろうなと思っております。
- ○植田委員長
- 玉木委員。
- ○玉木委員
- もう一点、質問させてください。
今、御議論にもありましたように、リスクプレミアムがどんどん下がっていっているというのは、これは実体経済あるいはインフレ率が安定の方向に向かっているからということを反映しているだろうと思いますけれども、日本あるいはヨーロッパの場合に、今の金融政策が市場で大きなウエートを持ってしまっていて、20ページの左側のグラフですけれども、青のユーロゾーンと、黄色というか、黄土色の日本がうんと上のほうに最近、数年間、いますね。
これは、もしかすると長期金利市場を殺してしまうといいますか、市場の機能が低下する中で、金利は非常に低いところで非常に少ないボラティリティのもとで推移させているということだとすると、これがやがてどこかで解除されるときには、物価とかの変動に伴うリスクプレミアムじゃなくて、中央銀行の金融政策が今までも未知なことをやっていたのだけれども、そこから出てくるともっと未知でございますので、そこから生ずるリスクプレミアムといったものの拡大が少し長い期間にわたって持続するようなことはあり得るのだろうかというのが、1つ、私の疑問でございます。
実は、きょうも最初の内閣府の方のプレゼンでも、今後の長期金利の上昇といったものを主にリアルな変数から導かれておられるのだろうと思います。当然、出口で市場がどう反応するか。もちろん入っているわけではないわけですけれども、これから5年ぐらいの中期的なビューを持つときに、出口において、別に出口に行ったからといって、急に期待インフレ率が上がっているとも思わないわけですね。そういうときに、リスクプレミアムというのは高水準を持続し得るのだろうかということについて、もしお考えがあれば伺いたいのですけれどもね。
- ○長井代表
- 日本銀行の政策を正常化するときというのは、大きなチャレンジがあって、今、JGB村という極めて限られたプレーヤーの中で、日本銀行が圧倒的な存在感を持って、ドント・ファイト・ザ・BOJという感じですね。だから、ほとんど借り入れしなくても、多分、金利は今のままで維持できると思うのですけれども、ある意味市場機能は働いていないのだと思います。
きょう、延々御説明したアメリカのトレジャリーは、それこそタームプレミアムとかインフレ期待とか需給とか、いろいろなもので情報をやりながら、市場はかなり機能している。そういう状態に本当に戻したいのであれば、戻した途端、今までやっていた無理を市場が突いてきますよということだと思っています。
私もこういう状況がJGB市場は長いのであれですけれども、例えば海外駐在でおりましたときに、ヘッジファンドの人とかがアベノミクスのときとかに株式市場にいっぱい買いに来ていたのですけれども、すごくアクティブなヘッジファンドの人でも、JGB市場はわからないから、おれ、怖いから入らないと言っていたのです。ウィドウメーカー、それがたまにありますけれども、それぐらい村の論理で動いていて、市場機能で判断する外人投資家は入ってこない。
ただ、JGB市場を将来、本当に正常化したいのであれば、そういう人たちも入ってくることが正常化だと思うので、そのときにさっきおっしゃったショックに対する体制も含めて、市場機能を回復するということと市場の安定というものを両立できるのかというのは、中期的な日本銀行にとっての大きなチャレンジだと思っております。
済みません、お答えになっていないかもしれませんが。
- ○植田委員長
- 小枝委員。
- ○小枝委員
- 債券の市場は、相関が高まっているとよく言われていると思うのですけれども、そういった視点でアメリカの金利が今後どうなっていくかというのはとても大事な視点だと思いますし、説明されていたグローバルな資金を通じてどうなっていくか、すごく大事なことだと思いました。
そこで、18ページの図を見ていたのですけれども、もし今後、ロングランでエマージングがもっと成長してきて、彼らの債券市場も発達してきて、介入とかしなくて、こういう持ち切りタイプで外需の需要が減って、このグラフのようにプライベートの需要がふえてくるというトレンドにあるのかなと御説明を伺って思ったのですけれども、そうすると、そのプライベートというのは裁定取引者的なものなのか、それとも年金みたいな持ち切りタイプの投資家なのかというタイプによって、需給が誘導、利回りに与える影響が全く変わってくるのかなと思いました。
そこで、その辺の今後の大きな動きというので、御洞察、お考えがあれば教えていただければと思います。
- ○長井代表
- ありがとうございます。
こういう新興国の個人の投資家とかが海外にも、まさに金融リテラシーもどんどんふやしながら徐々にふやしていくというのは起きているのかなと思っていて、それは中間層の台頭とか、日本に観光客の方がいっぱい来ていらっしゃるトレンドと同じように、ある程度投資する資産も余裕を持った都市に住んでいらっしゃる方はどんどんふえていて、そういった方々が最後はアメリカだねという形でお金がふえているのだろうなと思います。これ自身が、余り急にリスキーな投資になったり、そういうドラマチックな変化は私の想像力ではすぐに思いつかなくて。そういった意味では、緩やかにふえていって、特に信頼できるアメリカの国債に対する安定需要になるのかなと思っております。
- ○植田委員長
- ありがとうございます。
ほかによろしゅうございますか。あるいは、全体を通したような観点からの御意見でも結構ですが。
それでは、御説明いただいた方々、どうもありがとうございました。
おおむね時間となりましたので、きょうはこれまでとしたいと思います。次回について、事務局より御連絡ありますでしょうか。
- ○武藤数理課長
- 次回以降の日程につきましては、また改めて御連絡申し上げたいと思います。
- ○植田委員長
- それでは、皆さん、どうもありがとうございました。