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第6回 アレルギーってなぁに?

第6回は「アレルギー」をテーマに、その症状や治療、予防について紹介します。

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Q.アレルギーって何?

A.アレルギーとは、特定の物質に対して起こる免疫学的反応のことです。
感染症も、ウイルスや細菌が身体に侵入してきたときに起こる免疫学的反応ですが、関係する細胞やサイトカイン(免疫にかかわるシグナルを伝達する物質)は、アレルギーと感染症とでは共通のものも、違うものもあります。

アレルギー疾患とは、アレルギーがメカニズムにある病気のことで、主なものにはアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症があります。ほかにも、金属アレルギーや昆虫アレルギー、薬物アレルギーなど、アレルギーの原因物質(以降、抗原と呼びます)の種類によってさまざまなアレルギー疾患があります。

特に重篤なアレルギーによって起こるアナフィラキシーという病態は、時に致命的となり、毎年亡くなる方がいます。発症してから症状の進行が速いため、アナフィラキシーの患者さんは、適切な対応をとらなければ病院に到着する前に亡くなってしまう恐れもあるため、注意が必要です。

抗体がつくられやすい体質 アレルギー体質とは?

アレルギー反応は、そのメカニズムの種類によっては、抗原が体内に入ってから比較的短時間(早ければ数分)で症状があらわれる「即時型アレルギー反応」や、接触皮膚炎(金属アレルギー)など数日後に出て数日間続く「遅発型アレルギー反応」など多彩です。ハチアレルギーや、食物アレルギー、花粉症などの「即時型アレルギー反応」においては、それらの原因物質に対するIgE抗体という免疫物質がつくられることで起こります。

一般にアレルギー体質とは、このIgE抗体をつくりやすい体質です。

主なアレルギーによる症状は、皮膚のかゆみや発疹、目の充血や流涙、くしゃみ、鼻づまり、食物であれば摂取後の口のイガイガ、腹痛などの局所症状と、強いアレルギー反応によって全身に及ぶ症状(呼吸器:咳、呼吸困難、消化器:嘔吐、強い腹痛、下痢、循環器:血圧低下など)があります。
 

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乳幼児のアレルギー疾患  独断しないで医師に相談を

赤ちゃんの時から発症するアレルギー疾患にアトピー性皮膚炎があり、最初は乳児湿疹という形で発症することがあります。乳児湿疹は、アトピー性皮膚炎以外のメカニズムで発症するものも含まれるため、一回医療機関を受診しただけではアトピー性皮膚炎かどうかを診断することは困難です。

乳児湿疹の出た赤ちゃんは、湿疹が持続してかゆみを伴うかなどをよく観察し、定期的に担当の先生に診察してもらう必要があります。乳児湿疹が出て、アトピー性皮膚炎を疑われる赤ちゃんでは、乳幼児期から食物アレルギーなど他のアレルギー疾患も発症していくことがあります。

アレルギー疾患を発症した場合、原因や悪化要因が何かをなるべく早く特定することが大事です。お子さんの身体に入るもの、接触したものが何かを、保護者の方には把握していただくと良いでしょう。食べ物を食べた後に発疹が出てくることなどは乳幼児期にたまに見られますが、必ずしもすべてが食物アレルギーによる症状とは限りませんので、独断で食物を除去するのではなく、医師に相談しましょう。何を食べたときに症状が現れたのか、症状の出方や特徴はどうだったかを記録に残し、今後再現されるかどうかを確認する必要があります。時間経過とともにアレルギー疾患を立て続けに発症し続ける「アレルギーマーチ」という特徴は、一部の患者でみられます(図2)。

特異IgE抗体検査などで 必要最小限の食物除去へ

食物アレルギーでは、症状が出る前に摂取した食べ物の情報と、検査を組み合わせて診断します。検査は、主なものに血液検査である「特異IgE抗体検査」や、抗原を皮膚に接触させて反応を見る「皮膚プリックテスト」、実際に被疑食物を摂取して症状が出るかを確認する「食物経口負荷試験」があります。特異IgE抗体検査は、抗原を身体に入れることなく、同時に複数の項目を検査することが可能であり参考になりますが、検査結果の解釈には注意が必要です。

日本では食物経口負荷試験が日常診療として行われ、段階的な食物経口負荷試験を行うことでできるだけ食物の完全除去を避けようという方針で管理を行っています。食物アレルギーの診断・管理は専門性が求められるので食物経口負荷試験を行っている医療機関を紹介してもらいましょう(図3)。



監修:一般社団法人 日本アレルギー学会



 

出典: 広報誌『厚生労働』2025年1月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省