後藤大臣会見概要

(令和4年2月4日(金)9:42~10:11 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について


大臣:
それでは私の方から一言申し上げたいと思います。まず経口治療薬のモルヌピラビルでございますが、既に2万1千以上の医療機関、1万6千以上の薬局が登録されまして、これまでに8万6千人分以上を医療現場にお届けしておりますが、今般、製造販売事業者から、2万5千人を超える投与がなされたとの報告がありました。
 感染が急拡大する中で、医療現場のニーズに応えるものと考えていますし、今後ともしっかりと供給もしていきたいと思っています。
 この治療薬につきましては、これまで合計160万人分を確保しておりまして、1月28日に前倒しで納入された5万人を含めて、今、25万人分が納入されています。
 今般さらに企業と交渉しまして、2月下旬の納入時期を前倒しいたしまして、本日2月4日、約5万人分が納入されるほか、2月10日には約4万人分が納入される予定です。2月10日までには合計約34万人分が納入される予定ということになります。
 このほか、レムデシビルにつきましては1月28日にも申し上げましたが、診療の手引きが改訂されまして、軽症者に対する使用方法等に関する記載が盛り込まれまして、軽症者に対する投与が認められることになっております。
 ファイザー社の経口薬は200万人分の最終合意を締結するとともに、薬事承認が行われれば速やかに4万人分を納入する予定でありまして、2月10日に審議会で審議が行われる予定です。
 このように軽症の段階から重症化リスクを有する方に処方できます治療薬の選択肢が広がってきておりますし、引き続き万全を期してまいりたいと思っております。こちらからは以上です。

手話付きの会見動画は(手話付き)【厚生労働省】厚生労働大臣記者会見(2022年2月4日)(厚生労働省 / MHLWchannel )からご覧ください。

質疑

記者:
昨日、一日の感染者が10万人に迫る勢いで、これまでの大阪の分を含めても新規感染者は10万人を超えました。この所感をお願いします。
 もう一点、アドバイザリーボードで専門家からは重症化リスクの低い人についての健康観察や入院などの対応を省略するような提言が出されましたが、それについて現在の検討状況を教えてください。
大臣:
まず10万人のご質問についてでありますが、2日のアドバイザリーボードでは、全国の新規感染者について、感染の場が家庭、職場、学校、医療機関、介護福祉施設などに移行していること、それから今後も全国で増加速度は鈍化しつつあるものの、感染拡大が引き続き継続すると考えられること、そして、若年層中心の急激な感染拡大により健康観察者や自宅療養者の急増が継続して、軽症や中等症の医療提供体制が逼迫していること、さらに今後は、高齢者に感染が波及することで、重症者の増加の可能性があること、そうしたことが指摘されています。
 そしてもう一つは、基礎疾患を有する陽性者でコロナ感染による肺炎が見られなくても、感染により基礎疾患が増悪することで入院を要する感染者も増加してくることにも注意が必要だと評価されています。こうした評価を踏まえて、今後の感染状況を高い警戒感を持って注視していく必要があると考えています。
 オミクロン株、今言ったような特徴があります。ですからまず、軽症者、中等症者のところで医療提供体制や保健所の体制が大変逼迫する、しかし感染が拡大することによって患者のベースが大きくなれば、そこから重症化する患者さん、あるいは高齢者やリスクのある方が、オミクロンで重症化するケースもそのあとになって出てくる。
 だからそういう形で、「全体像」でこれまで準備してきた保健・医療提供体制をしっかりと稼働させていくことが今後の対応の基本であると考えています。
 そしてワクチンや検査、治療薬といった予防、発見、そして早期治療の流れを引き続き強化していくことが重要であると考えています。
 同時に、感染者や濃厚接触者の増加が継続する中で、感染拡大を防止するとともに社会的機能を維持していくことも必要になってきます。
 引き続き今申し上げたような、オミクロン株の評価や感染状況などを踏まえまして、これらの対策を強化するとともに、事態の変化に適時果断に対応していくという考え方で臨んでいきたいと思っています。

 それからアドバイザリーボードで問題になった健康観察、入院勧告等の省力化、重点化というようなご議論についてのご質問でございますが、オミクロン株について先ほど申し上げたような性格がありまして、保健所からは感染者への連絡に時間を要する自治体が出ていること、また保健所関係者からも非常に業務が逼迫しているというご意見をいただいていること等から、保健所の状況は本当に厳しい状況にあると認識をしております。
 こうした中でご指摘があったように、2月2日のアドバイザリーボードにおいて、専門家よりオミクロン株の特性に応じた保健所業務の柔軟化として健康観察等について、重症化リスクの高い方や、中等症以上の方に重点化するという提案がなされたのは事実でございます。
 そして厚生労働省としても、そうした提案も踏まえ、また保健所の本当に厳しい実態を踏まえまして、保健所の業務負担を軽減し、増加する自宅療養者に対応できるように、例えばITを活用するだとか、健康フォローアップセンターの設置をするとか、地域の医療機関において自宅療養者等の健康観察等を実施できる体制を構築するだとか、健康観察、例えば医療機関が見つければ、即医療のサービスに着手するとか、そういったような体制を進めることを保健所、自治体にお願いをして進めているところであります。
 実際に各自治体においても、色々な取り組みが進められておりまして、例えば東京都では「自宅療養サポートセンター(うちさぽ東京)」を開設しまして、無症状・軽症の方など重症リスクの低い方についてご自身で健康観察を行っていただいて、体調変化に気づいた際の相談等について、コールセンターに相談を行っていただくことによりまして、手厚い健康観察を重症リスクのある方に重点化して対応すると、そういうふうにフォローアップを二つに分けて実施をしていただくというような体制を整えていただいておりますし、もう一つ例を挙げれば、神奈川県では重症化リスクの低い方で抗原検査キットや無料検査で陽性が判明された方について、そういう場合には医療機関の診断を待たずに自ら療養を始められる「自主療養」といった取り組みも行われていると承知しております。
 オミクロン株の特性も踏まえつつ、保健所の方々が必要な対応で本当に必要な業務に注力できるように、引き続き各都道府県と連携をしながら必要な検討、また支援を行っていきたいと考えています。
記者:
先ほど大臣がおっしゃったファイザーの飲み薬について質問させていただきます。まず2月10日に審議されるということなのですが、それを踏まえて厚生労働省で実際にいつ患者に使えるようにするべく準備をされているのか、あと投与の対象についてですが、リスクが高い方に優先してやるのか、それとも広く投与するのか、また地域についても、医療の逼迫が懸念される地域を優先するのか、それとも人口比に応じて広く全国に配布するのか、このことについて現在のお考えを改めてお聞かせいただければと思います。
大臣:
今、2月10日に薬食審の開催が通知された段階でして、薬事承認がいつされるのか、そしてそれに応じて体制整備をどういうふうに進められるのか、そうしたことについては今後検討していくということで、我々としてはできる限り早い体制でお配りができるようにということで考えています。今の段階ではそういうことです。
記者:
地域とか、いわゆるリスクに応じた対応というのもまだ方針としては決まっていないということでしょうか。
大臣:
そういう方針を決めているわけではありません。今の状況から言えば、必要な方に先ほど言った他のモルヌピラビルも含めて、またレムデシビル等も含めて、ゼビュディ含めていろいろな薬のラインナップが出てきましたから、どういう組み合わせになっていくか、もちろん現場の医師の判断ということになるわけですが、そうしたことについて全体としてしっかりと薬が承認され、実際にお手元に渡せるように、手元に渡せるということから言えば、もうできる限り早くということで準備を急ぎたいと思います。早速に取り組めるようにやっていきたいと思います。
記者:
月内にもというイメージでしょうか。それとも2月中旬には。
大臣:
できる限り急ぎます。
記者:
ワクチンの3回の接種の接種間隔についてお尋ねをしたいと思います。与党内の議論では、オミクロン株が仮にピークアウトが今後見据えられたときに、今の接種状況ではワクチンの接種、政策的な効果というのが、相対的に小さくなってしまうのではないかという意見もあります。今月2月にできるだけ3回目の接種というものを進めるために、例えば若年層については、2回目の接種から6ヶ月という間隔をより短くするという政策的な選択肢というのはあるのでしょうか。
大臣:
新型コロナワクチンの3回目の接種については、昨年12月の下旬にオミクロン株が最初に日本で発見されたわけですが、そのときから前倒しをするという判断で接種間隔を前倒ししてきたところであります。
 高齢者以外の一般の方についても、予約の空きがあれば、ワクチンの有効活用の観点から6ヶ月の間隔が空いた際には、順次できるだけ多く前倒しを行っていただくように、改めて今自治体に要請をしているところでありまして、またモデルナに対するまだ十分な理解がなされていないとか、3回目接種の有用性についての国民の認識が薄いのではないかというご指摘もあり、そうしたことについては政府を挙げて、また医療界もともに自治体と一緒になってしっかりと交互接種の効果が3回目大きいこと、またどのワクチンであっても、効果があること、そうしたことをしっかりと申し上げていきたいと思います。
 今のご質問の6ヶ月を待たずに3回目接種をすることについては、これにつきましては、もともと製造メーカーは自ら実施した治験、そのデータに基づいて接種間隔を6ヶ月として申請されてきております。
 すなわち治験については6ヶ月より短いところについては十分治験がされていないわけでありまして、そういう前提の申請で薬事承認を6ヶ月ということでいたしておりますので、慎重な検討が必要であると考えております。
 いずれにせよ、引き続き科学的知見の収集に努めつつ、円滑な3回目接種にまず取り組んでいくことが大事だと思っています。特に2月が重要だと思うのは、2月にほぼ高齢者の皆さんに打っていただくように今なっています。
 施設の高齢者と、一般の施設に入っておられない高齢者がいますが、2月に2月接種予定の方を接種すれば、高齢者のところの接種はほぼ終わると考えられますので、今全国の97%の自治体が、2月に打つことを予定されている方たちに対して、しっかりとワクチンを打つという返答をしていただいているので、そこが政策としては最も重要になると思っています。
 それからもう一つワクチンについては、4月分まで含めて、もう配分の予定を各自治体にお示しをしているので、これはもう8,500万人分のいわゆる自治体への配布基準を、配布時期と配布量をお示ししておりますので、そうした配付量、もちろん我々今も追加的にワクチンの入手やらをする努力もしておりますので、その場合にはこれまでもしてきたような一部前倒しをいたしますが、少なくともお示しした配分量はしっかりと配れるということなので、そういったことを前提としてということは、十分に実を言うと、ワクチンの量はあるということですし、ぜひ2月に予定されている前倒しが予定されている方の分について言えば、去年の2回目接種からの日にちをちゃんと数えて前倒しの分も含めて、お手元にあるわけですから、しっかりと接種をお願いしたい。
 我々も国民に理解されて接種が進むようにやっていきたいと考えています。いずれにしても、党の2月にどれだけ打てるかが勝負であると、その認識は政府としても共有しておりまして、何としても早く(接種間隔)6ヶ月に前倒しで打っていくようにしていきたいと考えております。
記者:
保育所でのコロナ対策について伺います。昨日の全国知事会との意見交換で、平井知事からオミクロン株への対応として「2歳以上の保育園児のマスク着用が重要だ」との意見が出ました。園児のマスク着用についてどのような対応が望ましいか教えてください。
大臣:
従来、なかなか小さい子どものマスクというのが難しい。その難しい理由は、やっぱり子どもが精神を成長させていくときに、お互いにその相手の顔が見えないというのは、非常に人格形成上もそのハンディキャップになるのではないかという問題も、関係者の間では指摘されていましたし、また、子どもがマスクをつけたがらないのを無理やりどうやって着けさせていくのかというような実行上の問題もあって、子どものマスク着用については、あまり強く勧めてこなかったのは事実ですが、これは私の考えでもありますし、今そういう方向でいろいろな議論が進んでいるように私は受けとめていますが、やっぱり保育所あるいは小さい子どもへのマスク着用も今後のオミクロン株の幅広い感染の状況を考えると、若い人たちから今感染の主流は高齢者と子どもに移ってきていて、そこを中心にまた次の感染が拡がる起点にもなりかねないということでもありますから、そういう意味では子どものマスク着用も前向きに進めていくべきだと考えています。
記者:
社会福祉法人のサンフェニックスの関連で、サンフェニックスで有償での経営権の移転が行われた後に、30億円の預金が流出して民事再生手続が適用される事態となっています。運営施設を利用する高齢者でも不利益が生じかねないということが起きていることになりますが、この件についての大臣の受け止めと、厚労省としてどのように対応されるお考えか教えていただければというのが一点です。
 それと、同じサンフェニックスの関連で、この42億円で経営権移転するという契約が結ばれて、その理事長が設立者の男性医師から公認会計士になっていて、経営権が事実上売買されたという理解をしています。社会福祉法人は有償での経営権の移転を認められていないはずですが、売買を禁じる明文の規定が今ありません。売買できないことを明確に示すため、売買禁止を明文化すべきという意見もありますが、大臣の所感をお願いいたします。
大臣:
まず、その社会福祉法人のサンフェニックスでの問題でございます。社会福祉法人につきましては、介護・障害者福祉、子育て支援といった、社会福祉事業の実施を目的として設立される法人でありまして、地域における福祉サービスの主たる担い手として高い公益性を有するということで税制優遇等、特別な制度を講じているわけであります。
 そのような性質上、社会福祉法人は個人の所有物ではなくて、いわば地域の公共財産として取り扱われるべき存在であることは言うまでもないことであります。
 報道のとおり、特定の個人が自己の利益を得るために、社会福祉法人を悪用したとすれば、誠に遺憾なことだと思っております。現時点において法人のサービス提供に大きな支障はないということで、経営再建に向けて民事再生手続が進められている状態だと聞いております。
 今後とも、サービス利用者に不利益が生じないように、しっかりと引継ぎをした法人に、法人の運営をしっかりやってもらうような状況を作ることを注視しながら、事実関係を精査した上でこの法人を所管する広島県とも緊密に連絡を図りつつ厳正に対処していきたいと考えています。

 それから、次に経営権の移転を禁ずるような明文規定を作ったらどうかというご指摘だったと思いますが、そのことにつきましては、社会福祉法人についてはそもそも持分権がないことから、元々、経営権という概念は、制度上は設けられていない、位置付けられていないと考えます。
 社会福祉法人の経営は、理事の選任・解任等の重要事項を議決する評議員会と、日常の業務執行を担う理事会とは相互に牽制し合いながら行うことになっていますし、理事長の選任は理事会ですが、理事を選任するのは評議員会が推薦して決めていくことになるので、今回の事案は個人間の取引により実質的に理事長が決められておりまして、そういう意味では極めて不適切だということだと思います。
 今後、広島県による指導等を通じて明らかとなった事実関係を踏まえまして、今回のような事案が不適切であることについて改めて都道府県の関係者に対して周知徹底を図って、法人経営の適正化に努めていきたいと考えております。
 そしてその上で、法制上、売買を禁止する規定を設けるということですが、元々、経営権という概念も無く、売買をするということ自体が、そもそも何の概念を前提にして売買を禁止する規定を設けるかということになりますので、法制上の課題であるとその辺のところは考えております。
 社会福祉法人では、経営権の売買はもちろん認められてありませんし、経営権はありませんが、法人間で事業を譲渡する一部事業譲渡みたいなものは可能ですし、合併を行うことはもちろん制度上許容されておりますけれども、こういう形での経営権という概念が無い中で、経営権の譲渡をするみたいな形の禁止規定を設けることの法的な制度上の問題等いろいろあると思うので、どのように適正な社会福祉法人の経営を進めていくかということについては、今後、考えていく課題だと思います。
記者:
介護職員の給与9,000円の引き上げが今月始まりますが、9月までは補正予算で賄われるということで、10月以降は介護保険税金事業者負担で構成されるか、介護報酬の引き上げを当てない方針と報じられています。
 介護保険料を滞納して資産の差し押さえを受けた高齢者は年2万人を超えると言われ、高齢者が利用者負担に耐えられなければ介護サービスを利用できなくなる可能性もあります。既に利用者や家族の生活困難を拡大し、介護殺人の後を絶たない現状があります。また、介護報酬を当てることで職員給与の引き上げを阻害される懸念も指摘されます。
 そのため、賃上げの財源は、介護報酬と別の補助金とする必要を訴えられています。1月28日には、認知症の人と家族の会など7団体が、20万筆近い署名を集めて、国庫負担の大幅引き上げをはじめ、自己負担や保険料の軽減、介護職給与を全産業平均レベルまで上げるなどの要求をしていますが、政府方針はこれと真逆に見えます。そもそも消費税は社会保障の財源として充てるため、税率を上げられてきたのではなかったのではないでしょうか。こうした訴えに対する大臣のお考えをお聞かせください。
大臣:
介護職員の給与が他の職種との比較においても低い状況にあって、その人材確保に向けて、処遇改善に取り組む必要があると考えてまいりまして、介護職員について、これまで累次の処遇改善に取り組んできました。
 今般の今後の介護職員の処遇改善の措置につきましても継続的なものとなるように、補正予算によりまして2月に前倒しして9月まで実施した上で、本年10月以降については、介護報酬改定によりきっちりと継続的な措置、すなわち恒久的に続くようにということで制度の措置を行いました。
 介護職員の処遇改善については、事業者にとって安定的・継続的な事業収入が今後とも見込まれる介護報酬において対応することとしております。
 介護保険制度は、保険料負担、公費負担、利用者負担の適切な組み合わせによりまして、国民皆で支え合うことで持続可能なものとしておりまして、こうした枠組みの下で対応していくことが適切であると考えております。
 なお、大変に厳しい状況におられる皆様がおられることについては認識をしておりますし、そうした方たちの生活が成り立つようにしていくことは大切なことだと思っておりまして、例えば介護保険制度におきましては、被保険者の負担が過重なものとならないように、低所得者に係る介護保険料の負担軽減を行っておりますし、利用者負担割合を原則として1割としつつ、月々の利用者負担額が年金収入等に応じて定める上限額を超えた場合には払戻しを行うなど低所得者の負担にも配慮している、そういう制度となっていると思っています。

(了)