上野大臣会見概要(財務大臣折衝後)

(令和7年12月24日(水)13:42~13:57 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について

大臣:
私から冒頭発言させていただきたいと思います。先ほど、財務大臣と令和8年度予算編成に関して折衝を行いました。折衝事項について、ご説明申し上げたいと思います。
社会保障関係費ですが、令和8年度の社会保障関係費については、様々な制度改革・効率化努力を積み重ねることによって、実質的な伸びを高齢化による増加分に抑えた上で、令和8年度診療報酬改定における今後の賃上げ、物価対応分など経済・物価動向等を踏まえた対応を加算することで、令和7年度社会保障関係費と比較し、プラス7,600億円程度の39兆600億円程度とすることとさせていただきます。
診療報酬・薬価等改定についてですが、令和8年度診療報酬・薬価等改定については、診療報酬はプラス3.09%、薬価等はマイナス0.87%とします。また、この詳細については、令和8年度の改定率はプラス2.41%、令和9年度の改定率はプラス3.77%とします。賃上げ分のプラス1.70%については、施設類型ごとの職員の規模や構成に応じた配分となるよう措置していきたいと思います。また、賃上げの実効性を確保するための仕組みを構築することとしています。物価対応等の措置としてのプラス0.76%のうち、プラス0.62%についてはそれぞれの施設類型ごとの費用関係データに基づき配分することとしています。また、プラス0.14%については大学病院を含む高度機能医療を担う病院に対し、物価対応本格導入時の特例的な対応として措置することとしています。令和6年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分のプラス0.44%の配分に当たっては、令和7年度補正予算の効果を減じることのないように、施設類型ごとのメリハリを維持していきたいと考えています。また、実際の経済・物価の動向が令和8年度診療報酬改定時の見通しから大きく変動して、医療機関等の経営状況に支障が生じた場合には、令和9年度予算編成において更なる必要な調整を行うこと等とすることとします。
介護報酬改定、障害福祉サービス等報酬改定ですが、介護職員の処遇改善等のために、令和9年度介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定を待たずに、期中改定を実施します。令和8年度介護報酬改定については、改定率はプラス2.03%とします。これは、介護従事者について月1.0万円、介護職員について定期昇給込みですが、月最大1.9万円の賃上げが可能な水準となります。また、令和8年度障害福祉サービス等報酬改定については、改定率をプラス1.84%とします。これは、障害福祉従事者について月1.0万円、福祉・介護職員について定期昇給込みで月最大1.9万円の賃上げが可能な水準です。
社会保障改革の新たなステージにおいて、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指すとの方針に基づいて、経済・物価動向等に対応しつつ、医療・介護を中心とした社会保障制度改革を着実に実行してまいります。令和8年度においては、高額療養費制度の見直し等を実施するとともに、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しや金融所得の反映などを内容とする法案の次期通常国会への提出を目指します。高額療養費の見直しについては、超党派の議員連盟のご提言も踏まえるほか、患者団体の皆さんにもご参画いただいた専門委員会において、本年5月から8回にわたり議論した上で、基本的な考え方を整理してまいりました。こうした幅広い関係者のご意見を踏まえ、長期療養者の経済的負担に配慮するため、多数回該当の金額維持や年間上限の仕組みの新設を行うほか、低所得者への配慮として、住民税非課税世帯の引上げ幅の抑制や、年収200万円未満の課税世帯への配慮など、制度全体の持続可能性を確保しながら、長期療養者等の経済的負担に配慮するといった全体的なバランスを丁寧に検討した内容としています。このような見直し案の趣旨をご理解いただけるように、引き続き丁寧に説明してまいりたいと考えています。また、介護保険制度については、住宅型有料老人ホームの入居者に係る新たな相談支援の類型を設けた上で、利用者負担を導入するとともに、介護保険制度の2割負担の判断基準については、第10期介護保険事業計画期間の開始前までに結論を得ることとしたいと考えています。
こども未来戦略において「歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築する」とされているので、その「実質的な社会保険負担軽減効果」について一定の整理を行い、2027年度及び2028年度の算定方法については、別途検討を行うこととしています。
その他ですが、協会けんぽにおいては、医療保険料率の引下げと併せ、特例減額の控除額を時限的に引き上げることとします。また、生活扶助基準の特例加算については、1,000円引き上げ、一人当たり月額2,500円とします。令和8年10月から1年限りの措置として実施していくこととなります。

質疑

記者:
2点お伺いします。まず1点目です。診療報酬の本体部分ですが、3.09%引上げという、この数字の背景というのと、30年ぶりの引上げ幅となったということに対する大臣のご所感についてお伺いします。一方で、この大幅な引上げによって国民負担が増大するのではないかという懸念の声が出ています。これに対してどのようにお応えになるのか、お聞かせいただければと思います。
大臣:
骨太の方針2025においても、これまでの歳出改革努力を継続する方針の下、高齢化による増加分に相当する伸びに経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算することとされているので、それを踏まえて、財政当局と調整を進めてまいりました。この加算については、診療報酬改定のみならず、介護報酬やその他の改定についても反映されていると理解していますが、いずれにしても、補正予算で物価上昇分や賃上げに対応しましたが、やはり現下の状況を考えると、医療関係者等、大変厳しい経営環境にある、あるいは賃上げが求められているという状況があるので、そうした部分にしっかり対応していくという方針の下で、診療報酬改定について、財務大臣と折衝を重ねてまいりましたが、一定のご理解をいただいた上で3.09%という形で決着しました。なお、保険料の負担についてですが、やはり現役世代の保険料負担の抑制、バランスを取るということが非常に大事です。今般の診療報酬改定については、令和8年度、令和9年度の改定に対応するものですが、この2年間を通じて社会保障の負担率が令和7年度と比較して上昇しないということで取り組んでいるところですので、そのような懸念というのは基本的にはないと考えています。
記者:
もう1点だけ、高額療養費制度についてお伺いさせてください。先ほど全国がん患者団体連合会と日本難病・疾病団体協議会の方で共同声明が出され、一定の見直しについては理解されている一方で、月ごとの限度額については十分に抑制されていないということや、更なる抑制を検討することを求められています。今回、再検討という形で見直しされてきたと思いますが、その見直しを行う背景というのと、こういった声に対する厚生労働省としてのご対応をどのようにするか、お考えをお聞かせください。
大臣:
そのような共同声明が出されていることについては承知しています。この声明については、今朝の段階で各種報道が出て、それを踏まえて出されたものだと聞いていますが、私と財務大臣との間で折衝を重ね、正式に合意したものについては、今お手元にお配りしているものにあります。この見直し案の検討に当たっては、患者団体の皆様にもご参画いただいた専門委員会において検討を進めてまいりました。先ほども申し上げましたが、多数回該当の金額維持や年間上限の仕組みの新設、低所得者への配慮など、制度全体としての持続可能性というのは一定確保しながらも、長期療養者等の経済的な負担に配慮するといったものですので、是非今後とも丁寧に説明して、ご理解いただけるようにしていきたいと思っています。
記者:
介護保険制度改革について伺います。利用者負担の一定以上の所得2割負担の対象拡大についてですが、第10期の計画の開始前までに結論を得るということになっていますが、年内の決定ではなく、来年以降も調整を続けるという判断だと思いますが、その理由について伺えますか。
大臣:
審議会等の場でも様々なご意見が出ましたので、もう少しいろいろなご意見を反映した上で調整を進めたいという趣旨です。
記者:
具体的には、例えば、医療の増額も踏まえてですとか、どういった観点で。
大臣:
今回、社会保障制度全体の改革案ということで進めてまいりました。その中でやはり、全体として負担が偏ってしまうとかしないとか、様々な観点があろうかと思いますので、具体的な制度設計を重ね合わせたときに、どのようになるかといった点を十分に考慮する必要があると考えています。
記者:
端的に聞きます。高額療養制度の話で、今日共同声明が出された中に、これまでの専門委員会では、具体的な金額が、一月あたりの負担額の上限引上げについて示されていなかったという指摘がありました。この件に対して、大臣の所感をお聞かせください。
大臣:
これまで考え方自体は何度もご説明、議論していただいていたと思います。その中で、具体的な金額まで説明できていなかったと思いますし、それは予算に直結する問題でもあるので、財務省との協議の中で、現在の方針が決められたというようにご理解いただければと思います。いずれにしても、明日、また審議会を開催して、その中で丁寧に説明させていただきたいと思いますし、いずれにしても、患者団体等の皆さんのご理解を得ることは非常に大事ですので、これからもしっかり丁寧にご説明させていただければと思います。
記者:
先ほど大臣が、令和7年度に比べて社会保障の負担が増えないというようなことをおっしゃっていました。記憶違いだったら申し訳ありません。ここを正確に確認させていただきたいのと、賃上げにも、今介護や医療の現場で賃上げや物価上昇について、これに対するお金がかかるのに、それに関してもいくら効率化したとしても負担が上がらないという認識でよろしいのかどうか改めて確認します。
大臣:
今般の令和8年度の診療報酬改定等は令和8年度、令和9年度に対応するものです。この2年間を通じて、社会保障の負担率が令和7年度と比較して上昇しないように取り組んでいくこととしています。これは雇用者の報酬が上がっているので、保険料の総額自体が増えていると。その範囲内で改革を行う、その範囲内で診療報酬改定等を進めているということですので、そうしたことについてご理解いただきたいと思います。全体として、保険料増収の範囲内で今般の予算案を取りまとめているという理解です。
記者:
つまり、保険料を支払っている側の報酬が上がっているから、保険料の収入も上がり、その範囲内で行うということですか。
大臣:
そうです。

(了)