福岡大臣会見概要
(令和7年2月7日(金)9:21~9:39 省内会見室)
広報室
会見の詳細
閣議等について
- 大臣:
- 私から2点ございます。本日、戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法の一部を改正する法律案が閣議決定されました。この法案は、本年が戦後80年となる中で、先の大戦で国に殉じた軍人軍属等のご遺族に対し、国として改めて弔慰の意を表するものであり、特別弔慰金の支給を継続する等の措置を講ずるものです。今後、本国会において速やかにご審議をいただくよう、お願いしたいと考えております。
- もう1点です。高額療養費の見直しにあたっては、これまでも申し上げてきた通り、制度を利用される当事者の方々の不安の声に真摯に向き合うことが重要であると考えております。そのため、本日、まずは事務方において、患者団体の皆さんのご意見を丁寧に承らせていただく機会を設けることとしております。その上で、私自身も、お相手のご都合もありますが、来週の半ばには患者団体の皆様の声を直接お伺いしたいと考えております。今般の高額療養費制度の見直しに対するがん患者などの当事者の方々からの声と、高額療養費という大変重要なセーフティネット機能を将来にわたって堅持するという課題の両方を満たすことのできる解を見いだすべく、引き続き、検討を進めてまいりたいと思います。私からは以上です。
質疑
- 記者:
- 社会保障審議会の年金部会を巡り、委員に対するネット上での誹謗中傷が相次いでいます。現状について大臣はどのようにお考えでしょうか。
- 大臣:
- ご指摘の事案の詳細について、お答えすることは差し控えさせていただきますが、次期年金制度改正に向けては、社会保障審議会年金部会で議論を行ってきたところであり、このような審議会での議論は、自由で安全な環境の下で公正に行われることが大変重要であると考えています。委員個人への脅迫的な行為は決して許されるものではなく、健全な議論の環境を損なうものであることから、絶対にやめていただきたいと考えています。年金制度に関するご意見等がある場合には、厚生労働省にお寄せいただきたいと思います。
- 記者:
- 高額療養費制度の見直しによる財政影響として、5,330億円の給付費の削減を、政府は見込んでいます。その内訳として、患者負担増による給付費削減金額と患者受診抑制による給付費削減金額をそれぞれお示しください。また、医療保険部会等の取りまとめで、「今回の見直しにより必要な受診が妨げることのないよう」との方針が掲げられていますが、高額療養費の利用者において治療中断、治療回数減など、受診抑制が生じることは命に関わる問題だと考えています。政府は患者の受診抑制を前提に医療費削減という数字ありきの制度見直しを提案したのではないでしょうか。ご見解をお願いします。
- 大臣:
- 高額療養費の見直しは、高齢化や高額な薬剤の普及等により、その総額が医療費全体の倍のスピードで伸び、現役世代を中心に保険料負担が大きくなっている中で、セーフティネットである高額療養費制度を将来にわたって堅持するために行うものです。この見直しによる財政影響は、保険料と公費の合計で約5,330億円の減少が見込まれ、このうち、実効給付率が変化した場合に経験的に得られている医療費の増減効果は、先日1月23日の審議会でも公表している通り、機械的に計算すると、約2,270億円となりますが、これはあくまで機械的な試算であり、今回の見直しが実際の患者の受診行動に与える影響については、その分析方法含めて検討する必要があると考えています。見直しに当たっては、所得に応じた制度設計を行うとともに、長期で医療を受けている方の経済的負担を考慮していますが、冒頭申し上げた通り、引き続き、制度を利用されている当事者の不安の声に真摯に向き合うとともに、高額療養費のセーフティネット機能の堅持という課題の両方を満たすことのできる解を見出すべく検討を重ねていきたいと考えています。
- 記者:
- 受診抑制を、機械的算定で前提がありますが、2,270億円見込んでいるということですね。限度額の見直しによる患者への実際の、今利用されている方の負担増が3,060億、差し引きで、なると思います。はなから受診抑制が起こるという前提で、この制度の改正を組んだのではないかと厚労省には確認しましたが、そのように、担当課は受診抑制は起こりうると言っています。がん患者は悲鳴を上げていますが、そういったことを予想していなかったのでしょうか、政府案として提案した段階で。
- 大臣:
- あくまでも、機械的な試算としてお示ししています。前回の改正の際も、この長瀬効果に伴う財政影響についてはお示ししていますが、実際にその後の後期高齢者の受診率に大きな変動はなかったというようなこともございます。あくまでもそこは機械的に試算の中で用いさせていただいているということです。
- 記者:
- 高齢者の受診抑制というものとレベルが違います。重篤な疾患の治療を医師から中断しないようにと言われている中で、その受診抑制とレベルが違うので、そのことはこの長瀬効果という機械的な数値も含め、本当に患者を傷つけていますので、そこは今後ヒアリングされると思いますので、ぜひ反省していただき、撤回していただきたいと思います。
- 大臣:
- そこは重ねて申しあげております通り、私どもの案を示させていただいている中で、国会でも様々ご議論いただいているところです。先ほど申し上げましたスケジュールで、私どももしっかりお声を聞かせていただいた上で、どういった制度が1番望ましいのか、検証を重ねてまいりたいと考えています。
- 記者:
- 新型コロナワクチンについて伺います。健康被害救済制度に基づく死亡事案の認定件数は現在、951件に達しています。そこで、改めて健康被害救済制度について伺いますが、厚生労働省の、かつては健康局結核感染症課が監修した『逐条解説 予防接種法』という書物、この第15条、健康被害の救済措置のページには、次のような解説があります。この制度に基づいて専門家の審査がなされた結果、健康被害の認定がなされるわけですが、この因果関係についての記述です。「本制度が健康被害に対する公費による救済制度であることから損害賠償請求と同様、相当因果関係を要するものと解される。因果関係の判断は、判例等によるのと同様に、一般人をして疑問をさしはさまない程度の蓋然性を必要とするが、厳密な医学的な因果関係までは要しない」と書かれています。もう1点、そして、「医学的因果関係が完全に否定できないというだけでは、因果関係は認められず、医学的知見を基礎として社会通念に照らして相当程度の蓋然性が認められなければならない」とも書かれています。このように因果関係についての記述があります。これは2013年に編纂された書物から引用したものの一部ですが、ここに書かれた見解は、現在でも厚生労働省の公式見解として変わりがないのかという点について聞かせてください。
- 大臣:
- 予防接種法に基づく予防接種健康被害救済制度は、法の趣旨に則って、予防接種と健康被害の因果関係が認められた方について認定を行うこととしており、その因果関係については、厳密な医学的因果関係までは必要とせず、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象とするといった考え方に基づき審査を行っているところです。このような制度趣旨に基づき制度を運営しているところであり、法の考え方を記載した逐条解説と齟齬のない運用がなされているものと解しています。
- 記者:
- 齟齬のないように運用されているということですので、新型コロナワクチン接種後に亡くなった方の健康被害の救済申請も、この逐条解説の考え方、見解に基づいて認定・不認定の審査がなされているものとお聞きして間違いないでしょうか。
- 大臣:
- 逐条解説にもございます通り、因果関係の認定については医学的な知見をベースに、社会通念に照らして蓋然性があるかどうか審査を行う必要があることから、審査会において、各分野の医学的知見を有する専門家の方に、委員として審査いただいているところです。その上で、この逐条解説にも書かれておりますように、厳密な医学的な因果関係までは要しないと書かれているわけですので、そういったことも踏まえて判断をしていただいているということです。
- 記者:
- そうしますと、逐条解説に書かれているのは、厳密な医学的因果関係は必要ないですが、相当因果関係は必要であり、これは判例と同様の蓋然性を必要とするというように書いてありますので、基本的に裁判の判例の考え方と同様の因果関係の認定が、審査会においてもなされていると、こう理解してよろしいでしょうか。
- 大臣:
- 審査会の中身が、逐条解説の今おっしゃった、過去の裁判等とも照らしあわせての相当因果関係があるということと、それに沿ってやられているかどうかについては、確認させていただきたいと思います。
- 記者:
- 1月24日、約3か月ぶりに、いわゆる審議会が開催され、新型コロナワクチン接種後の死亡事報告等の新たな情報が公表されました。最新の死亡報告数や健康被害数の合計、また、それらの数字等に対する大臣の受け止めを教えていただけますでしょうか。
- 大臣:
- 1月24日に開催された審議会において報告された、副反応疑い報告制度に基づく、新型コロナワクチン接種後の死亡報告の件数は、令和6年3月末までの特例臨時接種期間においては2,261件、令和6年4月からの任意接種開始後9月30日までの期間においては1件であり、合計すると2,262件となっています。また、副反応疑い報告の総数について、特例臨時接種期間においては、医療機関からの報告が37,539件、製造販売業者からの報告が29,412件であり、これらには同一症例が重複して報告された例も含まれていると承知しています。一方、任意接種開始後の副反応疑い報告の総数は、医療機関からの報告が1件、製造販売業者からの報告が16件となっています。同審議会においては、これらの報告も踏まえて審議がなされた結果、「ワクチンの安全性に係る重大な懸念は認められない」とされたところであり、引き続き、科学的知見の収集に努めるとともに、専門家にご評価いただき、ワクチンの安全性の評価を適切に行い、仮に新たな知見が得られた場合には、速やかに医療機関等に情報提供するといった対応を行ってまいりたいと考えています。
- 記者:
- 先ほどの質問にもありましたが、一方で、別の制度である救済制度の方では951人の死亡の認定が、因果関係が相当認められるということでされている。これに大臣自体は違和感を感じませんか。重大な懸念はないというのが審議会ではされていますが、救済制度では、因果関係がほぼ認められている事例がこれだけある。いかがでしょうか。
- 大臣:
- 先ほど解釈についてのご質問がありましたが、救済制度については、ある程度そこは幅広く、幅を取って行っているものであり、制度の趣旨が違うものですので、当然その数字の差異というものはあると思います。当然、健康被害ということがあってはならないという観点から、そういったところについては、引き続きしっかり状況を見定めてまいりたいと考えています。
- 記者:
- 新型コロナ感染症への対応を誤ったことなどを理由に、トランプ米大統領がWHOから脱退する大統領令に署名したことを受け、CDC、米国疾病対策センターの職員がWHOとの連絡を断つよう指示されているとの報道があります。昨年、東京の米国大使館内にCDCの地域事務局が開設されましたが、この事務局は、CDCが世界的な公衆衛生の問題に対応することを見据え、東アジアと太平洋地域でより強い協力関係を築き、より迅速な対応を可能にするために設置されたものです。WHOに加盟したままの我が国としては、この事務局との連携が断たれることになるのでしょうか。また、「日本版CDC」とも呼ばれる「国立健康危機管理研究機構(JIHS)」がこの4月に発足予定ですが、今後の感染症対策において、日本はWHOを脱退した米国とどのような関係性を維持していくのでしょうか。米国のWHO脱退がJIHSの今後の役割に及ぼす影響についてご教示ください。
- 大臣:
- 米国がWHOを脱退することによる影響については、米国の今後の動向が不透明である現時点において、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。これまでも申しあげております通り、我が国としては、WHOが、引き続き国際保健の専門機関として、科学的知見に基づき、先般の新型コロナ感染症のような地球規模の国際保健上の危機対応を先導することを期待しています。また、米国は国際保健の重要な貢献者であり、我が国としては、引き続き、米国を含む各国と連携し、国際保健の諸課題に取り組んでいく必要があると考えています。我が国と米国及びCDC東アジア・太平洋地域オフィスとは、これまでも、感染症対策に関し情報共有等を行ってきたところであり、米国の状況については注視しながら、引き続き連携していきたいと考えています。
- 記者:
- 日本版CDCについて追加の質問ですが、2025年1月5日付けの公明党のニュースサイトで、公明党の医療制度委員長で衆議院議員の秋野公造氏が、日本版CDCの創設された背景について問われ、以下のように答えています。「医療提供体制の整備や、治療薬、ワクチン確保などの初動が遅れた教訓を踏まえたもの」というのが、日本版CDC創設の背景だということですが、これはワクチン接種前の状況に対する教訓だと思いますが、また、ここでは甚大な健康被害、ワクチン接種がもたらした甚大な健康被害についての問がそっくり抜け落ちていると思いますが、そのことについて大臣のご意見をお聞かせください。
- 大臣:
- 秋野議員が、どのような状況でどのような趣旨でご発言なされたかということについては、私もその場にいなかったものですから、そのニュアンスも含め、承知していないことについてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
- 記者:
- 甚大な健康被害についての問というものは、今、教訓にもなっておらず、これから教訓化させていかなければならないと思いますが、mRNAワクチンの施策全体についての教訓化、そういったことについて大臣のご見解をお聞かせください。
- 大臣:
- 様々な制度がそうですが、その在り方については常に検証しながら、それが本当に正しいものかどうかの検証というものは、不断に続けていく必要があると思います。
(了)