武見大臣会見概要

(令和6年3月12日(火)9:15~9:41 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について

大臣:
 本日、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。この法案は、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充であり、育児休業の取得状況の公表義務の拡大、次世代育成支援対策の推進・強化、そして介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の周知の強化等の措置を講ずるものです。今後、本国会において速やかにご審議をいただくようお願いしたいと考えております。

質疑

記者:
介護報酬改定についてお伺いします。厚労省の調査で訪問介護の事業所の約4割が赤字だったことがわかりました。この結果についての受け止めをお聞かせください。また厚労省は、経営実態調査で訪問介護の22年度決算の平均利益率が高かったことなどから24年度の介護報酬改定で基本報酬を引き下げる方針ですが、今回の調査結果を踏まえ、改めて引き下げの根拠や妥当性について教えてください。
大臣:
経営実態調査をみますと、訪問介護に限らず、在宅サービス、施設サービスを通じて収支差に代表される経営状況には幅があるものと認識しています。今回の訪問介護の基本報酬の見直し、第1は、今回の改定率のプラス0.61%分について、介護職員以外の職員の賃上げが可能となるよう配分することとされている中で、訪問介護の現場はそうした事務局等の規模が小さく、そのような職員の割合が低いこと、これが第1です。2つ目は、訪問介護の事業所において介護事業経営実態調査における収支差率は7.8%と、介護サービス全体平均の2.4%に比べて相対的に高いこと等を踏まえ、小規模から大規模事業所までサービス全体の収支差に鑑み、サービスごとにメリハリのある改定を行ったところです。さらに、報酬改定のうち介護職員の処遇改善に充てる改定率プラス0.98%分について、全職員に占める介護職員の割合が相対的に高い訪問介護は、見直し後の体系で14.5%から24.5%と他のサービスと比べて高い水準の加算率を設定しているほか、特定事業所加算や認知症に関連する加算を充実させることなどにより、訪問介護は改定全体としてはプラス改定としています。とりわけ訪問介護は、他のサービスに比して処遇改善加算の取得状況は全体として低い傾向にあるため、特に取得支援を促進していくことが必要なサービスであると考えています。このため、加算未取得の事業所は加算を取得し、既に取得している事業所については新たな処遇改善加算の体系に早期に移行していただくことで、介護職員の賃上げを実現できるよう、小規模な事業所も含め、更なる取得促進に向けた環境整備を進めていきたいと考えています。
記者:
調査結果の受け止めはいかがでしょうか。
大臣:
おおよそ特養、赤字がマイナス56%になっています。訪問介護の場合には37%です。したがって、こうした収支差というものをみたうえで、実際にこうした事業所の規模でみていくのではなく、まずこうした分野で実際にカテゴリーを設定し、そして法律も踏まえ、そのカテゴリーに関わる実際に基本料の策定というものを行っています。その際、実際に小規模事業所といったところの状況というものをしっかり支援し、こうしたところの事業所の人たちの賃金の引き上げにもしっかり資するというようにさせるためにも、この加算措置というものをより取りやすくするというかたちで、その基本料のマイナス分でダメージを小規模事業が受けることがないように対応するという、こうした措置で手当をしているわけです。
記者:
春闘について伺います。明日13日に春闘の集中回答日を迎えます。大手企業で高水準の賃上げで早期の決着が相次ぐ一方、中小企業や非正規雇用の持続的な賃上げを実現できるかが今後の焦点となります。改めて、大企業だけではなく幅広く持続的な賃上げを実現するためにどのように働きかけていくお考えかお聞かせください。
大臣:
まずご指摘の通り大企業だけでなく、中小企業や非正規雇用労働者の賃上げというものが持続可能なかたちでしっかりと引き上げられるということは極めて重要だと考えています。その上で、この賃上げの流れが地方や中小企業にも波及していくよう、労使団体、地方公共団体、関係省庁等と連携しながら地方版政労使会議を精力的に開催しています。中小企業が賃上げしやすい環境整備が重要であり、中小企業の賃上げと設備投資を業務改善助成金で支援しています。さらに、正社員への転換等の取組を進めるとともに、非正規雇用労働者の処遇改善を図るため、同一労働同一賃金の更なる遵守徹底を図るという対応をさせていただいているところです。現在、地方版政労使会議を積極的に今進めており、昨年の12月以降、大阪府、埼玉県、宮城県など、本日までに42都道府県の開催がすでに行われております。3月末までに全ての都道府県で開催する予定です。
記者:
春闘についてお伺いします。先ほどの地方版政労使会議の話ですが、東京や大阪、名古屋といった都市圏では、大企業と中小企業の取引の適正化によって、ある程度賃上げの原資が確保できるという声もありますが、さらにそうした中核となるような大企業がないような地方、これについてはなかなか取引先も中小企業なので、賃上げ原資の確保が難しいという声も出てきていますが、この地域格差、大都市圏とそれ以外の地方格差を縮めていくためにはどうしたことが必要だと思われますか。
大臣:
ご指摘の通り、地域によってすさまじく違います。愛知県のようなところで大企業がしっかり集中しており、そこで実際に賃上げについての議論をする場合と、もっと中小の県で実際に大企業がほとんどない、ある一定の観光業で対応しているような地域と比較すると、同じ政労使会議をやるにしてもその持つ意味、機能というものがやはり様々に変わらざるを得ません。しかしそうした中においても、実際にそうした限られた収入というものの中でも、やはり中小企業にその財源が配分されていくような、そうした努力をお互いにしていただこうということは、この政労使会議の中でどこの県においても確実にやっているわけです。各県ごとの産業構造については厚生労働省で所轄している部分ではありませんが、我々の立場からすれば、配分に関わるところで、特にこの労働政策としてこうした賃上げ政策に取り組む所轄官庁としては、そうした所与の前提の中でできるだけこうした中小企業にも財源がしっかり転化され、賃上げに繋がるというように、この地方版政労使会議を開催しており、そのインパクトは確実に広がっていると思います。私が全て出るわけにはいきませんので、宮﨑副大臣にはできるだけ参加してもらうようにしております。
記者:
中国帰国者への国の支援についてお伺いします。2008年の新支援法以降、これまで全額国庫補助で実施されてきた地域における日本語教室の開催についてですが、本年度、国の補助額が減ったため教室が開催できないといったことが全国では起こりました。補助額減となった背景と、来年度以降もこうしたことが起こりうるのか今後の見通しをお聞かせください。またとりわけ中高年で帰国した2世においては、1世同様に経済的な困窮にあり経済的支援や通訳の派遣等必要とされています。これまで原則として支援対象は残留邦人の1世や、支援メニューによっては国費帰国の2世までを支援対象としてきた国の各種帰国者支援ですが、今後広く私費帰国の方も含め2世に拡充する、そうした検討をするお考えはないでしょうか、お聞かせください。
大臣:
中国残留邦人等の支援事業に対する補助については予算が厳しい中、今年度は昨年度に比べ当初交付額を減額にせざるを得なかったという事実はございます。これについて各自治体等から補助金の追加交付の要望をいただき、補助金の枠の中で他の事業と調整した結果、各自治体に対し追加交付を行うこととしました。これは昨年は3億3千万円でしたが、今年度当初の交付額は2億5千万円でしたが、追加交付額1億3千万円、追加交付しましたので、合計額としては3億8千万円というものになっています。厚生労働省としては各自治体に対し、限られた予算の中で効率的な事業運用を行っていただくよう引き続き要請することとしていますが、令和6年度の交付額は令和5年度当初交付額に比べ増額を予定しています。そして2世に対する支援の話ですが、中国残留邦人等に同行して本邦に入国した中国残留邦人等の2世については、高齢化した中国残留邦人等の生活を長年にわたり支えることが想定されるため、自立支援通訳の派遣などの支援を行っています。一方、中国残留邦人等が帰国する際に同行せず私費で中国等から入国した2世等については、必ずしもこのような事情ではないことから支援の対象とはしてきませんでした。ただし、この中国残留邦人等本人または同行2世が支援の事業を利用する中で、例えば日本語教室の受入れ人数に余裕があるなどの場合には、私費により入国した2世についてもその利用を認めることとしております。これは無料です。そして厚生労働省としては、引き続きこのように、中国残留邦人等の方々に対し可能な支援をしっかり行っていきたいと思っています。
記者:
3月5日の参議院予算委員会において、柳ヶ瀬裕文議員から新型コロナワクチンの健康被害に関する質問がありました。想定の100倍の健康被害、過去最大のワクチンの被害ではないかという質問に対し、武見大臣は「審議会において、ワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められないと評価をされている」と答弁されました。そこで伺います。武見大臣が信じて止まない「審議会」とは何という名前の審議会で、最近ではいつ行われたものでしょうか。また、その最新の審議会に出席した委員及び参考人のうち、寄付金など製薬関連会社から金銭の受け取りがある人は何名いらっしゃると厚生労働省では把握していますか。教えていただければと思います。
大臣:
ワクチン接種後の副反応が疑われる症状については、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会および薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同開催にて評価されており、直近では今年1月26日に開催されています。委員及び参考人の審議参加においては、過去3年度におけるワクチンの関連企業等からの特許権使用料や講演に係る報酬や研究契約金などの受け取り状況について常に確認を行っています。直近の審議会では参加した委員14名及び参考人6名のうち、8名の委員及び3名の参考人から受取があったと申告いただいており、その旨は審議会において公表しています。これについてはいずれも参加規程というものがあります。この参加規程に従い、金額によっては退席や議決権を与えないなど、透明性を確保しつつ審議会を運営しているところであり、適切な運営の仕方だと考えています。おおよそ日本はアメリカのFDAと同じような規程を設け、こうした委員と製薬メーカーとの関係というものが不適切なものとならないよう、その運営を図ってきています。
記者:
想定の100倍と表現されるような健康被害が起きている状況ですが、委員、参考人の過半数の方が製薬会社と金銭のやり取りがある。そして1月の26日にあったということですが、調べると今3か月に1回のペースでしかこの審議会は開かれておりません。この審議会の在り方自体が重大な懸念ではないかと思いますがいかがでしょうか。
大臣:
私はやはりこのワクチンというものは健常者に打ちますので、その結果として健康が損なわれることに対する多くの国民の受け止め方というものは確かに微妙なものがあるだろうと思います。しかし他方で、こうした感染症に関してはジェンナーが種痘を発明して以来、実際に公衆衛生学的なアプローチとしてワクチンというものが確実に幅広くより多くの人々の健康を守ってきたという歴史とサイエンスに基づく事実というものがあるわけです。今回もそうしたメリットに関わるエビデンスを確認しつつ、実際にその中で審議会で専門家の先生方の周到なしっかりとした議論をしていただきながら、その結果として判断されたというわけなので、私はそれを尊重したいと思います。
記者:
予防接種の健康被害救済制度についてお尋ねします。この制度では、厚生労働大臣が接種による死亡と認定された方に対し、死亡一時金と葬祭料が支給される制度になっていると承知しています。ただ、この死亡一時金については、支給対象が配偶者と、亡くなった方と生計を同一にしていたご遺族に限られるというルールになっています。例えば、親から独立して生計を営んでいる独身の方、こうした方が予防接種の健康被害で亡くなった場合、親や兄弟などのご遺族がいたとしても死亡一時金は支払われないということになっています。支払いの範囲となるのはあくまで親などご遺族が亡くなった方と同一の生計、生計を同一にしていた場合に限られるということで、実際に死亡の認定を受けてもご遺族には死亡一時金は支払われず、葬祭料、現在21万2千円ですが、死亡の認定を受けてもこの葬祭料だけが支給されるというケースも一定数あると承知しています。このように死亡一時金の支給対象を限定するルールというものを大臣はご存じかということと、このようなルールが合理的だと思われるかどうかということについて、大臣のお考えをお聞かせください。
大臣:
ご指摘の実際に亡くなられた方に対するそうした政府からの資金というものは、確かにそのような条件の中で配布されているようですが、実際にこうした条件というものの適用についてはやはりその都度その感染症の深刻度、そして拡がり、そうしたものを考えながら実際に運用していくときにその範囲を決めていくことが適切だろうと思います。一応の基本原則はしっかり作っておきながらも、そうした中で今コロナの終息期に入り、実際にコロナのワクチンを通じて現実に起きている副反応、これについてはやはりしっかり検討を継続させていきながら、その運用の仕方についても適切であるかどうか、これは私も常に注視しながらやっていきたいと思います。
記者:
今のご説明も1つわかりますが、これは新型コロナに限らず、今の予防接種の健康被害救済では他のワクチンに関しても同じルールになっており、そのご遺族の中で全てのご遺族ではなく生計を同一にしている遺族だけに死亡一時金を支払うというルールが、これは予防接種法の施行令という政令でそうした限定するルールが定められています。私は比較的最近それを知ったのですが、そうした生計を同一にしていない遺族には支給されないということ、率直に大臣がそれをお聞きになって、そういうルールは妥当だと思われるでしょうか。
大臣:
まず第1に支給されるべき対象が、生計を同じくする方となることは私は明白だろうと思います。その上にさらにその補償というものを他の家族の方々にも支給するべきであるか否かという判断に関わるところです。現状においては、実際に生計を同じくする方を対象としているということは、この3年間のコロナの状況を見ながら判断したことであり、現状においてはそれは適切だろうと思います。
記者:
冒頭発言についてお伺いします。育児、介護休業法と次世代法の改正案が閣議決定されましたが、出生数が8年連続で減少する中、男女問わず仕事と育児を両立できる環境の整備が喫緊の課題となっていると思います。今回の法改正の意義と大臣の受け止めをお願いします。
大臣:
少子高齢化の中で女性にしっかりと仕事もしやすい、そしてご家庭で必要とあらば子育てもしやすい、共働きもご主人も含めて一緒に行いたいという状況が必要になってきていることは火を見るより明らかで、この女性に家事育児の負担が偏りがちである現状というものについて、共働きや共育てを推進するため特に男性労働者や3歳以降の子をもつ女性、正社員でニーズが見られる、フルタイムで残業をしない働き方や柔軟な働き方の実現に向けた取組が求められていると認識しています。また仕事と介護の両立支援制度の内容やその利用方法に関する知識が十分でないということにより介護離職に繋がるケースなどもあるため、これらについてはこうした制度があることを周知・徹底させるという努力をさらに進めていくことを考えているところです。こうした状況を踏まえ、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充、そして育児休業の取得状況の公表義務の拡大や、次世代育成支援対策の推進強化、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の周知の強化などの措置を講ずるため、この法案を本国会に出しました。これをとにかく速やかにご審議、採決していただければと期待を込めているところです。

(了)