上野大臣会見概要
(令和7年10月24日(金)10:40~11:01 省内会見室)
広報室
会見の詳細
閣議等について
- 大臣:
- 本日の閣議で、令和7年版自殺対策白書を閣議決定しました。昨年の自殺者数は、総数が20,320人、小中高生の自殺者数が529人と依然として深刻な状況が続いています。今年の白書では特集として、近年、高止まりの傾向にある若者の自殺をめぐる状況について分析を行うとともに、政府の取組を紹介しているところです。本年6月に成立した自殺対策基本法の一部を改正する法律も踏まえ、引き続き関係省庁と連携し、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して、自殺総合対策を強力に進めてまいりたいと考えています。
質疑
- 記者:
- 就任挨拶では、高市首相から厚生労働省に対して、関係大臣と協力してとのことで、給付付き税額控除の制度設計に着手するように指示があったとのお話がありました。給付付き税額控除は中低所得者の支援につながり得るものと考えますが、大臣は、社会保障改革の中で給付付き税額控除をどのように位置づけ、何を狙いにした制度と考えて制度設計の検討に関係大臣として臨まれるでしょうか。お考えをお聞かせください。また、指示書の内容にある労働時間規制の緩和についてです。緩和の検討ということですが、これは労働時間全般の検討であって、上限規制の緩和と同義ではないというものなのでしょうか。規制緩和という指示内容を大臣としてどのように解釈されているのか、お考えをお聞かせください。
- 大臣:
- 1点目の給付付き税額控除については、その位置づけ含めて、今後、具体的な制度設計を検討していくことになります。厚生労働省としては所管している社会保障施策との関係で大きく関わるということになるのではないかと考えています。総理からは、関係大臣と協力して、税と社会保障の一体改革、特に社会保険料負担で苦しむ中低所得者対策としての給付付き税額控除の制度設計に着手するよう指示があったところですので、このご指示に沿って、財務大臣や全世代型社会保障改革担当大臣など、関係大臣と協力して具体の議論をこれから進めていきたいと思っています。2点目ですが、労働時間規制については、総理からは、心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討を行う、働き方改革を推進するとともに、安心して働くことができる環境を整備する、という指示があったところです。労働時間規制については、1日8時間、1週40時間以内を原則として、上限規制の他にも、フレックスタイム制や休憩・休日など様々な制度があります。これらに対しては、様々な声があることは承知しているので、誰もが働きやすい労働環境を実現していく必要性や、上限規制は過労死認定ラインであることも踏まえて、検討を進めていきたいと考えています。いずれにしても、先日の総理からの指示も踏まえて、総点検の結果を精査しつつ、審議会等で議論を深めていきたいと考えているところです。
- 記者:
- これまでの報道で、高市首相がこの後の所信表明演説で、社会保障の負担と給付の在り方を議論するための国民会議の設置を表明する予定です。会議は、与野党や有識者で構成されるとのことですが、先の通常国会では、与党と立憲民主の協議によって年金法案が修正された上で成立に至りました。上野大臣も実務者のお一人として協議に関わったと思いますが、そうしたご経験からも、党派を超えた社会保障の協議について、必要性や意義について伺います。
- 大臣:
- 今ご指摘をいただいたとおり、本年6月に成立した年金制度改正法については、国民全体に関わる大きな仕組みであることから、各党から様々なご意見を頂戴して成立させていただいたところです。社会保障制度の改革については、党派を超えて建設的な議論を行うということは重要であると考えているので、今後とも、幅広い方々のご意見を伺いながら検討を進めていきたいと考えています。
- 記者:
- 生活保護についてお伺いします。昨日、最高裁判決への対応に関する専門委員会の6回目の会合が開かれました。事務局からは、再度、ゆがみ調整及び高さ調整をする際の論点が示されました。ゆがみ調整と2分の1の調整を再度実施することについては「判決の拘束力及び反復禁止効に抵触しないのではないか」との記載がありました。これまでの議論の中で、ゆがみ調整は再度実施可能と考えているのか、大臣のご見解を伺います。また、高さ調整については、昨日の会合でも委員の中から慎重な意見もありました。専門委員会が否定的な見解でまとまった場合でも、厚生労働省の判断として再度実施する可能性があるのか、こちらも見解をお伺いします。
- 大臣:
- 今ご指摘のあった最高裁判決を受けた対応の在り方については、専門委員会において、現在精力的にご審議いただいているところですが、現時点で、今後の対応について、何らかの方向性が出たものではないと承知しています。引き続き、ご指摘のあった点も含めて丁寧にご審議いただきたいと思っていますが、速やかに専門委員会としての結論をいただいた上で、厚生労働省としての対応方針を決定してまいりたいと考えています。
- 記者:
- 高額療養費制度の引上げについてご質問します。10月22日の専門委員会で日本経団連の井上委員が、自民党と日本維新の会の連立合意書で、現役世代の保険料負担軽減が重要だと示されており、高額療養費制度も医療保険制度改革の項目の一つとして一定程度見直すべきと発言しました。私の理解では、連立合意書の改革項目には高額療養費の見直しは含まれていないという理解ですが、この点について確認をお願いします。また、専門委員会では、外来特例の上限引上げについて議論が開始されています。出された資料によると、高齢者が多く加入する国保、後期高齢で高額療養費、腎不全、乳がん、肺がん、アルツハイマー病などの重篤な疾患で入通院されている方が多く利用されている現状です。このようなことから、外来通院のがん患者・在宅患者ご本人だけではなく、ご家族にも、つまり現役世代にも負担になる上限見直しになるのではないかと考えていますが、この点についてご見解を伺いますお願いします。また、能力に応じた負担と言うのであれば、過去最高の内部留保を積み上げている大企業にこそ応能の負担を求めるべきではないでしょうか。
- 大臣:
- 1点目ですが、自民党と日本維新の会の連立協議において、社会保障全体の改革を推進することで、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指すと合意されたと承知しています。その中で高額療養費制度の見直しが政党間の合意の内容に含まれるかについては、恐縮ですが、政府の立場からのコメントは控えさせていただきたいと思います。ただ、現役世代の保険料負担軽減を求める声が大きいということは承知しています。2点目ですが、高額療養費の見直しについては、現在、当事者の方にも参加いただいている専門委員会において、関係者の皆さんからご意見を丁寧にお伺いしているところです。セーフティーネットとしての高額療養費制度を守りつつ、患者の方々の経済的な負担が過度にならないよう配慮していくことは大事ですし、一方で、増大する高額療養費を負担能力に応じてどのように分かち合うかという観点から、高齢者の外来特例の在り方を含め、引き続き丁寧に検討を深めてまいりたいと考えています。なお、大企業等のご指摘がありましたが、これは税制に関わることですので、私の立場からコメントは控えさせていただきたいと思います。
- 記者:
- 医療機関などの物価高対策についてお伺いします。先日、高市早苗首相から、「病院や介護施設の経営改善や従事者の処遇改善につながる補助金を前倒しで措置する」との発言があり、厚生労働省では、今年度の補正予算での対応も視野に、病院や介護施設の経営改善、従事者の処遇改善に向けた具体的な措置を検討されているかと思いますが、その措置の対象は病院に限らず、医科診療所や薬局も含まれるのでしょうか。現時点での方針をお聞かせください。
- 大臣:
- 総理から、今お話のあったような発言があったことは承知しています。私自身も医療や介護の現場については、物価高騰や医療需要の急激な変化などの厳しい状況に直面していると認識しています。これまで診療報酬改定や補正予算で一定の措置が講じられてきたと承知していますが、依然として物価高騰などの影響があると受け止めているので、先日の総合経済対策の策定に関する総理の指示も踏まえて、医療分野等についても、職員の方々の処遇を改善をするとともに経営改善を支援する考えです。そのために必要な施策を経済対策や補正予算に盛り込んでいきたいと考えていますが、施策の具体化については今後十分に検討していきたいと思います。
- 記者:
- 上野大臣は大臣就任後の会見において、高市新総理からの指示として、「次なる感染症危機への対応に万全を期す」、こちらを一番初めに紹介されました。次の感染症危機への対応には、新型コロナウイルス対策の検証などが不可欠と考えますが、上野大臣ご自身はこれまでの新型コロナウイルス対策を振り返って、どのような教訓や問題意識をお持ちでしょうか。
- 大臣:
- これまでの新型コロナウイルス対策から、様々な課題が明らかになったと考えています。例えば、医療機関の役割分担の明確化や医療提供体制の確保、検査体制の強化、政府の司令塔機能の強化等の課題があると考えています。これらに対処するため、新型インフルエンザ等対策特措法や感染症法等の改正、統括庁やJIHSの創設などの組織体制の強化、政府行動計画の全面改定等がこれまで実施されてきたと承知しています。感染症危機への対応については、これらを踏まえて、統括庁等と連携しながら、政府行動計画に基づく取組を着実に進めることが重要であると認識しており、進捗状況のフォローアップ等を通じて、次なる感染症危機にも万全を期していきたいと考えています。
- 記者:
- この感染症対策においては、国民の命を守るということが一番大切かと思いますが、現実的に起きていることとして、2022年からコロナや高齢化では説明できない死亡者の激増が今年になっても続いています。ここに関する大臣の所感があればお願いできますでしょうか。
- 大臣:
- ワクチンの接種等については、重症化のリスクやワクチンの効果の持続期間に関する知見を踏まえて、審議会で議論を行い、その時点の科学的知見も踏まえ、適宜接種対象等の見直しが行われてきたものと承知しています。このワクチンの安全性については、審議会において、副反応疑い報告制度等に基づいて報告されたものを全例評価しており、現時点では重大な懸念は認められないと評価されているところです。今後とも、科学的な知見に基づいて、有効性・安全性の評価を行い、接種の判断に必要な情報発信に努め、ワクチン接種を希望される方が接種しやすい環境の整備に努めていきたいと考えています。
- 記者:
- 質問がちゃんと伝わっていなかったと思うのですが、ワクチンの話ではなくて、日本人の死亡者が激増しているということが2022年から起きているということについてなのですが。
- 大臣:
- その点については、資料等もありませんので、別途事務方からご説明させていただければと思います。
- 記者:
- 今の質問にも関連しますが、新型コロナワクチンに大臣が言及されましたので、副反応疑い報告についてお尋ねします。前の大臣で、副反応疑い報告制度に基づく事例と健康被害救済制度の死亡認定事例を調べたところ、死亡認定事例のうち3割しか副反応疑い報告がなされていなかったということが前大臣での調査で明らかになっています。この情報が大臣に届いているかどうかということ、それをお聞きになって、この副反応疑い報告だけで安全性を評価しているというということ、これが3割しか報告されていないという現状をお聞きになってどう思われるかという点と、この調査結果については、記者会見では公表されたのですが、審議会等ではおそらく共有されていない情報だと思います。この情報について審議会等で情報共有していく必要があるものかと思うのですが、大臣のご所見をお伺いできますでしょうか。
- 大臣:
- ご指摘のあった突合等の状況については承知しています。ただ、副反応疑い報告制度と予防接種健康被害救済制度については、制度の目的や報告主体等が異なるので、それぞれの仕組みをどうするかということについて、様々な検討課題があると思っています。そうしたことは十分踏まえて今後検討するべきだと考えていますが、いずれにしても、現段階ではその仕組み等を見直すことについては一定の課題があるのではないかと認識しています。
- 記者:
- 若者の大麻所持での摘発が相次いでいますが、「大麻はアルコールより安全」という認識がネットで広がっています。厚生労働省はカンナビノイド事業者との裁判で、「アルコールは大麻と違い、昔から使われているから安全」と主張しています。もっと若者が納得するようなエビデンス、科学的根拠を示すべきではないのでしょうか。そしてもう一つ。欧米先進国ではアルコールは合法ドラッグとみなされています。日本では一般的にはドラッグではないかのような扱いになっていますが、国際協調主義の観点からも、「アルコールはドラッグ」とちゃんと啓発していくべきではないでしょうか。
- 大臣:
- まず、ご指摘の裁判については現在訴訟継続中ですのでコメントについては差し控えたいと思いますが、これまで厚生労働省として「アルコールが大麻より安全」と主張したことはないものと承知しています。大麻には、酒、たばこにはない精神作用として、幻覚などの有害作用があり、短期的な悪影響に加え、定期的な大麻の使用によって保健衛生上の危害を引き起こす悪影響もある旨の報告や研究結果もあると承知しています。このため、大麻の有害性は高いと考えていますが、異なる性質の物の毒性の高低を比較して論じることはなかなか難しいと思います。いずれにしても、このような物質に係る法規制の在り方については、有害性の程度等を踏まえて、それぞれ検討を行うことが重要と考えているので、引き続き適切に対応してまいりたいと思います。また、2つめですが、アルコールに係る啓発については、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を図るためのガイドラインを策定しています。過度な飲酒による影響として、アルコール依存症、生活習慣病、肝疾患、がん等が発症しやすくなるといった疾病発症等のリスクや、他人とのトラブルによる事故等の行動面のリスクをこの中でお示ししているところですので、引き続き、本ガイドラインを活用して、国民一人一人がアルコールに関連する問題への関心と理解を深められるように、取組を進めていきたいと思います。
- 記者:
- 確認ですが、「アルコールはドラッグ」という認識ですか。そうではないですか。
- 大臣:
- ドラッグという言葉の定義によって様々な解釈があり得るので、いずれにしても、ガイドラインを活用して飲酒に伴うリスクの周知をしていきたいと思います。
(了)




