上野大臣会見概要

(令和8年3月13日(金)10:41~10:56 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について

大臣:
冒頭私から1件お伝えします。本日、「健康保険法等の一部を改正する法律案」を閣議決定いたしました。これは、OTC医薬品との代替性が特に高い薬剤を用いた療養等について、薬剤費の一部を保険給付外とする一部保険外療養の創設、後期高齢者医療において、金融所得を保険料の算定や窓口負担割合等の判定に公平に反映させるため、金融機関等に対する法定調書の保険者へのオンライン提出の義務付け、また、出産の標準的な費用に係る給付体系の見直し等の措置を講ずるものです。今後、本国会での速やかなご審議をお願いしたいと考えております。また、今般の医療保険制度改革について、国民の皆様向けにその趣旨や内容を分かりやすくまとめた広報資料を用意しております。本日、厚生労働省のホームページに掲載する予定です。詳細については、事務方にお尋ねいただければと思います。

質疑

記者:
11日に労働市場改革分科会の初会合が開かれ、総理が表明されていた裁量労働制の見直しについても議論が始まりました。改めて、政府としては裁量労働制について、どのような理由から、見直しの検討が必要だと考えていますでしょうか。また、分科会では5月頃に取りまとめを目指すとされていますが、労使の意見が割れている状況で、期間としては2か月ほどしかありません。分科会では、例えば具体的な制度論までいくのかなど、どこまでを射程に議論し、取りまとめを目指すのでしょうか。
大臣:
人手不足の中で労働生産性を高めつつ、心身の健康の維持を前提にして、柔軟で多様な働き方ができるように労働参加を進めることが重要だと考えています。先般11日に第1回労働市場改革分科会が開催されました。今お話のあった裁量労働制についても、柔軟な働き方の拡大という観点から、健康確保を前提に制度を拡充すべきだというご意見もありましたし、長時間労働を助長しかねないため拡充すべきではないといったご意見もあったものと承知しています。裁量労働制については、適正な運用が行われると、労使双方にとってメリットのある働き方が実現できる一方で、制度の趣旨に沿っていない運用がなされた場合には、労働者の健康確保や処遇確保などの観点から問題があるとも指摘されているので、このような点も含めて検討していくことが必要だと考えています。労働市場改革分科会においては、生産性の高い分野への円滑な労働移動や働き方改革を含めた労働市場改革について、構成員の皆様から幅広くご意見を頂戴して議論を行うこととしています。何らかの方向性を現段階で決め打ちしているものではありません。労働時間規制を含め、引き続き議論を深めていきたいと考えています。
記者:
埼玉県立小児医療センターで、白血病の治療で抗がん剤の注射を打った患者が死亡するなどした問題について伺います。死亡するなどした患者3人の体内からは、治療で使用しないビンクリスチンという薬液が検出され、これが重篤な症状を引き起こした可能性があると指摘されています。同じような事案を防ぐために、国としての対策や各病院への管理の徹底に関する通知などを検討されていますでしょうか。
大臣:
埼玉県立小児医療センターにおいて、白血病の治療で抗がん剤を投与された患者の方が死亡されるなどした事案については承知しています。亡くなられた方にお悔やみ申し上げるとともに、ご遺族の方、また現在治療を受けておられる方やご家族の方にお見舞い申し上げたいと思います。この事案については、現時点で原因などが明らかになっておらず、関係機関において事件・事故両方の可能性から事実関係の調査が進められていると承知しています。厚生労働省としては、医療安全の課題について、指導監督権限のあるさいたま市と連携を取りながら状況を把握し、適切に対応していきたいと考えています。
記者:
徳島市での生活保護費の過大請求をめぐり、11日、徳島市の調査特別委員会では、遠藤市長ら2人の虚偽の証言を認め、刑事告発することを決めました。報告書では、「生活保護事務の取扱いを始めた当初より過大請求がなされていた可能性が高い」とし、「組織的に隠蔽され続ける結果となった」と厳しく指摘しています。そもそもこの問題についての大臣の受け止めと、厚生労働省としてこれまでどのような対応をしてきたか教えてください。仮に制度開始当初からだとすると、戦後間もない昭和20年代から現在まで80年ほど国は過大請求されていたことになります。金額は億を優に超え、制度の根本を揺るがす問題ではないでしょうか。返還の時効は現行で5年ですが、それが適当かも含めて、国としてどう対応するのでしょうか。また、こうした問題は徳島市だけの問題とお思いでしょうか。国として今後とるべき対応について見解をお願いします。
大臣:
徳島市議会が設置したいわゆる百条委員会において、今月11日に調査報告書が取りまとめられたと承知しています。現時点では、徳島市側の対応が決まったものではないため、お答えは差し控えたいと思いますが、厚生労働省としてもその動向を引き続き注視していきたいと考えています。その上で、一般論として申し上げると、生活保護の運用に際しては、保護の実施機関において、被保護者への支給や債権管理などについて、法令に基づき適切に実施していただくとともに、それに基づき、適正な形で国庫との精算手続を行っていただく必要があると考えています。厚生労働省としては、これまでも生活保護費の過大請求などがあった場合には、金額の精査を行い、国庫への返還の手続を行ってきているところですが、引き続き、機会を捉えて自治体に対する周知徹底を行うなど、生活保護制度の適正な執行に努めてまいりたいと考えています。
記者:
高額療養費制度についてお伺いします。前回の記者会見で大臣から、長期療養や低所得に配慮したので必要な受診の抑制は想定していないとのご答弁をいただきました。同じ3月10日の衆議院予算委員会公聴会で全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長が、治療後に約3割の所得減少となる場合の支払い能力に対する自己負担上限割合は、ほぼ全ての所得階層でWHO基準の破滅的医療支出(40%)を超えたことを報告されました。高額療養費制度の専門委員会で治療後に収入が減少した場合の支払い余力に関する影響調査やシミュレーションは実施されましたでしょうか。また、それを基にして必要な受診抑制が想定されるか否かの検討はされましたでしょうか。
大臣:
ご指摘の報告について、具体的な計算方法などを承知していないので、そのこと自体に対するコメントは差し控えたいと思いますが、長期にわたって治療を受けられる方にとって、経済的負担が大きな課題となっていることに対するご示唆だと受け止めています。それぞれの患者の方が置かれた状況、具体的には、病気の状態、世帯構成や就労の有無、預貯金の状況など、本当に様々であろうかと思いますので、全てのケースを網羅した事例をお示しすることは現実的には難しいと考えていますが、そのような多様な実態であるという認識に基づいて、患者団体の方もご参画いただいた専門委員会において、延べ20を超える様々な疾病・所得の患者の医療費や受療頻度、また、家計調査を基にした家計の収支状況の事例を事務局からお示しした上で、定量的なデータに基づく丁寧な議論を行ってきたところです。このような議論を重ねた上で、専門委員会で考え方を整理していただき、今回の見直しでは、新たに年間上限を創設することで、今まで制度の対象にならなかった方も制度の対象になり得るようにするとともに、年収200万円未満の課税世帯の方の多数回該当の金額を引き下げるなど、特に治療にかかる経済的負担が厳しいと考えられる長期療養者や低所得者に十分に配慮した見直しを行うこととしています。必要な受診が抑制されるということは想定していません。他方で、療養期間が短い方に関しては、一人当たり医療費の伸びに合わせた月額上限額の見直しを行うとともに、外来特例に関しても上限額の見直しを行うこととしていますが、これまでの制度改正においては、例えば、一定以上の所得をお持ちの後期高齢者の窓口負担割合を1割から2割に引き上げた際には、平均的な受診日数が減少しています。その一方で、平成29年、30年に外来特例の負担上限額を引き上げた際には、マクロベースの受療率に変化はみられなかったというデータが確認されています。いずれにしても、今回の見直しが長期療養者や低所得者の方々も含め、実際の受診行動にどういう影響があるかということを検証していくことも重要であると考えているので、その点については、今後、よく注視していきたいと考えています。
記者:
配慮されていない方、月額上限が引上げになる方で、病気によって所得が減少した場合の試算は、厚生労働省としてはされていないという確認でよいでしょうか。明確にお答えください。されていないと聞いています。
大臣:
様々なケースを前提に想定してご議論いただいています。
記者:
がんになって入院して手術して、やはり数か月は仕事ができなくなってしまう。当会の調査でも、半数くらいは収入が減って3割くらい収入減となっているのが会員調査で出ているわけです。収入が減って支払いがきつくなるから大変だとこちらは訴えているわけですから、収入が減っていない状態でシミュレーションしてもらっても、それはそれで参考になりますが、実態との乖離があるんですよ。それを前回お聞きして、想定していないというか、検討していないなんですよ、回答としては。はっきり言ってください。検討していないけど引上げをするということを明確にして、今日採決を強行してください。
大臣:
様々なケースを前提にしてご議論いただいたと考えています。いずれにしても、受診行動の変化に関しては、事後的な検証が必要だと考えているので、今回の見直しによる影響については、引き続き注視していきたいと考えています。
記者:
検討していないですよね。
大臣:
様々なケースに含まれているかどうかというのは、すみませんが、事務方に再度ご確認いただければと思います。
記者:
冒頭の発言に関してですが、健康保険法の改正案について、今回の改正で将来的にどのような社会保障制度を実現されているのか、改めて教えていただきたいのと、OTC類似薬の特別料金の設定など、一部の方にはご負担を求める形の内容も入っていますが、国会審議をどのように臨んでいきたいか、どのように理解を求めていかれるか教えてください。
大臣:
公的医療保険制度を維持し、次世代に引き継いでいくためには、不断の改革努力が必要だと考えています。こうした状況を踏まえ、必要な保険給付等を適切に行い、世代間や世代内での負担の公平性の確保を図るとともに、限られた財源及び医療資源を効率的に活用することを目的として、今回法律案を提出しています。具体的には、先ほども申し上げましたが、OTC類似薬等の保険給付を見直す一部保険外療養の創設や後期高齢者医療における金融所得の反映、妊婦の経済的負担を軽減するための出産に係る給付体系の見直しなどを盛り込んでいます。法案審議に当たっては、改革の意義が国民の皆様に十分伝わるよう丁寧に取り組んでいきたいと考えています。

(了)