日本で7回目のG7サミット開催!G7労働雇用大臣会合・保健大臣会合を知ろう

毎年開催されているG7サミット(主要国首脳会議)では、世界経済や地域情勢、さまざまな地球規模の課題について、各国首脳が率直な意見交換をしています。今年は日本が議長国を務め、5月に広島市で開催されます。ここでは、同サミットに関連して開かれるG7労働雇用大臣会合・保健大臣会合について紹介します。

フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ(議長国順)の7カ国と欧州連合(EU)の代表が意見を交わす 出典:首相官邸ホームページ



左)開催準備室の看板と小野田室長 右)厚生労働省の開催準備室のメンバー


G7大臣会合を通じて労働や
保健について考えてほしい




小野田知子
大臣官房国際課 G7厚生労働関係閣僚会合等開催準備室 室長




●労働・保健分野の国際的課題を議論

——G7サミットとは。

G7サミット(主要国首脳会議)は、フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ(議長国順)の7カ国の首脳および欧州連合(EU)が参加して毎年開催される国際会議です。世界経済や地域情勢、さまざまな地球規模の課題などについて、自由・民主主義・人権などの基本的価値を共有するG7各国の首脳が自由闊達な意見交換を行い、その成果を文書にまとめ公表します。

今年は日本が議長国を務め、5月の広島市での首脳会議のほか、全国各地で関係閣僚会合を開催し、各分野の重要課題について議論する予定です。一年を通じて10を超える関係閣僚会合が開かれ、各国から政府関係者やメディアなど多くの人たちが日本を訪れます。

厚生労働省では、G7倉敷労働雇用大臣会合(岡山県倉敷市)とG7長崎保健大臣会合(長崎県長崎市)を担当します。


——それぞれ、どのようなことを議論するのでしょうか。

今回の労働雇用大臣会合では、「人的資本への投資」をメインテーマに掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX:デジタル技術によって、ビジネスや社会、生活の形・スタイルを変えること)・グリーントランスフォーメーション(GX:化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動による産業構造変化への対応や、高齢者、障害者、女性などさまざまな属性の方が意欲と能力に応じて活躍できる働きやすい環境の整備、ワーク・エンゲージメントの向上とディーセント・ワークの推進などについて議論する予定です。

保健大臣会合では、国際保健分野の諸課題について議論します。今回は、新型コロナウイルス感染症からの「より良い回復」をめざして、将来の公衆衛生危機に対する予防・備え・対応の強化や、より強靱、より公平、より持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:全ての人が、適切な予防、治療、リハビリなどの保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態)の達成への貢献、それらを下支えするヘルス・イノベーションの促進などを議論し、G7の方向性や行動を発信する予定です。


●日本のリーダーシップ発揮と世界への情報発信の機会に

——G7大臣会合開催に向けての意気込みを聞かせてください。


今年の日本でのG7大臣会合開催には、二つの意味があると考えています。

一つは、日本のリーダーシップを世界に示す絶好の機会であることです。パンデミックにより生じた変化を前提に、労働・雇用のあり方、将来のパンデミックへの備えなどの難題について、日本が議論をリードしていくこととなります。

もう一つは、新型コロナウイルス感染症拡大後、3年ぶりに一堂に会する大臣会合となることです。オンラインやハイブリッドの会議では得られない、直接会って議論することや開催地の食や文化に触れることの価値を、再認識する機会になることは間違いありません。

開催自治体をはじめとする関係者の皆さまと力を合わせて、成功に向けて取り組んでまいります。


<G7労働雇用大臣会合in倉敷>
G7労働雇用大臣会合は、4月22・23日に岡山県倉敷市で開催されます。開催地に選ばれた倉敷市と雇用・労働分野のかかわりについて、市の担当者に聞きました。




●健康的な労働環境づくりに取り組んできた場所

倉敷市は、約48万人の人口を擁する中国地方の中核市です。「白壁の蔵屋敷や美しい自然景観など国内有数の観光地として知られていますが、学生服やジーンズなどの繊維産業や、日本有数の工業地帯・水島コンビナートなど、ものづくりも盛んなまちです」と、倉敷市G7倉敷労働雇用大臣会合推進室の西村将典さんは話します。

今回、G7労働雇用大臣会合の会場となる、倉敷美観地区に位置する倉敷アイビースクエアは、1889年に建てられた紡績工場をリノベーションした複合文化施設です。「自然と調和しながら健康的な労働環境を」という理念のもと、工場内部の温度を下げようと壁面に蔦をはわせた赤れんがの建物がノスタルジックな情景を演出しています。また、市内には、日本初の労働衛生に関する研究機関として、倉敷労働科学研究所(現:大原記念労働科学研究所)も1921年に設立されています。

さらに、市内には病床数が1,000床を超える倉敷中央病院や、日本初の私立西洋美術館である大原美術館がありますが、当時、紡績工場で働いていた人たちの福利厚生や地域の社会事業の一環として建てられたものです。「倉敷市は、よりよい労働や雇用を生む素地があり、100年以上前から働く人に着目した取り組みが進められてきており、労働雇用大臣会合の開催にふさわしいまちだ! という自負があります」





●人的資本への投資などの取り組みにつなげたい

G7労働雇用大臣会合の開催に向けて、倉敷市ではさまざまなイベントや取り組みが行われています。

「まち全体で心温まるおもてなしを行うことで、胸襟を開く会合につながり、人的資本への投資についての素晴らしい宣言が、ここ倉敷の地から発出されることを期待しています。併せて、2016年のG7倉敷教育大臣会合の開催に引き続き、G7関係閣僚会合が開催される地として、国際会議の場や観光地として、ポテンシャルの高いまちの魅力を、会合開催後も国内外に向けて発信していきたいです」と、西村さんは意欲を見せます。


<G7保健大臣会合in長崎>
G7保健大臣会合は、5月13・14日に長崎県長崎市で開催されます。開催地に選ばれた長崎と保健分野のかかわりについて、同会合推進協議会の担当者に聞きました。




●医療・公衆衛生分野の発展に貢献してきたまち

長崎は、鎖国政策が実施された江戸時代のなかでも西洋に開かれた唯一の窓口として、海外の進んだ文明を受け入れ、さまざまな人やモノ、情報などの交流で栄えてきた歴史のあるまちです。戦後は広島市とともに、原爆被爆の惨禍から復興し、核兵器廃絶と世界恒久平和への思いを発信し続けている平和都市でもあります。

今回、長崎初となるG7関係閣僚会合の開催が決まったことに関して、G7長崎保健大臣会合推進協議会の担当者は次のように説明します。

「長崎は、日本の西洋医学教育の発祥の地であるとともに、『医学伝習所』を起源とする長崎大学では、国内唯一の熱帯医学研究所のほか、感染症研究施設『バイオセーフティーレベル(BSL)4』の稼働も準備され、最先端の感染症研究が進められるなど、世界の医療・公衆衛生分野の発展に貢献してきたことが、今回の会合の長崎開催につながったものと考えています」





●会合を機に、健康づくりに向けた取り組みを加速させたい

長崎では保健大臣会合の開催に向けて、さまざまな取り組みを行っています。

会場となる出島メッセ長崎の周辺やまちなかに階段ラッピング広告やバナーフラッグを設置するなど、会合の開催周知や歓迎機運を高める取り組みを進めています。

そのほか、今回の会合に関連する取り組みとして、2月には「G7長崎保健大臣会合100日前フォーラム~ながさき健康宣言!~」を開催し、長崎大学の教授らを交えたパネルディスカッションなどを行った後、フォーラムの内容や、長崎県が抱える「健康増進」「医療的ケア」「医療ICT化」という3つの課題を踏まえた「ながさき健康宣言」を発出しました。
また、4月には、会合30日前イベントとして、子どもが保健や医療について楽しく学べる「キッズ保健セミナー」も予定しています。

引き続き、G7関係閣僚会合の成功に向けて、オール長崎で万全の準備を進めていきます。



 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2023年4月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省