上野大臣会見概要

(令和8年9月29日(火)10:43~10:58 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について

大臣:
私から3点あります。1点目は、令和8年版厚生労働白書及び令和8年版労働経済の分析についてです。本日の閣議で、令和8年版厚生労働白書と令和8年版労働経済の分析を報告しました。今年の厚生労働白書では、「これからの医療・介護・福祉の現場で働くことを考える」と題して、人手不足下であっても、テクノロジーの活用を通じた生産性向上により、質の高いサービスを提供する現場の取組やその課題についてまとめました。労働経済の分析では、「AI等技術革新が進む中での労働市場の現状と課題」をテーマにして、急速な技術革新が進展しているAIが経済成長や労働市場に与える影響を分析するとともに、AI時代における人材育成の課題を考察しました。厚生労働省としては、少子高齢化が進行する中で、医療・介護・福祉サービスが持続的に提供されるよう、また、AI等の技術革新が進む中で、人材育成等の労働市場の課題に対応できるよう、必要な取組を着実に進めていきたいと考えています。
2点目は、企業へのカスタマーハラスメント対策等義務化です。本年10月1日に、改正労働施策総合推進法等が施行され、カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するため、全ての事業主の皆様に、相談体制の整備等の雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられます。厚生労働省ではリーフレット等の作成に加え、ハラスメント対策に関するポータルサイト「あかるい職場応援団」における解説動画の発信など、周知啓発に取り組んでいるところです。また、カスタマーハラスメントについては、業種・業態によって態様が異なるので、全ての業種・業態に共通する要素をまとめたマニュアルを作成するとともに、関係省庁連携会議を開催し、業所管省庁に対して、業種・業態ごとのマニュアルの策定などを促しているところです。事業主の皆様におかれましては、ハラスメントのない職場環境の整備に向けて、積極的な対策を進めていただくよう、改めてお願いしたいと思います。
3点目ですが、赤い羽根共同募金運動についてです。赤い羽根共同募金運動が10月1日から全国でスタートします。この募金は、地域での見守り活動や、こども食堂をはじめとした居場所づくりなどの社会福祉活動を推進するために実施されており、災害時のボランティア活動などの支援にも役立てられています。街頭だけではなく、職域、学校、自治会等を通じた募金活動が行われます。また、インターネットを通じたオンライン寄附もございますので、国民の皆様のご支援とご協力をお願いしたいと考えています。

質疑

記者:
冒頭でもお話があったカスハラ関連の質問をさせていただきます。お話のとおり、10月1日から、全ての企業にカスハラ対策が義務付けられることになりました。一方、2025年度の雇用均等基本調査では、従業員10~29人の企業の約39%が「取り組んでいない」と回答するなど、特に規模の小さい企業での対策が進んでいない状況がみられました。調査から時間がたち、その後準備を進めた企業もあるかとは思いますが、施行を目前に控えた現在も、中小企業などでは十分な準備ができていない企業が残っている可能性があります。企業規模によってこうした差が生じている現状をどのように分析して、どのように受け止めていますか。対策が十分にできていない企業にどのように対策を促していくおつもりでしょうか。
大臣:
中小企業等で対策が進むことが非常に大切だと考えています。まず、一般論で申し上げると、中小企業は大企業と比較して人事労務部門の体制が薄く、カスタマーハラスメント対策について十分な準備ができていないといった可能性があるかと思うので、特に中小企業に対して、そのような観点からも支援を行うことは重要であると考えています。このため、厚生労働省としては、先ほど冒頭で申し上げましたが、リーフレットの作成やポータルサイトにおける解説動画の発信などによって周知啓発に取り組んでいるところです。また、都道府県労働局が、企業に対して説明会を開催しています。これは、商工会や商工会議所などにも周知に協力いただいており、全国でこれまで900回程度相談説明会を開催しているところです。その際には、個別の相談にも応じさせていただいているところです。また、ハラスメント事案が生じた場合に、専門家が、事業主や人事労務担当者等からの相談に応じて、速やかにハラスメント事案を解決するための対応策を助言する事業も実施しているところです。引き続き、こうした取組を通じて、中小企業やその従業員の皆さんへの支援にしっかり取り組んでいきたいと考えています。
記者:
年収の壁の撤廃について伺います。来月から、いわゆる年収106万円の壁が撤廃されますが、改めて制度変更の意義や期待する効果について、大臣のお考えをお願いします。また、変更点の周知を含めた、今後の厚生労働省としての取組方針も併せてお願いします。
大臣:
いわゆる106万円の壁と呼ばれる、短時間労働者の適用要件の一つである賃金要件については、最低賃金の引上げに伴いまして、本年10月に撤廃することとしています。これまで累次にわたる最低賃金の引上げの成果・効果であると認識しています。今般の見直しによって、今後は週の所定労働時間が20時間以上であるかどうかによって、被用者保険の適用を判断することになりますが、20時間以上働いて被用者保険に加入することとなると、より手厚い年金を受け取ることにつながるものと考えているところです。言うまでもなく、年金は老後生活の柱でもあるので、これまでも被用者保険の適用拡大を進めてきたところですが、今回の見直しに当たっては、このように給付が充実するという被用者保険のメリットを理解していただくことも重要だと考えているので、こうした観点から、厚生労働省においては、ホームページ等、様々な機会を通じてこれまでも広く丁寧な周知に努めているところです。引き続き、制度の周知徹底に取り組んでいきたいと考えています。
記者:
歯科の電子カルテの補助金と診療報酬改定について質問します。歯科医療機関では、電子カルテの要件を満たさないレセコンカルテが普及しています。3要件を満たす電子カルテの普及率と普及件数は直近でどれくらいでしょうか。歯科診療所向けの電子カルテの普及方針では、令和9年度中に認証制度の開始を目指すとされています。ベンダーの開発など、未確定な要素が多いですが、本当に来年度中に歯科医療機関が導入できるのでしょうか。令和9年度予算での、歯科の電子カルテ導入補助金の要求額、想定した導入件数などを教えてください。導入が未確定な中、予算要求していると理解してよいでしょうか。令和8年度の診療報酬改定で、歯科の診療報酬本体として0.31%引き上げられましたが、国費の額はいくらでしょうか。経営困難が続く歯科医療機関では、電子カルテの普及より診療報酬本体の引上げにこそ予算を投入してほしい、そうでないと歯科診療継続が困難との声が出ていますが大臣のお考えをお伺いします。
大臣:
まず、歯科医療機関で導入しているシステムについて、今年の夏にアンケート調査を実施しています。その結果によると、いわゆる3条件を満たす電子カルテを導入していると回答いただいた施設が約12%です。また、3条件を満たしていないカルテ作成支援機能を有するレセプトコンピューター、いわゆるレセコンカルテを導入していると回答いただいた施設が約80%となっています。ただ、このアンケート調査は、一部の歯科医療機関に対する抽出調査であるので、正確な普及率・普及件数は把握していませんが、傾向としてはそのようなことかと認識しています。歯科電子カルテについては、今年度中に、クラウドネイティブ型であることを含む標準仕様を策定したいと考えています。その上で、来年度には標準仕様に準拠した製品の認証制度を創設する方針です。医科の電子カルテについては、既に標準仕様を公表し、今年度中に、それに準拠した製品の認証を行う予定ですので、歯科についても、同様に、電子カルテベンダーを含む、関係者の皆さんのご意見も伺いながら、来年度中には、医科と同様の対応がとられるように、鋭意検討を進めていきたいと考えています。また、ご指摘の補助事業における補助単価や想定される導入件数については、概算要求では一定の仮定をおいて算出していますが、今後具体的な補助事業の内容については、政府間の予算編成過程で議論され、調整されていくものです。現時点で、現場に予断を与える可能性があるので、その詳細についてお答えは控えさせていただきたいと思います。いずれにせよ、今後の予算折衝の中で、そうした点についても十分議論していければと考えています。さらに、令和8年度診療報酬改定における国費の額というお話がありましたが、令和8年度診療報酬改定については、医療機関を取り巻く厳しい経営環境を踏まえ、物価や賃金の上昇等への対応を重点課題として、本体改定率プラス3.09%を実現し、加えて、歯科固有の政策改定に係る改定率をプラス0.31%としたところですが、これは科目ごとの国費の内訳は算出していません。診療報酬での対応が必要ではないかというのは、我々も問題意識として共有していますが、令和8年度の診療報酬改定においては、例えば、歯科分野における医療DXの推進に向けた電子的歯科診療情報連携体制整備加算の新設をはじめ、歯科治療のデジタル化の推進など、様々な政策課題にも対応したところです。今後も、様々な調査を行っていくので、そうした調査結果を通じて、改定の検証を実施しながら、必要な対応を検討していければと考えています。
記者:
歯科の電子カルテの補助金の概算要求額については、お答えは難しいでしょうか。
大臣:
54億円です。
記者:
非常に今回、歯科医療機関にとって、歯科の治療を国民に提供する上で必要なのか、個々の医療機関の判断で導入する、自ら投資して電子カルテを入れているところは12%しかなく、それが必要なのだろうかという疑問があり、むしろ歯科の医療継続のために、国民のための歯科治療を継続するために、電子カルテもよいですが、それ以上に歯科を治療する方が大事ではないかというご指摘がありました。是非、そちらの方も予算の獲得に向けて、大臣の決意をいただきたいと思っていますが、いかがでしょうか。
大臣:
電子カルテを含むDX化というのは、これからの課題として非常に大事な部分だと思うので、推進していくことは重要だと思います。それと同時に、歯科診療が継続するということも非常に大事ですので、診療報酬上の様々な手当等については、先ほども少し申し上げましたが、実態の調査等を踏まえてしっかり対応を進めていければと考えています。

(了)