福岡大臣会見概要
(令和7年4月11日(金)9:24~9:38 院内大臣室前)
広報室
会見の詳細
閣議等について
- 大臣:
- 冒頭1件ございます。米国側の関税措置に関する厚生労働省総合対策本部の設置についてです。厚生労働省では、今般の米国における相互関税措置の発動について、厚生労働分野への影響の分析をはじめ、総合的な対応を図っていくために、4月9日(水)に、事務次官を本部長とする「米国の関税措置に関する厚生労働省総合対策本部」を設置し、同日中に第1回目の本部を開催いたしました。引き続き、米国の動向を注視するとともに、まずは雇用への影響について、都道府県労働局を通じた情報収集を進めるなど、産業であったり雇用への影響を踏まえた必要な対応について検討を進めてまいりたいと考えております。私からは以上です。
質疑
- 記者:
- 労働安全衛生法の改正案について2点お伺いします。昨日、参議院厚生労働委員会で可決されて、近く成立する見込みです。改めて、この法律の改正案に期待されることをお伺いいたします。また、法案が成立すれば、ストレスチェック制度の義務化対象が全事業所に拡大されることになりますが、実効性をどう担保されていくのか、お考えをお願いいたします。
- 大臣:
- この後の参議院の本会議で採決が行われ、可決されれば、これから衆議院へ舞台が移るということでございます。今回の労働安全衛生法の改正法案につきましては、個人事業者等に対する安全衛生対策の推進であったり、職場のメンタルヘルス対策の強化であったり、高齢労働者の労働災害防止対策の推進などの措置を講じるものでございまして、多様な人材が安全に、かつ安心して働き続けられる職場環境の整備に資すると考えております。昨日、参議院厚生労働委員会で可決いただきましたが、引き続き丁寧な説明を行いながら、法案の成立に向けて努力をしたいと考えています。お尋ねのストレスチェック制度の実施義務対象につきましては、法案では50人未満の事業場にも拡大することとしておりまして、その実効性を高めるためには、中小企業の負担に配慮して、支援を行うことが重要であると考えています。このため、まず施行までの十分な準備期間の確保すること、高ストレス者の面接指導を無料で行う地域産業保健センターの体制を整備していくこと、中小企業における実施体制・実施方法についてのマニュアルの整備を行うことなどにしっかりと取り組んでいきたいと考えています。
- 記者:
- 年金制度改革について伺います。自民党の厚生労働部会などの合同会議では、先週までに3回のヒアリングを終えて、昨日改めて議論が行われました。議論では基礎年金の底上げについて、就職氷河期世代のために早期に法案提出するべきといった意見や、理解が得られないために底上げ案自体を法案から落とすべきなどの意見が相次ぎました。法案提出に向けた現在の議論と進捗状況をどのように受け止めているか、大臣のお考えをお聞かせ下さい。
- 大臣:
- 次期年金制度改正につきましては、昨年7月に公表した財政検証の結果を踏まえ、働き方に中立的な制度の構築であったり、高齢期の所得保障・再分配機能の強化といった観点から、今国会への法案提出に向けて検討及び各種調整を進めております。ご指摘がありましたように、昨日も自民党において部会が開催されたと承知していますが、経済が好調に推移しない場合の基礎年金の底上げ措置を含め、様々な御意見があり、調整に時間を要している状況だと承知しています。厚生労働省としましては、引き続き各方面のご理解をいただきながら、できる限り早く法案を提出できるように、引き続き努力を重ねたいと考えています。
- 記者:
- 本国会での法案成立を目指すには、今月中に法案提出をしなければ、審議時間が確保されないと思いますが、そのあたりを踏まえた法案の提出時期について、どのようにお考えかを聞かせてください。
- 大臣:
- 今おっしゃったように、審議時間の確保の観点からも、なるべく法案を早く提出できるように環境整備に努めていきたいと考えています。
- 記者:
- 都道府県の指定する訪問介護事業所が地域に1つもない自治体が、昨年度、全国で100箇所以上に上り、残り1つの自治体とあわせると全国の市町村の5分の1以上を占めることがNHKの調査で分かりました。中には要介護度に応じたサービスを受けることができない事態も出ています。その上で大臣に2点伺います。1点目が、介護保険制度はどこに暮らしていても、必要なサービスを受けられることが前提かと思いますが、このように空白地帯ができ、利用者への影響が出ていることへの大臣の受け止めを教えてください。2点目が、これまでの国会答弁などでも近隣の地域が担うことでカバーできているというお話があるかと思いますが、実態としては近隣の事業所も厳しい経営状況の中で、依頼を断っていて利用ができていない利用者さんもいらっしゃいます。現状カバーできていないと思われる地域もありますが、今後、国としてどう対応すべきと考えるか、お考えを教えてください。
- 大臣:
- 地域における訪問介護の提供状況につきましては、厚生労働省のオープンデータによりますと、訪問介護事業所のない自治体は、全国に約100町村程度存在いたしますところ、このうち、この半年間で事業所が確認できなくなったのが10町村ございますが、その全てで、訪問介護やそれに相当するサービスの利用が継続していると承知しております。その上で、今般の改定検証の調査におきましても、訪問介護の状況は、地域の特性であったり、事業規模等に応じて様々であることが確認されており、引き続き、物価高騰であったり賃上げに対応する支援に加え、先般の補正予算等による訪問介護事業所向け支援がこれから措置されるところであり、小規模事業所も念頭に置いた支援策を着実に、現場にお届けをしていくことに全力で取り組んでいきたいと考えています。今後とも、事業所が確認できなくなった市町村については個別に状況を確認するなど、支援策の効果も含め、丁寧な把握・分析を行っていきたいと考えています。また、人口減少のスピードが地域によって違いますので、そういった中で2040年に向けた訪問介護も含めた介護サービスの提供体制について、今般、検討会で中間とりまとめを行いました。その中で、中山間地域の特性に応じた方策として、包括的な評価の仕組みを設けるなどの提案をいただいたところです。今後、社会保障審議会介護保険部会におきまして、次期制度改正に向けた議論を行っていき、しっかり活かしていきたいと思います。
- 記者:
- 「介護離職防止」について伺います。2015年に当時の安倍内閣は「介護離職ゼロ」を掲げましたが、現時点で、日本は目標はまだ達成できておりません。達成できていない理由、そして、今後どのように介護離職防止を進めていくのか、大臣のお考えをお聞かせください。また、介護そのものの在り方についてもお伺いします。2000年に創設された介護保険では、これまで家族が担ってきた介護の社会化が掲げられました。しかし、創設から25年が経ち、高齢化や財政上の制約による限界も指摘されております。介護は社会が担うべきなのか、あるいは、基本的には家族が担い、社会がカバーする範囲は必要最小限であるべきなのか、大臣のお考えをお聞かせください。
- 大臣:
- 介護を理由に離職することなく、仕事を継続できる環境を整えていくことは大変重要なことだと考えています。介護を理由とする離職者の方々の数は、2012年の約10.1万人から2022年には約10.6万人と、ほぼ横ばいでございまして、ご指摘ありましたように「介護離職ゼロ」の実現には至っていない状況でありますが、一方で、介護をしながら就業する方の数は、この間、約291万人から約365万人と、2割以上増加しておりまして、そういう意味では一定の効果はあったと考えております。離職の主な理由につきましては、勤務先での働き方や両立支援、介護サービスの利用の問題があると承知しており、引き続き、「職場での支援」と「介護の受け皿整備」の両面から必要な施策を総合的に実施していきたいと考えております。また、介護保険制度は、家族介護の負担を軽減し、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして創設された制度であり、現在も、高齢者のみならず、その家族の生活を維持する上での安心を支える基盤であると認識しています。引き続き、必要な介護サービスを提供できるよう、介護保険制度の持続可能性を確保していくとともに、社会全体で地域包括ケアシステムの実現に向けた取組を進めていくことが重要であると認識しております。
- 記者:
- 昔、厚生白書では、家族が介護の含み資産である、福祉の含み資産だという記載もあったかと思うんですけれども、現在そういった考えはなくて、あくまでも、介護は社会で支えるべきだというようなお考えということでしょうか。
- 大臣:
- 先ほど申し上げたように、そもそも介護保険制度の趣旨自体が、家族介護の負担を軽減し、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして創設されたということでございますから、そういった観点から、今後も行政運営を行っていきたいということでございます。
- 記者:
- 戦争によりPTSDなどの精神疾患に苦しんだ旧日本兵の実態調査について伺います。厚生労働省は2024年度から実態調査を進めていますが、調査対象はカルテなどが残る戦傷病認定者に限定しています。本人や周囲が心の傷に気づかなかったまま亡くなった兵士の家族らは、戦傷病と認定されていない兵士も調査対象にすることを求めています。対象拡大について、武見敬三前大臣は昨年8月の会見で「専門家の意見なども踏まえて検討したい」と述べました。「現状では実態のごく一部にしか光を当てられないため、家族に語ってもらう事が重要だ」という専門家の指摘もあります。こうした指摘の受け止めと、国として、いつ、専門家に意見を聴取する予定なのか、検討状況を教えてください。
- 大臣:
- 心の傷を負われた元兵士であったり、そのご家族の実態を語り継ぐということは、戦傷病者とそのご家族が、戦中戦後に体験されたご苦労を次の世代に伝えていくためにも大変重要であると認識しております。これまでも、しょうけい館においては、戦地で身体に傷を負われた方に関する展示が中心となっていた中、令和6年4月からは、心の傷を負った元兵士に関する展示に向けた調査を行い、その調査の中では、ご家族も含めた体験記なども収集しております。戦傷病者と認定されていない元兵士については、戦後80年が経過して、多くの方がお亡くなりになっている中で、戦争と症状の因果関係の判断が難しいなどの課題があると認識しております。このため、戦傷病者を対象とした調査を確実に展示につなげるようにすることが重要であると考えており、ご指摘のような戦傷病者と認定されていない元兵士に関する更なる取組につきましては、こうした新たな展示の開始が行われた後、展示内容等を専門家にご覧いただきながら、どのようなことができるか検討してまいりたいと思います。
- 記者:
- 2月に常設展示が始まりますが、その翌月には、例年、有識者会議があります。その場で調査対象の拡大について議論していただくことを検討していただけませんでしょうか。
- 大臣:
- 先ほど申し上げたように、戦傷病者と認定されていない元兵士に関する更なる取組につきましては、まず来年2月を目途とする新たな展示の開始が行われた後、その展示内容を専門家にご覧いただきながら、どのようなことができるか検討を進めていくということでございます。
(了)