平成30年度第1回個人サンプラーを活用した作業環境管理のための専門家検討会

労働基準局安全衛生部化学物質対策課環境改善室

日時

平成30年6月5日 10:00~12:00

場所

経済産業省別館231各省庁共用会議室

議題

(1)作業環境測定における個人サンプラーによる測定の導入について
(2)測定結果が良好な場合の合理的な作業環境管理のあり方について
(3)その他

議事

議事録
○寺島環境改善室長補佐 本日は、大変お忙しい中御参集いただきまして、ありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまから、平成30年度第1回個人サンプラーを活用した作業環境管理のための専門家検討会を開催いたします。
なお、本日は村田委員が御都合により御欠席となっております。また、今回から産業医科大学の宮内教授に御参加を頂いておりますので、御紹介いたします。
検討会の開催に当たりまして、当課課長の奥村より、本検討会で検討を進めております個人サンプラーを活用した測定に関して、一言御説明させていただきます。
○奥村化学物質対策課長 おはようございます。化学物質対策課長の奥村です。冒頭でまた御挨拶させていただきたいと思います。
今回の検討会は、通算で第4回目になります。今までの議論を踏まえて、事務局の方向性が必ずしも明確でなかったことから、いろいろ誤解を招いてしまったと感じておりまして、その反省を踏まえ、今回は事務局として大きな枠としての方針をお示ししており、それを踏まえての検討をお願いしたいと思っています。
この場で明確にしたいこととしては、事務局といたしましては、個人サンプラーによる測定をA測定、B測定の他に作業環境測定の手法の1つとして導入できないかということを御検討いただくというものでした。
このような考えに至る背景としては、個人サンプラーによる測定が、小型化ですとか、ノウハウ、ソフト上の整備といったことがありまして、技術的な制約がおおむねなくなり、行政として法的な手法として導入することが可能な時期になったのではないかということが1つです。もう1つは、もともと個人サンプラーによる測定は、労働者の呼吸域での空気を正確に測定することが可能ですので、手法そのものとしては個人ばく露の測定という面もありますが、A測定、B測定と同じように、法令に基づく作業環境測定というように位置付けて導入可能ではないかと考えられることです。
そのようなことを踏まえて、労働安全衛生上の更に別の背景としては、超低濃度での管理が必要な物質や溶接作業などでは、A測定、B測定と比較して個人サンプラー導入のメリットがあるということですので、これを法定の測定として導入することが急がれると私どもは考えております。
平成28年6月に施行された労働安全衛生法の化学物質のリスクアセスメントでは、個人サンプラーによる測定をばく露限界値と比較したものを事業主に奨励しております。こういったことが徐々に定着し始めていることからも、個人サンプラーによる導入というものが、改正安衛法の考え方を踏まえたものになっていると考えています。
現行の作業環境測定の個人サンプラーの関係については、本日お配りしている資料4-1に示しております。これをまた御議論いただきたいわけですけれども、内容についてはここでは言いませんが、こういったことで事務局の考え方を整理しております。これについて忌憚のない意見を頂き、今日の検討をしていただきたいと思い、冒頭御挨拶を申し上げました。以上、よろしくお願いいたします。
○寺島環境改善室長補佐 続いて、本日の議題と資料の確認を行いますので、お手元の資料を御覧ください。まず、1つづりで置いてありますのが、検討会の次第と配布資料です。資料一覧を御覧いただきながら御確認ください。1ページ資料4-1個人サンプラー測定と作業環境測定の関係、3ページ資料4-2前回検討会の主な意見、7ページ資料4-3今後の検討会運営方針、資料4-4具体的な検討内容、13ページに実証調査の結果ということで別紙1グラフを付けています。15ページの別紙2の実証調査結果の概要については第1回でもお配りしていますが、委員限りの資料とさせていただいています。
別冊は後ほどといたしまして、17ページ参考資料4-1、個人サンプラーの検討会の要綱と参集者名簿、21ページ参考資料4-2作業環境測定士の数と測定対象事業場数の推計、23ページ参考資料4-3有害業務の状況について、25ページ参考資料4-4現行の測定基準と管理濃度ということで、前回出している資料と同じです。資料4-5の管理濃度ですが、ppmでガス状物質の昇順表といった形になっています。33ページは、管理濃度(質量濃度)の昇順表となっています。35ページ参考資料4-7の管理濃度と許容濃度の比較表と参考資料4-8の参照条文は前回出した資料と同様です。
別冊として、橋本先生、宮内先生、明星先生から資料の御提出を頂いております。お手元にそれぞれ1つづりあると思いますので、御確認ください。資料の不足や落丁等がありましたら、事務局にお知らせいただきますようお願いいたします。委員の皆様のお席には、前回と同様に水色のファイルを用意しておりますので、必要に応じて御参照ください。なお、この資料はお持ち帰りにならないようにお願いいたします。
ここで、傍聴されている方にお伝えいたします。カメラ撮りはここまでとさせていただきますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。以降の議事進行については、明星座長にお願いいたします。
○明星座長 おはようございます。お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。
それでは、本日の議題に入ります。今日は、議事としては1番と2番ということで、事務局から資料の説明をお願いいたします。
○寺島環境改善室長補佐 1ページの資料4-1の個人サンプラー測定と作業環境測定の関係のペーパーを御覧ください。先ほど当課課長の奥村より説明がありましたが、今後の検討を進めるに当たり、土台になる部分に認識のずれがないようにということで、この場で整理したいと考えて準備したものです。タイトルに個人サンプラー測定と作業環境測定とありますが、作業環境測定は、安衛法第65条に基づく作業環境測定の現行のもののみならず、今後の定義に当てはまるものとして考えていこうということです。
1.個人サンプラーは呼吸域の作業場の空気を測定する道具であるということで、これを用いる測定の目的マル1にありますように、個人ばく露量の把握であれば「個人ばく露測定」になりますが、マル2労働者の作業をする環境中の気中濃度の把握であれば「作業環境測定」を行うことになる、こういった形で整理できると思われます。言い換えますと、測定の方法と得られるデータはどちらも同じものであり、それぞれのデータの用途が異なります。作業環境測定として行われる場合は、その結果は作業環境の改善、ひいては労働者の健康管理に用いられます。
3.測定・評価方法については、場すなわち作業環境として評価するための基準として何がふさわしいかの検討が必要ということです。注意書きとして、SEGや測定時間などの具体的な事項については、個人サンプラー導入の基本方針を取りまとめた後、NIOSH、EN規格、日本産業衛生学会のガイドラインなどを参考に検討できるのではないかということでまとめております。こういった考え方の下に進めていきたいということです。以上です。
○明星座長 資料4-1について、当たり前と言えば当たり前ですが、コメントはありますか。よろしいですか。
○橋本委員 私はコメントがありまして、付属の資料の所に意見をまとめております。
○明星座長 ありがとうございます。よろしければ、続けて資料4-2をお願いいたします。
○寺島環境改善室長補佐 3ページの資料4-2は前回検討会の主な意見ということですので、要約して説明いたします。前回の振り返りということですので、事実誤認等があれば後ほど御指摘いただければと思います。一番上の一般的事項ですが、個人サンプラーを導入するようなコンセプトが変わる状況のときには、同等以上の保証がある形にする必要があるということや、2ポツ目のように、個人サンプラー測定だけ完璧に近いものを目指そうというのは過大な要求をし過ぎなのではないかということ、現在の個人サンプラーの導入に当たり、そういったものを責任を持って担当できる人が本当にいるのだろうかということ、恣意的な運用を防ぐ必要あるのではないかという御意見がありました。
SEGの設定の部分ですが、全員に測定させるのは余りにも過大であるという意見や、SEGの設定には経験が必要であり、現在の状況ではどうなのかというお話。細分化は致し方ないのだけれども、義務とするにはどうなのかという御意見があった一方で、初回は全数サンプリングが必要なのであれば、やはりしていかなければならないのではないか、助走の期間、試行の期間だけでもそういった取組が必要ではないかとか、初回だけでも全員測るほうがよいのではないかという御指摘があったところです。
次ページは、交代作業についてです。個人のばく露という面では短時間だから大丈夫だが、もし交代なく継続した場合、問題になるという職場を認めていいのかどうかということで、その辺のみなし、外挿についての御指摘があったところです。
短時間測定の部分につきまして、短時間ばく露限界値がないものについてどのように取り扱うかということで、有毒でないということではなくて研究が少ないからなのであるから、STELがないものは測らないとするのは危険であるといった話がありました。仮にSTELを使うとすると、個人サンプラーで10分測ったとき15分間に換算するのかや、B測定を個人サンプラーで用いれば、基本的に現行の10分で評価できるのではないか、B測定の代わりに個人サンプラーを使えば現行よりも厳しい管理ができるようになるのではないかという御指摘があったところです。
5ページの低濃度で管理すべき物質についてですが、こちらは本日の議論の冒頭に入れておりますけれども、ベリリウムのように発散源との距離の僅かな違いで濃度が違ってきてしまう粉じんや金属のようなものは低濃度管理が必要なので、個人サンプラーを推奨せざるを得ないということであるとか、現在、技術的に可能なのだろうかという点で、インジウムについて15分の短時間ではどうかという御指摘があったところです。
サンプリング方法についても御議論がありましたが、省略いたします。評価区分について、現行の3区分で第一管理区分という場合、これを個人サンプラーに持ち込んだ場合にどういった評価になるのかということで、6区分になったほうがインセンティブを与えることができるのではないかという議論があった一方で、6区分にした場合、少し混乱を招くのではないかということや、インセンティブをセットにできないのであれば、現在6区分に分けることに意味があるのだろうかという御意見があったところです。
下のほうの測定結果の評価と設備改善の関係について御議論があったところですが、個人サンプラーを用いたときに8時間ばく露結果と短時間に問題がなければ改善を要しないというのは、AB測定にかかわらず「良し」としてしまうのは、かなり問題があるのではないか、短絡しすぎではないかという御意見が主にありました。呼吸用保護具の選択に使うであるとか、そういった御議論もあったところですが、原則としては、8時間ばく露でOKだからといって作業環境改善をしなくてよいとしてしまうのは、問題があるのではないかという御議論がありました。他方で、瞬間的なばく露作業等について全て、改善を義務にしたままにするのは疑問があるのではないかということで、その辺り、少し御議論があったということです。かなり省略しましたけれども、以上です。
○明星座長 これまでの議論を大体カバーしていると思いますが、何かありますか。よろしいですか。では、資料4-2もこれでよろしいということで、4-3にまいりましょうか。
○寺島環境改善室長補佐 7ページの個人サンプラー検討会、今後の検討会運営方針(事務局案)の資料について説明いたします。1.個人サンプラー導入の基本方針の整理です。個人サンプラーは個人ばく露測定ではなく、作業環境測定に入れ込むことについて、資料4-1でもお示ししたように、少し誤解を招く向きがあったのではないかと、今回、今後の方針について事務局からお示するのが妥当ということで示しております。1として基本方針の整理です。(1)作業環境測定の手法については、労働者保護の観点から技術の進歩に従って、法令に定める技術的事項を見直すことが必要です。このため労働者の呼吸域の空気を正確に測定可能で、かつ8時間通して作業場の測定・評価が可能な個人サンプラーによる測定を、将来的にはAB測定と同様に、並列で、安衛法令上全ての作業場に導入できるものとすることが望ましいとして、いつになるか分かりませんが、今後のそういう方針についてまず置いております。
(2)他方、現在、同測定を実施できる測定士の数は十分ではない。現行の数で足りるのか。このため全面的な導入のためには、一定の期間を設けて、個人サンプラーによる測定もできる、これはAB測定も個人サンプラーもという意味ですが、測定士の養成を推進する必要があるということです。(3)現行のAB測定に比較して、個人サンプラー導入による健康リスク低減効果が特に大きい、以下の作業に限定して先行導入することが望ましい。このときA測定かB測定か個人サンプラー測定かは、事業者が任意に選択できるものとする。(ア)ベリリウムなど管理濃度が超低濃度の物質を取り扱う作業場。(イ)溶接、吹き付け塗装など現行のAB測定では濃度が過小評価されることが明らかになっている作業場。(ウ)特定粉じん作業などのうち、局排の設置は困難と署長が認定した作業場。(エ)その他、何かあればという趣旨です。
(4)さらに、一定期間経過後、個人サンプラー測定ができる測定士養成の進捗状況と個人サンプラー測定を先行導入した結果などを改めて検討し、円滑な導入が期待できるとみなされた場合には、全ての作業場に対して導入を可能とすることが望ましい。(5)なお、現行のB測定に個人サンプラーをツールとして取り入れるための対応は先行して行うことも可能。
2として本検討会の運営方針です。以上のような基本方針を基に進め方について書いています。2019年年央までに8~10回程度、開催予定です。(1)場の改善につなげるための評価方法、人材の育成など、導入に伴う課題などを様々な観点から予測し、課題について慎重に分析・検討を行います。(2)課題の解決に向けた方策、測定・評価基準、測定士の要件、測定士の育成手法(講習内容、講師養成、教材開発等)、それから育成に係る国の支援のあり方、事業者の理解増進方策などについて具体的に検討する、としています。
3としてスケジュール(イメージ)です。今年の10月頃、個人サンプラー検討の基本方針を1次報告書として取りまとめ・発表する。10月以降、検討会で測定・評価基準、測定士養成方針などの原案を作成します。2019年年央、同原案を2次報告書として取りまとめ・発表。この時点で検討会は一旦解散したいと考えております。2019年、委託等ということで形式はまだ確定ではありませんが、測定士養成テキストの作成や講師養成研修の実施。2019年以降に、行政で第1次関係省令等の改正作業(先行導入部分)としています。同時に、外部の測定士養成研修をスタートさせる。2年後に、改正省令の施行(先行導入スタート)としています。それ以降、少し状況を見つつ検討会の再編開催、全面導入の可否などの検討を考えております。事務局の方針については以上です。
○明星座長 はい、ありがとうございます。
○寺島環境改善室長補佐 続きまして、議論に入る前に各委員から資料の御提出を頂いておりますので、順次御説明をお願いしたいと思います。初めに橋本先生、それから次に、宮内先生の順でよろしいでしょうか。それでは、橋本先生御説明をお願いいたします。
○橋本委員 資料を御覧ください。最初の1、2ページは、資料4-1の個人サンプラー測定と作業環境測定の関係に関しての意見です。先ほど御説明いただいたように、資料4-1の1、2、3について、まず、1の個人サンプラー測定は何を測っているかですが、マル1とマル2の2つあると思います。個人ばく露量と労働者の作業をする環境(呼吸域)、そこの気中濃度です。先ほどの資料はこのマル2だけが書いてあったのですが、確かに連続的に呼吸域の場所の濃度を測っているけれども、でもその空気はおのずと肺に、経気道に入ってきますので、個人ばく露量も同時に測っており、これは分けることができないと考えます。
測定の直接の目的も、今のものに応じて2つの見方ができると思っています。1つは個人ばく露量の適否の評価、これは体内に入るという前提でばく露限界値を基準にして判断すればそうなります。もう1つは、呼吸域の空気の気中濃度の適否です。基準値として仮に「呼吸域濃度の基準値」というものがあり、これを管理濃度とするとするならばそれでもいいのですが、そういう場の基準値を用いるのだったらそのようになると思います。ただ、3番目の所で、「データの用途」という言葉がありますが、それについては次のように考えます。
測定の方法にかかわらず、その用途は同じだと思います。測定にもとづく対策は、作業環境管理→作業管理→健康管理、プラス教育とか総括管理の順であると。これは国内外どこの教科書にも書いてあるし、内外、それから厚労省のリスクアセスメント指針にも、気中濃度とばく露限界値を比較するのが適しているという言葉があり、その対策としてはこの順序が書かれています。今も国内のある教科書とか書籍に、作業環境測定を行ったときは「作業環境管理」を行う、個人ばく露測定を行ったときは呼吸要保護具を含めた「作業管理」を行う、又は「健康管理を行う」という表現がありますが、これは明らかに誤りだと思います。この表現は昔から言われており、一部そのように理解されている方もいると思うのですが、例えば海外で個人ばく露測定は広く行われております。そこで、仮にその対策として作業管理とか健康管理だけ行われていたら、まともな管理ができるはずがありません。私はその外資系企業にもおりましたし、海外の大学院でもこの分野を勉強しましたけれども、当然のことながらこの対策の順番というのはどこへ行っても同じです。
2ページですが、以上をまとめて私の意見としてはこのように考えます。個人サンプラー測定は確かに個人ばく露量、および作業をする環境の気中濃度を測っていると、どちらも見ることができると思います。ただ、本検討会としては、マル1の個人ばく露量の測定と解釈することが適切ではないかと思います。1つは、最終的には労働者の健康確保が目的なので、測定結果がそのまま健康に影響するのであるというように解釈したほうが素直であって、誰にも受け入れやすいと思います。それから、これまでの本検討会の場では基準値にばく露限界値を用いる、ただし数値自体は管理濃度の数字を用いても良いかもしれないが、それをばく露限界値と解釈して用いる、という議論が多かったということ。それから、次が大事なのですけれども、測定の結果が健康に直接関わるという解釈をしたほうが、労働者とか事業主に対してその訴える力が大きくて、より積極的な改善に結び付くとか、あるいは自発的な管理を促し得るという意味で、これは個人サンプラー測定を導入する意義とか価値の大事なところだと思います。あとは世界的には専ら個人ばく露量のほうで解釈されており、日本の企業がアジア地域等に出て行ったときに、作業環境測定を実行しようとすると、どうして場を測るのか、個人ばく露でないのかという、そこのところでやりにくいという意見を結構聞いたことがあります。またアジアの諸国も日本のその方法については注目していると思いますので、こういうところで世界的に行われているような解釈が好ましいのではないかと思います。
ただ、一つの注意点として先に述べたように、個人サンプラー測定を用いた場合は作業管理を優先するというような誤解が一部ありますので、そうではなくて、作業環境管理が優先であるという点を、特に強調するような教育や周知などに、十分気を付ける必要があると思います。以上のようにばく露を測定していると解釈したとしても、同時に環境濃度も測定しているのだから、65条の枠内で個人サンプラー測定を定めることは特に問題ないとは思っております。
あとは、各論に入っていきますので。
○明星座長 各論に入る前に個人ばく露量だとおっしゃるけれど、保護具をしている場合はどうなるのですか。ほとんどのケースでは例えばマスクをしろとか、むしろ強制されているわけではないですか。マスクをしていればそれは個人ばく露量ではないでしょう。襟元の濃度が個人ばく露量ではない。だからここにあるのは、あくまでもここまできている空気の濃度であって、ばく露量ではない。
○橋本委員 いや、そうではないです。マスクの防護係数をどのように利用するかという話も今まで出たと思うのですけれども、今のここで測っているものについては、この場の濃度とも言えるし、体内に入る濃度とも言える、これは先ほど述べたとおりです。
○明星座長 でも、マスクをすれば入らないでしょう。
○橋本委員 マスクには防護係数があって、例えば半面マスクでは、防護係数は10分の1で、10分の1は漏れてその呼吸器に入るということになっています。ですからそれは呼吸域の濃度を測って、その防護係数10分の1を勘案して、それで大丈夫であったら半面マスクを付ける。それで駄目だったら例えば全面マスクとか別のものを付けることになるのです。
○明星座長 言いたいのは分かります、そのとおりですけれども、だからそれは最終的な個人ばく露濃度ではないでしょう。ここにあるものはやはりここの濃度であって、それを測っているという最初の資料4-1のほうが私は妥当だと思います。それ以上でも、それ以下でもないと。そういう議論ではないかな。いや、これは私の意見で、橋本先生の意見は橋本先生の意見としていいので、私はそう思いますということです。
○橋本委員 今のを解釈すると、防護係数が10分の1であれば、このマスクの外の濃度を測っているのですけれども、10分の1は体内に入っていると想定する、そういうばく露量とは考えられますね。
○明星座長 マスクによっては1万分の1にもできます。
○橋本委員 もちろんできます。
○明星座長 だからそれはばく露濃度ではやはりないと思います。そのときの全体が、システムの結果としてばく露するわけであって、だからここでそこまで言うとあれなので、まず、個人サンプラーの測定は襟元の辺りのBreathing Zoneの濃度を測っているということで、資料4-1はそうだなと思いました。それ以上の深い読みをするといろいろな意見が出てくるので、別に個人サンプラーを使うことに全然異論はないけれども、その解釈は先生も違うし、私も違うということ。ただ、解釈の議論をここでやることがこの会の目的でもないので、ここにあるとおり、ここの濃度を測ったら測っただけという、それだけです。それをどう使うかというのは、おっしゃるとおり最初の4-1に書いてあるとおり、使い道として最終的にはこれがばく露の量を推定できるかもしれないなとも言えるし、どういう対策をしようかなということにも使える。とにかく測ったら測っただけの濃度、以上でもないし以下でもないと私は言っているわけで、4-1はそうだと言えばそうだということです。
○橋本委員 場を測っているのか、ばく露を測っているのかという点はどうでしょうか。
○明星座長 そういうことではなくて、ここの空気を測っているだけでのことではないのですか。
○橋本委員 いいえ。世界的に言えば、体内に入るばく露量を測っていると見られています。
○明星座長 では、きちんとマスクをしている人たちには、それは入らない。かなりみんな(マスクを)しろと言って指導をして、それをしてるわけだから。
○橋本委員 先生ももちろん御存じのとおり、マスクは防護係数に応じて10分の1とか50分の1は入るのですね。ただそれを勘案しているだけです。
○明星座長 だけどやはりやっているわけだから、それがここにあるものがまるっきり入っているわけではないし、逆に言うとどれぐらい入ったかは、例えば意見としてはバイオロジカルモニタリングをしなくては分からないとか、そういう意見も逆に出てくるわけです。要するに言いたいのは、ここで議論しているのは個人サンプラーの話で、何を測っているのかというと、胸元の濃度を測っているということで、それ以上でもそれ以下でもないと。それ以上の理解は先生は先生でいいし、別に否定はしないですけれども、私は私でまた違うという、それが言いたいので、ここの議論を進める意味で言えば、ここを測っているということを使いましょうと。
○橋本委員 私がここにこだわっているのは基準値に何を使うかということで、そこが大事だと思います。
○明星座長 基準値の話はまた後半に出てくるので、基準値の話は私も言いたいことがあるので。残りのSEG区分はどうですか、3、4ページ。お願いします。
○橋本委員 SEGについては、資料4-4の中に書いてあるのですが、そこで特に意見のあるところを少し述べさせていただきます。まず、SEGの扱いについて、SEGを設定する目的は御存じのとおり、作業者全員を測定して、一人一人にその結果に応じた対策をすればいいけれども、それでは余りに非効率なので、同じばく露を受けていると思われる人をグループにするということです。対策の効果も上げられるということです。
その設定の仕方ですが、測定者が事前調査をして、その結果を踏まえて同じ種類の作業者をSEGとすると普通に考えれば良いと思います。既存の測定士もいろいろ経験は積んでおりますので、その判断力に一定の信頼を置いていいのではないでしょうか。ただし、もちろん教育、周知を十分行うことは重要ですけれども、測定士が十分できるのではないかと。それからSEG設定の目的で全員を測定することは本末転倒だと思います。負担が大きすぎることと、例えば異なるSEGの測定結果が偶然一致するとか、同じSEGであってもそのバラツキというのがあり測定値が相当異なることがあるので、全員測定したとしてもなかなかその解釈は難しい。それよりも、業務上こういう仕事をする分担になっている係とか班とか、そういうものにまず基づいて、分けたほうがいいと思います。設定の正確さに余り厳密にこだわらなくてもいいと思います。これはこの次に述べます。構成の人数にも特に制限なくてもいいと思います。
測定の結果からあとでSEGの再設定というのは可能でして、例えばバラツキが大きい場合、これは平成25年の中災防の報告書に書いてありますけれども、ここではSEGの幾何標準偏差が3より大きかった場合は十分再確認してSEGの選択の誤りではないか、SEGを更に細分化できないか等を確認しなさいとなっています。ただ、測定結果自体が十分低ければそのままでよいこともあります。あるいは測定者の判断で再設定もできます。例えば測定結果がSEG内で2分されたときは、作業内容をもう一度妥当か確認する、あるいはSEG内の1人の測定結果が特に高い場合、こういうことは時々あるのですけれども、この場合は重要で、その1人について十分調べて、何か特異的なことをやってないかとか、偶発的な現象はなかったかとか、これは十分調べる必要があります。
次に、管理区分の決め方について、3区分という従来の考え方と、6区分ということも示させていただきました。3区分を基本として分かりやすくするというのもいいかとは思いますが、ただ追加的に、例えば「6区分」の方法を「参考」として示して、任意で使えるようにしたらどうかと思います。これは意欲のある測定者にはそのようにより詳しく判断したり、管理に強弱つけたりという目的で、活用してもらえると思います。
次に、短時間測定を評価する際の評価値と倍率というのが、本資料にも出てきますけれども、測定を複数回行った場合ですが、従来のB測定は最大値を使いますけれども、最大値ではなくて、算術平均値を使ってはどうかと思います。これはその最大値を使うと、サンプル数を増やせば増やすほど一見その最大値が大きくなって、サンプル数を増やすインセンティブにならない。逆に平均値であれば、より多数測定して、より正確さを競うというインセンティブになると思います。一点測定の場合はそもそもその期待値というのは平均値なので、最大値を使うと定義すると論理的に矛盾が生ずるということがあります。あとは評価値を基準値の何倍にするかですが、イとアを逆にしてありますけれども、まずSTEL等がないもの(イ)は、現行と同様の8時間値の1.5倍でいいかと思います。逆にSTELとか天井値があるもの(ア)は、その値そのものではちょっと大きいと思います。その2分の1を基準値、すなわち管理区分2と3の境界にするのがいいかと思います。その理由ですが、先ほどのSTEL等がない物質について仮のSTEL値を8時間値の3倍と見ることがあります。実際にACGIHの8時間値とSTELの比を見ると、2.5倍ぐらい、約3倍です。ということで3倍というものが出てきた意味もあるのですが、それからするとSTELの値それ自体を用いるのは、やや危険なほうに行ってしまうので、その半分がいいのではないかと思います。
次のページ、短時間測定を評価する際の評価値と倍率ですが、従来の3区分、例えば8時間値とその1.5倍を用いた3区分で基本はいいと思います。ただ、この下のような6区分を「参考」として、任意で使えるようにしてはどうかと考えます。これは、次のページには本来の6区分の正確な定義があるのですけれども、これを簡略化したものです。この簡略化の根拠は、測定値の算術平均値の3倍が95%値に相当するという推定、これは実際ほぼそういう比になるのですが、それを使っています。アはこのSTEL等がある物質ですが、これについては、STELそのものをここでは100%として表示していますけれども、その半分50%の所を管理区分2と3の境界にして、あと30%の所を管理区分1と2の境界にして、更には30%より下の部分を、1A、1B、1Cとする区分を提供してはどうかと思います。
次のSTEL等がないものについては、100の所が8時間の基準値で、それの1.5倍、150の所が管理区分2と3の境界ですけれども、更に100%の下の部分を、30%、10%と分けて、1A、1B、1Cとして、これを任意で使えるようにする。以上のように6区分とすると例えば短時間測定の結果についても、より細かく判断して対応に強弱をつけたい等に活用できると思います。私からの資料は以上です。
○明星座長 ありがとうございます。続けて。
○寺島環境改善室長補佐 宮内先生、お願いします。
○宮内委員 宮内のほうから資料の説明をさせていただきたいと思います。私、実は今年度から参加させていただいていますので、今まで既に議論が終わっているようなこともあると思います。その辺は勘弁いただきたいと思います。今回、お話の趣旨というのは、労働者の健康障害防止を推進するために新しい手法を取り入れると、これは非常に重要なことだと思っています。特にこういった個人ばく露のサンプラー等の手法というのは海外でも評価されていますし、是非、いい面を活用して更に障害防止に役立てばいいかなというのが私の中心的な考えです。
そのときに過去の資料を見てみますと、作業環境測定、これは現行で行われていますけれども、これと個人ばく露測定という手法、どちらがよいかという議論があったと思いますが、そうではなくて、どういうふうに使い分けていくのか、ここをきちんと議論したほうがいいのではないかという説明があったと思います。私は全くそのとおりだと思います。というのは、この2つの方法というのはそれぞれ一長一短がありまして、両方が補完をするような方法ではないか。これも既に表等で議論があったと思います。そうは言いましても、なかなか両方を一遍にやるというのは負担がかかってしまう。やり方も工夫が必要ですということで、専門家の先生たちの中で意見を頂いて考えていけばいいのかなと思っています。
ここで確認したいのですが、そもそも個人ばく露測定というのは、原則8時間の測定をして呼吸域の空気をサンプリングし、健康影響の可能性があるかないかを見ていくという趣旨があるわけです。もう1つ、場の測定というのは通常1時間以上で行われ、この時間のそこの作業場の主な空気環境が良いか悪いかを評価するということで、作業者の健康影響を防ぐという同じ目的で行われる方法だと思います。
もう1つ、私の経験上、作業環境測定が非常に重要だと思うのは、場の測定ですから、ある程度発散源の推定ができるということだと思っています。というのは、図面の上に例えば濃度をプロットしていくと、ちょうど濃度勾配図ができるのです。これを用いることによって、大まかにですけれども発散源の推定ができる。ここは非常に作業環境測定の特徴だと思います。なおかつB測定を行えば、それの証明ができますよということだと思います。ですから、そこを踏まえて今回、測定方法の選択案を提示させていただきました。これがパワーポイントで作った図ですが、ここの説明をさせていただきたいと思います。
今までの話合いの中でありました管理濃度が非常に低濃度の物質を取り扱う場合に、作業環境測定よりも個人ばく露測定を、手法として用いたほうがよろしいのではないかという議論があったと思います。私は、これに関しては両方を用いて測定し、悪いほうで評価するということがベストと思っています。というのは、化学物質の使用方法は非常に多様化していまして、たとえば雇用形態の他、高年齢労働者も増えていますし、男性、女性を問わず化学物質に対する業務も増えています。さらに物質によっては管理濃度等も非常に低くなり、強い毒性があることが分かってきていますので、今後も慎重に対応していくことが非常に重要になると思っています。そういうことを考えると、従来の定点のAB測定プラス個人ばく露測定を行って、悪いほうで評価するということが一番いいのかなと思っています。
もう1つ、定点のB測定で過少評価されてしまうような作業、具体的には研磨作業、吹き付け作業、溶接といった業務が挙がっていましたけれども、これに関してはB測定をきちんとやれば、ある程度解決するのではないかと思います。定点のB測定の代わりに例えば短時間のばく露測定を用い、それと従来の定点のA測定を行うことによって評価をしていくということも考えられますが、B測定については、まだまだ考慮する余地があるのかなと思っています。以前にも議論がありましたけれども、B測定を、例えば個人サンプラーを使って口元でサンプリングすることも別に問題ないわけです。若しくはいかに近づけるか、つまりサンプリングの所を口元に持っていくという工夫をすると、かなり正確なデータが取れるのではないかと思います。まず先にこういうことを教育若しくは推奨していくことも重要かなと思っています。
ただ、過去の議論の中で、高濃度の作業場に低頻度に立ち入る場合があり、これを非常に過大に評価してしまっているのではないかということがあったと思います。確かにそのとおりだと思います。ただし、1つ気になるのは、低頻度とか1回の作業時間が短いということが、本当にいつも一定なのか。どこでそういうことを判断するのか、確証はあるのかということを危惧します。ですから、管理区分が悪い状態、例えば第三管理区分になったときに続けてもう1回、4時間以上の個人ばく露測定をやってみて、この結果で判断する。もし、ここでばく露上、問題がないと、つまり第一管理区分相当であるならば、例えば第二管理区分として最終的に取り扱うという方法もあると思います。なぜ第二管理区分かというと、これは最終的に短時間であっても高濃度になっているというデータが出ているならば、発生源対策をきっちりやっていく。ここのところは非常に重要なのではないかと思っています。ですから、第二管理区分として、直ちにではないのですが、発生源をちゃんと見つけて、発生しないような工夫をしていくことが重要ではないかと思っています。よろしいでしょうか。以上です。
○明星座長 ありがとうございます。宮内先生は今回初めてですので、質問等、またあるかもしれません。最後にまとめてやりましょうか。どうぞ。
○寺島環境改善室長補佐 村田先生からコメントを頂いております。事務局のほうで読み上げさせていただきます。基本的には次の資料4-4を御覧になっての御意見かと思いますが、文章を読み上げさせていただきます。
1として先行導入する作業の検討。先行導入の意図をよく把握できないのですが、先行導入された作業場だけが今後も個人サンプラー測定の対象となる可能性もあるということでしょうか。そうであればきちんと考える必要があり、そうでなければ測定者の養成を待って、もって全面導入でよいかとも思います。
2として作業環境測定基準の検討。マル1SEG。SEGは個人ばく露濃度について層別化することにより設定される。そういうことであれば、これは単位作業場所の設定と同じ考え方であり、作業環境測定士にも理解されやすいはずです。ただ、多くの測定士は個人ばく露濃度に対する経験が少ないため層別化しようにも難しい。したがって、アの方法に近いですが、まず原則として労働者全員について個人サンプラーによる8時間測定を行う。その結果からSEGの設定に関する判断を行うことでよいと思います。
イにある同種の作業者という考え方が、恐らく実際には困難な場合が多いでしょう。1日中全く同じ作業を行う労働者が何人もそろっている現場は、私の知る限り多くはない。また、同じような作業をしていても個人ばく露濃度が異なることもよく経験します。まず全員について測定したデータを眺めてから、管理の対象となるグループを定めてもらうのがよいと思います。なお、既に個人ばく露測定を行っている作業場や、同じ環境で同じ作業を同時に行う複数の作業者がおり、個人ばく露濃度がほぼ変わらないと判断できれば、最初からSEGを設定できるとしてよいと思います。
マル2として測定時間についてです。アにあるように基本は8時間測定とするべきです。測定士の立会いに関して、そもそも現行において、いつ測定するかは測定士の裁量であり、そのため測定士は作業の全体を把握している必要があります。作業の内容などの事前の把握は当然なされますので、立会いが必ず必要とは言えないと思います。ただし、有害物の濃度については測定しなければ分からないことが多い。したがって、測定士の立会いにかかわらず基本として8時間測定を行い、そのデータを改善に役立てるのがよいと思います。
3の作業環境評価基準の検討。マル1測定結果の評価方法。SEG内で測定した人数が多ければAB測定と同様にできると思います。ただ、先ほども申し上げたとおりSEGに属する人数は通常少ないと考えます。そうすると、Mやσを求める統計処理も管理区分も現実的ではなく、単に許容濃度との比較で事足りると思います。マル2評価に用いる基準値。基本として産衛学会の許容濃度を用いるのがよいと思います。若しくは管理濃度は個人ばく露に対するものとは原則として違うので、個人サンプラーによる測定の評価基準値は、改めて健康障害防止措置検討会のような場所で検討、設定されることになると思います。以上です。
○明星座長 ありがとうございます。一応、お三方の御意見を頂きました。これに関してほかの委員の方々、何か御意見、コメント等ございますか。
○宮内委員 過去に個人ばく露測定をいろいろとやってきた経験の中でいつも悩んできたことです。全員測定をすることは非常にいいことだと思いますが、現実的に考えたときに、対象物質によってはポンプを複数台付ける。若しくは粉じん等であれば少し大きな測定機器を付けなければいけない。これが4時間若しくは8時間ということになると非常に作業者に負荷がかかってしまうのです。もともと海外で使用されるため製造された機械であれば、余り大きさも考慮されていないため、日本人にはなかなか合わないのかなということを随分考えました。作業者の体力の問題等も非常に重要になるかなと思っています。もちろん、安全上の問題もありますね。あとは本当にクリーンルームの中で持ち込めるのかとか、防爆の問題はどうなのかということもあるので、もし全員という考えを推進するのであれば、例外的なところも同時に考慮していく。若しくは、適切な測定機器を開発していくことをやっていかないと、現実的に全員8時間というのは、本当にすぐ導入できるのかなと危惧するところです。
○明星座長 ありがとうございます。どうぞ。
○小野委員 頂いた御意見は大変参考になりました。ありがとうございます。橋本先生からの御意見で3ページの2つ目の◆で、事前の作業場の調査結果を踏まえてということですが、これはどのぐらいの調査結果を想定なさっているのでしょうか。ただ見て歩くというか、そういうことで大体決めるということなのか。今の村田先生の御意見ですと、なるべくたくさんの方のばく露を測って、それからSEGを考えていくべきだという御意見もあったと思いますが、橋本先生はどのぐらいのことをお考えでしょうか。
○橋本委員 現状の作業環境測定の前の調査と、それほど変わらないかと思います。大事なのは職場の管理者の係長、班長さんなど、現場をよく知っている人に話を聞くということ、これが恐らく重要になると思います。ですから職制や組織がどうなっていて仕事の分担がどうなっているか。例えば、ある班があって同じ仕事を10人がしますといったときに、それは確かなのかといったところも基本は聞取り調査で十分に聞いて確認する。更には一応、現場も見る。そういうところぐらいを考えています。
○小野委員 分かりました。あと、3つ目のSEGの再設定という所、これは質問ではないのですが、要するにSEGというのは見方によっては、これまでの単位作業場所に相当するものと考えることもできるかと思います。要するに今までは作業を中心に見ていて、今回、多分、4-1の第1次導入の考え方ですと、そこの濃度を、取りあえず個人サンプラーで測ってみようという考え方もあるのかなと思うのです。ですから、単位作業場所に関しても設定を間違えるということは、これまでもなかったわけではないと思います。要するに、ここまで測って実はそうでなかったということが実際に起こっていたとすれば、次回、測るときには単位作業場所を変えるとか、作業が変われば変えるということがあったはずですので、それと同等と考えればSEGというのも、要するに考え方によっては、必要に応じて変更していくというのは当然のことと私は思います。
ですから、そこで、もちろん個人ばく露でやると、今までのように単位作業場所で統計計算をするだけの数が稼げないことがあるというのは、もちろんだと思いますけれども、そういう場合、nの少ないときにはどうするかということで、評価の仕方を変えることもあるのかなと思います。今までの考え方を解釈レベルで見ていくことができるといいのではないか。細かいところまではまだこの先でいいかと思いますが、考え方として、SEGを考えるというのと単位作業場所というのを余り離さないほうが、次に進んで行くときにいいのかなと思います。リスクアセスメントにも個人ばく露測定をしてということは書かれていますので、更に、もう一歩進んで測定したい方は個人ばく露を測って、それに対する対処をしていただくというのは、もちろん、よいことだと思います。それを今回の改正等を考えるときに、どこまで書き込むかというのは、また次の問題かと考えます。
○明星座長 ありがとうございます。ほか、特に皆さんから御意見、どうぞ。
○中野委員 個人サンプラーで測定した濃度は、場ではマスクをしないような環境で作業するという原則からすると、個人ばく露量と解釈してもいいと思います。もう一点、SEGというのが私は分かりにくいので、自分のイメージとすれば先ほどの小野委員の意見と一緒なのですが、同じ作業にいる人たちの集団あるいは移動していく集団、というイメージがSEGならば分かりやすい。現在の作業環境濃度測定での同作業とSEGとの比較があるとわかりやすいと思います。
あと、例えば同じ研磨作業をしている方の中でも、全員(3人)で測ってみると最高値の人と、あと2人の濃度がかなり乖離があることがあります。平均で評価するときに、その平均値と最高値との乖離があると、最大値に対しての評価もする必要があると思います。
それと、宮内委員のこのフローの流れを見ていると、第三管理区分のときには個人サンプラーで測るという流れかと理解したのです。6区分での2Bの所を測定しないことが、気になりました。
○明星座長 ありがとうございます。どうぞ。
○土屋委員 通算第4回ということで、従来の御意見を一通り拝見して今日の会議に臨んでいるのですが、今、諸先生方の御意見を伺っていると、またちょっと振り戻されているみたいな感じがするのです。事務局案のスタイルだと、AB測定プラス個人ばく露測定を、作業環境測定基準に入れ込んでいきたいという意思がはっきり示されていて、その導入の仕方について問題がないかどうかを、私たちがしっかり考えなければいけないというところで、よろしいのですね。違うのですか。
○西田環境改善室長 そのとおりです。法65条ですね、その中の作業環境測定基準に個人サンプラー測定を位置づけるということです。
○土屋委員 そうですね。明星先生と橋本先生の間に個人ばく露量の解釈の若干の差はあったと思いますが、少なくとも私は、個人ばく露測定と作業環境管理の場の管理の測定方法というのは、従来、違うものとして自分の中では理解していたつもりなのです。しかし、資料4-1をよくよく読み返すと、本来、65条の作業環境測定というのは割と広い範囲で定義付けられていて、今回の個人サンプラーを用いる測定も十分みなし得るというふうに理解すべきだと、私は自分の考え方を修正して、この第4回の検討会に臨んでいます。
そうなってくると、解決しなければならない問題というのは、先ほど幾つか提案もあったかと思いますが、どうやってプラスアルファの作業環境測定基準を入れ込むことができるか、そういう議論の方向性を示したほうがいいような気がするのです。私は勝手にAB測定のほかに、C測定というのを自分の頭の中で考えていて、個人サンプラーを使って従来のAB測定以外に、測定基準に入れることができる測定方法をC測定という位置付けにして、そのC測定が当てはまる作業を先行導入し基準改正をしていくところが、最初のステップと考えていいのではないかと思うのです。
そうすると、事務局からお示しいただいた3条件がありましたね。ベリリウムとか溶接作業のマンガンの問題、あるいは監督署の署長の特例許可の問題。そこの部分は過大評価になっているのか過小評価になっているのか、はっきりしませんけれども、そこの部分が、今のAB測定では十分正しい評価ができていない可能性が高いということであれば、これは速やかに改善しなければならないことなので、今、たくさんの議論の中でも、この3つについて私が言うC測定を、どうしたら先行導入できるかという議論に絞っていただくほうがいいような気がするのですが、いかがですか。
○明星座長 ありがとうございます。一応、コメントのない残りの委員の方も何か言ってください。
○山室委員 個人サンプラーを使った測定ですね。今回、作業環境管理に役立つものにするにはというところが、多分、命題だと思いますけれども、それとともに個人サンプラーを使った測定なのだから、作業管理にも健康管理にも使えるデータが得られると、そういうメリットがあるのだという考え方に基づいて、議論を進めていったらいいということを資料4-1から感じたところです。
○明星座長 ありがとうございます。どうぞ。
○藤間委員 先ほど村田委員の御意見の中に、先行して進めるところの部分と、今後、拡大する2次の改正部分のお話がありましたけれども、今、議論すべきは、余り狭いところに行かないほうがいいのかなという気もするのです。最終的な形を見据えた形で話をしたほうがいいのかなと思っていたのです。個別の話にいくのもいいでしょうけれども、もうちょっと最終形はどうあるべきかというところが見えたほうが、議論しやすいような気がいたします。
○明星座長 ありがとうございます。
○宮腰委員 私も今回、事務局案を先に見させていただき、この考え方は非常に分かりやすいなと思って、逆に言ったら自分の頭の中ではかなりすっきりしたつもりではいました。ただ、今、土屋委員から言われた考え方というのは素晴らしい考え方で、逆に言ったら、そっちのほうが、もうちょっと進めやすいのかなと個人的には納得できたという思いがあります。あと全員で作業環境の測定をするとなると、現実的には導入が難しいなという部分もすごく感じているところがあって、この先行という考え方は非常に素晴らしいし、いい考え方だと思いますし分かりやすいなと。ただ、この先行を進めるに当たって、全ての事業者が、それを導入できるかどうかというところまで本当に踏み込めるかというのは、これからの話なのかなと感じているところです。私のほうはそういった感じです。
○明星座長 ありがとうございます。大体、皆さんから一通り意見を頂きましたが、よろしいですか。どうぞ。
○奥村化学物質対策課長 村田委員からのコメントで、どうして先行するのかよく分からないという御指摘がございました。これについて事務局が説明する立場なのかなと思いましたので、今、それを説明してよろしいですか。この考え方ですが、溶接とかベリリウムなどのようなものはハイリスクな存在として、今あります。こういったものに個人サンプラーを導入すれば対応できるということが分かっている以上、それは、なるべく早くやりたいというのが事務局の一番基本的な考え方です。
他方、個人サンプラーの議論をしていく上で、皆さんから言っていただいて、確かだと思ったのは、それを正しく実施できる人は、今、どれだけいるのかということです。そのため養成がかなり重要で、正しいテキストと正しい講師がいて、正しく養成しなければいけない。これが一番、うまくいくかどうかのポイントにもなろうと思います。
また、今でもリスクアセスメントで個人サンプラーを使ってくださいと奨励していますが、なかなか普及しないのは、法定の半年に一度の測定義務の外でやるためです、このことが、どうしても問題です。まず法定の測定というふうに施行してしまわないと、あるいは施行するということが予告されていないと、養成もままならないのではないかというのが、行政の担当者としてのこれまでの経験を踏まえた考えです。全部を「よういどん」でやるのはまた時間が掛かってしまいますので、ハイリスクのところだけでも先行してできるようにする。しかも、それは両方、どちらでも選べる。A測定、B測定でもいいし、個人サンプラーでもいい。どちらでも選べるようにして緩やかに施行して、徐々に個人サンプラーができる測定士を増やしていきたい。これが世の中に定着していくようであれば、どんどん全体にも影響して変わってくるのではないかということがあって、このような2段階での施行を考えたということです。村田先生がいらっしゃらないので残念なのですが、そういうことにいたしました。
○明星座長 ありがとうございます。どうぞ。
○宮内委員 今のお話は非常によく理解できました。ただ、ちょっと私が危惧しているのは、どちらかを選ぶという前提で話が進んでいると思いますけれども、もう1つの考えとして、両方やって更に良くしていくという考えがあると思います。これは私の経験ですが、いろいろな情報を基に物事を判断していく。たとえば作業の仕方とか発生源等対策などの改善アプローチを、いろいろな測定を行うことにより同時に進める方が良い結果を生むと思います。ですから、できれば両方実施していただくというのもいいのではないかと思います。最初からどちらかというふうに限定してしまうのは、いかがかなと思っています。
それから作業環境測定の結果については、健診みたいな報告義務がない。これは監督署に対して間違いなく実施しましたという報告義務がないということで、今回、統計資料を見させていただきましたけれども、実施結果についてどうも分からないことが多いのです。もし今後、これをやるのであれば個人ばく露測定と作業環境測定、各々についての測定結果報告書みたいな様式を作って、きちっと報告してもらう。そういったものを少し集めて続けて議論していく方法もあるのではないかと思いました。
○明星座長 よろしいでしょうか。一通り委員の皆さんのお話がありました。まだ事務局から4というのがあるのですが、私も1つ資料を出させていただきましたので説明させていただきたいと思います。論点整理になっていないかもしれませんが、私自身が座長を引き受けたときに、こういう検討会であるという認識が必ずしも十分でなくて御迷惑をかけているのですが、これまでの議論を聞いていると、何人かの委員の意見と同じで、細かいところに入っていって、それが本当にそれでいいのかと思うことと、作業環境測定は基本的に作業環境測定基準に従った測定であるということは変わらないので、逆にそれに書き込めないような話は、裏の世界になります。私の資料は本当にこうなるというわけではないですが、測定基準の中に入れるとしたらどうなるのかを考えたものです。もう1つは、皆さんは測定基準をよく知っているとは思いますが、実際、どういう書き振りで書いてあるかということを少し勉強してみようということでみたものです。実は測定基準は例えば粉じんとか、それぞれに対して書いてありますけれども、その方法というのを読み替えるという形でA測定、B測定があります。第二条の一項から二項、こういう第一項の所に一、二、三、四と書いてある、こういう測定でやりますということで、私もちょっと誤解をしていたのですが、B測定というのは第一項の中の一つのパーツにすぎないので、このB測定をいじると第一項全体が歪んでくる可能性もあって、それはそれで、これまでの長い歴史が壊れることも恐れます。
ということで、次のページを見ていただくと、勝手に明星が第四項を作りました。これは別に土屋委員と口裏を合わせたわけではないのですが、「・・における」というのは表にするなり何なり、今で言うと先行して導入する何々というところにおける、例えばここで言うと粉じんですから溶接になるかもしれませんが、「溶接における粉じん作業においては第一項の規定にかかわらず、以下の方法で測定することができる」。これは決して私がいいと思っているわけではないのですが、こんな書き振りになって、その一は、例えば個人サンプラーを装着する作業者を選定する。これが先ほどのSEGの話で何人やるのとか、構内の全てかとか。単位作業場所というのは第一項に書いてあります。だから第一項に書いてあることを全く飛ばして、第四項で第一項の書きぶりは全く無視する言っても、多分、通らないと思います。ですから、単位作業場所は第一項と同じ単位作業場所になるとは思わないけれども、何か選定して範囲を決めないと決まらない。例えば工場から事務所へ行って、事務所に半分、工場に半分といったときに事務所を入れるのかとか、そういう問題は残るのですが、それは別としても、例えば今までのA単位作業場所、B単位作業場所、C単位作業場所をグルグル回って作業をしているという人は止められないので、そのたびに個人サンプラーを止めるわけにいかないから、例えば1階、2階、3階を行ったり来たりしている人ですが、それをまとめざるを得ないが、でも単位作業場所はどこかを規定しないと、多分、測定基準にはならないと思います。
その次は、サンプラーをどうするかということですが、先ほど中野委員が言われたように作業者によって違うということで、これは作業を見ていると分かります。例えばグラインダーの研磨とかをやっていると、最初は大量に自分に浴びるのです。当たり前ですけれども、そんなことにならないように体をひねるわけです。そうすると、胸元に付いているサンプラーに入って来なくなるので急に下がります。だから要領のいい人はちゃんとやるし、余り考えない人は浴びているということで。特に粉じんがそうですが、サンプラーを下向きにするか上向きにするかだけでも濃度は違うのです。それこそ欧米のサンプラーは、大体、正面に向くようになっているのですが、日本のサンプラーは肩に付ければ前に向きますけれども襟に付ければ下に向くのです。実はまだまだ検討課題はあるということで、このサンプラーをどうするかということも実は規定しないといけない。
同じように、作業が定常行われている時間でなくてもよい。これは別に私がよいと思っているわけではなくて、定常にならないでしょうという意味です。では、この書きぶりが後々通るのかという問題は別にあります。
一の測定における試料空気の採取時間は、作業開始から作業終了時までの継続した時間を基本とする。書き振りをそろえただけです。
四は測定法になります。これは例えば有機溶剤とか、そういうものはここの部分が書き変わるという書き振りで、逆に言うと、これぐらいしか測定基準の中には書いていない。だけど、この部分はかなり重いので、あるのは作業場所、人数、時間、この3つが納得いくものでないと測定基準としては全体としてバランスが取れないと思います。取れないとなると入れられないということで、先ほど土屋委員が言っておられたように、測定基準の結果としての方法というふうに持っていかないと、その方法が先にあって、これを測定基準に入れるということは無理があると思います。
同じように私の資料は評価基準もありまして、評価基準には今の管理区分の決め方、式も書いてあります。この場合は、決め方でやる。第一管理区分、第二管理区分、第三管理区分、管理濃度というのがあります。実を言うと、この範囲で見ると管理濃度の定義ははっきりないので、だから何が管理濃度かというと、これは厚生労働省の責任濃度という理解で、許容濃度は産業衛生学会のものであって、行政的に使う濃度の責任は厚労省が持ってくださいとお願いしたい。だから管理濃度は厚労省が責任を取っているということで、大体、言いたいのはそれぐらいです。
サンプリング等、技術的な問題は残ってはいるのですが、この辺は宮内委員も言っておられたのと、それほど違いません。測定士の教育というのも大事ですねということですが、時間、今も議論がありました4時間、8時間、1時間でもいいとかいろいろありますが、この時間をどうするのか。その間に誰か客観的な人が立ち会うのか。私が見ている個人ばく露濃度を自主的に測っている所は、ほとんどがサンプラーを事業場に送って宅急便で返してもらって分析している。これで65条の測定と言っていいか、そこの問題です。正直言うと、そういう自主的に測っているのと、測定基準なり65条で測るというのは全然違っていて、はっきり言って日本の企業の半分以上は中小企業で嫌々やっているというところもあります。だから、そこで厳しくやる以上はそれなりに合理性がないと、みんなが納得してついて来ないということがありますので、少なくとも測定基準を書くと。評価基準も書くということから始めないと、テクニカルな話はそれから先でもいいし、どの道、教育は時間は掛かるということなので、それを考えていきたいなと思います。そうでないと、個別の議論を延々としていても出口は見えない。是非、その辺はどこかでまとめていきたいなという勝手な言い分です。私の資料の話はこれだけです。よろしいでしょうか。何かございますか。
○土屋委員 私も明星先生と事前打合せをしたわけではないので誤解がないようにお願いします。実は皆さん御存じだと思いますが、有機則、特化則、粉じん則、鉛則では作業環境測定の義務付けになっている条件が個々に違います。粉じんも特定粉じん発生源ということだけが義務化になっていて、その他のものは義務化になっていない。御存じかと思います。先ほど私が勝手にC測定と言いましたが、単位作業場所を従来の単位作業場所として考えて、測定士が立ち会うか衛生管理士が立ち会うか、どちらにしてもある一定の知識を持った人が責任を持って測定の推移を見て、ばく露の高低をある程度把握できるような目配りをした上で、その測定の値を評価する形になると思うのですが、そのときに日常的な作業というのは、測定義務がない作業に入ることもままあるわけです。そのときの値を、ばく露濃度測定、個人サンプラーを使った作業環境管理測定だとすると、途中で測定機器のスイッチを止めて中断してしまわなければならないのか。あるいは、そのまま継続しての1日のばく露量を、別途決める評価基準と照合して合否の判定ができれば、それでいいのかというのは、これから議論になると思いますが、少なくとも、今、有機、特化、粉じん、鉛則の規則改正をするということは得策ではない、先ほどから出ている先行導入の喫緊の課題を考えると、余り測定基準の考え方をいじらないほうが得策だと思います。それであれば、今、明星先生の提案文を基本として皆さんと議論を重ねたほうが、この問題は早く先行導入できるのかなと感じています。
○明星座長 ありがとうございます。どうぞ。
○奥村化学物質対策課長 明星座長の御提案につきましては、大きな基本方針についてまず了解を得るということでございました。資料4-1の3の(注)書きで、SEGとか測定時間等の具体的な事項、これには、例えば明星先生が言われた郵送のやり取りでいいのかといったことも入ってくると思います。今、土屋委員がおっしゃった測定義務がない所を通るときはどうなるんだといったことは、基本方針を取りまとめた後、国内外のガイドライン等を参考に検討できるのではないかと思っていますので、やはり基本方針を先に決めていただきたいと思っています。
明星座長の作業環境測定基準への落とし込みのイメージですが、これは私ども読ませていただきましたけれども、おおむね我々の考えていることが1つの形として、明星先生のやり方としての案になっていると思います。法令というのはコンピュータープログラムのようなもので、同じように動いてエラーがなく動けば、どんな書き方でも何通りもあるというものです。私ども、このやり方が1つのやり方で問題ないと思いますし、別のやり方もありますが、これは、ある程度私たちの手を離れたところで法令が決まってくることもあると思いますので、明星先生のこれをイメージとして共有して問題がないということであれば、これを踏まえて前提に議論していけばいいのではないかと思っています。
もう1つ、基本的な事項についてお願いしたいと思うのは、STELです。個人として誰を測定対象に選ぶか、何時間するかというのはワーキンググループなどで議論すれば済むと思います。ただ、ACGIHでも産衛学会でも、短期ばく露について天井値などの値がないものに、例えば1.5倍がいいのではないか、3倍がいいのではないかという議論がありましたけれども、これについては私ども、どうしても事業者に義務を負わせるときにエビデンスがあるか、ないかを検討せざるを得ません。望ましいという規定であれば望ましい基準は作れますけれども、それを超えたら違反ですとする値として出すときには、何がエビデンスかと当然問われます。然るべき場所では問われますので、そういったことを踏まえて、どうあるべきかというのを御議論いただければ、それで基本的な方針がおおむね済んだと考えてよろしいでしょうか。
○明星座長 はい。
○奥村化学物質対策課長 そういうことですね。
○明星座長 すみません。結構、私が勝手なことを言いました。資料4-3にスケジュール等まで示していただいています。予定では、今年の秋までに1次報告書を取りまとめたいということですから、全てをカバーするのは難しいので、その辺の議論を集約して進めてはいかがかなと思います。このまとめ方も含めて何か御意見、ございますか。
○橋本委員 1つ確認させてください。この先行導入ということですが、それ自体、私は同意しますけれども、先行導入する際の測定方法、評価の方法、解釈の方法、こういったことについては最終的な姿も見込んで、できる範囲できちんとした姿にしておく。それでスタートする、こういう解釈でよろしいですか。
○奥村化学物質対策課長 そうしたいと思っています。
○橋本委員 分かりました。あと、先ほどのSTELのことを奥村課長がおっしゃいましたが、今のB測定の管理濃度の1.5倍で判断するというところも、エビデンスという意味だと実は苦しいかと思うのですが、その辺についてはいかがですか。
○奥村化学物質対策課長 1.5倍につきましては、必ずしも短期濃度をターゲットに想定して作ったというよりも、統計的な揺らぎに対する安全率というか、そういった数字ではないかと解釈しております。1時間ずつの測定である程度揺らぐので、1.5倍にしておけば安全率が大体出て、それの中で第一管理区分になるのは95%が大丈夫だという、そういう統計的な数字だと思っています。それが今度、個人サンプラーになりますと、そういった統計的な揺らぎへの対応いうよりも、短期ばく露による健康障害防止というふうにストレートに解釈が成り立つので、それのエビデンスというのは、また別途必要になってくるのではないかと思いました。
○橋本委員 分かりました。
○明星座長 それでは、もう4-4にいきますか。大丈夫ですか。では、4-4の説明をお願いします。
○寺島環境改善室長補佐 では4-4、9ページを御覧ください。資料4-3の基本方針に従いまして、まず、先行導入する作業の検討と、それから、次のページに続く、測定基準、評価基準という内容について、御検討をお願いしたいということです。項目ごとに説明させていただければと思います。
1番として、先行導入する作業の検討としております。マル1~3、全体として以下に示す作業場の限定でよいかということです。マル1としまして、ベリリウムなど、管理濃度が超低濃度の物質を取り扱う作業場としております。これまでの議論を踏まえ、このような形で立てておりますが、ここで課題になることとして、超低濃度の基準とは何かと。今後、管理濃度は引下げの可能性があります。管理濃度は御存じのように、許容濃度であるとか、ACGIHのTLV-TWAに従って、ときどき見直しの作業が入りますため、基準としてどういったところがよいだろうかということです。
それから、濃度基準として具体的な数字を設定するのか、あるいは物質を指定するかという点。それから、ガス状物質と粉じんの物質、超低濃度ということで並べておりますが、拡散の程度が異なることもありますので、どちらかあるいは両方で考慮すべきかどうかということです。表は、粉じん状物質の管理濃度が低い順に上位を抜粋したものです。特段この数字で、0.01で切っていることに意味はありませんので、もっと広い範囲ということであれば、後ろに参考資料を付けています。ベリリウム、砒素、MOCA、PCBとアルキル水銀、オルト-フタロジニトリルがあります。事業場の取扱状況が限られている状況ですが、3番目のMOCAについては、昨年、膀胱がん事案もありまして、これについては測定方法に関して少し疑義が生じているという話もありますので、ここで取り上げるべきかというところもあります。それから、アルキル水銀、PCBについては、恐らく取り扱っている事業場が非常に限られていると思われますので、そういったことも含めて御検討いただければと思います。
それから、ガス状物質のほうも上位を抜粋しております。ニッケルカルボニル、TDI、ジメチルヒドラジン、エチレンイミン、ベンゾトリクロリド、ニトログリコールと、この下にまた物質がたくさんありますが、ニッケルカルボニルは有害性が非常に高くて、取り扱っている事業場が余りないように聞いております。下から2番目、ベンゾトリクロリドは製造許可物質となっているので、こちらも取扱事業場が非常に限られているかと思います。
3番目、管理濃度がないというもので、超低濃度管理が求められているものです。管理濃度がない物質はほかにも、製造許可物質を中心に幾つかありますが、そのうちインジウムについてはマスク選択の告示が示されていて、超低濃度管理で管理するとなっているので、こちらの候補になるかということで挙げております。
マル2として、溶接、吹き付け塗装など、現行のAB測定では濃度が過小評価されることが明らかになっている作業場です。これまで3回の検討におきまして、過去の委託事業のデータから、個人ばく露のほうがABよりも10倍高くなった作業場のみ取り出して掲げております。これが、1.仕上げ研磨、2.吹き付け塗装、3.アーク溶接の3つになります。これ以外にも、個人ばく露とAB測定を比較した実験や、論文は多々あると思いますし、産衛学会のガイドラインでも引用されておりますが、作業ごとの比較をしたものということで、今回、この3つを挙げております。ちなみに別紙として、13ページにグラフを付けておりますが、10倍には至らないまでも、個人ばく露のほうが高い作業はほかにもあります。逆にA測定、B測定のほうが高くなっている作業も見られますが、今回はここのところでよろしいかどうか、御検討をお願いします。
9ページに戻って、マル3、特定粉じん作業などのうち、局所排気装置の設置が困難と所轄署が許可・認定した作業場で、2つ挙げております。この選択の理由ですが、発散源に局排を置けないため、高濃度の場合も予想されること、個人サンプラーを使った場合にマスクの選択にも有用と考えられること、それから、許可・認定制度のために事業場が把握されておりますので、将来的にその測定を行った場合の効果、問題点の把握をしやすいのではないかことということで、これを選択しております。
具体的には、10ページにアとイを挙げておりますが、粉じん則第9条に基づく、局排設置、湿潤化が困難な作業ということで、許可を受けたものとなります。特定粉じん発散源に関して置かれるものとなります。それから、イとして、有機則第13条です。こちらは発散面が広くて、局排を置けないというような、非常に大きいものの塗装作業とかいったものについて許可制度があります。こういった所で個人サンプラーを使ってはどうかということです。ここの事業場規模といいますか、許可・認定の状況としては、過去5年間の平均ですが、粉じん則が年間20件、有機則のほうが年間440件ということで、許可が出ております。マル4、その他としておりますが、これは事務局のほうで特に何かあるわけではなくて、何か御提案があればということです。以上です。
○明星座長 先行導入の件について何か。
○宮内委員 すみません。過去にも議論があったと思うので、私が知らないだけかもしれないのですけども、先行導入するに当たりまして、超低濃度の物質を取り扱う作業場が表にて記されておりますが、今回、どういう理由で超低濃度ということを特に最初に選んだかです。これは毒性が高いからと、私は勝手に解釈していたのですが、そういうことなのか、若しくは、現行のAB測定ではこの物質自身の挙動が非常に過小評価されることが問題なのか、もしよろしければその辺を教えていただきたいのです。
○奥村化学物質対策課長 提案したのは事務局ですので、私から説明します。ベリリウムとかインジウム等を扱っている事業場での管理はA測定、B測定ではなかなか管理が難しいと。そういったことを前提に、取り扱っている事業場では自主的に個人サンプラーを使って管理して、具体的にはマスクの選定とか、そういったものに役立っているというようなお話を聞いております。したがいまして、こういった所では、個人サンプラーの測定が作業環境測定に認められれば、素直なものになるのではないかと考えました。それが理由です。
○藤間委員 マル2の、ABでは過小評価されるというところですが、結局、個人ばく露で大きく出てくるのは、作業が余り定型化されていないとか、あるいは、人によって作業の仕方が違うとか、そういう形ですごくばく露を受けるような仕事なのですね。マル2を置いたことはすごくリーズナブルなので、入れたことは当然理解できるのですが、個人ばく露を見ていく上では、SEGを設定するとか、結構難しい作業になって、逆にトリッキーなところから始まっているような印象を受けるのですね。スムーズに制度を開始する上では結構難しいところなのかという気がしました。意見のみなのですけども。
○明星座長 ありがとうございました。
○土屋委員 マル2の、溶接、吹き付けの場合の記載事項は以前事務局から御説明を頂いたかと思いますけども、基本的に粉じん則の粉じん作業ではなくて、特化物が含有されているものとか、コバルト、マンガン、あるいは、吹き付け塗装などの場合だとクロム酸とか、鉛は別としても、そういった有害物がA測定では掌握しきれないことから、個人サンプラーを使ってばく露濃度に近い測定を把握して、作業環境管理に役立てることと私は受け止めていたのですが、それはそれでよろしいですか。ここに書いてある内容だと、藤間さんが今おっしゃったように、固定されない作業全部に測定がかかってくると読めるのですが、そうでなくてよろしいですよね。
○西田環境改善室長 あくまでも現行法令で義務づけられているところを対象として考えています。
○土屋委員 そうですね。そうすると、今まではAB測定でやっていたので、溶接作業場のマンガンはABでやっているわけですよね。
○西田環境改善室長 はい。
○土屋委員 今回、先行導入で、もしそれが測定基準に入れられることになれば、個人サンプラーを用いた測定結果で評価が可能という方向づけでよろしいですよね。
○西田環境改善室長 そのとおりです。
○土屋委員 ありがとうございます。一応確認です。
○明星座長 よろしいでしょうか。
○宮内委員 今の話に関するかもしれませんけども、このAB測定では過小評価される、これは明らかですと文章表現されているのですけれども、私が個人的にやってきた中で、特に明らかということではないです。最初に話をさせていただいたのですが、もともとこの2つの測定のやり方が違うのですね。場所の測定と、実際に人が移動して作業時間の考慮をしたような値と、当然変わるはずなのですね。B測定というのは10分間継続して測定します。例えば、1分間しか作業がないとしても10分間測る、そうすると当然濃度は薄まりますよね。しかし、フルに10分間作業がある場合には、8時間の個人ばく露測定値より高い値になるはずです。つまりちゃんとB測定を実施すれば過小評価にはならないはずです。理屈的には、ばく露濃度でいえば、口元に近い個人ばく露測定のほうが多分高めに出るのかというのは理解できます。ただ、明らかに過小評価されるという言葉で、現行のAB測定と個人ばく露測定を比較することはどうなのかと思います。やり方が違うということがもともとルールにありますので、同じルールで比較するならいいのですが。また、B測定は場の測定であり、最も高い濃度の発生源付近の作業者ははどのくらいの濃度にばく露されているかを、きっちり測るということで、評価していますので、そこはちょっと考えていただいたらいいかと思います。
○小野委員 このマル2の所なのですけれども。結果というか、根拠としては、AB測定では過小評価されるということですが、発生源と作業者が一致している場合というくくりのほうが分かりやすいとか、そうなれば過小評価になる可能性が高いと類推できますので、そういう考え方でどうでしょうか。
○西田環境改善室長 表現ぶりについては、報告書案作成の段階で指摘を踏まえて、「明らか」とかを修正する、今、小野先生がおっしゃったようなところも踏まえて考えたいと思います。
○明星座長 ありがとうございます。これも座長の勝手なコメントなのですが、非常に低濃度ですね。例えば、1μg/m3とか0.何μg/m3という濃度は、もともと作業環境改善の手に負えるところではないので、それを測るというのは同意しないかもしれません。それはもう作業管理の測定になってしまう。だから、ここの一番低濃度の値はその事業場がある程度コンタミしてしまうと、この濃度がいつも出るという事態になります。逆に言うと、こういうものが測れるようになったんだということのほうが、すごいと言えばすごいのですが、これをどう見るかというところはあるかと思います。
あと、溶接、吹き付け塗装は、小野委員が言われたように、持っている本人から出て来ます。例えば、手持ちのグラインダーもそうですし、溶接も吹き付け塗装も。正直、それを測ろうと事業主が思うかという。だから、測れと言われない限り、測ろうとは思わない、濃いに決まっているでしょうと、私なら思います。だから、逆に言うと、そういうところの指導は現状マスクを付けなさいとかいったことになって、ある意味、作業環境管理をあきらめているという部分もあるのかと。要するに、マスクなしでばく露した濃度がある種の許容濃度より低ければ、マスクを持てと強制をする合理的理由はないわけですから。そうすると、現在のそういう作業ならマスク着用の根拠だって実はないのです。保護具を付けなさいと言う以上は、実は、それはある程度汚いという前提でなければ保護具は付けないという話です。私は、現状は、作業環境管理をして、作業管理もする、マスクも付けて改善もするのは好きですが、割り切っていけば段々、特に濃度が低くなってくれば、これはもうどうしようもないと。どうしようもないというのが事業主のあきらめになってしまうのは、ちょっと嫌だなと思います。宮内先生のインジウムの論文が回ってきましたが、どんどん下がっていく度に作業環境管理の達成感が失われていくような印象がありました。何が言いたいのだと言われそうですが、全体としてできる話と、こういうふうに、どうしたって測る前から分かっている状態のものを測るかという問題とはちょっとあると思います。だから先行導入で、例えば、溶接や吹き付け等はこの測定をやらなければいけないと言えば話はまた別だけども。
○奥村化学物質対策課長 溶接とか、そういったところにつきましては、例えば、個人サンプラーによる測定ができる測定士が、全国津々浦々に普及した段階でどうするか、また考える局面がくるかと思います。どちらでもいいよという状態がずっと続けば、明星先生の御指摘のように、誰が選ぶのだろうかという話になると思います。他方、では今日から義務ですよとなっても、測定士がどこにいるのですかという話になりますので、まず養成というのは規制の前提になるのかと考えております。
○明星座長 どうもありがとうございました。大体議論としてはいきましたかね。4-4までいって。
○寺島環境改善室長補佐 資料4-4の10ページ、11ページに先行導入部分に関する測定基準と評価基準について、御検討いただきたい事項を挙げております。10ページの2、先行導入部分に関する測定基準の検討ということです。マル1としてSEGの扱いについてです。SEGの設定に経験が必要とされる部分は、養成期間を設けることにより対応したいということで、アとして、初回など一定回数全員、以降測定結果に基づきSEG設定する方法。イとして、同種作業者が一定数以下の場合は各人、一定数を超える場合は最大人数(例えば5人など)以下のまとまりとして設定する方法。ウとして、その他設定方法があればということです。
マル2、測定時間です。8時間測定の扱い。8時間では測定士が全ての時間の作業確認ができないという指摘がありました。その上で、アとして、8時間測定を基本とする。一定状態で終始同じ作業を繰り返す場合は短縮してもよいということです。イとして、AB測定と同じく1時間測定として8時間を評価する。1時間であれば測定士が立ち会えるということです。ウとして、その他も何かあればということです。
マル3、低頻度、短時間作業、許容濃度等を上回る高濃度発散の扱いについて。こちらは過去3回にわたりまして御検討いただいたような個別のケースについて、どういった評価をするかということです。
マル4として、短時間ばく露の扱いです。マル1短時間ばく露限界値、STELなどと照らし合わせるべき15分とする。マル2、B測定に合わせて10分とする。このどちらかということです。
3番についても簡単に御紹介しますと、先行導入部分に関する評価基準の検討です。マル1として、評価方法。AB測定と同様でよいか。これは測定結果が出てまいりますので、それらの統計的な処理の方法として、時間加重平均値へ換算するということと、統計値の上側95%値、算述平均値、幾何標準偏差の算出等について同様でよいかということです。マル2として、評価に用いる基準値。これも議論あるところですが、管理濃度と同じでよいか。マル3、管理区分の決め方。AB測定と同様の3区分を使う、同様のため分かりやすいということと、その他、ほかにもあればということです。マル4として、短時間測定を評価する場合の基準値。STELなどがあるものはその値でよいかということ、ないものは1.5倍でよいか、その他ということです。これまでの御議論を踏まえ、主たる意見かなということで、事務局のほうで考えたものを列挙しています。
次ページです。マル5、以下のような場合、作業場ごとの評価はどのように扱うかということです。これも先ほどお話があったように、層別の考え方を準用するのかどうかということだと思いますが、アとして、作業場を複数行き来する場合、イとして、屋外への移動を含む場合、このような場合、8時間のトータルの測定値をどのように評価すべきかということで、リアルタイムデータロガーが使える場合はいいのだけれども、そうでない場合は、作業時間で案分はできないですし、どうしたらよいでしょうかということです。以上です。
○明星座長 ありがとうございました。まだ少しだけ時間は残っていますので、この辺について、全部はちょっと議論しきれないかもしれませんが、個別にやっていると時間は全然足りないので。この測定は山室先生の所のものでしたか。言いたいのは、何かのケースを考えたときに、これはどうなるというような、そういう例があったらいいのかなと。例えば今話として上がっていた、溶接とか、吹き付け塗装とか、その前にインジウムとかで、例えばSEGは何人ぐらい取って、どうしたら、時間枠を測ったらこんな結果が出たというような具体例でやらないと、頭の中でこれは何人がいいとか、悪いとか、そんなことをしていても、何も分からないような気がするのです。現場感があるのは土屋委員、宮内委員、山室委員。宮内委員からインジウムの件とかも出ていましたので、そういった場合に、例えばSEGを何人取って、それで基準は何にして、そうしたらどうなってというのをまとめてもらうとか。溶接などで、こういう人数をこういう場合にやったら、これぐらいでできるとか、できないとか、そういうものでないと、何か頭の中でこれを出されて考えてみたって、そこで思い付くことが必ずしも全体というふうには思えないので。なかなか測定士の皆さんは自分の測ったことは秘密保持の世界なので、出せないかもしれないのですが、何か論文に書かれたものとか。
○橋本委員 平成25年の中災防の報告、こちらの別紙資料にありますけど、確かそこではこんなSEGを選んで、こんな測定をしていたと、結構データあったと思いますから、参考になります。
○明星座長 そうそう、だからそういう個別のケースの、今、特に先行導入しようかと思っているこういうものにとって、どうなるのか。例えば人数は何人ぐらいに測って、濃度はこれぐらいで、分散はどれくらいでというような話が出てくれば、それでやれるのかなという議論はできると思うのですが、ここで項目だけを並べて、それで現場に人がいなかったとかという話になったりしても困るので、その辺はどうでしょうかね。だから、特定の委員の皆さん方に仕事を振りますがどうですかね。宮内先生どうですか。
○宮内委員 そうですね、結局人数のところが議論になると思うのですが、これが非常に難しいのは、やはり作業の仕方によっても大分変わるところです。例えば極端に1人ずつ作業が違う所もあると思うのです。全く同じようなラインで人が動いている所もありますので、個々に選び方も本来は変えるべきだと思うのです。ただ、文章化していくということになってくると、数字を決めていくことが必要だと思います。全員測定ができればもちろんいいのですが、なかなかできないということであれば、統計的な観点からある数を定めてそれ以下であればまずは全員やりましょうと。
それから、これはまたちょっと違うのですが、個人ばく露測定をやる前に作業環境測定をやって、発生源の対策をしてから、これで問題ないというような設備を作った上で、個人ばく露測定をやって確認する。または、新しく設備改善をやったので、まずは作業環境測定をやり、その後に個人ばく露測定をしてみる。つまり同時に両方をやらなくても、例えば交互にやる方法もあると思うのです。ただ、いずれにしろ測定の実施を要する定義は、有害物が発散していて、労働者がいるということが最低限だと思うのです。その上で、工程を決めていく。そして人数を絞り込むというような方法かなと思います。
あと、時間については基準値がもともと8時間ですので、1時間測定し8倍するというのはいかがかなと、誤差が大きくならないのかなと非常に心配です。それは間違いなく同じ作業が繰り返されるというのならばいいのですが、なかなか日本の場合はマルチタスクなどというお話もありましたが、臨機応変に助け合いながら作業をやっている所も多いですので、なるべく長い時間を取ると。となると、やはり最低4時間は測定したほうがいいのではないかと思います。
○明星座長 そういうので具体的にこういう作業で、これぐらいでやると、こういうのでうまくいくとか、うまくいかないとか、企業名とか物質もそんなに特定しなくてもいいので、山室委員もおいでだけど。これぐらいの人数の作業者がいて、全員に付けられないということはよく理解するのですが、これぐらいをしたら、これぐらいの結果が出るという、何か先生の論文とかがあったではないですか。
○宮内委員 ちょっと確認してみますが、経験上は本当に千差万別で。
○明星座長 そういうのでケースを考えてみて、それでできる話なのか。だからうまくいけばこうなるし、うまく成立しないときもあるし、それはそれでいいと思うのですが、山室先生も何か。
○宮内委員 1つは、やはりいろいろ事故が起きているのは、中小零細企業が非常に多いという統計はありますよね。ですから、そうすると、30名ぐらいの小さい会社、小企業にやはり事故が非常に多いという統計を踏まえると、ターゲットとすると、やはりそういうことを考えて人数も決めていったほうが、まずはいいのかなという感じはします。
○明星座長 いや、だからそのとおりなので、何か会社名ももちろん要らないし、はっきり言えば物質も要らないのだけれども、何かこういうふうに設定したら濃度がこうなって、うまく測れるとか測れないとか、そういうことがないと。例えば今ここのSEGをどうするかとか、測定時間をどうするのかというケースもやれるのだ、やれないのだという議論は、やはりそれがないと、先行実施でもいいし、した途端にこけるという事態もあり得るので。何か例えば4時間でうまくいくのだとか、8時間やらなければ測れないのだとか、そういった議論でもいいのです。例えば人数は小さい所なので2人しかもともといないのだと言われれば、そういう話もあるのだという、何か具体的に、具体的にというのは会社名も具体的に要らないし、物質名も具体的に要らないけど、これぐらいの規模の会社で、これぐらいのことをやるときは人数はこれぐらい取れるとか、取れないとか、うまくいくとか、うまくいかないとかという、何か社会の状況がないと、先行実施できない。
○宮内委員 少し考えさせてください、余りすぐ浮かばないのですが。ただ、1つ言えるのはあくまでも作業者の平均値、SEGとして数字を出すということも大事ですけれども、その後の改善対策ですよね。結果の活用のところを最初にある程度考えてやるということが必要だなと思います。
○明星座長 作業環境測定なので、やはりそれは宮内委員の言うとおりだと思います。ということで、何か。
○橋本委員 最後にいいでしょうか。まずSEGの設定の仕方について、全員を測るとかいう意見もあったかと思うのですが、私の経験からいうと、仕事の内容、職場の分担とかに基づいて判断して、SEGとしてほぼ合っていましたし、SEGが明らかに区別できるという場合もあります。例えば作業場内に長時間滞在するグループと短時間のグループで明らかに区別できるといったケースもあります。SEGがどうしえも設定しにくいときに限り全て測る、こういうオプションがあってもいいと思うのですが、ただ測定士にも今までのいろいろの経験があり、一定程度能力もあるので、そこを信頼するとか期待するということも大事だと思います。行政からすると法令で決めるので、いろいろガチガチに決めて、ミスのないようにという考えもあるかもしれないのですが、でも、そこで測定士の潜在能力に期待して、もちろん教育もしっかりしなければいけませんが、測定士が主体的に能力を伸ばしたり、判断力を高めというところに期待したいと思います。測定士を何と言いますか、ちょっと言葉は悪いのですが、手足を縛ってしまうとか、子供扱いをするという事をせずに、大人として扱いある程度期待して伸びていってもらう。それこそが労働衛生により役立つ方向なのではないかと思います。測定士にある程度の判断の範囲を与えて、モチベーションやインセンティブを持ってもらうことは重要だ思いました。
もう1つ、測定の点数などということも今後議論にもなってくるかと思うのですが、個人ばく露測定の測定・評価の方法で欧州にEN規格というのがあります。1996年のものを見ると、SEGの中で1点だけ測定した場合は、ばく露限界値の10%より下だったらそれでよしとする。3点以上測定した場合は、その全てがばく露限界値の25%以下だったらよしとする。このようにサンプル数が少なくても、結果が安全な範囲ならば比較的簡単に判断できるという方法もありますので、この辺、ちょっと私のほうでも整理してみて、また御参考にしていただければと思っています。
○明星座長 はい、時間もきておりますので、どうぞ。
○寺島環境改善室長補佐 明星先生から今、御指摘のあったSEGの人数の件です。中災防でまとめていただいた先ほどのデータや、ばく露実態調査のデータは、ちょっと目的が違うので、そのままデータが使えるかどうか分かりませんが、ここの部分で何かあるかどうか、ちょっと確認して次回に活かしたいと思います。
○明星座長 まとめていただければということですね。ただ、私が知りたいのは、それは測った人数であって、どれぐらい測れそうな状態でという元のベースが必ずしも分からないかな。だから、測った人には分からないかなというので今、聞いたのです。是非まとめてください。出しづらいらしいですけどね。
これで議論を終わりにしてよろしいでしょうか。では、ありがとうございました。事務局には御面倒ですが、論点を整理していただいて、まとめていっていただきたいと思います。あと、事務局から何か。もういいですか。では、閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。