武見大臣会見概要

(令和5年10月20日(金)11:05~11:27 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について


大臣:
 本日の閣議で、「令和5年版自殺対策白書」を閣議決定しました。自殺対策白書は、自殺対策基本法に基づき、毎年作成している法定白書です。今年の白書では、昨年の自殺の概況や、令和4年度の自殺対策の実施状況を取りまとめるとともに、新しい自殺統計原票を活用して、失業期間と自殺の原因・動機の関係など、より詳細な自殺動向の調査・分析を行っております。昨年の自殺者数は、21,881人と前年を上回り、小中高生は過去最多の514人と深刻な状況です。引き続き、関係省庁と連携しながら、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指し、取組を進めてまいります。
 先月27日に公表した「年収の壁・支援強化パッケージ」について、所要の手続きを終え、本日より開始いたします。具体的には、「キャリアアップ助成金」については、取組計画の提出を本日より、全国の都道府県労働局・ハローワークで受け付けます。従来と比べ、計画書の記載方法を簡易にし、添付書類を少なくする等、手続きの簡素化を行いました。「社会保険適用促進手当」や「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」については、具体的な事務手続きを踏まえたQ&Aを本日公表いたします。加えて、「企業の配偶者手当」の見直しを促進するため、見直しのメリットや手順を盛り込んだわかりやすい資料を作成しております。こちらも同じく、本日公表します。本パッケージについては、パート・アルバイトの方々、雇用する事業主の皆様に広く知っていただき、ご活用いただくことが非常に重要です。厚生労働省としては、経済団体・業界団体を通じた周知、政府広報との連携、都道府県労働局や日本年金機構における周知、コールセンターを今月30日予定で開設いたします。中小企業からの助成金の申請等に関する相談対応等を行うこととしており、積極的に周知・広報に努めてまいります。いずれも詳細については、事務方にお尋ねください。私からは以上です。

質疑

記者:
武見大臣は、昨日、政府が11月初旬にまとめる経済対策に盛り込む方針の介護職員の賃上げについて、引き上げ額は「月6,000円程度が妥当」との発言をされました。今年の春闘では民間主要産業の賃上げ率は3.6%だった一方、介護職は1.4%にとどまり、民間企業では賃上げの流れの中、公定価格の介護現場では「月6,000円では、他産業との差は今後も広がる」との声も聞こえます。具体的な金額はまだ決まっていない段階だとは思いますが、「6,000円を妥当」と考える根拠を聞かせてください。
大臣:
その発言の後に、これはまだ省内でも決まっていないことですということはお話しした通りです。現在、今月中を目途に、足下の急激な物価高から国民生活を守るための対策や持続的賃上げなどを柱とする総合経済対策の取りまとめに向けて検討を進めているところです。したがって現時点で金額を具体的に決めているものではありません。その上で、昨日の私の発言は、今年度の春闘における全産業平均の賃上げ率が3%台である一方、医療・介護分野の賃上げ率は1%台にとどまっていることを踏まえれば、これ以上給与の格差を広げてはならないという考え方をもとに、改善を図ることが「妥当」という趣旨で申し上げたものです。金額の是非を申し上げたつもりではありません。いずれにせよ、人材不足によるサービス提供体制が危機的事態となっていることへの対応が必要であると強く認識しており、引き続き、どのような対応が必要かしっかり検討してまいりたいと思います。
記者:
1930年代から40年代を中心に、旧陸軍病院などで使われた放射性物質を含む造影剤トロトラストの健康被害について伺います。1970年代以降、トロトラストが体内に沈着したと判定されて、恩給増額などで国が支援した傷痍軍人の数を上回る人数の患者リストが長崎大学で保管されていることがわかりました。女性など国の支援から漏れていた患者がいた可能性があります。トロトラストの健康被害の実態について、厚労省として改めて調査や検証を行い、記録として残す考えがあるか教えてください。
大臣:
今初めて伺った話なので、私自身、実際にその内容を承知しているわけではありません。ご質問の趣旨についてどういうことであるのかということを、まず省内で確認したいと思います
記者:
外国人技能実習と、特定技能の両制度についてお伺いします。制度見直しを検討する政府有識者会議は、18日に最終報告の試案を示しました。新制度では、外国人労働者の権利保護の観点から職場を移りやすくなりますが、この新制度についての大臣の受け止めと、新制度下での外国人労働者の適正な労働環境確保に向け、これから厚生労働省としてどう取り組むのか教えてください。
大臣:
10月18日に行われた有識者会議において、これまでの議論を取りまとめた最終報告書の「たたき台」が示されたことは承知しております。引き続き、この「たたき台」を基に、ご質問の転籍の在り方を含めて議論がなされていく段階であり、私から今後の方向性について、先に具体的な考えを述べることは差し控えたいと思います。今後取りまとめられる最終報告書を踏まえ、厚生労働省としても、関係者のご意見も丁寧に伺いながら、しっかりと検討していきたいと思います。
記者:
年金制度改革についてお伺いします。次期制度改正に向けた議論が社会保障審議会で進んでいますが、年金財政の立て直しのためにはマクロ経済スライドの名目下限措置の撤廃が必要だという指摘が専門家からは多くあります。まずここについてどのようにお考えかお聞かせください。一方で、マクロスライドが機能してこなかった結果、今の見込みでは基礎年金部分の調整が長引き、所得代替率が大きく低下する見通しとなっています。老後の収入が年金のみ、とりわけ基礎年金しかない人にとっては、低年金は深刻な問題です。ここの現状をどのように認識していて、解決策としてどのような手立てを講じていくべきか、いわゆる調整期間の一致という考え方もありますが、ご見解をお伺いします。
大臣:
基礎年金については、2019年の財政検証において、マクロ経済スライドの調整期間の長期化により将来の給付水準の低下が見込まれており、国会においても、基礎年金の給付水準を将来にわたって維持するための方策を検討するよう求められています。また、マクロ経済スライドの在り方についても、ご指摘の「名目下限措置」の見直しや調整期間の一致といった事項などについて指摘されているところです。これらの課題については、次期年金制度改正に向けて、社会保障審議会年金部会において、関係者とも十分に議論しながら検討を進めてまいりたいと思います。
記者:
冒頭発言で、「年収の壁・支援強化パッケージ」の開始についてご発言がありました。年収の壁を今意識している方は最大で約60万人だ、と年金局で試算が出ておりますが、今般の助成金について、どのくらいのボリュームで助成金を活用して欲しいという、大臣としての目標・希望等があればお聞かせください。
大臣:
数字を申し上げることはできませんが、できるだけ、そして1人でも多くの、こうした壁を意識されている労働者の方々が、事業主としっかり協議していただき、事業主からこの申請を出していただきたい。そのために先ほども申し上げたようなかたちで、手続きを相当簡素化しました。したがって、できる限りこうした地方の労働局やハローワークなどを通じて、こうした手続きをしっかり実行していくことが、今私どもにとって最も重要な課題になっており、見込みを申し上げるよりも、とにかく1人でも多く、それぞれ現場でより多く対応させていただくことが肝要と考えます。
記者:
年収の壁に関して2点伺います。1点は細かい確認なのですが、助成金以外の取り組みについても今日から開始ということで、その今日から開始するのが何なのかという点と、あとは改めてですが、この制度を使って、年末に向けて就業調整がより行われやすい時期に差し掛かっていくかと思うのですが、改めて政府、あるいは厚労省として、この年収の壁パッケージによって、今般の人手不足に対する緩和、対策による効果をどのようなかたちで期待するかお聞かせください。
大臣:
具体的に「キャリアアップ助成金」のどれから始めていくかということは、事務方から詳細を説明します。その上で、先ほども申し上げた通り、この制度を幅広く国民にご理解いただいて、そしてこれを申請するのは事業主ですので、事業主の皆様の理解と、そして従業員との間のコミュニケーションをしっかり図っていただいて、そしてこの年収の壁を意識されておられる方を、この仕組みを通じて、そしてより簡素化された手続きを通じて、それを着実に実施していく。そしてこのキャリアアップ助成金というものを、ご指摘の通りいくつも手段がありますので、それをできる限りその人たちの都合に基づいたかたちで実行していくようきめ細かく進めていくことが、私は大切だと思っております。したがってその手続き、順番等については事務方から説明します。
記者:
年末にかけての期待というものはいかがでしょうか。
大臣:
今日から始まったわけなので、全国の都道府県労働局・ハローワークで、とにかく一斉にこうした手続きを簡素化させ、実施していく。そしてそれをより多くの国民・事業主・従業員の方々にまずしっかり知ってもらう。これらを常に怠りなくやっていくことがとても大事で、年末に至るまでに関わらず、年末を超えてからも引き続きこの努力は継続して行っていくということが必要なのだろうと思っています。
記者:
10月13日、ファイザー社はプレスリリースを行い、新型コロナワクチンの副反応として心筋炎、心膜炎を公式に認め、過去同社のワクチンの成分や新型コロナワクチンを接種して重篤なアレルギー反応を起こしたことがある人は、メッセンジャーRNAワクチンを「接種してはいけません」と明確に述べています。武見大臣は、10月17日の定例会見で、「新型コロナワクチンの接種については、科学的な知見の収集に努める。専門家の評価に基づき、ワクチンの安全性の評価を適切に行っていく。新たな情報が得られた場合には、速やかに医療機関等に情報提供する」とおっしゃいました。このファイザー社のリリースは、社内で独自に研究や検証した上で周知されるべきものとして発出されているものだと思います。大臣はこれを、ご自身がおっしゃられた「新たな医学的な知見」として認め、必要な手立てを打つべく、厚労省の担当箇所に対応にあたるよう、指揮を取っておられますか。
大臣:
ご指摘のプレスリリースは、米国ファイザー社が、2023年の米国政府へのコロナ治療薬の供給契約の修正等について発表したものと理解しています。その中で、ファイザー社の新型コロナワクチンであるコミナティについての製品情報が含まれていたものと理解しており、このプレスリリースではコミナティについて、重度なアレルギーの既往のある方は接種を控えるべきこと、接種後に心筋炎や心膜炎が発症することがあるので、ワクチン接種後の症状に注意すべきこと等が記載されています。しかしこれは、10月13日に初めて公表された内容ではなく、従来より情報提供されてきた内容と認識しております。こうした内容については、日本でもこれまでに注意喚起を行ってきており、既に対応がとられているものと思います。今後とも、副反応疑い報告制度により情報収集をしっかり続けるとともに、常にその時点で得られる最新の科学的知見や海外の動向等を踏まえながら、ワクチンの有効性と安全性を評価し、適切な安全対策や、国民の皆様への適切な情報提供を行っていきたいと思います。
記者:
この度のファイザー社のプレスリリースについて、厚労省のホームページの新着情報や報道発表では使われた形跡がありません。武見大臣は、「新たな情報が得られた場合には、速やかに医療機関等に情報提供する」とおっしゃいましたが、医療機関のみでなく、広く国民に向けて、特にこの度、心筋炎や心膜炎のリスクが最も高いとされている12歳から17歳の男性の男性層に向けて、厚労省からの注意喚起が行われてしかるべきだったと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。
大臣:
これは10月13日に初めて公表された内容ではないということも確認いたしました。それを確認した上で、既に我々がとっている措置でしっかりと対応されていると考えています。
記者:
武見大臣は新型コロナワクチンについて「副反応疑い報告制度により常に情報を収集」するとおっしゃっていました。それについて質問いたします。現在、副反応疑い報告制度では2,076名のワクチン接種後の死亡事例が報告されています。しかしながら、本来報告されるべき事例が報告されていない可能性があります。1例を上げますと、異なる制度ではありますが、札幌市で「予防接種健康被害救済制度」に申請した新型コロナワクチン接種後の死亡事例が10例あります。副反応疑い報告に掲載されているのは、このうちのわずか1名だけです。これから分かることは、現行の副反応疑い報告制度が、情報の掌握が十分できていないのではないかということ。更に、もしかしたらワクチン接種後の死亡事例は、実は万単位に及ぶ可能性があるかもしれないということです。副反応疑い報告制度は、ワクチン接種の継続をすべきか否かに関わる、大きな政治的判断に関わる大変重要な制度だと思いますが、武見大臣は副反応疑い報告制度はしっかり機能していると思いますか。どのように評価をされていらっしゃいますか。
大臣:
副反応疑い報告制度は、副反応が疑われる事例の情報の収集、専門家による評価及びその結果の公表など、ワクチン接種の安全性に関する情報提供を目的とし、医師等が副反応の疑いがあると判断した場合に報告が行われるという仕組みです。予防接種健康被害救済制度は、予防接種の副反応による健康被害が、極めて稀ではありますが、不可避的に生ずるものであることから、予防接種と健康被害との因果関係が認定された方を幅広く救済することを目的としております。そして被接種者や遺族が申請を行うものであり、それぞれの制度は目的や、報告・申請を行う主体が異なります。副反応疑い報告制度による報告事例のうち、ワクチン接種後の死亡事例の総数は、本年4月末までで2,076件です。一方、予防接種健康被害救済制度に基づく死亡一時金または葬祭料に係る進達受理件数は、本年10月16日時点で979件です。総数としては、副反応疑い報告制度による報告数の方が多くなっています。副反応疑い報告制度は、先ほども申し上げた通り、ワクチン接種の安全性に関する情報の収集、提供のために非常に重要な制度です。厚生労働省としても、ホームページや新型コロナワクチン接種に係る「医療機関向け手引き」による周知などを通じて、引き続き制度の適切な運用に努めていきたいと考えています。

(了)