上野大臣会見概要

(令和7年11月11日(火)9:32~9:51 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について


大臣:
私から1点ご報告させていただきたいと思います。「令和7年版死因究明等推進白書」について、今日閣議で決定しました。本白書は、死因究明等推進基本法に基づき、毎年国会に報告する法定白書です。今回は、令和6年7月5日に閣議決定された「死因究明等推進計画」に基づいて令和6年度中に政府が講じた施策を報告しています。令和6年度は、地域における死因究明の実施体制の整備に向けて、引き続き解剖等を行う拠点整備のモデル事業を実施するなど、着実に施策を進めることができました。今後とも、安全で安心して暮らせる社会、そして、生命が尊重され個人の尊厳が保持される社会の実現に向けて、関係省庁と連携しながら、死因究明等の推進に全力を挙げて取り組んでまいります。

質疑

記者:
2013~15年の生活保護の保護費引下げを違法とした最高裁判決の対応について伺います。7日の専門委員会では、少なくとも2.5%程度引下げをやり直す案が示されました。引下げ分の一部の追加支給にとどまり、全額補償を求める原告側からは既に批判の声が上がっています。この問題の解決が見えない状況ですが、どのように受け止めていますでしょうか。また、高市首相は同日の衆議院予算委員会で判決に関し「深く反省し、おわびする」と述べ、政府として初めて謝罪しました。厚生労働大臣としてどのように受け止めるか、また、謝罪するお考えはあるのかどうか、お願いします。
大臣:
1点目ですが、最高裁判決を受けた対応の在り方については、先般7日に開催された第8回専門委員会において、取りまとめに向けた方向性の案について、各分野の専門家の皆様からご意見を頂きました。次回以降の専門委員会において、報告書案をご審議いただく予定ですので、その中で具体的な方策、対応についてしっかりと議論を進めていただいて、政府としての方針を決めていきたいと思っています。2点目ですが、最高裁判決において、「デフレ調整に係る判断の過程及び手続に過誤、欠落があった」と指摘され、違法と判断されたことについては、生活保護行政を所管する厚生労働省としても深く反省し、おわび申し上げたいと思います。いずれにしても、できるだけ速やかに専門委員会としての結論をいただいた上で、私どもの対応方針を決定してまいります。
記者:
補正予算で対応する医療機関への支援措置についてお伺いします。高市首相は7日の衆議院予算委員会で、支援措置の対象に診療所が含まれるのかと問われた際に、「経営状況をみて考えなきゃいけない。全部100%、例えば、黒字のところまで含まれるということではない」というようなご答弁をされました。支援措置は現在、厚生労働省で中身について検討中と思いますが、黒字の医療機関は対象外にする考えはあるのでしょうか。また、対象に入るという場合でも、経営状況によって支援内容を区別する考えはあるのでしょうか。大臣の現状のご見解をお伺いします。
大臣:
ご案内のとおり、医療機関の経営難は大変深刻な状況にあるので、対策については急を要すると考えています。したがって、経済対策・補正予算に必要な施策を盛り込み、スピード感を持って対応していくことが必要だと考えています。医療機関への支援については、「病院、診療所を含めて対象である」と総理がお話しされているとおりです。具体的にどういった中身にするか、どういった方策にするかということについては、現在補正予算の編成に向けて政府内で調整中ですので、現段階で確たることは申し上げられませんが、いずれにしても、補正予算の中でしっかりとした対応をしていきたいと考えています。
記者:
OTC類似薬の保険外しについて3点お伺いしたいと思います。難病患者の家族が呼びかけて私ども保団連も協力した患者影響調査では、OTC類似薬が保険除外された場合、8割が「薬代が高くなる」、6割が「薬が必要量用意できず症状が悪化する」と回答し、9割が保険除外に反対しています。厚生労働省にも資料を提供していますが、調査の受け止めをお伺いします。また、厚生労働省として患者調査や当事者へのヒアリングを実施する予定はありますでしょうか。最後に、11月6日の社保審の医療保険部会では、こどもや慢性疾患を抱える方、低所得者への配慮などの意見が多く出されていたと思います。こうした配慮すべき対象者は今後保険適用が継続されたと受け止めてよいのでしょうか。
大臣:
ご指摘の調査については承知しているところです。いわゆるOTC類似薬の保険給付の見直しについては、骨太の方針2025において、「医療機関における必要な受診を確保し、こどもや慢性疾患を抱えている方、低所得の方の患者負担などに配慮しつつ」検討するとされているところですので、このことを踏まえて、我々としても今検討を進めているところです。現在、審議会における議論の中でも、受診遅延による健康被害や飲み合わせリスクといった課題の指摘や、過度な負担や急激な変化が生じないよう配慮を求めるようなご意見などについても頂いているところです。このようなご意見や、患者の方々が置かれた立場はそれぞれ様々ですが、そうしたことも踏まえながら多様な声を政策に反映できるように、ヒアリングのお話がありましたが、それを行うかどうかも含めて丁寧に検討を進めていきたいと考えています。
記者:
今年の通常国会で、高額療養費制度の見直しがいったん提案された後に一時凍結という形になったことがありますが、このOTC類似薬の保険外しについても、より一層関係各所で議論が深められるかなと思うのですが、今後、見直しの提案そのものを中止する可能性も、可能性としてはあるのかというところを1点お伺いさせていただきたいと思います。
大臣:
これについては、日本維新の会との合意に項目として含まれているので、一定何らかの検討を進めて、何らかの対応をしていくべきであろうと思いますが、それについても、今後の検討の中で議論を進めていきたいと思っています。
記者:
5日の財政制度等審議会の分科会では社会保障制度改革の議論が行われ、その中で財務省は70歳以上の医療費の自己負担割合を現役世代と同様に3割にすべきとする案を提示しました。この案に対する厚生労働省としての見解をお聞かせください。また、社会保障審議会医療保険部会では、全世代型社会保障の構築の推進として、高齢者の医療費の自己負担割合の在り方を含む議論が行われています。今後、厚生労働省として高齢者の医療費の応能負担についてどのように進めていきたいとお考えでしょうか。大臣の見解をお聞かせ願います。
大臣:
社会保障制度を持続可能なものとしていくためには、全ての世代で能力に応じて支え合う全世代型社会保障を構築していくという方向性については、厚生労働省としても財政制度等審議会と同様の認識に立っています。ただ、70歳以上の高齢者の窓口負担割合を一律3割とすることについては、一般的に高齢者の方は所得が低く医療費が高い傾向にあるので、大きな負担増になると考えます。必要な受診が抑制されるおそれがあるといった指摘もあります。こうしたことから、高齢者の所得の状況や受診状況等を丁寧に確認していく必要があると考えており、なかなか窓口負担割合を一律3割というのは現実的ではないと考えています。また、高齢者の皆様の負担といいますか、先ほど申し上げた全世代型社会保障は、全世代の皆さんが能力に応じて負担し支え合うということですので、高齢者の皆さんにおいても、能力に応じた負担をどのように求めていくかというのはしっかり議論していくことが必要だと思っています。
記者:
新型コロナワクチンで副反応疑い報告の死亡事例の多くが情報不足で判定不能、γ判定とされている問題について改めて伺います。あるご遺族が、追加情報を提出する方法を厚生労働省や自治体に問い合わせたところ、教えてもらえなかった事例があることを確認しています。私の調べでは、実はPMDAには患者副作用報告制度というものがあり、この制度はワクチンを接種した場合でも自己申告できる制度と聞いています。ただ、そのことはメディアで一度も報道されたことがなく、実は全く知られていないのではないかと思われます。そこでお尋ねしたいのですが、1点目は、この患者副作用報告制度という自己申告の制度は、コロナワクチンの特例臨時接種でも使えたのでしょうか。2点目は、もしこの制度が使えたのであれば、なぜこの制度を周知・広報してこなかったのかという点について、大臣のご見解をお聞かせください。
大臣:
患者の方からの副作用報告については、新型コロナワクチン特例臨時接種を受けた方についてもPMDAに報告可能です。この制度の周知については、これまで政府広報やSNSを通じて周知活動などを行ってきていますが、それが十分でない面もひょっとしたらあるかもしれませんので、引き続き周知の徹底については、努めてきたいと思っています。
記者:
1点関連ですが、コロナワクチンの特例臨時接種を行っていた間に、この患者副作用報告制度という、自分からきちんと副反応疑いの報告ができるという制度を周知した事実はあるのでしょうか。おそらくないのではないかと思うのですが。コロナワクチンの特例臨時接種に関連して、国民全員が奨励されていた時期に。
大臣:
一定の実施をしているという報告を受けていますが、その詳細は、申し訳ないですが事務方に確認をお願いしたいと思います。
記者:
新型コロナワクチンについて伺います。11月2日NHKEテレで放送された「サイエンスZERO 副反応をなくせ!“安全なmRNAワクチン”を」において、mRNAワクチンの様々な問題が取り上げられました。番組で指摘された以下の4点について、厚生労働省の見解、これは認められるのか、あるいは違う見解なのかを教えていただけますでしょうか。1点目、LNPが炎症を引き起こすこと。2点目、LNPは接種部位にとどまらず、体内に分布すること。3点目、CAPのないmRNAが炎症を引き起こすこと。4点目、スパイクタンパク質が1年以上経って検出できること。以上よろしくお願いいたします。
大臣:
mRNA-LNPを用いた新型コロナワクチンについては、mRNAを含んだLNPを動物に投与した際の生体内分布試験や毒性試験といった非臨床試験の結果や、CAP構造が付加された割合に関する品質管理方法の確認など、PMDAでの審査及び厚生労働省の審議会での審議において、個々の品目の特性を踏まえた科学的知見に基づいて、品質、有効性及び安全性を確認した上で薬事承認しているところです。また、承認後については、審議会においてワクチン接種後の副反応疑い報告を全例評価しているほか、国内外の様々な情報を収集・精査して評価しており、現時点でワクチンの安全性にかかる重大な懸念は認められないと評価しているところです。その上で、スパイクタンパク質の残存や毒性については、ワクチンの安全性を評価する観点から、重大な疾病の発生に関わらず、様々な知見を収集し、専門家の意見を伺った上で検討を行うこととしているので、現在必要な情報の収集・整理を行っているところです。引き続き、科学的知見の収集に努め、専門家に評価いただいて、ワクチンの安全性の評価を適切に行うとともに、新たな知見が得られた場合には、速やかに情報提供を行ってまいりたいと思います。
記者:
質問に答えていただいていないと思うのですが。この4点があるのか、ないのか、この見解をお伺いしているのですが。この現象が事実として厚生労働省は認識しているのかどうかなのですが。
大臣:
この現象があるのか、ないのか。
記者:
はい。厚生労働省はこれまで、スパイクタンパク質はすぐ消えると説明してきました。ワクチンでも接種部位でとどまってすぐ消えるから安全だと言ってきたのですが、この報道によると、このワクチンは体内に分布して、700日以上経っても残っていると。これを厚生労働省は認めているのかどうか。
大臣:
認める、認めない以前に、そうした様々なご指摘があるので、それについてはしっかり評価していきたいと思っています。先ほど申し上げましたが、様々な知見を収集して、専門家のご意見を伺った上で、いろいろな判断をしていくことが必要だと考えています。
記者:
本日2点質問させていただきます。パブリック・コメントについて、過去に大麻取締法改正やマイナ保険証のときに寄せられた意見が全く反映されておらず、結果ありきの既定路線ではないかと非難の声が上がったと聞いています。現在、CBN規制についてパブリック・コメントを募られていますが、反対意見が多かった場合、その意見は反映されるのでしょうか。パブリック・コメントにどのような意義を見いだして意見を募集されているのかお聞かせください。もう1点です。5月の山梨学院レスリング部の事件についてお聞きします。大麻成分を含んだクッキーを食べた学生が寮の2階から転落し大怪我を負ったとされる事故です。未成年がアルコールを摂取していたと報道されています。未成年の飲酒による酩酊で様々なトラブル、事件事故も多く起きています。山梨学院レスリング部の事件では転落とCBNとの因果関係は確認されていますでしょうか。
大臣:
1点目ですが、ご指摘のとおり、現在パブリック・コメントを実施中です。一般論ですが、パブリック・コメントについては、頂いた意見の内容を十分に考慮することが求められており、また、その考慮に当たっては、提出された意見の多寡ではなく、意見の内容に着目して行うべきとされているので、こうしたことも踏まえて、今後適切に対応していきたいと考えています。2点目について、山梨学院大学の事例ですが、CBNを含有すると標榜する製品を摂取後に飛び降りた事案だと承知していますが、ご指摘があったように、転落とCBNとの因果関係について証明することはなかなか困難だと思います。ただ、CBNの精神毒性について調査を行ったところ、これまでに指定された指定薬物と同等の精神毒性を示すデータが確認されています。その後、薬事審議会指定薬物部会において審議され、指定薬物として指定することが適当であるとの答申がなされたことを踏まえ、現在、必要な手続を進めているところです。
記者:
まだ確認中ということですが、では、飲酒による原因だということも、可能性としてはあるということでよろしいでしょうか。
大臣:
確認中というよりは、繰り返しになりますが、転落とCBNの因果関係について、それを証明することは困難だと考えています。

(了)