武見大臣会見概要(財務大臣折衝後)

(令和5年12月20日(水)10:03~10:30 省内会見室)

広報室

会見の詳細

発言要旨


大臣:
先ほど財務大臣と令和6年度の予算編成に関しまして折衝を行いました。厚生労働大臣の折衝事項についてご説明を申し上げます。令和6年度の社会保障関係費の実質的な伸びについては、年金スライド分を除きまして対前年度比でプラス3,700億円程度とすることといたします。次に診療報酬・薬価等改定ですが、令和6年度診療報酬・薬価等改定につきましては、診療報酬をプラス0.88%、そして薬価等はマイナス1.00%とすることといたしました。そして介護報酬の改定と障害福祉サービス等報酬の改定ですが、令和6年度介護報酬改定につきましては、改定率は全体でプラスの1.59%といたします。また令和6年度障害福祉サービス等報酬改定については、改定率は全体で1.12%といたします。その際に、介護や障害福祉の現場で働く方々にとって令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップに確実に繋がるよう、配分方法を工夫することといたします。
 また今回の改定は、処遇改善分について2年分を措置することとしており、3年目の対応については、処遇改善の実施状況などを踏まえて、令和8年度の予算編成過程で検討することといたします。長期収載品の保険給付の在り方の見直しとして選定療養の仕組みを導入し、令和6年10月から施行することといたしました。介護保険の利用者負担2割となる「一定以上所得」の判断基準につきましては、介護保険における負担への金融資産の保有状況等の反映の在り方や、きめ細かい負担割合の在り方と併せて引き続き検討を行い、第10期介護保険事業計画期間の開始、これは令和9年度ですが、令和9年度までに結論を得るということといたしました。
 次にこども未来戦略ですが、「こども未来戦略」において「歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築する」とされており、令和5年度および6年度の軽減効果について一定の整理を行うとともに、令和7年度から10年度までにおける算定方法については別途検討を行うことといたしました。こども医療費助成につきましては、令和6年度から国民健康保険の国庫負担の減額調整措置を廃止することといたしました。地域支援事業等について、その適正な執行を確保しつつ今後の執行状況を十分に勘案した上で必要に応じて所要の対応の検討を行う。その際、健康寿命の延伸などを背景とした要介護認定率の改善の傾向を確かなものとするため、総合事業の充実について検討を行うことといたしました。最低賃金の継続的な引き上げに向けた支援策について、業務改善助成金に重点を置いている状況を改善するために必要な対応を検討することといたしました。育児休業給付の国庫負担割合については、令和6年度から8分の1に引き上げることといたしました。また育児休業給付に係る保険料率につきましては、当面は現行の0.4%に据え置きつつ、今後の財政悪化に備えて本則料率を令和7年度から0.5%に引き上げるとともに、実際の料率は財政状況に応じて弾力的に調整できる仕組みを導入することといたしました。大臣折衝の説明は以上です。社会保障は国民の皆様の生活に直結する分野であり、本日の折衝事項を中心にしっかりと取り組んでまいります。この後、事務方のブリーフィングが細かくありますので詳しくはそちらでご確認ください。私からは以上です。

質疑

記者:
診療報酬改定のトリプル改定について伺います。今回の折衝では、激しい議論のあった診療報酬改定の本体部分ではプラス0.88で決着しました。また介護報酬はプラス1.59、障害福祉サービス等報酬はプラス1.12とそれぞれ引き上げとなりましたが、それぞれの結果についての評価をお聞かせください。また今回の引き上げが、それぞれの現場の皆様の賃上げや物価高に十分対応できるものになったのかどうか、大臣のご認識や対応の効果についてご期待があればお聞かせください。
大臣:
ご指摘のように大変厳しい交渉でしたが、今回の同時改定では医療ではプラスの0.88%、介護ではプラスの1.59%で、これは実は処遇改善加算の一本化による賃上げ効果を含めますと大体2.04%程度になります。したがって2%台を実質的には確保できたとご理解いただきたいと思います。さらに障害福祉ではプラスの1.12%、これも処遇改善加算の一本化による賃上げ効果などを含めると、1.5%を上回る水準を確保させていただいております。いずれも、こうした分野、関係職員の賃上げを実現できる水準を確保できたと考えており、今後これらの改定率を前提に、賃上げや処遇改善に繋がる仕組みの構築に向けて関係審議会等において具体的な議論を深めてまいりたいと思います。
記者:
社会保障関係費の関係でお尋ねいたします。今回大臣折衝事項で3,700億円程度ということですが、夏の概算要求時点では5,200億円だったかと思います。これは差し引き1,500億円圧縮したということでよいのかという点と、その主な内訳について教えてください。
大臣:
全体の社会保障関係費が、夏の概算要求時点から圧縮して3,700億程度になるというものでございます。後で事務方から詳細を聞いてください。
記者:
トリプル改定でお伺いします。本日までに何度か鈴木財務大臣と折衝されているかと思いますが、改定に向けて改めて交渉や調整で難しかった点を振り返っていただけますか。
大臣:
全部が難しかったです。
記者:
特にどのあたりにご注力されて交渉されましたか。
大臣:
やはり総合経済対策の一環としても公定価格で仕切られているこの分野で、適切なる賃上げ分をしっかりと確保する、これがやはり1番大きな課題だと思っておりましたので、それを実現するということがやはり大きな課題としてございました。それに加えてやはり物価高騰に対応する分野で、こうしたことを各部門部門で厚生労働省内で調整をし、そして財務省との間でそうした厳しい折衝が行われた結果が先ほどご紹介した数字になって表れたわけで、そのプロセスの背景には非常にいろいろな交渉の積み重ねがあったということを、私も厚生労働大臣に就任して初めてのことでしたので、そうした非常に複雑なプロセスについて大分理解することができるようになりました。
記者:
トリプル改定について伺います。いずれもプラス改定、診療報酬の本体部分含めてプラス改定ということでしたが、一方で現役世代の保険料の負担に与える影響というところでは普通に考えればそれぞれの報酬が上がることで負担についても増やしていかざるを得ないのではないかと思いますが、今後の負担の在り方というところについては今回の改定によってどのような影響があるとお考えでしょうか。
大臣:
今回の負担の在り方についての考え方というものは、何度も答弁の中でも国会で申し上げている通りです。やはり全世代型の社会保障の制度の中で、それぞれ応能負担でこうした負担を考えていただく。ただその負担を考えていただくときにも、やはりそれぞれの課題についてどういう対象の国民の方々がその結果として負担を新たに負うことになるのか、そしてまたその負担を負うことによってどのような結果がそこから生じることが想定されてくるのか、そのようなことを実にきめ細かく見ながらこうした検討を進めてくるわけでして、今回はまずその最初のかたちを整えたということではないかと思います。しかし先ほどご説明申し上げた通り、いくつもの課題についてはやはり慎重な検討が必要だというかたちで、ある一定時期先延ばしさせていただいている、そういう内容もあることはご承知の通りです。
記者:
今回の改定によって、いわゆる総理が社会保障の負担率という言葉も使っていましたが、この負担率というものは上がるのでしょうか下がるのでしょうか。
大臣:
総理は実質的なこの負担率の言い方も、例えば単なる狭い意味での社会保障の保険料率というようなかたちだけではなく、国民の負担率という言い方もされてきているわけです。そういう中で国民のご負担を実質的に引き上げないという考え方の中で、実際にこの支援金というものの制度を新たに導入するという考え方で説明をされてきました。私どももこの考え方に忠実に、こうした社会保障に関わる伸び率に関わるところを適正化して、そしてこの支援金の新たな制度というものが円滑に導入できるよう私どもとしても支える側で協力していくわけです。
記者:
12月15日に武見大臣が官邸で総理と鈴木財務大臣と3人で面談されたかと思います。かなり財務省の主張と開きがあるという報道がなされていた中で、ここでどのような議論があり最終的に数字になったのか可能な範囲で教えてください。
大臣:
実際に開きがあったことは事実です。しかしそれは事務方でしっかり調整してくれましたので、いい姿が結果としてできたと思います。私の立場は厚生労働大臣ですので、常にこの厚生労働行政の中で所管する各分野で、やはり国の基本方針となっている賃上げによる経済の好循環をつくるということの中での役割を果たすということを考えながら実際にこの任に当たらせていただきました。
記者:
総理から何かご意向は示されたのでしょうか。
大臣:
実際に総理がどのようなことを仰ったかということはお伝えできないことになっておりますが、政権が掲げる医療・介護・福祉分野における賃上げの必要性、これについてはしっかりと議論させていただきました。
記者:
15日に日本医師会が声明を出しており、最終的な結果について必ずしも満足するものではないということが声明文の中にありましたが、大臣は特定の団体の代弁者ではないと就任時も仰っておりましたが、この医師会との関係について診療報酬との議論の中で立場の難しさ等もしあればお願いいたします。
大臣:
全く気にしないで行いました。自分の大臣としての責任とその立場に基づいて、自分で正しいと思ったことを徹底してやらせていただきました。
記者:
医師会の要望には応えられたとお考えでしょうか。
大臣:
正直どのような要望だったかよく理解しませんし、ご指摘の、後の医師会で出されたステートメントのようなものについてもまだ読んでおりませんので理解しておりません。私はやはり1番大事なことは自分自身でどう公平にその判断することができるかということが最も重要だと思っておりますので、その基本に今回も徹しました。
記者:
介護の利用者負担の2割負担ということでお伺いしたいのですが、今回また先送りすることで8回目になると思います。政府自身が結論得る時期を設定しながら、結論が得られないのはどうしてだとお考えでしょうか。
大臣:
それはやはり難しいからでしょう。国民に負担をお願いするということは決して簡単なことではありません。しかし他方で制度全体の持続可能性というものも考えなければならない。そういう中で大臣折衝でもこの2割負担の所得基準の在り方については第10期の介護保険事業計画期間の開始の前までにその負担増に対応できると考えられる所得を有する利用者に限るという考え方が一方でした。他方には、この一定の広い範囲、最初の範囲よりも広い範囲の利用者を対象とした上で一定の負担上限額を配慮措置として設けるという考え方と2案ありました。しかしこの2案を軸として介護保険における負担への金融資産などの保有状況の反映の在り方やきめ細かい負担割合の在り方と合わせて検討を行うこととしたものなので、改めてその分検討項目が増えました。したがってその分検討、結論が後ろに下がったという経緯がございます。現時点では具体的な検討スケジュールの時期はまだ確定しておりませんが、第10期の介護保険事業計画に向けてこうした検討は確実に行っていきたいと思っています。
記者:
改革工程ではこの問題を含めて今後検討しなければならない項目が列挙されているかと思います。ただ今回のような先送りが繰り返されると、改革工程そのものが信頼できないと受け止められかねないといった事態も考えられると思いますが、それについてのお考えを教えてください。
大臣:
社会保険の負担については、やはり私はいつも慎重でなければいけないと思っています。ただその中で、改めて応能負担でお願いする場合に応能の能力をどういう基準に基づいて、どうしたら個人の所有物に関わる対象を応能負担の能力の対象として捉えて、それによって応能の負担率を考えるということをしなければならなくなるわけです。この整理というのは極めて精緻に、しかも公平に行わなければなりません。しかも新たな能力というものをそうしたそれぞれの皆様方の所有物に関わるどこを対象とするかということを決める場合に、それは公平にその評価ができるものでなければならないわけです。こうしたことをまた1つ1つ丁寧に考えていきながらこの応能負担の在り方をより充実させていくという考え方を持つべきであり、私はそのためにも応能負担でやらなければならないが、応能負担の能力の在り方を検討する際には極めて精緻に、そして丁寧にこうした議論を進めていくべきだと考えています。
記者:
昨年末に期限を設定した時に、そこに向けて本来は議論していくべきものではなかったかと考えますが、それが何度も先送りされているということはどういう受け止めでしょうか。
大臣:
私は先送りすることが即悪だとは思っていません。やはりその時々の経済状況によっても実際に大きくその条件が変わるわけです。これはその状況をしっかりと判断しながら、応能負担の先ほど申し上げたような在り方についても議論した上で検討していくわけであり、今回その意味ではもう1つ詳しく応能負担の在り方について検討する必要性があり、そうした合意が形成されたことによって実質延期になったということであり、延期したということ自体を通じて計画通りではないということでご批判されるとすれば、それとは少し違う考え方だということをあえて申し上げたいと思います。
記者:
診療報酬改定について伺いますが、協議に入る前の大臣の念頭にあった、何%欲しいという数字があれば教えていただきたいです。また今回の診療報酬改定は大臣として初めてのご経験ですが、0.88%という最終的な結果に対するご感想と私人としてはご感慨もあるかと思いますので、その辺りもお伺いできればと思います。
大臣:
私自身がこの内閣の一員として、この国の大きな政策として総合経済対策があり、その経済対策の中で社会保障分野も含めてこうした労働者の賃金の引上げというものが経済の好循環を生み出す極めて重要なドライビングフォースになるという認識がありますので、その考え方を踏まえながら社会保障の分野でのこうした算定というものも行わせていただいたことは事実です。したがってできるだけこうした財源の確保を取りたいという思いでやりましたので、私が期待してもう少し頑張ろうと思っていた改正の点数というものはもう少し高かったわけです。ただ最終的には財政当局との間でも事務方がしっかりと調整してくれて、そして最終的にこの姿になったということであり、結果としてこういう姿になったということについては私は満足しています。
記者:
今回、長期収載品のところに選定療養が入ったと思いますが、中医協での議論でも国民への理解というものが非常に重視されているかと思います。大臣として今後制度を導入するにあたって重視していく点やお考えをお聞かせいただければと思います。
大臣:
これはこれから長期的に考えなければならない制度の在り方に関わる大変重要な課題だと思っています。実際に医学医療の進歩というものが非常にコストの掛かるものであり、それによって色々な新薬が開発されたとしても我が国で薬事承認さえされない。その結果、公的な医療保険では実際に活用できないというものが現実に確実に増えてきてしまっている。こういう中で私どもはやはり公的保険でできる限りカバーしようとしつつも、国民の皆様方が実際にご自身で負担していただきながら、そうした新しい医薬品についてもアクセスできるというやり方は一体どういうやり方が好ましいのか、こういったことなども、やはり幅広くこれから考えていくことが必要になってくるだろうと。しかし今回の選定療養というのはその中のごく一部であり、実際にこれからこういった選定療養の在り方については全体をもう少し見直す必要性があるという認識を持ちながら、今期の長期収載品に関わる選定療養の取扱いを明示させていただきました。

(了)