後藤大臣会見概要

(令和4年6月17日(金)8:49~9:09  省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について


大臣:
 最初にこちらから一言申し上げたいと思います。新型コロナウイルス感染症に関す るこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の方向性について一言申し上げたいと思います。
 先ほど開催された政府対策本部において、「新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の方向性」が決定されました。
 次の感染症危機への備えについては、5月11日から有識者会議が開催され、これまでの政府の対応に関する客観的な評価や、中長期的な課題の整理について議論が行われまして、一昨日(6月15日)、とりまとめが行われたところであります。
 こうした有識者会議の議論等も踏まえまして、本日の政府対策本部では、次の感染症危機への備えのために、政府の司令塔機能の強化、感染初期から速やかに立ち上がり機能する保健医療体制の構築などにつきまして、対応の方向性が決定されました。
 具体的には、昨年11月の「全体像」に盛り込まれた各施策の実効性をさらに確保する観点から、医療機関との協定を法定化するなど、必要な法改正を含め、対応を強化する必要があるとしています。
 厚生労働省としては、この方向性に沿って、今後、詳細を検討し、地方自治体や関係団体などの関係者とよく相談をしながら順次成案を得てまいります。
 また、内閣官房とも連携調整いたしまして、内閣感染症危機管理庁の設置、厚生労働省における感染症対策部の新設、感染研(国立感染症研究所)と(国立)国際医療研究センターの統合によるいわゆる日本版CDCの創設につきましても、その具体化を図ってまいります。
 その上で、必要な法律案を国会に提出すべく、しっかり取り組んでまいります。
 最後に、今回の本部決定におきましても、「これまでの医療従事者、各事業者、自治体をはじめとする国民お一人お一人の感染拡大防止の取組への理解と協力に政府として心から感謝申し上げる」その旨を記載いたしました。
 国民の皆様には、日常を取り戻していく状況の中にあっても、改めて引き続き基本的感染防止対策を徹底することを心がけていただきますようにお願いをいたしたいと存じます。

手話付きの会見動画は(手話付き)【厚生労働省】厚生労働大臣記者会見(2022年6月17日)(厚生労働省 / MHLWchannel )からご覧ください。

質疑

記者:
新たな感染症対策についてお伺いします。厚生労働省としては新たに「感染症対策部」を作るとのことですが、具体的に、どの部署を統合するお考えか、これまで部がまたがっていたことでどのような弊害があり、今後どう変えていくお考えかお聞かせ下さい。また新たに創設する日本版CDCのあり方についても、大臣のご見解をお聞かせ下さい。
 あわせて改めて、これまでの新型コロナ対策を振り返って、厚生労働省の対応としての反省点や、今後どのように変えていきたいか、大臣のご見解をお聞かせ下さい。
大臣:
まず「感染症対策部」に関するご質問ですが、厚労省の感染症対応については、現在は、省内に対策推進本部を設けて一体的に対応しておりますが、平時は、官房、健康局、医政局、医薬生活衛生局に、それぞれ感染症対応や危機管理に関係する課室がまたがっております。
 今回の新型コロナ対応において事前の準備が不十分であったことを踏まえれば、次の感染症危機発生時に必要な対応がより迅速かつ効果的に行われるためには、平時に、PDCAサイクルを回しながら事前の準備を十分行うことが重要であると考えます。
 このため、厚労省における平時からの感染症対応能力を強化するために、各局にまたがる感染症対応・危機管理に関係する課室を統合した新たな組織として、「感染症対策部(仮称)」を設けることといたしました。
 また、感染症対策部は、新たに厚労省の下に設けられる専門家組織、いわゆる日本版CDCを管理し、平時から日本版CDCや関係自治体等と一体的に連携することとしております。
 どの部署を統合するかなど新たな組織の具体的な在り方などについては、今後検討をしていきたいと考えております。
 それから、日本版CDCについてでございますが、国立感染症研究所につきましては、組織の見直し後も現在と同様の管理が適切に行えるように国が責任を果たしていく必要があると考えております。
 また、NCGM(国立国際医療研究センター)につきましては、現在総合病院として感染症に限らず様々な疾患の治療や研究、さらには国際協力を担っているところでありますが、これらの機能の扱いについては、感染症というのは全身疾患としての性質を有していること、感染症の研究と診療を一体的に対応できる人材を育成する必要があること、途上国では感染症対策を進める上でも、国民がアクセスしやすい医療環境づくりが公衆衛生上の重大な課題であることなどの観点を踏まえる必要があると考えております。
 いずれにしても、先ほど申し上げましたように、国立感染症研究所と国立国際医療研究センター(NCGM)の統合、いわゆる日本版CDCの創設については今後具体的なあり方について検討・調整を進めていきたいと考えております。
 それから、これまでのコロナ対策を振り返って、反省と今後の進め方についてのお尋ねでございます。これまでの厚労省の新型コロナ対応については、変異株の変化する状況と課題に対しまして、昨年11月の「全体像」による取組やその後のオミクロン株の特性を踏まえた重点化・迅速化など、国民各層のご協力を得て、最大限対応しようと懸命に努力してまいりました。
 しかしながら、これまでの対応については、危機時に実際に病床を確保するための対応や、地域で個々の医療機関が果たす役割が具体化されていなかったことから、感染の拡大に病床の確保が追いつかない事態が生じたこと、陽性判明後の健康観察や治療が迅速・確実に実施されない状況が生じ、治療開始が遅れ、重症化する事例や在宅で亡くなる事例が生じてしまったこと、医療用マスクなどの個人防護具や抗原定性検査キットについて、需給のひっ迫が起こり、医療機関や国民が入手しにくい状況が生じたことなど、反省すべき様々な課題があったと考えております。
 こうしたことに鑑みれば、初動からの保健医療提供体制の構築について、平時から備えておく枠組みも、現場レベルのオペレーションにまで落とし込む取組も、不十分であったと考えております。
 このため、今後は、次の危機までに行うべき取組の実施を確実なものにするために、様々な課題について、中長期的な対応の具体策を策定し、PDCAサイクルを回しながら事前の準備を十分に行うことが重要であると考えております。
 こうした考え方に基づきまして、平時に都道府県と医療機関の間で協定を結ぶ「全体像」の仕組みを法定化するなど、事前の備えを計画的に行うとともに、危機時に確実に稼働する枠組みの整備を図ることとしております。
 また、平時・有事の政府の組織体制の強化を通じて、感染の初期段階から速やかに立ち上がり機能する保健医療提供体制の構築を図っていきたいと考えています。
記者:
先ほど、病床の確保ということにつきましては、医療機関との協定を法定化するという話がありました。実際に自治体が病院と事前に契約を結んで、指示ができるということにするということなのですが、これについては罰則が設けられていません。罰則をつけずとも病院に守ってもらえると大臣はお考えでしょうか。
 それと、協定を結ぶとしても、実際に全ての病院が納得して結ぶということでもないのではないかと思うのですが、協定を結ぶということの対象範囲なのですが、これについては全病院になるのかどうか、このあたり大臣はどのようにお考えなのかお聞かせ下さい。
大臣:
本日の政府対策本部決定におきましては、先ほど申し上げたこれまでのコロナ対策での課題も踏まえまして、感染症に対応する医療機関を抜本的に拡充するために、今ご指摘のあったように、平時に、都道府県と医療機関との間で病床確保に関する「協定」を結ぶ「全体像」の仕組みを法定化して、感染症危機発生時には協定に従い医療を提供することとするとともに、医療機関に対し、協定に従って病床確保を行うように履行確保を促す措置を設けるなど、国・地方が医療資源の確保について、より強い権限を持てるよう、法律上の手当を行うことといたしました。
 こうした仕組みの創設に当たっては、病院の性格や担っている機能から、公立・公的医療機関、特定機能病院などについては、その機能を踏まえた「協定」を締結する義務を課すこととしておりますが、民間病院を含め、その具体的な範囲については、今後、検討していくことといたしております。
 また、自宅療養者への対応についても、病床確保の仕組みと同様で、平時に、自宅療養者に対する医療の提供や健康観察の実施について、「協定」を締結する仕組みを整備することといたしております。
 このように、平時に準備してきた体制が、感染拡大時に着実に稼働していくように、協定の実効性を高めることは重要であるということは、ご指摘のとおりだと考えています。
 このため、政府対策本部決定では、協定に沿った履行を確保するための措置として、協定の履行状況の公表や、感染症流行初期における事業継続確保のための減収補償とか、都道府県知事の勧告・指示などを例示しているところでありまして、今後、具体的に検討してまいりたいと思います。
 今のお尋ねから言えば、罰則の必要性について特にお尋ねがあったと思いますが、協定に沿った履行を確保するための措置としては、今、申し上げたとおり、協定の履行状況の公表、都道府県知事の勧告・指示などを例示しておりまして、今後、具体的に検討していくわけでありますが、罰則については、今回の見直しが、行政と医療機関との合意に基づく協定をベースに医療体制を確保していくものであることを踏まえて考えていく必要がある課題と認識をいたしております。
記者:
確認なのですが、だとすると、民間病院については今後検討するとのことですが、それについては公的病院とは違って、中には協定を結びたくないという病院が現れることも想定されますが、それはそれで納得されるということになるのでしょうか。
大臣:
そこは、今、申し上げたように、病院の性格や担っている役割から協定を締結する義務を課すことにする公立・公的医療機関、特定機能病院などと、それから民間病院についてどういう対応にするかということは、これはおのずから違うと思います。その具体的な範囲とか具体的な対応については、民間病院を含めてもう少し丁寧に関係者とも調整しながらどういう制度がいいのかしっかりと検討していきたいと思います。
記者:
協定は現在主に病床確保に関して結んでいますが、自宅療養者への対応についても、法制化する、協定に盛り込むお考えでしょうか。
大臣:
自宅療養者への対応につきましても、病床確保の仕組みと同様に平時に自宅療養者に対する医療の提供や健康観察の実施について、「協定」を締結する仕組みを整備することといたしております。そういう意味では、病床確保だけではなくて、自宅療養者への医療の提供についても同様に考えていきたいと考えております。
記者:
サル痘について2点お伺いさせていただきます。15日に、国立国際医療研究センター病院で、サル痘に有効だとされる天然痘ワクチン接種の特定臨床研究が始まったと報じられました。日本では1974年度生まれまで、天然痘の定期接種を受けていますが、今回研究が始まった「KMバイオロジクス」のワクチンと、過去に定期接種を受けたワクチンは違うものなのでしょうか。違うものだとすると、サル痘への効果に違いはあるのでしょうか。
 一方、WHOは15日に感染経路について「密接な対人接触」との見解を示し、感染者に完治後、最長12週間コンドーム使用での性行為を勧めているなど、新型コロナとはかなり異なる感染のようにみえます。性行為によって感染するエイズや他の性病のような感染と考えていいのでしょうか。
 報道では特定臨床研究について、「ワクチン接種の対象となるのはサル痘患者に接してから14日以内の人で、年齢は1歳以上の濃厚接触者」とのことですが、性的接触はどの程度危険なのかどうか濃厚接触者の定義など、現段階でわかっていることがあれば教えて下さい。
大臣:
まずサル痘について少し申し上げますが、WHOを含め、科学的知見、諸外国の感染動向について、状況を注視いたしております。
 日本では感染者は確認されておりませんが、現在サーベイランスを強化しておりまして、水際対策についても、出入国者に対する情報提供や注意喚起を行っております。
 感染経路としては主に接触や飛沫による感染でありまして、WHOの報告によりますと、今回の流行で、これまで国内流行が見られなかった国では死亡例は見られていないということでございます。天然痘ワクチンの暴露後の発症予防・重症化予防の効果が報告されております。
 我が国では相当量の国産ワクチンを備蓄しておりまして、テロ対策の観点から詳細は申し上げられませんが、万一の感染拡大時にも対応するために十分な量の生産・備蓄を行っております。
 また、国内でサル痘患者が発生した場合に備え、天然痘ワクチンの投与を行う等の研究体制も整備をいたしております。
 そこで、お尋ねの問題でございますが、この臨床研究で使用することが予定されているワクチンは、我が国で行われていた天然痘の予防接種に使用されていた株を改良して1976年に開発されたものであり、定期接種にも使用可能なワクチンとして位置づけられたものでありますが、同年1976年に我が国では定期接種としての種痘を事実上中止したため、定期接種として用いられたことはなかったワクチンであります。
 サル痘の予防につきましては、天然痘ワクチンが有効であるとの報告がなされておりますが過去に天然痘の定期接種に使用していたワクチンだけではなくて、この臨床研究で使用することが予定されているワクチンもその一つとなっていると認識しております。
 それから、WHOが6月10日に公表した感染状況報告においては、サル痘の感染経路としては主に接触や飛沫による感染とされておりますが、接触には性的接触を含むもの とされております。
 厚生労働省においても、事務連絡においても、感染が起こる可能性がある接触について第四類感染症として定義しておりますが、WHOと同様の考え方を示しております。
 性的接触のみが感染リスクがあるわけではなくて、その他の接触や飛沫によっても感染するリスクがあることに留意する必要があると考えております。
 引き続き、WHO等とも連携しながら、国内外の感染症の発生動向を監視しつつ、警戒感をもって対応していきたいと考えております。

(了)