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技能五輪国際大会 若き技能者の世界への挑戦
原則2年に一度開催される技能五輪国際大会。昨年9月にフランスで開催された第47回技能五輪国際大会(リヨン大会)にも日本から多くの選手が出場し、金メダルを5個獲得するなど素晴らしい結果を収めました。本特集ではリヨン大会にスポットを当て、日本人金メダリスト5人を紹介するとともに、2028年の日本での第49回大会開催決定までの経緯や決定時の思いなどについて厚生労働省の関係者が語り合う座談会を掲載します。
worldskills
技能五輪国際大会とは?
目的
原則22歳以下の青年技能者が技能を競い合う唯一の世界レベルの大会で、隔年で開催されています。幅広い職種の技能競技を通じて、参加国・地域の職業訓練の振興および技能水準の向上、青年技能者の国際交流・親善を図ることを目的としています。
英語では「WorldSkills Competition」と呼ばれており、ワールドスキルズインターナショナル(WSI:WorldSkills International)の憲章に定められています。
始まり
この大会は、1950年にスペインの職業青年団が提唱し、隣国ポルトガルとの間で各12人の選手が技能を競い合ったことからスタート。逐年、参加国と出場選手が増加し、若い技能労働者の祭典と呼ばれるようになりました。日本は1962年の第11回大会から参加し、毎回優秀な成績を収めています。
概要
運営は、ワールドスキルズインターナショナルによって行われ、メンバーは加盟各国からの代表で構成されています。日本からは、中央職業能力開発協会がメンバーとなり、同大会に日本選手団を派遣しています。
大会は現在、原則2年に一度開催されており、これまで日本では、1970年の第19回大会(東京都・千葉県)、1985年の第28回大会(大阪府)、2007年の第39回大会(静岡県で「2007年ユニバーサル技能五輪国際大会」として「国際アビリンピック」と同時開催)が開かれました。また、2022年の第46回大会(特別開催)では、開催国・地域の一つとして京都府で3職種の競技が実施されました。
さらに、2028年の第49回大会が日本・愛知県で開催されることが決まりました。国内開催は21年ぶり4回目となります。開催決定をテーマにした座談会は16~19ページに掲載。
参加選手
日本代表選手の選考は、同大会の前年に開催する技能五輪全国大会において行われ、参加資格(一部の職種を除き、大会開催年に22歳以下であること)を満たす優勝者(成績優秀者)が日本代表として選出されます。なお、技能五輪全国大会で競技が実施されない職種については、各業界団体等が選考会などにより選出します。
図 各大会の相関図
<Part 2>
2028年 技能五輪国際大会 国内開催 座談会
2028技能五輪国際大会 日本での開催が決定!
招致に再挑戦 21年ぶりの国内開催
2028年の技能五輪国際大会の日本・愛知県での開催が決まりました。国内開催は2007年の静岡大会以来、21年ぶりとなります。厚生労働省の技能五輪関係者に開催決定までの流れや決定時の思い、国際大会に期待することなどについて語り合ってもらいました。
国内外に技能振興の重要性をアピールする意義は大きい
安達 昨年9月にリヨン(フランス)で開催されたWSI(ワールドスキルズインターナショナル)総会において、無事に2028年技能五輪国際大会を日本・愛知県で開催することが決定しました。ご協力いただいた関係者の方々には改めてお礼申し上げます。皆さんも招致活動へのご尽力、本当にお疲れさまでした!
さて、振り返ってみると、技能五輪国際大会は、私が着任した直後の2022年6月はコロナ禍で、同年開催を予定していた上海大会が中止となり、選手の出場機会が閉ざされるという危機に直面していました。
そうしたなかで、選手の皆さんのそれまでの訓練の成果を無駄にしないよう、世界15カ国で分散開催する構想が持ち上がり、日本も同年10月に「京都市勧業館みやこめっせ」を会場に3職種の競技大会を開催。その時の選手の皆さんの技能レベルの高さや競技に寄せる真摯な姿勢、さらには国内外の選手の皆さんと競技を通じて交流を深める様子に強い感銘を覚え、技能競技大会の素晴らしさを知りました。
その後、愛知県や同県の労使の皆さん、さらには技能者育成に携わるさまざまな教育機関や企業の方々などから、2028年技能五輪国際大会を招致したいとの要請をいただいたこともあり、招致に踏み出すことについて検討を進めることになりました。
技能五輪国際大会については2019年に一度、日本招致に失敗していたこともあり、再度の挑戦には懸念の声もありました。しかし、地元の皆さんの熱意に加え、デジタル化など国際的な環境下への対応、技能の担い手の減少への対応が大きな課題となっているなかで、技能五輪国際大会の開催を通じて、日本におけるものづくりの中心地である愛知県から技能の素晴らしさ、技能振興の重要性を国内外にアピールすることは大きな意義があると考え、2023年11月に国(厚生労働省)として大会の招致を決めたのです。
関係者が一丸となって取り組み満場一致で日本の招致決定
深谷 まず、日本・愛知県としての招致が実現した際に、どんな大会にしていくかを検討するため、技能五輪関係者や経済団体、労使団体、教育機関など、さまざまな団体から選出された有識者による検討会を行いました。開催テーマや開催概要、運営計画など、有識者の皆さまからの多様な意見や提案を踏まえ、大会の指針となる「2028年技能五輪国際大会基本計画」を策定しました。
また、各加盟国から支持してもらえるよう、国外で開催される技能競技大会でのPRや、各国の大使館への訪問によるPRを行うことに加え、厚生労働大臣や各省庁の大臣などにも協力いただきながら、日本開催の素晴らしさを広めてきました。
国外だけではなく国内に向けても技能五輪国際大会の招致を幅広く知ってもらうために、技能五輪全国大会会場でのPRブースの設営や、「招致投票まで50日前イベント」の開催を行うなど、国内の盛り上げにも力を入れてきました。
私だけでなく評価室のメンバー全員が「やれることはすべてやろう!」、そんな気持ちで招致活動に取り組みました。
伊藤 今回の招致にあたっては、WSI総会においてプレゼンを行い、加盟国・地域による信任投票で、過半数以上の支持を得る必要がありました。招致が決定した瞬間は今でも覚えており、多数のメディアにも取り上げていただきました。招致関係者が一心となって進めてきた準備が報われる形となり、とても安堵しました。
日本開催をめざし招致プレゼンテーション
加茂 そうですね。総会会場ではリハーサルの時間も設けていただき、限られた時間のなかで日本のPRポイントをいかに伝えられるかを追求していきました。特に登壇者は英語で話す必要があることから、直前まで発音やイントネーションなどの練習をされていました。
投票の結果、満場一致で日本の招致が決定し、日本の関係者は全員立ち上がって喜んでいたのを鮮明に覚えています。
ものづくりの醍醐味を体験できる愛知大会へ
伊藤 リヨン大会を見学して驚いたことは、競技会場の広さです。競技会場のEurexpo(ユーロエキスポ)は扇状に設計され、広さは14万㎡もあるそうです。「次はこの職種を見に行こう!」と思っても、たどり着くまでに一苦労でした。
加茂 それに加えて、非常に多くの観客が来場されていたのはとても良いことですが、会場内の交通整理が十分にできておらず、人がごった返す状況でした。
深谷 入場ゲートも非常に混雑していましたね。
2028年技能五輪国際大会の競技会場である愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo)は Eurexpoと比べるとコンパクトなつくりで、会場内の移動の負担は少ないと思います。一方で、会期中は多くの見学者の来場が見込まれるため、人が滞留せずスムーズに見学できる仕組みを考えていく必要がありますね。
安達 リヨン大会の競技会場中庭では多くのキッチンカーが世界各国のいろいろな料理を販売しており、毎日何を食べるか楽しみでした。国際大会の盛り上げにも一役買っていた気がします。ただ、メニューが何を書いてあるかわからず、食べてみるまで不安もありましたが……。
伊藤 技能五輪国際大会は、磨き上げられた技能が新しい価値を生み出す「ものづくり」の醍醐味が味わえる大会です。ぜひ多くの若者に来場いただき、ものづくりの素晴らしさに触れ、将来の夢や目標を考えるきっかけになってほしい。
また、単に見るだけではなく、実際に触れて体験できるようなイベントなどを仕掛け、「自分にもできるかもしれない」という前向きな気持ちを持ってもらえるような大会にしたいと思います。
加茂 リヨン大会でも実施されていましたが、2028年技能五輪国際大会でも「一校一国運動」を実施する予定です。一校一国運動は、開催国の小中学校に参加国・地域の選手が訪問し、交流を通じて異文化理解を深める活動です。この活動を通じて、大会が技能競技の場にとどまらず、未来を担うこどもたちが国際社会の一員としての意識を持つきっかけとなると良いと思います。
深谷 開催自治体であるリヨン市も大会に合わせて、職業訓練機関の紹介や、地元企業での職業体験イベント、さらには地元の参加者を集めた技能競技大会を併催イベントとして開催し、観光客を含め多くの方が参加していました。
せっかくの2007年の静岡大会以来、21年ぶりの日本での大会なので、関係者とともに日本ならではの併催イベントもできればと思いました。
「一校一国運動」で異文化理解を深める機会に
若い世代をはじめ 国民へのメッセージ
安達 技能五輪国際大会は、各国を代表する多くの選手たちが約60の職種で優れた技能を披露する世界最大の技能競技大会です。
優れた技能を直に見ることもさることながら、競技に臨む真摯な姿を間近で見る機会を経験することは、多様な職業観を育む絶好の機会となります。こどもたちだけでなく、保護者の皆さんや教育に携わる方々にとっても、幅広い職種に興味を持っていただくよいきっかけになると思います。一人でも多くの方に大会に参加いただき、若い世代をはじめ広く国民の皆さまに技能の重要性やすばらしさに興味を持っていただくきっかけになればと考えています。
国としても、大会の周知・広報をはじめ、日本での開催を契機とした技能振興の取り組みの強化も進めていきます。
2028年大会は日本にとって21年ぶりとなる自国開催ですので、他国との競争は激しいですが、日本も好成績を残したいところです。現在技能を習得している方や、これから技能を習得しようと考えている方には、選手として本大会に出場し好成績を残すことを目標としていただければ大変うれしく思います。
さらには、大会では選手をはじめ多くの海外の関係者が日本に来られます。若い皆さんには、大会にさまざまな形でかかわっていただき、国際交流を積極的に図っていただくことも期待しています。
全員 これからの日本を支えていく若い世代の皆さまの参加を心よりお待ちしています。
関係者が一丸となって取り組み日本開催が決定
出典: 広報誌『厚生労働』2025年3月号 発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト) 編集協力 : 厚生労働省 |