福岡大臣会見概要
(令和7年8月26日(火)10:38~10:56 省内会見室)
広報室
会見の詳細
閣議等について
- 大臣:
- 冒頭私から1点申し上げます。「健康増進普及月間」の実施についてです。厚生労働省では、9月の1か月間を「健康増進普及月間」とし、生活習慣病の特性や運動・食事・禁煙・睡眠など生活習慣の改善の重要性について理解を深め、実践を促す普及啓発活動に取り組んでいます。本日から、全国の自治体が期間中に実施する約8千件のイベント等を検索できる特設ページを開設しています。国民の皆様には、特設ページや厚生労働省ホームページに掲載している「今日からはじめられる健康アクション」などを一つのきっかけとして、健康づくりに向けた行動を始めていただければと思います。また、本日14時からは、健康増進普及月間記念イベントを開催予定しています。日本高血圧学会より国民向け「高血圧10のファクト」の発表、なかやまきんに君のアンバサダー就任式などを行う予定ですので、マスコミの皆様方には、是非ご来訪いただければと思います。
質疑
- 記者:
- 生活保護基準引き下げ訴訟の判決についての対応をお伺いします。厚生労働省が設置した専門家委員会では次回、原告側へのヒアリングを予定されています。原告側は8月12日に出した声明の中で、「基準改定によって減額された保護費全額を遡及支給すべき」であり、「専門家委員会で改めて審理検討する必要はないはず」と述べていますが、こうした声をどう受け止めているのか、大臣のご意見をお伺いします。また、厚生労働省としての対応をいつごろまでに決定するのかの見通しについてもお伺いします。
- 大臣:
- これまでも申し上げてきましたが、今回の最高裁判決については、国家賠償請求は認められなかったものの、物価変動率のみを直接の指標として改訂することとした点において違法と判断され、当時の生活扶助基準の改定に関する行政処分が取り消されたものと承知しています。こうした中で、判決の趣旨及び内容を踏まえた今後の対応の在り方について、現在、生活保護基準部会の下に専門委員会を設置し、専門家にご審議いただいており、原告関係者の皆様からのご意見については、8月29日に開催予定の第2回専門委員会においてお伺いすることとしています。様々な論点について丁寧にご議論いただいた上で、できるだけ速やかに専門委員会としての結論をいただけるよう進めてまいりたいと考えています。
- 記者:
- 最低賃金の関連で、大きく2点お伺いします。1点目です。赤澤賃金向上担当大臣が愛知県、福岡県で知事と面会するなど、各地で最低賃金の引き上げを呼びかけています。三者構成のプロセスに照らして問題はないのか、厚生労働省としての見解をお聞かせください。また、都道府県などからの最低賃金に関する要請に対して、どのように対応すべきか、労働局や地方審議会に対して示している方針はないか教えてください。2点目です。発効日が岡山県で12月に設定されるほか、11月発効も相次ぎ、早い地域と遅い地域で2か月近くの差が開いています。労働者の生活や行政上の実務で想定される影響はあるでしょうか。また、発効日について厚生労働省として何らかの対応を検討することがあるか教えてください。
- 大臣:
- 地方最低賃金審議会で最低賃金の引上げの議論が行われるに際し、総理からは、様々な政府の支援策が「十分に各地に伝わるようにしながら、それぞれの地域の実情に応じた真摯なご議論をいただきたい」というご発言があったところです。赤澤大臣は、こうした発言も踏まえ、複数の知事のもとを訪問し、政府の支援策について直接お伝えしているものと承知しており、三者構成のプロセスに照らしても問題はないと考えています。都道府県等から最低賃金に関する要請があった場合も、地方最低賃金審議会において、ご意見を受け止めつつ、それぞれの地域の実情を十分に把握した上で、法定の3要素に基づいて、真摯なご議論がなされているものと承知しています。もう1点です。最低賃金の発効日については、労働者への速やかな賃上げを行う観点や、中小企業・小規模事業者における賃上げに向けた準備期間の確保の観点等を踏まえ、各地方最低賃金審議会の公労使の委員間で議論して決定できることとされているものです。これまでも、各地方最低賃金審議会での議論の状況により、各都道府県で発効日に差が生じることがあり、地域の実情を踏まえた真摯なご議論の結果であると受け止めています。厚生労働省としては、各都道府県において、改定後の最低賃金の遵守徹底が図られるように、しっかりと周知を行っていきたいと考えています。
- 記者:
- 1942年に落盤による大規模な水没事故で日本人と朝鮮半島出身の労働者計183人が亡くなった、山口県の長生炭鉱について3点伺います。市民団体による25日の潜水調査で、人の骨のようなものが3本見つかりました。周囲には靴も確認されており、山口県警による鑑定が進められています。国ではなく市民団体の取り組みではありますが、昨年10月から潜水調査を続け、海底に残されたままの遺骨に近づいたとみられることに対する受け止めをお聞かせください。また、政府は専門家へのヒアリングなどを進めているということですが、現時点の技術的支援の検討状況と、今回の市民団体の調査の進展を踏まえ、今後金銭的な支援を検討する余地があるのか、厚生労働大臣としてのお考えをお聞かせください。3点目の質問ですが、韓国のご遺族は、遺骨の身元を特定し、返還されることを強く望んでいるということです。そのためにはDNA鑑定が不可欠で、鑑定自体は厚生労働省の所管ですが、返還に至るまでには外務省が窓口となります。今後どのように連携するのでしょうか。また、すでに連携を進めているのでしょうか。
- 大臣:
- 長生炭鉱の坑道の落盤事故において犠牲になられた方々に心からお悔やみを申し上げます。市民団体の活動に対してのコメントについては差し控えさせていただきますが、現在、坑道内で発見されたものについては、山口県警察において検査を行っているものと承知しており、引き続き、状況を丁寧に把握してまいりたいと思います。厚生労働省としては、構造物としての炭鉱の安全性や、安全を確保した上での潜水の実施可能性等の観点から、知見を有する方々からのお話を伺っているところですが、現時点では、安全を確保した上での潜水調査に資するような新たな知見は得られておらず、現時点で、財政支援についての検討は進めていません。旧朝鮮半島出身労働者等のご遺骨問題については、これまでも外務省とも連携して対応してきていますが、まずは山口県警察における検査の状況を見守りつつ、関係省庁とも連携の上、適切に対応してまいりたいと思います。
- 記者:
- 本日の午後、「薬害根絶の誓い」が行われるとのことで関連して伺います。厚生労働省玄関先に「誓いの碑」があり、「医薬品による悲惨な被害を再び発生させることのないように」と刻まれています。その「医薬品による悲惨な被害」について2点伺います。まず、厚生労働省ではこの「悲惨な被害」をどのように定義しているのでしょうか。被害者の数や健康被害・症状の深刻さなど、具体的な基準などを教えていただけますでしょうか。2点目ですが、「悲惨な被害」と判断する意思決定プロセスはどのようになっていますでしょうか。過去のサリドマイド、スモン、HIV感染は、どの部署が関与し、どのようなデータや証拠をもとに、どのタイミングで「悲惨な被害」と判断されたのでしょうか。また現在の判断のプロセスはどうなっているのか、教えていただけますでしょうか。
- 大臣:
- 厚生労働省の前庭にある誓いの碑は、薬害エイズ事件の反省から、平成11年8月24日に建立したものです。誓いの碑に記されている「悲惨な被害」という言葉については、何らかの数値基準を設けて定義付けているものではありませんが、過去の医薬品に係る訴訟の和解確認書において記された文言を基に、被害者団体と協議の上で用いることとなったものです。これは、医薬品による悲惨な被害を再び発生させることのないようにする決意を銘記したものであり、厚生労働省としては、引き続き、医薬品の安全性・有効性の確保に最善の努力を尽くしてまいりたいと思います。
- 記者:
- 明確な定義がないということで、一般常識から考えればよろしいかなと思うんですけれども。この「悲惨な被害」についてですね。大臣にお伺いしたいのは、48年前から予防接種健康被害救済制度が運用されておりまして、これまでに死亡認定された事例が、1,194件ございまして、そのうち86%が新型コロナワクチン、1,031件を占めています。大臣がご就任されてから188件の死亡認定がされています。大臣、これは「悲惨な被害」だと思いませんか。いかがでしょうか。
- 大臣:
- ご指摘については、医薬品による健康被害が発生したものとしてコロナワクチンが最も多いのではないかというご指摘だったということですが、医薬品は対象となる方や使用頻度等が異なることから、副反応報告数や救済の認定件数をもって被害者数を比較することが適切かどうかということについては、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。これまでも何度も申し上げてきましたが、引き続き、科学的知見の収集に努め、専門家にご評価いただき、ワクチンの安全性の評価を適切に行うとともに、新たな知見が得られた場合には、速やかに医療機関に情報提供を行ってまいりたいと思います。
- 記者:
- では、悲惨な被害ではないというご判断をされていますか。
- 大臣:
- そこは先ほども申し上げましたように、引き続き、科学的知見の収集に努め、専門家にご評価いただき、新たな知見が得られた場合には、速やかに医療機関に情報提供を行うということです。
- 記者:
- 大臣個人としての見解でかまわないので、188名死亡認定されているわけです。悲惨な被害だとは思わないでしょうか。
- 大臣:
- ワクチンの安全性等については、専門家等にご評価いただいているわけであり、そういう中で、直ちにそれが「悲惨な被害」という言葉に該当するかということについては、今の時点で確定的に申し上げられる状況にはないと思います。
- 記者:
- 福岡大臣自体が、188名認定されているわけですよ。審議会とか関係なく、そういった方々、ご遺族の方が考えたときに、悲惨な被害だとは思わないということでよろしいですか。
- 大臣:
- 被害に遭われた方々には心からお見舞いを申し上げますが、そこについては専門家によってご評価されているもので、直ちに「悲惨な被害」というものに当たるものではないと認識しています。
- 記者:
- 新型コロナワクチンの健康被害に関連して質問します。以前も質問させていただいたのですが、予防接種健康被害救済制度の認定者数について、厚生労働省のホームページが2021年を最後に更新されていません。2021年を最後にですね。改めてお尋ねします。3月の記者会見の際、大臣は「精査の上、なるべく早く公表できるよう、対応を検討していきたい」と答弁されました。それからまもなく半年経ちますが、現在の状況をお聞かせください。
- 大臣:
- 以前、記者会見でもご指摘がありました。予防接種健康被害救済制度の令和3年度以降の審議件数については、令和7年5月にホームページにおいて公表させていただいています。令和3年末までの数値は認定者の人数ベースで公表していましたが、審査会での審議結果との整合性を踏まえて、現在は、審議件数ベースでの公表とさせていただいているところです。今後も、年度単位で審議件数をとりまとめ、適切な時期にホームページで公表していくこととしています。
- 記者:
- 5月に公表した件、後で事務方に確認します。もう1点、ワクチンに限定しない質問になりますが、コロナ禍の記録の保存についてお尋ねします。すでにコロナ禍が発生して5年半以上の歳月が経過しております。ちょっと古いですが、2023年9月に日本学術会議からコロナパンデミックにおける資料、記録等を保存するように政府に求める提言が出されました。この提言を受けて、厚生労働省では、コロナワクチンに限りません、コロナ禍全般における記録の保存について、従来の通常の一般的な記録と異なる特別な措置や対応は取られていますでしょうか。地方公共団体への指示・指導の有無も含めて教えてください。
- 大臣:
- 今般の新型コロナウィルス感染症に係る事態については、行政文書の管理に関するガイドラインに規定する「歴史的緊急事態」に該当するため、当該事態に対応するために行われた業務については、軽微なものを除き、保存期間満了時には原則として国立公文書館へ移管する文書として、記録を作成するものとされており、特別な対応が求められています。こうした国全体の方針を踏まえ、厚生労働省では、新型コロナウィルス感染症に係る事態への対応に関する行政文書の適切な保存等に関する通知等を省内に発出するとともに、新任の文書管理者等を対象に実施している定例の研修などにおいても、適切な文書管理を徹底するように指示しているところです。また、厚生労働省が所管する地方支分部局等に対しても、適切な対応を行うように指示等を行っています。なお、地方公共団体に向けては、内閣府より、国における取組を案内するとともに、適切に関連文書が保存等されるように、情報提供を行っていると承知しています。
- 記者:
- 最後の、地方公共団体への指示というのがきちんと行われているのかどうかですが、今「情報提供」という言い方をおっしゃいましたけれども、コロナ禍における対応というのは、かなり、地方自治体において当然、感染症対策は主として行われてきたかと思います。その地方自治体の記録の保全というのは、国において、もっと明確に責任を持ってなされていないのでしょうか。
- 大臣:
- 先ほども申し上げましたように、少なくとも厚生労働省が所管している地方支分部局等に対しては、適切な対応を行うように指示を行っています。地方公共団体については、厚生労働省として直接そこの運営について所管しているわけではありませんので、そこについては、内閣府から、国においての取組をしっかり案内させていただくとともに、適切に関連文書が保存されるように情報提供を行わせていただいているということです。
(了)