有期契約労働者からの発展 無期転換ルールを知っていますか

日本では、少子高齢化により生産年齢人口が減少傾向にあります。近い将来、労働力不足が深刻化することが予想されるなかで企業は、労働者として働いている人材にこれまで以上に活躍してもらえるよう、職場環境を整備していく必要があります。

本特集では、その一助となりうる「無期転換ルール」や「多様な正社員」制度のメリットや注意点などを、実際に無期労働契約に転換した方の声も交えながら解説。あわせて、来年4月からの「労働条件明示のルール変更」についても紹介します。

「無期転換ルール」をご存じですか?
企業や有期契約労働者、無期労働契約への転換者を対象に、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行ったアンケート調査から、無期転換に関する状況を見てみます。
研究期間:2018(平成30)年度~2019(令和元)年度



<Part2>
ルール改正 2024年4月から「労働条件明示のルール」が変わる
2024年4月から、労働条件の明示のルールが変更されます。その背景や狙い、変更点について、厚生労働省の担当者が解説します。




解説者
労働基準局労働関係法課
(左上)法規係  
            (右上)企画係
石田義貴                         辻雷矢
(左下)労働契約係主任  (右下)政策係
辻弘佳                            渡辺はづき




●就業場所・業務の変更範囲など新たな明示事項を追加

「労働条件の明示」とは、労働契約を結ぶ際に労働条件が不明確だったことをきっかけに、使用者(企業)と労働者の間で紛争が発生することを未然に防止するため、使用者(企業)が労働契約の締結に際し、労働者に対して「賃金」や「労働時間」などの主要な労働条件について明示しなければならないというものです。

明示事項は14項目あり、そのうち次の6項目──①労働契約の期間、②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準、③就業の場所及び従事すべき業務、④始業及び終業の時刻、休憩時間、休日など、⑤賃金(昇給は除く)、⑥退職に関する事項──は、書面の交付(労働者が希望する場合は、電子メールなども可)で明示する必要があります。

2024年4月からは、これらの項目に関して上図のように、就業場所・業務の変更の範囲など、4つの明示事項が新たに追加されます。



●使用者と労働者が互いに納得して働けるように

労働条件の明示は、紛争を未然に防止することが目的であり、使用者(企業)・労働者をともに守るためのルールです。
契約を開始する前に双方の認識をきちんとすり合わせておくことで、互いに安心・納得して働いてもらう・働けるようになります。

たとえば、使用者が新しい事業の立ち上げに合わせて「最初の1年間」に限って労働者を雇用したつもりであったとしても、そのことが雇用された労働者に明確に伝わっていなければ、「まずは1年頑張って仕事ぶりを認めてもらえれば、来年以降も雇ってもらえるかもしれない」という期待を抱かせてしまうこともあります。
このように、実際に働き始めてから労働条件の認識のズレが発覚したら、双方に不満や争いが生じてしまいかねません。

多様性が叫ばれる昨今、個々人の働く背景にはさまざまな事情があり、働き方もさまざまです。そんな今だからこそ、最初にきちんと取り決めをし、明示することによって認識のズレをなくしておくことは、使用者(企業)・労働者双方にとってとても重要であると、改めて意識していただきたいです。
 

出典 : 広報誌『厚生労働』2023年7月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省