未来(あした)のつぼみ

大きな制度改正でなくとも、日々の地道な積み重ねが厚労行政の可能性を広げています。ここでは、厚生労働省の若手職員たちの取り組みや気づきを紹介します。


今回の執筆者

牛津拓也
社会・援護局 援護企画課 企画法令係長



皆さんは、「援護行政」という言葉を聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか? そもそも初めて聞いた方もいらっしゃるかもしれません。

「援護行政」とは、一般的には戦傷病者や戦没者遺族などへの援護を指します。厚生労働省の社会・援護局では、戦没者の追悼、各戦域での戦没者遺骨収集事業や戦没者遺族による慰霊巡拝の実施、戦傷病者や戦没者遺族への援護などを行っています。戦後78年を迎える今も、これらの業務は連綿と続いています。

私は現在、援護行政の広報やイベントなどの企画や法令改正のとりまとめを行う業務を担っています。局内で所管している法律は、たとえば、戦没者等の妻に特別給付金を支給する「戦没者等の妻に対する特別給付金支給法」や、先の大戦による混乱のなかで現地へ残留を余儀なくされた邦人等を支援する「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律」などがあります。

また、企画の仕事でいえば、「全国戦没者追悼式」や「千鳥ヶ淵戦没者墓苑拝礼式」の運営や準備といったものがあります。そのほかに、援護行政の広報等も行っています。

私は、状況が目まぐるしく変化する現代社会において、行政の意義や意味について節目ごとに考えることは重要であると考えています。そして、局内をとりまとめる業務を担うなかで、これからの厚生労働省の援護行政についても、ふと考えるときがあります。

各々の業務を俯瞰し考えていると、次の世代に「戦時中の状況」や「制度成立時の考えや思い」を伝えていくことは、今後の援護行政にとって大きな役割の一つだと改めて気がつきます。それは、第二次世界大戦から今日においても、世界中で戦禍は絶えず、多くの方々がその尊い命を落としていることも大きく関係しています。全国戦没者追悼式等において参列者の方々が「平和への思い」を述べられており、今まで以上に援護行政の重みや重要性は増してきていると感じています。

先日、硫黄島での慰霊巡拝に参加させていただきました。付き添いのお孫さんと一緒に涙ぐむご遺族の姿を見て、その思いを引き継いでいくためにも援護行政に終わりはないのだと実感します。政府の一員としても一国民としても、その思いを大事にしていきたいと思います。



硫黄島での慰霊巡拝(追悼式)の様子

 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2023年4月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省