第6回:中国四国厚生局 保険年金課・管理課

医療保険と企業年金の制度を支える団体などへの適切な指導・監督・助言に尽力

厚生行政の政策実施機関として、全国8(支)局で「健康・福祉」「医療」「年金」「麻薬取締」の業務をこなす「地方厚生(支)局」の仕事と、そこで働く人を紹介するコーナー。第6回は中国四国厚生局の「保険年金課・管理課」にスポットを当てます。

<中国四国厚生局の概要>

中国地方5県(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県)における厚生行政を管轄する地方機関(徳島県、香川県、愛媛県、高知県の一部業務も行っている)。

管内(中国地方)人口は約720万人で、日本の全人口約1.2億人の約6%に相当する。
広島県広島市にある本局のほか、保険医療機関や保険薬局などに対する指導監督や施設基準等届出の審査業務などを行う地方事務所を広島県以外の管内4県に1カ所ずつ設置している。
職員は非常勤を含めて約180人。事務職のほか、医師、歯科医師、薬剤師、看護師など多くの職種の職員がいる。

医療保険・年金制度を支える団体などと地方厚生(支)局

日本の医療保険制度(図1・3)、年金制度(図2)は、被保険者や保険医療機関などに支えられていることは述べるまでもありませんが、次に掲げる団体なども制度の円滑な実施を支えています。

医療保険制度

保険者として、全国健康保険協会、健康保険組合、共済組合、市町村、後期高齢者医療広域連合など。
審査支払機関として、社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会。


年金制度

実施主体として、日本年金機構(厚生年金保険、国民年金の事業運営を担う)、国民年金基金・国民年金基金連合会(国民年金基金と個人型確定拠出年金(iDeCo)の実施主体)、企業型確定拠出年金・確定給付企業年金・厚生年金基金を実施する企業(事業主)・基金など。



このうち、中国四国厚生局の保険年金課では、管内の全国健康保険協会(協会けんぽ)支部、健康保険組合、企業型確定拠出年金と確定給付企業年金の実施主体に対する指導などの業務を担当しており、医療保険に関係するものとしては、健康保険組合が行う業務に関する認可・指導監督と全国健康保険協会支部の業務の認可・検査などを実施します。

他方、同管理課は、市町村・後期高齢者医療広域連合・審査支払機関などに対する助言と指導監督を行います。その内容は、国民健康保険の保険者と国民健康保険団体連合会の行う医療保険事業関係業務に対する助言と指導監督です。

また、後期高齢者医療広域連合が行う業務や、市町村の後期高齢者医療制度に関する業務に対して助言を与えるほか、診療報酬の請求内容の審査などをしている審査支払機関の監督も実施します。

健康保険組合・企業年金の実施者等への指導等

保険年金課は、管内5県(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県)にある34の健康保険組合からの保険料率変更などの申請に対する認可業務や、毎年の予算届出・決算報告などを通じて適宜、健康保険組合への指導、さらに実地での指導監査を行っています。

また、全国健康保険協会の管内5県ごとにある5つの支部が行う事業所への立入調査などの認可や、その支部自体への実地立入検査を実施しています。

「健康保険組合などの保険者は、(1)事業主・被保険者から納付してもらった保険料を適切に管理すること、(2)正確に保険給付などを行うこと、(3)個人情報を適切に管理することが大切です。保険年金課が実施する実地監査は、こうした観点から適正に業務が行われているかを確認することが第一の目的ですが、それだけではなく、生活習慣病予防のための特定健康診査(いわゆるメタボ健診)・特定保健指導などの保健事業をどのように伸ばしていくかなど、事業運営について保険者の方々の意見を聞きながら適切な助言ができるように努めています」(保険年金課・大国指導官)

さらに、高齢期における所得の確保を支援するために企業の事業主などが厚生労働大臣の認可を受けて行う、いわゆる「年金制度の3階建ての部分」の一部である企業年金の事業運営に関する認可・指導監督・監査などを実施しています。2022年度末時点で管内にある605規約の確定給付企業年金と、219規約の企業型確定拠出年金を所管しています(現在、中国四国厚生局管内に所在する厚生年金基金・国民年金基金はありません)。

「たとえば、実施事業所の就業規則の変更や事業所の増減などにより、企業年金の実施者などから当課に対して多数の相談・届出等の提出があります。特に、規約変更の審査においては、将来の年金給付に影響がある変更について注意しながら、ときには実施者などに入念に確認や指導をするなどして審査を行っています」(保険年金課・橋田課長補佐)

地域医療保険の実施主体への助言等

他方、管理課は冒頭で述べたように、国民健康保険の保険者と国民健康保険団体連合会の行う業務(介護保険事業関係業務、障害者自立支援事業関係業務、児童福祉事業関係業務を除く)、市町村が行う後期高齢者医療制度に関する業務と後期高齢者医療広域連合が行う業務について内容を確認し、助言などを実施しています。

「2022年度は中国四国厚生局管内の5県、5市町村、後期高齢者医療広域連合5機関、国民健康保険団体連合会4機関と実地での事務打ち合わせをし、保険適用、保険料(税)徴収、保険給付および保健事業に係る助言などを行ってきました」(管理課・平瀬課長)

<管理課課長補佐が語る「中国四国厚生局の仕事の重要性」>

二人三脚で取り組む事業運営の適正化


管理課 石川課長補佐

私が課長補佐を務める管理課では、管内の地域医療保険の保険者や審査支払機関と実地での事務打ち合わせを行い、保険適用、保険料(税)徴収、保険給付および保健事業に係る助言などを実施しています。管理課は課長と課長補佐の2人体制のため、事務打ち合わせにあたって準備や出張など全て2人で行います。保険者に有用な助言となるよう入念な準備を心がけています。

被保険者の管理や保険料徴収が正確に行われ、保険者としての業務が適正に行われているかの確認に加え、国民健康保険や後期高齢者医療制度は地域住民を対象にした医療保険制度なので、その地域の特性に応じた保健事業にはどのようなものがあるか、効果的な実施方法はないかなど、県や市町村の担当者の皆さんと話し合いをもっています。保健事業の強化は住民の健康維持のみならず、保険財政の安定にもつながる大切な取り組みです。

ときには、制度運営が円滑に進むよう、現場で聞いた生の声を、保険者の意見・要望として厚生労働省本省へ届けることもあります。

<保険年金課職員が語る「中国四国厚生局の仕事の魅力」>
加入者に身近な制度の実施者へ適切な指導を


保険年金課 入江係員

保険年金課は課長を含めて4人と少人数での体制のため、健康保険組合に対する実地監査業務も補助的に担っていますが、普段は企業年金に関する認可業務や指導などを主に担当しています。各企業が運営している企業年金のルールブックともいえる「規約」を新しくつくったり変えたりするときに、関係法令で求められる内容をきちんと網羅しているか、加入者にとって不利益な仕組みになっていないかなどを審査しています。

今回の連載をここまでお読みいただいた皆さまのなかには、聞きなじみのない単語だらけだなと思われる方もいるかもしれませんが、たとえば安心して保険診療が受けられるよう健康保険組合などの保険者が大きな役割を果たしています。

また、皆さまやご家族が働いている会社で実は企業年金を運営している、ということもあり得ます。日ごろ特に意識していなくても、これらの制度が身近な存在であること、そしてこのような業務を行っている機関があるのだなということを感じていただけたら幸いです。

 

 

出典 : 広報誌『厚生労働』2024年1月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省