加藤大臣会見概要

H30.1.19(金)10:48 ~ 11:08 省内会見室

広報室

会見の詳細

閣議等について

大臣:
おはようございます。本日の閣僚懇談会において、生活保護基準の見直しに伴う他制度への影響に関し、前回の生活保護基準見直しの際と同様の対応を講じるよう、政府としての対応方針を確認いたしました。具体的には、まず、国の制度については、生活保護と同様の給付を行っているような制度を除き、生活保護基準額が減額となる場合に、それぞれの制度の趣旨や目的、実態を十分考慮しながら、できる限り、その影響が及ばないよう対応することを基本的な考え方とすること。2点目として、このほか、個人住民税の非課税限度額等については、平成30年度の影響はなく、平成31年度以降の税制改正の議論を踏まえて対応を検討すること。3点目として、さらに、地方自治体で独自に実施している事業については、地方自治体に対して国の取組を説明の上、その趣旨を理解した上で各自治体において判断していただくよう依頼すること、について確認いたしました。この方針に基づき、今回の生活保護基準の見直しに伴い、他の制度に影響ができる限り及ばないよう、各府省と協力しながら対応してまいりたいと思っております。

質疑

記者:
子宮頸がんワクチンについて伺います。かつて、定期接種に追加されましたけれども、接種後に体の痛みを訴える女性が相次いだために、2ヶ月で積極的な接種の呼びかけを中止された経緯があります。昨日、厚生労働省がホームページにこれまでの調査結果を公表しましたが、この情報をこの時期に公表した狙いについてお伺いします。
大臣:
HPVワクチンについては、平成25年6月より、積極的勧奨を差し控えている状況にあります。今後のHPVワクチンの接種の在り方については、子宮頸がん等の予防対策をどう進めていくのか、他方で副反応や多様な症状が生じている方に寄り添った支援をどう進めていくのか、という2つの観点から議論を進めていくことが必要と考えており、これまでも、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会においてこうした観点から議論を進めていただきました。昨年12月22日の審議会において、HPVワクチンについて、リスクとベネフィットの両方をよく理解していただくことが必要であり、そのために国民に対する情報提供を充実すべきとのご意見をいただき、その情報提供の方法等について議論いただきました。その議論が固まったということで、HPVワクチンに関するリーフレットを更新し、昨日、その内容をホームページで公表し、併せて自治体に周知を図っているところであります。厚生労働省としては、国民の皆様への情報提供を進めながら、引き続き審議会のご意見も踏まえ、HPVワクチンの接種の在り方について検討を進めていきたいと思います。
記者:
年金についてお伺いします。近く閣議決定される予定の高齢社会対策大綱の中で、受給開始年齢を70歳以降でも選択できるようにするという内容が盛り込まれました。これを受けて、厚生労働省としてどう検討を進めていくのか、また、最終的には法改正も必要であると思いますが、その時期について見通しがあればお聞かせください。
大臣:
高齢者の就労に関しては、7割近い方が65歳を超えても働きたいと希望されております。一方で、働き方改革も踏まえながら進んでいっているわけですけれども、年金制度においても、こうした意欲の変化を踏まえて必要な見直しを行っていくことが必要であると思います。政府で高齢社会対策大綱を検討中でありますけれども、現在、60歳から70歳までの間で選択可能となっている年金の受給開始時期について、70歳以降も選択可能となるような検討を行う旨を盛り込む予定ということで議論されていると承知しております。今後は、2019年(平成31年)に年金の財政検証がありますから、それを踏まえて具体的な検討を進めていきたいと思います。
記者:
大臣の冒頭のご発言の関係ですが、準要保護者に対する就学援助等の地方単独事業に対して影響させないよう、自治体に依頼又は要請するに留まっております。前回5年前の見直しでも同様の措置を取られていますが、文部科学省によると、全国80以上の自治体が基準を下げていると聞いています。これについて、政府として何らかの対策を取るお考えはありますでしょうか。
大臣:
文部科学省が所管している就学援助、要保護者と準要保護者がございますが、要保護者については、引き続き国庫補助の対象とすると聞いています。また、地方単独事業である準要保護者の支援については、もともとそれぞれの市区町村が独自の判断でやっておられるわけでありまして、今回の国の取組を説明し、その趣旨をご理解いただいた上で、適正に判断いただく。そもそも市町村が独自でやっているわけでありますから、こちらからは依頼をしていくということになるわけです。前回平成25年の見直しにおいて、文部科学省が独自に把握されているところでは、就学援助についての影響が生じていない市町村が96パーセントということで、残りの4パーセントのことをおっしゃったのだと思いますが、いずれにしても、そうした自治体も含めて、文部科学省の方から改めて、本日確認させていただいた措置についてしっかりと依頼をしていただくということだと承知しております。また、そうしていただけるよう、我々としても引き続き連携していきたいと思います。
記者:
生活保護について伺います。福島市で生活保護を受給していたお母さんと娘について、福島市が娘が奨学金を受け取ったときにそれを収入認定し、生活扶助費を減額したことについて、福島地裁が、公務員の裁量権を逸脱し違法であるとの判決を16日に出しました。判決では、十分な検討がされないままに生活扶助費が減額されたと指摘していますが、それについての大臣の受け止めと、今後自治体に改めて注意喚起等をするお考えがあるか、お聞かせください。
大臣:
子どもの貧困対策にしっかり取り組むという観点からも、生活保護世帯の子どもの教育をしっかり支援していくということは重要な課題であります。その上で、奨学金については、高等学校等就学費の支給対象とならない経費や、高等学校等就学経費ではまかないきれない経費に充てられている場合、具体的には修学旅行や学習塾等が挙げられますが、そういったものに充てられる場合は、生活保護制度における収入認定から除外してその金額を手元に残すことができるようになっております。今回の判決に係る福島市の処分についても、厚生労働省としては再審査請求において、生活保護受給者からの相談の際に聞き取りや説明が不十分であったことなどから、処分そのものが不当なものであって、平成27年8月6日付けでこれを取り消す裁決を行っていたものであります。今回の訴訟はそのこと自体ではなくて、そこから派生した損害賠償だと承知しておりますが、こうした処分が行われたことは遺憾なことであり、適正な保護の実施をしっかり図っていくことが必要だと思っておりますので、毎年開催しております全国都道府県会議や研修会等を通じて、引き続き周知・指導をしっかり行って、こうした事例が生じないように厚生労働省としてもしっかり対応していきたいと考えております。
記者:
生活保護の関係の就学援助について確認させていただきます。先ほど、5年前も要請されたと仰いましたが、23区でも自治体独自の事業について基準を下げなかったところもあれば下げたところもあります。子どもの貧困対策を考えても、23区に住んでいても自治体によって下げたところと下げていないところもあるということでは、どんどん地域で差が出てしまいます。国民にとっては、国の事業や地方の事業と言われても納得いかないところが多々あると思います。5年前よりもプラスアルファの対応というのはないのかと思うところがあるのですが、この点についてはいかがでしょうか。
大臣:
市町村がやっている制度を国の制度に変えれば、おっしゃるとおり、国として対応するということになりますけれども、市町村独自でおやりになっている対応ですから、国としては国の方針を説明し、理解を求めていく、依頼をしていくということにならざるを得ません。もちろん、ご指摘のように、単独でやっている事業において、住所地を変えてみると、前の住所地で提供されていたものが新しい住所地では提供されていないとか、あるいは負担が変わるといったことは多岐にわたっているのだろうと思っておりますが、それぞれの地方自治体においてお考えいただいて、それを前提としながら、国の対応、取組について改めて今回の基準見直しに当たって、予算が成立してからになりますけれども、しっかりと市町村に対して依頼、説明していきたいと思っております。
記者:
年金についてお伺いします。高齢社会対策大綱の中で70歳以降も選択可能となるよう検討していくということですが、現行の制度においても繰り下げて受給される方が少ないというのが現状です。これについてどう周知していくのかということと、選択する方が少ないという現状について、大臣のご認識、例えばもう少し割合が上がった方がいいのか、個人の選択の自由ではありますけれども、お考えをお聞かせください。
大臣:
低い高いというのは、本来どのくらいかというのを想定して判断することになるかと思いますけれども、実際に利用率は数パーセントというのが現状だと認識しております。いずれにしても、こうした制度があるということ、どういう内容になっているのか、その方のライフプランから見てどのような判断をすることがその方にとってプラスになっていくのかといったことを判断するための材料をしっかり提供していくことが必要だと思っております。そういった意味で、日本年金機構では、年金請求書を事前送付する際にパンフレットを同封するとともに、実際に年金事務所窓口において請求手続きをする際に、繰下げについて全ての方に説明をまさに行っております。さらに平成29年10月以降に発送する分について、繰下げ制度に関する記載をより分かりやすくするとか、繰り下げれば年金額が最大42パーセント増えるといった内容を具体的に説明できるような工夫をしているところです。いずれにしても、そのような選択肢があるということと、65歳、70歳以降も働いていかれる場合等々について、どのような選択肢がその方にとってプラスになるのか判断していただける材料を、色々な形で提供し周知を図っていきたいと思います。
記者:
医療機関で相次いでいる是正勧告についてお伺いします。北里大学病院や日赤医療センターなど、日本を代表する医療機関において労基署から是正勧告が相次いで出ていることが発覚しておりますが、大臣のその現状の受け止めと、医療機関に今後望むことをお願いします。
大臣:
個々のことについてはこれまで申し上げているとおりコメントは控えたいと思いますが、一般論として申し上げれば、医療機関における労務管理については、医師の労働時間が必ずしも適切に管理されていないのではないかといったことが厚生労働省が委託した調査からも類推されるわけでありまして、そのような医療機関に対してはしっかり対応していくということをこれまでも監督・指導などを通じて求めてきているところであります。労働時間を適切に管理するよう、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の周知徹底を図っているところであります。さらに、今後も引き続き医療関係の団体ともよく連携を図りながら、こうした指針の徹底をしっかり図っていきたいと思っておりますし、併行して、ご承知のように働き方改革全般において、医師の働き方改革については今議論いただいておりますけれども、その中でも緊急に取り組むべき対策をこの2月を目途に取りまとめる予定としておりまして、その中においては、「医師の労働時間管理の適正化に向けた取組」、あるいは「36協定の自己点検」を盛り込みたいと思っております。こうしたことも踏まえながら、各医療機関においてしっかりと対応していただけるように促していきたいと思っております。
記者:
昨年の自殺者数が発表になりました。8年連続の減少になりましたが、減少幅は一昨年よりも少し小さくなっているかなということと、暫定的な1月から11月までにのデータですが、若者の自殺が増えているということに対する受け止めと、昨年7月に自殺総合対策大綱で10年間で自殺死亡率を13.0にするという目標を掲げられておられますが、去年は16.7でございました。その達成の見込みも含めて受け止めと対策等のお考えをお聞かせ下さい。
大臣:
まずは、2017年の自殺者の速報値は2万1,140人ということであります。前年の確定値よりも757人少なくなって8年連続で減少しておりますけれども、それでもなお2万を超える方々が自らの命を絶っているということの現実をしっかり受け止めて対応していかなければいけないと思っております。その上で若者については、去年1月から11月までの暫定値について年代別に見ますと、19歳以下については前年同期に比べて増加しております。それから、20歳代もほぼ横ばいという水準でありますから、やはり若者の自殺対策は喫緊の課題、またはその喫緊性が高まっていると考えております。昨年7月の「自殺総合対策大綱」で、当面の重点施策として「子ども・若者自殺対策の更なる推進」が位置づけられているわけでありまして、それらをしっかりと推進していくとともに、昨年12月に座間市における事件の再発防止策について議論いたしました。広く若者を対象とするには、若者が活用されているSNSなどを活用した相談事業などの支援を進めていこうということになっておりますので、本年3月の自殺対策強化月間からこの事業の開始をすべく、現在準備を進めているところであります。また、さらにこうした事業の実施状況を見ながら、このSNSの相談体制などをどういう形で進めていけばよいのかといったものの検討や、または相談支援のノウハウを集約したガイドラインの作成、相談員の研修の実施など、一つひとつ具体的な対策を進めていくことで自殺対策大綱の目標をしっかり下回るように努力していきたいと思っております。
記者:
就学援助の件についてお伺いしますが、先ほどの質問の中で今回プラスアルファの対応がないのかという質問がございまして、自治体の中には財政的に厳しくなるため基準を下げたと言っているところもございます。そのような自治体への財政的支援などは検討の対象にはならないのでしょうか。
大臣:
文部科学省がやっていることなので、それぞれ一つひとつの中身については承知しておりません。おそらく、財政的にと言った時にもともとは地方単独事業で実施されているという背景もあるのだろうと思いますので、いずれにしてもよくそのあたりをお聞きしながら私どもが今回国として取り組んでいく方針について理解をして、そうした対応をしていただけるように努力をしていきたいと思っております。個別なことについては文部科学省としてよく相談したいと思っております。

(了)