武見大臣会見概要

(令和5年12月26日(火)10:46~11:01 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について


大臣:
 令和5年11月の有効求人倍率は1.28倍と、前月から0.02ポイント低下となりました。また、完全失業率は2.5%と、前月と同水準となりました。求人・求職の動向や労働力調査の結果をみますと、現在の雇用情勢は、求人が底堅く推移しており、緩やかに持ち直しています。物価上昇等が雇用に与える影響に留意する必要があると考えています。
 令和6年度厚生労働省組織・定員査定についてご説明いたします。本省において、医療DXの更なる推進のため、「官房企画官(診療報酬改定DX担当)」や14人の定員増が認められることに加えて、都道府県労働局の体制についても、ハローワーク等を中心に大幅な定員増が認められました。意欲や専門スキル等を有する都道府県労働局の非常勤職員について、社会人選考採用を積極的に実施し、近年の実績の倍となる100人以上の常勤化を目指します。特にハローワークについては、非常勤職員の割合が高く、職業紹介業務などで常勤職員が本来担うべき就職困難な方へのきめ細かな対応業務などを非常勤職員が担っている実態がみられます。このため、令和6年度からハローワークのマッチング支援について、常勤職員が中心になり担当者制できめ細かな支援を実施するモデル事業を実施してまいります。詳細は事務方にお尋ねください。私からは以上です。

質疑

記者:
今日が年内最後の会見となりました。今年は新型コロナが5類に移行し、コロナとの戦いが一区切りついた年でもあります。改めて大臣のご所感をお聞かせください。併せて新年もマイナ保険証の利用率向上など様々な課題が山積していますが、どのように対応していくお考えかお聞かせください。
大臣:
私は本年9月に厚生労働大臣に就任し、約3か月が経過しました。この間、国民の皆様の安全・安心の確保に万全を期すべく努力してきたつもりです。5類移行となったコロナ対策については、9月1日に感染症対策部が厚生労働省内に新設され、平時からの感染症対応能力の強化が図られたことに加え、来年度からの通常の医療提供体制への移行の準備を進めています。このほか、大臣就任以降、臨時国会で大麻取締法改正法案を成立させることができました。そして看護補助者・介護職員等の処遇改善などを盛り込んだ令和5年度補正予算も成立させることができました。こうした諸課題への対応を1つ1つ進めてきました。また来年12月の現行の健康保険証廃止を見据え、今後多くの国民の皆様にマイナ保険証を使っていただき、健康・医療データに基づく質の高い医療を受けられるなどのメリットを感じていただくことが何より大切だと考えています。関係者が一丸となって、あらゆる手段を通じてマイナ保険証の利用促進に取り組んでいく所存です。また厚生労働大臣として、医療DXの推進、そして国立健康危機管理研究機構の創設など、次なる感染症危機への備えに向けた対応、我が国の創薬基盤の再強化、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジなどを通じたグローバルヘルスへの我が国の貢献、こうした課題について私自身が先頭に立って取り組んでいきたいと考えています。労働者の主体的なキャリア形成支援などに向けても引き続きしっかりと取り組んでいきたいと考えており、次期通常国会への必要な法律案の提出を目指していきたいと考えています。
記者:
レプリコンワクチンについて質問します。武見大臣は12月19日の定例会見にて、レプリコンワクチンの安全性に関して、「国内臨床治験による試験において比較対象としたファイザー社のワクチンと比べて、有害事象の種類、発現割合などに明確な差が認められず、したがって安全性は許容可能という判断になった」と答弁されました。新型コロナワクチン接種開始後の令和3年2月17日から令和5年7月30日までの間に、ファイザー社ワクチンについては1,878件の死亡例、及び心筋炎・心膜炎を含む多くの副反応が報告されています。武見大臣はファイザー社のワクチンを接種して亡くなられた方々、及びその関係者の方々に対して「ファイザーと比べて明確な差がないから安全」だとの物言いが通用するとお考えなのでしょうか。
大臣:
ご指摘の12月19日の会見の発言は、11月28日に承認したMeiji Seikaファルマ社のワクチンについて、ファイザー社ワクチンを比較対象として実施された国内臨床試験において、両社のワクチンの間で有害事象の種類や発現割合等に明確な差は認められず、Meiji Seikaファルマ社のワクチンの安全性は許容可能と判断された旨を述べたものです。また新型コロナワクチン接種後の副反応が疑われる症状の報告については、定期的に開催している審議会において評価を行っています。審議会においては、その時点で得られている情報や科学的知見に基づき、ワクチン接種によるベネフィットがリスクを上回ると考えられるか検討を行っています。現時点では、これまでの報告によってワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められないと評価されており、ファイザー社のワクチンを臨床試験の比較対照とすることは妥当であると考えています。今後とも科学的な知見の収集に努め、専門家によるワクチンの安全性の評価を適切に行い、新たな情報が得られた場合には速やかに医療機関等に情報提供するなど必要な対応を行っていきたいと考えています。
記者:
リスクについて、ファイザー社ワクチン接種後の死亡事例や副反応被害はリスクではなく現実です。死亡を含む新型コロナワクチンによる副反応が仮に大規模な薬害として公の認めるところとなったとして、時の大臣は責任を取って辞任もしくは議員辞職をすれば済むかもしれません。また多額の賠償金が支払われることになるかもしれません。しかし失われた国民の命や健康は戻ってきません。その点を含めて、もしレプリコンワクチンに問題がないと言うのであれば、国民の不安を払しょくするために国民が納得のいく情報を適宜周知していただくようお願いいたします。
大臣:
ワクチンというものはジェンナーが開発して以来、世界人類の中で感染症と立ち向かうために極めて有用な役割を果たしてきました。しかし残念なことに一定の副反応があり、それによってやはりリスクと、そしてその効果というものを常に正しくバランス良く判断しなければなりません。そのときの基本は科学的なエビデンスです。その科学的なエビデンスに基づいて、しかもそれを制度化された審議会という有識者のいるところでしっかり審議していただき、その中でこの有用性とリスクが判断され、最終的な決断は厚生労働大臣が負うというかたちになっています。私は今のこの考え方に基づいて発言し、また自分の判断をさせていただいております。
記者:
今年1年間振り返られて、9月以降ですが、マイナ保険証の問題など守りの行政の印象が強かったかと思います。来年は攻めの行政に転じるため、重ねてになりますが、特にどの分野で大臣が先頭に立って主導されるかお考えをお聞かせください。
大臣:
これはいずれまた、かたちを整えて発表させていただきたいと思いますが、やはりこのコロナ禍の3年間、厚生労働省はいかにコロナの感染から国民の命を守るかということに、まさに組織としても集中して対応していくということがパンデミックの下では否応ない事実であったと思います。このパンデミックも初動期、そして中間期から終息期に入り、そして改めて将来に向けた我が国の危機管理の在り方、さらにはこのパンデミックの最中に露呈した我が国の医療制度の様々な弱点、特に国民1人1人と医療情報というものが、しっかりとした全国的なプラットフォームと結びつき、しかも安全性を確保した上で管理されるという仕組みが我が国になかったことが、やはりこうした感染症対応のリスク管理の上でも致命的な欠陥であったということが明白になりました。したがって、こうした経験を踏まえて、いかにこれからこうした危機管理の体制を整え、そして危機管理のみならず我が国の医療DXの推進を行い、なおかつこのコロナのパンデミックの中で、我が国の製薬企業のワクチンの開発というのは遅れに遅れました。しかも全般的に我が国の保険で活用する医薬品市場の中でも、我が国の製薬企業の割合は52%程度10年前ほど前まではあったものが36%まで減ってきており、かつては我が国が世界の創薬基盤の1つ、一角を占めていたわけですが、それが着実に崩れ始めている。やはりその創薬の基盤をどのようにして再度我が国の中に再構築していくか。そしてこれらの課題というものは、1つの国あるいは日本人だけで狭く解決しようとしても出来ないという時代状況に入りました。したがって常にこうした課題1つ1つを取り上げていく時には、国際的なコンテキストでの連携や、さらにはそうした国際的な知見というものを同時に活用しながら、我が国のこうした弱点を克服する新たな医療制度改革に取り組まなければならないと考えています。したがってその考え方をしっかり整理し、年明けにでも改めて皆様方に私の考えをまとめて発表させていただければと思います。

(了)