未来(あした)のつぼみ

大きな制度改正に限らず、日々の地道な積み重ねが厚労行政の可能性を広げています。ここでは、厚生労働省の若手職員たちの取り組みや気づきを紹介します。

今回の執筆者
八木晋作
保険局高齢者医療課 主査


制度改正の周知広報の難しさ痛感

年は一昔といいますが、その(ほぼ)一昔前、厚生労働省に入省した私が最初に配属されたのが保険局高齢者医療課であり、そして今、再度その高齢者医療課に籍を置いている自分の状況を思うと、我ながら不思議な感覚に襲われます。
この10年間、後期高齢者医療制度をめぐる動きのなかでも特に大きなトピックというと、やはり窓口負担2割の導入でしょうか。

そもそも後期高齢者医療制度というのは、我が国の医療保険制度において75歳以上の方が加入する制度であり、病院などで診察を受けた際に窓口で支払う自己負担額が、74歳未満の方が一般的に医療費全体の3割であるのに対し、後期高齢者医療制度では基本的に医療費全体の1割を自己負担額として支払います。この窓口負担の割合について、2021年に法改正が行われ、翌年10月より一定以上の所得の方の割合を2割とする見直しが実施されました。

このインパクトの大きい見直しが始まるにあたり、ちょうど周知広報全体を担当することとなりました。その周知広報において、誰に、いつ、どのような情報を、どこまでお知らせするのか、対象となる方・逆に対象とならない方に誤解を与えないためにどのようにするのか、について何度も課内で検討を行ったことが記憶に残っています。

そしてまた周知広報の難しさ、「2割」という強く目立つ言葉の下でいかに制度の趣旨、対象者の考え方を噛み砕いてお知らせできるのかという点や、知らず知らずのうちに伝えたつもりになってしまっていること、誤解のないように伝えた言葉がむしろ回りくどく難解になってしまうことへの歯がゆさも痛感しました。制度にご理解のある関係者との間でも、こうした認識のずれは生じましたし、それが広く国民の皆さまとの間となると、伝えたい情報を漏れなく誤解なくお知らせするというのはいかに繊細かつ根気の必要なことかと思い知らされました。

今後予定されている諸々の制度改正についても、こうした“伝えること”の難しさは生じるものと思いますし、その際に、情報の受け手(国民)の一人としてどのように感じるか、受け取るかの目線を忘れないことが大切であると考えています。


 

出典 : 広報誌『厚生労働』2023年8月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省