厚生行政を最前線で支える  地方厚生(支)局探検隊

第4回:九州厚生局 年金部門

厚生行政の政策実施機関として、全国8(支)局で「健康・福祉」「医療」「年金」「麻薬取締」の業務をこなす「地方厚生(支)局」の仕事と、そこで働く人を紹介するコーナー。第4回は、九州厚生局の「年金部門」にスポットを当てます。


<九州厚生局の概要>
州地方の管内8県(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)における厚生行政を管轄する地方機関。
管内人口は約1,400万人で、日本の全人口約1.2億人の約12%に相当する。
福岡市にある本局のほか、保険医療機関や保険薬局などに対する指導監督や施設基準等届出の審査業務などを行う地方事務所を福岡県以外の管内7県に1カ所ずつ設置し、さらに沖縄県には沖縄分室を置いている。また、薬物乱用を防止し、健全な社会を実現するために麻薬取締部(福岡市)、小倉分室、沖縄麻薬取締支所を設置している。

職員は非常勤を含めて約300人。事務職のほか、医師や歯科医師、薬剤師、看護師など、多くの職種の職員がいる。

日本年金機構や市町村の実務と年金知識の普及啓発をサポート

PICKUP 年金部門


社会インフラとしての「年金事業」の運営に貢献

九州厚生局は、九州地方8県で多種多様な厚生行政業務を展開しており、そのうち「年金事業」は正確・確実に行われることが不可欠の社会インフラです。わが国の公的年金(老齢年金、障害年金、遺族年金)は、国が財政責任・管理運営責任を負いつつ、その業務運営は日本年金機構に委任・委託されています(図表1)。

九州厚生局は、日本年金機構や、国民年金にかかわる市町村を監督・支援する(図表2)とともに、厚生労働大臣から委嘱された「年金委員」の活動支援などを通じて年金制度の正しい知識の普及啓発を促進するなど、公的年金事業の運営に貢献しています。そうした業務を円滑に運営するため、九州厚生局の年金部門には下記の4つのセクションがあります。



日本年金機構の業務認可を迅速に行う「年金指導課」

日本年金機構は非公務員型の特殊法人として、
1.財産の差し押さえなどの徴収業務や保険料収納業務を可能とする徴収職員・収納職員の任命、2.保険料滞納中の事業主および国民年金被保険者に行う滞納処分、
3.健康保険・厚生年金保険の未適用事業所への加入指導、適用事業所への事業所調査、
4.受給権者等への障害状態および死亡者と請求人の生計維持関係の調査を実施しています。
ただし、これらの業務を行うには、社会保険各法によって定められた厚生労働大臣の認可が必要です。
認可業務の権限委任をされているのが地方厚生局長であり、その実務は「年金指導課」が担当しています。「この業務を迅速・的確に行うことで、日本年金機構の速やかな滞納処分や立入検査などを可能とします。また、年金指導課では日頃から同機構との定例会議を開くなど、連絡を密に取りながら業務執行に努めています」(年金指導課 上木萌々子)

関係機関との連絡・調整を行う「年金調整課」

「年金調整課」は、日本年金機構や市町村などとの連絡・調整を行います。具体的には「市町村が行う国民年金等事務に対して交付する交付金の審査」「日本年金機構・市町村・関係機関等との連絡調整」「年金委員の委嘱・解嘱」「社会保険労務士の指導・監督」などがあります。

「国民年金に関する届出書受理や相談については日本年金機構や市町村で社労士会の協力も得ながら実施されていますが、さらに、年金委員、学生の保険料納付が猶予される手続きを代行する大学等教育施設(学生納付特例事務法人)も会社や地域で年金制度の周知・啓発・相談・助言の活動を行っています。その活動もサポートしています」(年金調整課 井福真太朗)





年金記録の訂正請求に対応する「年金審査課」

「年金審査課」は、「厚生年金保険および国民年金の被保険者等の年金記録の訂正請求に関する調査事務」「九州地方年金記録訂正審議会の運営」を行っています。2007年の「年金記録問題」(国管理の年金記録に漏れ・誤りが多数見つかった案件)をきっかけに、総務省に年金記録確認第三者委員会が設けられ、年金記録の確認申し立てに対する調査や審議を実施。さらに、2014年の法律改正により、年金記録が事実と異なると思われる人からの訂正請求を可能とし、民間有識者の審議に基づき、国(厚生労働省)が年金記録を訂正する恒常的な手続きが整備されました。

「年金審査課は、請求者から提出された資料などだけでは年金事務所で訂正ができなかった事案を、日本年金機構が保管する資料、関係する法人や行政機関などの関連資料や周辺事情の調査など、幅広い情報収集と事実確認により、訂正するか否かを総合的に判断しています」(年金審査課 岩下香織)

その後、有識者で構成された「九州地方年金記録訂正審議会」が客観的な事実関係に基づいて審議した内容を踏まえ、厚生局長が年金記録の訂正・不訂正の決定を行っています。




不服申し立てに対応する「社会保険審査官」

「社会保険審査官」は、健康保険法、厚生年金保険法、国民年金法などに基づく、保険・年金給付などの決定(処分)に関する「審査請求」業務を行っています。国(厚生労働大臣)や全国健康保険協会、健康保険組合などの保険者が、厚生年金保険、国民年金、健康保険などの被保険者に対して「支給しない」などの決定をした際、被保険者はその決定に対する不服申し立て(審査請求)を社会保険審査官に行うことができます。

簡易・迅速な手続きによる審査の結果、その決定が違法または不当なものであった場合は決定を取り消し、被保険者の権利・利益を救済するのが社会保険審査官の役割です。
「その決定は準司法的な職務の性質を持ち、裁判官に似た立ち位置にあるため、社会保険審査官は法令のみならず、国からの通知・通達に精通しなければなりません」(総括社会保険審査官 前田久美)

<年金調整課係長が語る「この仕事の使命とやりがい」>

井福真太朗

●直接聞いた市町村の意見や要望を本省に速やかに届ける
私は主に総務部門(庶務、契約、人事業務)や医療部門(保険医療機関などの指導監督業務)を経験し、今年4月に初めて年金部門の年金調整課に配属されました。
主な業務は、管内274市町村に対する、国民年金の事務に要する費用の交付です。書類審査に多くの時間を要しますが、市町村の担当部署に赴き、交付額に問題点がないか確認する機会も多く、市町村のご担当者からご意見やご要望をいただけるのは大変貴重な機会と感じています。

また、問題点があった場合、その改善はもちろん、年金制度とその運用を企画立案する厚生労働省に対し現場の実態や声を届けることも使命であり、やりがいでもあります。

九州厚生局は健康・福祉、医療、年金など広い分野を所掌しているため、時に職員から「初めての部署に異動すると勉強が大変だ」との声も聞きます。しかし私自身は、今回の年金調整課の業務は初めてながら、「自分の幅を広げるチャンス」と前向きに捉えられました。それは、チームワークが自慢の九州厚生局なら、「きっと周りが助けてくれる」という思いがあったからです。

<若手係員が語る「九州厚生局年金指導課の職場環境」>

上木萌々子

●上司や先輩の積極的なサポートで0安心して業務に取り組める
私は官庁合同業務説明会で九州厚生局の存在を知り、「年金」「医療」「福祉」など私たちの生活に深くかかわる業務を担当していることや、伝わってくる職場の雰囲気の良さに魅力を感じ、2020年度に入局しました。
入局後、医療と年金の2つの部署を経験しました。どちらの業務も将来にわたって私自身の人生に直接かかわるため、私生活にも役立つことが多いと実感しています。

各分野の知識や仕事のやり方などを身につけるには日々の研鑽が必要ですが、研修制度が充実しており、上司や先輩が積極的にサポートしてくれるので、相談もしやすく、安心して業務に取り組めます。
業務説明会で感じた職場の雰囲気の良さについては、実際に働き始めてから現在まで、その印象は変わりません。

また、九州厚生局ではワーク・ライフ・バランスの推進に力を入れており、休暇を計画的に取得しやすく、職員間で休暇中のフォローをし合う体制も整っています。業務のやりがいだけでなく、多様な働き方ができる環境が整備されているので、今後も安心して働き続けられると思います。

 

出典 : 広報誌『厚生労働』2023年11月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省