未来(あした)のつぼみ

「知って、肝炎プロジェクト」に取り組む

大きな制度改正に限らず、日々の地道な積み重ねが厚労行政の可能性を広げています。
ここでは、厚生労働省の若手職員たちの取り組みや気づきを紹介します。

今回の執筆者

桒原(くわばら)隆行
健康・生活衛生局がん・疾病対策課


肝炎対策推進室では、肝炎対策基本指針に基づき、「肝疾患治療の促進」「肝炎ウイルス検査の促進」「肝炎医療の体制整備」「普及啓発」「研究開発」の5つの柱からなる肝炎総合対策の推進に取り組んでいます。

私は、そのなかの「普及啓発」の事業である「肝炎総合対策推進国民運動事業」(通称「知って、肝炎プロジェクト」)を担当しています。

ウイルス性肝炎については昨今、治療技術が著しく進歩しており、適切に治療を受ければ、C型肝炎はウイルスを排除できるようになっており、B型肝炎ウイルスについても進行を抑えることができます。

しかし、感染しても自覚症状がないので、治療の必要性を認識しにくいという特徴があります。したがって、ウイルス性肝炎について正しく知っていただくこと、肝炎ウイルス検査を受けていただくこと、そして、陽性だった場合には適切な治療を受けていただくことが大切です。

この事業では、芸能界・スポーツ界の著名人にご協力をいただきながら、肝炎に関する知識や肝炎ウイルス検査の必要性をわかりやすく伝え、国民に肝炎の正しい知識を持っていただき、早期発見・早期治療に向けた行動を促すため、多種多様な媒体を活用しての効果的な情報発信や民間企業との連携を行っています。

従来は、著名人による首長への表敬訪問が主でしたが、近年では、子育て世代を対象とした情報メディアの活用や、民間企業でのトークイベントの実施、学校訪問の積極的な実施に取り組み、年齢層に合わせた啓発ができるよう工夫しています。

また、昨年度に保健所設置市となったばかりの松本市は今年度、積極的広報地域※として啓発イベントなどを実施するなかで、長野県の肝疾患診療連携拠点病院である信州大学医学部附属病院とのつながりができました。肝炎対策は地方自治体と医療機関の連携が重要なので、地域住民の方々への普及啓発が連携体制構築の一助にもなったことは、大変喜ばしく思います。

肝炎対策の効果もあって、肝炎ウイルス検査の陽性率や肝炎ウイルスが原因の肝がんの割合は減少しています。今後も引き続き、情報発信・広報活動、地方公共団体や医療機関、民間企業との連携を通じた肝炎対策に取り組んでいきます。

※積極的に広報を実施したい自治体を後押しするため、応募により自治体を選定し、首長訪問、イベントの実施などを集中的かつ一体的に行う地域


啓発ブースでチラシを配る筆者(右)

 

 

出典 : 広報誌『厚生労働』2024年1月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省