未来(あした)のつぼみ

大きな制度改正でなくとも、日々の地道な積み重ねが厚労行政の可能性を広げています。ここでは、厚生労働省の若手職員たちの取り組みや気づきを紹介します。

今回の執筆者

新藤壮一郎
年金局 総務課 企画専門官

年間200万回以上アクセスされた「公的年金シミュレーター」の運営


私は、「公的年金シミュレーター」を担当しています。

昨年4月に運用を開始した公的年金シミュレーターは、日本年金機構から被保険者に送付される「ねんきん定期便」に記載されている二次元コードをスマホで読み取ることで、将来受給可能な年金額を手軽に試算できるサービスです。「今後の年収」「就労完了年齢」「受給開始年齢」の3本のスライドバーを操作すると、グラフ表示がリアルタイムで変化し、将来の働き方・暮らし方に応じた年金額の変化を視覚的に把握することができます。運用開始以降、今年3月現在で200万回以上アクセスされています。

今後、民間企業が運営するアプリなどのITサービスで年金額の試算ができるよう、私が所属する年金広報企画室は、公的年金シミュレーターのプログラムを公開し、民間企業が自社のアプリなどのITサービスに組み込めるか実証実験を行いました。
私は、官民が一体となって円滑に実証実験を進められるようルールづくりの準備を行いました。
また、参加企業と意見交換を重ねて積極的にコミュニケーションをとるように努めました。

実証実験の結果、参加企業11社のうち6社から「プログラムをアプリなどのITサービスに組み込むことができた」という回答を得ることができました。このことから、民間企業の創意工夫で、年金額の試算機能を組み込んだ独自のITサービスの開発を期待できるという結論が得られ、国が開発したプログラムを民間企業が利活用できるよう環境整備を進めることになりました。私は、民間企業と協力して社会的な意義のある実証実験に取り組み、一定の結論を得られたことにやりがいと誇りを感じました。

参加企業からは、「老齢年金に加えて、障害年金・遺族年金の受給見込み額を試算できる機能が欲しい」という要望もありました。年金広報企画室では今後、公的年金シミュレーターにこの2つの試算機能を追加できないか検討する予定です。これに加えて、年金受給時に支払う税・社会保険料を試算する機能を開発中で、この機能により年金の手取り額がイメージできるようになる予定です。

今後も、公的年金シミュレーターの利便性を高め、民間企業などと協力しながら、たくさんの方に活用していただけるよう取り組んでいきます。


公的年金シミュレーターの試算画面


 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2023年5月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省