厚生行政を最前線で支える  地方厚生(支)局探検隊

<特別編>開始記念座談会

国の身近な機関として地方自治体との架け橋役となって
国民の安全・安心な暮らしをサポート


地方厚生(支)局を知っていますか?
今月号から、地方自治体の医療・保健・福祉の支援や年金行政などを行う厚生労働省の「地方厚生(支)局(以下、厚生局)」にスポットを当てた連載が始まります。そこで初回は、その入り口として、大臣官房参事官を招いて厚生局職員による座談会を開き、「全国に8カ所ある厚生局は、どんな仕事をしているところなのか?」について語ってもらいました。



◎「健康・福祉」「医療」「年金」「麻薬取締」が主業務
菊池●2001年の中央省庁再編を機に厚生労働省に地方厚生局と厚生支局が設置されてから、20年以上が経ちました(図表1)。この間、厚生局が担う業務は、「保険医療機関の指導監査」「社会保険事務局が行っていた年金事務のうち、年金給付の処分決定に係る不服申し立て審査請求事務」「年金記録訂正」と増え、近年では「地域包括ケア」の推進も担っています。
さらに、今年度からは「こども家庭庁」の事務も担当し、職員数は設立時の2.8倍の1,875人に増えました。これは、国民の皆さまや地方公共団体から厚生局への期待の表れだと思います。

田原●現在の厚生局の主たる業務は「健康・福祉」「医療」「年金」「麻薬取締」の4つの分野に分けられます(図表2)。各厚生局では、各局ホームページに国民の皆さまからの声をいただくコーナーを設けて、ご意見・ご要望を伺い、ご質問に答えています。それぞれの業務について、各部門の若手職員から紹介してもらいましょう。




◎地域包括ケアを進める「健康・福祉」業務
石川●私は、「健康・福祉」業務に属する健康福祉課で働いています(図表2青色)。
健康・福祉業務では、国民の皆さまが住み慣れた地域で安心して自分らしい生活を続けられるよう、地域包括ケアシステムの推進・深化に向けた地方自治体支援を目的として、さまざまな情報の収集・発信、各施策の普及啓発、セミナー開催などを行っています。

また、健康・福祉関係補助金などの執行、生活保護法などに基づく指導監査による助言、社会福祉士・栄養士養成施設への指導監査なども行います。
さらに、食の安全・安心を確保することを目的として、広域食中毒防止のための活動や、登録検査機関の監督業務、食品等輸出促進対策も実施しています。

◎適切な医療提供のために取り組む「医療」業務
中妻●私は、「医療」業務に属する医療課で働いています(図表2緑色)。
医療業務では、医療保険制度が健全に運営されるよう、保険医療機関や保険薬局、健康保険組合などの保険者に対する指導・監督を行っています

また、国民の皆さまに安心・安全・適切な医療サービスを提供すべく、災害時における医療確保の支援、地域医療構想の達成に向けた取り組みの推進、医療観察法が定める継続的で適切な医療提供体制の確保などを実施しています。
さらに、医薬品・医療機器などの安全確保のために、それらの輸入監視指導や、厚労省指定の医薬品などに関する製造業許可の業務を実施しています。

◎年金の記録訂正に対応する「年金」業務
藤本●私は、「年金」業務に属する社会保険審査事務室で仕事をしています(図表2黄色)。
年金業務では、年金制度の円滑な運営のために、日本年金機構が実施する滞納処分や立ち入り検査などに関する認可業務、市町村に交付する国民年金等事務取扱交付金関連の事務を行っています。
また、年金記録に関連する業務として、記録に疑義をお持ちの方からの訂正請求に対応することも私たちの仕事です。

このほかに、被保険者などの権利や利益の救済を図るために、健康保険、厚生年金保険、国民年金などの加入資格および年金給付決定に関する審査請求への対応業務も行っています。



◎薬物乱用防止とその啓発を行う「麻薬取締」業務
田原●「麻薬取締」業務については、私から説明します(図表2赤色)。
麻薬取締業務では、薬物乱用を防止し健全な社会を実現することを目的とした、薬物犯罪の捜査および取り締まり、麻薬取扱者に対する指導・監督、薬物乱用防止に向けた普及啓発、再乱用防止対策などを行っています。

菊池●厚生局は現在、全国に北海道、東北、関東信越、東海北陸、近畿、中国四国、九州と四国支局の8(支)局があります。
本省は、それぞれの予算管理や人事管理業務を担うとともに(図表3)、各厚生局職員が万全な体制で日々円滑に業務を遂行できるよう、必要予算を確保するなど、後方支援を続けていきます。

田原●たとえば、関東信越厚生局では基本理念を「国民生活の質の向上と地域社会の発展に寄与することを使命とし、国民に身近な地域における厚生行政の施策実施機関として、厚生労働省と地域社会との架け橋の役割を果たしつつ、将来にわたり国民の皆さまの健康で安全・安心な暮らしを支えます」と定めていて、当局の紹介のパンフレットに掲載しています。

職員からの業務の紹介や沿革にあるように、社会のニーズに合わせて厚生局の業務が追加され、地域や地方自治体における役割が大きくなっていることがわかります。その点からも、厚生局職員として、より高い使命感を持って仕事に臨まなければいけないと肝に銘じています。


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◎直に国民の皆さんとかかわれるところが魅力
石川●実際に厚生局の仕事をしていると、「地方自治体支援」という意味で、厚生行政にとってなくてはならない組織だと日々実感しています。ですので、下支えと言いますか、あまり目立たないようなところもありますけど(笑)、「国と地域社会の橋渡し的な役割」に興味のある人にとってはとても面白い仕事だと思います。

私は、採用説明会に参加するまで厚生局の存在を知りませんでしたが、説明会に参加して、国だけでなく地域社会と密接しているうえに、部署によっては直に国民の皆さまとかかわれる点に魅力を感じて志望しました。

中妻●私の場合、保険診療のルールや診療報酬の請求に仕事として携わることで身につけた知識をもとに、一生活者として病院や薬局を利用してみると、「ああ、自分の職務は国民の安全・安心に役立っている」と実感しています。

石川さんのお話と似ていますが、そうした意味で、国民の皆さまの生活に密接した職務であり、そこにやりがいを感じます。

◎地方自治体と国で働く両方の“いいとこ取り”
藤本●私は学生のころから、激変する社会保障制度の運営で中枢を担う職務につきたいという気持ちがありました。地方自治体職員の道も考えたのですが、いざ厚生局の仕事を始めてみると、今私が担当している社会保険審査関連業務では、国民の皆さんのごく近くで働けている実感を持てています。

地方自治体で働くことと国で働くことの両方を経験できて、両方から経験の“いいとこ取り”ができる。その点でとても面白い仕事ですし、特に公務員を志望している人であれば、厚生局はすごく良い職場だと思います。

田原●厚生局の職員の配属に関しては、定期的に希望調査を実施し、本人の希望も考慮しつつ、健康・福祉、医療、年金の3分野を横断して配置しています。関東信越厚生局では、ある程度将来を展望できるようキャリアパスや人材育成プランを定めています。なお、麻薬取締部については、主として部内で異動することになります。
座談会は以上です。厚生局の業務の全体像をイメージしていただけたでしょうか。

個別業務につきましては、各厚生局から順次掲載していきます(図表4)。あわせて、地域包括ケアに関する地方自治体の取り組みや厚生局のかかわりについて紹介していきます。

今月号から始まる一連の誌面が、厚生局の業務を理解する一助になればと考えています。また、厚生局への興味が湧いて、意欲ある方には、ぜひ厚生局の門を叩いてほしいと思います。




 

出典 : 広報誌『厚生労働』2023年8月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省