福岡大臣会見概要

(令和7年7月15日(火)10:44~11:02 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について


大臣:
私から冒頭1点申し上げます。フェンタニルに対する当省の取組等についてです。近年、欧米諸国などで濫用が問題となっている合成麻薬のフェンタニルに対する取組等について、報告します。フェンタニルは、麻薬及び向精神薬取締法の免許・許可制のもとで、輸出入、製造、所持、使用等を厳格に規制しています。また、その原料を取り扱う業務も届出制とした上で、事業者には輸出入の都度届け出ることを義務付け、不正流通の防止に取り組んでいます。先月30日には、麻薬取締部等に対し、事業者によるフェンタニルの原料の適切な取扱いを改めて徹底するよう通知したところです。このような厳格な規制の下、昨年までの6年間に税関でフェンタニルの密輸が摘発された実績はなく、国内の摘発状況からみて、現時点では、欧米諸国のような濫用拡大の実態はないと認識しています。一連の報道があることは承知していますが、フェンタニルを含む麻薬の取締りは、米国を含む各国の取締機関と、麻薬取締部等の日本の関係機関は、以前から緊密に連携しており、引き続き、密輸等の不正な取引を阻止すべく、取締りを徹底してまいりたいと思います。

質疑

記者:
20日投開票の参院選前の最後の閣議後会見ですので、選挙についてお伺いします。マスコミの世論調査では、自公で参議院の過半数を割り込む可能性があるとの結果が出ており、与党にとっては厳しい情勢ですが、このことについての受け止めをお聞かせください。また、外国人の人権問題などに取り組む複数の団体が、今月8日、選挙を通じて外国人を敵視する動きが広がっているとし、排外主義に反対する緊急共同声明を出しました。昨日14日にも、別の団体が外国人の生活保護に関するデマについて、警鐘を鳴らす声明を公表しています。いずれの団体も医療や年金、国保、生活保護などで、外国人が優遇されているとの主張の広がりを問題視していますが、外国人の社会保障制度を巡り、国内の世論が揺れている現状について、大臣のご所感をお聞かせください。
大臣:
選挙の情勢については、政府の立場でコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。政府としては、日本人と外国人がお互いに尊重し、安全・安心に暮らせる共生社会の実現を目指しています。厚生労働省としても、本年6月に、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議において決定された、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策や、本日、内閣官房に設置された、外国人との秩序ある共生社会推進室における議論に基づき、社会保障制度が適切に運用されるよう取り組んでまいりたいと考えています。
記者:
国が唯一採血事業の許可を出している日本赤十字社の東京都赤十字血液センターで今年5月、血液製剤を保管していた冷凍庫の電源が落ちるトラブルが起き、血液製剤のFFP約1万3,700本が使えなくなったことが判明しました。献血者の善意で成り立っている事業を巡り、これほど大量のFFPが使えなくなる異例の事態だと思いますが、今回のトラブルへの所感と、厚生労働省への報告が遅かった点に対する見解をお聞かせ願います。
大臣:
ご指摘のあった案件については、東京都赤十字センターにおいて、冷凍庫の冷却設備の更新時に委託業者が端子台を付け間違えたため、一時的に温度管理の逸脱があったものと承知しています。日本赤十字社での検討の結果、原料としての品質は保たれていたことから、今回のFFP約1万3,700本は国内製薬メーカー向けの原料血漿として転用することと承っており、廃棄はされないと聞いています。本件は日本赤十字社内部で対応を検討していたため報告が遅れたと聞いており、今後は、こうした事案は速やかに報告するよう、日本赤十字社に強く要請したところです。加えて、献血者の善意による貴重な献血由来の血液製剤であることから、しっかりと再発防止策を講じることも強く要請しているところで、血液製剤の医療現場への安定供給のため、日本赤十字社と引き続き、よく連携していきたいと考えています。
記者:
1930年代から軍人や民間人に広く使われていた血液造影剤のトロトラストについてご質問です。去年夏、長崎大学で膨大な患者の記録の存在が明らかになり、調査が進められています。旧厚生省による調査や補償については、軍人が対象であったので、限定的だったのではないかと指摘されていますが、国としてどう捉えていらっしゃいますでしょうか。また、改めて、国として被害の全体像を調査する必要性についてどうお考えか、併せてお答えください。
大臣:
厚生労働省では、戦傷病者の援護施策の一環として、昭和52年頃から、トロトラストの注入の有無を判定するための検診や、トロトラストの沈着者に対する医療費等の支給を行ってきたところですが、戦傷病者以外の民間の方に対しては、その当時の時点において把握が非常に難しい状況であったと認識しています。カルテ等の大部分が滅失しているとされており、トロトラストを注入された民間の方が受けた被害の全体像についての確認は困難であると考えていますが、報道等により、一部の方のカルテが見つかったということは承知していますので、現在進められている民間による調査の進捗を注視してまいりたいと考えています。
記者:
全国で保育所約300カ所を運営する「キッズコーポレーション」について伺います。この会社が男性や妊娠中の女性、精神疾患のある人を対象に、採用しないという差別的なルールを定めていたことが分かりました。また、事実とは異なる求人情報を出したり、偽の口コミを求人サイトに載せたりしていました。これらは男女雇用機会均等法や職業安定法などに違反すると思われ、会社側も一定事実と認めています。受け止めと、今後調査や指導をされるかどうか、対応について伺います。
大臣:
報道については承知していますが、個別の事案についてお答えすることは差し控えさせていただきます。その上で、一般論として申し上げれば、労働者の募集・採用における性別や障害を理由とする差別は、男女雇用機会均等法や障害者雇用促進法により禁止されています。また、職業安定法においては、労働者の募集を行う際、求人者は労働条件等を適切に明示しなければならないこととされているところです。いずれにしても、関係法令違反が認められる場合には厳正に対処を行うなど、法令に照らした上で適正に対処を行ってまいりたいと思います。
記者:
一部政党が掲げている、国民健康保険と高額療養費制度での外国人優遇是正について見解をお伺いします。各制度に関する統計データ、1つ目は、国民健康保険における外国人被保険者の人数と年齢構成、また総医療費に占める割合。2つ目に、国民健康保険における外国人被保険者の高額療養費制度の該当件数と支給額の割合。これらのデータをご提示いただいた上で、外国人優遇といえるかについて、ご見解をお伺いしたいと思います。
大臣:
国民健康保険において、外国人の被保険者数は約97万人であり、これは全被保険者の4.0%に当たります。年齢構成としては、20歳から39歳の外国人被保険者が約51万人と、約半数を占めているという状況になります。また、総医療費に占める外国人の割合は1.39%、高額療養費の該当件数に占める割合は1.04%、支給額に占める割合は1.21%です。こうしたデータからは、医療費や高額療養費制度において、外国人の割合が高いということはないと認識していますが、引き続き、国民健康保険制度の適正な利用に向けて取組を進めてまいりたいと思います。
記者:
SNS上で外国人に関する根拠のない投稿が拡散されていて、厚生労働省所管の政策に言及している投稿についてお伺いします。「外国人による国民健康保険の未納が年間で4,000億円」とする投稿が拡散されていますが、これは事実でしょうか。正しくない場合、実際に厚生労働省が把握している外国人の未納額・未納率について教えてください。生活保護の受給についても「日本人よりも外国人の生活保護を優先している」であったり、「中国人の生活保護者が5年間で2倍に激増」という投稿が拡散されています。こちらも事実かどうか教えてください。また、事実でない場合、参院選の投開票前に、こうした外国人に関する根拠に基づかない投稿が広がっている現状について、大臣の受け止めをお伺いします。
大臣:
外国人の国民健康保険料の収納状況について、現在、全国的な実態調査の実施に向けたシステム改修などの調整を進めています。その上で、令和4年度の国民健康保険料の未納額については、外国人に限らず全体で約1,457億円であり、「外国人の未納額が年間4,000億円」という情報は、当方の認識とは異なっています。被保険者の支え合いで成り立っている医療保険制度において、外国人の方にも適切に保険料を納付いただくことは重要であり、引き続き、保険料の適切な納付に向けた取組を進めてまいりたいと思います。また、生活保護についても、その取扱いは、外国人に対する保護において何ら変わるものではありません。ですから、外国人を優先しているということはありません。外国人のみを切り出した受給者数は把握していませんが、世帯主が中国の国籍を有する被保護世帯の人員については、2023年度は9,471人であり、その5年前の2018年度の9,059人と比較して、約400人の増加であり、2倍になったという事実はないと認識しています。いずれにしましても、厚生労働省としては、国民の皆様に分かりやすい形で適切な情報発信を行ってまいりたいと考えています。
記者:
6月30日に国民民主党の福田徹衆議院議員が公開したYouTubeにおいて、福田議員は「厚生労働省は、2021年10月8日の時点で、mRNAワクチンの治験は終わっていないという主張は注意が必要な誤情報である」と説明しています。この福田議員の説明は正しいのでしょうか。
大臣:
前回も申し上げましたが、ファイザー社及びモデルナ社のmRNAワクチンについては、承認審査において、それまでに得られた第3相試験データ等に基づき、有効性と安全性に関して厳格な評価が行われた上で、薬事承認したものですが、より長期の安全性等を確認するために、臨床試験については継続されていたものです。「誤情報としていた」とのご指摘については、「臨床試験が終わっていないので安全性が確認されていない」という情報について、ワクチンの有効性や安全性について誤解を与えるおそれがあることから、厚生労働省のホームページにおいて正確な情報の提供に努めていたものであり、そういう意味でいうと、臨床試験が終わっていないので安全性が確認されていないというところについて、そこはホームページに載せさせていただいていたということです。
記者:
すると、福田医師が前半の部分だけ取り挙げて、曲解して発信していると考えられるんですが、医師でもある福田議員ですが、医師が厚生労働省の名前を使って、間違った情報を今も拡散し続けている状況ですけれども、大臣、何か対応、所感などあればお願いいたします。
大臣:
議員がどのような認識のもとで情報を発信されているかということが定かではないので、コメントは差し控えさせていただきますが、あくまでも厚生労働省として発信していた事実は、先ほど申し上げたとおりであり、そこから先は直接ご本人にお問い合わせいただければと思います。
記者:
新型コロナウイルス感染症対策の評価についてお尋ねします。厚生労働省のホームページを見ますと、WHOの国際保健規則改正やパンデミック条約の策定は「各国の新型コロナウイルス感染症対策の教訓を踏まえ」というフレーズが使われておりますし、新型インフルエンザ等対策政府行動計画についても、「新型コロナへの対応で明らかとなった課題や、これまでの関連する法改正等も踏まえ」策定されたと説明されています。そこでお尋ねしますが、4年以上続いた新型コロナ対策を通して生まれた教訓及び明らかになった課題とはどういったものなのでしょうか。
大臣:
新型コロナ対策によって明らかとなった課題については、政府として、令和4年6月に、新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議において、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく対応や、医療提供体制等に係る課題を取りまとめたところです。様々な課題が列挙されていますが、例えば、平時からの治療薬・治療法の研究体制の整備や、検査機器等の検査体制の整備、DXの推進や技術革新による対応能力の強化、感染症に関する情報収集体制の強化などが課題としてあると認識しています。これらの課題に対処するため、新型インフルエンザ等対策特別措置法や感染症法等を改正するとともに、感染症危機管理の司令塔としての内閣感染症危機管理統括庁の創設、国立健康危機管理研究機構、JIHSの創設など、組織体制の強化も実施してきたところです。厚生労働省としては、統括庁とともに、関係機関と連携しながら、令和6年7月に全面改定した新型インフルエンザ等対策政府行動計画に基づく取組を着実に進めるとともに、進捗状況のフォローアップ等を通じて、次なる感染症危機に万全を期してまいりたいと考えています。
記者:
そうしますと、雑ぱくに考えて、自粛要請などの国民に対する行動制限が弱かったために感染が長引いたと捉えていますか。それとも、強すぎて、社会経済活動に大きな支障を与えたと考えているのでしょうか。どちらなのでしょうか。
大臣:
そこについては、直接評価がなされているとは考えていませんが、いずれにしても、今おっしゃったところのバランス等については、この前のコロナの教訓も生かしながら、次なる対応にしっかり備えていきたいと思っております。

(了)