武見大臣会見概要

(令和5年9月29日(金)12:51~13:13 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について


大臣:
 本日の閣議で、「令和5年版労働経済の分析」、いわゆる「労働経済白書」を報告しました。今回の白書では、春季労使交渉における賃上げが30年ぶりの高水準となる一方、足下で物価が上昇し、賃上げの効果を実感しづらい状況にある中で、政府全体として賃上げが重要な課題であることを踏まえ、「持続的な賃上げに向けて」をテーマとしました。具体的には、我が国の賃金が伸び悩んだ背景や、賃上げが企業、労働者、日本経済に及ぼす影響、最低賃金制度等の政策の効果について分析しています。厚生労働省としては、今回の分析も踏まえ、持続的な賃上げに向けて、働く人の立場に立った必要な取組を着実に進めてまいります。
 雇用統計についてです。令和5年8月の有効求人倍率は1.29倍と、前月と同水準となりました。また、完全失業率は2.7%と、前月と同水準となりました。求人・求職の動向や労働力調査の結果を見ますと、現在の雇用情勢は、求人が底堅く推移しており、緩やかに持ち直しております。物価上昇などが雇用に与える影響に留意する必要があると考えます。
 最後に、「赤い羽根共同募金」運動についてです。今年で77回目を迎える「赤い羽根共同募金」運動が、10月1日から全国でスタートいたします。今年は「つながりをたやさない社会作り~あなたは1人じゃない~」をテーマとして、地域において住民1人1人が役割を持ち、支え合いながら生活していくことのできる地域づくり等に活用するため、募金活動を行います。私自身も、街頭で募金への呼びかけを行いますが、街頭での募金のほか、職域、学校、自治会等を通じた募金活動が行われますので、国民の皆様のご支援とご協力をお願い申し上げます。私からは以上です。

質疑

記者:
「年収の壁」対策についてお尋ねします。今回の対策は、配偶者に扶養されるパート従業員など、対象となった人たちの保険料が軽減される一方、フルタイムで働く共働き家庭や自営業の配偶者等、社会保険料を納めている世帯との不公平感が指摘されております。厚生労働省の審議会などでも批判する意見が出ています。大臣はこれらの意見をどう受け止め、どのように国民の理解を求めていかれますでしょうか。お考えをお聞かせください。
大臣:
ご質問の、他の労働者との公平性の観点ですが、今回の「年収の壁・支援強化パッケージ」の取組は、必ずしも、今後壁を越える被扶養者(第3号被保険者)だけにメリットが限られるわけではありません。他の労働者にもメリットを及ぼし得るものと考えています。具体的には、キャリアアップ助成金、1人当たり最大50万円ですが、この対象となる労働者の賃上げにあわせて、職場全体の賃上げが実現すれば、他の労働者にもメリットがあります。企業はこうした賃金が上がってくると、それにあわせて全体の賃金を上げる傾向にありますが、これは最終的には経営者の判断となります。我々としてはむしろそれを推奨する、その具体策として今回のキャリアアップ助成金が役割を果たせるだろうと考え、それをメリットとして考えております。そして同じ職場で同じように働く一方で、既に被用者保険(厚生年金保険・健康保険)に加入している方に社会保険適用促進手当を支給した場合にも、社会保険料の算定の除外対象となります。したがって、この場合でも「年収の壁・支援強化パッケージ」の取組を通じて、他の労働者の賃上げ・処遇改善が促されるケースも出てきます。「年収の壁・支援強化パッケージ」の内容はもちろんのこと、こうしたパッケージが他の労働者に与え得るメリットも含めて、国民の皆様にご理解いただけるよう、丁寧に説明してまいりたいと考えております。
記者:
医薬品の供給不足についてお伺いします。近年、ジェネリックをはじめとして、薬の供給不足が問題となっています。メーカーも、増産体制がなかなか追いつかないという声があります。インフルエンザや新型コロナも流行していて、薬不足が更に深刻となる中、この先の見通しや対応、また国民に呼びかけがありましたらお願いいたします。
大臣:
まずこれまでに何をしたというご説明をさせていただきます。医薬品の供給不安、これが実際存在していることは十分承知しておりますが、これに対しては、これまで、メーカーに対して、限定出荷の解除や可能な限りの増産を要請してまいりました。そして供給状況に係る情報の公表を通じて、薬局や医療機関に先々の見通しを持っていただき、当面の必要量に見合う量のみを購入することを要請する、見通しがないと大量に買い占めてしまうところが出てきます。したがって、それをしないでいただくために、このような公表をし、買い占めは控えていただくということです。このような取組を今までやってまいりました。今後、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症の流行に備える観点から、こうした感染症に必要となる主要な医薬品の供給量を改めて確認いたしました。解熱鎮痛薬は、新型コロナウイルス感染症の流行以前の生産量以上に増産されている一方、鎮咳薬(咳止め)・去痰薬は、流行以前の水準まで回復していないケースや、在庫の減少により需給がひっ迫している状況が、残念ながらございます。本日午後、医療関係団体等に対して通知を発出します。このような需給状況の周知にあわせ、需給がひっ迫している鎮咳薬・去痰薬については、初期から長期に至る処方を控え、医師が必要と判断した患者へ、最少日数での処方に努めていただくことをお願いいたします。そして薬局や医療機関における在庫の偏在対策として実施している「医療用解熱鎮痛薬等相談窓口」に去痰薬を追加し、対応を強化いたします。更に、後発医薬品を中心とした供給不安については、少量多品目生産といった産業構造上の課題も指摘されております。これらについて、検討会において、その対応策について精力的にご議論をいただいております。国民の皆様に必要な医薬品を確実にお届けできるよう、今後ともしっかりと対応してまいりたいと思います。
記者:
身寄りのない方の身元保証について伺います。先日開催された「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」で、岸田首相が身寄りのない方の「身元保証について実態把握や課題の整理」を進めるよう指示されています。厚労省では現在、実態調査の準備等を進めている段階かと思いますが、現時点での具体的なスケジュールを教えてください。
大臣:
9月27日が初会合となった、総理主宰の「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」において、総理から私に「身元保証などの実態把握や課題の整理」について、ご指示がありました。厚生労働省では、8月7日に公表された、総務省の実態調査も踏まえて、今年度の調査研究事業において、身元保証や民間事業者によるサポートについて、実態把握、そして課題の整理を行っていきたいと考えております。
記者:
本日の医療保険部会で、マイナ保険証で医療機関を受診した際、システム画面で医療費の窓口負担割合が誤って表示された事例が5,695件に上ったことが公表されました。これについて受け止めと再発防止策についてお聞かせください。
大臣:
今回の調査において、保険者システムの仕様の問題、これはベンダーが関わってくる問題ですが、これとヒューマンエラーによる事務処理誤りにより、オンライン資格確認結果と、被保険者証の一部負担金の割合が相違していた事例が確認されたことは大変遺憾です。調査で確認された事例については、既に各保険者において、正しい負担割合に訂正済みです。また、各保険者のレセプト審査において、本来の負担割合に基づき審査を行っており、最終的には被保険者には正しい負担割合で負担いただいております。今後このような表示誤りが起こらないよう、速やかに事務処理マニュアルを改訂し、正しい事務処理手順を各保険者に徹底し、更に10月以降順次、保険者システムの改修を行います。また、調査で判明した事例のパターンについて、11月末目途で、各保険者で点検いたします。更に今回の調査結果を踏まえ、9月中に、負担割合等の相違の可能性がある場合の被保険者からの相談体制の構築や、来年夏までにオンライン資格確認で表示される負担割合等の表示内容を定期的にチェックする仕組みの導入といった対応を行うことにより、安心してオンライン資格確認をご利用いただけるよう厚生労働省として万全を期してまいりたいと思っております。
記者:
オンライン資格確認における、マイナンバーカードを使った資格確認の利用件数の割合は、令和5年7月時点で約5%と低調です。マイナ保険証の利用が進まない現状についての受け止めをお聞かせください。また、利用率が上昇しない理由については、どのような要因があるとお考えでしょうか。利用率上昇に向けた対策や取り組みとあわせてお聞かせください。
大臣:
ご指摘の点は極めて重要な課題であると受け止めております。マイナ保険証の利用件数は、この春に大幅に増加したものの、5月以降、低調な状況にあり、来年秋の健康保険証の廃止に向けて、国民の皆様にマイナ保険証をもっとご利用いただく取組みを進めることが極めて重要な課題であると私は認識しております。マイナ保険証の利用が進まない理由については、情報の紐付け誤りを受けた国民の皆様の不安や、医療現場におけるトラブルが指摘されていること、更にマイナ保険証を利用することのメリットが、医療機関の方々や患者の皆様にあまり知られていないこと等が関係していると考えています。このため、課題を1つ1つ解決し、国民の皆様が安心してマイナ保険証を利用いただける環境を整備するということを徹底しなければならない。まずは、私自身が先頭に立って、医療関係者の方々や保険者の皆様と連携して、国民の皆様が、医療現場でマイナ保険証を1度、実際に使っていただけるよう、様々な取組を積極的に進めてまいりたいと考えております。
記者:
今月15日に厚労省が公表しました人口動態統計によりますと、令和4年死亡数が約157万人と、令和3年よりも約13万人も多かったという結果でした。新型コロナ感染症の死亡数は前年比で約3万人増であり、主に高齢化による近年の通常の死亡数は前年比2万人前後の増加になるのが相場です。つまりコロナや高齢化では説明できない死亡数の大幅な増加が起きています。武見大臣は、この死亡数の大幅な増加について、どのようにお考えでしょうか。
大臣:
これだけの死亡数の増加が現実に起きているということを、改めて確認させていただきました。死亡数が大幅に増加した要因については、高齢化ということは当然あります。そして新型コロナ以外の要因として、専門家からは、新型コロナの流行による間接的な影響、例えば、病院での受診を控える、生活習慣の変化による持病の悪化、部屋に引きこもったりして病態が悪化したりするケース等が想定されます。こういう指摘が専門家からされている。人口動態調査の結果から具体的に把握することは難しいと考えております。改めて、こうした状況下において、実態把握をするために、かなり地方自治体などと連携して、地方自治体では既に死亡数が増加しているそれぞれの地域で、調査を始めております。色々よい調査も確実に行われております。こういった地方自治体とも連携しながら、実態把握をしっかり行い、それによる今後の対応策をしっかり固めていきたいと考えています。
記者:
地方自治体とも協力というお話しがありましたが、今、地方自治体の地方議会で、各地方においても、ものすごい数の死者が、各市町村レベルで起きているということで、この調査を、市独自ですべきではないかという話も出ております。大臣は、地方自治体が、死亡届など住民に寄り添った細かいデータが集積されている地方自治体において、独自に調査を進めていく、色々工夫していくということについてはどのようにお考えでしょうか。
大臣:
私は大変有り難いことだと思います。特にそうしたデータが顕著に現れているところで、地方自治体独自で検査をしっかり進めていただき、むしろ厚生労働省としてそうした検査をしっかりと活用させていただき、そして国全体として、全体の状況把握に繋げていきたいと思っております。

(了)