国際保健規則(IHR)(2005年)の改正の検討状況について                   

令和6年4月25日 最終更新

 

経緯

 世界保健機関(WHO)は、疾病の国際的伝播を最大限防止することを目的とした国際保健規則(IHR)(2005年)(注1)を定めています。このIHRでは、地域・国家レベルの、国境における日常の衛生管理及び緊急事態発生時の対応に関して最低限備えておくべき事項 (通称:「コアキャパシティ」)が規定されています。このコアキャパシティを十分に満たしていると評価されていた先進国であっても、新型コロナウイルス感染症の流行下では、甚大な影響を受けました。
 こうした各国の新型コロナウイルス感染症対応の教訓を踏まえ、2020年から2021年にかけて、パンデミックへの備えと対応に関する独立パネル(IPPPR)・IHR検証委員会・独立監視諮問委員会(IOAC)が、WHOの強化を含め、世界の健康危機への備えと対応能力の構築・強化に関して議論を行いました。各委員会の報告を踏まえ、WHO加盟国は、2021年の第74回WHO総会で、WHOの強化に関するWHO加盟国作業部会(WGPR)(注2)を設置し、同作業部会での議論の結果、2021年12月にはパンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書(WHO CA+、いわゆる「パンデミック条約」)(注3)の作成に向けた交渉を行うことが決定され(注4)、さらに2022年1月には現在のIHR(2005年)を改正するための議論を行うことが決定されました(注5)。その後、2022年5月の第75回WHO総会において、加盟国は、IHR改正に関するWHO加盟国作業部会(WGIHR)(注6)として、WGPRに新たな役割を与えた上で継続することを決定するとともに(注7)、IHR改正の効力発生までの期間を採択後24カ月から同12カ月に短縮する第59条等の改正案を採択しました(注8)。現在もWGIHRでIHR改正に関する議論が行われています。
 WHO CA+作成とIHR改正に向けた作業は、2024年5月の第77回WHO総会での提出及び採択を目指して、同時並行で作業が進められています。これら2つの文書による枠組みが相互に補完し合うことで、世界の公衆衛生のより良い協調が実現されることが期待されます。

 
(注1)IHR (2005):International Health Regulations
(注2)WGPR: Working Group on strengthening WHO preparedness and response to health emergencies(WHO HP)(英語)
(注3)WHO CA+:WHO convention, agreement or other international instrument on pandemic prevention, preparedness and response (PPR)
(注4)パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書(いわゆる「パンデミック条約」)の交渉(外務省HP
(注5)WHO執行理事会決定EB150(3)(WHO HP)(英語)
(注6)WGIHR: Working Group on Amendments to the International Health Regulations (2005)
(注7)WHO総会決定WHA75(9)(WHO HP)(英語)
(注8)WHO総会決議WHA75.12(WHO HP)(英語)
    第59条等仮訳 (PDF)[1.5MB]

IHR改正に関するWHO加盟国作業部会(WGIHR)の概要

 
 2022年5月の第75回WHO総会において、WHO加盟国は、WGPRをWGIHRとして、新たな役割を与えた上で継続させ、同作業部会に対して加盟国が改正案を提出することを決定しました。加盟国は、(1)全面改正は行わないこと、(2)改正を通じて新型コロナウイルス感染症対応で特定された、公平性を含む課題やギャップに対処すること、(3)公平な方法で疾病の国際的なまん延から世界中のすべての人々を守ること、という共通の認識のもと、2022年11月以降、日本を含む複数の加盟国から提案された306の改正箇所について議論を行っています(注9)。交渉は、2024年5月の第77回WHO総会まで継続される予定であり、その進捗はWHOウェブサイトで随時報告されています(注10)。
 今般、第8回WGIHR(WGIHR8)を前に、過去7回の会合の議論の結果を踏まえて作成された、最新の改正案が公開されました(注11)。なお、この改正案も含め、WHOのウェブサイトに公開されている改正案は、WHO加盟国間で交渉中であり、全加盟国によって合意や採択等されたものではありません。今後、作業部会で合意された改正案のパッケージは、WHO事務局長によって第77回WHO総会に提出される予定です(注12)。
 なお、これまでの開催実績は以下のとおりです。
 ・第1回:2022年11月14日~15日
 ・第2回:2023年2月20日~24日
 ・第3回:2023年4月17日~20日
 ・第4回:2023年7月24日~28日
 ・第5回:2023年10月2日~6日
 ・第6回:2023年12月7日~8日
 ・第7回:2024年2月5日~9日
 ・第8回:2024年4月22日~26日(予定)
 
 IHRの改正を通じて、国際交通及び取引に対する不要な阻害を回避しつつ、疾病の国際的伝播を最大限防止するというその目的がより効果的に達成されるよう、我が国もその交渉に建設的に貢献していきます。

(注9)Proposed Amendments to the International Health Regulations (2005) submitted in accordance with decision WHA75(9)(2022)(WHO  HP)(英語)
(注10)WHO | Working Group on Amendments to the International Health Regulations (2005)(WHO HP)(英語)
(注11)Proposed Bureau’s text for the eighth meeting of the Working Group on Amendments to the International health Regulations (2005)(WHO HP)(英語)
(注12)第5回WGIHR報告書(WHO HP)(英語)

【参考資料】国際保健規則(IHR)(2005)の改正について[497KB] 


 

IHR(2005年)の改正の検討状況に関するQ&A(一般の方向け)[100KB]