上野大臣会見概要

(令和7年11月14日(金)8:30~8:40 院内大臣室前)

広報室

会見の詳細

閣議等について

大臣:
私からは特にありません。

質疑

記者:
自民党と日本維新の会の連立合意書に基づく社会保障の実務者協議が、12日に初めて開かれました。OTC類似薬の保険適用見直しのほか、金融所得を医療や介護の保険料算定に反映する方法も検討して、年内にも結論を出したいとしています。この金融所得の把握の徹底の目的や、厚生労働省としてどのように対応されていくか教えてください。また、与党のこうした協議と社会保障審議会での議論が並行していくこととなりますが、両者の意見をどのように受け止めながら厚生労働省として社会保障改革を進めていくのでしょうか。
大臣:
金融所得の勘案についてですが、金融所得については、確定申告をするかどうかによって社会保険料の負担等が変わってくるということがあります。一定の金融所得があったとしても、例えば、特定口座内の源泉徴収により課税関係を終わらせてしまえば、保険料の算定にも使われませんし、窓口での負担割合にも使われないということがあり、一部でこれは不公正ではないかという声がこれまでもありました。そうした観点から、この是正に取り組んでいく必要があると思っています。金融所得を医療保険制度等における負担に反映する在り方については、社会保険関係法令で提出義務を課すということが必要だと思っています。それから、税制における金融所得の法定調書を活用する方式を前提にして検討を進めていきたいと思います。その際には、法定調書提出のオンライン化や法定調書へのマイナンバー記載を確実にすることが必要になります。また、法定調書情報を広域連合や市町村と共有し、オンライン化する必要があると思っています。こうしたシステムを作っていくことが必要ですので、一定の時間がかかろうかと思いますが、しっかり前向きに取り組んでいきたいと思います。また、これから社会保障改革の議論が進められていきます。当然、審議会での議論を我々も十分に踏まえていく必要があると思っていますし、一方で、日本維新の会の皆様と連立政権で合意しているので、その協議も始まっていると伺っています。そうした協議の中身を政府としてもしっかり受け止めて、具体的な政策に反映できるように努めていきたいと思っています。
記者:
今年8月に長生炭鉱で見つかった遺骨について2点質問します。1点目から失礼します。DNA鑑定などを含めた身元特定をどう進めていくのでしょうか。厚生労働省としての見解を教えてください。遺骨収集推進法の対象にはならないのでしょうか。また、遺骨のDNA鑑定を進める場合、照合が現実的に困難な時はDNA鑑定だけでなく、身元特定DNA鑑定会議で行われているような遺骨が見つかった状況なども含めて特定するやり方があるかと思いますが、この方法を活用することを検討しているのでしょうか。教えてください。
大臣:
1942年に長生炭鉱において発生した事故について、183名の方がお亡くなりになられていますし、うち朝鮮半島出身の労働者136名が犠牲になっているということで、大変痛ましい事故であったと認識しています。犠牲になられた全ての方に心からお悔やみ申し上げたいと思います。その上で、ご遺骨等が一部発見されているとお伺いしていますが、そのDNA鑑定については、国内法令等に沿って、関係省庁間で連携をしっかり図りながら、引き続き適切に対応していきたいと考えています。また、ご指摘のあった戦没者遺骨収集推進法における戦没者の遺骨収集については、今次の大戦によって、沖縄、硫黄島などの地域において死亡した方の遺骨の収容と定義されているので、今回のケースについては、この定義に該当しないところです。また、身元特定DNA鑑定会議もこれらの法律に基づいた対応だと承知していますので、それには当たらないということになろうかと思います。
記者:
もう1点失礼します。鑑定とは別に、市民団体等は坑道内調査への協力を国に求めています。専門家へのヒアリングを進めているとのことですが、調査への協力について、現時点でどのようにお考えでしょうか。
大臣:
長生炭鉱の水没事故で亡くなられた方のご遺骨と考えられる人骨が一部確認されたことは承知しています。80年以上も前に落盤事故が発生した海底の坑道ですので、ここに潜水して、調査・発掘することについては、やはり安全性の観点から懸念があると思っています。私どももいろいろな実地調査をしているわけですが、その実務に照らしても、対応可能な範囲を超えているのではないかと考えているところです。厚生労働省としては、市民団体の皆様に対して、これまでも繰り返し、安全性に対する懸念をお伝えしてきたところですが、引き続き、専門的な知見の集積に努めさせていただければと思います。
記者:
老老介護についてお尋ねします。去年、都内で老老介護の末、71歳の娘が102歳の母親を殺害した事件が起きました。その公判で、娘は「地域包括支援センターに相談したが、まともに取り合ってもらえなかった」という趣旨の話をしていました。老老介護は社会問題化していますが、こうした現状について大臣としての受け止めと、今後の方策などがあれば教えてください。また、要介護者が自宅でベッドから落ちてしまったが、家族も高齢者でベッドに戻せず、深夜で誰にも頼れないという現状もあります。どのようにこの問題を解決していくべきなのか、併せてお考えをお聞かせください。
大臣:
ご指摘の報道については承知しています。このような事件があったことは、大変痛ましいことだと感じていますが、個別の事件についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。いずれにしても、介護する家族も高齢化しているといった傾向にあるので、介護が必要となる高齢者のみならず家族で介護していただいている方も含めて、社会全体で支えていくといった観点が大事だと考えています。家族介護者自身への支援としては、今お話のあった地域包括支援センターの相談体制の整備や、介護者同士の交流会の実施等も推進しているところですが、一層こうした取組に力を入れていきたいと思っています。また、夜間の在宅介護を支えるサービスとして、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や、在宅介護が一時的に困難になった場合等に利用できるショートステイなどがあるので、その利用が可能となっているところです。いずれにしても、厚生労働省としては、介護が必要な高齢者やそのご家族の状況が、市町村をはじめとする地域社会の担い手に適切に把握されるようにすることが必要だと思っていますし、その上で必要なサービスにつなげられるように努力していきたいと考えています。
記者:
来年度の診療報酬改定について伺います。東京都が12日に、大臣に対して診療報酬改定等に関する緊急提言を提出しました。提言では、大都市の地域特性で医療機関が受けている影響を十分に考慮し、診療報酬の大幅な引上げを行うことを求めています。東京都が求める地域特性を考慮する考えはあるのか、大臣の見解を伺います。また、調査結果を踏まえて東京都は、「少なくとも約10%の本体部分の改定が必要との結果が得られた」と説明していますが、この数字についての受け止めも併せて伺います。
大臣:
都心部の病院を含め、医療機関は物価高騰等の厳しい状況に直面していると考えています。このため、診療報酬改定の時期を待たずに、総理も再三言及されていますが、必要な対応をスピード感を持って進めていきたいと思っています。診療報酬改定については、まさにこれからしっかり議論を進めていくことが必要ですが、物価・賃金を含めた社会経済の変化や医療機関の経営状況、医療保険制度の持続可能性といったことも十分に勘案して検討を進めていきたいと思っています。これから具体的な検討を進めていくので、今の段階で具体的な話というのはなかなか難しいわけですが、年末に向け、我々としてもしっかり現状を踏まえて取り組んでいきたいと思っています。

(了)