上野大臣会見概要

(令和7年12月26日(金)11:05~11:22 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について


大臣:
冒頭私から2点お話させていただきます。
まず、雇用統計ですが、令和7年11月の有効求人倍率は1.18倍と、前月と同水準となりました。また、完全失業率は2.6%と、これも前月と同水準となっています。求人・求職の動向や労働力調査の結果をみますと、現在の雇用情勢は、有効求人倍率は横ばいで、求人が引き続き求職を上回って推移しており、緩やかに持ち直しています。物価上昇等が雇用に与える影響に留意する必要があると考えています。
次に、令和8年度予算案についてです。この予算案については、本日の閣議で決定されました。社会の構造変化に対応した保健・医療・介護の構築、物価上昇を上回る賃上げの普及・定着に向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進、包摂的な地域共生社会の実現等の3つを柱とした必要な予算を確保したところです。厚生労働省の予算額としては、一般会計で約35兆円、前年度に比べて2.1%増となり、過去最大の規模となります。今後、これらの予算を効果的に活用し、令和7年度補正予算と合わせて切れ目のない対応を行い、医療・介護・障害福祉分野の賃上げや経営の安定、人材確保等に全力で取り組んでまいります。なお、詳細については、事務方にお聞きいただければと思います。

質疑

記者:
働き方改革について伺います。24日の第2回日本成長戦略会議では、働き方改革について厚生労働大臣を分科会長とする労働市場改革分科会で議論を進める方針が示されました。高市首相から指示のあった労働時間規制緩和については、当該分科会ではどのように議論を進めていくのでしょうか。また、労働市場改革分科会での議論や結論は、現在進行中の労働政策審議会労働条件分科会の議論にどのような影響を与えるとお考えでしょうか。
大臣:
先日24日に開催された第2回日本成長戦略会議において、今後、私を分科会長とする労働市場改革分科会が設けられました。ここにおいては、生産性の高い分野への円滑な労働移動や働き方改革を含めた労働市場改革について、議論を行うこととされています。今後行われるこの分科会での議論の状況も踏まえて、また、労働政策審議会において、公労使の委員の皆様にも具体的に議論いただきたいと考えています。令和8年通常国会での法案提出は、現在のところ考えていませんが、今後、必要な中身について具体的に検討を進めていきたいと考えています。
記者:
マスク着用の弊害についてお尋ねします。マスク着用の弊害については、これまで様々な論文が出されています。特に2021年4月にドイツで発表された論文「鼻と口を覆うマスクを日常的に使用することの副作用と潜在的な危険性についての総説」という論文は、178件の文献をメタ解析した、マスク着用に関してはこれまでで最大の研究と認識します。この論文では、マスク着用が呼吸機能障害や心拍数の増加、血中二酸化炭素の増加、頭痛、めまい、皮膚バリア機能の低下のほか、共感力の低下やコミュニケーション障害などを引き起こすことも指摘されています。日本の厚生労働省としては、マスクに弊害があることはお認めになりますか。
大臣:
ご指摘の論文の内容に対してのコメントは差し控えたいと思いますが、まず、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードにおいて示されたマスク着用の有効性に関する科学的知見や、WHOの見解を踏まえて、マスクの着用は、感染症対策に有効であると考えています。一方で、マスクの着用によって、例えば子どもの健やかな発育・発達の妨げとならないよう配慮することが重要だと考えていますし、特に、2歳未満の乳幼児においては、自分で外すことが困難であることなどから、窒息や熱中症のリスクが高まるため、着用は奨められないとしています。また、障害特性によっては、着用が困難な場合があることも留意が必要と承知しています。これら留意事項も含めて、基本的な感染症対策にかかる情報を厚生労働省ホームページに掲載してお示ししています。マスクの着用については、こうした情報等も踏まえて、個別の状況に応じて個人でご判断いただきたいと考えているところです。なお、引き続き、最新の知見を注視しつつ、対策・周知等を行っていきたいと考えています。
記者:
関連で1つ確認ですが、そうしますと、マスク着用による弊害は全くないわけではないという認識でよろしいでしょうか。
大臣:
先ほど申し上げたように、障害特性のある方や2歳未満の乳幼児といったところについては、留意することが必要な要素があろうと考えています。
記者:
確認ですが、そうしますと、マスク着用については、個人によって状況が異なるということでリスクとベネフィットのバランスを考えて、各々が判断すべしという理解でよろしいでしょうか。
大臣:
繰り返しになりますが、留意事項も含めて、厚生労働省のホームページに掲載してお示ししているので、そうした情報を踏まえて、個別の状況に応じて個人でご判断いただければと考えています。
記者:
弊害は少しでもあるのか、全くないと考えるのか、どちらでしょうか。
大臣:
弊害というかどうか、弊害の定義如何によるので、先ほど申し上げたようなリスク、子どもさんの場合など、そうした場合には留意することが必要だと承知しているところです。
記者:
最高裁判決を受けた生活保護費の追加支給について伺います。関連費用を計上した25年度補正予算の成立を受け、当時の減額分との差額や原告を対象にした特別給付金の支給へ、どのように自治体と連携し、いつ頃支給を始めるお考えでしょうか。関連データが残っていない自治体もあり、着実に行き渡るかどうかの課題があると思いますが、どのように臨んでいくのでしょうか。
大臣:
追加給付のスケジュールについては、自治体における体制確保やシステム改修など、一定の準備期間を要すると考えていますが、できる限り早期に対象となる方に支給できるように準備を進めていきたいと考えています。また、今後、今回の追加給付額の算定に関する告示を速やかに制定します。また、実務を担っていただく自治体に向けて、支給事務マニュアルを作成し、自治体に対する実施体制を確保するための財政支援なども、自治体と連携しながら取り組んでいきたいと考えています。現在生活保護を受給していない世帯については、自治体の状況によっては、当時の保護決定にかかる情報等がないといった場合もあろうかと思うので、当時の世帯主の方から保護を受けていた旨の申出を行っていただいた上で、自治体において申出内容や挙証資料等を確認の上、追加給付を行うこととしています。国としては、今後、対象となる方に対する周知・広報に取り組んでいきたいと思っていますし、追加給付に関する各種問い合わせや相談に対応するための相談センター、仮称ですが、これを設置することとしています。自治体と緊密に連携しながら、適切に対応していきたいと考えています。
記者:
高額療養費制度の引上げの対象人数と受診抑制について、3点ほどお伺いします。まずは、今回の高額療養費制度の見直しで外来特例を除いて、自己負担限度額が引き上げられる利用者の人数と全利用者における割合について、70歳未満・70歳以上に分けてご回答をお願いしたいというのが1点です。次に、今回の限度額引上げで削減される給付費のうち、受診抑制により削減される金額はどれくらいを見込んでいるのか。これに関連して、今年3月に限度額引上げが凍結された際にも、厚生労働省が受診抑制を見込んでいたということが大きな批判を受けました。厚生労働省はなぜ同じことを繰り返すのかとの批判も起きていますが、凍結時の問題点が解消されたかどうかも含めて、大臣としての受け止めをお伺いします。
大臣:
まず、現在、年に1回でも高額療養費に該当する方は、粗い推計になりますが、70歳未満で約410万人、70歳以上で、外来特例を含めて約870万人と推計しています。ただ、自己負担限度額が引き上げられる利用者の方の人数や割合のご質問がありましたが、これは例えば、年数回しか高額療養費の適用対象に該当しない場合であっても、今回、年間上限を設けているので、年間上限によってむしろ負担額が下がるケースもあるので、機械的な数字を申し上げることは現段階では困難だと考えています。また、令和8年8月施行分の見直しにより、実効給付率が約0.22%低下するため、その数字を、実効給付率が変化した場合に経験的に得られている医療費の増減効果の算定式に機械的に当てはめると、給付費の変化は約850億円減となりますが、これも言ってみれば単なる計算結果にすぎないわけですが、そのような計算はできるということです。今回の見直しは、制度全体の持続可能性を確保することと、年間上限に代表されるように、とりわけ長期療養者の皆さんの経済的負担のバランスを考慮したものであるので、このような趣旨について、引き続き丁寧に説明していきたいと考えています。
記者:
年間上限で引上げの実数値が分からないとご回答だったと思いますが、現時点で、年1回から年3回以上の利用者は、厚生労働省の資料によると660万人と承知しているので、おおよそそういった方が引上げになるというご認識でよいかについてお答えいただきたいのと、後半の長瀬効果による機械的な試算、給付・受診抑制については、あくまで数字的なものというご回答がありましたが、あくまで数字的なもので受診抑制があるかどうか分からないものを2,450億円見込み、保険料は国民一人あたり1,400円下がるというようなお示しをされているので、であれば、実際にはそのような給付削減がないのであれば、減額して見積もるべきだと思いますが、ご見解をお願いします。
大臣:
1点目は繰り返しとなり恐縮ですが、それぞれのケースは様々ですので、お尋ねのとおり、どのような割合で負担額が上がるのか、下がるのかというのを実数で示すというのはなかなか難しいと考えています。2点目については、長瀬効果の話かと思いますが、事務的にご確認いただければと思います。
記者:
先ほどの働き方改革についてですが、厚生労働省では、労働政策審議会において、日本成長戦略会議より以前から法改正について議論されているところではありますが、先ほど大臣がおっしゃった法案提出を具体的に考えていないということは、こちらの法改正の議論も含めて提出を考えていないということでよろしいでしょうか。
大臣:
そもそも、施行後5年の見直しで、この審議会において検討を進めているところですが、法案の改正を前提とした検討ではないと承知しています。また、法案を改正するにしても、いつの国会というように、あらかじめそれを前提にしたものでないと承知しているので、いずれにしても、その審議会における議論、そして今回設けられた分科会における議論を踏まえて、必要な改革等を進めていく必要があろうかと思っていますし、なおかつ、それが法律の改正事項かどうかというのは、また別の観点かと思っています。
記者:
予防接種健康被害救済制度の審査結果の公表に関して、2点伺います。この救済制度は1978年、約48年前から運用されていますが、3年ほど前、2022年5月19日の審査結果公表分から、「本審査会での認定にあたっては、個々の事例毎に、「厳密な医学的な因果関係までは必要とせず、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象」との考え方に基づき審査している」という文言が加わりました。この2か月後に、新型コロナワクチンの初の死亡認定があり、その後増え続け、現在1,059名が死亡認定されるに至っていますが、この初の死亡認定が出る直前のタイミングで「厳密な医学的な因果関係までは必要とせず」という文言を追加した背景や目的を教えていただけますでしょうか。もう1点ですが、前代未聞の1,000名以上の死亡認定があるにもかかわらず、SNS、例えば厚生労働省の公式Xアカウントでは、これまでの認定数を投稿した事例は私には1件も確認できませんでした。認定数の報告をSNSで一切しない理由があればお聞かせください。また、ホームページ公表以外に積極的な情報発信の検討はされていますでしょうか。
大臣:
まず1点目ですが、特例臨時接種以前から、今まさにお話のあったような考え方によって審査を行ってきたと承知しています。その結果をより分かりやすくお示しするといった観点から、結果の公表の際には、ご指摘の文言を記載しているものだとご理解いただければと思います。2点目ですが、審査会を開催する都度、厚生労働省ホームページにて速やかに公表している状況であるので、我々としては厚生労働省ホームページで適切な情報発信を行っていきたいと考えています。
記者:
1問目ですが、分かりやすくするためにその文言を追加されたということですが、これが分かりにくく、あたかもこの文言だけあることによって、ワクチンと関係ない方も厚生労働省が認めているのだという世間の理解もかなりされてしまっています。そして、もともとの文章には、それ以前に、前回会見でお伝えしましたが、症状の発生が医学的な合理性を有すること、時間的密接性があること、他の原因によるものと考える合理性がないことについて、医学的見地等から慎重な検討が行われて、その上で厳密な医学的な因果関係は、と続く文章の、その注釈だけあることで、前段の3つも掲載されてはいかがかと思うのですが、いかがでしょうか。
大臣:
誤解がないようにしないといけないというのはご指摘のとおりだと思いますので、不断に見直さないといけない観点だと思いますので、また検討させてください。

(了)