未来(あした)のつぼみ

大きな制度改正でなくとも、日々の地道な積み重ねが厚労行政の可能性を広げています。ここでは、厚生労働省の若手職員たちの取り組みや気づきを紹介します。


今回の執筆者


北 大幸(きた ひろゆき)
政策統括官(統計・情報政策、労使関係担当)付雇用・賃金福祉統計室毎勤調整係



皆さんはニュースや新聞などの報道を通じて、たとえば「消費者物価指数が○%上昇した」「賃金が○%上昇した」など、さまざまな数値を目にする機会があると思います。このような数値は統計調査に基づいて、ご協力いただいた方のデータをもとに集計し、算出されているものです。

私は現在、「毎月勤労統計調査」という調査に携わっており、この調査では、日本の雇用、給与および労働時間の実態を明らかにするため、毎月2回、速報と確報という形で公表を行っています。このように短期間で定期的に公表を行うことで、近年変化の激しい日本経済の状況を長期にわたって把握することが可能となります。この調査結果は、労働保険の給付額の算出に用いられたり、日本経済の分析や景気の現状把握など、さまざまな場面で利活用されていたりするため、その重要性を実感するとともに、責任の大きさを痛感しているところです。

私の主な業務内容は、調査によって得られたデータをもとに集計し、結果を分析したうえで公表することです。利活用者からすれば単なる調査結果にしか見えませんが、その調査の裏側には、各都道府県職員の方々や、実際に事業所に訪問して調査票を配布・収集する統計調査員の方々、そしてその先の調査に回答してくださる事業所の方々など、非常に多くの方のご協力があり、この調査は成り立っています。ご協力してくださる方の負担を少しでも軽減し、円滑な調査実施に向けて調整することも、大切な業務の一つです。

統計調査の数値が正確でなければ、適切な金額の保険給付を受けられなくなり、その調査結果をもとにした政策にも影響が出てしまいます。現在、毎月勤労統計調査では、調査の改善に関するワーキンググループを設置し、より精度の高い調査に向けてさまざまな角度から検証を進めているところです。私もその検証作業の一部に携わり、標本設計や推計式など技術的な面で、どうすればより良い調査になるか議論を交わしています。

私はこのように統計を作成する側に携われていることで、たった一つの調査といえども、その調査にかかわる多くの方のご協力や職員の苦労を目の当たりにしています。統計調査により日本社会の現状をより正確に把握し、適切な形で公表することで、調査結果を利用されるすべての方の信頼を得るとともに、より効果的な政策立案にもつながると信じて、今後も日々の業務に邁進していきます。



 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2022年11月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省