武見大臣会見概要

(令和5年12月15日(金)10:58~11:20 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について


大臣:
 今日の閣議で、「令和5年版死因究明等推進白書」を決定しました。本白書は、死因究明等推進基本法に基づき、毎年、国会に報告する法定白書です。今回の白書では、令和3年6月1日に閣議決定された「死因究明等推進計画」に基づいて令和4年度中に政府が講じた施策を報告しています。令和4年度は、地域における死因究明拠点を整備するためのモデル事業を実施したほか、全ての都道府県で死因究明等推進地方協議会の設置が完了するなど、着実に施策を進めることができました。安全で安心して暮らせる社会及び生命が尊重され個人の尊厳が保持される社会の実現に向けて、引き続き関係省庁と連携しながら、死因究明等の推進に全力を挙げて取り組んでまいります。

質疑

記者:
先月の名古屋高裁判決に関してですが、国は13日に上告しました。判決は基準額切り下げで用いた「ゆがみ調整」や「デフレ調整」を厚労省の独断で用いたことについて、判断過程を具体的に明らかにするべきだった等と説明不足を指摘しています。ゆがみ調整をひそかに半分に留めていたことには「ブラックボックス」との厳しい言葉を用いて批判しておりますが、判決が説明責任の在り方を問題視している点についてどのように受け止め、今後の行政に生かしていく考えでしょうか。
大臣:
平成25年の生活保護基準の改定は、第一に、生活保護基準部会の検証結果を踏まえ、年齢・世帯人員・地域差のゆがみを直すとともに、第二に、デフレ傾向が続く中、当時の基準額が据え置かれていたことなどに鑑み、物価の下落分を勘案するという考え方に基づき、生活保護基準の必要な適正化を図ったものです。お尋ねの名古屋高裁判決については、関係省庁及び被告自治体において判決内容を精査した結果、まず過去の最高裁判例に照らして、平成25年の生活保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断が違法であったとは言えないと考えられること、また他の高裁判決では当該判断が違法ではなかったとされていることなどを考慮して、12月13日に上告受理申立てを行いました。そしてお尋ねの名古屋高裁判決の個別の判示については、係属中の訴訟に関する事柄であるため、お答えは差し控えたいと思います。いずれにしても厚生労働省としては、今後とも自治体との連携を図りつつ、生活保護行政の適正な実施に努めてまいりたいと考えております。
記者:
ゆがみ調整の値を2分の1にしていたということについては、報道が出るまで3年間ぐらい対外的には非公表だったわけですが、こうした対応というものは、当時の大臣は違う方ですが、今改めて考えて、適切だったとお考えでしょうか。
大臣:
ゆがみ調整については、生活保護基準部会の報告書において、生活扶助基準の見直しを検討する際に生活保護を受給している世帯に及ぼす影響に慎重に配慮することなどが指摘されていたために、検証結果をできるだけ公平に反映しつつ、生活保護の受給世帯への影響を一定程度に抑えるなどのために、この検証結果を反映させる比率を一律2分の1といたしました。この経緯というものをまた改めて丁寧にご説明させていただき、ご理解賜ればと思います。
記者:
判決は、公表すると批判が起きて、それを避けるためだった可能性も十分考えられると指摘しておりますが、そうした事実はございますか。
大臣:
色々仰りたいことはわかります。ただその上で、係争中の具体的内容の事案については、今はやはりお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
記者:
政治資金の問題について伺います。自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る問題で、岸田総理大臣が、安倍派の4人の閣僚を交代させる人事を行いましたほか、党役員も辞表を提出しました。パーティー資金の多額のキックバックを収支報告書に記載しないかたちで受け取っていたとされる、この問題の受け止めと、閣僚の交代を受け、岸田内閣の一員として武見大臣はどのように信頼の回復や政策課題に取り組まれていくお考えでしょうか。
大臣:
これは岸田総理ご自身も、記者会見の中でも仰っていましたが、党の先頭に立って、国民の政治への信頼を回復すべく全力を尽くして政策の推進に支障が生ずることがないよう、政府与党挙げて高い緊張感を持って臨むと仰っております。仰っていることの意味というのは、やはりこの信頼の回復のために努力することを着実にやりつつも、我々はやはり、常に政治・政策を進めていくときに、「待った」はあり得ませんので、常に政策については、やはり着実にそれを実施していく。この基本的な考え方の中で信頼を回復しつつ、必要な政策は確実に実現していく。そのことを通じて全体として、さらに国民の信頼の回復に努めるという考え方で、まさに総理は火の玉となってと表現されましたが、私自身も同じ気持ちでこの課題に取り組み、そして厚生労働大臣としての職務というものを確実に実行することによって、国民の信頼の回復を得たいと考えます。
記者:
今、診療報酬改定はじめ予算編成、来年度予算の策定も大詰めを迎えていると思いますが、こうした予算編成に与える影響というものはどのようにお考えでしょうか。
大臣:
予算編成というものについては、信頼の回復というものは常に念頭にあって当然ですが、同時に、政策としての観点から、予算編成というものを着実に実施していくということが求められるのだろうと思います。したがって、そういった立場で私としては取り組んでいきたいと思います。
記者:
本日の閣議や閣僚懇談会で、岸田首相からどのような指示があったのか、信頼回復への言及、これまでの反省や今後の指針等、発言された内容を教えてください。
大臣:
閣議の内容については、ご存じの通り、官房長官が代表して記者会見でご説明することになっておりますので、私の方からのそうした説明は控えさせていただきたいと思います。
記者:
診療報酬改定について伺います。来週にも来年度予算案が閣議決定される見込みですが、改定に向けた現在の調整状況を教えてください。また、看護補助者ら医療分野の賃上げに向けての決意も合わせてお願いいたします。
大臣:
決意は大変強く持っております。令和6年度の診療報酬改定にあたっては、ご指摘のような看護補助者も含め、医療や介護における賃上げをはじめとする人材確保への対応、これは喫緊の課題です。この重要な課題というものをまず基本的な認識として持った上で、この診療報酬改定の作業にあたっております。今般の診療報酬改定の改定率の決定に向けては、先日13日、財務大臣との協議を行うなど対応してまいりました。予算編成もいよいよ最終局面に入ってきましたので、しっかりと覚悟を決めて取り組んでいきたいと思います。
記者:
厚労省は今週、性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更する際に必要な医師の診断書について、生殖能力があるかどうかの記載を当面の間、必要としないという通知を出しました。この通知を出すに至った経緯と、不要とする期間の目安について教えてください。
大臣:
まず事実関係をしっかり申し上げておきたいと思います。本年10月25日、最高裁において、性同一性障害の特例法第3条第1項第4号の規定を違憲とする旨の決定がされ、当該規定は無効であるとの判断という判断が下されました。性別変更の審判を請求するに際しては、家庭裁判所に提出される医師の診断書の記載要領は、厚生労働省が通知で示しており、生殖腺機能に関する記載があります。このため最高裁決定を踏まえ、本年10月25日以降に家庭裁判所に提出される診断書は、通知の記載に関わらず、当面の間、現在の生殖腺機能に関する記載がなくても差し支えない旨を、都道府県等及び日本精神神経学会等の関係学会に対し、今月12日、法務省と連名で事務連絡したところです。不要とする期間については、特例法が改正されるまでの間を、当面の間と考えているところです。
記者:
新型コロナワクチンについて伺います。12月12日の会見において、武見大臣は「新型コロナワクチン接種後の副反応が疑われる症状については、定期的に開催している審議会において評価を行っており、審議会においては、症状が一定数に達した際に接種を見合わせる基準は設定していない」とおっしゃいました。「症状が一定数に達した際に接種を見合わせる基準は設定していない」とのことですが、ワクチン接種見合わせ、つまり「中止」について、死亡を含めた症状の件数としての基準が存在しないだけであって、数値などその他の条件に基づいた「中止」基準は存在するのでしょうか。それとも一度走り始めたワクチン接種キャンペーンは、製薬会社との契約満了まではどんな重症事例が何件発生しようとも、またどのようなデータの数値が出ようとも止まることはないということなのでしょうか。
大臣:
ワクチン接種後の副反応が疑われる症状について評価を行う審議会においては、この接種の見合わせに関して特定の基準は設定しておりません。その時点で得られている情報、そして科学的知見、これらに基づき、ワクチン接種によるベネフィットがリスクを上回ると考えられるか検討するという立場なので、重要なことは、こうした副反応等に関わる情報とそれらを判断するときの科学的な知見、これらがやはり極めて重要な要素として考えられ、それに基づいて対応するということになっております。
記者:
新型コロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎について、厚生労働省の公表値が1年以上更新されていないことについて伺います。一例を挙げて申し上げますと、10代の男性がモデルナのワクチンを接種した場合、100万人あたりの心筋炎・心膜炎の発症頻度は2021年10月15日公表で、100万人あたり28.8人、これは心筋炎・心膜炎の合計であり、12才から19才の男性です。以後、心筋炎のみ、15才から19才の数字を挙げますと、2022年6月10日公表で100万人あたり129.6人、7月8日公表で138.4人、8月5日公表で155.1人と、公表のたびに増加してきました。このような中、昨年8月以降、更新がされなくなってしまいました。更新がされなくなった理由と、最新の数字を把握しているかどうかについて教えてください。
大臣:
ご質問の報告頻度は、ワクチン接種後に心筋炎や心膜炎が疑われると報告された事例について、2021年10月公表分は1回目だけ接種した方と2回目まで接種した方との合計の頻度、そして2022年6月から8月までの公表分は、2回目を接種した方の頻度と理解しています。実際は、2022年6月には、3回目を接種した方の報告頻度もすでにお示ししております。その後も接種回数毎に、疑い報告のあった頻度はお示ししております。審議会では、この報告頻度をもとにワクチン接種の安全性を評価いただいておりますが、昨年8月以降は3回以上の追加接種をした方が増え、安全性を評価するためには追加接種の評価に注力することが重要であるため、3回以上接種した方での報告頻度をお示しすることにしたということが現在の経緯です。なお審議会では、心筋炎・心膜炎の副反応疑い報告状況やこれまでの検討結果を踏まえても、引き続きワクチンの接種体制に影響を与える程の重大な懸念は認められないと評価しているということも付け加えておきたいと思います。
記者:
先ほどの質問で大臣は、そのときの、いわゆる情報が大事だということを仰りましたが、ワクチン接種を進めるかどうかについて、これまで記者会見で取り上げてきましたが、この心筋炎について報告が大部分されていない、1割程度ではないかという話をしてきましたが、このどんどん上がっている数字、これが10倍以上の可能性があるわけですが、それについて、その可能性や、それでもいいのか、調べなくていいのかについてご見解いただけますでしょうか。
大臣:
実際に、現状で私どもは、ワクチンの接種体制に大きな影響を与えるほどの重大な懸念が生じているとは認めておりません。したがって現状においては、特にこの3回目接種する方が増えたわけですから、この3回目接種した方の評価に注力をするということを、まず第1に考えて、3回以上接種した方での報告の頻度をお示しするということで、この皆様方のご理解を得ようという考え方にまとまってきたわけです。その上で、現状における評価というものは、決してそのような重大な影響を与えるようなものとは考えていないというものが、今の私どもの考え方です。
記者:
3回目接種の公表も、昨年の8月で止まっておりますが、公表されないのでしょうか。
大臣:
これは3回以上接種した方での報告頻度を、今後もお示しすることになります。
記者:
アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」について伺います。20日に保険適用され、近く実際に患者への投与が始まりますが大臣の受け止めをお願いします。保険適用に合わせ、最適使用推進ガイドラインでは、投与できる医師・医療機関の要件が示されましたが、具体的にどの医療機関で治療できるのか一般の方にはわかりません。厚労省で情報提供のホームページを作成するとのことですが、新薬を提供する医療機関のリストを掲載する考えはありますか。また公開する場合はいつ頃の掲載になるか、目処は決まっていますか。
大臣:
本剤は、アルツハイマー病の原因に働きかけて病気の進行自体を抑制する薬としては、国内で初めて承認された医薬品であり、またアルツハイマー病の新しい治療法を提供するものと認識しています。日本企業によるイノベーションの成果とも考えており、非常に期待をもっているところです。本剤の投与対象は、アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症と限定されており、まずは身近なかかりつけ医等から、投与対象者となる方を投与可能な医療機関に繋いでいただくことになると考えます。その上で厚生労働省としては、製薬企業が投与可能な医療機関のリストを作成する方向で今現在検討中と聞いております。今後、本省で作成するホームページにおいて、そうした情報にアクセスできるようにする、そして国民にわかりやすい情報提供をするということに努めていきたいと考えております。またさらに、地域の認知症医療の中核である認知症疾患医療センター、これは全国に500か所ございます。ここの中で本剤を実際に投与している医療機関については、自治体と協力して把握した上で、できるだけ速やかに公表できるように準備をしてまいりたいと考えております。ただ、まだこの認知症疾患医療センター、500か所ございますが、全てが、実際に全てそうした診断を行う準備が整っているわけではございません。できる限り、今後こうした準備の態勢を整えていきながら、こうした周知も行い、国民の皆様方が必要に応じてアクセスしやすいように、私どもとしては対応していきたいと思います。
記者:
公表時についてはまだ未定でしょうか。
大臣:
それはまだこれからです。

(了)