武見大臣会見概要

(令和5年12月8日(金)9:20~9:36 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について

大臣:
 冒頭は特にございません。

質疑

記者:
生活保護に関する11月30日の名古屋高裁判決について、1日の閣議後会見で大臣が「あの当時は九州の一部の地域などで生活保護制度というものが極めて好ましくない形で悪用されているケースなどが多々あり、また窓口で大変大きく問題となり、窓口の職員が大変深刻な脅威のもとに晒されるということが実際多々起きておりました」と発言されました。これに対して訴訟団体のメンバーが会見を開き「根拠がないフェイク発言」として大臣に発言の撤回を求めました。改めて、2013年当時に「九州の一部の地域などで生活保護制度が極めて好ましくないかたちで悪用されているケース」が何件くらい発生していて、それは他の地域に比べて特筆して多かったのか、エビデンスを示して頂くとともに、発言が正確だったのかどうかについての認識を伺います。もし修正される場合はどこをどう修正するのかも教えて下さい。また、発言が「差別を助長する」との指摘もございますが、これについての受け止めもお願いします。
大臣:
12月1日の記者会見では、当時の生活保護バッシングや2012年の衆議院選挙の自民党公約について問われたため、生活保護を巡る当時の時代背景を述べた上で、これに対処するために、生活保護制度について様々な見直しを行った旨をお答えしたものです。そして記者会見でお答えした九州地方の事案については、複数名が共謀して生活保護の不正受給に関与していたものがあり、7名の逮捕者も現実に出ております。さらにまた当時の傾向として、不正受給の件数については、2009年度は19,726件であったものが、2012年度は41,909件にまで伸び、2013年度は43,230件まで増加しました。ただし、不正受給金額が保護費全体に占める割合は、2009年度は0.34%、2012年度は0.53%であり、不正受給が大きな割合を示すものではないことは認識しております。そしてもう1つ、九州の一部の地域などと発言したものですが、必ずしも、九州地方で特に多かったというだけの話ではありません。このほか、窓口職員に対して暴力等を行った事案がいくつか報道されていたものと認識しておりますが、窓口職員への脅威については、国としても自治体に対して、警察と連携体制を構築するなどの取組を行った場合、国庫補助により対策の支援を行うようになったという経緯も当時ございました。これら事案の詳細について、個別の事案を強調する意図はないため、お答えは差し控えますが、あくまで、時代背景に関連した内容を問われたため、当時の生活保護を巡る時代背景を述べたものであります。なお私自身がなぜこうした発言をしたかと言うと、それはやはり社会的弱者を救済するために、こうした救済措置というものが生活保護というかたちで、生活保護医療含めて我が国では皆保険制度の中の1つの一部の重要な役割を担っております。そうした弱者に対する制度・仕組みというものを悪用する人たちというものは最も私は恥ずべき人たちだと思います。したがって、そうした当時の背景を説明するときに申し上げたということが事の経緯です。
記者:
今のご発言を伺うと、特に発言は修正も撤回もされないということでよろしいでしょうか。それとも九州の一部という部分については撤回されるということでしょうか。
大臣:
そこだけは撤回します。
記者:
差別を助長するという指摘についてはいかがでしょうか。
大臣:
逆です。そのような差別はあってはなりません。そうしたことを私は助長するというつもりは全くありません。しかし先ほど申し上げたように、このように社会の弱者の人たちを救済するために、多くの人たちは税金を使ってその人たちをサポートする。こういう仕組み、社会保障制度の中でも最も大事な仕組みだと私は思っており、こうした生活保護というものについて悪用するという人たちというものは、本当に社会的に恥ずべき人たちだと思ったため、こうした発言をしました。
記者:
今の時代背景のご認識と、基準額の引下げは直接は関係ないでしょうか。
大臣:
関係ありません。基準額はもっと別の合理的な理由でされているわけです。
記者:
今朝の一部報道で、現行の健康保険証について、政府は予定通り来年の秋に廃止する方針を固めたという内容が報じられていましたが、これについて事実関係を教えてください。
大臣:
マイナンバー総点検については、原則11月末までに点検に取り組むこととしており、現在、集計作業等に取り組んでいます。現行の保険証の廃止については、これまで申し上げてきた通り、国民の不安払拭のための措置が完了することを前提として判断することとしており、現在集計中の総点検結果も踏まえ、こうした観点から適切に判断してまいりたいと思います。やはり国民の不安を払拭するための措置というものは大変大事だと思います。したがって、現時点で何らかの方向性を決定したという事実はまだございません。
記者:
昨日行われた介護保険部会の関連でお伺いします。利用者の自己負担割合の2割の人を拡大するかどうかの論点について、慎重な意見も相次いだかと思います。一方で少子化対策予算の確保に向けて、来年度の歳出改革項目として検討することが盛り込まれています。厚生労働省としてはどのようなスタンスで臨んでいかれるのか、他にも歳出改革工程表には、医療介護など痛みを伴うような改革案が盛り込まれていますが、こうした点についてもどのように検討を進めていくのか、お考えをお聞かせください。
大臣:
介護保険の利用者負担の在り方については、昨日12月7日の社会保障審議会介護保険部会において、負担能力に応じた給付と負担の不断の見直しの観点からご議論をいただき、「介護報酬改定での対応と合わせて、予算編成過程で検討する」方向性について、一定のご理解をいただきました。今後は、介護保険部会での議論を踏まえ、介護サービスは医療サービスと利用実態が異なるため、単純な比較は困難であること、そして仮に見直しを行った場合に、サービスの利用へ与える影響に留意することなどにも十分留意の上で、見直しの可否や、行うとした場合の範囲や時期などについて、与党ともしっかり相談しながら、丁寧に予算編成の中で検討してまいりたいと思います。全世代型社会保障構築会議において取りまとめた改革工程表の素案については、今後、年末までに政府としてその内容を取りまとめるものと承知しておりますが、厚生労働省としては、2028年度までの毎年度の予算編成過程において実施すべき施策を検討する上で、「全世代型社会保障」の理念に基づき、負担能力に応じて公平に支え合う仕組みを構築する中で、必要な保障が欠けることのないように進めていかなければならないと考えています。こうした負担の在り方というものを議論するときに、その負担の在り方によって結果として本来しっかり給付すべきサービスというものが滞るようなことがあってはならないという考え方です。
記者:
新型コロナワクチン接種後の副反応疑い報告が適切にされていない件についてお伺いします。12月1日の記者会見で武見大臣は、接種後の心筋炎・心膜炎は「2021年12月6日の報告基準日設定以降」のものが適切に報告されているか調査を行う旨の発言がありました。しかしそれでは問題がある点について伺います。全国の11の地方自治体の予防接種健康被害救済制度のデータを集計しました。そうすると、105件の心筋炎・心膜炎の発症事例が見つかりました。そのうち2021年12月6日以前に接種した事例は81件、12月6日以降に接種した事例はわずか24件でした。安全性の評価を適切に行うためには、この約8割を占める、報告基準日設定以前の症例の調査、これが必要であることは明らかと思われますが、武見大臣は報告基準日設定以前の発症の調査について、どのようにお考えになりますでしょうか。
大臣:
新型コロナワクチンの安全性については、医師等が行う副反応疑い報告のみならず、製造販売業者からの報告、研究、海外規制当局等の情報等を総合的に勘案して審議会において評価し、そして必要に応じて安全対策を講じてまいりました。報告基準日以前の事例が今回の調査の対象となっていないことをもって安全性評価が不十分だと考えるのは、そうしたご指摘はあたらないと思います。そして報告基準設定の有無に関わらず、医師がワクチンとの関連性が高いと判断した場合については、これをしっかり報告するということを私どもは求めており、こうした運用が適切になされるよう引き続き必要な周知を行っていきたいと思っております。
記者:
報告基準日設定以前の心筋炎の調査はされないということでよろしいでしょうか。
大臣:
現状では考えておりません。
記者:
レプリコンワクチンについて伺います。武見大臣は12月1日の会見で「レプリコンワクチンは、接種後に抗原タンパクをコードするmRNAが細胞内で複製され、持続的に抗原タンパクが作られるワクチンである」ことを安全性の担保として説明されました。しかし「ワクチン接種後、分解されずに血清中に残存するスパイクタンパクが、心筋炎などの有害事象を引き起こしている」という指摘もあり、武見大臣のレプリコンワクチンに関する安全性の説明は、こうした指摘と矛盾しています。やはり、有害事象が起こる危険性・リスクがあるのではないでしょうか。これは人の命に関わることですので、レプリコンワクチンの使用を思いとどまるのが人道的決断ではないでしょうか。大臣のお考えをお聞かせください。
大臣:
11月28日に承認したMeiji Seika社のレプリコンワクチンについては、投与後の体内での分布を調べたマウスの試験において、従来のmRNA と比べると生体内で長く維持される可能性はあるものの、蓄積などの特段の懸念は認められず、mRNAは時間の経過に伴い体内から消失し、抗原タンパクも時間とともに減少する傾向が示されています。また国内の臨床試験においても、有害事象の種類や発現割合等にファイザー社ワクチンと比べて明確な差は認められておりません。安全性は許容可能であると判断できたことから、薬事承認に踏み切ったという経緯があったことをご理解いただければと思います。
記者:
毎月勤労統計調査について伺います。本日公表された10月分の速報で、実質賃金は前年同月比2.3%減となりました。名目賃金はプラスとなりましたが、依然として物価高には追いついていない状況です。今回の調査の受け止めと、今後の見通しや対応について教えてください。
大臣:
本日公表した毎月勤労統計調査令和5年10月分の速報値ですが、名目賃金の対前年同月比はプラス1.5%、実質賃金はマイナス2.3%でした。経済の好循環により国民生活を豊かにしていくためにも、実質賃金の上昇が必要と認識しております。今後の結果についても注視してまいりたいと思います。そして賃上げに向けては、中小企業が賃上げしやすい環境の整備や、三位一体の労働市場改革の推進が重要だと考えています。先日11月29日に補正予算が成立したところであり、この補正予算の中で、生産性向上につながる業務改善助成金や産業雇用安定助成金の充実などが含まれており、これらの適切な執行に努めてまいりたいと考えています。

(了)