加藤大臣会見概要

(令和2年7月31日(金) 9:55~10:21)

広報室

会見の詳細

閣議等について

大臣:
おはようございます。冒頭3件申し上げます。まず、本日の閣議で、局長以上の幹部の人事異動について、内閣の承認が得られました。今回の人事異動の内容についてはお手元にお配りしています。健康局長及び社会・援護局長の異動を除いては、8月7日付けで発令されます。初代医務技監として3年間にわたってその任に当たってこられた鈴木康裕氏が退官し、その後任として福島靖正国立保健医療科学院長を医務技監に登用するなどの内容となっております。

 2点目ですが、令和2年6月の有効求人倍率は1.11倍と、前月より0.09ポイントの低下となりました。また、正社員の有効求人倍率は0.84倍と、前月から0.06ポイントの低下となっております。若干詳細について申し上げますと、有効求人倍率の分子であります有効求人数については、前月比で1.9%減少したものの、4月や5月と比較すれば、減少幅は大きく縮小しました。
 6月に提出された新規求人数については、前月比で8.2%増となっております。こうした要因が減少幅の縮小につながっていると考えています。また、新規求職者数は、前月比で18.2%の増加と過去最大の増加幅となり、かつ、2か月連続の増加であります。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて離職された方が求職活動を開始する動きなどが続いており、有効求人倍率の分母である有効求職者数は、前月比で5.4%増加となりました。このように、求人が引き続き減少し、求職者の増加もあいまって、有効求人倍率は大きく低下しました。
 また、本日公表された総務省の労働力調査では、令和2年6月の完全失業率は2.8%と、前月より0.1ポイント低下しています。完全失業率の分子である完全失業者数は前月より3万人減少し、分母である労働力人口は就業者数が前月より増加したこともあり、結果として完全失業率が低下しました。
 しかしながら、完全失業者のうち勤め先や事業の都合による離職者は、前月より6万人増加し、5ヶ月連続の増加となりました。雇用者数(季節調整値)は、前月より13万人減少と、3か月連続の減少となっており、引き続きこうした動向にしっかり注意していくことが必要と考えています。また、4月に大きく増加した休業者数でありますが、6月は236万人、前年同月差で90万人の増加となり、5月に続いて、その増加幅は大きく縮小しました。2ヶ月目の調査世帯のみを対象とした集計結果を分析しますと、5月に休業者であった方の6月の就業状態をみると、約45%の方が休業の継続、約47%の方が従業者となり、完全失業者となった方は約2%にとどまっております。
 5月に続いて、多くの方が仕事に戻っており、企業において引き続き雇用の維持に取り組んでいただいているものと認識しています。現在の雇用情勢は、冒頭申し上げましたように求人が求職を上回って推移しているものの、求人が引き続き減少しており、求職者の増加も相まって厳しさがみられます。新型コロナウイルス感染症が雇用に与える影響に、より一層注意する必要があると考えています。

 最後ですが、マスクの市場での供給の改善に伴い、3つの施策を講じたいと考えております。まず現状についてですが、市場におけるマスクの供給量は、7月末には一般小売における販売量が1月初旬の水準である週1億枚まで回復し、8月には国内供給が10億枚を達成できる見込みとなっています。医療機関や介護施設等が市場でマスクを確保することについても、春先に比べてその環境が変わってきていると考えております。
 こうしたことを踏まえ、まず現在定期的に行っている医療機関向けのサージカルマスクの優先配布、これまでで累計約2億枚配布しておりますが、これまでの応急的な対応から、国内において必要な備蓄を計画的に確保していくという対応へ移行することとします。あわせて、現場での備蓄用として8,100万枚を都道府県及び医療機関に配布し、一旦優先配布を休止し、感染拡大に機動的に対応できるよう備蓄の強化を行います。ただし、G-MISを活用した緊急配布については引き続き維持し、新型コロナウイルス感染症に対応する個別の医療機関の緊急ニーズには応えていきたいと考えています。
 介護施設等への布マスクの配布については、利用者や職員の方の感染拡大を防止する観点から、3月中旬からこれまで累計約6,000万枚を国で買い上げて配布してまいりました。これまでは、すべての対象施設に一律に配布してきましたが、現在のマスクの需給状況を踏まえ、配布を希望する介護施設等に随時配布するというやり方にしていきたいと考えております。なお、今後に備えて、国でも備蓄することとします。
 あわせて、市場の需給が改善したことから、マスク及びアルコール消毒液等の転売規制でありますが、これを解除するための手続を進めたいと思います。本規制は、昭和48年に制定された国民生活安定緊急措置法に基づき、初めて発動したものでありますが、需給の逼迫が解消されれば解除すべき性質のものです。現在、いずれの製品も供給量が大幅に増加し、市中での購入が可能な状況となっているため、解除に向けての手続きを進めていきたいと思います。
 解除後も、引き続き需給の状況を注視し、高額転売が横行してこれらの製品の購入が困難な状況となれば、躊躇なく、転売規制の再実施を検討していく考えです。今後とも、医療機関や介護施設等に必要なマスクが行き渡るよう、マスクの市場や新型コロナウイルス感染症の動向などを踏まえ、必要な施策を講じていきたいと考えております。私の方からは以上です。

質疑

記者:
新規の感染者を減らすための対策についてお聞きします。昨日のアドバイザリーボードでは、東京以外でも大阪や福岡、愛知などでも感染拡大が生じていると、保健所や医療機関の負担を減らすために新規感染者数を減少させる迅速な対応が求められる状況となっているとの指摘がされました。
 この後の分科会でも対策が協議されると思いますが、大臣自身は新規感染者を減らすため何が必要と考えられるか、お考えをお聞かせ下さい。
大臣:
昨日のアドバイザリーボードで、直近の感染状況について分析、評価をいただきました。足下は全国で過去最多となる1,300人近い陽性者が確認されるなど、大都市圏を中心に、また地方においても感染が徐々に拡大している傾向にあり、また医療現場の負担感も強まって、重症者数も少しずつではありますが増えてきているという状況にあります。
 こうした状況の中で、先日飲食店等におけるクラスター発生防止のための総合的な取組も、これは内閣官房を中心に取りまとめられたところです。こうした施策を一つ一つ実行していくということに加えて、我々としては、保健所機能の引き続きの増強、あるいは検査体制に万全を期していく、必要な病床や療養宿泊先の確保等に向けて、必要な体制整備を行っていきたいと考えております。
 今日また分科会が開催されるということですが、専門家のご意見もしっかり承りながら、必要な手立てをしっかり講じていきたいと考えております。
記者:
派遣労働者の雇用維持に向けて、厚労省は5月に派遣業界に対して雇用維持に向けた要請をしました。その中では派遣先がない場合でも派遣元である派遣企業で雇用計画を維持し、雇用調整助成金を使ってほしいとこれまでより踏み込んだ要請をしています。
 しかし、昨日派遣労働者の当事者の方々が厚労省にきて、実際には要請に基づいた対応がなされておらず、雇い止めが相次いでいるという実態について申し入れをされました。まずは雇い止めにあった派遣労働者の実態や派遣会社による雇用調整助成金の利用状況について、現状を把握するための調査をすべきだという提言もなされましたが、そうした声にどう答えていくかお考えをお願いします。
大臣:
派遣という形で働いている方の雇用維持については、今お話がありましたように、私自身が直接業界団体のトップともお話をして、雇調金の活用等も含めて雇用の維持を図る、これまでにない取組をしていただきたい旨お願いいたしました。また、個別の派遣会社に対しても、都道府県の労働局から電話や訪問等を行って、各社の状況を把握しながら必要な指導あるいは雇調金を活用した雇用維持を個々に求めさせていただきました。
 6月末時点で多くの派遣会社が派遣契約の更新を行うタイミングということでありますから、このタイミングを我々非常に注意して見てきたところであります。業界団体、これはそこに属している会員企業の動向ということで、これは全ての動向とは言えないわけでありますが、そこから話を聞いた限りでは、7月以降も派遣契約の継続や新たな派遣先の確保により基本的には現在の雇用契約の維持ができていると報告されております。
 また、本日公表された労働力調査では、非正規で働いている方の人数は減少しておりますが、その中で派遣社員を見れば142万人と、前年同月比でプラスマイナス0という水準になっているというデータもあります。一方で、今お話があったように、個別には、そのような事例があることも我々十分承知しております。
 都道府県労働局において、雇い止め等があれば、まずそれに対して雇用安定措置の適切な履行あるいは雇調金の活用による雇用維持等、必要な指導を徹底的に行っていきたいと思っております。今後は、9月がまた一つの更新時期ということもあります。また、現在製造業の動向に注意していく必要があると考えております。
 引き続き、都道府県労働局や業界団体を通じた状況把握、雇用を守るとの立場に立って必要な対応を図っていきたいと思っておりますが、各労働局に対しては、雇用維持に係る要請を更に徹底していくよう再度指示をいたしました。また、製造系派遣を行う派遣元に対しては、労働者派遣契約の中途解除等の状況把握及び雇用安定措置等に係る指導監督を集中的に実施するよう、これも既に指示しているところです。
 こうした様々な施策を講じることによって、派遣切り、あるいは雇い止め、こうしたことが起こらないようにしっかり対応していきたいと思います。
記者:
ALSの女性患者の件でお伺いします。本人の依頼で、宮城県と東京の医師2人が嘱託殺人で逮捕されました。この事件に対する大臣の受け止めをお伺いします。
 また、警察からかつて医系技官として働いていたということで、聞き取りの調査があるということですが、その調査の進捗状況等あればお願いします。
 また、逮捕された医師の一人が海外の大学の医学部を卒業したことにして医師免許を不正に取得した可能性があり、その不正に当時の厚生労働省の医系技官が関わっていたという報道がなされております。この事実関係と厚労省の対応についてお願いします。
大臣:
4月23日に医師2名が共謀の上、筋萎縮性側索硬化症、ALSの女性に薬物を投与し、急性薬物中毒で死亡させ嘱託殺人容疑で逮捕されたという報道がありました。今、警察が捜査中ということでありますから、具体的な中身についてのコメントは控えたいと思います。
 しかし、仮に報道のような殺人ということであれば、これは法に反する許し難い行為であると思います。
 また、今般の一連の報道に医師免許の不正取得等のご指摘があることも承知していますが、いずれにしても、捜査中の案件でありますから、私どもからコメントは差し控えさせていただきます。いずれにしても、良く警察とも連携しながら対応させていただきたいと思います。
記者:
布マスクの配布の件ですけれども、希望する介護施設などの把握はどうやってされるのかということと、布マスクの配布を8,000万枚から備蓄に変えた理由というのは、国内のマスク需要が間に合うようになってきたからということでよろしいでしょうか。
大臣:
先ほども申し上げましたように、マスクの希望についてはコールセンターあるいはメールを通じて、そうした希望を我々聞かせていただくことを考えております。具体的には関係団体あるいは都道府県等を通じて、それぞれの事業者の皆様に今50万事業所の方、高齢者施設、障害者施設あるいは子育て、いわゆる保育園等についてお声がけさせていただいております。
 そういった皆さんに今回のやり方を変えていくということをまず周知徹底した中で、先ほど申し上げたコールセンターあるいはメールによってその要望を承りながら、必要な方に布マスク等を配布していきたいと思います。したがって、そういった結果として残るものがあれば、これは次に向けて国として備蓄していくということであります。
 転換した背景としては、介護施設の関係者からお話を聞く限り、マスクの需給は改善し3月に配布いただいた時ほどではないが、備蓄等にも活用できありがたいという声もいただいておりますので、そうした声を踏まえて要望に対して対処していきたいということであります。
記者:
幹部人事についてお伺いします。事務次官の鈴木氏については今回の人事を見る限り留任となって、一方で医務技監の鈴木氏については交代ということになりました。感染症対策とか、医療提供体制の構築について司令塔機能を果たすよう期待されて3年前にできたものですけれども、今回替わられた理由についてお伺いしたいんですけれども、PCR検査の基準とかアビガンの早期承認について官邸側との軋轢も噂されて指摘する声もありましたけれども、そういった点も考慮された結果の人事なのかどうかお伺いしたいです。
大臣:
まず一つは今ご指摘のあるように、新型コロナウイルス感染症との対応の最中でありますから、それを踏まえた人事異動をさせていただいているということです。それが、今の段階で医務技監は交代し、事務次官は引き続き留任をしていただく、こういう形の人事を行いました。
 医務技監でありますけれども、初代ということで3年間にわたってその任を果たしていただいてきましたので、今ご指摘があるということではなくて、やはり組織として持続的に対応していくためにも一定の人事を行い交替していく、これは他の省庁含めてあるいは厚労省でもこれまで行わせていただいてきました。
 そうした観点から実施をさせていただいたということ、それから後任の福島院長についても、これまで国立保健医療科学院長という立場でもありましたが、併せてコロナ対策本部の中で様々な取りまとめあるいは対応してきていただいておりますので、そうした経験も踏まえて、医務技監としてコロナ対策含めて先頭に立って対応していただきたいということで、今回の人事をさせていただいたということです。
記者:
男性の育児参加についてお尋ねします。先日、出産直後の夫を対象にした新たな休業制度を創設する方針を政府が固めたとの報道がありましたが、現在の検討状況について教えてください。特に給付金の増額について実現に向けた現在の方向はいかがでしょうか。また、大臣は必要性をどのように考えておりますか。
大臣:
まず一つは、7月17日閣議決定の骨太の方針で、「配偶者の出産直後の男性の休業を促進する枠組みの検討など、男性の育休取得を一層強力に促進する」とあり、その他にも少子化社会対策大綱などにもそうした記載があります。今、それらを踏まえながら我々の中で検討を進めています。
 具体的な制度について何か決定をしたという状況には至っておりませんけれども、しっかりと検討を進めていきたいと考えております。また現状でありますけれども、これは、これまで指摘されておりますように、男性の育児休業取得率は平成30年度で6.16%と甚だ低い水準にとどまっていると認識をしております。この水準をいかにあげていくのか、また取得しやすい環境を作っていくのか、これは大事な課題です。
 これまでも企業において取得しやすい環境に取り組んでいただいた事業主に対する助成金とか、あるいはイクメンプロジェクトに積極的に取り組んでいる企業や管理職の表彰等を行って、そうした環境づくりをしてきたわけですが、先ほど申し上げた骨太の方針を踏まえて、必要な対策を講じていきたいと思います。
記者:
7月29日の黒い雨訴訟についてお聞きします。原告側が勝訴ということになりまして、判決への受け止めとか援護対象区域拡大とか見直しをどうするか、控訴についてどのように考えているかお聞かせください。
大臣:
7月29日の広島地裁判決では国側の主張は認められなかったものと認識しております。今後について判決内容を十分精査した上で関係省庁、また広島県、広島市とも協議して対応を考えていきたいと思っております。なお、上訴期限は8月12日と承知をしております。
記者:
8月6日と8月9月の平和記念式典が近づいてきておりますけれども、自民党の原爆議連の方から被服支廠の視察とか保存案の申し入れがありましたが、視察するかどうか、あと3棟30億円の保存案の申し入れがありましたが、どのように対応されていくのかお聞きします。
大臣:
被爆者が減少し、あるいは高齢化で被爆体験が風化するということが大変危惧されています。唯一の戦争被爆国として、世代や国境を超えて被爆の実相を継承し、また、しっかりとそれを周知していく、啓発していくということは大事だと思います。
 そうした中で広島県が所有する旧陸軍被服支廠、支廠は全部で4つの棟があります。そのうち3棟は広島県が所有しておりますけれども、広島市内に存続する被爆建物としては最大級規模のものであって、被爆の実相を伝える上で大変大事な建物だと認識をしています。
 先般も、自民党議連から視察の要請等もいただいておりますので、今回の平和式典の出席後に、直接私自身が視察させていただきたいと考えております。また保存案についてでありますけれども、これは様々なご意見があると承知しております。
 このため、従ってまず、こうした被服支廠の大半を所有する広島県において検討がなされていると思いますが、その上で厚労省としても、また関係省庁とも連携して必要な対応を図っていきたいと考えています。
記者:
幹部人事についてもう一点お伺いします。コロナの対策にあたる医政局長や健康局長といった主要なポスト幹部も今回交代ということで、組織である以上、そういった人事をやらないわけにはいかないというのも分かるんですけれども、人事をやることによるデメリットというか、そういったことも懸念されると思うのですが、そのあたり影響がないようにどのように対応していきたいとお考えでしょうか。
大臣:
今回の人事は、一つは今ある新型コロナウイルス感染症の対応を引き続きしっかりやっていくということと、それからやはりいわゆる全世代型社会保障制度の構築に向けて、特に2040年代に向けて我々どういう形で社会保障制度を構築していくのか、また働き方改革を進めていくのか、こういった課題に対応できる、しかも持続的に対応していける体制を作っていくということで、実施をさせていただきました。
 今回それぞれ医政局長、健康局長になられた方々は、これまでもコロナ本部で、まさにそうした仕事をされてきた方々でありますから、そうした方々が引き続きその任に当たっていただいて、より強いリーダーシップを発揮していただきたいと思います。
記者:
先ほど京都のALSの患者の方の嘱託殺人事件のことで、今は捜査中の事件ですのでご意見、発言はなさらないとのことですが、その容疑者の方の一人が厚労省の仕事をされていて、その中で行動の方向性を固めて行ったということも報道されたり、本人の発信などで分かっております。いずれこのことに関して厚労省として大臣としてお受け止めなり、認識をお聞かせはいつかはいただけるということでよろしいでしょうか。
大臣:
いずれにしてもそういう事実含めて、全て捜査中の案件でありますから、我々そこに言及することは控えさせていただきたいと思います。ただ、一般論ではありますが、もちろん私どもと関わりのあることについては、よく警察とも連携しながら、しっかり対応させていただきたいと思います。
記者:
ALSの関係でお願いします。事件後、一部には死ぬ権利について議論をして欲しいというような意見が一部にありますが、大臣の見解をお願いします。
大臣:
安楽死をどう考えるのか、それから更に言えば人生の終わりをどう考えていくべきなのか、これまでも相当な議論を積み重ねながら対応されているわけであります。私は、今回の事案をそこに絡めて良いのかどうか議論があると思いますが、今お話になった視点については、これまでも議論され、また引き続き議論の必要性があるということ、これは私も含めて認識されているものだと思います。

(了)