第5回:北海道厚生局 食品衛生課

安全な食品を世界に送り出す“縁の下の力持ち”

厚生行政の政策実施機関として、全国8(支)局で「健康・福祉」「医療」「年金」「麻薬取締」の業務をこなす「地方厚生(支)局」の仕事と、そこで働く人を紹介するコーナー。第5回は、北海道厚生局の「食品衛生課」にスポットを当てます。



<北海道厚生局の概要>
北海道全域の厚生行政を管轄する地方機関。管内人口は約522万人で、日本の全人口約1.2億人の約4.1%に相当する。
庁舎を北海道札幌市に置き、道全域の医療・健康・福祉・年金などの社会保障政策を実施する機関として位置づけられている。
職員は、非常勤を含めて約150人。事務職のほか、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師、管理栄養士など多くの職種の職員がいる。

衛生証明書発行と査察などを通じ安全を確保

日本の豊かな食生活は、輸入食品なしには成り立たないと言われていますが、逆もまたしかり。日本が輸出する食品も、世界中の食卓に多様な彩りを与えています。そのための大前提は、何より輸出食品が「安全に食べられるものであること」です。

その使命を担う北海道厚生局健康福祉部食品衛生課は、輸出促進法に基づく輸出水産食品・食肉の施設認定、定期査察、衛生証明書の発行や食品衛生法に基づく登録検査機関の登録、立入検査などを行っています。

「日本の安全な魚や肉を世界中の人に安心して食べてもらえるようサポートするのが、私たちの役目。いわば〝食の安全を守る縁の下の力持ち〟であると自負しています」と、食品衛生課課長の小野澤由子さんは説明します。

同課で活躍するのが、「食品衛生監視員」※1。食品衛生監視員は、大学等で薬学や畜産学、水産学などを学び、食品衛生監視員採用試験に合格した者が、厚生労働大臣から任命されます。
公務員として検疫所などに所属し、「厚生労働省検疫所等からの出向」というかたちで、全国8カ所の地方厚生(支)局において、国産食品の輸出促進対策業務などに携わっています。

北海道厚生局では11人の食品衛生監視員が、中国や韓国、ブラジルなどに向けた輸出水産食品の衛生証明書の発行を担っています。特筆すべきは、輸出水産食品取り扱い施設の多さ。一次産業が盛んな土地柄もあり、厚生労働省管轄の国内の認定施設のうち輸出水産食品では、アメリカや欧州連合(EU)、アジア向けに北海道の施設が多くを占めています。

対話により根本的改善を促すスタンスが必須

食品衛生監視員は、道内にある水産食品や食肉の認定施設の定期査察も実施しています。査察では、輸出先国の食品安全に関する要件や国際的な衛生管理手法であるHACCP※2に適合しているかを確認することはもちろん、事業者との対話が重要と、小野澤さんは強調します。

「どこかが汚れていたからとただ指摘し一蹴するのではなく、背景にはどんな問題があるのかに着目し、相手の話を聞く姿勢を大事にしています。施設運営にあたって、事業者がきちんと業務管理を改善するPDCAサイクルを回せているか、マネジメントができているかを問うことで事実関係を確認し、根本的改善を促していくスタンスが、食品衛生監視員には欠かせません」
さらに、年に1回、登録検査機関※3への立入検査も実施しています。

「道内には、4つの登録検査機関があります。各機関の業務管理が適切であるかについて立入検査を行っています」と、食品衛生課の食品衛生監視員・松本留美さんは話します。
そのほか、食中毒発生時における厚生労働省や関係自治体との情報共有、健康増進法に基づく虚偽誇大広告等の監視などにも努めています。

大きなやりがいと責任感を伴う仕事


政府は今、農林水産物・食品のさらなる輸出拡大をめざし、厚生労働省や農林水産省をはじめ各省庁と連携して一体的な取り組みを推進しています。これに伴い、食品の安全性の担保役を務める食品衛生監視員には、ますます大きな期待がかけられています。

輸出先国の要件に沿って原材料や製造工程を厳しくチェックする視点と、世界中の人に日本の安全な食品を食べてもらうよう輸出促進に努める視点が、食品衛生監視員には求められているのです。

「『食の安全』への関心が『社会の安全』につながり、それが国を越えてグローバルに展開していく。そのような取り組みにかかわることができる食品衛生監視員は、大きなやりがいと責任感がある仕事です。興味がある方はぜひチャレンジしていただきたいです」と、小野澤さんは期待を寄せます。

<若手職員が語る 「この仕事のやりがいと難しさ」>


山根詩織

●「獣医師」の観点から環境整備を働きかける

大学の獣医学部時代、厚生労働省職員による授業があり、食品衛生監視員の仕事を知りました。獣医師にも公務員にも興味があったため、獣医師の資格を活かすことができる食品衛生監視員の道を選択しました。

現在は、主に食肉の輸出にかかわる仕事を担当し、と畜場の査察に数多く出向いています。一見、獣医師の仕事とは対極にあると捉えられがちですが、動物が食肉になるまでには獣医学の観点が非常に重要です。査察時には、地方自治体の獣医師にも同行いただくため、より密な情報交換や連携をしながら、業務にあたっています。

難しさを感じるのは、認定施設の事業所や自治体の方など、さまざまな立場の方とのコミュニケーション。改善にはコストや人員が必要になることも多く、納得いただくには相当の時間を要することもあります。根拠を示しつつ、どうしたら円滑に進むか試行錯誤の毎日です。
今後も、さまざまな業務に携わって知見を広げていきたいです。

<中堅職員が語る「食品衛生監視員の仕事」>


鈴木雄太

●育休を取得しワーク・ライフ・バランスも充実

管理栄養士を養成する大学を卒業し、2015年に入省しました。成田空港検疫所、小樽検疫所で計6年にわたって輸入食品の審査・検査に携わった後、3年前から北海道厚生局で食品衛生関連業務に励んでいます。

輸出食品に携わるようになり、初めて水産食品や食肉の製造現場を間近に見ることになったのですが、その活気と迫力に今でも圧倒されることもあります。認定施設(23ページの囲み参照)の事業者への指導は容易なことではありませんが、相手が理解しやすいよう工夫して伝えるように心がけています。

また、昨年は2カ月、育児休暇を取得しました。3人目のこどもだったのですが、初めてじっくり育児に取り組む時間をつくることができ、プライベートにおいても貴重な経験をさせてもらいました。
もう入省9年目にもなったため、今までの経験を活かしながら、どうしたら業務が円滑に回るか、積極的にアイデアや改善案を上げるなど貢献をしていきたいです。



※1
国の食品衛生監視員は主に主要な海・空港の検疫所を活躍の場とし、輸入食品の微生物検査と理化学検査、検疫感染症の国内への侵入防止などが職務。一方、地方厚生局においては輸出食品の安全を守る業務がメインとなる。全国の自治体に配置される食品衛生監視員は、主に保健所において飲食店営業等の許可事務や衛生管理、食中毒の調査など、身近な食品衛生にかかわる仕事に従事

※2
HACCPとは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入などの危害要因(ハザード)を把握したうえで、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程のなかで、それらの危害要因を除去・低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法

※3
登録検査機関とは、政府の代行機関として、業務規程の認可を受けた製品検査を行うことができる検査機関。その登録に際しては、食品衛生法等において規定する、検査機関が備えるべき設備や検査員、実施すべき信頼性確保措置などについての要件に適合する必要がある。登録の申請は、申請者の事業所の所在地を所管する地方厚生局が対応。地方厚生局においては、登録業務以外にも業務規程の認可、立入検査、改善指導などを実施
 

出典 : 広報誌『厚生労働』2023年12月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省