武見大臣会見概要

(令和5年11月7日(火)9:26~9:42 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について

大臣:
 冒頭は特にございません。

質疑

記者:
診療報酬改定について質問します。1日の財政審で財務省は、診療所の経営状況が極めて良好とした上で、本体をマイナス改定することが適当、と指摘しました。これに対し、日医の松本会長は、財務省のデータはコロナ禍での状況で比較したもので極めて恣意的とし、医療従事者の賃上げは大幅アップなくしては不可能と批判しました。大臣の受け止めをお願いします。また、財務省は医師偏在解消も視野に、診療所の報酬などに対し、地域別単価の導入も提案しました。この提案についての大臣のお考えと、今後どのように議論していくかの方針についてお聞かせください。
大臣:
新型コロナの感染リスクがある中で、診療所を含め医療関係者の方々には、昼夜を問わず献身的に対応に当たっていただきました。国としても、緊急対応として、補助金や診療報酬の加算措置により、その後押しをしてきたところです。その結果として収益が増えたことの評価について、こうした経緯を踏まえる必要性があると考えます。新型コロナも5類になり、補助金や診療報酬の加算措置も大きく見直しています。来年度からは、改正感染症法に基づく新興感染症対策も施行されます。昨日は、医療関係者の方々と共に「ポストコロナ宣言」を取りまとめたところです。医療関係者の方々には、次の感染症有事にもしっかりと取り組んでいただく必要性があります。厚生労働省としては、年末に向けて、医療機関の経営状況も踏まえつつ、賃上げ、物価高騰、そして感染症対策をはじめとした新たな課題に対応できる改定に向けて努力していきたいと考えています。なお、地域別の診療報酬の導入の提案に関しては、我が国において、国民皆保険の下、誰もがどこでも一定の自己負担で適切な医療を受けられることを基本的な理念としており、診療報酬については、被保険者間の公平を期す観点から、全国一律の点数の設定をしています。したがって、こうした課題については慎重に考える必要性があるというのが、私どもの立場です。
記者:
WHOのパンデミック条約に関する方針について質問します。2024年5月の第77回WHO総会での提出・採択に向けて、現在、国際保健規則(IHR)の改定と新たな「パンデミック条約」の策定作業が進められており、「WHOへの国家権力を超える権限移譲に繋がるのではないか」など、様々な問題点が指摘されています。日本の新型コロナウイルス・パンデミックにおいては、緊急事態であることを理由に、ワクチンが特例承認され、ワクチンの成分や製薬会社の免責事項などが十分に公表されず、国民自らが、その安全性を確認できない不透明な状態のまま、ワクチン接種が進められました。これは民主主義が機能しなかったということです。このたびのIHR改定とパンデミック条約によって、今後の医薬政策において、ワクチンの承認過程、つまりワクチンの透明性・安全性は確保されるのでしょうか。また、民主主義がゆがめられ、日本の国家主権、そして主権者は国民であるという主権在民の大原則が侵されるような事態を招く危険性はないでしょうか。
大臣:
基本的に、安全性の確保を含めて、ワクチンの承認は各国の規制当局によって行われています。国際保健規則、インターナショナル・ヘルス・レギュレーションですが、その改正や、いわゆる「パンデミック条約」の議論はまさに今、進行中です。国民が接種する国内のワクチンの安全性を含めた承認過程に関することについては、まだ議論されていません。なお、現在使用されている新型コロナワクチンについては、特例承認されたものも含めて、その品質、有効性・安全性をPMDAの審査において確認して、審議会における審議を経た上で、薬事承認されています。その成分を含めたワクチンに関する情報や審査結果に関しても、添付文書や審査報告書、審議会の議事録を通じて公開しているところです。その安全性や審査における透明性等について、現状において特段問題があるとは考えていません。
記者:
毎月勤労統計調査について伺います。本日公表された9月分の速報で、実質賃金が前年同月比2.4%減となりました。名目賃金は上昇しているものの、物価の伸びには追いつかない状況が続いています。今回の調査結果の受け止めと、今後の見通しや対応について教えてください。
大臣:
本日公表した毎月勤労統計調査令和5年9月分の速報値において、名目賃金の対前年同月比はプラス1.2%、これに対して実質賃金はマイナス2.4%でした。実質賃金は令和4年4月以降18か月連続でマイナスとなっております。経済の好循環により国民生活を豊かにしていくためにも、実質賃金の上昇が必要という考え方は明白に持っております。今後の結果についてもしっかり注視してまいりたいと思います。今後の対応についてですが、賃上げに向けて、中小企業が賃上げしやすい環境の整備が重要です。厚生労働省としては、中小企業の賃上げと設備投資を業務改善助成金で支援しています。政府としても、先日11月2日に取りまとめた「デフレ完全脱却のための総合経済対策」において、中小企業の賃上げの環境整備等を盛り込んでいるところです。また今後、持続的に賃金が上がる「構造」を作り上げるため、三位一体の労働市場改革を確実に進めることが必要であり、リ・スキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入、そして成長分野への労働移動の円滑化、こうした三位一体の労働市場改革というものを通じて、働く人の立場に立って、こうした問題に取り組んでいきたいと考えております。
記者:
先月20日に閣議決定された自殺対策白書について、昨日の参議院厚生労働委員会の理事懇談会で、白書の一部に、グラフの表記や一部の記載に誤りがあったという説明が厚労省側からされたということですが、この白書の誤りについて、これまで分かっている事実関係と今後の対応について教えてください。
大臣:
現状で私が把握している限りにおいてお答えしたいと思いますが、本年10月20日に閣議決定され、国会に提出された「令和5年版自殺対策白書」について誤りがあったことは事実です。現在、白書全体の記述等を改めて精査しているところです。現時点で、誤りの具体的な内容は、まだ精査が終わっていませんので、お答えすることは差し控えたいと思います。誤りの内容をできる限り早く公表するよう、精査を進めるように指示を出しています。そして、誤りの内容を踏まえて再発防止策を講じ、今後同様の事態が生じないよう努めてまいりたいと思います。そして、過去の例に倣い、白書全体の記述等の精査を完了次第、速やかにホームページ上で正誤を発表させていただきたいと考えています。私も、大臣に就任する以前から、厚生労働省における出版物にこうした誤字等があったことについては大変気になっておりましたので、ただ単に自殺対策白書だけに限らず、白書等をしっかりと精査し、こうした問題が他の白書等、国民に公表される資料の中でも起きないように、全省に向けて改めて、誤りがないように体制を強化することを指示しました。
記者:
誤りの内容としては形式的なものが大半ということでしょうか。それとも内容に関わる部分もありますでしょうか。
大臣:
これは、今まさに精査している段階ですが、単純にこれだけという、誤字脱字というのは単純でないものもあるようです。したがって、しっかりと原因を究明することなく再発防止はできませんので、その点、多少の時間が掛かることはご了解いただきたいと思います。
記者:
新型コロナウイルスについて伺います。感染症法上の位置付けが5類に移行してから半年を迎えます。夏には感染拡大がありましたが、5類移行後の厚生労働省としての対応をどのように評価されていますか。また、冬に向けては、インフルエンザとの同時流行や、医薬品の供給不足も懸念されますが、今後の対応の方針を教えてください。
大臣:
新型コロナウイルスは、今年5月8日に感染症法上の5類感染症への位置付け変更後、厚生労働省としては感染状況を注視しつつ、夏の感染拡大に向けて注意喚起や必要な対応の周知等を行ってきたところです。足下ではインフルエンザの感染が拡大しており、冬にインフルエンザとコロナの同時流行の可能性があります。引き続き感染動向をしっかり把握し、国民の皆様には適切な感染防止対策に努めていただくようホームページ等でも引き続き呼びかけをしていきたいと思います。また、感染症の拡大等により需要が増加しているせき止めや痰切りに関わる薬などの感染症対症療法薬については、これまでも主要なメーカーに対して、他の医薬品の生産ラインからの緊急融通やメーカー在庫の放出など、供給増加に向けたあらゆる手段による対応を行っていただいているところです。さらに、本日これらの感染症対症療法薬を製造する企業に対して、改めて私から直接、更なる供給増加について呼びかけることとしております。今般の経済対策において、これまで増産要請に対応してきた企業が24時間の生産体制へと移行することなど、更に増産に向けた投資を行う場合についても支援を講じる方向で進めております。引き続き、国民の皆様に必要な医薬品を確実にお届けできるよう、対応してまいりたいと考えております。
記者:
今言及のありました、24社を呼んでの感染症関連薬の増産についてお伺いします。今日午後に24社の製薬企業を呼んで大臣から直接要請されるとのことですが、今までの増産要請も含め、あくまで法的根拠がなく、お願いベースでの要請に過ぎないと担当課から伺っているのですが、今回なぜ24社を厚労省へ直接呼んで増産等の要請を行うのか。大臣が日薬連などの業界団体に直接伺って要請することではなぜだめなのか教えてください。
大臣:
事態の深刻度・緊急度というものを考えた上で、大変ご足労ではありますが、各社の代表の方に来ていただいて、そして現状についてのご説明をさせていただいて、そこでやはり早急なご協力をお願いするということを申し上げる必要性を認識したため、このようなやり方をとらせていただきました。その上で、昨日のインフルエンザの感染状況を見てみますと、年初あたりは1.0くらいから始まっていますが、昨日は19.68まで上昇しています。したがって、このような上昇傾向がこの冬に向けて更にどのように感染状況が展開していくのか、我々は常にこれを注視し、そしてその際に必要となるような医薬品が決して不足することがないように、今の時点から徹底してお願いする必要性を私どもも認識しております。したがってこのようなやり方をとらせていただきました。
記者:
深刻度を鑑みて向こうからこちらへ来ていただくということですが、それであれば支援策というものは経済対策にも盛り込まれているところだと思いますが、何か手当のようなものは現段階でいえるものはありますか。
大臣:
この中ではすでに既定の方針についてのお願いをしてあるわけですので、それを更に徹底していただくこと、そしてご意見があればそこでしっかりご意見を伺って、そして我々としても可能な限りそれに対応させていただくということも、この場の1つの重要な意義であります。

(了)